説明

円すいころ軸受

【課題】保持器の底拡げや加締めを行うことなく組立てを行うことができ、しかも、円すいころの抜け落ちを確実に防止することができるようにした組立ての容易な円すいころ軸受を提供することである。
【解決手段】外輪1の内周に円すい形軌道面2を形成し、内輪11の外周に円すい形軌道面12を設け、その軌道面2、12間に組み込まれた複数の円すいころ21を保持器31で保持する。内輪11に形成された円すい形軌道面12の大径端側に大つば13を設け、小径端側に円筒面14を形成し、保持器31に保持された円すいころ21の内輪11の外周への組付け後に、その円筒面14に小つば輪41を取付けるようにして、保持器の底拡げや加締めを不要とし、小つば輪41により円すいころ21の抜け落ちを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外輪と内輪間に円すいころを組込み、その円すいころを保持器によって保持した円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
外輪の内周に形成された円すい形軌道面と内輪の外周に形成された円すい形軌道面間に複数の円すいころを組込み、その複数の円すいころを保持器により保持した円すいころ軸受においては、内輪の円すい形軌道面の大径端側に大つばを形成し、かつ、小径端側に小つばを設け、上記大つばによってスラスト荷重を受け、小つばによって円すいころの脱落を防止するようにしている。
【0003】
ここで、従来から知られている円すいころ軸受においては、内輪に対して小つばが一体に設けられているため、保持器で保持された円すいころを内輪の外側に組付ける円すいころ軸受の組立て時、円すいころが小つばに干渉し、そのままでは組み付けることができない。
【0004】
そこで、従来では、保持器の小径端側を拡径する、所謂、底拡げを行ってから、内輪の外側に保持器で保持された円すいころの組付けを行い、その円すいころが小つばを通過する円すいころの組付け後、治具を用いて保持器の底拡げされた部分を縮径させる加締めを行って元の状態に戻すようにしている。
【0005】
しかし、上記のような円すいころ軸受の組立てにおいては、保持器の底拡げや加締めによる縮径の際に保持器の形状が崩れて寸法精度や強度が低下し、その精度低下により、軸受回転時に円すいころにスキューが生じて、保持器に大きな負荷がかかり、保持器が破損する可能性があった。
【0006】
また、保持器の加締め不足や加締め忘れによって、円すいころが脱落する可能性があった。
【0007】
そのような問題点を解決するため、特許文献1においては、内輪に形成された小つばにころ組込み用の軸方向溝を形成し、保持器を拡径することなく円すいころの組込みを行うことができるようにした円すいころ軸受を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−132404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1に記載された円すいころ軸受においては、円すいころのピッチと同ピッチで軸方向溝を形成する必要があるため、加工に手間がかかり、また、円すいころと軸方向溝との位相が一致した場合に円すいころが抜け落ちる可能性があり、円すいころの抜け落ちを防止する上において改善すべき点が残されている。
【0010】
そこで、上記特許文献1では、少なくとも一つの軸方向溝の深さを他の軸方向溝より浅くし、あるいは、少なくとも一つの軸方向溝のピッチを他の軸方向溝のピッチと異ならせるようにした円すいころ軸受を同時に提案している。
【0011】
しかし、一つの軸方向溝の溝深さを浅くして円すいころの抜け落ちを防止する円すいころ軸受においては、円すいころの組付け時、保持器を楕円状に変形させて円すいころと軸方向溝とを一致させる必要があるため、円すいころ軸受の組立てに手間がかかり、その組立性の容易化を図る上において改善すべき点が残されている。
【0012】
