内部人工器官
内部人工器官は、貫通する流通路を画成している本体を備えている。該本体は血管内で開通性を維持する能力を有し、鉄またはその合金を含んでいる。該本体は酸化鉄を含んでなるナノ構造化表面を有し、該表面において個々のナノ構造は少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官、特に生物侵食性(bioerodible)の内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
身体には、動脈、その他の血管およびその他の体腔のような様々な通路が含まれている。これらの通路は、時には閉塞したり脆弱化したりするようになる。例えば、通路は腫瘍によって閉塞する場合もあるし、プラークによって狭窄する場合もあるし、動脈瘤によって脆弱化することもありうる。このようなことが生じた場合に、医療用内部人工器官を用いて通路を再開させたり、補強したりすることができる。内部人工器官は典型的には、体内の管腔内に配置される管状部材である。内部人工器官の例には、ステント、カバー付きステント、およびステントグラフトが挙げられる。
【0003】
内部人工器官は、該内部人工器官が所望の部位へ運搬される際に圧縮サイズまたは縮小サイズの内部人工器官を支持するカテーテルによって、身体内部へと送達可能である。身体部位に到達すると、内部人工器官は拡張され、例えば管腔の壁面と接触できるようになる。ステントの送達については、ヒース(Heath)の特許文献1においてさらに議論されており、前記特許文献の全容は参照により本願に組込まれる。
【0004】
拡張機構には、内部人工器官を強制的に径方向に拡張させることが挙げられる。例えば、拡張機構には、バルーン拡張型の内部人工器官を担持するバルーンを備えるカテーテルを挙げることができる。該バルーンを膨張させて変形させ、拡張した内部人工器官を管腔壁に接触させて所定位置に固定することができる。その後、バルーンを収縮させ、カテーテルを管腔から抜去することができる。
【0005】
別の送達技術では、内部人工器官は、例えば弾性により、または材料の相転移により、可逆的に圧縮および拡張させることが可能な弾性材料から形成される。体内への導入中は、内部人工器官は圧縮状態で拘束される。所望の移植部位に到達すると、例えば外側シースのような拘束用デバイスを引き戻して、内部人工器官が自身の内的な弾性復元力によって自己拡張できるようにすることにより、拘束が解除される。
【0006】
内部人工器官を包含している通路は、再閉塞に至る可能性がある。そのような通路の再閉塞は再狭窄として知られている。ある種の薬物は、該薬物が内部人工器官に含まれていると再狭窄の発症を抑制できることが観察されている。内部人工器官に含められた治療薬すなわち薬物は、内部人工器官が移植されたら所定の方式で体液中へ溶出することが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,290,721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記事項を鑑みて血管内で開通性を維持することのできる改良された内部人工器官を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
貫通する流通路を画成している本体を備え、血管内で開通性を維持することのできる内部人工器官について説明する。該本体は鉄またはその合金を含んでいる。該本体は酸化鉄を含んでなるナノ構造化表面を有し、該表面において個々のナノ構造は少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、高さ対厚さアスペクト比は10:1〜20:1である。例えば、個々のナノ構造それぞれの高さは約50nm〜約500nmであってよい。いくつかの実施形態では、個々のナノ構造は、厚さの少なくとも2倍の幅をそれぞれ有している薄片構造を有することができる。例えば、個々の薄片ナノ構造それぞれの厚さは約5nm〜50nmであってよく、個々の薄片ナノ構造それぞれの幅は約100nm〜500nmであってよい。他の実施形態では、個々のナノ構造は米粒構造を有することができる。例えば、個々の米粒ナノ構造は約5nm〜50nmの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、隣接した個々のナノ構造の間の平均分離距離は約1nm〜50nmであってよい。
【0011】
本体のナノ構造化表面は、その粗さ特性または耐食性のうち少なくともいずれか一方によっても説明可能である。例えば、本体の表面は120〜200のSdrを有することができる。ナノ構造化表面は、5キロオーム未満(例えば約2キロオーム)の耐食性を有することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、内部人工器官は、ナノ構造化表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングをさらに備えることができる。例えば、ポリマーコーティングは、ポリグルタミン酸と、以下のポリマーすなわち:ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、および多糖類のうち1つ以上とのブロックコポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーは、ポリグルタミン酸と非イオン性の多糖類(例えばプルラン)とのブロックコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは治療薬を含んだ薬物溶出コーティングであってもよい。
【0013】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、生物侵食性であってもよい。例えば、本体が純鉄のような生物侵食性の金属を含んでいてもよい。存在する場合には、コーティングも生物侵食性ポリマーであってよい。
【0014】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、ステントであってもよい。
別の態様では、血管内で開通性を維持する能力を有する、貫通する流通路を画成している本体を備えている内部人工器官について説明する。該本体は、鉄またはその合金を含み、酸化鉄を含んでなる表面を有する。内部人工器官はさらに、該表面の上に、ポリグルタミン酸のブロックコポリマーを含んだコーティングを備えている。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸のブロックコポリマーは、ポリグルタミン酸と多糖類とのブロックコポリマーであってよい。多糖類はプルランのような非イオン性の多糖類であってよい。
【0016】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、生物侵食性であってもよい。例えば、本体が純鉄のような生物侵食性の金属を含んでもよく、さらにコーティングも生物侵食性ポリマーであってよい。
【0017】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、ステントであってもよい。
別の態様では、内部人工器官を生産する方法について説明する。該方法は、内部人工器官、または内部人工器官の前駆体、の一部を電解質溶液に曝露することと、内部人工器官に複数の電流パルスを印加することとを含んでいる。内部人工器官は鉄またはその合金を含む。電解質溶液に曝露される間に内部人工器官に電流パルスを印加することにより、該内部人工器官上に、少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する複数の個別ナノ構造を有するナノ構造化表面が作出される。
【0018】
いくつかの実施形態では、印加される電流パルスには、陰極パルス、陽極パルス、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。印加される電流パルスは、直流電流の方形波、電位の方形波、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0019】
該方法は、いくつかの実施形態では、ナノ構造化表面にポリマーを含んだコーティングを施すことをさらに含むことができる。
いくつかの実施形態では、内部人工器官は生物侵食性のステントであってよい。
【0020】
1つ以上の実施形態の詳細について、添付図面および以下の説明において述べる。他の特徴、目的および利点は、該説明および図面から、また特許請求の範囲から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】虚脱状態のステントの送達を例証する長手方向の断面図。
【図1B】図1Aに示すステントの拡張を例証する長手方向の断面図。
【図1C】図1Aに示すステントの展開配置を例証する長手方向の断面図。
【図2】拡張したステントの実施形態を示す斜視図。
【図3A】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3B】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3C】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3D】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3E】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3F】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図4A】バンド間のコネクタ上に腐食増強領域を有するステントを示す図。
【図4B】バンド間のコネクタの腐食後のステントを示す図。
【図5A】ステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5B】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5C】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5D】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な図面における同様の参照記号は同様の構成要素を示す。
図1A〜1Cを参照すると、ステント20は、カテーテル14の先端付近に担持されたバルーン12の上に配置され、該バルーンおよびステントを担持している部分が閉塞部18の領域に到達するまで管腔16(図1A)を通して導入される。その後、ステント20は、バルーン12を膨張させることにより径方向に拡張されて管壁に対して押し付けられ、その結果閉塞部18が圧縮されて、ステントを取り囲んでいる管壁は径方向に拡張する(図1B)。その後、バルーンから圧力が解放され、カテーテルが管から抜去される(図1C)。
【0023】
図2を参照すると、バルーン拡張式ステント20は、複数のバンド22と、隣接したバンドとバンドの間を伸びて該バンドを接続する複数のコネクタ24とによって画成された管状部材の形態からなるステント本体を有する。使用時には、バンド22を当初の小さな直径からより大きな直径へと拡張させてステント20を管壁に接触させることにより、管の開通性を維持することができる。コネクタ24は、ステント20に対して該ステントが管の輪郭に順応できるように可撓性および追従性を提供することができる。ステント20は該ステントを貫通する流通路を画成して、血管内の開通性を維持する。
【0024】
ステント20は、鉄またはその合金を含む本体を備えることができる。いくつかの実施形態では、ステント20は、1つ以上の生物侵食性の金属、例えばマグネシウム、亜鉛、鉄、またはこれらの合金を含む本体を備える。本体は酸化鉄を含む表面を有してもよい。
【0025】
