説明

内視鏡装置の制御方法及び内視鏡装置

【課題】内視鏡により特殊光観察を行う際に、観察対象や観察位置等の観察条件を変化させても、常に適正な輝度レベルの狭帯域光による観察画像を生成し、狭帯域光により得られる生体情報を明瞭に観察できるようにする。
【解決手段】白色照明光を出射する第1の光源部45と、狭帯域光を出射する第2の光源部47と、複数色の検出画素を有する撮像素子21を有し被観察領域を撮像する撮像部と、を具備する内視鏡装置100において、被観察領域からの白色照明光による戻り光成分と狭帯域光による戻り光成分とを共に含む撮像画像信号を撮像部から出力させる。この撮像画像信号から、狭帯域光による戻り光成分を選択的に抽出し、この抽出した狭帯域光による戻り光成分の輝度レベルを第2の光源部47の出射光量を増減制御して変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置の制御方法及び内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の狭い波長帯の狭帯域光を生体の粘膜組織に照射し、生体組織の所望の深さの組織情報を得る、所謂、特殊光観察を行える内視鏡装置が活用されている(特許文献1参照)。この種の内視鏡装置は、例えば粘膜層或いは粘膜下層に発生する新生血管の微細構造、病変部の強調等、通常の観察像では得られない生体情報を簡単に可視化できる。例えば、観察対象が癌病変部である場合、青色の狭帯域光を粘膜組織に照射すると組織表層の微細血管や微細構造の状態がより詳細に観察できるため、病変部をより正確に診断することができる。
【0003】
しかし、特殊光観察では、狭帯域光を生体組織に照射したときの撮像画像により観察するため、近景での観察時に狭帯域光の照度を適正に調整しても、画角の広い遠景の観察時には表層血管を観察するに十分な照度が得られない。そのため、観察対象や観察位置等の観察条件を変更する度、撮像部や表示部のゲイン調整を行って適正な輝度レベルにして観察するようにしている。また、上記特許文献1の内視鏡装置においては、白色光源からの光をカラーフィルタによって時分割で切り替え、異なる波長帯の光(R光,G光,B光)を面順次に発光させて撮像している。このため、フルカラーの観察画像をリアルタイムで得るためには、複数フレーム(Rフレーム,Gフレーム,Bフレーム)の撮像画像を合成する必要があり、観察画像のフレームレートを上げにくい構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−34893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内視鏡により特殊光観察を行う際に、観察対象や観察位置等の観察条件を変化させても、常に適正な輝度レベルの狭帯域光による観察画像を生成し、狭帯域光により得られる生体情報を明瞭に観察することができる内視鏡装置の制御方法及び内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
(1) 白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子により被観察領域を撮像する撮像部と、
を具備する内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記被観察領域からの前記白色照明光による戻り光成分と前記狭帯域光による戻り光成分とを共に含む撮像画像信号を前記撮像部から出力させ、
前記撮像画像信号から、前記狭帯域光による戻り光成分を選択的に抽出し、該抽出した狭帯域光による戻り光成分の輝度レベルを前記第2の光源部の出射光量を増減制御して変更する内視鏡装置の照明光量制御方法。
(2) 白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子を有して撮像画像信号を出力する撮像部と、
を具備する内視鏡装置であって、
(1)記載の内視鏡装置の照明光量制御方法に基づいて、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する制御手段を備えた内視鏡装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る内視鏡装置の制御方法によれば、内視鏡により特殊光観察を行う際に、観察対象や観察位置等の観察条件を変化させても、常に適正な輝度レベルの狭帯域光による観察画像を生成し、狭帯域光により得られる生体情報を明瞭に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の概念的なブロック構成図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の一例としての外観図である。
【図3】紫色レーザ光源からの紫色レーザ光と、青色レーザ光源からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体により波長変換された発光スペクトルとを示すグラフである。
【図4】生体組織の粘膜表層の血管を模式的に表した説明図である。
【図5】内視鏡装置による観察画像の概略的な表示例で、白色光観察画像と狭帯域光観察画像を示す説明図である。
【図6】白色照明用光源と特殊光光源により照明して撮像したときの画像信号の輝度レベルを制御する手順を示すフローチャートである。
【図7】図7(A)は撮像した画像データの例を示す説明図、図7(B)は画像エリアに分割した様子を示す説明図、図7(C)は画面位置に応じた重み付け処理の説明図、図7(D)は重み付け処理した補正画像データを示す説明図である。
【図8】図8(A)は画像データから抽出した特徴画像エリアを示す説明図、図8(B)は強調画像データを示す説明図、図8(C)は輝度レベルを調整した後の撮像画像を示す説明図、図8(D)は輝度目標値に調整された画像を示す説明図である。
【図9】白色照明用光源と特殊光光源及び蛍光体とによる照明光の発光スペクトルの他の例を示すグラフである。