一方、少なくとも一つの軸方向溝のピッチを他と異ならせるようにした円すいころ軸受においては、保持器に形成されるポケットの少なくとも一つを他のポケットのピッチと異ならせる必要があるため、保持器の製作に手間がかかるとともに、ピッチの異なる軸方向溝にピッチの異なるポケットを一致させて円すいころの組込みを行う必要があるため、上記と同様に、円すいころ軸受の組立てに手間がかかり、その組立性の容易化を図る上において改善すべき点が残されている。
【0013】
この発明の課題は、特許文献1と同様に、保持器の底拡げや加締めを行うことなく組立てを行うことができ、しかも、円すいころの抜け落ちを確実に防止することができるようにした組立ての容易な円すいころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明においては、円すい形の軌道面を内周に有する外輪と、円すい形の軌道面を外周に有し、その大径端側に大つばが形成され、小径端側に、その小径端より小径の円筒面が形成された内輪と、前記外輪の軌道面と内輪の軌道面間に組み込まれた複数の円すいころと、その複数の円すいころを周方向に間隔をおいて保持する保持器と、その保持器に保持された円すいころの内輪外周への組付け後に、前記内輪の円筒面に嵌合固定される小つば輪とからなる構成を採用したのである。
【0015】
上記の構成からなる円すいころ軸受において、その組立てに際しては、内輪、保持器および円すいころからなるサブアセンブリを組立て、そのサブアセンブリを外輪内に組付ける。ここで、サブアセンブリの組立てに際しては、内輪の円筒面が形成された端部側から内輪の外側に保持器に保持された円すいころの組付けを行い、その円すいころの組付け後に、円筒面に小つば輪を嵌合固定して円すいころの抜け落ちを防止する。
【0016】
上記のように、内輪、保持器および円すいころからなるサブアセンブリの組立ては、内輪の外側に保持器に保持された円すいころの組付けを行って小つば輪を円筒面に嵌合固定するものであるため、保持器の底拡げや加締めを不要とすることができ、サブアセンブリを簡単に組み立てることができる。
【0017】
また、内輪の円筒面に対する小つば輪の嵌合により、その小つば輪が複数の円すいころのそれぞれの小端面と対向するため、円すいころの抜け落ちを確実に防止することができる。
【0018】
ここで、小つば輪の固定は圧入によるものであってもよく、あるいは、内輪の円筒面および小つば輪の内径面それぞれに径方向で対向するリング溝を形成し、周方向の一部が切り離されて径方向に弾性変形可能な弾性リングを内輪側のリング溝と小つば輪側のリング溝に跨る組込みとして小つば輪を嵌合状態に抜止め保持してもよい。
【0019】
弾性リングを用いる小つば輪の取付けに際し、弾性リングとして、波形リングや、多角形リング、皿形止め輪、コイルばねを採用することができる。
【0020】
ここで、波形リングとは、線材の折曲げによって山と谷が周方向に交互に並び、自然状態での山の外接円径が円筒面の外径より大径とされ、谷の内接円径が円筒面の外径より小径とされて、上記外接円径が円筒面の外径以下に縮径可能なリングをいう。
【0021】
また、多角形リングとは、線材を多角形に折り曲げ、自然状態での外接円径が円筒面の外径より大径とされ、内接円径が円筒面の外径より小径とされて、上記外接円径が円筒面の外径以下に縮径可能なリングをいう。
【0022】
さらに、皿形止め輪とは、自然状態での外径が円筒面の外径より大径とされ、内径が円筒面の外径より小径とされて、円筒面の外径以下に縮径可能な皿形の止め輪をいう。
【0023】
また、コイルばねとは、断面が矩形の線材をコイル状に折り曲げ、自然状態での外径が円筒面の外径より大径とされ、内径が円筒面の外径より小径とされて円筒面の外径以下に縮径可能なコイル状のばねをいう。
【0024】
ここで、内輪の円筒面と側面の交差部にリング拡径案内用のテーパ面を形成しておくと、小つば輪のリング溝に弾性リングを係止し、その小つば輪を内輪の円筒面に嵌合すると、上記テーパ面との接触により弾性リングが拡径し、その弾性リングが内輪のリング溝と対向する位置まで小つば輪が嵌合されると、自己の復元弾性により弾性リングが縮径して内輪側のリング溝に係合するため、小つば輪を簡単に組付けることができる。
【0025】
