説明

内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法

【課題】スコープのリファレンス画像の取得を、工場等でない場所において、正確にかつ確実に行うことができる内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法を提供する。
【解決手段】内視鏡装置1は、挿入部7の先端部に撮像素子を有するスコープが着脱可能な本体部4、映像信号処理部22、表示部5及び制御部21を有する。制御部21は、撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を表示部5に表示し、初期設定処理の開始の指示に応じて、先端部の遮光をユーザにさせるためメッセージを表示部5に表示し、先端部の遮光がされた状態で、リファレンス画像を取得し、取得されたリファレンス画像を、メモリ27に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、工業分野及び医療分野において広く利用されている。内視鏡装置には、先端部に撮像素子が設けられた挿入部を有するスコープと、スコープが着脱可能に接続される本体部とから構成されるものがある。
ユーザは、細長な挿入部の先端部を被写体の近傍に接近させ、撮像素子により撮像された画像を、本体部のモニタに表示させることにより、被写体の検査を行うことができる。
【0003】
先端部に設けられる撮像素子は、画素間の感度バラツキ、画素欠陥を有する。そのため、内視鏡装置は、一般に、これらの感度バラツキ等を補正するための補正回路を有している。例えば、特開昭63−117727号公報に提案されているように、本体部に接続されるスコープ内に補正回路を設け、スコープの撮像素子の感度バラツキ等の補正をスコープ内で行う内視鏡装置がある。この提案の内視鏡装置によれば、スコープ内に補正回路を設けたので、スコープの交換時に、本体部における、感度バラツキ等の補正のための作業が不要になる、というメリットがある。
【0004】
通常、補正回路は、補正用のリファレンス画像を記憶する不揮発性メモリを有する。リファレンス画像は、工場においてスコープの製造時に、暗室等の光の無い空間内にスコープを配置して、所定の恒温状態下で撮像素子を駆動して出力された撮像素子の映像信号から生成され、そのデータは補正回路のフラッシュメモリ等に記録される。撮像素子は、温度依存性を有するので、所定の恒温状態下でリファレンス画像を取得しなければならない。
【0005】
内視鏡装置の使用時、スコープにおいて撮像されて得られた映像信号は、リファレンス画像を用いて、画素間の感度バラツキ、画素欠陥などが補正されて、本体部に供給される。その結果、本体部では、画素欠陥などが補正された映像信号に対して信号処理をして、モニタに被写体像を表示する。
【0006】
一方で、内視鏡装置が過酷な作業環境で使用されると、スコープが破損あるいは故障する場合がある。その場合、破損等したスコープは交換されなければならない。
上述した補正回路を有するスコープの場合、交換されて新たに接続されるスコープも補正回路を有しているので、本体部には画素欠陥などが補正された映像信号が供給され、モニタには、感度バラツキ等が補正された画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−117727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した内視鏡装置のスコープは補正回路も有するため、その分だけ、スコープは高価になってしまう。スコープの交換の可能性を考えた場合、スコープが安価であることは、ユーザにとってはコストの面で好ましいので、スコープの細長い挿入部だけを交換できるようにするのが望ましい。
仮に、スコープの細長い挿入部だけを交換できるようにした場合は、本体部側に補正回路が設けられるので、交換の度に、リファレンス画像の取得をしなければならない。
【0009】
しかし、上述したように、リファレンス画像の取得は、工場において、所定の環境下で所定の手順で行われていたものであり、工場以外の場所、例えば、挿入部の交換される現場で、リファレンス画像の取得ができる内視鏡装置は、これまでは無かった。
【0010】
内視鏡装置が使用される現場等で挿入部だけを交換可能なものであっても、リファレンス画像の取得のために内視鏡装置を工場、メーカのサービスステーション等へ搬送し、補正回路へのリファレンス画像の取得を行わなければならない。その場合、内視鏡装置を、工場等へ送ってリファレンス画像を取得し、工場等から現場へ返す、という一連の処理が生じ、その処理の間は、ユーザは、内視鏡装置を使用できない。また、ユーザが内視鏡装置の予備を持つようにすることも考えられるが、コストの面で好ましくない。
【0011】
