説明

内部短絡時の安全性に優れた大容量二次電池およびその製造方法

【課題】 内部短絡が生じた際にも安全な大容量二次電池およびその製造方法の提供。
【解決手段】 最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である平板形状の二次電池であって、電池の電流容量を短絡部の負極集電体の体積で除算した値が30mAh/mm3以下である二次電池。
最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である平板形状の二次電池の製造方法であって、電池の電流容量に対する負極集電体の体積を所定値以上とすることで内部短絡時の安全性を高める二次電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部短絡が生じた際にも安全な大容量二次電池およびその製造方法に関し、より具体的には表面積が一定値以上である内部短絡時も安全な平板形状の大容量二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、機器に占める電池スペースの充分な確保ができないため、大容量化の要求と共に形状の自由度の高い電池が要望されている。例えば、ノート型パソコンなどのポータブル製品においては、薄型のリチウム二次電池を液晶画面の裏側に複数配置するなどの工夫がなされている(図1上図参照)。しかしながら、液晶画面の裏側に組電池を載置した場合、液晶画面輝度確保のための冷陰極管からの電池位置の違いにより、各電池間で温度差が生じるという問題がある。電池温度の差は、各電池のサイクル特性に大きな影響を及ぼすし、電池寿命のばらつきの原因となる(図1下図参照)。
そこで、図2に示すような大容量の平板型電池の実現が期待されている。しかしながら、図2に示すような大容量電池では、内部短絡箇所に流れる電流が極めて大きいため、破裂・発火が生じ易く、安全性の点で問題があった。
【0003】
ところで、我が国における電池の安全性の規格としては、米国のUL(Underwriters Laboratories Inc.)と電池工業会のものがあり、一般的にはULの試験をパスすれば問題がないとされている。しかしながら、上記図2に示すような平板型電池においては、ULの衝突試験をパスすることができなかった。
【0004】
衝突試験をパスするためには、電気的に複数に分離された集電体を有する電極を備えた電池(特許文献1)や、ケースをステンレススチール等の材料で肉厚に構成することで、電池の耐衝撃性および耐腐食性を高めた電池とすることが考えられる(特許文献2)。しかし、部品点数の増加により電池がコスト高となってしまうため、コスト高とならずに衝突試験をパスするための手段が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平10−172574号公報
【特許文献2】特開平5−74423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電池温度が上昇すると、発煙、発火、爆発などの危険な状態に達するため、安全性を高めるためには電池の温度を一定以下とすることが望ましい。なかでも、リチウム二次電池は放電容量が大きく、何らかの原因で電池温度が上昇するとそれをきっかけに電池が自己発熱し、電池温度がさらに上昇するため熱対策は不可欠である。そこで、発明者等は、本発明に先立ち、電池の発熱に伴う危険性は、表面積/体積の値に関連があること、すなわち表面積=放熱面積、体積=電池の蓄える電気容量であることに着目し、体積の表面積比(表面積/体積)が0.8以上とすることで、放熱性に優れた安全な大容量電池を提供することを可能とした(特願2004−295105)。しかしながら、衝突等の外部からの衝撃を原因とする内部短絡時の発熱の問題には対応することができていなかった。
本発明は、内部短絡が生じた際にも安全な大容量二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
二次電池の衝突試験において電池が破裂・発火するのは、衝突時電池で内部短絡が生じることで短絡部に電流が集中し、発熱し、電解液の分解が生じるためである。図3は充電状態のリチウム二次電池の電極について正極、負極を各々DSC(示差走査熱量)測定したものであるが、負極では約120℃でSEI反応に伴う発熱が観察でき(文献(1)参照)、正極では約200℃を超えた温度で酸素発生を伴う発熱が観察できる(文献(2)参照)。すなわち、リチウム二次電池における発火は、発熱により負極SEI(Solid electrolyte interface)反応が生じ電池温度が上昇(約120℃)することで、正極での酸素遊離反応が生じて電池温度がさらに上昇(約200℃)し、最終的に遊離酸素と電解液中の物質が反応し、発火に至る。従って、負極発熱温度を抑制することができれば、SEI分解温度に達することがなく、短絡時にも破裂・発火が生じない安全な電池となる。
【0008】
発明者は、平板形状の大容量電池では短絡部の面積が狭くなるほど短絡時の電流の集中が局所的になるため破裂・発火の生じ易さは短絡部の面積と相関があると発明者は考えた。しかしながら、試作品を作製して検証したところ、破裂・発火の生じ易さは必ずしも短絡部の面積に比例しなかった。
そこで、発明者は、集電体の厚さにより放熱の度合いが異なるためであると考えた。最終的には、数百種類の電池の試作品を作製することにより、破裂・発火が生じる電池には、電池の電流容量に対する短絡部の負極集電体の体積が一定以上の場合には、破裂・発火が生じないことを見出し、本発明をするに至った。
【0009】
第1の発明は、最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である平板形状の二次電池であって、安全基準として以下の式1を満足することを特徴とする二次電池である。
【数1】

第2の発明は、第1の発明において、最も広い面の面積が100cm2以上であることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、電解質層が非流動性のリチウム二次電池であることを特徴とする。
第4の発明は、最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である二次電池の製造方法であって、電池の電流容量に対する負極集電体の体積を所定値以上とすることで内部短絡時の安全性を高める平板形状の二次電池の製造方法である。
第5の発明は、第4の発明において、電池の電流容量に対する負極集電体の体積が以下の式2を満足することを特徴とする。
【数2】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池活物質、集電体、セパレータ、電解質、電池ケースおよびリード等の部品点数を増加することなく、内部短絡時も安全な大容量二次電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電池の一態様として、板版形状の単位電池要素である、正極、負極、セパレータから成るシングルセルを積層し、高分子−金属を複合したラミネートフィルムバッグに封入したものが挙げられる。図4は、シングルセルの構造の一例を示したものであり、集電体はアルミ箔、その下側に改良遷移金属リチウム酸化物(LiNi1-x-yCox(Met)yO2等、MetはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vから選択される遷移金属またはランタノイド金属のうち、一つ以上の元素である)にゲル電解液を含浸させたものからなる正極、その下側に多孔質ポリマーフィルムからなるセパレータ、その下側に表面改質グラファイトにゲル電解液を含浸させたものからなる負極、そしてその下側に銅箔を有する。図示された上側には、電池要素として正極が位置しているが、負極を位置させてもよい。
なお、本発明は、薄板上の電極群を渦巻状に巻回した巻回型電池にも適用できるし、また、電解液をゲル化しないリチウム二次電池にも適用することができる。
【0012】
本発明の電池は、シングルセルを、ハウジング内で複数積層して構成される。ハウジングは、高分子−金属を複合したラミネートフィルムで容器(例.パウチ)を構成し、内部に積層した電池を真空封入することのできる容器である。封入は主にポリオレフィンフィルム同士を熱融着することで行われる。ラミネート容器を用いることにより、外装の電位が中立となり、クラッシュ時の安全性をより高くすることができる。
【0013】
本発明において、正極板、セパレータおよび負極板を積層した単位電池要素については、従来の単位電池要素と同様に構成される。例えば、正極板は正極集電体の反応部の片面に上記した正極活物質を塗布乾燥してなり、負極板は負極集電体の反応部の両面に上記したような負極活物質を塗布乾燥してなり、セパレータはポリオレフィン多孔質フィルムからなるものが例示できる。また、正極板には正極集電体が形成され、負極板には負極集電体が形成され、これらは超音波溶接等により正極端子リードおよび負極端子リードにそれぞれ接合されている。この接合は抵抗溶接によって行ってもよい。ただし、本発明の単位電池要素は、これらに何ら制限されるものではない。
【0014】
本発明の電池では、負極構造が負極集電体および負極活物質から構成されており、下記式3で表される電流集中パラメータが30mAh/mm3未満となる厚さの負極集電体を使用することを特徴とする。ここで、電池の電流容量とは、電池ケースに収められた電池要素全体の電流容量のことであり、積層型電池の場合ベアセルの電流容量である。短絡部の負極集電体体積とは、外部から衝撃を受けた部分の面積に負極集電体の厚さを乗じた値である。
電流集中パラメータは、電池に内部短絡が生じた際に、破裂・発火が生じるかどうかの指標とすることができる。
【数3】