また、小つば輪の組付け時における先行側の側面と内径面との交差部にリング縮径案内用のテーパ面を形成しておくと、内輪のリング溝に弾性リングを係止し、内輪の円筒面に小つば輪を嵌合すると、その小つば輪に設けられたテーパ面との接触により弾性リングが縮径し、上記小つば輪のリング溝が弾性リングと対向する位置までその小つば輪が嵌合されると、自己の復元弾性により弾性リングが拡径して小つば輪側のリング溝に係合するため、この場合においても、小つば輪を簡単に組付けることができる。
【0026】
この発明に係る円すいころ軸受において、内輪および小つば輪のリング溝を潤滑油溜りとし、小つば輪には内側面からリング溝に貫通して、そのリング溝内に貯留された潤滑油を軸受空間内に導く通油孔を設けておくと、内輪の回転によりリング溝内の潤滑油が遠心力により通油孔から軸受内部に流れ込むため、軸受内部を効果的に油潤滑することができる。
【0027】
また、内輪および小つば輪のリング溝を潤滑油溜りとし、小つば輪の組付け時における先行側の側面に、内輪軌道面の小径端側の側面と円筒面との交差部に形成された逃げに連通する複数の径方向溝部を周方向に間隔をおいて設け、上記小つば輪と内輪円筒面の嵌合面における少なくとも一方に上記逃げとリング溝を連通する複数の軸方向溝部を周方向に間隔をおいて形成しておくと、内輪の回転により、リング溝内の潤滑油が軸方向溝部から逃げに流れ、その逃げから径方向溝部に流れて軸受内部に流れ込むため、この場合においても、軸受内部を効果的に油潤滑することができる。
【0028】
小つば輪を焼結含油樹脂で形成すると、その小つば輪からの潤滑油の滲み出しによって潤滑性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明においては、上記のように、内輪の外周に形成された円すい形軌道面の小径端側に円筒面を形成し、その円筒面に小つば輪を嵌合固定するようにしたので、保持器の底拡げや加締めを行うことなく内輪、保持器および円すいころからなるサブアセンブリを組立てることができる。そして、そのサブアセンブリを外輪内に組付けることで円すいころ軸受の組立てとすることができるため、保持器の精度や強度を低下させることなく円すいころ軸受を簡単に組み立てることができる。また、小つば輪によって円すいころの抜け落ちを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る円すいころ軸受の実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】弾性リングの他の例を示す断面図
【図4】(4A)は、弾性リングのさらに他の例示す正面図、(4B)は、(4A)の側面図
【図5】(5A)は、弾性リングのさらに他の例示す正面図、(5B)は、(5A)の側面図
【図6】図1の小つば輪の組込み部を拡大して示す断面図
【図7】小つば輪の組付け前の状態を示す断面図
【図8】小つば輪の他の例を示す組付け前の状態の断面図
【図9】この発明に係る円すいころ軸受の他の実施の形態を示す縦断面図
【図10】この発明に係る円すいころ軸受のさらに他の実施の形態を示す縦断面図
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図
【図12】この発明に係る円すいころ軸受のさらに他の実施の形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この発明に係る円すいころ軸受Aは、外輪1、内輪11、その両輪1、11間に組み込まれた複数の円すいころ21およびその円すいころ21を保持する保持器31を有している。
【0032】
外輪1の内周には円すい形の軌道面2が形成されている。一方、内輪11の外周には円すい形の軌道面12が形成され、その軌道面12の大径端側に大つば13が設けられている。
【0033】
また、内輪11には、軌道面12の小径端側に円筒面14が形成されている。図6に示すように、円筒面14の外径は軌道面12の小径端より小径とされている。このため、軌道面12の小径端から半径方向内方に向けて側面15が形成され、その側面15と円筒面14の交差部に逃げ16が設けられている。