さらに、リファレンス画像の取得は、本来的に、スコープの製造時に工場等の恒温室において適切に撮像素子に光が入らないような所定の環境あるいは状態で行われるものであり、ユーザが簡単にできるものではない。
【0012】
交換されて新たに接続された挿入部の撮像素子のリファレンス画像の取得と設定が適切に行われないと、モニタに表示される画像は、品質の悪い画像となり、ユーザは、適切な内視鏡検査を行うことができなくなる。
【0013】
そこで、本発明は、スコープのリファレンス画像の取得を、工場等以外の場所において、正確にかつ確実に行うことができる内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、細長の挿入部を有し、該挿入部の先端部に撮像素子を有するスコープが着脱可能な本体部と、前記本体部に設けられ、前記撮像素子を駆動して、前記撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する映像信号処理部と、表示部と、前記本体部に設けられ、前記撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を前記表示部に表示し、前記初期設定処理の開始の指示に応じて、前記先端部の遮光をユーザにさせるため第1のメッセージを前記表示部に表示し、前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得し、取得された前記リファレンス画像を、所定のメモリに格納する制御部と、を有する内視鏡装置を提供することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、内視鏡装置の本体部に着脱可能なスコープの先端部に設けられた撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を表示部に表示し、前記初期設定処理の開始の指示に応じて、前記先端部の遮光をユーザにさせるため第1のメッセージを前記表示部に表示し、前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得し、取得された前記リファレンス画像を、所定のメモリに格納する内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法によれば、スコープのリファレンス画像の取得を、工場等以外の場所において、正確にかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置の外観構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置1の構成を模式的に示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係わる、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係わる、初期設定をするか否かをユーザに指示させるための画面の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わる、スコープ7が本体部4に接続がされていない場合におけるスコープ接続指示メッセージの画面の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係わる、遮光指示メッセージの画面の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係わる、正しく遮光が行われていないことを告知するためのメッセージの画面の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係わる、ユーザに、所定の時間だけ待つことを指示する画面の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係わる、スコープ初期設定の正常終了をユーザに告知するための画面の例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例に係わる、初期設定処理を含むメニュー画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
1.全体構成
まず図1に基づき、本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置の外観構成図である。
図1に示すように、内視鏡装置1は、メインユニット2と、メインユニット2に接続される操作部3とを含んで構成される。メインユニット2と操作部3により、内視鏡装置1の本体部4が構成される。メインユニット2は、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される表示装置としての液晶パネル(LCD)等の表示部5を有する。なお、モニタとしての表示部5は、タッチパネルであってもよい。操作部3は、接続ケーブルであるユニバーサルケーブル6により、メインユニット2と接続される。