ステント本体は、高表面積の多孔性ナノ構造を特徴とする形態からなる表面を有してもよい。該ナノ構造化表面は、間隔を置いて配置された個々のナノ構造の間および周りの凹部を特徴とする高表面積を提供することができる。例えば、個々のナノ構造は、粒子または薄片の形であってよい。該ナノ構造化表面は、ステント本体の生物侵食性金属の腐食または劣化を引き起こし腐食速度または劣化速度を加速することができる。さらに、ステント本体の選択された部分がナノ構造化表面を有するように処理されて、ステント劣化の選択部分が用意されてもよい。加えて、ナノ構造化表面により、コーティングが施されて該表面とかみ合い、付着を強化することが可能となる。いくつかの実施形態では、該表面はさらに、内皮の増殖を促進してステント20の内皮化(endothelialization)を増強することもできる。ナノ構造化表面はさらに、動きの自由度をより大きくすることを可能にして、ステント本体の制御された生物侵食の前の使用時に、ステントが屈曲されたときに破損しにくいステント本体を可能にすることができる。ステントの拡張時もしくは収縮時、またはステントが曲りくねって湾曲した体内管腔を通って送達されるときに、ステントの撓曲によって応力が引き起こされる場合があり、ステント軸からの距離の関数として増大する。その結果、いくつかの実施形態では、ナノ構造化表面は、ステント本体の表面の管腔外側領域(abluminal regions)または他の応力が高い地点に、例えば拡張時もしくは収縮時により大きく撓曲するコネクタ24に隣接しているバンド22の領域に存在しうる。
【0026】
ナノ構造化表面は、その外観、個々のナノ構造の大きさおよび配置、該表面の粗さまたは耐食性のうち少なくともいずれかによって特徴づけることができる。形態学的特徴を有する表面の例が図3A〜3Fに示されている。いくつかの実施形態では、表面の形態には「コーンフレーク」微細構造および/または「米粒」微細構造を挙げることができる。
【0027】
図3A〜3Cは、コーンフレークに類似した定義可能な薄い平らな薄片を特徴とするナノ構造化表面を示している。この「コーンフレーク」表面構造は、約50〜500nm、例えば約100〜300nmの高さ(H)と、約100〜500nm、例えば約200〜400nmの幅(W)と、約5〜50nm、例えば約10〜15nmの厚さ(T)とを有することができる。「コーンフレーク」構造は、約5:1またはそれ以上、例えば10:1〜20:1の高さ対厚さアスペクト比を有することができる。「コーンフレーク」構造は1つ以上の層の中で重なり合うことができる。隣接した「コーンフレーク」構造どうしの間の間隔は約1〜50nmである。
【0028】
図3D〜3Fは、米粒に類似した定義可能なサブミクロンサイズの粒子を特徴とするナノ構造化表面を示している。この「米粒」表面構造は、約50〜500nm、例えば約100〜300nmの高さ(H)と、約5nm〜50nm、例えば約10〜15nmの平均直径(D)とを有することができる。「米粒」構造は、約5:1またはそれ以上、例えば10:1〜20:1の高さ対直径アスペクト比を有する。「米粒」構造は1つ以上の層の中で重なり合うことができる。隣接した「米粒」構造どうしの間の間隔は約1〜50nmである。
【0029】
ナノ構造化表面の粗さは、平均粗さSa、自乗平均粗さSq、および界面の展開面積比Sdrのうち少なくともいずれかによって特徴づけることもできる。パラメータSaおよびSqは、表面のテクスチャの全体的な尺度を表わす。SaおよびSqは、様々なテクスチャ特徴の山部、谷部および間隔の識別においては比較的感度が低い。異なる視覚的形態を備えた表面が同様のSa値およびSq値を有する場合もある。ある種類の表面については、パラメータSaおよびSqはテクスチャの特徴において著しいずれを示す。Sdrは、測定領域の大きさの理想平面と比較して、テクスチャによって提供される付加的な表面積の割合(%)として表される。Sdrはさらに、同様の広さおよび平均粗さを有する表面を区別する。一般に、Sdrは、Saが変化してもしなくてもテクスチャの空間的複雑さにつれて増大することになる。本体の表面がナノ構造化表面を有するいくつかの実施形態では、Sdrは約100以上、例えば約120〜200であってよい。例えば、該表面は約150のSdrを有することができる。加えて、または別例として、該形態は、約20以上、例えば約20〜30のSqを有することができる。
【0030】
表面に酸化鉄を有している鉄製の高表面積多孔性ナノ構造の耐食性は、5キロオーム未満、例えば約2キロオームであってよい。これは、約20キロオームの耐食性を有する表面平滑仕上げを備えた鉄と比較して著しく低い耐食性を表している。耐食性は、電気化学インピーダンス分光法(「EIS」)データによって計算することができる。耐食性を計算するためにEISデータをどのように使用可能であるかの一例は、「Analysis and Interpretation of EIS Data for Metals and Alloys」、技術報告書第26号、フロリアン・マンスフェルト(Florian Mansfeld)(ソーラトロン社(Solartron Limited)、1999年)に記載されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、表面の形態は高い均一性を示す。他の実施形態では、ステントの選択部分が特異的な処理を施される結果として優先腐食領域を有するステントが得られる。均一性は予測可能な機械的性能および一定した腐食速度を提供することができる。いくつかの実施形態では、本体表面の均一な形態により、該表面に施されたコーティングの均一な接着を可能にすることができる。パラメータSa、SqまたはSdrおよび平均山部間隔のうち少なくともいずれかによって特徴づけられるような形態の均一性は、1μm四方において約±20%以内、例えば±10%以内である。所与のステント領域では、均一性は±10%以内、例えば±1%であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックは、管腔外側(abluminal)もしくは管腔内側(adluminal)の表面全体のようなステントの全表面領域にわたって、または表面領域の中央25%もしくは50%のような表面領域の一部にわたって、高い均一性を示す。均一性は標準偏差として表現される。ステントの領域における均一性は、無作為に選ばれた5つの1μm四方の領域における平均を測定することと、標準偏差を計算することとによって決定することができる。ある領域における視覚的形態のタイプの均一性は、50K×におけるFESEMデータの検査によって決定される。
【0032】
上述の高表面積多孔性ナノ構造は、電気化学的処理によって鉄製ステント本体上に生成させることができる。この電気化学的処理により、得られるナノ構造の表面上に酸化鉄が存在する状態をもたらすことができる。この電気化学的処理には、正電位パルスと負電位パルスとの間を循環する間の陽極溶解を挙げることができる。電位パルスの循環は直流電流の方形波(「GSW」)または電位の方形波(「PSW」)によるものであってよい。例えば、鉄製のステント本体前駆体は、表面不純物を取り除いた鉄製のステント本体前駆体を1mol/dm3のNaOH溶液に曝露し、−1.2Vと0.5Vとの間で掃引速度50mV/sの電位パルスサイクリックボルタンメトリーを、または、0.017Hzで−1.2Vと0.5Vとの間の方形波(SQW)電位パルスを、200℃の温度で1時間、適用することにより、上述の高表面積多孔性ナノ構造を有するように改変することができる。いくつかの実施形態では、鉄製のステント本体前駆体の様々な部分を水酸化ナトリウムのような電解質に選択的に曝露することにより、鉄製のステント本体の特定の部分を、上述のナノ構造を有するように改変することができる。例えば、NaOHの小滴をステント本体前駆体の選択領域に適用して、ステント20の選択されたストラットの腐食増強領域26を作出することができる。
【0033】
ステント本体は、いくつかの実施形態では、ステントが制御された方式で劣化しうるように、高表面積の表面形態を有する選択領域を備えた表面を有することができる。例えば、図4Aに示されるように、ステント20のコネクタ24は腐食増強領域26を備えることができる。そのような配置構成により、コネクタ24が最初に劣化することが可能となり、これにより長手方向軸に沿ったステントの可撓性を高めることが可能となる一方、血管壁に対する径方向の抵抗は維持される。図4Bは、コネクタ24の腐食後のステントを示しているが、接続されていない、径方向の血管への抵抗を依然として提供することができるバンド22が残っている。
【0034】
図5A〜5Dは、ステント・ストラット(例えばバンドまたはコネクタの一部)の無制御な腐食と、腐食増強領域26を有するステント・ストラットの腐食との間の差異を示す。図5Aおよび5Bによって示されるように、無制御な分解は、ストラットが局部において狭小化して破断し、柱体強度を保持した鋭利なストラットを生じる原因となる場合があり、このことは穿刺のリスクを生む可能性がある。しかしながら、間隔を置いて配置された腐食増強領域26を有するステント・ストラットは穿刺のリスクを低減することができる。図5Cおよび5Dに示されるように、腐食増強領域26は低い柱体強度を有するストラットを生じるように腐食することができる。腐食増強領域26が腐食して容易に湾曲するストラットを生じることができるため、該ステント・ストラットの腐食は穿刺のリスクが低い。上記したように、この腐食増強領域26は、ステント・ストラットの選択された部分に電解質(例えばNaOH)の小滴を適用し、次いで正電位パルスと負電位パルスとの間の電位パルスサイクリックボルタンメトリーを適用することにより、鉄製のステント本体前駆体に生じさせることができる。
【0035】
ステント本体は、いくつかの実施形態では、1つ以上のコーティングを備えることができる。いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸(PGA)を基にしたブロックコポリマーがステント本体の表面上に重なっていてもよい。このブロックコポリマーは、例えばジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーであってよい。他のブロックは、他の生分解性ポリマー、例えばポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(「PLGA」)、または多糖類のブロックであってよい。いくつかの実施形態では、PGAとプルランのような非イオン性多糖類とのブロックコポリマーがステントの表面を覆ってもよい。
【0036】
PGAを基にしたブロックコポリマーは、ステントの表面に存在する酸化鉄とともに強健な界面接着を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸‐プルランのコーティングが、酸化鉄を含む表面を有する鉄製ステントに施されて、ステント本体と施されたコーティングとの間に強力な結合を有するステントを生産することができる。さらに、いくつかの実施形態では、ステント本体の表面は上述の高表面積多孔性ナノ構造の形態を有し、この形態がさらにステント本体の表面に対するブロックコポリマーの接着を増大させることができる。
【0037】
PGAを基にしたブロックコポリマーのコーティングは、該コーティングとステント本体とが腐食するにつれて周囲の組織に治療薬を送達するように設計された薬物溶出性コーティングであってもよい。用語「治療薬(therapeutic agent)」、「薬学的に活性を有する作用物質(pharmaceutically active agent)」、「薬学的に活性を有する物質(pharmaceutically active material)」、「薬学的に活性を有する成分(pharmaceutically active ingredient)」、「薬物(drug)」および他の関連する用語は、本明細書中において互換的に使用可能であり、該用語には、限定するものではないが、有機小分子、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、遺伝子治療薬送達用のベクター、細胞、および脈管の治療計画のための候補物であるとして(例えば再狭窄を低減または抑制する作用物質として)同定された治療薬が含まれる。有機小分子とは、50個以下の炭素原子および合計100個未満の水素以外の原子を有する有機分子を意味する。
【0038】