【0034】
図1に示すように、保持器31は、外輪1の軌道面2と内輪11の軌道面12間に組み込まれている。保持器31は円すい形とされ、その円すい形保持器31に複数のポケット32が周方向に等間隔に形成され、その複数のポケット32のそれぞれ内部に円すいころ21が収容されている。
【0035】
図6に示すように、内輪11に形成された円筒面14には小つば輪41が嵌合されて抜止め保持されている。その抜止め保持に際して、小つば輪41を円筒面14に圧入する方法を採用することができるが、ここでは、円筒面14に対する小つば輪41の嵌め合いをルーズな嵌め合いとし、上記円筒面14にリング溝17を形成し、小つば輪41の内周にはそのリング溝17と径方向で対向するリング溝42を設け、その径方向で対向するリング溝17、42に跨るようにして弾性リング51を組み込むようにしている。
【0036】
ここで、弾性リング51は、周方向の一部が切り離されて径方向に弾性変形可能とされている。図2では、山51aと谷51bが周方向に交互に並ぶ波形リングを弾性リング51として採用しており、その弾性リング51の自然状態における山51aの外接円径をD、谷51bの内接円径をd、図6に示す円筒面14の外径をB、リング溝17の溝径をbとした場合に、D>B>d≧bの関係とされて、外接円径Dが円筒面14の外径B以下に縮径可能とされている。
【0037】
なお、弾性リング51は、波形リングに限定されるものではない。図3乃至図5は、弾性リング51の他の例を示す。図3においては、線材を多角形に折り曲げた多角形リングを弾性リング51としている。その多角形リングからなる弾性リング51においても、図2に示す弾性リング51と同様に、自然状態での外接円径Dおよび内接円径dは、D>B>d≧bの関係とされて、外接円径Dが円筒面14の外径B以下に縮径可能とされている。
【0038】
図4においては、自然状態での外径Dが円筒面14の外径Bより大径とされ、内径dが円筒面14の外径Bより小径とされて、円筒面14の外径B以下に縮径可能な皿形の止め輪を弾性リング51としている。
【0039】
図5においては、断面が矩形の線材をコイル状に折り曲げて、自然状態での外径Dが円筒面14の外径Bより大径とされ、内径dが円筒面14の外径Bより小径とされて円筒面14の外径以下に縮径可能なコイルばねを弾性リング51としている。
【0040】
図6に示すように、小つば輪41の外径は内輪11に形成された軌道面12の小径端より大径とされ、上記円筒面14に嵌合する際の先行側の側面外周部に円すい面43が形成され、その円すい面43は円すいころ21の小端面21aと対向して円すいころ21が軸方向に抜け落ちるのを防止している。
【0041】
内輪11には、円筒面14と側面の交差部にリング拡径案内用のテーパ面18が形成されている。
【0042】
実施の形態で示す円すいころ軸受Aは上記の構成からなり、その円すいころ軸受Aの組立てに際しては、内輪11、保持器31および円すいころ21からなるサブアセンブリXを組立て、そのサブアセンブリXを外輪1内に組付ける。
【0043】
ここで、サブアセンブリXの組立てに際しては、内輪11の円筒面14が形成された端部側から内輪11の外側に保持器31に保持された円すいころ21の組付けを行い、その円すいころ21の組付け後、円筒面14に小つば輪41を取付ける。その小つば輪41の取付けに際しては、図7に示すように、小つば輪41のリング溝42に弾性リング51の外周部を係止し、その小つば輪41と弾性リング51のアセンブリを円筒面14に嵌合する。
【0044】
上記円筒面14に対する小つば輪41の嵌合時、弾性リング51の内周部がテーパ面18に当接し、その当接状態から小つば輪41を押し込むことにより、テーパ面18との接触によって弾性リング51が拡径し、円筒面14に小つば輪41が嵌合される。
【0045】
そして、弾性リング51が円筒面14に形成されたリング溝17と対向する位置まで小つば輪41を嵌合すると、弾性リング51は自己の復元弾性により縮径して、図6に示すように、円筒面14のリング溝17に内周部が係合し、弾性リング51は小つば輪41のリング溝42と円筒面14のリング溝17に跨る組付けとされて小つば輪41が抜止め保持されることになり、サブアセンブリXが形成される。