【0019】
操作部3には、可撓性の挿入チューブからなるスコープ部(以下、スコープともいう)7が着脱可能に接続される。スコープ7は、接続箇所CPにおいて、操作部3に対して着脱可能となっている。スコープ7のコネクタ部7aが、操作部3のコネクタ部3aに接続されることによって、スコープ7は、本体部4に接続される。本体部4は、挿入部7bの先端部8に撮像素子を有するスコープ7が着脱可能に構成されている。
【0020】
スコープ7の挿入部7bの先端部8には、図示しない撮像素子、例えばCMOSセンサ等、が内蔵され、撮像素子の撮像面側には、レンズ等の撮像光学系が配置されている。先端部8の基端側には、湾曲部9が設けられている。先端部8は、遮光部材である遮光用アダプタ10が取り付け可能になっている。遮光用アダプタ10は、キャップ形状を有し、先端部8を覆うように先端部8に装着可能になっていて、先端部8に遮光用アダプタ10が装着されると、撮像素子は、撮像面に光が進入しない遮光状態になる。
【0021】
なお、本実施の形態では、遮光用アダプタ10は、図1に示すように、先端部8に装着するキャップ形状を有するが、先端部8を挿入可能な暗箱のような装置でもよく、あるいは、先端部8に貼り付けられる、光を透過しない材料でできた粘着性のシール部材でもよい。シール部材の場合、粘着材がシール部材の片面に設けられ、その粘着面を、撮像部12のための撮像窓に貼り付けることで、簡単に撮像素子の遮光をすることができる。
【0022】
レリーズボタン、上下左右(U/D/L/R)方向湾曲ボタン、等の各種操作ボタンが、操作部3に設けられている。ユーザは、操作部3の各種操作ボタンを操作して、被写体の撮像、静止画記録等を行うことができる。なお、表示部5がタッチパネルであった場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、初期設定等の内視鏡装置1の種々の操作、例えば、内視鏡装置1の動作内容を指示することができるので、表示部自体が指示部を構成する。
【0023】
撮像して得られた画像データは、検査対象の検査データであり、メモリカード等の記録媒体に記録され、その記録媒体である外部メモリ30(図2)は、本体部2に対して着脱可能となっている。
操作部3は、メインユニット2に着脱可能となっている。
【0024】
スコープ7は、後述するように、本体部4への接続時に、それぞれの種類を判別するための識別部を有している。本体部4は、スコープ7が接続されると、それぞれの識別部の状態あるいは識別データ(すなわちIDデータ)を検出あるいは読み出して、それぞれの種類を判別するように構成されている。ここでは、IDは、機器の型番等の種類の情報だけでなく、個体識別のための製造番号等のユニークな情報も含んでいる。
以上のように、スコープ7は、操作部3に着脱可能になっており、スコープ7が破損等した場合には、スコープ7だけを交換することができる。
【0025】
また、図1の場合、メインユニット2と操作部3はユニバーサルケーブル6により接続されているが、メインユニット2と操作部3とを一体化にして一つのユニットとしてもよい。その場合、スコープ7は、その一つのユニットである装置(本体部)に対して着脱可能となる。
2.回路構成
図2は、内視鏡装置1の構成を模式的に示したブロック図である。上述したように、内視鏡装置1は、本体部4とスコープ7とから構成され、スコープ7の先端には、遮光用アダプタ10が装着可能となっている。
【0026】
スコープ7は、光学レンズ部11,撮像部12,照明部13,及びメモリ14を含んで構成されている。
光学レンズ部11は、先端部8に設けられ、被写体からの反射光を受光する対物光学系である。
撮像部12は、CMOSセンサ等の撮像面を有する撮像素子であり、光学レンズ部11の焦点位置に撮像面が位置するように、先端部8内に配置されている。撮像部12は、本体部4からの駆動信号に基づいて、撮像素子を駆動し、光電変換された映像信号を本体部4へ出力する。
【0027】
照明部13は、先端部に設けられ、被写体への照明光を出射する発光素子を含んで構成されている。発光素子は、例えば、LED(発光ダイオード)である。照明部13は、本体部4からの駆動信号に基づいて駆動されて、被写体へ照明光を出射する。
メモリ14は、スコープ7の種類及び個体識別するための識別子(以下、IDという)の情報を記憶する不揮発性メモリである。
【0028】
本体部4は、操作部3,表示部5,制御部21,映像信号処理部22,グラフィック重畳部23,照明駆動部24,メインメモリ部25,リアルタイムクロック(RTC)部26、及びメモリ27を含んで構成されている。
【0029】
制御部21は、中央処理装置(CPU)を含み、本体部4内の各種回路の動作の全体を制御する処理部である。制御部21は、ユーザによる操作部3(あるいはタッチパネル)への操作に応じた処理を実行する。
