説明

内視鏡用鉗子

【課題】 顎部材の開閉操作時に、顎部材を開閉させる開閉リンクが外方へ突出しない顎部の開閉構造を備えることにより、処置作業の際に周辺組織への引っ掛かりを生じないようにして作業性・操作性を向上させた内視鏡用鉗子を提供すること。
【解決手段】 第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15の各々の一端14a、15aを、ロッド18の先端に並列にそれぞれ独立して軸支し、各々の他端14b、15bを、第一顎部材11及び第二顎部材12を拡開若しくは閉塞させていくときに、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とが交叉した状態となるように、第一顎部材11及び第二顎部材12に軸支する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下手術において、生体組織の処理を行う際に使用される内視鏡用鉗子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外科手術の分野においては、従来からの開腹手術や開胸手術に代わって、患者への負担軽減及び術後の早期回復という利点から、侵襲の少ない内視鏡下手術が行われるようになってきている。この内視鏡下手術においては、生体組織の剥離や把持等の処理の際に、腹腔内に挿入される挿入部を備え、この先端に組織の剥離や把持等を行う一対の顎部材が設けられ、基端には一対の顎部材の開閉操作を行う操作ハンドルを備えたハンドル部を備えた内視鏡用鉗子が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図7には、従来の内視鏡用鉗子における一対の顎部材の開閉構造が示されている。一対の顎部材11、12は、支持ピン13によって軸支され、この支持ピン13を中心にして開閉できるようになっている。さらに、挿入部10には、その軸方向に移動可能にロッド18が内挿されている。そして、このロッド18と一対の顎部材11、12との間には、一対の開閉リンク14、15が配設されている。一対の開閉リンク14、15は、それぞれの一端がロッド18の先端にリンクピン16により一点で回動可能に取着され、リンクピン16を中心に略V字をなすように配置されている。一方、一対の開閉リンク14、15のそれぞれの他端は、一対の顎部材11、12の基端にそれぞれリンクピン17によって回動可能に取着されている。
【0004】
また、挿入部10の基端には、図示しない操作ハンドルが接続されており、この操作ハンドルを操作してロッド18を挿入部10の軸方向に沿って移動させることにより、一対の顎部材11、12の開閉操作をすることができる。具体的には、ロッド18を挿入部10の先端側(図7(b)に示す矢印N方向)へ移動させると、一対の開閉リンク14、15は、それぞれリンクピン17を支点として外方(図7(b)に示す矢印O及びP方向)に回動し、これに連動して一対の顎部材が拡開される。逆に、ロッド18を挿入部10の基端側へと移動させると、一対の顎部材11、12は閉塞されることとなる。
【0005】
ここで、一対の顎部材の拡開・閉塞操作を行うときに、図7(b)及び図8に示すように、一対の顎部材11、12の基端及び一対の開閉リンク14、15が、それぞれ挿入部10から外方に突出した状態となることが問題となる。
【0006】
一対の顎部材の拡開・閉塞操作は、当然、腹腔内において生体組織の処置の際に行われるのであるが、このとき術者は一対の顎部材の拡開・閉塞操作と同時に、内視鏡用鉗子全体を回転させたり、あるいは前後左右にずらしたりしながら処置を行う。そうすると、拡開状態のときに外方へと突出した開閉リンクが、周囲の組織に引っ掛かるといった事態が生じてしまい、これが作業性を悪化させることとなっていた。
【0007】
このような事態を解消するには、拡開時に開閉リンクが挿入部から外方へ突出しないような内視鏡用鉗子を用意すれば足りるのであるが、現時点においては、こうした点を考慮した内視鏡用鉗子は提供されていないのが実情である。
【0008】
【特許文献1】特開平8−38494号公報
【特許文献2】特開平8−103449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するために、顎部材の開閉操作時に、顎部材を開閉させる開閉リンクが挿入部から外方へ突出しない顎部の開閉構造を備えることにより、処置作業の際に周辺組織への引っ掛かりを生じないようにして作業性・操作性を向上させた内視鏡用鉗子を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明が採った手段は、体腔内に挿入される挿入部10と、挿入部10の先端に開閉可能に軸支された第一顎部材11及び第二顎部材12と、挿入部10の基端に配設され、操作ハンドル21を備えるハンドル部20と、挿入部10に内挿されるとともに、一端が操作ハンドルに接続されて操作ハンドル21の操作量に応じて軸方向に移動するロッド18と、第一顎