説明

円筒状ベクトルビームを生成するシステム及び技法

【課題】光ファイバ・デバイスに関し、円筒状ベクトルビームを生成するシステム及び技法を提供する
【解決手段】本願発明は、基本LP01モードでの信号伝搬に対応する入力光ファイバと、円筒状偏光のTM01モードとTE01モード並びに混合HE21(even)モード及び混合HE21(odd)モードを含むモードの線形結合を含む高次LP11モード出力へ基本LP01モードを変換するモードコンバータデバイスを有する。少なくとも1つの円筒状偏光モードへの結合が最小のクロスカップリングで可能とするために、少なくとも1つの円筒状偏光モードが他のモードの実効屈折率から十分に分離された実効屈折率を有するよう、スカラのLP11モードのモード輝度プロファイルのピーク振幅に近接した急峻な屈折率ステップを含む屈折率プロファイルを有する位相設計されたファイバを当該LP11モード出力は伝搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光ファイバ・デバイス及び方法に関し、詳細には円筒状ベクトルビームを生成するための改善されたシステム及び技法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状ベクトルビームは、ビーム軸の周りで回転対称な偏光状態を有する偏光ビームであり、放射状偏光ビーム及び方位偏光ビームを含む。放射状偏光ビームは、その固有の特性のために、最近、とりわけ興味深いものとなっている。放射状偏光ビームが高開口数システムで合焦されたときに生成される縦電界成分が、光軸に沿ってゼロ・ポインティングベクトルを有する高輝度をもたらす。この特性によって、回折限界、機能強化されたレーザ加工、効率的なレーザ・ピンセット及び量子情報のための原子双極子状態の調整によって受け入れられる大きさに収まる縦場スポット・サイズ(longitudinal−field spot−size)が使用可能になる。
【0003】
自由空間共振器またはファイバを使用して放射状偏光ビームを生成する現行の手法は、不安定性の問題を伴う。ファイバ・ベースの手法で克服しなければならない問題の1つに、放射状偏光ビームが、同一モード輝度プロファイルを共有するが異なった偏光ベクトル配向を有する、ほとんど縮退の他のモードと光ファイバ内で共存することがある。これらのモード間の偶然な結合によって、所望の放射状偏光モードではなく、よりよく知られている、回転に関して不安定な第1高次反対称(first higher−order antisymmetric)LP11モード・パターンが生じる。
【0004】
マルチモード・ファイバにおいて、ほとんど縮退する4つのモードのうちのいずれか2つのモードの結合から生じる、回転に関して不安定なLP11モードは、同一輝度パターンであるが異なる偏光配向で従来の基本LP01モードが2倍縮退する一般的なシングルモード・ファイバ(SMF)と似ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LP11フィールド・パターンは、ファイバ中の最も軽微な摂動に対してさえ、回転するだけでなくその偏光ベクトルの配向も変化する。実際、以前の、ファイバを用いて放射状偏光モードを生成する試みで実現されたものは、非常に短く直線のセグメントで、かつ/またはバルク・レーザロッドとともに使用されるものに類似した空胴内の低いモード純度であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術のこれらの問題及び他の問題に対処し、本発明の一態様は、円筒状偏光ビーム(例えば放射状偏光ビーム、方位偏光ビーム)を生成する技法を提供する。基本LP01モードでの信号伝搬に対応する入力光ファイバが提供される。基本LP01モードが高次LP11モード出力に変換されるモードコンバータ・デバイスに入力ファイバが結合される。高次LP11モードは、円筒状偏光のTM01モードとTE01モード並びに混合HE21(even)モード及び混合HE21(odd)モードを含む、モードの線形結合からなる。LP11モードの出力は、屈折率プロファイルを有する位相設計(phase−engineered)されたファイバを通って伝搬し、このプロファイルは、少なくとも1つの円筒状偏光モードが他のモードのそれぞれの実効屈折率から十分離れた実効屈折率を有してこの少なくとも1つの円筒状偏光モードと他のモードの結合が最小限になるように、スカラのLP11モードのモード輝度プロファイルのピーク振幅に近接した急峻な屈折率ステップを含む。そこで、所望の円筒状偏光のモードが出力としてもたらされる。