ここで開示される内部人工器官と併用するための典型的な非遺伝子治療薬には:(a)抗血栓薬、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン);(b)抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミン;(c)抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂薬、例えばパクリタキセル、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻止することができるモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカインおよびロピバカイン;(e)抗凝血剤、例えばD‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板薬およびダニ抗血小板ペプチド;(f)血管細胞増殖促進物質、例えば増殖因子、転写活性化因子および翻訳プロモータ;(g)血管細胞増殖抑制剤、例えば増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素とで構成される二機能分子、抗体と細胞毒素とで構成される二機能分子;(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えばチルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリンアナログ;(j)コレステロール降下剤;(k)アンジオポエチン;(l)抗菌物質、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントイン;(m)細胞毒性薬、細胞静止薬、および細胞増殖の影響因子;(n)血管拡張剤;(o)内在性の血管作動性機構を妨げる薬剤;(p)モノクローナル抗体のような、白血球動員の阻害剤;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)HSP90タンパク質(すなわち熱ショックタンパク質。熱ショックタンパク質は分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の増殖および生存を担う他のクライアントタンパク質/情報伝達タンパク質の安定性および機能に必要とされる)の阻害剤、例えばゲルダナマイシン;(t)α受容体拮抗薬(例えばドキサゾシン、タムスロシン)およびβ受容体作動薬(例えばドブタミン、サルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えばアテノロール、メタプロロール(metaprolol)、ブトキサミン)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(例えばロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンおよびテルミサルタン)、ならびに鎮痙薬(例えば塩化オキシブチニン、フラボキサート、トルテロジン、硫酸ヒヨスチアミン、ジクロミン(diclomine);(u)bARKct阻害剤;(v)ホスホランバン阻害剤;(w)Serca2遺伝子/タンパク質;(x)免疫応答修飾剤、例えばアミノキゾリン(aminoquizoline)、例えばレシキモド(resiquimod)およびイミキモド(imiquimod)のようなイミダゾキノリン、ならびに(y)ヒトのアポリポタンパク質(例えばAI、AII、AIII、AIV、AVなど)、が挙げられる。
【0039】
非遺伝子治療薬の具体例には、特に、パクリタキセル(その微粒子型、例えば、アルブミン結合型パクリタキセルナノ粒子(例えばABRAXANE(登録商標)のようなタンパク質結合型パクリタキセル粒子)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、EpoD、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT‐578(アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories))、トラピジル、リプロスチン(liprostin)、アクチノムチンD(Actinomcin D)、Resten‐NG(登録商標)、Ap‐17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトのアポリポタンパク質(例えばAI〜AV)、成長因子(例えばVEGF‐2)、ならびに前述のものの誘導体が挙げられる。
【0040】
ここで開示される内部人工器官と併用するための典型的な遺伝子治療薬には、アンチセンスDNAおよびRNA、ならびに様々なタンパク質をコードするDNA(およびタンパク質自体)、すなわち:(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥を有するかまたは欠損を有する内在性の分子を交換するtRNAまたはrRNA、(c)脈管形成因子および他の因子、例えば増殖因子、例えば酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、内皮細胞分裂促進因子、表皮増殖因子、形質転換増殖因子αおよびβ、血小板由来内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子ならびにインシュリン様増殖因子;(d)細胞周期阻害剤、例えばCD阻害剤、ならびに(e)チミジンキナーゼ(「TK」)および細胞増殖を妨げるのに有用なその他の作用物質、が挙げられる。さらに、骨形態形成タンパク質(「BMP」)ファミリー、例えばBMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6(Vgr‐1)、BMP‐7(OP‐1)、BMP‐8、BMP‐9、BMP‐10、BMP‐11、BMP‐12、BMP‐13、BMP‐14、BMP‐15およびBMP‐16をコードしているDNAも対象である。現時点で好ましいBMPは、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6およびBMP‐7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体またはこれらの組み合わせとして、単独で、または他の分子と一緒に提供可能である。別例として、または追加として、BMPの上流または下流での作用を引き起こすことができる分子が提供されてもよい。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質のうちのいずれか、またはそれらをコードするDNAが含まれる。
【0041】
遺伝子治療薬を送達するためのベクターには、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、ヘルパー依存型(gutted)アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、増殖型ウイルス(例えばONYX‐015)およびハイブリッドベクター;ならびに非ウイルスベクター、例えば人工染色体およびミニクロモソーム、プラスミドDNAベクター(例えばpCOR)、カチオン性ポリマー(例えばポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えばポリエーテル‐PEIおよびポリエチレンオキシド‐PEI)、中性ポリマーであるPVP、SP1017(スプラテック(SUPRATEK))、カチオン性脂質のような脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、またはマイクロ粒子であって、タンパク質導入ドメイン(PTD)のような標的配列を備えているものおよび備えていないものが挙げられる。
【0042】
ここで開示される内部人工器官と併用するための細胞には、ヒトを起源とする細胞(自己由来もしくは同種異系由来)、例えば全骨髄、骨髄由来単核細胞、始原細胞(例えば内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間充織幹細胞、造血幹細胞、ニューロン幹細胞)、多能性幹細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞もしくはマクロファージ、または動物、細菌もしくは真菌を起源とする細胞(異種由来)であって、対象とするタンパク質を送達するために、望ましい場合には、遺伝子操作可能であるもの、が挙げられる。
【0043】
多数の治療薬(上記に列挙されたものを必ずしも除外しない)が、脈管の治療計画のための候補物であるとして(例えば再狭窄を標的とする作用物質として)同定されている。そのような作用物質はここで開示される内部人工器官に有用であり、下記すなわち:(a)Caチャネル遮断薬、例えば、ジルチアゼムおよびクレンチアゼムのようなベンゾチアザピン(benzothiazapine)類、ニフェジピン、アムロジピンおよびニカルダピン(nicardapine)のようなジヒドロピリジン、ならびにベラパミルのようなフェニルアルキルアミン類;(b)セロトニン経路モジュレータ、例えばケタンセリンおよびナフチドロフリルのような5‐HT拮抗薬、ならびにフルオキセチンのような5‐HT吸収阻害剤;(c)環状ヌクレオチドの経路作用物質、例えば、シロスタゾールおよびジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、ホルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシンアナログ;(d)カテコールアミンモジュレータ、例えば、プラゾシンおよびブナゾシンのようなα‐拮抗薬、プロプラノロールのようなβ‐拮抗薬、ならびにラベタロールおよびカルベジロールのようなα/β‐拮抗薬;(e)エンドセリン受容体拮抗薬;(f)酸化窒素供与体/放出分子、例えば有機硝酸塩/亜硝酸塩、例えばニトログリセリン、二硝酸イソソルビドおよび亜硝酸アミル、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、モルシドミンおよびリンシドミンのようなシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートおよびアルカンジアミンのNO付加物のようなNONOアート、Sニトロソ化合物の低分子化合物(例えばカプトプリル、グルタチオンおよびN‐アセチルペニシラミンのSニトロソ基誘導体)および高分子化合物(例えばタンパク質、ペプチド、少糖類、多糖類、合成ポリマー/オリゴマーおよび天然ポリマー/オリゴマーのSニトロソ基誘導体)、ならびにCニトロソ化合物、Oニトロソ化合物、Nニトロソ化合物およびL‐アルギニン;(g)ACE阻害薬、例えばシラザプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル;(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシンおよびロサルチン(losartin);(i)血小板粘着阻害剤、例えばアルブミンおよびポリエチレンオキシド;(j)血小板凝集阻害剤、例えばシロスタゾール、アスピリンおよびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)ならびにGP