【0015】
本発明は、最も広い平板の面積が50cm2以上、好ましくは100 cm2以上であり、かつ体積エネルギー密度が400 Wh/L以上の大容量電池において、顕著な効果を奏する。内部短絡時の破裂・発火の危険性は、大容量化に伴い増大するからである。この際、特願2004−295105に開示したように、体積の表面積比(表面積/体積)は0.8以上とするのが好ましい。電池の発熱に伴う危険性は、(表面積=放熱面積)/(体積=電池容量)の値に関連があるからである。
なお、体積エネルギー密度(Wh/L)とは、電池が貯蔵できるエネルギーを、電池の体積で割った値である。電池ケース、電流取り出しリードを含まない素電池の容量が400Wh/L以上であればよい。想定される電池の厚みは10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。
【0016】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
負極集電体の厚さ、縦寸法、および横寸法の異なる240パターンの電池について、衝突試験(UL1642準拠)を行い、破裂・発火の有無を検証した。実施例1〜80は負極集電体の縦寸法が50mmであり、実施例81〜160は100mmであり、実施例161〜240は150mmである。各電池の厚みは約1.5〜5mmである。
なお、以下の実施例で示す電流値の数値は特別に説明の無い場合は、総和の電流値をいうものとする。
【0018】
[実施例1]
(1)負極の作製
厚さ6μmの銅箔に片面2.1mAh/cm2になるように表面改質黒鉛、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるスラリーを塗工し、乾燥した。これを所定の厚みに調整した後、縦横を表1の寸法にカッティングした。
【0019】
(2)正極の作製
厚さ15μmのアルミ箔に2.05mAh/cm2になるようLiNi1-x-yCox(Met)yO2(MetはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vから選択される遷移金属またはランタノイド金属のうち、一つ以上の元素である)導電助剤、およびPVdFからなるスラリーを塗工し、乾燥した。これを所定の厚みに調整した後、縦横を表1の寸法にカッティングした。
【0020】
(3)セパレータの作製
厚さ16μmのポリエチレン製多孔フィルムの集電体と同じ縦横寸法(表1)にカッティングした。
【0021】
(4)セルの作製
負極(片面電極)、セパレータおよび正極(片面電極)を1単位とする素電池を作製した。この素電池に電解液を充分含浸させた後、加熱してポリマー素電池とした。これを14組積層後、電流取出用のリードを取り付け、アルミラミネートのケースに収容して1435mAhの電池を作製した。
【0022】
(5)初期充放電
i)充電
電池容量の1/5の電流(以下、1/5Cという)である287mAで4.2Vまで定電流充電し、4.2Vで定電圧充電した。充電終止条件は充電開始から8時間とした。
ii)放電
1/5Cで3.0Vまで定電流放電した。この初期充放電試験で1435mAh以上の容量が確認できたものを良品電池として衝突試験を行った。
【0023】
(6)衝突試験(UL1642準拠)
i)横方向衝突
1/5Cで4.2Vまで定電流充電し、4.2Vで1/15の電流(以下、1/15Cという)である93mAに絞られるまで定電圧充電して、満充電電池を準備した。図5に示すように、満充電電池を平面上に載置後、直径15.8mmの丸棒を電池の電極面と平行で、かつ電池の上部端子方向に対し直角にほぼ電池の中央部に置き、その丸棒上に9.1kgfの重量物を落下させた(横方向衝突)。
ここで、直径15.8mmの丸棒により押しつぶされた箇所が短絡部となる。表1中11mAh/mm3とあるのが上記式1に基づいて算出した横方向衝突時の電流集中パラメータであり、シングルセルの容量(103mAh)を体積(横100mm×6μm×15.8mm)で除算して算出している。
衝突をn=2で試験した結果、実施例1の電池について破裂・発火は認められなかった。
【0024】
ii)縦方向衝突
新たに満充電電池を用意し、図6に示すように、満充電電池を平面上に載置後、直径15.8mmの丸棒を電池の電極面と平行で、かつ電池の上部端子方向に対し平行にほぼ電池の中央部に置き(図5から90度回転させた状態)、その丸棒上に9.1kgfの重量物を落下させた(縦方向衝突)。
ここで、直径15.8mmの丸棒により押しつぶされた箇所が短絡部となる。表1中22mAh/mm3とあるのが上記式1に基づいて算出した縦方向衝突時の電流集中パラメータであり、シングルセルの容量(103mAh)を体積(縦50mm×6μm×15.8mm)で除算して算出している。
衝突をn=5で試験した結果、実施例1の電池について破裂・発火は認められなかった。
【0025】
【表1】

【0026】
[実施例2〜5]
実施例1の電池と、正極、負極集電体の横方向のサイズが異なる表1記載の電池を作製し、実施例1と同様の手順で衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火が生じた。
実施例2〜5の電池の横方向の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であるが、縦方向の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であった。
【0027】
[実施例6〜10]
負極集電体(銅箔)の厚さが8μmである表2の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例6,7については破裂・発火は生じなかったが、実施例8〜10については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0028】
【表2】

【0029】
[実施例11〜15]
負極集電体(銅箔)の厚さが10μmである表3の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例11〜13については破裂・発火は生じなかったが、実施例14,15については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0030】
【表3】

【0031】
[実施例16〜20]
負極集電体(銅箔)の厚さが12μmである表4の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例16〜19については破裂・発火は生じなかったが、実施例20については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0032】
【表4】