【0007】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1高次LP11モードのモードフィールド像の図である。
【図2】図2A乃至図2Dは、LP11モードに関してほとんど縮退する4つのモードの一連のモードフィールド像の図である。
【図3】スカラのLP11モードに関するモード輝度プロファイルの図である。
【図4】本発明の一態様によって位相設計されたファイバ向けの所望の屈折率プロファイルの図である。
【図5】図4の屈折率プロファイルに従って製造されたファイバの断面図(原寸に比例しない)である。
【図6】図4の屈折率プロファイルに従って製造されたファイバから得られた実際の屈折率プロファイルの上に図3のモード輝度プロファイルを重ねた合成プロファイルの図である。
【図7】本発明によって分離されたLP11モードの波長に対して実効屈折率neffをプロットしたグラフである。
【図8】図8及び図8Aは、本発明のさらなる態様によって基本LP01を円筒状偏光ビームに変換するためのモジュールの図である。
【図9】本発明による位相設計されたファイバの偏光特性を試験するための装置の図である。
【図10】本発明によって分離されたLP11モードの波長に対して変換のパーセント値をプロットしたグラフである。
【図11】図9の試験装置を使用して得られた結果を示す一連の近接場の像の図である。
【図12】本発明による位相設計されたファイバの偏光特性を試験するための、一連の捩り及び曲げによってファイバが摂動される装置の図である。
【図13】図12の試験装置から生成された1対のポアンカレ球の図である。
【図14】本発明による技法の全体的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上記の問題他は本発明によって対処されるが、その態様は、円筒状偏光ビーム(例えば放射状偏光ビーム、方位偏光ビーム)を生成するためのインファイバ・システム及び方法を対象とする。これらの放射状偏光ビームは光ファイバ中の安定したモードとして生成され、多くの科学技術の用途向けに魅力的なものである。説明された技法は、厳密に円筒状に対称であるにもかかわらず偏光維持する新規の部類のファイバをもたらす。
【0010】
以下に詳細に説明するように、LP11モードは4つの要素モード(component mode)の線形結合からなる。LP11モードはほぼ縮退であるため、4つの要素モードのそれぞれは、互いに大きさは近接するが同じではない伝搬定数を有している。一般的には、4つの要素モードの伝搬定数間の分離量は非常に小さく、従来技術では、4つの要素モードのうちのいずれかへ結合することは、1またはそれ以上の他の要素モードへのかなりのクロスカップリング量なくして、不可能ではないにしても、非常に困難である。本願発明は、ある選択された要素モードと他の3つの要素モードの伝搬定数の分離を大きく増加するファイバと技術を提供する。
【0011】
ある選択された要素モードの実効屈折率neffの他の要素モードのそれぞれの屈折率からの分離に関し、特定の状況に応じて、本願発明の特徴をここに記載する。所与のモードの実効屈折率neffは、その伝搬定数βと以下のように関連する。

β=(2πneff)/λ

即ち、所与の波長λに対し、所与のモードの実効屈折率neffはその伝搬定数βに比例する。それ故に、用語「伝搬定数」を用いる本願明細書における記載は、「実効屈折率」にも同様に適用可能である。このことは、2つの量が所与の波長で互いに比例することから理解すべきである。
【0012】
本願発明の一態様は、反対称LP11モードの偏光縮退を高めて、当該LP11モードのベクトル成分の伝搬定数を大きな量だけ分離させるような、位相設計されたファイバを提供する。説明されたファイバは、放射状偏光TM01モード並びに基本LP01モード及びガウス形LP01モード向けの安定した誘導を提供する。
【0013】
入力が従来のガウスビームであるとき、著しく向上した伝搬定数の分離によって、優れたモード純度(すなわち99.6%以上)で単一の希望モード(例えば放射状偏光TM01モード)のファイバグレーティング・ベースの励起が可能になる。さらに、本明細書に説明された技法はいろいろな用途があり、また、高出力レーザ、広帯域放射源などを含むがこれらに限定さない任意の放射源からガウス形の入力を受け取ってこのガウス形の入力を放射状偏光ビームまたは方位偏光ビームの出力に変換することができるファイバ・デバイスを作製するのに用いられ得ることが理解されよう。
【0014】
ファイバ中の群遅延または分散の技術は周知であるが、位相自体を変更する実証はほとんどない。この点に関する一例に、インデックスまたは寸法形状が十分楕円状に製作され、直交偏光を伴う基本モード間の実効屈折率neffにおける差で少なくとも1×10−4である偏光維持ファイバ(PMF)がある。
【0015】
したがって、ここで説明された技法は、放射状ベクトルモードに関する伝搬定数において大きな分離を提供する新規の部類のPMFを提供する。この構造が、幾何学的楕円形または楕円状のインデックスを必要としないことにさらに留意されたい。説明された技法は、円筒状に対称な最初のPMFを提供する。
【0016】
円筒状に対称なPMFの開発によって、以下を含むいくつかの波及効果を得る。(a)説明されたモードが、大きなモード領域を放射状に実現することができるので、高出力PMFレーザ及び増幅器が実現可能であり、(b)特別なPMF接続具は不要であり、さらに、接続に先立つPMFファイバの位置合わせがもはや必要でないため偏光消光比(Polarization Extinction Ratio:PER)が改善され得、また、(c)円筒状に対称なPMFは、他のタイプのPMFと比べて製造コストをより低くすることができる。
【0017】
図1は、従来のファイバでの第1高次モードLP11に関するモードフィールドの輝度パターン20を示す。前述のように、LP11モードは反対称(antisymmetric)であり、回転に関して不安定である。LP11モードは、実際には、ほとんど縮退する4つの放射状ベクトルのモード、TM01、HE21(even)、HE21(odd)、及びTE01の線形結合である。図2A〜図2Dは、これらの各モードのそれぞれのモードフィールド輝度パターンを示す一連の像である。さらに、図2A〜図2Dには、モードのベクトル表現が矢印によって示されている。
【0018】
切り離して見ると、図2Aに示されたTM01モードは放射状偏光ビームをもたらし、TE01モードは方位偏光ビームをもたらすことが理解されよう。しかし、これらのモードは、他のモード、HE21(even)及びHE21(odd)とのクロスカップリングによって不明瞭になっている。さらに、一般的なマルチモード・ファイバでは、示された4つのモードは、互いに異なるものではあるが非常に接近した伝搬定数を有する。したがって、他のモードからTM01モードまたはTE01モードのいずれかを抽出するのに従来の技法を用いることができない。
【0019】
本発明の一態様は、円筒状偏光のTM01モード及びTE01モードの伝搬定数と、混合HE21(even)モード及び混合HE21(odd)モードの伝搬定数の間の差を大いに拡大する新規の偏光維持ファイバ(PMF)を提供する。伝搬定数が著しく異なると、所望の円筒状偏光モードに高いモード純度で結合することができる。さらに、新規のPMFは円筒状に対称であり、このことは、前述の様々な理由で有利である。
【0020】
この新規のPMFの設計は1次の摂動的解析に基づくものであり、この解析は、インデックス・ステップでスカラのモード輝度が高いとき伝搬定数に対するベクトル補正が大きくなることを示す。ほとんど縮退する4つのモードは、電界の大きさが同一であり、電界配向だけが異なる。したがって、それらの伝搬定数β=2πneff/λは、ファイバ導波路中のインデックス・ステップで様々な電界配向から生じるベクトル補正を除いて類似である。
【0021】
各モードに対するこの補正の量は、次式の1次の摂動的解析から得ることができる。
【数1】

上式において、
【数2】

である。ここで、E(r)はスカラのモードに関する電界プロファイルであり、F(r)は正規化されたファイバのインデックス・プロファイルである。
【0022】