【0030】
映像信号処理部22は、制御部21からの制御信号に基づいて動作し、撮像部12へ駆動信号を供給し、撮像部12からの映像信号を受信して、受信した映像信号に対して所定の画像処理を施して、グラフィック重畳部23を介して、表示部5へ出力する。さらに、映像信号処理部22は、制御部21からの制御信号に基づいて、映像信号をメモリ27へ格納したり、メモリ27から映像信号を読み出して表示部5へ出力する。すなわち、映像信号処理部22は、本体部4に設けられ、撮像素子を駆動して、撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する回路である。
【0031】
グラフィック重畳部23は、制御部21からの制御信号及び映像信号処理部22からの映像信号に基づいて、メニュー画面などを表示部5に表示したり、被写体画像に所定の情報を重畳させた映像信号を表示部5に出力する。
照明駆動部24は、制御部21からの制御信号に基づいて、駆動信号を照明部13へ出力する。
【0032】
メインメモリ部25は、各種機能のためのプログラムを格納するROMと、制御部21内のCPUがプログラムを実行するときに作業領域として利用されるRAMと、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含む。よって、制御部21のCPUは、操作部3からの操作信号に応じて、メインメモリ部25内のプログラムを読み出して、RAMを使いながら実行する。不揮発性メモリには、接続されているスコープ7の個体識別するための識別子(以下、IDという)などの情報が記録される。後述するように、電源がオンされたときに、制御部21は、スコープ7が交換されたか否かを判定するために、接続されているあるいは接続されていたスコープのIDの情報は、不揮発性メモリに記録される。
リアルタイムクロック部26は、内視鏡画像を記録するときに記録される時刻を発生して保持する回路である。
【0033】
外部メモリ30は、撮像部12で撮像されて得られた映像信号を記録するための不揮発性メモリである。制御部21は、映像信号処理部22を介して、外部メモリ30に記録されている画像を、表示部5に表示させることもできる。
3.動作
次に、内視鏡装置1における初期設定の動作、特にリファレンス画像の取得の動作、について説明する。
スコープ7を交換する場合、ユーザは、まず内視鏡装置1の電源をオフし、そのオフ状態で、スコープ7の交換を行う。交換後、ユーザは、内視鏡装置1の電源をオンにすると、図3及び図4の処理が実行される。
図3及び図4は、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。図3と図4の処理は、制御部21のCPUにより実行される。
【0034】
まず、内視鏡装置1の電源がオンにされると、制御部21は、前に接続されていたスコープと異なるスコープを検出したか否かを判定する(S1)。この判定は、スコープ7に設けられたメモリ14に記録されているスコープのIDと、メインメモリ部25に記録されているスコープのIDとを比較することによって行うことができる。
【0035】
異なるスコープが検出されない場合(S1:NO)、制御部21は、初期設定実行を確認するための画面を表示部5に表示し、その表示に基づいてユーザにより操作部3において初期設定が指示されたか否かを判定する。すなわち、制御部21は、内視鏡装置1の本体部4の電源がオンされたときに接続されているスコープが、本体部4が前回オフされたときに接続されていたスコープと異なっていることが検出されたときに、初期設定指示画面(図5)を表示部5に表示する。
【0036】
図5は、初期設定をするか否かをユーザに指示させるための画面の例を示す図である。異なるスコープが接続されていない場合(S1:NO)、制御部21は、メインメモリ部25のROMに記録されている画面データを読み出して、モニタ5の画面5aに、図5の画面を表示する(S2)。ユーザは、画面上の「OK」ボタンを選択すると、初期設定を指示し(S3:YES)、「キャンセル」ボタンを選択すると、初期設定を指示しない(S3:NO)ことになる。初期設定の指示がされない場合(S3:NO)、処理は、終了する。すなわち、制御部21は、スコープ7の先端部8に設けられた撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面(図5)を表示部5に表示する。
【0037】
初期設定の指示がされた場合(S3:YES)、制御部21は、スコープ7と本体部4が接続されているか否かを判定する(S4)。スコープ7と本体部4が接続されているか否かは、スコープのIDが読み出せる等を確認することによって行うことができる。
【0038】