【0046】
上記のように、内輪11、保持器31および円すいころ21からなるサブアセンブリXの組立ては、内輪11の外側に保持器31に保持された円すいころ21の組付けを行って小つば輪41を円筒面14に嵌合するものであるため、保持器31の底拡げや加締めを不要とすることができ、サブアセンブリXを簡単に組み立てることができる。
【0047】
そして、そのサブアセンブリXを外輪1内に組付けることで円すいころ軸受Aの組立てとすることができるため、保持器31の精度や強度を低下させることなく円すいころ軸受Aを簡単に組み立てることができ、その組立状態で小つば輪41が円すいころ21の小端面21aに対向するため、円すいころ21の抜け落ちを確実に防止することができる。
【0048】
図7では、小つば輪41のリング溝17に弾性リング51を係止して、その小つば輪41を円筒面14に嵌合するようにしたが、図8に示すように、内輪11の円筒面14に形成されたリング溝17に弾性リング51を係止して、円筒面14に小つば輪41を嵌合するようにしてもよい。
【0049】
この場合、小つば輪41の嵌合による先行側の側面と内径面の交差部にテーパ面44を設け、そのテーパ面44との接触により弾性リング51を縮径させるようにする。そして、小つば輪41のリング溝42が弾性リング51と対向する位置まで小つば輪41を嵌合し、弾性リング51を自己の復元弾性により拡径させて外周部を小つば輪41のリング溝42に係合させ、弾性リング51を内輪11のリング溝17と小つば輪41のリング溝42に跨る組付けとする。
【0050】
図9乃至図12は、この発明に係る円すいころ軸受の他の実施の形態を示す。図9に示す円すいころ軸受においては、内輪11および小つば輪41のリング溝17、42を潤滑油溜りとし、小つば輪41には内側面からリング溝42に貫通する通油孔45を形成している。この実施の形態で示す円すいころ軸受においては、円筒面14に対して小つば輪41をタイトな嵌め合わせとして、その嵌合面から外部にリング溝17、42内の潤滑油が外部に漏洩するのを防止するようにしている。他の構成は図1に示す円すいころ軸受と同一であるため、同一部品には同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
上記の構成からなる円すいころ軸受においては、内輪11の回転によりリング溝17、42内の潤滑油が遠心力により通油孔45から軸受内部に流れ込むため、外輪1および内輪11と円すいころ21の転がり接触部を効果的に油潤滑することができる。
【0052】
図10および図11に円すいころ軸受においては、内輪11および小つば輪41のリング溝17、42を潤滑油溜りとし、小つば輪41の組付け時における先行側の側面に、内輪軌道面12の小径端側の側面15と円筒面14との交差部に形成された逃げ16に連通する複数の径方向溝部46を周方向に等間隔に設け、かつ、小つば輪41の内径面にはその径方向溝部46間に上記逃げ16に連通する複数の軸方向溝部47を周方向に等間隔に形成し、さらに、小つば輪41のリング溝42における一側面にそのリング溝42と軸方向溝部47を連通する連通溝48を設けている。
【0053】
上記の構成からなる円すいころ軸受においては、内輪11の回転により、リング溝17、42内の潤滑油が連通溝48から軸方向溝部47に流れて逃げ16に流入し、その逃げ16から径方向溝部46に流れて軸受内部に流れ込むため、この場合においても、外輪1および内輪11と円すいころ21の転がり接触部を効果的に油潤滑することができる。
【0054】
図10および図11では、小つば輪41のリング溝42における一側面に連通溝48を形成したが、その連通溝48を省略してもよい。また、小つば輪41の内径面に軸方向溝部47を形成したが、内輪11の円筒面14にリング溝17、42と逃げ16とを連通する軸方向溝部47を形成するようにしてもよい。
【0055】
