説明

円筒ころ軸受

【課題】円筒ころと軌道輪のつば面との間における潤滑不足の心配のない円筒ころ軸受を提供する。
【解決手段】円筒ころ軸受10は、外周に軌道面12aをもつつばなし内輪12と、内周に軌道面14aをもつつばなし外輪14と、内輪12の軌道面12aと外輪14の軌道面14aとの間に介在する複数の円筒ころ16と、各円筒ころ16を収容するポケット18aを円周方向に配設した保持器18とからなり、円筒ころ16の軸方向移動を保持器と内輪および外輪との干渉によって規制する。軌道輪12、14をつばなしとすることで、ころ端面16bとつばとの接触そのものがなくなり、当該接触部分での潤滑不足という問題も解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば極低温流体中で使用する円筒ころ軸受に関し、一例としてロケットエンジン用ターボポンプの液体酸素や液体水素すなわち極低温推進剤中で使用する軸受に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
現在、ロケットエンジン用ターボポンプに使用される軸受の主流はアンギュラ玉軸受で(非特許文献1参照)、図12に示すように2個のアンギュラ玉軸受を組み合わせて使用する場合が多い。図13はロケットエンジン用ターボポンプを示し、このターボポンプは液体水素/液体酸素2段燃焼式ロケットエンジンの液体酸素を圧縮するものである。なお、図示は省略するが、液体水素/液体酸素2段燃焼式ロケットエンジンは、液体水素を圧縮する同様のターボポンプも備えている。
【0003】
タービン軸44に使用されるアンギュラ玉軸受52は最大で約18000rpmの高速回転に達する。なお、液体水素を圧縮するターボポンプのアンギュラ玉軸受は最大で約52000rpmとなる。
【0004】
またターボポンプ内は液体酸素が流れ込むため、これらのアンギュラ玉軸受52は−183℃の極低温環境に曝される。なお、液体水素を圧縮するターボポンプのアンギュラ玉軸受の場合は−253℃である。このため、ロケットエンジン用ターボポンプに使用するアンギュラ玉軸受は、高速回転および極低温環境という過酷な条件下で作動することが要求される。
【0005】
述べたように軸受の使用環境が極低温推進剤(〜−253℃)中であるため、外部からの潤滑剤の供給が不可能である。そのため潤滑は軸受の軌道面、案内面および転動体への固体潤滑被膜処理(PTFEスパッタリング処理)と、保持器からの固体潤滑成分(PTFE)の転移膜とで行っている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−20854号公報
【特許文献2】特開2002−147462号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】野坂正隆、菊池正孝、尾池守、「ロケットターボポンプの極低温・自己潤滑高速玉軸受」、ターボ機械、日本工業出版株式会社、1996年3月、第24巻、第3号、p.28−34
【非特許文献2】社団法人日本ベアリング工業会、「転がり軸受用語」、財団法人日本規格協会、1993年7月20日、p.110−111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロケットエンジン用ターボポンプの性能および信頼性の向上には回転軸周りの剛性アップが必要と言われている。それに伴い軸受の剛性アップも必要となるが、現行の玉軸受ではこれ以上の大幅な剛性アップは困難である。そこで、軌道輪と円筒ころが線接触するためラジアル負荷能力が大きく剛性も高い円筒ころ軸受を使用したいが、円筒ころ軸受を極低温環境下で使用するためには次のような課題がある。すなわち、円筒ころ軸受の場合、保持器からの潤滑剤転移が生じるのは、軌道輪の案内面と転動体すなわち円筒ころの転動面との間である。円筒ころと軌道輪が接触する部分としては軌道面のほかにつば面もあるが、保持器のポケット内壁面ところ端面とは常に平面接触しているわけではないため、ころ端面への潤滑剤転移を考えた場合、十分な潤滑剤転移が期待できない。したがって、ころ端面とつば面との間の潤滑不足が懸念される。なお、つばとは、軌道の表面から突き出た、転がり方向に平行な狭い部分と定義され、ころを軸受内に保持・案内することを目的とするものである(非特許文献2)。
【0009】