【0033】
[実施例21〜25]
(1)負極の作製
負極(銅箔)を片面2.63mAh/cm2とし、正極(アルミ箔)を2.48mAh/cm2とする他は、実施例1と同様の手順で表5の仕様の電池を作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例21については破裂・発火は生じなかったが、実施例22〜25については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0034】
【表5】

【0035】
[実施例26〜30]
負極集電体(銅箔)の厚さが8μmである表6の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例26,27については破裂・発火は生じなかったが、実施例28〜30については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0036】
【表6】

【0037】
[実施例31〜35]
負極集電体(銅箔)の厚さが10μmである表7の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例31,32については破裂・発火は生じなかったが、実施例33〜35については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0038】
【表7】

【0039】
[実施例36〜40]
負極集電体(銅箔)の厚さが12μmである表8の仕様の電池を実施例1と同様の手順で作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例36〜38については破裂・発火は生じなかったが、実施例39,40については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0040】
【表8】

【0041】
[実施例41〜60]
負極(銅箔)を片面3.17mAh/cm2とし、正極(アルミ箔)を3.02mAh/cm2とする他は、実施例1と同様の手順で表9の仕様の電池を作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例46,51,52,56,57については破裂・発火は生じなかったが、実施例41〜45,47〜50,53〜55,58〜60については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0042】
【表9】

【0043】
[実施例61〜80]
負極(銅箔)を片面3.73mAh/cm2とし、正極(アルミ箔)を3.55mAh/cm2とする他は、実施例1と同様の手順で表10の仕様の電池を作製し、衝突試験を行った。
横方向の衝突試験をn=2で行った結果、全ての電池で破裂・発火は生じなかった。
縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、実施例66,71,76,77については破裂・発火は生じなかったが、実施例61〜65,67〜70,72〜75,78〜80については破裂・発火が生じた。
破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であった。
【0044】
【表10】

【0045】
[実施例81〜160]
負極(銅箔)の縦方向の寸法(L)を100mmとした他は、実施例1〜80と同様の手順で表11〜14の仕様の電池を作製し、衝突試験を行った。実施例1〜80とは、80+nの実施例がそれぞれ対応する。
横方向の衝突試験をn=2で、縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であることを確認することができた。
【0046】
【表11】

【0047】
【表12】

【0048】
【表13】

【0049】
【表14】

【0050】
[実施例161〜240]
負極(銅箔)の縦方向の寸法(L)を150mmとした他は、実施例1〜80と同様の手順で表15〜18の仕様の電池を作製し、衝突試験を行った。実施例1〜80とは、160+nの実施例がそれぞれ対応する。
横方向の衝突試験をn=2で、縦方向の衝突試験をn=2で行った結果、破裂・発火があった電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3以上であり、それ以外の電池の電流集中パラメータは30mAh/mm3未満であることを確認することができた。
【0051】
【表15】

【0052】
【表16】

【0053】
【表17】

【0054】
【表18】

【0055】
[まとめ]
実施例1〜240の電池において、衝突試験における電流集中パラメータが30mAh/mm3未満の電池は、衝突後も電池温度が130℃を超えることはなく、破裂・発火は生じなかった。電流集中パラメータが30mAh/mm3以上の電池は、衝突後2秒程度で、130℃を超えて破裂・発火に至った。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】リチウム二次電池を液晶画面の裏側に複数配置した場合の説明図である。
【図2】大判リチウム二次電池を液晶画面の裏側に配置した場合の説明図である。
【図3】リチウムに次電池における発火のメカニズムの説明図である。
【図4】本発明に係る電池のシングルセル構造の一例を示した図である。
【図5】衝突試験(UL1642)の横方向の実施態様の説明図である。
【図6】衝突試験(UL1642)の縦方向の実施態様の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である平板形状の二次電池であって、
安全基準として以下の式1を満足することを特徴とする二次電池。
【数1】

【請求項2】
最も広い面の面積が100cm2以上である請求項1の二次電池。
【請求項3】
電解質層が非流動性のリチウム二次電池である請求項1または2の二次電池。
【請求項4】
最も広い面の面積が50cm2以上であり、体積エネルギー密度が400Wh/L以上である平板形状の二次電池の製造方法であって、
電池の電流容量に対する負極集電体の体積を所定値以上とすることで内部短絡時の安全性を高める二次電池の製造方法。
【請求項5】
電池の電流容量に対する負極集電体の体積が以下の式2を満足することを特徴とする請求項4の二次電池の製造方法。
【数2】




【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−66667(P2007−66667A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250101(P2005−250101)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】