スコープ7が本体部4に接続されていない場合(S4:NO)、制御部21は、「スコープを本体部に接続して下さい。」というスコープ接続指示メッセージを、モニタ5の画面5aに表示し(S5)、処理は、S3に戻る。すなわち、制御部21は、リファレンス画像の取得の前に、スコープ7が本体部4に接続されていないことが検出された場合には、スコープ7の本体部4への接続を指示するメッセージを表示部5に表示する。
【0039】
図6は、スコープ7が本体部4に接続がされていない場合におけるスコープ接続指示メッセージの画面の例を示す図である。図6に示すように、画面5a上には、そのメッセージと「OK」ボタンが表示される。
【0040】
異なるスコープが検出された場合(S1:YES)、あるいはスコープ7が本体部4に接続されている場合(S4:YES)、制御部21は、「スコープ初期設定を行います。スコープの先端部を遮光して下さい。」という遮光指示メッセージを、モニタ5に表示する(S6)。すなわち、制御部21により、スコープ7の先端部8に設けられた撮像部12に光が入らないように、撮像部12を遮光させるために遮光部材の取り付け指示のメッセージが、表示部5に表示される。
【0041】
図7は、遮光指示メッセージの画面の例を示す図である。図7に示すように、画面5a上には、そのメッセージと「OK」ボタンが表示される。すなわち、制御部21は、初期設定処理の開始の指示に応じて、先端部8の遮光をユーザにさせるためメッセージを表示部5に表示する。
図7の表示がモニタ5の画面5a上に表示されるので、ユーザは、遮光用アダプタ10をスコープ7の先端部8に取り付ける。取り付け後、ユーザは、OKボタンを選択することができる。制御部21は、その遮光用アダプタ10をスコープ7の先端部8に取り付ける作業時間を考慮して、所定の時間だけ待つ(S8)。 所定時間が経過すると、制御部21は、スコープ7の遮光が正しく行われているか否かを判定する(S9)。
【0042】
この遮光が正しく行われているか否かの判定は、撮像部12を駆動して、所定の閾値TH以上の画素出力が、所定数以上あるか否かによって行うことができる。所定の閾値TH以上の画素出力がある場合は、撮像素子が光を受けていると考えられるからである。
【0043】
正しく遮光されていない場合(S9:NO)、制御部21は、「正しく遮光をして下さい。」とうメッセージを、モニタ5に表示し(S10)、処理は、S8に移行する。すなわち、制御部21は、図7のメッセージを表示した後に、先端部8の遮光状態を判定し、先端部8が正しく遮光されていないと判定された場合には、先端部8の遮光を正しく行うようにユーザに指示するメッセージを表示部5に表示する。
なお、先端部8を遮光させるためのメッセージは、図7のメッセージ「スコープの初期設定を行います。スコープの先端部を遮光用アダプタで遮光して下さい。」に代えて、「正しく遮光されていません」、「(そもそも)遮光してありますか?」、「(このまま)リファレンス画像取得していいですか?」、「リファレンス画像取得状態になっていますか?」、等のメッセージでもよい。
【0044】
図8は、正しく遮光が行われていないことを告知するためのメッセージの画面の例を示す図である。図8に示すように、そのメッセージと「OK」ボタンが表示される。図8に示すように、「正しく遮光されていません。遮光用アダプタを適切に取り付けて下さい。」のメッセージがモニタ5の画面5a上に表示されるので、ユーザは、遮光用アダプタ10をスコープ7の先端部8に適切に取り付けることができる。取り付け後、ユーザは、OKボタンを選択する。これにより、制御部21への遮光作業の終了の指示がされたことになる。
【0045】
このような接続確認(S9)と画面表示(S10)を行うのは、リファレンス画像を取得するための作業は、ユーザにとっては頻繁に行われる作業ではないので、その作業が確実に行われたか否かを確認し、後の処理で確実なリファレンス画像が取得できるようにするためである。
【0046】
正しく遮光されていると判定された場合(S7:YES)、制御部21は、「スコープ初期設定中です。1分間お待ち下さい。」とうメッセージを、モニタ5に表示する(S5)。すなわち、ユーザに、所定の時間だけ待つことの指示が行われる。言い換えると、制御部21は、リファレンス画像の取得にかかる時間をユーザに告知するメッセージを表示部5に表示する。
図9は、ユーザに、所定の時間だけ待つことを指示する画面の例を示す図である。
【0047】
スコープ7が本体部4に新たに接続された時から、スコープ7の撮像素子の温度が定常状態と同じになるまでの時間が、予め実験などによって測定して判っている。よって、その時間は、通常の室温下において、熱伝導によりスコープ7の先端部8の硬質部材が、定常状態と同じになるまでの時間である。
【0048】
なお、撮像部12を、定常状態の温度、例えば50±1℃、にしてから、リファレンス画像を取得する場合は、先端部8内にヒータ等の加熱部を配置して、その加熱部に所定の電流を流すことによって、撮像部12は所定の温度にされる。その場合は、加熱部の加熱を開始してから、その所定の温度になるまでの時間も加味して、図9のメッセージ中の時間が決定されて表示される。すなわち、図9のメッセージ中に含まれるリファレンス画像の取得にかかる時間は、撮像素子を、スコープ7の先端部8内に設けられたヒータにより加熱して所定の温度になるまでの時間を含む。