部材11と第二顎部材12とをそれぞれロッド18に連結するとともに、ロッド18の移動に伴って第一顎部材11と第二顎部材12とをそれぞれ開閉駆動させる第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とを備える内視鏡用鉗子100であって、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15の一端14a、15aは、ロッド18の幅方向に並列にそれぞれ軸支されるとともに、他端14b、15bは、ロッド18を挿入部10の先端側に移動させたとき、若しくは挿入部10の基端側に移動させたときに、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とが交叉しながら第一顎部材11と第二顎部材12とを開閉させるように、第一顎部材11と第二顎部材12とに軸支されていることを特徴とする内視鏡用鉗子100、である。
【0011】
この内視鏡用鉗子は、開閉リンクの配置を見直すことによって、従前の問題の解消を図ったものである。すなわち、従前の内視鏡用鉗子では、一対の開閉リンクのロッド側への軸支を一点で行っていたのに対し、本発明に係る内視鏡用鉗子100では、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15のロッド18への軸支を、ロッド18の幅方向に並列に配置してそれぞれ別々に行うとともに、第一顎部材11及び第二顎部材12への軸支を、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とが第一顎部材11及び第二顎部材12が開閉駆動するときに交叉する位置で行っている。このように、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とを配置することによって、第一開閉リンク及び第二開閉リンクを挿入部から外方に突出させることなく、第一顎部材11及び第二顎部材12を開閉できるようにしている。
【0012】
また、請求項2に記載した発明が採った手段は、ロッド18を挿入部10の先端側に移動させたときに、第一顎部材11と第二顎部材12とが拡開することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用鉗子100、である。
【0013】
また、請求項3に記載した発明が採った手段は、ロッド18を挿入部10の基端側に移動させたときに、第一顎部材11と第二顎部材12とが拡開することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用鉗子100、である。
【0014】
請求項2及び請求項3に記載の内視鏡用鉗子100は、請求項1に記載の内視鏡用鉗子100について、第一顎部材11及び第二顎部材12の開閉駆動と、ロッド18の移動方向との関係を特定したものである。
【0015】
また、請求項4に記載した発明が採った手段は、ハンドル部20に、操作ハンドル21の操作量を規制する操作量規制手段24、25を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内視鏡用鉗子100、である。
【0016】
第一顎部材11と第二顎部材12の開閉操作は、操作ハンドル21を操作して、ロッド18を移動させることによって行われるのであるが、内視鏡下手術の際には、施術者が生体組織をしっかりと把持しようとして操作ハンドル21に過度の力を加えてしまうことが考えられる。このような場合には、各軸支部分等に対して大きな負担がかかって破損させる虞がある。そこで、操作ハンドル21の操作量を第一顎部材11及び第二顎部材12の開閉を行うのに必要な量だけに規制する操作量規制手段24、25をハンドル部20に設けて、内視鏡用鉗子100の各部位に過度な力が加わらないようにしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る内視鏡用鉗子によれば、第一顎部材及び第二顎部材の開閉動作をそれぞれ担う第一開閉リンク及び第二開閉リンクの各々の一端を、ロッドの幅方向に並列にそれぞれ独立して軸支するとともに、各々の他端を、各顎部材の開閉操作の際に、第一開閉リンクと第二開閉リンクとが交叉するように第一顎部材及び第二顎部材に軸支する構成を採用したので、各開閉リンクを挿入部の外方へ突出させることなく、各顎部材を拡開させることができる。これにより、腹腔内での処置作業の際に、各開閉リンクが周囲の組織に引っ掛かることがなくなるので、作業性を向上させることができる。
【0018】
また、ハンドル部に可動範囲規制手段を設けて操作ハンドルの可動範囲を各顎部材の拡開・閉塞を行うのに必要な範囲だけに規制することで、例えば、各リンクが軸支される部分等に過度な力が加わって破損することを防止することができる。
【発明の実施の形態】
【0019】
本発明は、内視鏡用鉗子に係るものであり、挿入部と、第一顎部材及び第二顎部材と、ロッドと、第一開閉リンク及び第二開閉リンクと、ハンドル部とを備える。