この発明は、円筒ころと軌道輪のつば面との間における潤滑不足の心配のない円筒ころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、軌道輪をつばなしとすることによって課題を解決したものである。軌道輪をつばなしとすることで、ころ端面とつば面との接触そのものがなくなるため、ころ端面とつば面との間の潤滑不足の問題も起こりえない。つばをなくしたことに伴い、保持器と軌道輪との干渉によって円筒ころの軸方向移動を規制するようにした。すなわち、この発明の円筒ころ軸受は、外周に軌道面をもつ内輪と、内周に軌道面をもつ外輪と、内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に介在する複数の円筒ころと、各円筒ころを収容するポケットを円周方向に配設した保持器とからなる円筒ころ軸受において、前記内輪および前記外輪はつばなしで、前記円筒ころの軸方向移動を前記保持器と前記内輪および前記外輪との干渉によって規制するようにしたことを特徴とするものである。
保持器と内輪および外輪との干渉のための具体的な手段としては、たとえば、保持器に、保持器が軸方向の一方に移動したとき内輪と接触する半径方向内向きフランジと、それとは逆向きに移動したとき外輪と接触する半径方向外向きフランジとを設ける。あるいは、保持器が軸方向の一方に移動したときその保持器と干渉する半径方向外向きフランジを内輪に設け、それとは逆向きに移動したときその保持器と干渉する半径方向内向きフランジを外輪に設けた構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、軌道輪をつばなしとしたため、円筒ころと軌道輪のつば面との間における潤滑不足という問題が解消する。したがって、この発明による円筒ころ軸受は、極低温かつ無潤滑状態で使用することができ、しかも、アンギュラ玉軸受よりもラジアル剛性が高いためロケットエンジン用ターボポンプの軸受として求められている剛性アップの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2と類似の断面図である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】図3のV矢視図である。
【図6】もう一つの実施の形態を示す縦断面図である。
【図7】図6のVII-VII断面図である。
【図8】図7のVIII-VIII断面図である。
【図9】図6の部分拡大図である。
【図10】図9における外輪の破断斜視図である。
【図11】実施例1の改変例を示す断面略図である。
【図12】従来の技術を示す縦断面図である。
【図13】従来の技術を示すロケットエンジン用液体酸素ターボポンプの縦断面図で ある。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
まず、図1〜5を参照して実施例1について述べる。図1に実施例1の円筒ころ軸受10を示す。なお、破線は位置決め用のアンギュラ玉軸受50を示し、これについては後に述べる。図1に示すように、円筒ころ軸受10は、内輪12と外輪14と複数の円筒ころ16と保持器18とで構成されている。
【0014】
図1の要部を拡大して示す図2から分かるように、内輪12はつばなしで、外周面の中央部に軌道面12aを有し、軌道面12aの片側にテーパ部12bが形成してあり、さらにそのテーパ部12bの小径側には小径部12dが形成してある。小径部12dの側壁は軸線に垂直な環状端面12cとしてある。なお、テーパ部12bは円筒ころ軸受10の組立てを容易にするためのものである。すなわち、外輪14の内周に配列した円筒ころ列の内側にテーパ部12bの方から内輪12を挿入することにより、円筒ころ16の端面に干渉することなく内輪12の組付けを行うことができる。
【0015】
外輪14もつばなしで、内周面の中央部に軌道面14aを有し、内輪12の小径部12dとは反対側の軸方向端部に大径部14cが形成してある。大径部14cの側壁は軸線に垂直な環状端面14bとしてある。
【0016】
円筒ころ16は内輪12の軌道面12aと外輪14の軌道面14aとの間に介在し、軸受回転時に円筒形の外周面すなわち転動面16aにて軌道面12a、14a上を転動する。符号16bで指してあるのはころ端面である。
【0017】
保持器18は各円筒ころ16を収容するためのポケット18aを有する。ポケット18aは保持器18の円周方向に所定の間隔で配設してあり、各ポケット18aは保持器18を半径方向に貫通している。ポケット18aの内壁面のうち保持器軸方向に向かい合った内壁面部分ところ端面16bとは、軸方向すきまA1、A2を隔てて向かい合っている。
【0018】
保持器18の一方の端部には半径方向内向きのフランジ18bが形成してある。内向きフランジ18bの内径は内輪12の小径部12dよりわずかに大径である。内向きフランジ18bの内側面と内輪12の環状端面12cは軸方向すきまBを隔てて軸方向に向かい合っている。
保持器18のもう一方の端部には半径方向外向きのフランジ18cが形成してある。外向きフランジ18cの外径は外輪14の大径部14cよりわずかに小径である。外向きフランジ18cの内側面と外輪14の環状端面14bは軸方向すきまCを隔てて軸方向に向かい合っている。
