内部欠陥及び配筋位置表記装置
【課題】
本発明の目的は、電磁波レーダを使用して空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別し、コンクリート表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射し、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波による出力信号に基づいて被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別すると共に、電磁波の移動速度と識別結果とに基づいて空洞と配筋との少なくとも一方を区別してコンクリート構造物表面にマーキングを施すことを特徴とする。
本発明の目的は、電磁波レーダを使用して空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別し、コンクリート表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射し、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波による出力信号に基づいて被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別すると共に、電磁波の移動速度と識別結果とに基づいて空洞と配筋との少なくとも一方を区別してコンクリート構造物表面にマーキングを施すことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の内部に存在する空洞等の内部欠陥や、配設された鉄筋を検出し、内部欠陥と配筋位置とを白動的にコンクリート構造物表面に表記する新規な内部欠陥及び配筋位置表記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディング等の解体工事や修理、増設工事において、建築物を構成しているコンクリート構追物を削孔作業する際には、内部に配設された鉄筋の位置を正確に知り、コンクリートを適切に削る必要がある。また、解体しない部分でも大きな空洞があれば、安全上その位置を知って補修しておくことも重要である。数十年前に建設されたビルディングでは、必ずしも設計図面通りに鉄筋が配設されていないことや、当時の図面が保管されていない場合もあり、さらには建設会杜が倒産して配筋位置を正確に把握できないこと等、これらは解体、補修作業の隘路となっていた。
【0003】
又、図面がない場合には部分的に何箇所か崩し、大体の配筋位置を探り当てる方法であり、また図面があっても、人間がこれを見ながら削孔作業し、配筋の位置を確認してコンクリート表面にマーキングしているため、作業効率が悪い問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、近年、例えば電磁波レーダを使用してコンクリート構造物に電磁波を照射し、走査距離と検出画像とから配筋位置を人間が確認し、これに基づいてコンクリート表面にマーキングを行う方法が採用されてきた。しかしながらこの方法でも、人間がマーキングしなければならず、わずらわしく作業効率が悪い欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電磁波レーダを使用して空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別し、コンクリート構造物表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電磁波を発生する電磁波レーダ回路部と、前記電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射する送信アンテナと、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波を受信する受信アンテナと、前記受信した反射電磁波を増幅する増幅部と、該増幅された出力信号に基づいて波形処理する信号処理部と、前記被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別する判定部と、前記電磁波レーダ回路部の移動速度を検出する速度センサ部と、該速度センサ部からの検出信号により移動速度を算出する移動速度算出部と、前記算出結果と前記識別結果とに基づいて前記コンクリート構造物へのマーキングを行うタイミングを決定するマーキングタイミング算出部と、該マーキングタイミングの算出結果により駆動されるマーキング装置とを備え、該マーキング装置により前記判定部からの出力信号に基づいて前記空洞及び配筋の少なくとも一方を前記マーキングとして前記コンクリート構造物の表面に施すことを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置にある。
【0007】
前記マーキング装置は、インクジェット方式であること、又、前記マーキングを、前記空洞と配筋とを異なる色で識別表記することが好ましい。