【0020】
挿入部は、細長棒状の中空パイプからなって、切開創から腹腔内に挿入される部分である。挿入部の長さや外径等は、特に限定されるものではなく、内視鏡鉗子の用途に応じて設定することができる。また、挿入部の基端には、後述するハンドル部が配設される。
【0021】
第一顎部材及び第二顎部材は、挿入部の先端に開閉可能に軸支される。第一顎部材及び第二顎部材は、後述する操作ハンドルの操作に伴って拡開・閉塞し、腹腔内での生体組織の剥離や把持といった各種処置を行うための部分である。第一顎部材及び第二顎部材の形状や大きさ等は特に限定されるものではなく、例えば、剥離、把持、持針、剪刀等の内視鏡用鉗子の用途に応じて設定することができる。
【0022】
ロッドは、挿入部の軸方向に自在に移動できるように、挿入部に内挿される。ロッドの基端は、後述するハンドル部に設けられた操作ハンドルに接続され、先端には、第一開閉リンク及び第二開閉リンクを介して第一顎部材及び第二顎部材が接続される。
【0023】
第一開閉リンク及び第二開閉リンクは、それぞれロッドの軸方向への移動量に応じて第一顎部材及び第二顎部材を開閉作動させるものである。第一開閉リンク及び第二開閉リンクの各々の一端は、ロッドの先端に並列にそれぞれ独立して軸支される。また、各々の他端は、第一顎部材及び第二顎部材を拡開若しくは閉塞させていくときに、第一開閉リンクと第二開閉リンクとが交叉した状態となるように、第一顎部材及び第二顎部材に軸支される。
【0024】
このように第一開閉リンク及び第二開閉リンクを配置することで、各顎部材が拡開・閉塞いずれの状態にあるときでも、各顎部材の基端及び各開閉リンクが挿入部の幅方向に突出することがないという本発明に特有の作用効果を奏するのである。
【0025】
ハンドル部は、内視鏡用鉗子を使用する際の把持部分として機能するものである。このハンドル部には、第一顎部材及び第二顎部材の開閉操作を担う操作ハンドルが配設されている。操作ハンドルには、ロッドの基端が接続されており、この操作ハンドルの操作に伴って、ロッドを軸方向に移動させることができる。ハンドル部及び操作ハンドルの形状、機構等は特に限定されるものではなく、既存の内視鏡鉗子のハンドル部及び操作ハンドルの構成を採用することができる。また、操作時に、ロッドに必要以上の力が加えないように操作量を一定範囲に規制する操作量規制手段を設けてもよい。
【0026】
尚、上述した挿入部とハンドル部とは、一体に形成してもよいし、着脱自在に形成してもよい。また、挿入部とハンドル部との間には、挿入部をハンドル部に対して回動自在にする回動手段を設けてもよい。さらに、本発明に係る内視鏡用鉗子を構成する各部材は、耐腐食性、耐薬品性を備えるとともに、加熱滅菌に耐え得るだけの温度耐久性を備える材質(例えば、ステンレス等の金属)から形成することが好ましい。
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
図1には、実施例1に係る内視鏡用鉗子100が示されている。挿入部10は、中空の金属パイプからなり、その先端に第一顎部材11及び第二顎部材12が配設されるとともに、ロッド18が内挿されている。ロッド18は、挿入部10の軸方向(図1に示す矢印A及びB方向)に沿って自在できるように配設されており、その基端はハンドル部20の操作ハンドル21に接続されている。操作ハンドル21は、挿入部10の軸方向に沿って前後方向(図1に示す矢印C及びD方向)に回動自在に配設されており、この操作ハンドルを回動させることによって、ロッド18を移動させることができる。
【0028】
図2には、挿入部10の先端を図1の矢印X方向から見た図が示されている。挿入部10の先端には、第一顎部材11と第二顎部材12とが、支持ピン13により開閉自在に軸支されている。そして、第一顎部材11及び第二顎部材12と、ロッド18の先端との間には、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15が配設されている。第一開閉リンク14の一端14a及び第二開閉リンク15の一端15aは、それぞれロッド18の先端にリンクピン16によって軸支されている。一方、第一開閉リンク14の他端14bは、リンクピン17によって第一顎部材11の基端に軸支され、第二開閉リンク15の他端15bは、リンクピン17によって第二顎部材12の基端に軸支されている。
【0029】
図3には、第一顎部材11及び第二顎部材12を閉塞状態から拡開状態に至るまでの一連の動作を説明した図が示されている。第一開閉リンク14の一端14a及び第二開閉リンク15の一端15aは、ロッド18の先端の表裏にそれぞれ配置されるとともに、ロッド18の先端の幅方向に並列に配置されている。
【0030】