IIb/IIIa阻害剤、例えばアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)およびチロフィバン;(k)凝固経路モジュレータ、例えばヘパリン、低分子ヘパリン、デキストラン硫酸およびβ‐シクロデキストリンテトラデカスルファートのようなヘパリン類似物質、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D‐phe‐L‐プロピル‐L‐arg‐クロロメチルケトン)およびアルガトロバンのようなトロンビン阻害物質、アンチスタチン(antistatin)およびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)のようなFXa阻害剤、ワルファリンのようなビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインC;(l)シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスルフィンピラゾン;(m)天然および合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)およびヒドロコルチゾン;(n)リポキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばノルジヒドログアヤレチック酸およびカフェ酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E‐セレクチンおよびP‐セレクチンの拮抗薬;(q)VCAM‐1およびICAM‐1相互作用の阻害剤;(r)プロスタグランジンおよびそのアナログ、例えばPGE1およびPGI2のようなプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストおよびベラプロストのようなプロスタサイクリンアナログ;(s)マクロファージ活性化防止剤、例えばビスホスホネート類;(t)HMG‐CoA還元酵素阻害剤、例えばロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチンおよびセリバスタチン;(u)魚油およびオメガ‐3‐脂肪酸;(v)フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、例えばプロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランスレチノイン酸ならびにSOD模倣体;(w)様々な成長因子に影響を及ぼす作用物質、例えば、bFGF抗体およびFGFキメラ融合タンパク質のようなFGF経路作用物質、トラピジルのようなPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチンおよびオクトレオチドのようなソマトスタチンアナログを含むIGF経路作用物質、ポリアニオン性作用物質(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF‐β抗体のようなTGF‐β経路作用物質、EGF抗体、EGF受容体拮抗薬およびEGFキメラ融合タンパク質のようなEGF経路作用物質、サリドマイドおよびそのアナログのようなTNF‐α経路作用物質、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ、ならびに、チルホスチン、ゲニステインおよびキノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;(x)MMP経路阻害剤、例えばマリマスタット、イロマスタットおよびメタスタット;(y)細胞運動阻害剤、例えばサイトカラシンB;(z)抗増殖剤/抗新生物剤、例えば代謝拮抗物質、例えばプリンアナログ(例えば、6‐メルカプトプリンまたは塩素化されたプリン・ヌクレオシドアナログであるクラドリビン)、ピリミジンアナログ(例えば、シタラビンおよび5‐フルオロウラシル)およびメトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エリスロマイシンのようなマクロライド抗生物質)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす作用物質(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、エポD、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管新生阻害剤(例えばエンドスタチン、アンギオスタチンおよびスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドールならびにスラミン;(aa)マトリックス沈着/構築経路阻害剤、例えばハロフジノンまたはその他のキナゾリノン誘導体およびトラニラスト、(bb)内皮化促進剤、例えばVEGFおよびRGDペプチド、ならびに(cc)血液レオロジーモジュレータ、例えばペントキシフィリン、のうち1つ以上が挙げられる。
【0044】
さらに別の治療薬には、免疫抑制剤、例えばシロリムスおよびマクロライド系抗生物質のような抗生物質があり、本明細書に開示される内部人工器官のためのエボロリムス(evorolimus)、ゾタロリムス、タクロリムス、ピクロリムス(picrolimus)、およびタクロリムスも米国特許第5,733,925号明細書に開示されている。
【0045】
治療薬が含まれる場合、様々な治療薬装荷物を本明細書中に開示されたPGAブロックコポリマーと併用可能であり、治療上有効な量は、当業者により容易に決定され、かつ最終的には、数ある要素の中でも特に、例えば治療の対象である疾患、患者の年齢、性別および状態、治療薬の性質、PGAブロックコポリマーもしくはステント本体のうち少なくともいずれか一方の腐食速度、またはステント自体の性質、のうち少なくともいずれかによって決まる。
【0046】
ステントは、所望の形状および大きさのもの(例えば冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、胃腸用ステント、泌尿器科用ステント、気管/気管支用ステント、および神経科用ステント)であってよい。適用に応じて、ステントは例えば約1mm〜約46mmの直径を有することができる。ある実施形態では、冠動脈ステントは約2mm〜約6mmの拡張時直径を有しうる。いくつかの実施形態では、末梢用ステントは約4mm〜約24mmの拡張時直径を有しうる。ある実施形態では、胃腸用ステントかつ/または泌尿器科用ステントは約6mm〜約30mmの拡張時直径を有しうる。いくつかの実施形態では、神経科用ステントは約1mm〜約12mmの拡張時直径を有しうる。腹部大動脈瘤(AAA)ステントおよび胸部大動脈瘤(TAA)ステントは、約20mm〜約46mmの直径を有しうる。ステントは、バルーン拡張型でも、自己拡張型でも、両者の混合型でもよい(例えば、米国特許第6,290,721号明細書)。他の内部人工器官または医療用デバイス、例えばカテーテル、ガイドワイヤおよびフィルタと共に、セラミックスが使用されてもよい。
【0047】
付録を含む本明細書中において言及された出版刊行物、特許出願、特許、ならびにその他の参照文献は全て、参照によってその全体が本願に組み込まれる。
多くの実施形態について説明してきた。しかしながら、本開示の思想および範囲から逸脱することなく様々な変更形態をなしうることが理解されるであろう。従って、他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官、特に生物侵食性(bioerodible)の内部人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
身体には、動脈、その他の血管およびその他の体腔のような様々な通路が含まれている。これらの通路は、時には閉塞したり脆弱化したりするようになる。例えば、通路は腫瘍によって閉塞する場合もあるし、プラークによって狭窄する場合もあるし、動脈瘤によって脆弱化することもありうる。このようなことが生じた場合に、医療用内部人工器官を用いて通路を再開させたり、補強したりすることができる。内部人工器官は典型的には、体内の管腔内に配置される管状部材である。内部人工器官の例には、ステント、カバー付きステント、およびステントグラフトが挙げられる。
【0003】
内部人工器官は、該内部人工器官が所望の部位へ運搬される際に圧縮サイズまたは縮小サイズの内部人工器官を支持するカテーテルによって、身体内部へと送達可能である。身体部位に到達すると、内部人工器官は拡張され、例えば管腔の壁面と接触できるようになる。ステントの送達については、ヒース(Heath)の特許文献1においてさらに議論されており、前記特許文献の全容は参照により本願に組込まれる。
【0004】
拡張機構には、内部人工器官を強制的に径方向に拡張させることが挙げられる。例えば、拡張機構には、バルーン拡張型の内部人工器官を担持するバルーンを備えるカテーテルを挙げることができる。該バルーンを膨張させて変形させ、拡張した内部人工器官を管腔壁に接触させて所定位置に固定することができる。その後、バルーンを収縮させ、カテーテルを管腔から抜去することができる。
【0005】
別の送達技術では、内部人工器官は、例えば弾性により、または材料の相転移により、可逆的に圧縮および拡張させることが可能な弾性材料から形成される。体内への導入中は、内部人工器官は圧縮状態で拘束される。所望の移植部位に到達すると、例えば外側シースのような拘束用デバイスを引き戻して、内部人工器官が自身の内的な弾性復元力によって自己拡張できるようにすることにより、拘束が解除される。
【0006】
内部人工器官を包含している通路は、再閉塞に至る可能性がある。そのような通路の再閉塞は再狭窄として知られている。ある種の薬物は、該薬物が内部人工器官に含まれていると再狭窄の発症を抑制できることが観察されている。内部人工器官に含められた治療薬すなわち薬物は、内部人工器官が移植されたら所定の方式で体液中へ溶出することが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,290,721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記事項を鑑みて血管内で開通性を維持することのできる改良された内部人工器官を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
貫通する流通路を画成している本体を備え、血管内で開通性を維持することのできる内部人工器官について説明する。該本体は鉄またはその合金を含んでいる。該本体は酸化鉄を含んでなるナノ構造化表面を有し、該表面において個々のナノ構造は少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、高さ対厚さアスペクト比は10:1〜20:1である。例えば、個々のナノ構造それぞれの高さは約50nm〜約500nmであってよい。いくつかの実施形態では、個々のナノ構造は、厚さの少なくとも2倍の幅をそれぞれ有している薄片構造を有することができる。例えば、個々の薄片ナノ構造それぞれの厚さは約5nm〜50nmであってよく、個々の薄片ナノ構造それぞれの幅は約100nm〜500nmであってよい。他の実施形態では、個々のナノ構造は米粒構造を有することができる。例えば、個々の米粒ナノ構造は約5nm〜50nmの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、隣接した個々のナノ構造の間の平均分離距離は約1nm〜50nmであってよい。
【0011】
本体のナノ構造化表面は、その粗さ特性または耐食性のうち少なくともいずれか一方によっても説明可能である。例えば、本体の表面は120〜200のSdrを有することができる。ナノ構造化表面は、5キロオーム未満(例えば約2キロオーム)の耐食性を有することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、内部人工器官は、ナノ構造化表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングをさらに備えることができる。例えば、ポリマーコーティングは、ポリグルタミン酸と、以下のポリマーすなわち:ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、および多糖類のうち1つ以上とのブロックコポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーは、ポリグルタミン酸と非イオン性の多糖類(例えばプルラン)とのブロックコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは治療薬を含んだ薬物溶出コーティングであってもよい。
【0013】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、生物侵食性であってもよい。例えば、本体が純鉄のような生物侵食性の金属を含んでいてもよい。存在する場合には、コーティングも生物侵食性ポリマーであってよい。
【0014】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、ステントであってもよい。
別の態様では、血管内で開通性を維持する能力を有する、貫通する流通路を画成している本体を備えている内部人工器官について説明する。該本体は、鉄またはその合金を含み、酸化鉄を含んでなる表面を有する。内部人工器官はさらに、該表面の上に、ポリグルタミン酸のブロックコポリマーを含んだコーティングを備えている。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸のブロックコポリマーは、ポリグルタミン酸と多糖類とのブロックコポリマーであってよい。多糖類はプルランのような非イオン性の多糖類であってよい。