なお、撮像部12を所定の温度に加熱方法としては、ヒータ等の加熱部を用いないで、例えば、照明部13を駆動して撮像部12の温度を所定の温度まで上げたり、撮像部12の電力消費量が高くなるような高消費電力モードで撮像部12を駆動して撮像部12自体の温度が所定の温度まで上がるようにしてもよい。
【0049】
図9のメッセージの表示後、所定の時間が経過すると、制御部21は、前記先端部の遮光がされた状態で、撮像部12を駆動して、リファレンス画像を取得する(S13)。そして、制御部21は、リファレンス画像の取得前に、初期設定処理が実行中であることをユーザに告知するメッセージを表示部5に表示する。すなわち、図9の画面表示は、少なくとも、リファレンス画像の取得前の図7あるいは図8の画面において「OK」ボタンが選択された後、リファレンス画像が取得されるまで表示されている。
【0050】
ここで、リファレンス画像の取得は、画素間の感度バラツキを補正するための固定パターンノイズ画像の取得と、撮像面上の欠陥画素の位置情報及び輝度レベルの取得を含む。よって、リファレンス画像は、固定パターンノイズ画像と欠陥画素の位置情報及び輝度レベルを含む。なお、求められる画像品質等によっては、リファレンス画像の取得では、固定パターンノイズ画像と欠陥画素の位置情報及び輝度レベルのいずれかを取得するものであってもよい。
【0051】
制御部21は、撮像部12により撮像して取得したリファレンス画像を、メモリ27に格納し、記録する(S14)。
なお、リファレンス画像を撮像素子により複数回取得して、複数得られた画像の平均値、又は最大値のデータを利用して、リファレンス画像としてもよい。
さらになお、制御部21は、リファレンス画像を、メモリ27ではなく、メモリ14に格納するようにしてもよい。
【0052】
リファレンス画像の格納後、制御部21は、「スコープ初期設定は正常に終了しました。」というメッセージを、モニタ5に表示する(S15)。すなわち、制御部21は、リファレンス画像が所定のメモリに格納された後に、初期設定処理の終了をユーザに告知するための初期設定終了画面(図10)を表示部5に表示する。
【0053】
図10は、スコープ初期設定の正常終了をユーザに告知するための画面の例を示す図である。図10に示すように、画面5a上には、メッセージ「スコープ初期設定は正常に終了しました。」と共に、「OK」ボタンが表示されている。
【0054】
制御部21は、ユーザは、画面上の「OK」ボタンを選択したか否かを判定し(S16)、ユーザが、画面上の「OK」ボタンを選択すると(S16:YES)、制御部21は、照明部13を駆動して点灯し、通常動作状態、すなわちモニタ5にライブ画像が表示される状態、に移行し(S17)、その後、ユーザは、内視鏡装置1を検査業務に使用することができる。ユーザが、画面上の「OK」ボタンを選択しないと(S16:NO)、処理は何もしない。
【0055】
図10に示すようなメッセージの表示をするのは、何の表示をしないで、初期設定が終了し、表示部5に通常動作状態の表示がされると、ユーザは、正しく初期設定が行われた否かを知ることができないからである。さらに、ユーザに「OK」ボタンを選択させるのは、初期設定の終了したことの確認をさせるためである。
【0056】
本体部4のメモリ27に記録されたリファレンス画像は、本体部4の映像信号処理部22により、画素間の感度バラツキ、画素欠陥などの補正のために利用され、画素間の感度バラツキ等が補正された綺麗な映像信号が表示部5に出力される。
【0057】
以上のように、従来、リファレンス画像の取得はスコープの製造時に工場等における恒温室において行われるものであり、ユーザが確実にできるものではなかったが、本実施の形態の内視鏡装置によれば、ユーザがリファレンス画像の取得作業を確実に行うことができ、正確なリファレンス画像を取得することができる。
4.変形例
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上述した実施の形態では、初期設定の処理は、内視鏡装置1の電源がオンされた時に、まず、異なるスコープの検出を行って、異なるスコープが検出された場合と、異なるスコープが検出されず、かつ初期設定の指示がされた場合に行われているが、内視鏡装置1の電源がオンになって、通常動作状態、すなわちモニタ5にライブ画像が表示される状態で動作しているときに、別途メニュー画面を表示させて、そのメニュー画面において、初期設定を選択させることによって、S5以下の初期設定の処理が実行されるようにしてもよい。
【0058】