図3(a)には、第一顎部材11と第二顎部材12とが完全に閉塞した状態が示されている。このとき、ロッド18は挿入部10の基端側に寄った位置にあり、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15は、それぞれの他端14bと15bとが重なり合って略V字をなしている。そして、第一顎部材11と第二顎部材12の拡開は、図3(b)に示すように、ロッド18を挿入部10の先端方向(図3(b)に示す矢印E方向)に移動させることによって行われる。すなわち、操作ハンドル21を後方(図1に示す矢印C方向)に引くことによって拡開操作が行われるのである。
【0031】
ロッド18を挿入部10の先端方向に移動させていくと、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15は、それぞれリンクピン16を支点として内側方向(図3(b)の矢印F及びG方向)に回動する。すると、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とは交叉した状態となって、第一顎部材11及び第二顎部材12は、支持ピン13を支点にしてそれぞれ拡開する方向へと回動させられるのである。そして、ロッド18をさらに移動させていくと、図3(c)に示すように第一顎部材11と第二顎部材12とが完全に拡開した状態となる。このようにして第一顎部材11及び第二顎部材12を拡開させるとき、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15は、挿入部10の幅長さの範囲内で回動するため、挿入部10から外方へ突出することがない。一方、第一顎部材11及び第二顎部材12を閉塞させるには、拡開させるときと逆の操作、すなわち、操作ハンドル21を元の位置に戻してロッド18を挿入部10の基端方向へと移動させればよい。
【実施例2】
【0032】
図4には、実施例2に係る内視鏡用鉗子100が示されている。実施例2に係る内視鏡鉗子100は、実施例1と基本構成は共通するが、第一顎部材11及び第二顎部材12を開閉させる際のロッド18と、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15の動作が異なる。すなわち、実施例1においては、第一顎部材11及び第二顎部材12を拡開操作は、ロッド18を挿入部10の先端方向へと移動させることよって行われるが、実施例2では、ロッド18を挿入部10の基端方向(図4に示す矢印H方向)へと移動させることよって行われる。よって、ここでは、実施例1と相違するロッド18と第一開閉リンク11及び第二開閉リンク12の動作に関する構成について詳述し、実施例1と共通するその他の構成については説明を省略する。
【0033】
実施例2に係る内視鏡用鉗子100は、挿入部10とハンドル部20とを自在に着脱できるように形成されるとともに、挿入部10とハンドル部20との間に、挿入部10をハンドル部20に対して回動できるようにする回動ノブ22を備えている。
【0034】
図5には、ハンドル部20の断面図が示されている。ハンドル部20には、操作ハンドル21が前後方向(図5(b)に示す矢印I及びJ方向)に回動自在に配設されている。そして、この操作ハンドル21とロッド18の基端との間には、リンク23が回動自在に配設されている。このリンク23が、操作ハンドル21を後方(図5(b)に示す矢印I方向)に回動させたときに、ロッド18が挿入部10の基端側へと移動させるのである。
【0035】
また、操作ハンドル21には、ハンドル部20に設けられたネジ25と係止する規制溝24が設けられている。この規制溝24とネジ25は、操作量規制手段を構成し、操作ハンドル21の回動範囲を規制溝23の長さ範囲に制限する。これにより、操作ハンドルを回動させてロッド18を移動させるときに、ロッド18に必要以上の操作力が加わらないようにしている。
【0036】
図6には、第一顎部材11及び第二顎部材12を閉塞状態から拡開状態に至るまでの一連の動作を説明した図が示されている。第一開閉リンク14の一端14aと第二開閉リンク15の一端15aとは、ロッド18の先端の表裏にそれぞれ配置されるとともに、ロッド18の先端の幅方向に並列に配置されている。
【0037】
図6(a)には、第一顎部材11と第二顎部材12とが完全に閉塞した状態が示されている。このとき、ロッド18は挿入部10の先端側に位置し、第一開閉リンク14及び第二開閉リンクは、交叉した状態となっている。そして、第一顎部材11と第二顎部材の拡開は、図6(b)に示すように、ロッド18を挿入部10の基端方向(図6(b)に示す矢印方向)に移動させることによって行われる。すなわち、操作ハンドル21を後方(図4に示す矢印I方向)に回動させることよって第一顎部材11及び第二顎部材の拡開が開始するのである。
【0038】