式(1)〜式(5)から、I及びIに対する適当な値を有する屈折率プロファイル、すなわちLP11スカラ場E(r)のピーク振幅に近接した急峻な屈折率ステップ∂F(r)/∂rを有する屈折率プロファイルを有する導波路を設計することにより、縮退分割の向上が可能であることが理解されよう。
【0023】
図3は、スカラのLP11モードのモード輝度プロファイル30を示し、導波路を横切る半径方向の位置(X軸)に対するモード輝度(Y軸)がプロットされている。X軸上の「0」の値は、導波路の軸中心を表す。説明と比較のために、モード輝度は便宜的な単位で表現されている。図3に示されるように、本実施例では、スカラのLP11モードは、全体的にM形の輝度プロファイルを有し、導波路の中心のまわりで対称であって、約±4マイクロメートルでピーク32を有する。
【0024】
図4は、本発明の一態様によって位相設計されたファイバ導波路向けの所望の屈折率プロファイル40を示す。繰り返しになるが、説明と比較の目的のために、屈折率プロファイルは便宜的な単位で表現されている。ファイバは、半径rcladding(図5)及び屈折率ncladdingを有する外側クラッディング領域42を含む。クラッディング屈折率ncladdingは、他のファイバ領域の実効屈折率Δnを求めるのに基準値として用いられる。
【0025】
ファイバは、半径rcore及び屈折率ncoreを有する平坦なコア領域44を含む。コアの実効屈折率Δncoreは、ncoreからクラッディング屈折率ncladdingを減じることにより求められる。すなわち、Δncore=ncore−ncladdingである。本実施例のファイバでは、Δncoreはゼロと等しい。
【0026】
コア領域44は、rcoreと等しい内側半径、外側半径rring、及び屈折率nringを有するリング領域46に囲まれる。図4に示されるように、リング領域46は比較的大きな実効屈折率Δnring=nring−ncladdingを有し、急峻なステップとして示されている。リング領域46は外側クラッディング領域42に囲まれている。
【0027】
上記で論じられたように、ステップが急峻なリング領域46は、図3に示されたスカラのLP11モード30のモード輝度プロファイルの振幅ピーク32に近接して配置される。リングの実効屈折率Δnringは、LP11モードの伝搬定数の所望の分離をもたらすために十分に大きい値を有するべきである。一般に、Δnringは約0.015以上であるべきである。詳細には、nring−ncore及びnring−ncladdingは、どちらも約0.015以上であるべきである。
【0028】
図5は、図4に示された屈折率プロファイル40に従って製造されたファイバ50の断面図(原寸に比例しない)である。ファイバは外側クラッディング52、コア領域54、及びリング領域56を含む。ファイバ50は、内付け化学気相堆積(MCVD)技法または他の適当な技法を用いて、SiOまたは他の適当な材料から製作することができる。外側クラッディング領域52及びコア領域54は非ドープである。リング領域56は、インデックスを上げる適当なドーパントまたはGeOなどのドーパントの混合物でそれをドープすることにより形成される。
【0029】
図6は、図4に示された所望の屈折率プロファイル40に従って製造されたファイバの実際の屈折率プロファイル61の上に重ねたスカラのLP11モードの輝度プロファイル30を示す合成プロファイル60を示している。図6に示されるように、実際の屈折率プロファイル61は、実質的に平坦な外側クラッディング領域62、コア領域64、及びリング領域66を含む。もちろん、実際のファイバでは、通常は、リング領域66向けに完全に正方形の「ステップ」を得ることは不可能である。しかし、一般に、所望の結果を達成するために、リング領域内でのncoreからnringへの移行及びnringからncladdingへの移行は、どちらも約1マイクロメートル以下の半径方向の幅を有するべきである。
【0030】
図7は、ベクトル成分TM01、HE21(even and odd)及びTE01の波長に対してneffをプロットしたグラフ70である。従来のファイバでは、3つの曲線は図7のグラフ70のスケールでは判別不能である。放射状偏光TM01モードのneffが、他の導波モードから少なくとも1×10だけ分離されていることが認められる。この分離値は、従来のPMファイバで達成されたモードの分離に似ていることに留意されたい。
【0031】