【図10】図6のS6とS7の代替え手順を示すフローチャートである。
【図11】白色光源を変更した他の内視鏡装置の概略的な構成図である。
【図12】白色光源とレーザ光源を用いた他の内視鏡装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の概念的なブロック構成図、図2は図1に示す内視鏡装置の一例としての外観図である。
図1、図2に示すように、内視鏡装置100は、内視鏡11と、この内視鏡11が接続される制御装置13と、制御装置13に接続され画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17とを有する。内視鏡11は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、複数色の検出画素を有して被観察領域を撮像する撮像素子21(図1参照)を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。
【0010】
内視鏡11は、内視鏡挿入部19と、内視鏡挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23(図2参照)と、内視鏡11を制御装置13に着脱自在に接続するコネクタ部25A,25Bを備える。なお、図示はしないが、操作部23及び内視鏡挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
【0011】
内視鏡挿入部19は、可撓性を持つ軟性部31と、湾曲部33と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)35から構成される。内視鏡先端部35には、図1に示すように、被観察領域へ光を照射する照射口37A,37Bと、被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子21が配置されている。また、撮像素子21の受光面には対物レンズユニット39が配置される。CCD型イメージセンサを用いる場合には、グローバルシャッタ方式であるために、画像歪みの少ない低ノイズの撮像画像が得られる。
【0012】
湾曲部33は、軟性部31と先端部35との間に設けられ、図2に示す操作部23に配置されたアングルノブ22の回動操作により湾曲自在にされている。この湾曲部33は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部35の照射口37A,37B及び撮像素子21の観察方向を、所望の観察部位に向けることができる。また、図示は省略するが、内視鏡挿入部19の照射口37A,37Bには、カバーガラスやレンズが配置される。
【0013】
制御装置13は、内視鏡先端部35の照射口37A,37Bに供給する照明光を発生する光源装置41と、撮像素子21からの撮像画像信号を画像処理するプロセッサ43とを備え、コネクタ部25A,25Bを介して内視鏡11に接続される。また、プロセッサ43には、前述の表示部15と入力部17が接続されている。プロセッサ43は、内視鏡11の操作部23や入力部17からの指示に基づいて、内視鏡11から伝送されてくる撮像画像信号を画像処理し、表示用画像を生成して表示部15へ供給する。
【0014】
光源装置41は、中心波長445nmの青色レーザ光源(白色照明用光源)45と、中心波長405nmの紫色レーザ光源(特殊光光源)47とを発光源として備えている。これら各光源45,47の半導体発光素子からの発光は、光源制御部49により個別に制御されており、青色レーザ光源45の出射光と、紫色レーザ光源47の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0015】
青色レーザ光源45及び紫色レーザ光源47は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
【0016】
これら各光源45,47から出射されるレーザ光は、集光レンズ(図示略)によりそれぞれ光ファイバに入力され、合波器であるコンバイナ51と、分波器であるカプラ53を介してコネクタ部25Aに伝送される。なお、これに限らず、コンバイナ51とカプラ53を用いずに各光源45,47からのレーザ光を直接コネクタ部25Aに送出する構成であってもよい。
【0017】
中心波長445nmの青色レーザ光、及び中心波長405nmの紫色レーザ光が合波され、コネクタ部25Aまで伝送されたレーザ光は、光ファイバ55A,55Bによって、それぞれ内視鏡11の内視鏡先端部35まで伝搬される。そして、青色レーザ光は、内視鏡先端部35の光ファイバ55A,55Bの光出射端に配置された波長変換部材である蛍光体57を励起して蛍光を発光させる。また、一部の青色レーザ光は、そのまま蛍光体57を透過する。紫色レーザ光は、蛍光体57を励起させることなく透過して、狭帯域波長の照明光となる。
【0018】
光ファイバ55A,55Bは、マルチモードファイバであり、一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用できる。
【0019】
蛍光体57は、青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起光と、蛍光体57により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色(疑似白色)の照明光となる。本構成例のように、半導体発光素子を励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0020】
上記の蛍光体57は、レーザ光の可干渉性により生じるスペックルに起因して、撮像の障害となるノイズの重畳や、動画像表示を行う際のちらつきの発生を防止できる。また、蛍光体57は、蛍光体を構成する蛍光物質と、充填剤となる固定・固化用樹脂との屈折率差を考慮して、蛍光物質そのものと充填剤に対する粒径を、赤外域の光に対して吸収が小さく、かつ散乱が大きい材料で構成することが好ましい。これにより、赤色や赤外域の光に対して光強度を落とすことなく散乱効果が高められ、光学的損失が小さくなる。
