説明

円板状回転工具の緩衝装置

【課題】簡素な構造で緩衝機能の高い円板状回転工具の緩衝装置を得る。
【解決手段】回転軸(7)に小径の受け駒(10)と締めナット(11)とを対面させて略同軸に設けるとともに、受け駒(10)は回転軸(7)に対して相対回転不能に設け、締めナット(11)は回転軸(7)にねじ込み可能に設け、前記受け駒(10)と締めナット(11)との相対する面にリング状の保持溝(10a,11a)を形成し、該保持溝(10a,11a)にそれぞれOリング(12,13)を嵌合させるとともに、そのうちの一部を前記各保持溝(10a,11a)から外方に突出させ、大径かつ円板状の回転工具(20)を前記受け駒(10)と締めナット(11)との間に配置して回転軸(7)に嵌合させ、前記締めナット(11)を回転軸(7)にねじ込んで前記各Oリング(12,13)により前記回転工具(20)を弾圧挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材、石材、あるいは木質材を研削、あるいは切断する際に、振動、騒音等を低減させる円板状回転工具の緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、特許文献1があった。即ち、回転軸に嵌合するボス部と、該ボス部の一端から半径方向外方に広がる鍔部とを一体に有するゴム製の緩衝部材を一対設け、該緩衝部材を互いに対面させてボス部を砥石の中心穴と回転軸との間に嵌合させ、鍔部を前記砥石の中心部両側に対面させ、前記鍔部の外側に当接する左右一対の締め付け部材を設け、回転軸の先端部にナットをネジ込み、該ナットにより前記締め付け部材を介して緩衝部材の鍔部を圧縮することにより、砥石の両側を挟圧するようにしたものがあった。
【0003】
前記従来のものは、緩衝部材が特殊な形状となっていたため、高価になるとともに、径の変化が乏しく、回転軸及び砥石の穴径が異なる毎に、これに対応した形状の緩衝部材を製作する必要があった。
【特許文献1】実開昭62−117061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡素な構造で緩衝機能の高い円板状回転工具の緩衝装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、回転軸に小径の受け駒と締めナットとを対面させて略同軸に設けるとともに、受け駒は回転軸に対して相対回転不能に設け、締めナットは回転軸にねじ込み可能に設け、前記受け駒と締めナットとの相対する面にリング状の保持溝を形成し、該保持溝にそれぞれOリングを嵌合させるとともに、そのうちの一部を前記各保持溝から外方に突出させ、大径かつ円板状の回転工具を前記受け駒と締めナットとの間に配置して回転軸に嵌合させ、前記締めナットを回転軸にねじ込んで前記各Oリングにより前記回転工具を弾圧挟持する構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記受け駒と締めナットとの相対する面にリング径の異なる複数条の保持溝を形成し、該保持溝にそれぞれOリングを嵌合させるとともに、そのうちの一部を前記各保持溝から外方に突出させる構成にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明は、切断あるいは研削時に回転工具が振動すると、Oリングが弾性変形して回転軸への振動伝達を阻止することになる。また、Oリングの弾性変形により回転工具の振動を迅速に減衰させることになる。これにより、作業者は、回転工具の振動を受け難くなり、また、騒音が低減するので疲労が軽減することになる。また、Oリングは市販のものを使用することができ、安価に得ることができる。
請求項2に係る発明は、Oリングが回転工具を半径方向複数箇所で弾性支持することになるので、回転工具の振動の吸収性能、騒音の低減性能がより高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施例を図面に基いて説明する。図面において、図1は本発明の第1実施例を示す部分断面図、図2は図1の要部拡大断面図、図3は図2のIII-III相当の断面図、図4は本発明の第2実施例を示す要部拡大断面図、図5は図4のV-V相当の断面図、図6は本発明の第3実施例を示す要部拡大断面図、図7は図6のVII-VII相当の断面図、図8は図6のVIII-VIII相当の断面図である。
【0008】
図1において、1はディスクグラインダーであり、ケース2内にモータ3を収容し、該モータ3の出力軸4に小径の第1かさ歯車5を取付け、該第1かさ歯車5に大径の第2かさ歯車6を噛み合わせて減速するとともに、回転の向きを90度変更し、該第2かさ歯車6の軸心部に回転軸7を固定し、該回転軸7の端部(取付け軸部7a)をケース2下部の一側(右側)から外方(右方)に突出させる。
【0009】
前記回転軸7の取付け軸部7aの基部にフランジ部8を形成(又は固定)し、該取付け軸部7aの先端部に雄ねじを形成する。前記取付け軸部7aに受け駒10、回転工具20、締めナット11を先端側(外側)から順次嵌合させ、締めナット11は取付け軸部7aにねじ嵌合させる。
【0010】
前記受け駒10、回転工具20、及び締めナット11は図2、図3に示すようになっている。まず、受け駒10及び締めナット11は、回転工具20の中心部に当接する小径の円板状とし、両者の相対する面にリング状の保持溝10a,11aを形成し、該保持溝10a,11aにそれぞれゴムあるいは合成樹脂製のOリング12,13を嵌合させる。該Oリング12,13の線径は保持溝10a,11aの深さよりも大径にしてその一部を保持溝10a,11aから外方に突出させる。
【0011】
前記受け駒10は、その内端面に三日月形の受け突部10bを円周方向に一対等ピッチで形成し、該受け突部10bを前述したフランジ部8の軸心部に形成した駆動突部8aに嵌合させることにより、受け駒10をフランジ部8に相対回転不能に係止する。また、前記受け駒10の正面側の軸心部に軸方向外方に突出する規制突起10cを形成し、該規制突起10cの外周部に半径方向外方に突出する係合突部10dを円周方向に一対等ピッチで形成し、該係合突部10dを回転工具20の中心孔20aの内周面に形成した係合溝部20bに嵌合(スプライン嵌合)させる。これにより、回転工具20を受け駒10に相対回転不能に係合させる。
