説明

内視鏡

【課題】観察および処置における操作性を低減させずに広い視野を確保できる内視鏡を提供する。
【解決手段】先端部に設けられる撮像部10と、前記撮像部10に固定された支持チューブ60と、前記支持チューブ60に対して相対的に進退動可能であって前記支持チューブ60よりも曲げ剛性の高い牽引チューブ80と、前記牽引チューブ80および前記撮像部10を屈曲可能に接続する接続部90と、を有し、前記牽引チューブ80を前記支持チューブ60に対して相対的に後退させることで前記支持チューブ60を撓ませて前記撮像部10の撮像方向を変更可能な内視鏡1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関し、特に、体腔内を観察するための内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体腔内に内視鏡を挿入して、観察や処置を行う手法が行われている。例えば、腹腔鏡下手術においては、より低侵襲に手術を行うために3mm程度の非常に細い内視鏡が使用されている。
【0003】
一方、内視鏡の撮像素子は、先端にて正面方向を観察するように、通常は撮像面が正面を向いて設置されている。このため、内視鏡が細くなると撮像素子も小さくなり、観察視野が狭くなる。
【0004】
このため、例えば特許文献1では、撮像面が内視鏡の側面方向を向くように撮像素子を配置することで、内視鏡の直径以上に長い撮像面を有する撮像素子を配置する内視鏡が提案されている。この内視鏡を用いて正面方向を観察する際には、撮像素子の基端側のシャフトをアクチュエータによって屈曲させることで、撮像面を正面方向へ向けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−30640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡のように、正面を観察するために側面方向を向いている撮像素子を正面方向へ向けて曲げると、屈曲部より基端側のシャフトの軸心と撮像素子の中心がずれてしまい、内視鏡での観察および処置が困難となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、内視鏡での観察および処置における操作性を低減させずに広い視野を確保できる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の内視鏡は、先端部に設けられる撮像部と、前記撮像部に固定された第1の長尺部と、前記第1の長尺部に対して相対的に進退動可能であって前記第1の長尺部よりも曲げ剛性の高い第2の長尺部と、前記第2の長尺部および前記撮像部を屈曲可能に接続する接続部と、を有し、前記第2の長尺部を前記第1の長尺部に対して相対的に後退させることで前記第1の長尺部を撓ませて前記撮像部の撮像方向を変更可能な内視鏡である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る内視鏡は、第1の長尺部よりも曲げ剛性の高い第2の長尺部を第1の長尺部に対して相対的に後退させることで、第1の長尺部を撓ませて撮像部の撮像方向を変更可能であるため、撮像部の撮像方向を変更しても撮像部を曲げ剛性の高い第2の長尺部の軸心上に配置できる。したがって、内視鏡での観察および処置における操作性を低減させずに、撮像部の撮像方向を変更可能とすることで広い視野を確保できる。
【0010】
前記撮像部が、前記内視鏡の側面方向に対面する撮像素子およびレンズを有するようにすれば、直径以上に長い撮像面を有する撮像素子を用いることができ、内視鏡の細径化を図りつつ広い視野を確保できる。
【0011】
前記接続部が線材であれば、より簡素な構成で接続部を構成でき、内視鏡の細径化を図ることができる。
【0012】
前記第1の長尺部が、前記撮像部に固定されるとともに前記第2の長尺部よりも曲げ剛性が低い柔軟部と、前記柔軟部の基端側に連結されるとともに前記柔軟部よりも曲げ剛性の高い剛性部と、を有するようにすれば、剛性部によって剛性を維持して内視鏡の姿勢を適正に保ちつつ、柔軟部によって撮像部の撮像方向を変更可能とすることができる。
【0013】
前記剛性部が、前記第2の長尺部と摺動可能に連結されれば、第2の長尺部を後退させる際に、剛性部と第2の長尺部とを摺動させつつ連結を維持できるため、柔軟部のみを効率よく側面方向へ変形させることができる。
【0014】
前記柔軟部が、前記剛性部に対して相対的に進退動可能であれば、柔軟部の撓む範囲を自在に変更でき、撮像する方向や位置を状況に応じて調整できる。
【0015】