そして、ロッド18を挿入部10の基端方向(図6(b)の矢印K方向)に移動させていくと、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15は、それぞれリンクピン16を支点として外側方向(図6(b)の矢印L及びM方向)に回動していく。すると、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とは交叉した状態となって、第一顎部材11及び第二顎部材12は、支持ピン13を支点にしてそれぞれ拡開する方向へと回動させられるのである。そして、操作ハンドル21を操作してロッド18をさらに移動させていくと、図6(c)に示すように第一顎部材11と第二顎部材12とが完全に拡開した状態となる。このとき、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とは、それぞれの他端14bと15bとが重なり合った状態となって略V字をなす。このようにして第一顎部材11及び第二顎部材12を拡開させるとき、第一開閉リンク14及び第二開閉リンク15は、挿入部10の幅長さの範囲内で回動するため、挿入部10から外方へ突出することがない。一方、第一顎部材11及び第二顎部材12を閉塞させるには、拡開させるときと逆の操作、すなわち、操作ハンドル21を元の位置に戻してロッド18を挿入部10の先端側へと移動させればよい。
【0039】
上記実施例1及び実施例2に係る内視鏡用鉗子100は、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とを、第一顎部材11と第二顎部材12を拡開させるときにリンクピン16を支点として挿入部10の幅長さの範囲内で回動するように配置したので、第一開閉リンク14と第二開閉リンク15とを挿入部から外方に突出させることなく、第一顎部材11及び第二顎部材12の拡開させることができる。これにより、施術の際に、挿入部10の先端近傍が処置部の周囲の組織に引っ掛かることがなくなるので、スムーズに施術を行うことが可能となる。
【0040】
尚、上記実施例1及び実施例2は、本発明の好適な実施形態を示すに過ぎず、本発明の技術的範囲は、本実施例そのものに何ら限定されるものではなく、本発明の構成を備える範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係る内視鏡用鉗子の側面図である。
【図2】実施例1に係る内視鏡用鉗子の挿入部の先端部分を図1の矢印X方向から見た図である。
【図3】実施例1に係る第一顎部材及び第二顎部材の開閉動作を説明する図である。
【図4】実施例2に係る内視鏡用鉗子の側面図である。
【図5】実施例2に係る内視鏡用鉗子のハンドル部の断面図である。
【図6】実施例2に係る第一顎部材及び第二顎部材の開閉動作を説明する図である
【図7】従来の内視鏡用鉗子の一対の顎部材の開閉動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
10 挿入部
11 第一顎部材
12 第二顎部材
14 第一開閉リンク
15 第二開閉リンク
18 ロッド
20 ハンドル部
21 操作ハンドル
24 規制溝(操作量規制手段)
25 ネジ(操作量規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される挿入部と、
該挿入部の先端に開閉可能に軸支された第一顎部材及び第二顎部材と、
前記挿入部の基端に配設され、操作ハンドルを備えるハンドル部と、
前記挿入部に内挿されるとともに、一端が前記操作ハンドルに接続され、前記操作ハンドルの操作量に応じて軸方向に移動するロッドと、
前記第一顎部材と前記第二顎部材とをそれぞれ前記ロッドに連結するとともに、前記ロッドの移動に伴って前記第一顎部材と前記第二顎部材とをそれぞれ開閉駆動させる第一開閉リンクと第二開閉リンクとを備える内視鏡用鉗子であって、
前記第一開閉リンク及び前記第二開閉リンクの一端は、前記ロッドの幅方向に並列にそれぞれ軸支されるとともに、
それぞれの他端は、前記ロッドを前記挿入部の前記先端側に移動させたとき、若しくは前記挿入部の前記基端側に移動させたときに、前記第一開閉リンクと前記第二開閉リンクとが交叉しながら前記第一顎部材と前記第二顎部材とを開閉させるように、前記第一顎部材と前記第二顎部材とに軸支されていることを特徴とする内視鏡用鉗子。
【請求項2】
ロッドを挿入部の先端側に移動させたときに、第一顎部材と第二顎部材とが拡開することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用鉗子。
【請求項3】
ロッドを挿入部の基端側に移動させたときに、第一顎部材と第二顎部材とが拡開することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用鉗子。
【請求項4】
ハンドル部に、操作ハンドルの操作量を規制する操作量規制手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内視鏡用鉗子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−307270(P2008−307270A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158918(P2007−158918)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】