【0019】
ころ端面16bと保持器18との間の軸方向すきまA1、A2、内輪12と保持器18との間の軸方向すきまB、外輪14と保持器18との間の軸方向すきまCを管理することにより、円筒ころ16の軸方向移動量を規制することができる。ここで、許容される円筒ころ16の軸方向移動量はA1+A2+B+Cで表される。たとえば、内輪12と保持器18との間の軸方向すきまB、および、外輪14と保持器18との間の軸方向すきまCを調整することによって円筒ころ16の許容軸方向移動量を設定することができる。
【0020】
図3〜5に示すように、極低温推進剤が軸受内部を軸方向に通過しやすくするために、外輪14および保持器18に貫通穴または切欠きを設けてもよい。貫通穴または切欠きの形状は問わないが、回転バランス上、円周上2箇所以上の等間隔配置とするのが好ましい。図4は保持器18に設ける貫通穴/切欠きの例で、円形の貫通穴19a、長円形の貫通穴19b、半円形の切欠き19c、矩形の切欠き19dの4種類が示してある。図5は外輪14に設ける切欠きの例で、円周方向に等間隔で8箇所、セグメント状の切欠き19eを設けた例を示している。
【0021】
ここで再び図1を参照すると、上述の円筒ころ軸受10に加えて、位置決め用アンギュラ玉軸受50を組み合わせて使用する例が示してある。すなわち、図1の円筒ころ軸受10では、保持器18が軸方向の一方(図1の右側)へ移動しようとすると内輪12と干渉し、その逆方向(図1の左側)へ移動しようとすると外輪14と干渉する。このように保持器18の、したがってまた円筒ころ16の軸方向移動は保持器18と軌道輪12、14との干渉によって規制を受ける。とはいえ、内輪12または外輪14が軸方向に移動してしまうと、保持器と軌道輪との干渉による規制も実効がない。そこで、アンギュラ玉軸受50を用いて内輪12および外輪14の位置決めをする。アンギュラ玉軸受50はスラスト負荷能力があるため、図示するように円筒ころ軸受10と接して配置することにより、円筒ころ軸受10の位置決め、すなわち内輪12、外輪14の軸方向移動を防止する役割を果たす。このようにアンギュラ玉軸受50はもっぱら位置決め用であるため既存のものを採用することができる。したがって、その詳細な説明は省略する。
【0022】
内輪12、外輪14、円筒ころ16の材料としては、耐食性と同時に転がり疲れ強さと耐摩耗性とが要求されるため、マルテンサイト系ステンレス鋼(JISG4303 SUS440C)を採用する。内輪12の軌道面12aおよび環状端面12c、外輪14の軌道面14aおよび環状端面14b、ならびに円筒ころ16の転動面16aに固体潤滑処理被膜を施す。そのような固体潤滑被膜の代表例としてPTFEを挙げることができる。
【0023】
保持器18を構成する材料は、円筒ころ16への転移膜付着を目的として、自己潤滑性を備えた材料とするのが望ましい。保持器18全体を自己潤滑性材料で形成するほか、金属製の母材の表面に自己潤滑性材料からなる層または被膜を設けるようにしてもよい。そのような層または被膜はポケット18aの内壁面を含む保持器18の表面全体に設ける。ここでも自己潤滑性材料の代表例としてPTFEを挙げることができる。
【0024】
軌道輪すなわち内輪12および外輪14につばを設けないことで、運転中にころ端面16bと接触する部分がなくなるため、ころ端面16bとの接触部での潤滑不足という問題がなくなる。なお、円筒ころ16のころ端面16bと保持器18のポケット18aの内壁面とは接触するものの、保持器18は少なくとも表層が自己潤滑性材料で形成されているため、当該接触によって自己潤滑性材料の転移、転着が促進されるため潤滑にとってはむしろ有利に作用する。
【実施例2】
【0025】
次に、図6〜10を参照して実施例2について述べる。実施例2は、円筒ころの軸方向移動量規制や材料、固体潤滑被膜処理等に関しては上記実施例1と同一であるため重複した記載は省略する。図6および図7に示すように、円筒ころ軸受20は、内輪22と外輪24と複数の円筒ころ26と保持器28とで構成されている。これらの構成要素は実施例1と同じであるが、実施例1の円筒ころ軸受10は内輪12、外輪14、ころ16、保持器18がすべて分離してしまうのに対し、実施例2の円筒ころ軸受20は外輪24ところ26と保持器28を非分離としたものである。
【0026】
図8に示すように、内輪22はつばなしで、外周面の中央部に軌道面22aを有し、軌道面22aの片側にテーパ部22bが形成してあり、さらにそのテーパ部22bの小径側には小径部22dが形成してある。小径部22dの側壁は軸線に垂直な環状端面22cとしてある。円筒ころ26は内輪22の軌道面22aと外輪24の軌道面24aとの間に介在し、軸受回転時に円筒形の外周面すなわち転動面26aにて軌道面22a、24a上を転動する。符号26bで指してあるのはころ端面である。