【0012】
前記締めナット11は、その外端面の円周方向4カ所にピン穴11bを等ピッチで形成する。該締めナット11は、前記ピン穴11bに締め付け工具のピンを係合させて回転され、回転軸7の取付け軸部7aにねじ込まれる。
【0013】
前記回転工具20は、鋼材、石材、あるいは木質材を研削したり、切断したりするもので、本例では、厚さ約1.5mm、直径約100mmの基板の外周部にダイヤモンド粒を固着してなる。図2において、14は規制突起10cと締めナット11との間に介在させたスペーサーであり、該スペーサー14と規制突起10cとにより、受け駒10と締めナット11との間隔を設定し、Oリング12,13の圧縮量を規定値に保持する。なお、前記規制突起10cは受け駒10と別体に形成してもよい。
【0014】
図4、図5は第2実施例を示す。このものは、受け駒10と締めナット11との相対する面に、それぞれリング径の異なる2個の保持溝10a−1,10a−2、11a−1,11a−2を対面させて形成し、各保持溝10a−1,10a−2、11a−1,11a−2にOリング12a,12b、13a、13bを嵌合させる。各Oリング12a,12b、13a、13bの線径は前記保持溝10a−1,10a−2、11a−1,11a−2の深さよりも大径にしてその一部を保持溝10a−1,10a−2、11a−1,11a−2から外方に突出させる。
【0015】
また、受け駒10の規制突起10cの外周部に半径方向外方に突出する係合突部10dを円周方向に3個等ピッチで形成し、該係合突部10dを回転工具20の中心孔20aの内周面に形成した3個の係合溝部20bに嵌合させ、該回転工具20を受け駒10に相対回転不能に係合させるようにしたものである。その他は前述した第1実施例と略同様の構造となっている。
【0016】
図6〜図8は第3実施例を示す。即ち、受け駒10の軸心部に形成する嵌合孔10e、及び該嵌合孔10eの外周部に形成する係合溝10fを、回転工具20の軸心部に形成した中心孔20a、及び該中心孔20aの外周部に形成した係合溝20bと同形状に形成し、前記受け駒10の軸心部、及び回転工具20の軸心部に規制部材15を貫通させる。
【0017】
前記規制部材15は、筒状の主体15aの外周部に軸方向に伸びる突起15bを形成し、該突起15bを受け駒10の係合溝10f及び回転工具20の係合溝20bに係合させる。また、前記規制部材15の長さ(軸長)は、Oリング12,13を規定量圧縮した状態で、その上端がフランジ部8に、その下端が締めナット11に当接する長さとする。その他は前述した実施例と略同様の構造となっている。
【0018】
前記実施例によれば、ワークの切断、あるいは研削時において、回転工具20が振動すると、Oリング12(12a,12b)、13(13a,13b)が弾性変形し、該振動が回転軸7に伝達され難くなる。また、前記Oリング12、13の弾性変形により、回転工具20の振動が迅速に減衰され、騒音が低減することになる。これにより、作業者は、回転工具20の振動を受けることなく、また、騒音が低減するので疲労が軽減することになる。また、Oリング12、13は市販のものを使用することができ、安価に得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第1実施例を示す部分断面図である。
【図2】図2は図1の要部拡大断面図である。
【図3】図3は図2のIII-III相当の断面図である。
【図4】図4は本発明の第2実施例を示す要部拡大断面図である。
【図5】図5は図4のV-V相当の断面図である。
【図6】本発明の第3実施例を示す要部拡大断面図である。
【図7】図6のVII-VII相当の断面図である。
【図8】図6のVIII-VIII相当の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ディスクグラインダー
2 ケース
3 モータ
4 出力軸
5 第1かさ歯車
6 第2かさ歯車
7 回転軸
7a 取付け軸部
8 フランジ部
8a 駆動突部
10 受け駒
10a(10a−1,10a−2) 保持溝
10b 受け突部
10c 規制突起
10d 係合凸部
10e 嵌合孔
10f 係合溝
11 締めナット
11a(11a−1,11a−2) 保持溝
11b ピン穴
12(12a,12b) Oリング
13(13a,13b) Oリング
14 スペーサー
15 規制部材
15a 主体
15b 突起
20 回転工具
20a 中心穴
20b 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(7)に小径の受け駒(10)と締めナット(11)とを対面させて略同軸に設けるとともに、受け駒(10)は回転軸(7)に対して相対回転不能に設け、締めナット(11)は回転軸(7)にねじ込み可能に設け、前記受け駒(10)と締めナット(11)との相対する面にリング状の保持溝(10a,11a)を形成し、該保持溝(10a,11a)にそれぞれOリング(12,13)を嵌合させるとともに、そのうちの一部を前記各保持溝(10a,11a)から外方に突出させ、大径かつ円板状の回転工具(20)を前記受け駒(10)と締めナット(11)との間に配置して回転軸(7)に嵌合させ、前記締めナット(11)を回転軸(7)にねじ込んで前記各Oリング(12,13)により前記回転工具(20)を弾圧挟持したことを特徴とする円板状回転工具の緩衝装置。
【請求項2】
受け駒(10)と締めナット(11)との相対する面にリング径の異なる複数条の保持溝(10a−1,10a−2、11a−1,11a−2)を形成し、該保持溝(10a−1,10a−2、11a−1,11a−2)にそれぞれOリング(12a,12b、13a,13b)を嵌合させるとともに、そのうちの一部を前記各保持溝から外方に突出させたことを特徴とする請求項1記載の円板状回転工具の緩衝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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