【0016】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、生物侵食性であってもよい。例えば、本体が純鉄のような生物侵食性の金属を含んでもよく、さらにコーティングも生物侵食性ポリマーであってよい。
【0017】
内部人工器官は、いくつかの実施形態では、ステントであってもよい。
別の態様では、内部人工器官を生産する方法について説明する。該方法は、内部人工器官、または内部人工器官の前駆体、の一部を電解質溶液に曝露することと、内部人工器官に複数の電流パルスを印加することとを含んでいる。内部人工器官は鉄またはその合金を含む。電解質溶液に曝露される間に内部人工器官に電流パルスを印加することにより、該内部人工器官上に、少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する複数の個別ナノ構造を有するナノ構造化表面が作出される。
【0018】
いくつかの実施形態では、印加される電流パルスには、陰極パルス、陽極パルス、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。印加される電流パルスは、直流電流の方形波、電位の方形波、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0019】
該方法は、いくつかの実施形態では、ナノ構造化表面にポリマーを含んだコーティングを施すことをさらに含むことができる。
いくつかの実施形態では、内部人工器官は生物侵食性のステントであってよい。
【0020】
1つ以上の実施形態の詳細について、添付図面および以下の説明において述べる。他の特徴、目的および利点は、該説明および図面から、また特許請求の範囲から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】虚脱状態のステントの送達を例証する長手方向の断面図。
【図1B】図1Aに示すステントの拡張を例証する長手方向の断面図。
【図1C】図1Aに示すステントの展開配置を例証する長手方向の断面図。
【図2】拡張したステントの実施形態を示す斜視図。
【図3A】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3B】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3C】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3D】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3E】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図3F】少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有するナノ構造を備えた表面の例を示す図。
【図4A】バンド間のコネクタ上に腐食増強領域を有するステントを示す図。
【図4B】バンド間のコネクタの腐食後のステントを示す図。
【図5A】ステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5B】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5C】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【図5D】図5Aのステント・ストラットが、間隔をおいて配置された腐食増強領域を伴って、または腐食増強領域を伴わずに、どのようにして腐食するかを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な図面における同様の参照記号は同様の構成要素を示す。
図1A〜1Cを参照すると、ステント20は、カテーテル14の先端付近に担持されたバルーン12の上に配置され、該バルーンおよびステントを担持している部分が閉塞部18の領域に到達するまで管腔16(図1A)を通して導入される。その後、ステント20は、バルーン12を膨張させることにより径方向に拡張されて管壁に対して押し付けられ、その結果閉塞部18が圧縮されて、ステントを取り囲んでいる管壁は径方向に拡張する(図1B)。その後、バルーンから圧力が解放され、カテーテルが管から抜去される(図1C)。
【0023】
図2を参照すると、バルーン拡張式ステント20は、複数のバンド22と、隣接したバンドとバンドの間を伸びて該バンドを接続する複数のコネクタ24とによって画成された管状部材の形態からなるステント本体を有する。使用時には、バンド22を当初の小さな直径からより大きな直径へと拡張させてステント20を管壁に接触させることにより、管の開通性を維持することができる。コネクタ24は、ステント20に対して該ステントが管の輪郭に順応できるように可撓性および追従性を提供することができる。ステント20は該ステントを貫通する流通路を画成して、血管内の開通性を維持する。
【0024】
ステント20は、鉄またはその合金を含む本体を備えることができる。いくつかの実施形態では、ステント20は、1つ以上の生物侵食性の金属、例えばマグネシウム、亜鉛、鉄、またはこれらの合金を含む本体を備える。本体は酸化鉄を含む表面を有してもよい。
【0025】
ステント本体は、高表面積の多孔性ナノ構造を特徴とする形態からなる表面を有してもよい。該ナノ構造化表面は、間隔を置いて配置された個々のナノ構造の間および周りの凹部を特徴とする高表面積を提供することができる。例えば、個々のナノ構造は、粒子または薄片の形であってよい。該ナノ構造化表面は、ステント本体の生物侵食性金属の腐食または劣化を引き起こし腐食速度または劣化速度を加速することができる。さらに、ステント本体の選択された部分がナノ構造化表面を有するように処理されて、ステント劣化の選択部分が用意されてもよい。加えて、ナノ構造化表面により、コーティングが施されて該表面とかみ合い、付着を強化することが可能となる。いくつかの実施形態では、該表面はさらに、内皮の増殖を促進してステント20の内皮化(endothelialization)を増強することもできる。ナノ構造化表面はさらに、動きの自由度をより大きくすることを可能にして、ステント本体の制御された生物侵食の前の使用時に、ステントが屈曲されたときに破損しにくいステント本体を可能にすることができる。ステントの拡張時もしくは収縮時、またはステントが曲りくねって湾曲した体内管腔を通って送達されるときに、ステントの撓曲によって応力が引き起こされる場合があり、ステント軸からの距離の関数として増大する。その結果、いくつかの実施形態では、ナノ構造化表面は、ステント本体の表面の管腔外側領域(abluminal regions)または他の応力が高い地点に、例えば拡張時もしくは収縮時により大きく撓曲するコネクタ24に隣接しているバンド22の領域に存在しうる。
【0026】
ナノ構造化表面は、その外観、個々のナノ構造の大きさおよび配置、該表面の粗さまたは耐食性のうち少なくともいずれかによって特徴づけることができる。形態学的特徴を有する表面の例が図3A〜3Fに示されている。いくつかの実施形態では、表面の形態には「コーンフレーク」微細構造および/または「米粒」微細構造を挙げることができる。
【0027】
図3A〜3Cは、コーンフレークに類似した定義可能な薄い平らな薄片を特徴とするナノ構造化表面を示している。この「コーンフレーク」表面構造は、約50〜500nm、例えば約100〜300nmの高さ(H)と、約100〜500nm、例えば約200〜400nmの幅(W)と、約5〜50nm、例えば約10〜15nmの厚さ(T)とを有することができる。「コーンフレーク」構造は、約5:1またはそれ以上、例えば10:1〜20:1の高さ対厚さアスペクト比を有することができる。「コーンフレーク」構造は1つ以上の層の中で重なり合うことができる。隣接した「コーンフレーク」構造どうしの間の間隔は約1〜50nmである。
【0028】
図3D〜3Fは、米粒に類似した定義可能なサブミクロンサイズの粒子を特徴とするナノ構造化表面を示している。この「米粒」表面構造は、約50〜500nm、例えば約100〜300nmの高さ(H)と、約5nm〜50nm、例えば約10〜15nmの平均直径(D)とを有することができる。「米粒」構造は、約5:1またはそれ以上、例えば10:1〜20:1の高さ対直径アスペクト比を有する。「米粒」構造は1つ以上の層の中で重なり合うことができる。隣接した「米粒」構造どうしの間の間隔は約1〜50nmである。
【0029】
ナノ構造化表面の粗さは、平均粗さSa、自乗平均粗さSq、および界面の展開面積比Sdrのうち少なくともいずれかによって特徴づけることもできる。パラメータSaおよびSqは、表面のテクスチャの全体的な尺度を表わす。SaおよびSqは、様々なテクスチャ特徴の山部、谷部および間隔の識別においては比較的感度が低い。異なる視覚的形態を備えた表面が同様のSa値およびSq値を有する場合もある。ある種類の表面については、パラメータSaおよびSqはテクスチャの特徴において著しいずれを示す。Sdrは、測定領域の大きさの理想平面と比較して、テクスチャによって提供される付加的な表面積の割合(%)として表される。Sdrはさらに、同様の広さおよび平均粗さを有する表面を区別する。一般に、Sdrは、Saが変化してもしなくてもテクスチャの空間的複雑さにつれて増大することになる。本体の表面がナノ構造化表面を有するいくつかの実施形態では、Sdrは約100以上、例えば約120〜200であってよい。例えば、該表面は約150のSdrを有することができる。加えて、または別例として、該形態は、約20以上、例えば約20〜30のSqを有することができる。
【0030】
表面に酸化鉄を有している鉄製の高表面積多孔性ナノ構造の耐食性は、5キロオーム未満、例えば約2キロオームであってよい。これは、約20キロオームの耐食性を有する表面平滑仕上げを備えた鉄と比較して著しく低い耐食性を表している。耐食性は、電気化学インピーダンス分光法(「EIS」)データによって計算することができる。耐食性を計算するためにEISデータをどのように使用可能であるかの一例は、「Analysis and Interpretation of EIS Data for Metals and Alloys」、技術報告書第26号、フロリアン・マンスフェルト(Florian Mansfeld)(ソーラトロン社(Solartron Limited)、1999年)に記載されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、表面の形態は高い均一性を示す。他の実施形態では、ステントの選択部分が特異的な処理を施される結果として優先腐食領域を有するステントが得られる。均一性は予測可能な機械的性能および一定した腐食速度を提供することができる。いくつかの実施形態では、本体表面の均一な形態により、該表面に施されたコーティングの均一な接着を可能にすることができる。パラメータSa、SqまたはSdrおよび平均山部間隔のうち少なくともいずれかによって特徴づけられるような形態の均一性は、1μm四方において約±20%以内、例えば±10%以内である。所与のステント領域では、均一性は±10%以内、例えば±1%であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックは、管腔外側(abluminal)もしくは管腔内側(adluminal)の表面全体のようなステントの全表面領域にわたって、または表面領域の中央25%もしくは50%のような表面領域の一部にわたって、高い均一性を示す。均一性は標準偏差として表現される。ステントの領域における均一性は、無作為に選ばれた5つの1μm四方の領域における平均を測定することと、標準偏差を計算することとによって決定することができる。ある領域における視覚的形態のタイプの均一性は、50K×におけるFESEMデータの検査によって決定される。
【0032】