【0008】
即ち、本発明は、電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射し、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波による出力信号に基づいて前記被検出物中の空洞及び配筋を識別すると共に、前記電磁波の移動速度と前記識別結果とに基づいて前記空洞と配筋とを区別して前記コンクリート構造物表面にマーキングを施すものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電磁波レーダを使用し、空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別してコンクリート構造物表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明における内部欠陥及び配筋位置表記装置を示す原理図、図2は図1の内部欠陥及び配筋位置表記装置の具体的な構成を示す平面図、図3はその正面図、図4はその側面図である。内部欠陥及び配筋位置表記装置1は、電磁波レーダ回路7、制御回路8、送信アンテナ2、受信アンテナ3、側面の一方にマーキング装置4、後述する速度センサ部8dを有する。コンクリート構造物5中の内部に存在する被検出物6は、例えば空洞や鉄筋を示し、Dはコンクリート構造物5表面からの被検出物6の深度である。内部欠陥及び配筋位置表記装置1には、電磁波レーダ回路7、制御回路8等を内蔵すると共に、外部に移動方向となる両側面下方に4個の車輪10を設けて平面方向に走行できるよう構成している。送信アンテナ2から発射された電磁波2aが被検出物6に当たると、その反射波3aが受信アンテナ3で受信される。詳細は後述するが、受信信号に基づいて被検出物6の種類、及びその深度を把握し、マーキング装置4によりコンクリート構造物5の表面に所定の色でマーキングするものである。
【0011】
更に、内部欠陥及び配筋位置表記装置1の上面左右端部付近には2個のハンドル11、上面中央部には計測表示部である表示パネル9をそれぞれ設けている。ハンドル11を手で握持してコンクリート構造物5の表面を走行移動させ、内部欠陥である空洞と配筋の画像表示及びその深度検出と、これらの結果を元にコンクリート構造物5の表面に前述の色別の白動表記を行うことができる。
【0012】
深度Dを算出するには、電磁波の送信から反射波の受信までに要する時間Toと、コンクリート構造物5中での電磁波の伝播速度Vとの関係式を用いる。
D=V・To/2
ここで、コンクリート構造物5中の伝播速度Vは、真空中での速度とコンクリート構造物5の比誘電率との関係で決まり、下記の計算式で求められる。
V=Vc/√εo
Vc;真空中の電磁波速度…3.0×108m/s
εo:コンクリートの比誘電率
図5は、本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路8は、受信アンテナ3で受信された反射波3aを増幅部8aにより増幅し、これを信号処理部8bで波形処理して被検出物6が空洞か配筋かのいずれかの信号を発する。その結果に基づいて計測表示部9に空洞及び配筋の少なくとも一方を画像表示する。判定部8cでは被検出物6が空洞か配筋かを識別し、その識別結果をマーキング装置4とマーキングタイミング算出部8fに送信する。
【0013】
速度センサ部8dは内部欠陥及び配筋位置表記装置本体1の移動に伴って、例えば走行用の車輪10の回転に同期して回転してパルスを発生する複数の磁石体を有するパルス発生機とその信号を検出するセンサを有するものであり、このセンサからの信号を元に移動速度算出部8eで移動速度を計算した後、マーキングタイミング算出部8fによりマーキングの最適タイミングを算出する。この算出結果と被検出物6の識別結果に基づいてマーキング装置4を駆動し、コンクリート構造物5の表面に後述するように、空洞は赤色、配筋は青色の識別マーキングを行う。配筋は連続しているので線状に描かれるが、空洞が連続することは稀であり、殆どが点で描かれることとなる。これらのマーキングにおいて、空洞か配筋かを色で識別する他、例えば深度Dを示す数字を所定の水平距離間隔で併用表記することも可能である。
【0014】
計測表示部9は、三原色により、例えば空洞は赤色、空洞の大きさ数値は黄色、配筋は青色、深度Dの値は黒色等、視覚的に明瞭な任意の色を選定して表記できるようにすることが好ましい。
【0015】
図6及び図7は、それぞれ空洞と金属(配筋)の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。いずれの図における波形も周波数に応じた無数の波形で形成されており、その一番外側の波形を示したものである。縦方向は時間軸、横方向は波形の一十振幅を示す。電磁波レーダから発射された電磁波は、被照射物体の物性によって反射の形態が異なる性質を有し、主な性質は下記のとおりである。
(1)誘電率ε、導電率ρ、透磁率μの異なる境界において、電磁波は反射する。
(2)境界面の誘電率εの比によって反射波の位相が決まる。
(3)空洞の場合には、反射波の位相は入射波に対して逆相となる。
(4)金属の場合には、反射波の位相は入射波に対して全反射となる。
【0016】
コンクリートの誘電率は約10、空気のそれは1であり、この電気的特性が境界部分で大から小に変化するため、前記の性質によって空洞があれば入射波に対し逆相の反射波が生じることになる。従って、図6において、電磁波レーダからコンクリート構造物5内部に向けて発射された入射波を基本波(b)とすれば、反射波として検出される空洞検出波(a)は点線部Biで示すように、逆相(一)方向に振幅の大きい波形となる。この空洞検出波から基本波形を減算処理することによって、(c)のノイズ分を少なくし強調された空洞出力波形Boを得る。空洞の大きさは、空洞出力波形Boの振幅と時間軸幅とから決まり、所定の値以上にあれば危険な空洞と判断して表記することも可能である。
【0017】
又、被検出物6が金属の場合は、その誘電率がほぼ∞で、コンクリートの約10に比べ逢かに大きく、前記(4)の性質により全反射となる。従って、図7において、反射波として検出される金属検出波(a)は点線部Miで示すように、同相(十)方向に振幅の大きい波形となる。空洞の場合と同様にこの金属検出波から基本波(b)を減算処理することによって、(c)のノイズ分を少なくし強調された金属出力波形Moが得られる。
【0018】
図8は被検出物として空洞位置を検知する場合の測定例を示す構成図である。又、図9はその反射波形を示す線図であり、図6及び7と同様の波形である。図8に示すように、被検出物6として空洞の位置がレーダの真下にある場合には、電磁波レーダ表記装置本体1を(a)、(b)及び(c)の順に移動させることにより、反射波を捕らえる時間T2(b)が一番短く、T1(a)、T3(c)のように、その位置から遠ざかるほど、反射波を捕らえる時間が長くなる。空洞位置から反射波を捕らえる時間T2が一番短いため、振幅が大きく、T1、T3のようにその位置から遠ざかるほど、反射波の振幅が小さくなる。空洞位置をXtとした場合、前後のXt−1、Xt+1での空洞からの反射波振幅値を比較し、一番大きいときのXtをマーキング位置と判断する。なお金属位置を検知する場合にも、同様の方法で行う。
【0019】
図10は実際にマーキングするタイミング時期を算出する方法を示す構成図である。マーキング位置と判断した空洞又は配筋に対し、電磁波レーダ表記装置本体1の移動速度と、マーキング装置4の位置との関係から、実際にマーキングするタイミングを決定する必要がある。レーダアンテナの指向性により、送信アンテナ2と受信アンテナ3との中間点Pが、被検出物6の検出位置基準点となる。被検出物6を検知したとき、内部欠陥及び配筋位置表記装置1の移動速度Vsから距離Dsの相当分を時間遅延させ、マーキング装置4のインクジェット機構を動作させる。
【0020】
図11は本発明のマーキング方法を示すマーキング装置の構成図である。本実施例のマーキング装置4は、インクジェット方式によるものであり、インク4aの赤色とインク4bの青色を有する。インク4aの赤色とインク4bの青色とは空洞を赤色、配筋を青色として電磁弁13によって区別してマーキングすることができる。マーキングはインクジェット4cによってコンクリート構造物5の表面にマーク4dのようにインクが塗布され行われる。ここでインク4a、4bは、容易には水で消えることなく、コンクリート構造物5表面になじみやすい合成樹脂塗料が好適である。インクジェット方式は、必要な塗布量のみインクが噴出するので、塗料が無駄にならない利点がある。
【0021】
配筋は連続しているので、配筋の長手方向に沿ってスキャニングした場合には連続しているので線状に描かれるが、配筋の長手方向に対して直角にスキャニングした場合には連続した点で表され、空洞が連続することは稀であり、殆どが点で描かれることとなる。しかし、やや大きな空洞では点の集まりで描かれることとなる。
【0022】
又、それぞれに三原色のインクを貯蔵したマーキング装置4を準備することにより、例えば空洞は赤色、空洞の大きさ数値は黄色、配筋は青色、深度Dの値は黒色等、視覚的に明瞭な任意の色を選定して表記できるようにすることが好ましい。
【0023】
本実施例においては、コンクリート構造物5の壁面を垂直方向に移動させる場合にも、水平面を移動させるのと同じく人間の手によって行えばよいが、高い位置まで移動させるのが困難なときは、例えば無線自動走行装置と白動吸着盤とを組み合わせて設置し、所定のプログラムに従って垂直面を移動できるよう構成してもよい。この構成によれば、広い水平面を移動させる場合にも適用できる。
【0024】
本実施例によれば、コンクリート構造物5の表面を走行移動させるだけで、その表面に内部欠陥である空洞と配筋とを区別して白動的に表記することができ、又、マーキング装置はインクジェット方式としたため塗料が無駄にならず、さらに空洞と配筋とを異なる色で識別表記できるようにすることができ、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の構成図である。