【0021】
図3は、紫色レーザ光源47からの紫色レーザ光と、青色レーザ光源45からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体57により波長変換された発光スペクトルとを示すグラフである。紫色レーザ光は、中心波長405nmの輝線(プロファイルA)で表される。また、青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体57からの励起発光光は、概ね450nm〜700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる。この励起発光光と青色レーザ光によるプロファイルBによって、前述した白色光が形成される。
【0022】
ここで、本明細書でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、基準色であるR(赤),G(緑),B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含むものとする。
【0023】
この内視鏡装置100では、プロファイルAとプロファイルBとの発光強度を光源制御部49により相対的に増減制御して、任意の輝度バランスの照明光を生成することもできる。
【0024】
再び図1に戻り説明する。上記のように青色レーザ光と蛍光体57からの励起発光光による白色光、及び紫色レーザ光による狭帯域光からなる照明光は、内視鏡11の先端部35から被検体の被観察領域に向けて照射される。そして、照明光が照射された被観察領域の様子を対物レンズユニット39により撮像素子21の受光面上に結像させて撮像する。
【0025】
撮像後に撮像素子21から出力される撮像画像信号は、スコープケーブル63を通じてA/D変換器65に伝送されてデジタル信号に変換され、コネクタ部25bを介してプロセッサ43の画像処理部67に入力される。画像処理部67は、詳細は後述するが、入力されたデジタル画像信号を画像データに変換して、画像解析部69、光量制御信号生成部71と協働して所望の出力用画像情報と光源制御部49への制御信号を制御部73に出力する。
【0026】
制御部73に入力された出力用画像情報は、内視鏡観察画像として表示部15に表示され、必要に応じて、メモリやストレージ装置からなる記憶部75に記憶される。また、内視鏡11には詳細を後述するモード変更ボタン77が配置され、モード変更ボタン77からの切り替え信号が制御部73に入力されるようになっている。
【0027】
図4に生体組織の粘膜表層の血管を模式的に表した説明図を示した。生体組織の粘膜表層は、粘膜深層の血管B1から樹脂状血管網等の毛細血管B2が粘膜表層までの間に形成され、生体組織の病変はその毛細血管B2等の微細構造に現れることが報告されている。そこで、内視鏡診察においては、青色乃至紫色の可視短波長の狭帯域光を用いて、粘膜表層の毛細血管を画像強調して観察し、微小病変の早期発見や、病変範囲の診断が試みられている。
【0028】
生体組織に照明光が入射されると、入射光は生体組織内を拡散的に伝播するが、生体組織の吸収・散乱特性は波長依存性を有しており、短波長ほど散乱特性が強くなる傾向がある。つまり、照明光の波長によって光の深達度が変化して、照明光が400nm付近の波長域λaでは粘膜表層の毛細血管からの血管情報が得られ、波長500nm付近の波長域λbでは、更に深層の血管を含む血管情報が得られるようになる。そのため、生体組織の血管観察には、中心波長360〜800nm、好ましくは365〜515nmの光源が用いられ、特に表層血管の観察には、中心波長360〜470nm、好ましくは360〜450nmの光源が用いられる。
【0029】
図5に内視鏡装置による観察画像の概略的な表示例を示した。照明光を白色光とした場合の白色光観察画像では、比較的粘膜深層の血管像が得られるとともに画像全体の輝度を高めやすい。一方、可視短波長成分を多く含む狭帯域光を照明光とした場合の狭帯域光観察画像では、粘膜表層の微細な毛細血管が鮮明に見えるようになる。
【0030】
これらの白色光による観察画像と狭帯域光による観察画像とを画像合成すると、画像全体で十分な輝度を確保でき、しかも、生体組織の粘膜表層の微細血管が強調された患部の診断がしやすい観察画像が得られる。そこで、本構成の内視鏡装置100においては、内視鏡先端部35から、図3に示すプロファイルAの狭帯域光とプロファイルBの白色光とを、それぞれ独立して出射光量を連続的に制御可能な構成とし、撮像素子21による撮像フレームの1フレームに双方の照明光による光成分が共に含まれるように光量制御している。つまり、白色光と狭帯域光とを任意の出射光量比で共に照射した被観察領域を撮像した撮像画像が観察画像となる。
【0031】
白色光と狭帯域光とを独立して光量制御することで、狭帯域光による撮像情報のみを観察画像中で強調、又はぼかすことができ、狭帯域光による観察画像が白色光による観察画像によって隠されることなく、双方の観察画像が適切に合成された観察画像を生成できる。これにより、白色照明で観察部位の周囲全体を明るく照明しつつ、狭帯域光により表層血管を強調して、微細血管構造の観察を容易に行える、内視鏡診断に適した観察画像を取得できる。
【0032】
次に、上記のように狭帯域光に白色光を加えた照明光で撮像する場合に、撮像画像全体の平均輝度、及び狭帯域光による像と白色光による像との混合バランスを適正に保つため、白色照明用光源である青色レーザ光源45と特殊光光源である紫色レーザ光源47の出射光量比を制御する手順を図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