前記撮像部、第1の長尺部および第2の長尺部の少なくとも一部を覆う伸縮可能な外側シース部を有するようにすれば、覆っている部材同士の間に隙間が生じず、隙間に物体が挟まる等の現象を防止し、安全性を向上させることができる。
【0016】
前記第2の長尺部を前記第1の長尺部に対して相対的に進退動させた状態を固定的に維持する固定部を有するようにすれば、撮像部の撮像方向を変更した状態を固定的に維持でき、操作性が向上する。
【0017】
前記接続部は、基端側へ延びる線材を有し、前記第2の長尺部は、前記線材が貫通し、当該線材に対して相対的に進退動可能である筒体であるようにすれば、線材に対する第2の長尺部の位置を変更することで、第2の長尺部を後退させて変更される撮像部の撮像方向および位置を自在に調整することができる。
【0018】
前記柔軟部の側面に開口するルーメンを有するようにすれば、撓んだ柔軟部の側面から、医療用の器具等を突出させて処置を行うことができる。
【0019】
前記柔軟部は、前記剛性部よりも外径が小さく、前記剛性部は、先端側に開口するルーメンを有するようにすれば、剛性部に設けられるルーメンによって、医療用の器具等を突出させて処置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る内視鏡を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る内視鏡の先端部を示す断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿う断面図である。
【図5】本実施形態に係る内視鏡の基端部を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る内視鏡の操作レバーを示す部分平面図である。
【図7】本実施形態に係る内視鏡の撮像面を正面へ向けた際を示す断面図である。
【図8】本実施形態に係る内視鏡の撮像面を正面へ向けた際を示す断面図である。
【図9】本実施形態に係る内視鏡の撮像面を正面へ向けた際を示す断面図である。
【図10】本実施形態に係る内視鏡の他の例を示す平面図である。
【図11】本実施形態に係る内視鏡の更に他の例の先端部を示す断面図である。
【図12】図11の12−12線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
本発明の実施形態に係る内視鏡1は、体腔内に挿入されて、体腔内の観察や処置を行うデバイスである。内視鏡1によって観察や処置を行う対象は、例えば、子宮、卵巣、卵管等が挙げられるが、他の生体組織であってもよい。
【0023】
内視鏡1は、図1に示すように、撮像を行うための撮像部10と、撮像部10から基端側へ延びる挿入部20と、挿入部20の基端側に設けられて内視鏡1を操作するための操作部30と、外部の内視鏡装置本体40と接続するためのコネクタ50と、を備えている。なお、本明細書において、内視鏡1の手元側を「基端側」、挿入される側を「先端側」と称す。
【0024】
撮像部10は、図2に示すように、中空のケース11と、ケース11の内部に設置される撮像素子12と、被写体へ光を照射する光源13と、被写体からの光を撮像素子12に集光するための集光レンズ14と、撮像素子12およびコネクタ50の間を接続している配線15と、を備えている。
【0025】
ケース11は、被写体からの光を集光レンズ14へ透過する入光部16が側面に設けられ、この入光部16に集光レンズ14が配置されている。また、ケース11は、光源13からの光を透過して被写体へ照射する射光部17が側面に設けられ、この射光部17に対面して光源13が配置されている。
【0026】
撮像素子12は、CCDまたはCMOSのような2次元撮像素子であり、撮像面12Aが側面方向、すなわち内視鏡1の延在方向と交差する方向に向かって設置されている。
【0027】
光源13は、LEDであり、撮像素子12の基端側に配置され、配線15から電力の供給を受けて照光可能となっている。
【0028】
配線15は、撮像素子12および光源13へ電力を供給するとともに、撮像素子12によって取得された画像信号を内視鏡装置本体40(図1参照)へ伝える役割を果たす。
【0029】
挿入部20(第1の長尺部)は、撮像部10のケース11に固定された支持チューブ60(第1の長尺部、柔軟部)と、支持チューブ60の外側を覆う外側チューブ70(第1の長尺部、剛性部)と、撮像部10を牽引可能な牽引チューブ80(第2の長尺部)と、撮像部10に牽引チューブ80を接続させる接続部90と、を備えている。
【0030】