【0027】
外輪24は内周面の中央部に軌道面24aを有し、内輪22の小径部22dとは反対側の軸方向端部に大径部24cが形成してある。大径部24cの側壁は軸線に垂直な環状端面24bとしてある。
外輪24は軌道面24aの両側にころ抜け止め部24d、24eを有する。ころ抜け止め部24d、24eは、軌道面24aよりも小径の環状突部で、円筒ころ26が軸方向へ移動して抜けるのを防止する役割を果たす。
【0028】
保持器28は各円筒ころ26を収容するためのポケット28aを有する(図7参照)。ポケット28aは保持器28の円周方向に所定の間隔で配設してあり、各ポケット28aは保持器28を半径方向に貫通している。ポケット28aの内壁面のうち保持器軸方向に向かい合った内壁面部分ところ端面26bとは、軸方向すきまH、Jを隔てて向かい合っている(図9参照)。
【0029】
また、保持器28は各ポケット28aにつき一対のころ落ち止め部28dを有する(図7参照)。ころ落ち止め部28dは、図8に示すように保持器幅方向の中央部に位置し、隣り合ったポケット28aとポケット28aの間の柱27の側面から、言い換えればポケット28aの保持器円周方向に向かい合った内壁面部分から、ポケット28aの中心側に向かって突出している。ポケット28aを挟んで向かい合った一対のころ落ち止め部28dの離間距離は円筒ころ26の直径よりも小さい。したがって、ころ落ち止め部28dは、円筒ころ26が保持器内径側に落ちるのを防止する役割を果たす。
【0030】
この場合、円筒ころ軸受20の組立てにあたっては、外輪24の内側に保持器28を配置し、その保持器28のポケット28aに保持器28の内側から円筒ころ26を挿入していく。このとき、ころ落ち止め部28dの弾性変形を利用して円筒ころ26を保持器28の半径方向外側に押し込む(スナップイン)。ころ抜け止め部24d、24eところ落ち止め部28dを設けたことにより、外輪24と円筒ころ26と保持器28を一旦組み付けた後は、これら三者は一つの非分離のユニットとして取り扱うことができる。その後、内輪22を円筒ころ26列の内側に挿入することによって円筒ころ軸受20の組立てが終了する。
【0031】
運転中に円筒ころ26が軸方向に移動しても、ころ抜け止め部24d、24eに接触しないように、軸方向の寸法関係を次のように設定するのが好ましい(図9参照)。
D>G+J かつ E>F+H
ここに、
D:円筒ころ26ところ抜け止め部24dとの間の距離、
E:円筒ころ26ところ抜け止め部24eとの間の距離、
F:保持器28と内輪22の環状端面22cとの間のすきま、
G:保持器28と外輪24の環状端面24bとの間のすきま、
H、J:ころ端面26bとポケット28aの内壁面との間のすきま。
【0032】
なお、ころ抜け止め部24d、24eは、形状は「つば」に似ているが、上記条件を満たす限り円筒ころ26と接触することはないため、機能上、「つば」とは全く異なるものである。ころ抜け止め部24d、24eの名称に「つば」の語を用いなかったのはこのためである。
【0033】
実施例2では、極低温推進剤の軸受内部流路が外輪24のころ抜け止め部24d、24eによって阻害されるため、図9および図10に示すように、ころ抜け止め部24d、24eに貫通穴24f、24gを設けて極低温推進剤の通過を許容する流路を形成させる。貫通穴24fはころ抜け止め部24dを外輪軸方向に貫通している。複数の貫通穴24fを円周方向に等間隔に配置するのが望ましい。また、貫通穴24gはころ抜け止め部24eを外輪軸方向に貫通している。複数の貫通穴24gを円周方向に等間隔に配置するのが望ましい。さらに、貫通穴24fと貫通穴24gは、図示するように同位相とするほか、位相を異ならせることもできるが、少なくとも部分的に整列(オーバーラップ)しているほうが推進剤を抵抗少なく通過させることができる。
【0034】
実施例1について図4を参照して述べたとおり、実施例2の保持器28にも貫通穴19a、19bまたは切欠き19c、19dを設けてもよい。
また、実施例1の改変例として、保持器にフランジを設ける代わりに内輪、外輪にフランジを設けてもよい。すなわち、図11に示すように、ころ36を保持するための保持器38はストレートな円筒形状とする。内輪32の一方の軸方向端部に半径方向外向きのフランジ40を設ける。外輪34は、内輪32の外向きフランジ40とは反対側の軸方向端部に半径方向内向きのフランジ42を設ける。軸方向の一方、たとえば図11の左側に向かって保持器38が移動すると、保持器38と内輪32の外向きフランジ40が干渉する。保持器38が逆に図11の右側に向かって移動すると、保持器38と外輪34の内向きフランジ42が干渉する。このようにして保持器の軸方向移動が規制される。
【0035】
以上、ロケットエンジン用ターボポンプに使用する軸受に適用した場合を例にとって実施の形態を説明したが、この発明はその他の極低温環境下で使用する円筒ころ軸受にも適用することができ、同様の効果が期待できるものである。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30 円筒ころ軸受
12、22、32 内輪
12a、22a 軌道面
12b、22b テーパ部
12c、22c 環状端面
12d、22d 小径部
14、24、34 外輪
14a、24a 軌道面
14b、24b 環状端面
14c、24c 大径部
24d、24e ころ抜け止め部
24f、24g 穴
16、26、36 円筒ころ
16a、26a 転動面
16b、26b ころ端面
18、28、38 保持器
18a、28a ポケット
18b、28b 内向きフランジ
18c、28c 外向きフランジ
28d ころ落ち止め部
40 外向きフランジ
42 内向きフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に軌道面をもつ内輪と、内周に軌道面をもつ外輪と、内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に介在する複数の円筒ころと、各円筒ころを収容するポケットを円周方向に配設した保持器とからなる円筒ころ軸受において、前記内輪および前記外輪はつばなしで、前記円筒ころの軸方向移動を前記保持器と前記内輪および前記外輪との干渉によって規制するようにしたことを特徴とする円筒ころ軸受。
【請求項2】
前記保持器は、軸方向に移動したとき前記内輪と接触する内向きフランジと、前記軸方向とは反対方向に移動したとき前記外輪と接触する外向きフランジとを有する請求項1の円筒ころ軸受。
【請求項3】
前記内輪の端部外周に小径部を設け、前記小径部の側壁を前記内向きフランジと軸方向に向かい合った環状端面とし、かつ、前記外輪の端部内周に大径部を設け、前記大径部の側壁を前記外向きフランジと軸方向に向かい合った環状端面とした請求項1または2の円筒ころ軸受。
【請求項4】
前記内輪の環状端面と前記保持器の内向きフランジとの間のすきま、および、前記外輪の環状端面と前記保持器の外向きフランジとの間のすきまを調整することにより、円筒ころの許容軸方向移動量を設定する請求項3の円筒ころ軸受。
【請求項5】
前記内輪と前記外輪の軸方向相対位置関係を規制するために、位置決め用のアンギュラ玉軸受と組み合わせて使用することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項6】
前記外輪にころ抜け止め部を設けるとともに、前記保持器にころ落ち止め部を設けることにより、前記外輪と前記円筒ころと前記保持器とを一つのユニットとしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項7】
前記ころ抜け止め部は、前記外輪の軌道面の両側に位置し、前記軌道面よりも小径の環状突部である請求項6の円筒ころ軸受。
【請求項8】
前記ころ落ち止め部は、前記保持器の柱の側面から前記ポケット中心側に突出し、前記ポケットを挟んで向かい合った前記ころ落ち止め部の離間距離は前記円筒ころの直径よりも小さい請求項6の円筒ころ軸受。
【請求項9】
前記保持器の少なくとも表層が自己潤滑性を備えた材料からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項10】
前記保持器の母材は金属からなる請求項9の円筒ころ軸受。
【請求項11】
前記内輪、前記外輪、前記円筒ころの転動面および軌道輪軸方向移動規制端面に固体潤滑処理被膜を施したことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項12】
前記自己潤滑性を備えた材料がPTFEである請求項9、10または11の円筒ころ軸受。
【請求項13】
前記保持器に前記極低温流体の通過を許容する貫通穴または切欠きを設けた請求項1ないし12のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項14】
前記外輪に前記極低温流体の通過を許容する貫通穴または切欠きを設けた請求項1ないし13のいずれか1項の円筒ころ軸受。
【請求項15】
前記極低温流体が液体酸素または液体水素である、ロケットエンジン用ターボポンプに使用する請求項1ないし14のいずれか1項の円筒ころ軸受。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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