上述の高表面積多孔性ナノ構造は、電気化学的処理によって鉄製ステント本体上に生成させることができる。この電気化学的処理により、得られるナノ構造の表面上に酸化鉄が存在する状態をもたらすことができる。この電気化学的処理には、正電位パルスと負電位パルスとの間を循環する間の陽極溶解を挙げることができる。電位パルスの循環は直流電流の方形波(「GSW」)または電位の方形波(「PSW」)によるものであってよい。例えば、鉄製のステント本体前駆体は、表面不純物を取り除いた鉄製のステント本体前駆体を1mol/dm3のNaOH溶液に曝露し、−1.2Vと0.5Vとの間で掃引速度50mV/sの電位パルスサイクリックボルタンメトリーを、または、0.017Hzで−1.2Vと0.5Vとの間の方形波(SQW)電位パルスを、200℃の温度で1時間、適用することにより、上述の高表面積多孔性ナノ構造を有するように改変することができる。いくつかの実施形態では、鉄製のステント本体前駆体の様々な部分を水酸化ナトリウムのような電解質に選択的に曝露することにより、鉄製のステント本体の特定の部分を、上述のナノ構造を有するように改変することができる。例えば、NaOHの小滴をステント本体前駆体の選択領域に適用して、ステント20の選択されたストラットの腐食増強領域26を作出することができる。
【0033】
ステント本体は、いくつかの実施形態では、ステントが制御された方式で劣化しうるように、高表面積の表面形態を有する選択領域を備えた表面を有することができる。例えば、図4Aに示されるように、ステント20のコネクタ24は腐食増強領域26を備えることができる。そのような配置構成により、コネクタ24が最初に劣化することが可能となり、これにより長手方向軸に沿ったステントの可撓性を高めることが可能となる一方、血管壁に対する径方向の抵抗は維持される。図4Bは、コネクタ24の腐食後のステントを示しているが、接続されていない、径方向の血管への抵抗を依然として提供することができるバンド22が残っている。
【0034】
図5A〜5Dは、ステント・ストラット(例えばバンドまたはコネクタの一部)の無制御な腐食と、腐食増強領域26を有するステント・ストラットの腐食との間の差異を示す。図5Aおよび5Bによって示されるように、無制御な分解は、ストラットが局部において狭小化して破断し、柱体強度を保持した鋭利なストラットを生じる原因となる場合があり、このことは穿刺のリスクを生む可能性がある。しかしながら、間隔を置いて配置された腐食増強領域26を有するステント・ストラットは穿刺のリスクを低減することができる。図5Cおよび5Dに示されるように、腐食増強領域26は低い柱体強度を有するストラットを生じるように腐食することができる。腐食増強領域26が腐食して容易に湾曲するストラットを生じることができるため、該ステント・ストラットの腐食は穿刺のリスクが低い。上記したように、この腐食増強領域26は、ステント・ストラットの選択された部分に電解質(例えばNaOH)の小滴を適用し、次いで正電位パルスと負電位パルスとの間の電位パルスサイクリックボルタンメトリーを適用することにより、鉄製のステント本体前駆体に生じさせることができる。
【0035】
ステント本体は、いくつかの実施形態では、1つ以上のコーティングを備えることができる。いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸(PGA)を基にしたブロックコポリマーがステント本体の表面上に重なっていてもよい。このブロックコポリマーは、例えばジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーであってよい。他のブロックは、他の生分解性ポリマー、例えばポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(「PLGA」)、または多糖類のブロックであってよい。いくつかの実施形態では、PGAとプルランのような非イオン性多糖類とのブロックコポリマーがステントの表面を覆ってもよい。
【0036】
PGAを基にしたブロックコポリマーは、ステントの表面に存在する酸化鉄とともに強健な界面接着を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸‐プルランのコーティングが、酸化鉄を含む表面を有する鉄製ステントに施されて、ステント本体と施されたコーティングとの間に強力な結合を有するステントを生産することができる。さらに、いくつかの実施形態では、ステント本体の表面は上述の高表面積多孔性ナノ構造の形態を有し、この形態がさらにステント本体の表面に対するブロックコポリマーの接着を増大させることができる。
【0037】
PGAを基にしたブロックコポリマーのコーティングは、該コーティングとステント本体とが腐食するにつれて周囲の組織に治療薬を送達するように設計された薬物溶出性コーティングであってもよい。用語「治療薬(therapeutic agent)」、「薬学的に活性を有する作用物質(pharmaceutically active agent)」、「薬学的に活性を有する物質(pharmaceutically active material)」、「薬学的に活性を有する成分(pharmaceutically active ingredient)」、「薬物(drug)」および他の関連する用語は、本明細書中において互換的に使用可能であり、該用語には、限定するものではないが、有機小分子、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、遺伝子治療薬送達用のベクター、細胞、および脈管の治療計画のための候補物であるとして(例えば再狭窄を低減または抑制する作用物質として)同定された治療薬が含まれる。有機小分子とは、50個以下の炭素原子および合計100個未満の水素以外の原子を有する有機分子を意味する。
【0038】
ここで開示される内部人工器官と併用するための典型的な非遺伝子治療薬には:(a)抗血栓薬、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン);(b)抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミン;(c)抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂薬、例えばパクリタキセル、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻止することができるモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤;(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカインおよびロピバカイン;(e)抗凝血剤、例えばD‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板薬およびダニ抗血小板ペプチド;(f)血管細胞増殖促進物質、例えば増殖因子、転写活性化因子および翻訳プロモータ;(g)血管細胞増殖抑制剤、例えば増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素とで構成される二機能分子、抗体と細胞毒素とで構成される二機能分子;(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えばチルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイクリンアナログ;(j)コレステロール降下剤;(k)アンジオポエチン;(l)抗菌物質、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントイン;(m)細胞毒性薬、細胞静止薬、および細胞増殖の影響因子;(n)血管拡張剤;(o)内在性の血管作動性機構を妨げる薬剤;(p)モノクローナル抗体のような、白血球動員の阻害剤;(q)サイトカイン;(r)ホルモン;(s)HSP90タンパク質(すなわち熱ショックタンパク質。熱ショックタンパク質は分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の増殖および生存を担う他のクライアントタンパク質/情報伝達タンパク質の安定性および機能に必要とされる)の阻害剤、例えばゲルダナマイシン;(t)α受容体拮抗薬(例えばドキサゾシン、タムスロシン)およびβ受容体作動薬(例えばドブタミン、サルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えばアテノロール、メタプロロール(metaprolol)、ブトキサミン)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(例えばロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンおよびテルミサルタン)、ならびに鎮痙薬(例えば塩化オキシブチニン、フラボキサート、トルテロジン、硫酸ヒヨスチアミン、ジクロミン(diclomine);(u)bARKct阻害剤;(v)ホスホランバン阻害剤;(w)Serca2遺伝子/タンパク質;(x)免疫応答修飾剤、例えばアミノキゾリン(aminoquizoline)、例えばレシキモド(resiquimod)およびイミキモド(imiquimod)のようなイミダゾキノリン、ならびに(y)ヒトのアポリポタンパク質(例えばAI、AII、AIII、AIV、AVなど)、が挙げられる。
【0039】
非遺伝子治療薬の具体例には、特に、パクリタキセル(その微粒子型、例えば、アルブミン結合型パクリタキセルナノ粒子(例えばABRAXANE(登録商標)のようなタンパク質結合型パクリタキセル粒子)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、EpoD、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT‐578(アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories))、トラピジル、リプロスチン(liprostin)、アクチノムチンD(Actinomcin D)、Resten‐NG(登録商標)、Ap‐17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトのアポリポタンパク質(例えばAI〜AV)、成長因子(例えばVEGF‐2)、ならびに前述のものの誘導体が挙げられる。
【0040】
ここで開示される内部人工器官と併用するための典型的な遺伝子治療薬には、アンチセンスDNAおよびRNA、ならびに様々なタンパク質をコードするDNA(およびタンパク質自体)、すなわち:(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥を有するかまたは欠損を有する内在性の分子を交換するtRNAまたはrRNA、(c)脈管形成因子および他の因子、例えば増殖因子、例えば酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、内皮細胞分裂促進因子、表皮増殖因子、形質転換増殖因子αおよびβ、血小板由来内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子ならびにインシュリン様増殖因子;(d)細胞周期阻害剤、例えばCD阻害剤、ならびに(e)チミジンキナーゼ(「TK」)および細胞増殖を妨げるのに有用なその他の作用物質、が挙げられる。さらに、骨形態形成タンパク質(「BMP」)ファミリー、例えばBMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6(Vgr‐1)、BMP‐7(OP‐1)、BMP‐8、BMP‐9、BMP‐10、BMP‐11、BMP‐12、BMP‐13、BMP‐14、BMP‐15およびBMP‐16をコードしているDNAも対象である。現時点で好ましいBMPは、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6およびBMP‐7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体またはこれらの組み合わせとして、単独で、または他の分子と一緒に提供可能である。別例として、または追加として、BMPの上流または下流での作用を引き起こすことができる分子が提供されてもよい。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質のうちのいずれか、またはそれらをコードするDNAが含まれる。
【0041】