支持チューブ60は、図2〜5に示すように、先端部が撮像部10のケース11に固定され、内部に形成されるルーメン61に配線15が配置されおり、外側チューブ70に対して摺動して相対的に進退動可能となっている。支持チューブ60の先端部近傍の側面には、ルーメン61が開口して先端開口孔62が形成されている。支持チューブ60の基端部は、操作部30を貫通して操作部30よりも基端側に達してルーメン61が基端開口孔63で開口しており、基端開口孔63からルーメン61内に医療用の器具を挿入することで、先端開口孔62へ医療用の器具を到達させることができる。支持チューブ60は、可撓性を有する柔軟な材料により形成されており、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびこれらの架橋もしくは部分架橋物)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂等の樹脂材料によって形成されるが、撓むことが可能であれば材料は限定されない。
【0031】
外側チューブ70は、支持チューブ60および牽引チューブ80の外側を覆っている。外側チューブ70の基端部は、操作部30に固定的に連結されており、先端部は、支持チューブ60および牽引チューブ80よりも基端側に位置している。外側チューブ70は、支持チューブ60よりも曲げ剛性が高く、支持チューブ60を覆うことで支持チューブ60の撓みを抑える役割を果たす。支持チューブ60は、例えばステンレス等の金属材料や樹脂材料等によって形成されるが、材料は限定されない。
【0032】
牽引チューブ80は、支持チューブ60と並んで外側チューブ70の内側に配置されており、先端部が接続部90を介してケース11に連結され、基端部が操作部30に連結されている。牽引チューブ80の先端部は、撮像素子12の撮像面12Aの中心位置に略一致して、ケース11の撮像方向と反対面に連結される。牽引チューブ80は、支持チューブ60よりも曲げ剛性が高く形成されている。牽引チューブ80は、例えばステンレス等の金属材料や樹脂材料等によって形成されるが、材料は限定されない。
【0033】
接続部90は、牽引チューブ80を貫通する牽引ワイヤー91と、ケース11の内部の撮像方向と反対面に配置されて牽引ワイヤー91が接続される保持部材92と、を備えている。
【0034】
牽引ワイヤー91は、屈曲可能であり、基端部が操作部30に連結されている。牽引ワイヤー91は、例えばステンレス等の金属材料、ニッケル-チタン等の超弾性材料や樹脂材料等によって形成されるが、材料は限定されない。
【0035】
保持部材92は、牽引ワイヤー91をケース11に対して確実に連結するための部材であり、例えばステンレス等の金属材料、ニッケル-チタン等の超弾性材料や樹脂材料等によって形成されるが、材料は限定されない。保持部材92の牽引ワイヤー91が連結する部位は、撮像素子12の撮像面12Aの中心位置に略一致する。
【0036】
操作部30は、図6に示すように、操作者が把持する把持ケース31と、支持チューブ60、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91の各々の基端部に固定される第1〜第3操作レバー32A,32B,32C(以下、第1〜第3操作レバー32A,32B,32Cを総称して操作レバー32と称する場合がある。)とを備えている。第1〜第3操作レバー32A,32B,32Cは、把持ケース31に対して進退動することで、支持チューブ60、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91を個別に進退動させることが可能であり、把持ケース31のレバー貫通孔33A,33B,33C(以下、レバー貫通孔33A,33B,33Cを総称してレバー貫通孔33と称する場合がある。)を貫通して配置されている。
【0037】
レバー貫通孔33の各々は、図5に示すように、縁部に一定間隔で複数の凹凸部34が形成されており、この凹凸部34に、操作レバー32に設けられて弾性的に変形可能な凸部35が嵌合可能となっている。したがって、凹凸部34に凸部35を嵌合させて操作レバー32を把持ケース31の固定可能であるとともに、操作レバー32に所定値以上の力を作用させることで、凸部35を変形させつつ凹凸部34から離脱させて操作レバー32を進退動させることができる。このように、凹凸部34および凸部35は、支持チューブ60、外側チューブ70、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91の各々を、相対的に進退動させた任意の位置で固定的に保持する固定部36を構成する。なお、固定部36の構成は、任意の位置で固定的に保持できるのであれば、これに限定されない。
【0038】
把持ケース31および操作レバー32は、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂等の樹脂材料や金属材料によって形成されるが、材料は限定されない。
【0039】
内視鏡装置本体40は、図1に示すように、コネクタ50が接続される本体側コネクタ41と、撮像素子12および光源13へ電力を供給するとともに制御し、撮像素子12から画像信号に基づいて画像を生成する制御部42と、生成された画像を表示するモニター43と、を備えている。
【0040】
次に、第1の実施形態に係る内視鏡1の作用を説明する。
【0041】
まず、コネクタ50を内視鏡装置本体40の本体側コネクタ41に接続し、第1操作レバー32Aを操作して、支持チューブ60の先端開口孔62が外側チューブ70よりも先端側に位置するように支持チューブ60を配置する。また、支持チューブ60が撓まずに直状となるように牽引ワイヤー91に連結される第3操作レバー32Cを操作し、かつ牽引チューブ80の先端部が撮像部10に接するまで第2操作レバー32Bを操作して前進させる。これにより、内視鏡1の先端部が、図2に示す状態となる。
【0042】
この状態で、内視鏡1を撮像部10側から体腔内に挿入する。このとき、撮像素子12の撮像面12Aが側面方向、すなわち内視鏡1の延在方向と交差する方向に向かって設置されており、内視鏡1の外径が小さいため、より低侵襲に挿入することができる。
【0043】
次に、第2操作レバー32Bおよび第3操作レバー32Cを同時に後退させると、図7に示すように、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91が後退する。そして、牽引チューブ80の曲げ剛性が支持チューブ60よりも高いため、牽引チューブ80はほとんど撓まず、支持チューブ60の外側チューブ70に覆われていない部分が側面方向へ向かって撓むことになる。そして、牽引チューブ80と撮像部10を接続する接続部90が屈曲可能であるため、ケース11は、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91からの牽引力と支持チューブ60からの反力を受けて傾く。このとき、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91が、ケース11の撮像方向と反対面側に連結されているため、撮像面12Aが正面方向を向くようにケース11が傾き、正面方向に広い視野を確保できる。そして、牽引チューブ80の先端部は、撮像素子12の撮像面12Aの中心位置に略一致して、ケース11の撮像方向と反対面に連結されているため、牽引チューブ80の軸心と撮像素子12の撮像面12Aの中心とが略一致する。このため、撮像面12Aが正面方向を向いた際の撮像箇所が、操作部30から直線的に延びる牽引チューブ80の軸心上に位置し、観察及び処置の操作性を低下させることなしに、広い視野を確保できる。このとき、各々の第1〜第3操作レバー32A,32B,32Cが把持ケース31の任意の位置で固定可能となっているため、撮像面12Aを正面方向に向けた状態を固定的に維持することができる。
【0044】
この後、制御部42により光源13および撮像素子12を制御し、正面方向を向いた光源13から光を照射させて、被写体からの光を集光レンズ14を介して撮像素子12で受光する。撮像素子12は、光を受けて取得される画像信号を、図1に示すように、配線15を介して制御部42へ送信し、制御部42は、画像信号を画像に生成し、モニター43に表示させる。
【0045】
そして、必要に応じて、モニター43を観察しながら、支持チューブ60の基端開口孔63からルーメン61内に医療用の器具を挿入し、先端開口孔62から医療用の器具を突出させて、処置を行う。医療用の器具としては、例えば鉗子、穿刺針等が挙げられる。
【0046】
体腔内での観察や処置が終了した後には、第2操作レバー32Bおよび第3操作レバー32Cを前進させて操作して牽引チューブ80および牽引ワイヤー91による牽引を緩め、図1に示すように支持チューブ60が直状に延びた状態とする。この後、細くなった内視鏡1を体腔内から引き抜き、内視鏡1による手技が完了する。
【0047】
なお、内視鏡1は、支持チューブ60、外側チューブ70、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91の各々を独立して進退動可能であるため、以下のように使用することもできる。