まず、図1に示す青色レーザ光源45と紫色レーザ光源47を共に点灯させ、被観察領域に狭帯域光と白色光を照射した状態で、撮像素子21により被観察領域を撮像する。これにより得られる撮像画像信号を画像処理部67に入力して、図7(A)に示すような所定の階調表現幅の各撮像画像(R,G,B)を取得する(S1)。これらの各撮像画像(R,G,B)は、同じ撮像タイミングで得た画像情報となる。
【0034】
撮像素子21が原色系の撮像素子である場合には、検出色であるR,G,Bの検出レベルを基準色(R,G,B)の輝度値として扱うが、補色系の撮像素子である場合には、検出色となるC:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロの3色、又はC,M,Y,Gの4色の検出レベルを演算処理して、R,G,Bの基準色の輝度値に変換する。
【0035】
なお、CMY又はCMYGからRGBへの変換は、画像処理部67により、所定の演算式、或いはテーブルに基づいて行われる。即ち、A/D変換後の撮像画像(C,M,Y)又は(C,M,Y,G)を、各基準色の撮像画像(R,G,B)の信号に変換する。これら各基準色の撮像画像(R,G,B)のうち、最短波長の青色成分には、中心波長405nmの狭帯域光により得られる表層血管B2の情報(図4参照)が含まれる。
【0036】
画像処理部67は、各基準色の撮像画像(R,G,B)を、図7(B)に示すように、任意の数の画像エリアMijに分割する(S2)。図示例では各撮像画像(R,G,B)に共通する4×4の合計16の画像エリア(Mij:i=0〜3、j=0〜3)としている。なお、このときの画像エリアの分割数は任意であってよい。
【0037】
次に、画像解析部69は、これら分割された各撮像画像(R,G,B)に対して、画像エリアMij毎に重み付け処理して補正画像データ(Rc,Gc,Bc)を求める(S3)。重み付け処理とは、図7(C)に示すように撮像画像(R,G,B)の各画面中央の画像エリアPAを各画面周囲の画像エリアPBより強調する処理で、特に注視される画面中央に映出された観察対象を強調する処理である。各撮像画像の輝度値は、補正マトリクスによるマトリクス演算によって補正される。撮像画像(R,G,B)の画面中央を重み付け処理した補正画像データ(Rc,Gc,Bc)は、図7(D)に示すように、主要な観察対象とした組織表層の毛細血管B2の情報が強調される。
【0038】
次に、画像解析部69は、補正画像データ(Rc,Gc,Bc)の画像全体に対する明るさを表す輝度基準値Aを算出する(S4)。輝度基準値Aは、例えば(1)式のように、補正画像データ(Rc,Gc,Bc)の各画素の輝度値を全画素(N画素)に対して平均することで得られる指標である。
【0039】
【数1】

・・・(1)
【0040】
そして、制御部73は、補正画像データ(Rc,Gc,Bc)から求めた輝度基準値Aが予め定めた輝度目標値TL1に近づくように、白色照明光の光量を変更する(S5)。即ち、画像処理部67は、画像解析部69が求めた輝度基準値Aと、予め記憶部75に記憶されている輝度目標値TLとを比較して、輝度基準値Aが輝度目標値TLに近づくように、光量制御信号生成部71に青色レーザ光源47の出射光量を増減制御する制御信号を生成させる。
【0041】
生成した制御信号は、制御部73を通じて光源制御部49に送られて、光源制御部49は入力された制御信号により青色レーザ光源47の出射光量を制御する。これにより、白色照明光の光量は、輝度基準値Aが輝度目標値Iより小さい場合に増加制御され、輝度基準値Aが輝度目標値Iを超える場合には減少制御される。
【0042】
次に、画像処理部67は、前述のS1で取得した撮像画像(G,B)に対して、分割した各画像エリアMij内の各画素の輝度積算値GSij,BSijを求める(S6)。つまり、撮像画像(G,B)に対する合計16個の画像エリアMijのそれぞれに対して、輝度積算値GSij,BSijを求める。
【0043】
そして、互いに同じ画像位置の関係にある画像エリアMij同士で、輝度積算値GSij,BSijの比である輝度比αを(2)式により求め、輝度比αが予め定めた閾値である基準輝度比αcより大きい画像エリアを特徴画像エリアMC(k)として抽出する(S7)。
【0044】
【数2】

・・・(2)
【0045】
図8(A)に撮像画像(B,G)から抽出した特徴画像エリアMC(k)を示した(例示的に3つのエリア:k=1,2,3)。
【0046】
次に、特に中心波長405nmの狭帯域光により強調された組織表層の毛細血管B2の情報を多く含む撮像画像(B)に対して、抽出した特徴画像エリアMC(k)の各画素を重み付け処理により強調して、図8(B)に示すように青色の強調画像データ(Be)を求める(S8)。強調画像データ(Be)は、特徴画像エリアMC(k)のみ強調された画像であり、図示例では、特に毛細血管B2が映出された部分の画像が他の画像エリアよりも輝度が高くなるように強調される。
【0047】
そして、強調画像データ(Be)の画面全体に対する輝度積算値BeSを(3)式により求める(S9)。
【0048】
【数3】

・・・(3)
【0049】
ここで、制御部73は、得られた輝度積算値BeSが、予め定めた特徴画像輝度目標値TLcに近づくように、紫色レーザ光源47の出射光量を増減制御する制御信号を光量制御信号生成部71で生成し、この制御信号を制御部73を通じて光源制御部49に入力する。すると、光源制御部49は、輝度積算値BeSが特徴画像輝度目標値TLcより低い場合に、紫色レーザ光源47の出射光量を増加制御し、輝度積算値BeSが特徴画像輝度目標値TLcを超える場合に、紫色レーザ光源47の出射光量を減少制御する(S10)。
【0050】
上記の紫色レーザ光源47の出射光量を調整した後、再度、撮像素子21により撮像画像信号を取得して各撮像画像(Ra,Ga,Ba)を生成する(S11)。そして、撮像画像(Ra,Ga,Ba)の輝度基準値Aを前述の画像エリア毎の重み付け処理と(1)式により求める。このときの撮像画像(Ra,Ga,Ba)の例を図8(C)に示した。出射光量の調整の結果、撮像画像の輝度レベルが最大階調表現幅を超える等、輝度基準値Aが輝度目標値TLを超える場合には、これを補正する必要がある。そこで、基準輝度値Aが輝度目標値TLを超えた場合、青色レーザ光源45と紫色レーザ光源47の出射光量を同じ比率で下げ、輝度目標値TLになるように調整する(S12)。
【0051】
これにより、図8(D)に示すように、画面全体にわたり、白色光による画像情報と、所望の輝度レベルに制御された狭帯域光による画像情報とを、共に適正な輝度レベルとした観察画像が得られる。
【0052】
以上のように、狭帯域光と白色光とを同時に出射させて撮像することで、白色光により観察画像の輝度を確保しながら、狭帯域光による表層血管等の強調表示が可能となる。つまり、通常観察用の白色照明用光源と、特殊光観察用の特殊光光源とを共に光出射させて撮像し、得られる観察画像を、狭帯域光で観察したい対象(表層血管・腺管等)を最適な輝度レベルとしながら、観察画像の全体にわたって輝度値が飽和しない、即ち、最大階調表現幅を超えない画像にできる。これにより、観察対象を常に適正な輝度レベルで映出でき、特に狭帯域光により強調される観察部位も白色光によって隠れることなく、明瞭に映出させることができる。よって、病巣部の早期発見に寄与できる内視鏡観察画像を、術者の調整操作を伴うことなく、簡単に得ることができる。
【0053】
そして、この観察画像によれば、白色照明光で観察部位全体の構造を見ながら、狭帯域光により強調される組織表層の詳細な構造をリアルタイムで同時に観察できる。そのため、高フレームレートで観察対象の動きに対する追従性を高め、例えば、微細血管の密度が正常部と比較して増えている癌病変部に対して、表層の微細血管や微細構造の状態を、病変部位周囲と対比しながら迅速、かつ的確に診断できる。
【0054】
なお、青色レーザ光源45と紫色レーザ光源47は、それぞれ同時点灯させて撮像する以外にも、撮像素子の1フレーム内の受光期間内で交互に点灯させることであってもよい。その場合、省電力化や発熱の抑制に寄与できる。
【0055】
また、上記の撮像画像信号の輝度レベル制御は、モード変更ボタン77(図1参照)の押下によりON/OFFでき、ONの場合は特殊光観察モードとなって、前述の白色光照明と狭帯域光との良好な同時観察が可能となり、OFFの場合は通常観察モードとなり、紫色レーザ光源47の出射光量を、青色レーザ光源45の出射光量と同じ比率で変更する制御モードにできる。このように、特殊光観察モードと、通常観察モードとを選択的に切り替え自在にすることで、内視鏡の使い勝手を向上できる。
【0056】
更に、狭帯域光による観察対象は、生体組織表層の毛細血管や粘膜微細模様の他、生体組織からの自家蛍光、薬剤蛍光であってもよく、被観察領域からの戻り光の強度を診断に適した状態に適宜変更することができる。
【0057】
図9に白色照明用光源と特殊光光源及び蛍光体とによる照明光の発光スペクトルの他の例を示した。同図に示すように、蛍光体の種類によっては、波長445nmの青色レーザ光によって蛍光体が励起されることに加えて、波長405nmの紫色レーザ光によっても蛍光体が励起される。この場合、波長405nmの紫色レーザ光の光量を増加させたとき、観察画像全体が青みがかることを、紫色レーザ光による蛍光体の励起光によって緩和でき、白色照明の色バランスの変化を抑制することができる。なお、紫色レーザ光による蛍光体の励起発光量は、青色レーザ光による励起発光量に比較して、数分の一(少なくとも1/3、望ましくは1/5、更に望ましくは1/10以下)に設定する。この程度に紫色レーザ光による蛍光体の励起発光を抑えることで、白色照明の色温度を適正に維持しつつ、特殊光観察が行える。
【0058】
なお、前述の特徴画像エリアMC(k)の抽出方法は、次のようにして行うこともできる。
即ち、上記の特徴画像エリアMC(k)は、撮像画像(B,G)の分割した画像エリア単位でB,Gの輝度値を比較して抽出していたが、各撮像画像の画素単位でB,Gの輝度値を比較すると、より高精度に狭帯域光による強調対象を抽出できる。
具体的には、図6のS6とS7の代替え手順を図10のフローチャートに示すように、中心波長405nmの狭帯域光による反射光の情報を多く含む撮像画像(B)と、撮像画像(G)に対し、同一画素位置における輝度値同士の比率を求めて、該比率が所定比率以上となる特徴画素を抽出する(S6A)。
【0059】
前述の図7(B)に示すように、撮像画像(B)と撮像画像(G)とを、それぞれに共通する複数の画像エリアMijに分割し、抽出された特徴画素の数を画像エリアMij毎にそれぞれ求める。そして、特徴画素の数が予め定めた閾値以上となる画像エリアを特徴画像エリアMC(k)として抽出する(S7A)。
【0060】
このように、同一画素位置の画素単位でB,Gの輝度値を比較することで、狭帯域光により得られる生体情報をより確実に抽出することができる。
【0061】
次に、内視鏡装置の他の構成例について説明する。
図11は白色光源を変更した他の内視鏡装置の概略的な構成図である。同図に示す構成例においては、白色光源81としてハロゲンランプ、キセノンランプ、或いは白色発光ダイオード等のブロードな波長帯の光を出射する光源を用い、光ファイバ束であるライトガイド83を通じて内視鏡11の先端部から白色照明光を照射する。特殊光光源47からの出射光は、前述同様に、コネクタ部25Aを介して、光ファイバ55Bにより内視鏡11の先端部まで伝送される。そして、光ファイバ55Bの光出射端に配置された光偏向・拡散部材85から狭帯域光として供される。なお、光偏向・拡散部材85は、内視鏡11の先端部に配置される光照射窓で代用してもよい。
【0062】
上記構成によれば、ブロードな分光特性を有する演色性の高い白色照明光を簡単な構成で導入でき、しかも、内視鏡先端部の発熱を抑えた構成にできる。また、白色照明光と狭帯域光とを完全に切り分けて照射できるため、狭帯域光を蛍光体を介さずに被観察領域に出射できる。従って、蛍光体からの不要な発光をなくすことができ、光量制御を容易に行える。
【0063】
図12は特殊光光源の構成を変更した他の内視鏡装置の概略的な構成図である。同図においては、白色照明光の光学系を省略して示しており、図1、又は図11に示すいずれの構成を用いることができる。本構成例の特殊光光源は、狭帯域光を出射する紫色レーザ光源47の代わりに、ハロゲンランプ、キセノンランプ、或いは白色発光ダイオード等のブロードな波長帯の光を出射する白色光源47Aと、光学フィルタ111とから狭帯域光を生成する。そして、光学フィルタ111からの透過光は、ライトガイド112の光入射端に集光部材113により導入され、ライトガイド112によって内視鏡11の先端部まで導光される。
【0064】
光学フィルタ111は、入射された白色光から所定の狭帯域波長成分のみ透過させる狭帯域透過フィルタであり、回転フィルタ板115の一部に形成されている。回転フィルタ板115は、モータMによる回転駆動により、白色光の光路途中に配置される光学フィルタ111を変更できる。つまり、複数種の光学フィルタ111,117,119(図示例の3種に限らず任意数であってよい)を切り替えて光路途中に配置することで、異なる種類の狭帯域光を出射させることができる。
【0065】
上記構成によれば、白色光源から任意の狭帯域光を簡単に生成することができる。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0067】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子により被観察領域を撮像する撮像部と、
を具備する内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記被観察領域からの前記白色照明光による戻り光成分と前記狭帯域光による戻り光成分とを共に含む撮像画像信号を前記撮像部から出力させ、
前記撮像画像信号から、前記狭帯域光による戻り光成分を選択的に抽出し、該抽出した狭帯域光による戻り光成分の輝度レベルを前記第2の光源部の出射光量を増減制御して変更する内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の制御方法によれば、第1の光源部による白色照明光と、第2の光源部による狭帯域光とを照明光として観察する際に、観察対象や観察位置等の観察条件を変化させても、常に適正な輝度レベルの狭帯域光による観察情報が得られる。これにより、狭帯域光により得られる情報が、白色照明光によって隠れることなく明瞭に観察されるようになる。
【0068】
(2) (1)の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記第2の光源部から出射される狭帯域光の中心波長が、360〜470nmの範囲に含まれる内視鏡装置の制御方法。
この内視鏡装置の制御方法によれば、第2の光源の中心波長が360〜470nmの範囲であることで、特に生体組織表層の血管や微細構造の状態を表す画像情報が明瞭に検出できる。
【0069】
(3) (1)又は(2)記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像画像信号に基づいて、複数の基準色毎の撮像画像を生成し、
前記生成した複数の撮像画像のうち、前記第2の光源部からの狭帯域光による戻り光成分を最も多く含む第1の撮像画像と、該第1の撮像画像とは異なる基準色の第2の撮像画像とを、それぞれに共通する複数の画像エリアに分割し、
前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像の前記各画像エリアに対して、各画像エリア内における輝度値を積算した輝度積算値をそれぞれ求め、
互いに同じ画像位置の関係にある前記画像エリア同士で、前記第1の撮像画像の輝度積算値と、前記第2の撮像画像の輝度積算値との比率を求め、該比率が予め定めた閾値以上となる画像エリアを特徴画像エリアとして抽出し、
前記抽出した第1の撮像画像の特徴画像エリアに対する輝度レベルを前記戻り光成分の輝度レベルとして、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、撮像画像を分割した複数の画像エリアのうち、互いに異なる基準色同士の輝度積算値の比率が予め定めた閾値以上となる特徴画像エリアに対して、狭帯域光による戻り光成分が所望の輝度レベルになるよう、第2の光源部の出射光量を増減制御する。これにより、狭帯域光により得られる生体情報が多く含まれる画像エリアに対し、この生体情報を特に強調して観察することができる。
【0070】
(4) (1)又は(2)の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像画像信号に基づいて、複数の基準色毎の撮像画像を生成し、
前記第1の撮像画像と該第1の撮像画像とは異なる基準色の第2の撮像画像とを、それぞれに共通する複数の画像エリアに分割し、
互いに同じ画像位置の関係にある画素同士で、前記第1の撮像画像の輝度積算値と、前記第2の撮像画像の輝度積算値との比率を求め、該比率が予め定めた比率以上となる画素を特徴画素として抽出し、
前記抽出した特徴画素の数を前記画像エリア毎にそれぞれ求め、
前記特徴画素の数が予め定めた閾値以上となる画像エリアを特徴画像エリアとして抽出し、
前記抽出した第1撮像画像の特徴画像エリアに対する輝度レベルを前記戻り光成分の輝度レベルとして、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、同じ画素位置において互いに異なる基準色の輝度値同士の比率が予め定めた比率以上となる特徴画素を抽出し、撮像画像を分割した複数の画像エリアのうち、特徴画素の数が予め定めた閾値以上となる特徴画像エリアに対して、狭帯域光の受光成分が所望の輝度レベルになるよう、第2の光源部の出射光量を増減制御する。これにより、狭帯域光により得られる生体情報が多く含まれる画像エリアに対し、この生体情報を特に強調して観察することができる。
【0071】
(5) (3)又は(4)の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記第2の光源部の出射光量を増減制御した後に、前記白色照明光と前記狭帯域光による前記被観察領域からの戻り光成分が、予め定めた輝度目標値を超える場合に、前記第1の光源部と前記第2の光源部の出射光量を共に下げる内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、第2の光源部の出射光量を増減制御した後に、戻り光成分の輝度レベルが輝度目標値を超える場合でも、第1の光源部と第2の光源部による出射光のバランスを変更することなく適正な輝度レベルに補正できる。
【0072】
(6) (3)〜(5)のいずれか1つの内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像素子が検出する各検出色の光成分は、青色、緑色、赤色を含む原色系の光成分であり、
前記第1の撮像画像の基準色を青色、前記第2の撮像画像の基準色を緑色とする内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、原色系の基準色光の検出結果から、青色波長の狭帯域光を照射して得られる生体情報をより明瞭に観察することができる。
【0073】
(7) (3)〜(5)のいずれか1つの内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像素子が検出する各検出色の光成分は、マゼンタ、シアン、イエロを含む補色系の光成分であり、
前記各検出色の光成分を前記青色、緑色、赤色の原色系の光成分に変換し、
前記第1の撮像画像の基準色を前記変換された青色、前記第2の撮像画像の基準色を前記変換された緑色とする内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、補色系の基準色光の検出結果から、青色波長の狭帯域光を照射して得られる生体情報をより明瞭に観察することができる。
【0074】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つの内視鏡装置の照明光量制御方法を実施する特殊光観察モードと、
前記複数の撮像画像に対して、それぞれ同じ比率で輝度レベルを増減制御する通常観察モードと、
を切り替え自在にされた内視鏡装置の照明光量制御方法。
この内視鏡装置の照明光量制御方法によれば、特殊光観察モードと、通常観察モードとが選択的に切り替え自在になることで、内視鏡の使い勝手を向上できる。
【0075】
(9) 白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子を有して撮像画像信号を出力する撮像部と、
を具備する内視鏡装置であって、
(1)から(8)のいずれか1つに記載の内視鏡装置の照明光量制御方法に基づいて、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する制御手段を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、狭帯域光に白色光を加えた照明光を用いて観察する際に、観察対象や観察位置等の観察条件を変化させても、常に適正な輝度レベルの狭帯域光による観察情報が得られる。これにより、狭帯域光により得られる情報が、白色照明光によって隠れることなく明瞭に観察されるようになる。
【0076】
(10) (9)の内視鏡装置であって、
前記第1の光源部が、蛍光体と、該蛍光体の励起光を出射する半導体発光素子と、を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、白色照明光を半導体発光素子からの発光と、該発光による蛍光体からの励起発光光により形成することで、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、しかも白色光の強度を容易に調整できる。また、半導体発光素子を用いることで、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0077】
(11) (9)の内視鏡装置であって、
前記第1の光源部が、キセノン光源又はハロゲン光源からの光を出射するものである内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、キセノン光源やハロゲン光源からブロードなスペクトルの白色光が得られ、演色性を向上できる。
【0078】
(12) (12)〜(14)のいずれか1つの内視鏡装置であって、
前記第2の光源部が、半導体発光素子からなる内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、半導体発光素子を用いることで、高効率、高強度の狭帯域光を出射させることができる。
【0079】
(13) (9)〜(11)のいずれか1つの内視鏡装置であって、 前記第2の光源部が、キセノン光源又はハロゲン光源からの光を、所定の狭帯域波長成分のみ透過させる狭帯域透過フィルタを通して前記狭帯域光を生成し、該生成された狭帯域光を出射する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、狭帯域透過フィルタにより任意の狭帯域光を簡単に生成することができる。
【符号の説明】
【0080】
11 内視鏡
13 制御装置
19 内視鏡挿入部
21 撮像素子
35 先端部
41 光源装置
43 プロセッサ
45 白色照明用光源(第1の光源部)
47 特殊光光源(第2の光源部)
49 光源制御部(制御手段)
57 蛍光体
65 A/D変換器
67 画像処理部(制御手段)
69 画像解析部(制御手段)
71 光量制御信号生成部(制御手段)
73 制御部(制御手段)
75 記憶部(制御手段)
77 モード変更ボタン
81 白色光源
91 CMOSイメージセンサ
93 アンプ
100 内視鏡装置
111,117,119 光学フィルタ(狭帯域透過フィルタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子により被観察領域を撮像する撮像部と、
を具備する内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記被観察領域からの前記白色照明光による戻り光成分と前記狭帯域光による戻り光成分とを共に含む撮像画像信号を前記撮像部から出力させ、
前記撮像画像信号から、前記狭帯域光による戻り光成分を選択的に抽出し、該抽出した狭帯域光による戻り光成分の輝度レベルを前記第2の光源部の出射光量を増減制御して変更する内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記第2の光源部から出射される狭帯域光の中心波長が、360〜470nmの範囲に含まれる内視鏡装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像画像信号に基づいて、複数の基準色毎の撮像画像を生成し、
前記生成した複数の撮像画像のうち、前記第2の光源部からの狭帯域光による戻り光成分を最も多く含む第1の撮像画像と、該第1の撮像画像とは異なる基準色の第2の撮像画像とを、それぞれに共通する複数の画像エリアに分割し、
前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像の前記各画像エリアに対して、各画像エリア内における輝度値を積算した輝度積算値をそれぞれ求め、
互いに同じ画像位置の関係にある前記画像エリア同士で、前記第1の撮像画像の輝度積算値と、前記第2の撮像画像の輝度積算値との比率を求め、該比率が予め定めた閾値以上となる画像エリアを特徴画像エリアとして抽出し、
前記抽出した第1の撮像画像の特徴画像エリアに対する輝度レベルを前記戻り光成分の輝度レベルとして、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像画像信号に基づいて、複数の基準色毎の撮像画像を生成し、
前記第1の撮像画像と該第1の撮像画像とは異なる基準色の第2の撮像画像とを、それぞれに共通する複数の画像エリアに分割し、
互いに同じ画像位置の関係にある画素同士で、前記第1の撮像画像の輝度積算値と、前記第2の撮像画像の輝度積算値との比率を求め、該比率が予め定めた比率以上となる画素を特徴画素として抽出し、
前記抽出した特徴画素の数を前記画像エリア毎にそれぞれ求め、
前記特徴画素の数が予め定めた閾値以上となる画像エリアを特徴画像エリアとして抽出し、
前記抽出した第1撮像画像の特徴画像エリアに対する輝度レベルを前記戻り光成分の輝度レベルとして、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記第2の光源部の出射光量を増減制御した後に、前記白色照明光と前記狭帯域光による前記被観察領域からの戻り光成分が、予め定めた輝度目標値を超える場合に、前記第1の光源部と前記第2の光源部の出射光量を共に下げる内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか1項記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像素子が検出する各検出色の光成分は、青色、緑色、赤色を含む原色系の光成分であり、
前記第1の撮像画像の基準色を青色、前記第2の撮像画像の基準色を緑色とする内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項7】
請求項3〜請求項5のいずれか1項記載の内視鏡装置の照明光量制御方法であって、
前記撮像素子が検出する各検出色の光成分は、マゼンタ、シアン、イエロを含む補色系の光成分であり、
前記各検出色の光成分を前記青色、緑色、赤色の原色系の光成分に変換し、
前記第1の撮像画像の基準色を前記変換された青色、前記第2の撮像画像の基準色を前記変換された緑色とする内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の内視鏡装置の照明光量制御方法を実施する特殊光観察モードと、
前記複数の撮像画像に対して、それぞれ同じ比率で輝度レベルを増減制御する通常観察モードと、
を切り替え自在にされた内視鏡装置の照明光量制御方法。
【請求項9】
白色照明光を出射する第1の光源部と、
前記白色照明光より狭い波長帯域の狭帯域光を出射する第2の光源部と、
複数色の検出画素を有する撮像素子を有して撮像画像信号を出力する撮像部と、
を具備する内視鏡装置であって、
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の内視鏡装置の照明光量制御方法に基づいて、前記第2の光源部の出射光量を増減制御する制御手段を備えた内視鏡装置。
【請求項10】
請求項9記載の内視鏡装置であって、
前記第1の光源部が、蛍光体と、該蛍光体の励起光を出射する半導体発光素子と、を備えた内視鏡装置。
【請求項11】
請求項9記載の内視鏡装置であって、
前記第1の光源部が、キセノン光源又はハロゲン光源からの光を出射するものである内視鏡装置。
【請求項12】
請求項9〜請求項11のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記第2の光源部が、半導体発光素子からなる内視鏡装置。
【請求項13】
請求項9〜請求項11のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、 前記第2の光源部が、キセノン光源又はハロゲン光源からの光を、所定の狭帯域波長成分のみ透過させる狭帯域透過フィルタを通して前記狭帯域光を生成し、該生成された狭帯域光を出射する内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−29703(P2012−29703A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163443(P2010−163443)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】