遺伝子治療薬を送達するためのベクターには、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、ヘルパー依存型(gutted)アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなど)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、増殖型ウイルス(例えばONYX‐015)およびハイブリッドベクター;ならびに非ウイルスベクター、例えば人工染色体およびミニクロモソーム、プラスミドDNAベクター(例えばpCOR)、カチオン性ポリマー(例えばポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えばポリエーテル‐PEIおよびポリエチレンオキシド‐PEI)、中性ポリマーであるPVP、SP1017(スプラテック(SUPRATEK))、カチオン性脂質のような脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、またはマイクロ粒子であって、タンパク質導入ドメイン(PTD)のような標的配列を備えているものおよび備えていないものが挙げられる。
【0042】
ここで開示される内部人工器官と併用するための細胞には、ヒトを起源とする細胞(自己由来もしくは同種異系由来)、例えば全骨髄、骨髄由来単核細胞、始原細胞(例えば内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間充織幹細胞、造血幹細胞、ニューロン幹細胞)、多能性幹細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞もしくはマクロファージ、または動物、細菌もしくは真菌を起源とする細胞(異種由来)であって、対象とするタンパク質を送達するために、望ましい場合には、遺伝子操作可能であるもの、が挙げられる。
【0043】
多数の治療薬(上記に列挙されたものを必ずしも除外しない)が、脈管の治療計画のための候補物であるとして(例えば再狭窄を標的とする作用物質として)同定されている。そのような作用物質はここで開示される内部人工器官に有用であり、下記すなわち:(a)Caチャネル遮断薬、例えば、ジルチアゼムおよびクレンチアゼムのようなベンゾチアザピン(benzothiazapine)類、ニフェジピン、アムロジピンおよびニカルダピン(nicardapine)のようなジヒドロピリジン、ならびにベラパミルのようなフェニルアルキルアミン類;(b)セロトニン経路モジュレータ、例えばケタンセリンおよびナフチドロフリルのような5‐HT拮抗薬、ならびにフルオキセチンのような5‐HT吸収阻害剤;(c)環状ヌクレオチドの経路作用物質、例えば、シロスタゾールおよびジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、ホルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシンアナログ;(d)カテコールアミンモジュレータ、例えば、プラゾシンおよびブナゾシンのようなα‐拮抗薬、プロプラノロールのようなβ‐拮抗薬、ならびにラベタロールおよびカルベジロールのようなα/β‐拮抗薬;(e)エンドセリン受容体拮抗薬;(f)酸化窒素供与体/放出分子、例えば有機硝酸塩/亜硝酸塩、例えばニトログリセリン、二硝酸イソソルビドおよび亜硝酸アミル、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、モルシドミンおよびリンシドミンのようなシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートおよびアルカンジアミンのNO付加物のようなNONOアート、Sニトロソ化合物の低分子化合物(例えばカプトプリル、グルタチオンおよびN‐アセチルペニシラミンのSニトロソ基誘導体)および高分子化合物(例えばタンパク質、ペプチド、少糖類、多糖類、合成ポリマー/オリゴマーおよび天然ポリマー/オリゴマーのSニトロソ基誘導体)、ならびにCニトロソ化合物、Oニトロソ化合物、Nニトロソ化合物およびL‐アルギニン;(g)ACE阻害薬、例えばシラザプリル、フォシノプリルおよびエナラプリル;(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシンおよびロサルチン(losartin);(i)血小板粘着阻害剤、例えばアルブミンおよびポリエチレンオキシド;(j)血小板凝集阻害剤、例えばシロスタゾール、アスピリンおよびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)ならびにGP IIb/IIIa阻害剤、例えばアブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)およびチロフィバン;(k)凝固経路モジュレータ、例えばヘパリン、低分子ヘパリン、デキストラン硫酸およびβ‐シクロデキストリンテトラデカスルファートのようなヘパリン類似物質、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D‐phe‐L‐プロピル‐L‐arg‐クロロメチルケトン)およびアルガトロバンのようなトロンビン阻害物質、アンチスタチン(antistatin)およびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)のようなFXa阻害剤、ワルファリンのようなビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインC;(l)シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスルフィンピラゾン;(m)天然および合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)およびヒドロコルチゾン;(n)リポキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばノルジヒドログアヤレチック酸およびカフェ酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E‐セレクチンおよびP‐セレクチンの拮抗薬;(q)VCAM‐1およびICAM‐1相互作用の阻害剤;(r)プロスタグランジンおよびそのアナログ、例えばPGE1およびPGI2のようなプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストおよびベラプロストのようなプロスタサイクリンアナログ;(s)マクロファージ活性化防止剤、例えばビスホスホネート類;(t)HMG‐CoA還元酵素阻害剤、例えばロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチンおよびセリバスタチン;(u)魚油およびオメガ‐3‐脂肪酸;(v)フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、例えばプロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランスレチノイン酸ならびにSOD模倣体;(w)様々な成長因子に影響を及ぼす作用物質、例えば、bFGF抗体およびFGFキメラ融合タンパク質のようなFGF経路作用物質、トラピジルのようなPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチンおよびオクトレオチドのようなソマトスタチンアナログを含むIGF経路作用物質、ポリアニオン性作用物質(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF‐β抗体のようなTGF‐β経路作用物質、EGF抗体、EGF受容体拮抗薬およびEGFキメラ融合タンパク質のようなEGF経路作用物質、サリドマイドおよびそのアナログのようなTNF‐α経路作用物質、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ、ならびに、チルホスチン、ゲニステインおよびキノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;(x)MMP経路阻害剤、例えばマリマスタット、イロマスタットおよびメタスタット;(y)細胞運動阻害剤、例えばサイトカラシンB;(z)抗増殖剤/抗新生物剤、例えば代謝拮抗物質、例えばプリンアナログ(例えば、6‐メルカプトプリンまたは塩素化されたプリン・ヌクレオシドアナログであるクラドリビン)、ピリミジンアナログ(例えば、シタラビンおよび5‐フルオロウラシル)およびメトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エリスロマイシンのようなマクロライド抗生物質)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす作用物質(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、エポD、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管新生阻害剤(例えばエンドスタチン、アンギオスタチンおよびスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドールならびにスラミン;(aa)マトリックス沈着/構築経路阻害剤、例えばハロフジノンまたはその他のキナゾリノン誘導体およびトラニラスト、(bb)内皮化促進剤、例えばVEGFおよびRGDペプチド、ならびに(cc)血液レオロジーモジュレータ、例えばペントキシフィリン、のうち1つ以上が挙げられる。
【0044】
さらに別の治療薬には、免疫抑制剤、例えばシロリムスおよびマクロライド系抗生物質のような抗生物質があり、本明細書に開示される内部人工器官のためのエボロリムス(evorolimus)、ゾタロリムス、タクロリムス、ピクロリムス(picrolimus)、およびタクロリムスも米国特許第5,733,925号明細書に開示されている。
【0045】
治療薬が含まれる場合、様々な治療薬装荷物を本明細書中に開示されたPGAブロックコポリマーと併用可能であり、治療上有効な量は、当業者により容易に決定され、かつ最終的には、数ある要素の中でも特に、例えば治療の対象である疾患、患者の年齢、性別および状態、治療薬の性質、PGAブロックコポリマーもしくはステント本体のうち少なくともいずれか一方の腐食速度、またはステント自体の性質、のうち少なくともいずれかによって決まる。
【0046】
ステントは、所望の形状および大きさのもの(例えば冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、胃腸用ステント、泌尿器科用ステント、気管/気管支用ステント、および神経科用ステント)であってよい。適用に応じて、ステントは例えば約1mm〜約46mmの直径を有することができる。ある実施形態では、冠動脈ステントは約2mm〜約6mmの拡張時直径を有しうる。いくつかの実施形態では、末梢用ステントは約4mm〜約24mmの拡張時直径を有しうる。ある実施形態では、胃腸用ステントかつ/または泌尿器科用ステントは約6mm〜約30mmの拡張時直径を有しうる。いくつかの実施形態では、神経科用ステントは約1mm〜約12mmの拡張時直径を有しうる。腹部大動脈瘤(AAA)ステントおよび胸部大動脈瘤(TAA)ステントは、約20mm〜約46mmの直径を有しうる。ステントは、バルーン拡張型でも、自己拡張型でも、両者の混合型でもよい(例えば、米国特許第6,290,721号明細書)。他の内部人工器官または医療用デバイス、例えばカテーテル、ガイドワイヤおよびフィルタと共に、セラミックスが使用されてもよい。
【0047】
付録を含む本明細書中において言及された出版刊行物、特許出願、特許、ならびにその他の参照文献は全て、参照によってその全体が本願に組み込まれる。
多くの実施形態について説明してきた。しかしながら、本開示の思想および範囲から逸脱することなく様々な変更形態をなしうることが理解されるであろう。従って、他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する流通路を画成している本体を含んでなる内部人工器官であって、本体は血管内で開通性を維持する能力を有することと、本体は鉄またはその合金を含んでなることと、本体は酸化鉄を含んでなるナノ構造化表面を有し、該表面において個々のナノ構造は少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有することとを特徴とする内部人工器官。
【請求項2】
高さ対厚さアスペクト比は10:1〜20:1である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