【図2】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の構成を示すブロック図である。
【図6】空洞の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。
【図7】金属(配筋)の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。
【図8】被検出物として空洞位置を検知する場合の測定例を示す構成図である。
【図9】図8における反射波形を示す線図である。
【図10】実際にマーキングするタイミング時期を算出する方法を示す構成図である。
【図11】本発明のマーキング方法を示すマーキング装置の構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1…内部欠陥及び配筋位置表記装置、2…送信アンテナ、2a…送信波、3…受信アンテナ、3a…反射波、4…マーキング装置、5…コンクリート構造物、6…被検出物、7…電磁波レーダ回路部、8…制御回路、8a…増幅部、8b…信号処理部、8c…判定部、8d…速度センサ部、8e…移動速度算出部、8f…マーキングタイミング算出部、9…表示パネル、10…車輪、11…ハンドル、12…ノズル、13…電磁弁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の内部に存在する空洞等の内部欠陥や、配設された鉄筋を検出し、内部欠陥と配筋位置とを白動的にコンクリート構造物表面に表記する新規な内部欠陥及び配筋位置表記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディング等の解体工事や修理、増設工事において、建築物を構成しているコンクリート構追物を削孔作業する際には、内部に配設された鉄筋の位置を正確に知り、コンクリートを適切に削る必要がある。また、解体しない部分でも大きな空洞があれば、安全上その位置を知って補修しておくことも重要である。数十年前に建設されたビルディングでは、必ずしも設計図面通りに鉄筋が配設されていないことや、当時の図面が保管されていない場合もあり、さらには建設会杜が倒産して配筋位置を正確に把握できないこと等、これらは解体、補修作業の隘路となっていた。
【0003】
又、図面がない場合には部分的に何箇所か崩し、大体の配筋位置を探り当てる方法であり、また図面があっても、人間がこれを見ながら削孔作業し、配筋の位置を確認してコンクリート表面にマーキングしているため、作業効率が悪い問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、近年、例えば電磁波レーダを使用してコンクリート構造物に電磁波を照射し、走査距離と検出画像とから配筋位置を人間が確認し、これに基づいてコンクリート表面にマーキングを行う方法が採用されてきた。しかしながらこの方法でも、人間がマーキングしなければならず、わずらわしく作業効率が悪い欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電磁波レーダを使用して空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別し、コンクリート構造物表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電磁波を発生する電磁波レーダ回路部と、前記電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射する送信アンテナと、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波を受信する受信アンテナと、前記受信した反射電磁波を増幅する増幅部と、該増幅された出力信号に基づいて波形処理する信号処理部と、前記被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別する判定部と、前記電磁波レーダ回路部の移動速度を検出する速度センサ部と、該速度センサ部からの検出信号により移動速度を算出する移動速度算出部と、前記算出結果と前記識別結果とに基づいて前記コンクリート構造物へのマーキングを行うタイミングを決定するマーキングタイミング算出部と、該マーキングタイミングの算出結果により駆動されるマーキング装置とを備え、該マーキング装置により前記判定部からの出力信号に基づいて前記空洞及び配筋の少なくとも一方を前記マーキングとして前記コンクリート構造物の表面に施すことを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置にある。
【0007】
前記マーキング装置は、インクジェット方式であること、又、前記マーキングを、前記空洞と配筋とを異なる色で識別表記することが好ましい。
【0008】