【0048】
すなわち、図8に示すように、牽引チューブ80の先端部を撮像部10のケース11まで到達させずに、牽引チューブ80の先端側に露出する牽引ワイヤー91によってケース11を牽引することもできる。このようにすることで、撮像面12Aが正面方向を向いた際の撮像箇所を、操作部30から直線的に延びる牽引チューブ80の軸心上からずらすことができる。
【0049】
また、図9に示すように、外側チューブ70をより後退させて外側チューブ70よりも先端側に露出する支持チューブ60の長さを増加させ、かつ牽引チューブ80の先端部を撮像部10のケース11まで到達させずに、牽引チューブ80の先端側に露出する牽引ワイヤー91によってケース11を牽引することもできる。このようにすることで、支持チューブ60の長さが増加して湾曲しやすくなり、撮像面12Aを正面方向を越えて反対方向まで向けることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る内視鏡1は、支持チューブ60(第1の長尺部)よりも曲げ剛性の高い牽引チューブ80(第2の長尺部)を支持チューブ60に対して相対的に後退させることで、支持チューブ60を撓ませて撮像部10の撮像方向を変更可能であるため、撮像部10の撮像方向を変更しても、撮像部10を曲げ剛性の高い牽引チューブ80の軸心上に保持できる。したがって、内視鏡1での観察および処置における操作性を低減させることなしに、撮像部10の撮像方向を変更可能として広い視野を確保できる。
【0051】
また、撮像素子12および集光レンズ14が、内視鏡1の側面方向に対面するようにケース11に配置されているため、内視鏡1の直径以上に長い撮像面12Aを有する撮像素子12を適用することができ、内視鏡1の細径化を図りつつ広い視野を確保できる。
【0052】
また、接続部90が線材である牽引ワイヤー91を有するため、より簡素な構成で接続部90を構成でき、内視鏡1の細径化を図ることができる。
【0053】
また、撮像部10が固定される支持チューブ60の基端側に、支持チューブ60よりも曲げ剛性の高い外側チューブ70が連結されているため、外側チューブ70によって剛性を維持して内視鏡1の姿勢を適正に保ちつつ、支持チューブ60によって撮像部10の撮像方向を変更可能である。
【0054】
また、外側チューブ70が、牽引チューブ80と摺動可能に連結されているため、牽引チューブ80を後退させても、外側チューブ70と牽引チューブ80とが摺動しつつ連結が維持され、支持チューブ60のみを効率よく側面方向へ湾曲するように変形させることができる。
【0055】
また、支持チューブ60が、外側チューブ70に対して相対的に進退動可能であるため、支持チューブ60の撓む範囲を自在に変更でき、撮像する方向や位置を状況に応じて調整できる。
【0056】
また、牽引チューブ80を支持チューブ60に対して相対的に進退動させた状態を固定的に維持する固定部36を備えるため、牽引チューブ80を撓ませて撮像部10の撮像方向を変更した状態を固定的に維持でき、操作性が向上する。
【0057】
また、牽引チューブ80が、線材である牽引ワイヤー91が摺動可能に貫通する筒体であるため、線材に対する牽引チューブ80の位置を変更することで、牽引チューブ80を後退させて変更される撮像部10の撮像方向および位置を自在に調整することができる。
【0058】
また、牽引チューブ80の側面に、ルーメン61の先端開口孔62が形成されているため、撓ませた支持チューブ60の側面から、医療用の器具等を正面方向へ突出させて処置を行うことができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91を後退させることで、撮像面12Aが正面方向を向くように撮像部10を傾けることができるのであれば、接続部90は、必ずしも撮像部10の撮像方向と反対面側に連結されていなくてもよい。
【0060】
また、牽引チューブ80および牽引ワイヤー91は、各々を独立して操作可能となっているが、一体的に動くように構成してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、外側チューブ70を操作部30に固定的に連結し、支持チューブ60を第1操作レバー32Aにより操作することで、外側チューブ70と支持チューブ60とを相対的に進退動させる構造となっているが、支持チューブ60を操作部30に固定的に連結し、外側チューブ70を操作レバーにより操作する構造としてもよく、または両方を操作レバーにより操作する構造としてもよい。
【0062】