個々のナノ構造は約50nm〜約500nmの高さを有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項4】
個々のナノ構造は、厚さの少なくとも2倍の幅をそれぞれ有している薄片構造を有することと、個々のナノ構造それぞれの厚さは約5nm〜50nmであり、個々のナノ構造それぞれの幅は約100nm〜500nmであることとを特徴とする、請求項3に記載の内部人工器官。
【請求項5】
個々のナノ構造は、約5nm〜50nmの直径を有する米粒構造を有する、請求項3に記載の内部人工器官。
【請求項6】
隣接した個々のナノ構造の間の平均分離距離は約1nm〜50nmである、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項7】
表面は120〜200のSdrを有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項8】
表面は5キロオーム未満の耐食性を有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項9】
ナノ構造化表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングをさらに含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項10】
ポリマーコーティングは、ポリグルタミン酸と、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、多糖類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されたポリマーとのブロックコポリマーを含んでなる、請求項9に記載の内部人工器官。
【請求項11】
ポリマーは、ポリグルタミン酸と非イオン性の多糖類とのブロックコポリマーを含んでなる、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
非イオン性の多糖類はプルランである、請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項13】
ポリマーコーティングは治療薬を含んでなる薬物溶出コーティングである、請求項9に記載の内部人工器官。
【請求項14】
内部人工器官は生物侵食性である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項15】
内部人工器官はステントである、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項16】
貫通する流通路を画成している本体を含んでなる内部人工器官であって、本体は血管内で開通性を維持する能力を有することと、本体は鉄またはその合金を含んでなることと、本体は酸化鉄を含んでなる表面を有することと、内部人工器官は該表面を覆うコーティングを含んでなることと、該コーティングはポリグルタミン酸のブロックコポリマーを含んでなることとを特徴とする内部人工器官。
【請求項17】
ポリグルタミン酸のブロックコポリマーはポリグルタミン酸および多糖類のブロックコポリマーである、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項18】
多糖類は非イオン性の多糖類である、請求項17に記載の内部人工器官。
【請求項19】
多糖類はプルランである、請求項17に記載の内部人工器官。
【請求項20】
表面は120〜200のSdrを有する、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項21】
内部人工器官は生物侵食性である、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項22】
内部人工器官はステントである、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項23】
内部人工器官を生産する方法であって、
内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方の一部を、電解質溶液に曝露することと、該内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方は、鉄およびその合金のいずれか一方を含んでなることと、
該内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方に、複数の電流パルスを印加して、該内部人工器官上に、少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する複数の個別ナノ構造を有するナノ構造化表面を作出することとを含んでなる方法。
【請求項24】
印加される電流パルスは、陰極パルス、陽極パルスおよびこれらの組み合わせのいずれか一方を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
印加される電流パルスは、直流電流の方形波、電位の方形波およびこれらの組み合わせのいずれか一方を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ナノ構造化表面に、ポリマーを含むるコーティングを施すことをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
内部人工器官は生物侵食性のステントである、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
貫通する流通路を画成している本体を含んでなる内部人工器官であって、本体は血管内で開通性を維持する能力を有することと、本体は鉄またはその合金を含んでなることと、本体は酸化鉄を含んでなるナノ構造化表面を有し、該表面において個々のナノ構造は少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有することとを特徴とする内部人工器官。
【請求項2】
高さ対厚さアスペクト比は10:1〜20:1である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
個々のナノ構造は約50nm〜約500nmの高さを有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項4】
個々のナノ構造は、厚さの少なくとも2倍の幅をそれぞれ有している薄片構造を有することと、個々のナノ構造それぞれの厚さは約5nm〜50nmであり、個々のナノ構造それぞれの幅は約100nm〜500nmであることとを特徴とする、請求項3に記載の内部人工器官。
【請求項5】
個々のナノ構造は、約5nm〜50nmの直径を有する米粒構造を有する、請求項3に記載の内部人工器官。
【請求項6】
隣接した個々のナノ構造の間の平均分離距離は約1nm〜50nmである、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項7】
表面は120〜200のSdrを有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項8】
表面は5キロオーム未満の耐食性を有する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項9】
ナノ構造化表面の少なくとも一部を覆うポリマーコーティングをさらに含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項10】
ポリマーコーティングは、ポリグルタミン酸と、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、多糖類、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されたポリマーとのブロックコポリマーを含んでなる、請求項9に記載の内部人工器官。
【請求項11】
ポリマーは、ポリグルタミン酸と非イオン性の多糖類とのブロックコポリマーを含んでなる、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
非イオン性の多糖類はプルランである、請求項11に記載の内部人工器官。
【請求項13】
ポリマーコーティングは治療薬を含んでなる薬物溶出コーティングである、請求項9に記載の内部人工器官。
【請求項14】
内部人工器官は生物侵食性である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項15】
内部人工器官はステントである、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項16】
貫通する流通路を画成している本体を含んでなる内部人工器官であって、本体は血管内で開通性を維持する能力を有することと、本体は鉄またはその合金を含んでなることと、本体は酸化鉄を含んでなる表面を有することと、内部人工器官は該表面を覆うコーティングを含んでなることと、該コーティングはポリグルタミン酸のブロックコポリマーを含んでなることとを特徴とする内部人工器官。
【請求項17】
ポリグルタミン酸のブロックコポリマーはポリグルタミン酸および多糖類のブロックコポリマーである、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項18】
多糖類は非イオン性の多糖類である、請求項17に記載の内部人工器官。
【請求項19】
多糖類はプルランである、請求項17に記載の内部人工器官。
【請求項20】
表面は120〜200のSdrを有する、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項21】
内部人工器官は生物侵食性である、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項22】
内部人工器官はステントである、請求項16に記載の内部人工器官。
【請求項23】
内部人工器官を生産する方法であって、
内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方の一部を、電解質溶液に曝露することと、該内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方は、鉄およびその合金のいずれか一方を含んでなることと、
該内部人工器官および内部人工器官の前駆体のいずれか一方に、複数の電流パルスを印加して、該内部人工器官上に、少なくとも5:1の高さ対厚さアスペクト比を有する複数の個別ナノ構造を有するナノ構造化表面を作出することとを含んでなる方法。
【請求項24】
印加される電流パルスは、陰極パルス、陽極パルスおよびこれらの組み合わせのいずれか一方を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
印加される電流パルスは、直流電流の方形波、電位の方形波およびこれらの組み合わせのいずれか一方を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ナノ構造化表面に、ポリマーを含むるコーティングを施すことをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
内部人工器官は生物侵食性のステントである、請求項23に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公表番号】特表2011−519697(P2011−519697A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508711(P2011−508711)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043326
【国際公開番号】WO2009/137786
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043326
【国際公開番号】WO2009/137786
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
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