即ち、本発明は、電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射し、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波による出力信号に基づいて前記被検出物中の空洞及び配筋を識別すると共に、前記電磁波の移動速度と前記識別結果とに基づいて前記空洞と配筋とを区別して前記コンクリート構造物表面にマーキングを施すものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電磁波レーダを使用し、空洞等の内部欠陥と配筋位置とを識別してコンクリート構造物表面に自動的にマーキングし、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率的に行える内部欠陥及び配筋位置表記装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明における内部欠陥及び配筋位置表記装置を示す原理図、図2は図1の内部欠陥及び配筋位置表記装置の具体的な構成を示す平面図、図3はその正面図、図4はその側面図である。内部欠陥及び配筋位置表記装置1は、電磁波レーダ回路7、制御回路8、送信アンテナ2、受信アンテナ3、側面の一方にマーキング装置4、後述する速度センサ部8dを有する。コンクリート構造物5中の内部に存在する被検出物6は、例えば空洞や鉄筋を示し、Dはコンクリート構造物5表面からの被検出物6の深度である。内部欠陥及び配筋位置表記装置1には、電磁波レーダ回路7、制御回路8等を内蔵すると共に、外部に移動方向となる両側面下方に4個の車輪10を設けて平面方向に走行できるよう構成している。送信アンテナ2から発射された電磁波2aが被検出物6に当たると、その反射波3aが受信アンテナ3で受信される。詳細は後述するが、受信信号に基づいて被検出物6の種類、及びその深度を把握し、マーキング装置4によりコンクリート構造物5の表面に所定の色でマーキングするものである。
【0011】
更に、内部欠陥及び配筋位置表記装置1の上面左右端部付近には2個のハンドル11、上面中央部には計測表示部である表示パネル9をそれぞれ設けている。ハンドル11を手で握持してコンクリート構造物5の表面を走行移動させ、内部欠陥である空洞と配筋の画像表示及びその深度検出と、これらの結果を元にコンクリート構造物5の表面に前述の色別の白動表記を行うことができる。
【0012】
深度Dを算出するには、電磁波の送信から反射波の受信までに要する時間Toと、コンクリート構造物5中での電磁波の伝播速度Vとの関係式を用いる。
D=V・To/2
ここで、コンクリート構造物5中の伝播速度Vは、真空中での速度とコンクリート構造物5の比誘電率との関係で決まり、下記の計算式で求められる。
V=Vc/√εo
Vc;真空中の電磁波速度…3.0×108m/s
εo:コンクリートの比誘電率
図5は、本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路8は、受信アンテナ3で受信された反射波3aを増幅部8aにより増幅し、これを信号処理部8bで波形処理して被検出物6が空洞か配筋かのいずれかの信号を発する。その結果に基づいて計測表示部9に空洞及び配筋の少なくとも一方を画像表示する。判定部8cでは被検出物6が空洞か配筋かを識別し、その識別結果をマーキング装置4とマーキングタイミング算出部8fに送信する。
【0013】
速度センサ部8dは内部欠陥及び配筋位置表記装置本体1の移動に伴って、例えば走行用の車輪10の回転に同期して回転してパルスを発生する複数の磁石体を有するパルス発生機とその信号を検出するセンサを有するものであり、このセンサからの信号を元に移動速度算出部8eで移動速度を計算した後、マーキングタイミング算出部8fによりマーキングの最適タイミングを算出する。この算出結果と被検出物6の識別結果に基づいてマーキング装置4を駆動し、コンクリート構造物5の表面に後述するように、空洞は赤色、配筋は青色の識別マーキングを行う。配筋は連続しているので線状に描かれるが、空洞が連続することは稀であり、殆どが点で描かれることとなる。これらのマーキングにおいて、空洞か配筋かを色で識別する他、例えば深度Dを示す数字を所定の水平距離間隔で併用表記することも可能である。
【0014】
計測表示部9は、三原色により、例えば空洞は赤色、空洞の大きさ数値は黄色、配筋は青色、深度Dの値は黒色等、視覚的に明瞭な任意の色を選定して表記できるようにすることが好ましい。
【0015】
図6及び図7は、それぞれ空洞と金属(配筋)の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。いずれの図における波形も周波数に応じた無数の波形で形成されており、その一番外側の波形を示したものである。縦方向は時間軸、横方向は波形の一十振幅を示す。電磁波レーダから発射された電磁波は、被照射物体の物性によって反射の形態が異なる性質を有し、主な性質は下記のとおりである。
(1)誘電率ε、導電率ρ、透磁率μの異なる境界において、電磁波は反射する。
(2)境界面の誘電率εの比によって反射波の位相が決まる。
(3)空洞の場合には、反射波の位相は入射波に対して逆相となる。
(4)金属の場合には、反射波の位相は入射波に対して全反射となる。
【0016】