また、図10に示す内視鏡の他の変形例のように、撮像部10、支持チューブ60、外側チューブ70および牽引チューブ80の少なくとも一部を覆う伸縮可能な外側シース部100を設けてもよい。外側シース部100は、例えばシリコーン樹脂等により形成できる。外側シース部100を設けることで、覆っている部材同士の間に隙間が生じず、隙間に物体が挟まる等の現象を防止し、安全性を向上させることができる。
【0063】
また、図11,12に示す内視鏡の更に他の変形例のように、支持チューブ160を操作部まで延在させずに、外側チューブ170の先端に固定してもよい。支持チューブ160は、外側チューブ170よりも細径で形成され、したがって外側チューブ170の先端には端面171が形成される。そして、外側チューブ170は、基端側から医療用の器具等を挿入可能な2つの内側チューブ172,173を内部に有し、外側チューブ170の端面171に、内側チューブ172,173のルーメンが開口する開口孔174,175が形成されている。このような構成としても、支持チューブ160を撓ませて撮像部110の撮像方向を変更でき、かつ開口孔174,175から医療用の器具等を正面方向へ突出させて処置を行うことができる。
【0064】
また、内視鏡が挿入される対象は、生体に限定されない。
【符号の説明】
【0065】
10,110 撮像部、
12 撮像素子、
12A 撮像面、
14 集光レンズ、
20 挿入部(第1の長尺部)、
30 操作部、
36 固定部、
60,160 支持チューブ(第1の長尺部、柔軟部)、
61 ルーメン、
62 先端開口孔、
63 基端開口孔、
70,170 外側チューブ(剛性部)、
80 牽引チューブ(第2の長尺部)、
90 接続部、
91 牽引ワイヤー(線材)、
100 外側シース部、
174,175 開口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に設けられる撮像部と、
前記撮像部に固定された第1の長尺部と、
前記第1の長尺部に対して相対的に進退動可能であって前記第1の長尺部よりも曲げ剛性の高い第2の長尺部と、
前記第2の長尺部および前記撮像部を屈曲可能に接続する接続部と、を有し、
前記第2の長尺部を前記第1の長尺部に対して相対的に後退させることで前記第1の長尺部を撓ませて前記撮像部の撮像方向を変更可能な内視鏡。
【請求項2】
前記撮像部は、前記内視鏡の側面方向に対面する撮像素子およびレンズを有する請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記接続部は、線材である請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記第1の長尺部は、前記撮像部に固定されるとともに前記第2の長尺部よりも曲げ剛性が低い柔軟部と、前記柔軟部の基端側に連結されるとともに前記柔軟部よりも曲げ剛性の高い剛性部と、を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記剛性部は、前記第2の長尺部と摺動可能に連結される請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記柔軟部は、前記剛性部に対して相対的に進退動可能である請求項4または5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記撮像部、第1の長尺部および第2の長尺部の少なくとも一部を覆う伸縮可能な外側シース部を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記第2の長尺部を前記第1の長尺部に対して相対的に進退動させた状態を固定的に維持する固定部を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記接続部は、基端側へ延びる線材を有し、前記第2の長尺部は、前記線材が貫通し、当該線材に対して相対的に進退動可能である筒体である請求項1〜8のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記柔軟部の側面に開口するルーメンを有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項11】
前記柔軟部は、前記剛性部よりも外径が小さく、前記剛性部は、先端側に開口するルーメンを有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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