図12に示す円すいころ軸受においては、小つば輪41を焼結含油樹脂で形成している点で図10に示す円すいころ軸受と相違している。上記のように、小つば輪41を焼結含油樹脂で形成すると、その小つば輪41からの潤滑油の滲み出しによって潤滑性を向上させることができる。この場合、径方向溝部46、軸方向溝部47および連通溝48を省略してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 外輪
2 軌道面
11 内輪
12 軌道面
13 大つば
14 円筒面
15 側面
16 逃げ
17 リング溝
18 テーパ面
21 円すいころ
31 保持器
41 小つば輪
42 リング溝
44 テーパ面
45 通油孔
46 径方向溝部
47 軸方向溝部
51 弾性リング
51a 山
51b 谷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円すい形の軌道面を内周に有する外輪と、円すい形の軌道面を外周に有し、その大径端側に大つばが形成され、小径端側に、その小径端より小径の円筒面が形成された内輪と、前記外輪の軌道面と内輪の軌道面間に組み込まれた複数の円すいころと、その複数の円すいころを周方向に間隔をおいて保持する保持器と、その保持器に保持された円すいころの内輪外周への組付け後に、前記内輪の円筒面に嵌合固定される小つば輪とからなる円すいころ軸受。
【請求項2】
前記内輪の円筒面および前記小つば輪の内径面それぞれに径方向で対向するリング溝を形成し、周方向の一部が切り離されて径方向に弾性変形可能な弾性リングを内輪側のリング溝と小つば輪側のリング溝に跨る組込みとして小つば輪を嵌合状態に抜止め保持した請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記弾性リングが、山と谷が周方向に交互に並び、自然状態での山の外接円径が円筒面の外径より大径とされ、谷の内接円径が円筒面の外径より小径とされて、前記外接円径が円筒面の外径以下に縮径可能な波形リングからなる請求項2に記載の円すいころ軸受。
【請求項4】
前記弾性リングが、自然状態での外接円径が円筒面の外径より大径とされ、内接円径が円筒面の外径より小径とされて、前記外接円径が円筒面の外径以下に縮径可能な多角形リングからなる請求項2に記載の円すいころ軸受。
【請求項5】
前記弾性リングが、自然状態での外径が円筒面の外径より大径とされ、内径が円筒面の外径より小径とされて、円筒面の外径以下に縮径可能な皿形止め輪からなる請求項2に記載の円すいころ軸受。
【請求項6】
前記弾性リングが、断面が矩形の線材を素材とし、自然状態での外径が円筒面の外径より大径とされ、内径が円筒面の外径より小径とされて円筒面の外径以下に縮径可能なコイルばねからなる請求項2に記載の円すいころ軸受。
【請求項7】
前記小つば輪のリング溝に弾性リングが係止され、前記内輪の円筒面と側面の交差部にリング拡径案内用のテーパ面が形成された請求項2乃至6のいずれかの項に記載の円すいころ軸受。
【請求項8】
前記内輪のリング溝に弾性リングが係止され、前記小つば輪の組付け時における先行側の側面と内径面との交差部にリング縮径案内用のテーパ面が形成された請求項2乃至6のいずれかの項に記載の円すいころ軸受。
【請求項9】
前記内輪および小つば輪のリング溝を潤滑油溜りとし、小つば輪には内側面からリング溝に貫通して、そのリング溝内に貯留された潤滑油を軸受空間内に導く通油孔を設けた請求項1乃至8のいずれかの項に記載の円すいころ軸受。
【請求項10】
前記内輪および小つば輪のリング溝を潤滑油溜りとし、前記小つば輪の組付け時における先行側の側面に、内輪軌道面の小径端側の側面と前記円筒面との交差部に形成された逃げに連通する複数の径方向溝部を周方向に間隔をおいて設け、前記小つば輪と内輪円筒面の嵌合面における少なくとも一方に前記逃げとリング溝を連通する複数の軸方向溝部を周方向に間隔をおいて形成した請求項1乃至8のいずれかの項に記載の円すいころ軸受。
【請求項11】
前記小つば輪が、焼結含油樹脂からなる請求項1乃至10のいずれかの項に記載の円すいころ軸受。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate