説明

円筒形電極

【課題】 ガスを発生するための円筒形電極を提供する。
【解決手段】 本発明の電極は、活性化されていない導電性コアと、この導電性コアに固定された、容易に脱着可能であり且つ交換可能な触媒活性を備えた構成要素、例えば波形シート又はメッシュとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的プロセス用の円筒形形状の電極に関し、更に詳細には、表面に触媒活性を備えた金属製中央導体を含む円筒形電極に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形形状の電極を使用することは、電気化学の幾つかの分野で周知である。多くの場合おいて、円筒形中空電極とその内部に同心に配置された対応する電極を含むこれらの円筒形電極は、現在、電気透析(PCT/US2003/0010639号参照)、水の電気分解(ドイツ国特許第DE 196 36 171号参照)、オゾンの製造(PCT/JP2001/198574号参照)、及び他の用途で使用されている。
【0003】
それにも関わらず、円筒形の、多くの場合に同心の電極形体を使用する最も重要なプロセスは、様々な汚染物を除去して上水化又は浄化を行うプロセス(例えば米国特許第5,635,040号参照)、水溶液からの金属回収プロセス(米国特許第6,451,183号又はドイツ国特許第DE 197 49 445号)、及び廃水(産業廃液、下水、等)の処理プロセスである。特に小型の電気化学的セルの円筒形形状は、特に流体の分配に関して大きな利点を提供する。円筒形電極は、考えているプロセスに応じて、アノードであってもカソードであってもよい。多くの場合、このような電極は、ガス発生反応、例えば水素をカソードで発生させる反応や、アノードで酸素、オゾン、又は塩素を発生させる反応に適している。ガス発生反応、特にアノードでのガス発生反応は、十分な効率で行うために触媒を用いなければならず、従って、従来技術の円筒形電極は、通常は金属酸化物をベースとした触媒でコーティングした、金属製の円筒形導電性支持体(通常は、アノードの場合にはチタニウム又は他のバルブ金属)でできている。触媒は、広く知られているように、発生されるべきガスの種類及び必要な電位で決まる。円筒形支持体への触媒コーティングの適用プロセスは、円筒形支持体に前駆物質を塗布する工程と、次いで、この前駆物質を高温(350℃乃至700℃)での熱処理によって変換する工程を含む。金属電極に前駆物質溶液を塗布する工程は、好ましくは、静電スプレープロセスによって実施される。この場合には、均等に塗布することに関し、円筒形形状よりも平らな形状の方が好ましい。更に、触媒コーティングは作動寿命が限られている(用途によって、1年乃至5年)。元来のコーティングが消耗してしまうと、機械的手段によって完全に除去して元に戻さなければならない。コーティング除去作業は、特に円筒形形状について、特に小型のものについて、手間がかかる。いずれにせよ、電極の触媒活性を元に戻すには長い時間が掛かり、そのため、工場の作業に望ましからぬ制限が加えられ、又は製造の一時的中断が余儀なくされ、電極を計画的に周期的に再活性化できるようにする上で工場の全体の大きさが大きくなり、又は大量の交換電極を貯蔵する必要がある。これは、費用を投資する観点から見ると、非常に厄介な解決策である。
【特許文献1】PCT/US2003/0010639号
【特許文献2】ドイツ国特許第DE 196 36 171号
【特許文献3】PCT/JP2001/198574号
【特許文献4】米国特許第5,635,040号
【特許文献5】米国特許第6,451,183号
【特許文献6】ドイツ国特許第DE 197 49 445号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、従来技術の問題点を解決する、電気化学的プロセス用円筒形電極を提供することである。別の側面では、本発明の目的は、触媒コーティングの適用又は復旧の容易さを高めることができる円筒形電極を提供することである。更に別の側面では、本発明の目的は、プロセス管理効率に関して改良された、円筒形電極の触媒の再活性化を行うための方法を提供することである。これらの及び他の目的は、本発明を例示するが本発明の範囲を制限しない以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の側面では、本発明は、電流コレクタとして作用する導電性コアと、このコアの外側に固定された、例えば導電性材料で形成されたメッシュ又は固体、有孔シート、イクスパンデッドシート等の取り外し自在の構成要素を含む、ガスを発生するための電極に関する。非常に望ましい実施例では、取り外し自在の構成要素には触媒コーティングが設けられており、電極の活性エレメントを形成する。本発明の電極形状は、電気冶金プロセス又は水処理プロセスで酸素、オゾン、又は塩素を発生するためのアノード構造に特に適している。この場合、円筒形導電性コアは、有利には、バルブ金属、多くの代表的な場合にはチタニウムでできている。円筒形コアは任意の大きさを備えていてもよく、最も代表的な直径は、用途に応じて1cm乃至25cmである。取り外し自在の構成要素は、好ましくは、金属製のメッシュ又はシートであり、有利には、導電性コアと同じ材料でできており、好ましくは、0.3mm乃至0.8みの厚さを有するが、この他の厚さも等しく可能である。
【0006】
第2の側面では、本発明は、消耗した触媒コーティングを備えた円筒形アノードを再活性化するための方法において、触媒コーティングを外側に備えた取り外し自在のエレメントを適用する工程を含む、方法に関する。
【0007】
本発明は、単に例示を目的とした添付図面を参照することにより、更によく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1A、図1B、及び図1Cは、本発明の電極の第1実施例を示す。詳細には、図1Aには、円筒形導体(100)の平面図が示してある。この円筒形導体は、金属ロッド又は中空円筒体を含む。これは、例えばチタニウム製であり、又はカソードの場合には、ステンレス鋼製である。組み立て後に本発明の電極の円筒形導電性コアとして作用する円筒形導体(100)は、更に、従来技術の円筒形電極、例えば触媒コーティングが消耗した電極であってもよい。
【0009】
参照番号(200)は、波形の円筒体を形成するように巻いて自体の上に閉じ、そして溶接した波形の金属シートの平面図を示す。このシートは、少なくとも外面に表面触媒コーティングを備えている。図では、波形シートの波形は、図面を良好に理解するため、実際とは縮尺が異なっており、大きく誇張してある。余り好ましくない実施例では、シート(200)を等価の形状の波形のメッシュに代えてもよい。巻いて円筒体にしたシート(200)の直径は、導電性コア(100)よりも僅かに小さいが、波形形状により或る程度の可撓性を備えているため、コア自体に押し込むことができる。可撓性は、厚さが小さい(代表的には、0.5mmであり、いずれにせよ、0.3mm乃至1mmの範囲内にある)波形シートについて、高い。図2Bは、組み立て後、即ち波形シート(200)を挿入した後の二つの部品を示す。これらの二つの部品は、更に、溶接スポット(図示せず)によって固定されていてもよい。図1Cは、同じアッセンブリの側面図である。特に、図1Bからわかるように、円筒形導体で直接得られる触媒活性と比較すると、波形シートを使用することには、活性面を大幅に増大するという明らかな利点がある。更に、触媒コーティングが消耗した後、シート(200)を取り外して予め活性化した別のシートと交換することを、現場で、数分の停止時間で容易に行うことができる。これに必要とされることは、一連の完成品の電極でなく、活性化したシートを現場に貯蔵しておくことだけである。このようにして、更に、再活性化を行う場合の材料の取り扱い費用が減少する。
【0010】
図2A及び図2Bは、本発明の第2の好ましい実施例を示す。詳細には、図2Aは、円筒形導体(101)を示す。この導体は、この実施例では、チタニウム製、又はアノードの場合には他のバルブ金属製、又はカソードの場合にはニッケルやステンレス鋼製の金属ロッド又は中空円筒体をなしている。更に、この場合には、円筒体導体(101)は従来技術の円筒体電極であってもよく、例えば、消耗した触媒コーティングを備えた電極であってもよい。
【0011】
参照番号(201)は、円筒形導体(101)の母線に沿って旗のように溶接した、触媒コーティングを備えたメッシュを示す。この図は、二つの部品の接合部を連続した溶接部(300)として示す。この溶接部は、例えばレーザーで得ることができるが、スポット溶接等の別の種類の溶接も可能である。更に、メッシュ(201)の代わりに、エキスパンデッドシート又は有孔シートを使用してもよく、又は余り好ましくない実施例では、中実のシートを使用してもよい。図2Bは続いて行われる工程を示す。この工程では、メッシュ(201)を巻いて円筒形コアを包囲し、両縁部を重ねた後にスポット溶接(301)によってメッシュ自体に溶接する。余り好ましくない実施例では、メッシュ(201)の縁部が重なっていなくてもよく、メッシュの両縁部を導電性コア(101)に溶接してもよい。更に、スポット溶接(301)の代わりに、別の種類の固定方法、例えば連続溶接を使用してもよい。更に、この実施例では、メッシュ(201)の適当な形状により、結果的に得られた電極の活性面を、円筒形導体を直接的に活性化することに関して大幅に上昇できる。更に、円筒形コア(101)の外側に固定された金属メッシュ(201)は、触媒の活性が消耗した後、新たなものと容易に交換できる。

米国特許第6,451,183号に開示されたチューブ状銅電着セルで使用されるセル用の円筒形チタニウムアノードは、厚さが15cmのチタニウム製中空円筒体を含み、当該技術で周知のように、チタニウム及びチタニウム酸化物をベースとしたコーティング(全体として16g/m2 )によって、チタニウム及びチタニウム酸化物をベースとした中間層上で活性化される。アノードについて、25℃の温度の5%の硫酸溶液で、500A/m2 の電流密度で、酸素を発生する標準的な試験を行う。8時間に及ぶ試験中、3.30vの標準的な電圧を検出した(従来技術による電極)。
【0012】
本発明による電極は、触媒活性がない同じチタニウムロッドを使用して行われる。従来技術による従来の試料と同じ配合物で活性化した0.5mm厚のチタニウムメッシュを、チタニウムロッドに、図2に示す形体を使用して固定する。従って、最初に、活性化したメッシュを円筒体の母線に沿って連続溶接によって固定した後、ロッドに巻き付け、3か所の溶接スポットによって固定する。
【0013】
電極に前の試料と同じ酸素発生試験を、同じプロセス条件で加える。8時間に及ぶ試験中、安定した2.90vの電圧が検出された(本発明の電極)。
これによって、本発明の電極は、主に消耗した円筒形電極の再活性化と関連した従来技術の不便さを、非常に実際的な方法で解決することの他、恐らくは露呈された表面が大きいことにより、予想される比較的長い寿命と対応する比較的高いエネルギ効率(低電圧)で作動できる。
【0014】
当業者には理解されるように、上述の例に関して様々な変型及び変更を行って、本発明を実施してもよい。
以上の説明は、本発明を限定しようとするものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施例に従って使用してもよく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって一義的に定義される。
【0015】
本願の説明及び特許請求の範囲に亘り、「含む」という用語、及びこの用語と同様の「有する」とか「備えている」という用語は、他のエレメントの存在又は追加を排除しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、本発明の電極の第1実施例の円筒形導電性コア及び金属シート又はメッシュを別々の構成要素として示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明の電極の第1実施例の同じ構成要素を組み立てた状態で示す平面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の電極の第1実施例の同じ構成要素を組み立てた状態で示す側面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の電極の第2実施例の、金属シート又はメッシュを導電性コアの母線に沿って溶接した図である。
【図2B】図2Bは、本発明の電極の第2実施例の同じ金属シート又はメッシュを導電性コアに巻き付けて溶接スポットで固定した図である。
【符号の説明】
【0017】
100 円筒形導体
200 金属シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生用電極において、
円筒形導電性コア及びこの円筒形導電性コアの外側に電気的に接触するように固定された金属シート又はメッシュを含む、電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極において、
前記導電性円筒形コアはチタニウム又は他のバルブ金属で形成されている、電極。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極において、
前記円筒形コアの直径は、1cm乃至25cmである、電極。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の電極において、
前記金属シート又はメッシュは、塩素、オゾン、又は酸素を発生するための触媒コーティングで活性化されている、電極。
【請求項5】
請求項1、2、又は3に記載の電極において、
前記金属シート又はメッシュは、高過電圧酸素を発生するための触媒コーティングで活性化されている、電極。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の電極において、
前記金属シート又はメッシュは波形シートであり、該波形シートは、元来の直径が前記円筒形コアの直径よりも小さい円筒体を形成するように、前記波形シート自体を巻いて二つの両側に沿って溶接してあり、前記円筒形コアに強制的に被せてある、電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電極において、
巻いて円筒体にし且つ前記導電性コアに被せた前記波形シートは、溶接スポットによって前記導電性コアに固定される、電極。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電極において、
前記波形シートの厚さは、0.3mm乃至1mmである、電極。
【請求項9】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の電極において、
前記金属シート又はメッシュの一方の側は、前記円筒形コアに前記円筒形コアの母線に沿って溶接されており、前記シート又はメッシュは前記導電性コアに巻き付けてある、電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極において、
前記金属シート又はメッシュの厚さは、0.3mm乃至1mmである、電極。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の電極をアノードとして酸素を発生する工程を含む、金属電着プロセス。
【請求項12】
水処理プロセスにおいて、
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の電極をアノードとして、酸素、オゾン、又は塩素を発生する工程を含む、水処理プロセス。
【請求項13】
消耗した触媒コーティングを備えた円筒形電極を再活性化するための方法において、
円筒体を形成するように丸めて二つの両側に沿って溶接した波形シートを前記円筒形電極に被せる工程を含み、前記波形シートは、触媒コーティングを備えている、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記丸めた波形シートは、前記円筒形電極よりも小径の円筒体を形成する、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法において、
前記波形シートを溶接スポットで前記円筒形電極に固定する工程を含む、方法。
【請求項16】
消耗した触媒コーティングを備えた円筒形電極を再活性化するための方法において、
触媒コーティングを備えた金属シート又はメッシュの縁部を前記円筒形電極の母線に沿って溶接する工程と、
前記金属シート又はメッシュを前記円筒形電極に巻き付ける工程と、
前記金属シート又はメッシュの反対側の縁部を前記溶接した縁部及び/又は前記円筒形電極に溶接スポットによって固定する随意の工程とを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2008−532739(P2008−532739A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500132(P2008−500132)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002191
【国際公開番号】WO2006/094814
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507128654)インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (29)
【Fターム(参考)】