コンクリートの誘電率は約10、空気のそれは1であり、この電気的特性が境界部分で大から小に変化するため、前記の性質によって空洞があれば入射波に対し逆相の反射波が生じることになる。従って、図6において、電磁波レーダからコンクリート構造物5内部に向けて発射された入射波を基本波(b)とすれば、反射波として検出される空洞検出波(a)は点線部Biで示すように、逆相(一)方向に振幅の大きい波形となる。この空洞検出波から基本波形を減算処理することによって、(c)のノイズ分を少なくし強調された空洞出力波形Boを得る。空洞の大きさは、空洞出力波形Boの振幅と時間軸幅とから決まり、所定の値以上にあれば危険な空洞と判断して表記することも可能である。
【0017】
又、被検出物6が金属の場合は、その誘電率がほぼ∞で、コンクリートの約10に比べ逢かに大きく、前記(4)の性質により全反射となる。従って、図7において、反射波として検出される金属検出波(a)は点線部Miで示すように、同相(十)方向に振幅の大きい波形となる。空洞の場合と同様にこの金属検出波から基本波(b)を減算処理することによって、(c)のノイズ分を少なくし強調された金属出力波形Moが得られる。
【0018】
図8は被検出物として空洞位置を検知する場合の測定例を示す構成図である。又、図9はその反射波形を示す線図であり、図6及び7と同様の波形である。図8に示すように、被検出物6として空洞の位置がレーダの真下にある場合には、電磁波レーダ表記装置本体1を(a)、(b)及び(c)の順に移動させることにより、反射波を捕らえる時間T2(b)が一番短く、T1(a)、T3(c)のように、その位置から遠ざかるほど、反射波を捕らえる時間が長くなる。空洞位置から反射波を捕らえる時間T2が一番短いため、振幅が大きく、T1、T3のようにその位置から遠ざかるほど、反射波の振幅が小さくなる。空洞位置をXtとした場合、前後のXt−1、Xt+1での空洞からの反射波振幅値を比較し、一番大きいときのXtをマーキング位置と判断する。なお金属位置を検知する場合にも、同様の方法で行う。
【0019】
図10は実際にマーキングするタイミング時期を算出する方法を示す構成図である。マーキング位置と判断した空洞又は配筋に対し、電磁波レーダ表記装置本体1の移動速度と、マーキング装置4の位置との関係から、実際にマーキングするタイミングを決定する必要がある。レーダアンテナの指向性により、送信アンテナ2と受信アンテナ3との中間点Pが、被検出物6の検出位置基準点となる。被検出物6を検知したとき、内部欠陥及び配筋位置表記装置1の移動速度Vsから距離Dsの相当分を時間遅延させ、マーキング装置4のインクジェット機構を動作させる。
【0020】
図11は本発明のマーキング方法を示すマーキング装置の構成図である。本実施例のマーキング装置4は、インクジェット方式によるものであり、インク4aの赤色とインク4bの青色を有する。インク4aの赤色とインク4bの青色とは空洞を赤色、配筋を青色として電磁弁13によって区別してマーキングすることができる。マーキングはインクジェット4cによってコンクリート構造物5の表面にマーク4dのようにインクが塗布され行われる。ここでインク4a、4bは、容易には水で消えることなく、コンクリート構造物5表面になじみやすい合成樹脂塗料が好適である。インクジェット方式は、必要な塗布量のみインクが噴出するので、塗料が無駄にならない利点がある。
【0021】
配筋は連続しているので、配筋の長手方向に沿ってスキャニングした場合には連続しているので線状に描かれるが、配筋の長手方向に対して直角にスキャニングした場合には連続した点で表され、空洞が連続することは稀であり、殆どが点で描かれることとなる。しかし、やや大きな空洞では点の集まりで描かれることとなる。
【0022】
又、それぞれに三原色のインクを貯蔵したマーキング装置4を準備することにより、例えば空洞は赤色、空洞の大きさ数値は黄色、配筋は青色、深度Dの値は黒色等、視覚的に明瞭な任意の色を選定して表記できるようにすることが好ましい。
【0023】
本実施例においては、コンクリート構造物5の壁面を垂直方向に移動させる場合にも、水平面を移動させるのと同じく人間の手によって行えばよいが、高い位置まで移動させるのが困難なときは、例えば無線自動走行装置と白動吸着盤とを組み合わせて設置し、所定のプログラムに従って垂直面を移動できるよう構成してもよい。この構成によれば、広い水平面を移動させる場合にも適用できる。
【0024】
本実施例によれば、コンクリート構造物5の表面を走行移動させるだけで、その表面に内部欠陥である空洞と配筋とを区別して白動的に表記することができ、又、マーキング装置はインクジェット方式としたため塗料が無駄にならず、さらに空洞と配筋とを異なる色で識別表記できるようにすることができ、コンクリート構造物の解体、補修作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の構成図である。
【図2】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】本発明の内部欠陥及び配筋位置表記装置の構成を示すブロック図である。