図11は、初期設定処理を含む、メニュー画面の例を示す図である。図10に示すように、所定のメニュー画面、例えばメインメニュー画面、中に、上述したリファレンス画像を取得するための「初期設定」ボタン31が含まれ、ユーザがそのボタン31を選択すると、図3のS4以下の初期設定の処理が実行されるようにしてもよい。すなわち、図11のメニュー画面は、撮像素子のリファレンス画像の取得を含む初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を構成する。
(変形例2)
上述した実施の形態では、内視鏡装置1の電源を一旦オフにしてから新しいスコープを装着しているが、内視鏡装置1の電源をオフにしない状態で、すなわち活線状態で、スコープ7の抜去と装着が行える内視鏡装置の場合、スコープの抜去後の装着を検知して、上述した初期設定の処理を行うようにしてもよい。すなわち、制御部21は、内視鏡装置1の本体部4の電源オン中にスコープ7が交換されたときに、初期設定指示画面(図5)を前記表示部に表示するようにしてもよい。
例えば、ユーザが、内視鏡検査中に、内視鏡装置1の電源をオフにしない状態で、スコープを交換する場合、制御部21は、スコープ抜去後の装着を検知すると、S6以下の初期設定の処理が実行されるようにしてもよい。
【0059】
以上のように、上述した実施の形態及び各変形例によれば、従来、リファレンス画像の取得はスコープの製造時に工場等における恒温室において行われるものであり、ユーザが正確にかつ確実にできるものではなかったが、本実施の形態の内視鏡装置によれば、ユーザが工場等以外の場所においてリファレンス画像を正確にかつ確実に取得することができる。
【0060】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1、内視鏡装置、2 メインユニット、3 操作部、3a、7a コネクタ部、4 本体部、5 表示部、5a 画面、6 ユニバーサルケーブル、7 スコープ、8 先端部、9 湾曲部、10 遮光用アダプタ、11 光学レンズ部、12 撮像部、13 照明部、14,27 メモリ、21 制御部、22 映像信号処理部、23 グラフィック重畳部、24 照明駆動部、25 メインメモリ部、26 リアルタイムクロック部、27 メモリ、 30 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の挿入部を有し、該挿入部の先端部に撮像素子を有するスコープが着脱可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、前記撮像素子を駆動して、前記撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する映像信号処理部と、
表示部と、
前記本体部に設けられ、前記撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を前記表示部に表示し、前記初期設定処理の開始の指示に応じて、前記先端部の遮光をユーザにさせるため第1のメッセージを前記表示部に表示し、前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得し、取得された前記リファレンス画像を、所定のメモリに格納する制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のメッセージを前記表示部に表示した後に、前記リファレンス画像の取得前に、前記初期設定処理が実行中であることを前記ユーザに告知する第2のメッセージを前記表示部に表示し、前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得後に、前記初期設定処理が完了したことを前記ユーザに告知する第6のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のメッセージを表示した後に、前記先端部の遮光状態を判定し、前記遮光状態の判定から、前記先端部が正しく遮光されていないと判定された場合には、前記先端部の遮光を正しく行うように指示する第3のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記リファレンス画像の取得にかかる時間をユーザに告知する第4のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記リファレンス画像の取得の前に、前記スコープが前記本体部に接続されていないことが検出された場合には、前記スコープの前記本体部への接続を指示する第5のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記リファレンス画像が前記所定のメモリに格納された後に、前記初期設定処理の終了を前記ユーザに告知するための初期設定終了画面を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記内視鏡装置の前記本体部の電源がオンされたときに接続されている前記スコープが、前記本体部が前回オフされたときに接続されていたスコープと異なっていることが検出されたときに、前記初期設定指示画面を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記初期設定指示画面は、メニュー画面であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記内視鏡装置の本体部の電源オン中に前記スコープが交換されたときに、前記初期設定指示画面を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記リファレンス画像の取得にかかる時間は、前記撮像素子を、前記スコープの前記先端部内に設けられたヒータにより加熱して所定の温度になるまでの時間を含むことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項12】
前記所定のメモリは、前記本体部に設けられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項13】
内視鏡装置の本体部に着脱可能なスコープの先端部に設けられた撮像素子のリファレンス画像の取得のための初期設定処理の開始をユーザに指示させるための初期設定指示画面を表示部に表示し、
前記初期設定処理の開始の指示に応じて、前記先端部の遮光をユーザにさせるため第1のメッセージを前記表示部に表示し、
前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得し、
取得された前記リファレンス画像を、所定のメモリに格納する、
ことを特徴とする内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項14】
前記第1のメッセージを前記表示部に表示した後、
前記リファレンス画像の取得前に、前記初期設定処理が実行中であることを前記ユーザに告知する第2のメッセージを前記表示部に表示し、
前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得することを特徴とする請求項13に記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項15】
前記先端部の遮光がされた状態で、前記リファレンス画像を取得し、
前記初期設定処理が完了すると、前記初期設定処理が完了したことを前記ユーザに告知する第6のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項13又は14に記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項16】
前記第1のメッセージを表示した後に、前記先端部の遮光状態を判定し、
前記遮光状態の判定から、前記先端部が正しく遮光されていないと判定された場合には、前記先端部の遮光を正しく行うように指示する第3のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項17】
前記リファレンス画像の取得にかかる時間をユーザに告知する第4のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項13から16のいずれか1つに記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項18】
前記リファレンス画像の取得の前に、前記スコープが前記本体部に接続されていないことが検出された場合には、前記スコープの前記本体部への接続を指示する第5のメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする請求項13から17のいずれか1つに記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項19】
前記リファレンス画像が前記所定のメモリに格納された後に、前記初期設定処理の終了を前記ユーザに告知するための初期設定終了画面を前記表示部に表示することを特徴とする請求項13から18のいずれか1つに記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。
【請求項20】
前記所定のメモリは、前記本体部に設けられていることを特徴とする請求項13から19のいずれか1つに記載の内視鏡装置のリファレンス画像の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−165865(P2012−165865A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28860(P2011−28860)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】