【図6】空洞の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。
【図7】金属(配筋)の識別原理を説明する検出波形を示す線図である。
【図8】被検出物として空洞位置を検知する場合の測定例を示す構成図である。
【図9】図8における反射波形を示す線図である。
【図10】実際にマーキングするタイミング時期を算出する方法を示す構成図である。
【図11】本発明のマーキング方法を示すマーキング装置の構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1…内部欠陥及び配筋位置表記装置、2…送信アンテナ、2a…送信波、3…受信アンテナ、3a…反射波、4…マーキング装置、5…コンクリート構造物、6…被検出物、7…電磁波レーダ回路部、8…制御回路、8a…増幅部、8b…信号処理部、8c…判定部、8d…速度センサ部、8e…移動速度算出部、8f…マーキングタイミング算出部、9…表示パネル、10…車輪、11…ハンドル、12…ノズル、13…電磁弁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生する電磁波レーダ回路部と、前記電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射する送信アンテナと、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波を受信する受信アンテナと、前記受信した反射電磁波を増幅する増幅部と、該増幅された出力信号に基づいて波形処理する信号処理部と、前記被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別する判定部と、前記電磁波レーダ回路部の移動速度を検出する速度センサ部と、該速度センサ部からの検出信号により移動速度を算出する移動速度算出部と、前記算出結果と前記識別結果とに基づいて前記コンクリート構造物へのマーキングを行うタイミングを決定するマーキングタイミング算出部と、該マーキングタイミングの算出結果により駆動されるマーキング装置とを備え、該マーキング装置により前記判定部からの出力信号に基づいて前記空洞及び配筋の少なくとも一方を前記マーキングとして前記コンクリート構造物の表面に施すことを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【請求項2】
請求項1において、前記マーキング装置は、インクジェット方式であることを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記マーキングは、前記空洞と配筋とを異なる色で識別表記されることを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【請求項1】
電磁波を発生する電磁波レーダ回路部と、前記電磁波をコンクリート構造物の内部に向けて照射する送信アンテナと、前記コンクリート構造物の内部に存在する被検出物より反射された反射電磁波を受信する受信アンテナと、前記受信した反射電磁波を増幅する増幅部と、該増幅された出力信号に基づいて波形処理する信号処理部と、前記被検出物中の空洞及び配筋の少なくとも一方を識別する判定部と、前記電磁波レーダ回路部の移動速度を検出する速度センサ部と、該速度センサ部からの検出信号により移動速度を算出する移動速度算出部と、前記算出結果と前記識別結果とに基づいて前記コンクリート構造物へのマーキングを行うタイミングを決定するマーキングタイミング算出部と、該マーキングタイミングの算出結果により駆動されるマーキング装置とを備え、該マーキング装置により前記判定部からの出力信号に基づいて前記空洞及び配筋の少なくとも一方を前記マーキングとして前記コンクリート構造物の表面に施すことを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【請求項2】
請求項1において、前記マーキング装置は、インクジェット方式であることを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記マーキングは、前記空洞と配筋とを異なる色で識別表記されることを特徴とする内部欠陥及び配筋位置表記装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−119058(P2006−119058A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309031(P2004−309031)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリングサービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリングサービス (276)
【Fターム(参考)】
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