前述の位相設計されたファイバは、ほぼガウス形の形状を有する基本LP01モードを、放射状偏光モードに変換するための全ファイバのモジュールを構成するために使用することができる。図8は、そのようなモジュール80の図(原寸に比例しない)を示し、これは、マイクロベンド格子82または他の適当なモードコンバータ・デバイスと、説明された位相設計ファイバ84を結合することにより構成されたものである。LP01モードは、標準的なシングルモード・ファイバ(SMF)(図示せず)などの適当なファイバを通って供給され、マイクロベンド格子82への入力として供給される。次いで、マイクロベンド格子82は、基本LP01モードを第1高次LP11モードに変換する。次いで、LP11モードは、位相設計されたファイバ84への入力として供給され、結果としてモードの前述の分離がもたらされる。TM01モードと結合することにより放射状偏光ビームが得られる。TE01モードと結合することにより方位偏光ビームが得られる。
【0032】
図8は、モード変換ファイバ82が、説明されたモードを伝搬させる第2のファイバ84から分離されている一般的な実施例を示すことに留意されたい。図8A(原寸に比例しない)に示された本発明の別の態様によれば、位相設計されたファイバ84’の一部分の中に格子82’を直接製作することにより、本発明によるモジュール80’が構成される。
【0033】
図9は、説明された位相設計ファイバの偏光特性を試験するための装置90を示す。図9に示されるように、位相設計されたファイバ91は、マイクロベンド格子92に結合される。数本のシングルモード・ファイバ(SMF)93が、ファイバ91及び格子92を、入力端で可変波長外部空洞レーザ94及び偏光制御器95に接続し、かつ出力端で光スペクトル・アナライザ(OSA)96に接続するのに使用される。試験結果は、赤外線カメラ97を使用して記録される。
【0034】
図10はOSAのプロット100を示し、波長に対して変換効率のパーセントがプロットされている。試験の結果、約99.6%の変換効率ηが示された。
【0035】
図11は、実験的に記録された一連の近視野像110を示し、鮮やかな環状の輝度プロファイルを与える。偏光制御器を用いてビーム経路中で像回転を行うことによって、放射状偏光TM01モード及び方位偏光TE01モードの生成が確かになる。ビーム通路中の偏光子なしで、環状の形状が得られる。偏光子を用いると、偏光子で整合された投影だけが伝送され、放射状のベクトルモードの組合せではなく、鮮やかなTM01モード及びTE01モードの生成が確かになる。
【0036】
図12は、説明されたファイバを使用したPM動作をさらに例証する一対の試験装置120及び120’を示す。装置120の中心に、位相設計された1本のファイバ121がある。LP01モードでデバイスの両端にアクセスすることができるように、入力格子122及び出力格子123によって、入力SMF 124及び出力SMF 125に×印のところで接続可能になる。入力SMF 124は外部空洞レーザ126に接続され、出力SMF 125は民生用の偏光アナライザ127に接続される。比較のために、装置120’は装置120の要素を含むが、PMファイバ121、入力格子122及び出力格子123は、1本のSMF 128で置換されている。
【0037】
そのPM能力を試験するために、ファイバを摂動させながら、図13のポアンカレ球表現130’及び130として偏光の出力状態(SOP)が記録された。摂動129及び129’は、1cmまでの曲率半径Rでの複数のねじれ及び屈曲から成る。図13は、そのような摂動が、SMFの場合にはポアンカレ球まで満たしているが(球130’)、説明されたファイバではSOPで小さな変化しか生じないことを示す(球130)。検出器が後続する回転偏光子で測定されたPERは、28.7dBであった。偏光子を固定すると、0.6dBの出力偏位(出力急騰:power excursion)が記録された。この偏位(急騰)を2経路の干渉計におけるランダム結合によるものと仮定して、29.2dBのモード消衰レベルを算定したところ、測定されたPERとほとんど同一であった。PERのレベルが高いとPM動作が確かになるが、これらの値は民生用のPMファイバに対して競争力がない。しかし、概念的に類似の理論上最適化されたファイバの構造は、民生用PMファイバのものより高いPER値の可能性を促進し、非常に大きなneff分離を示す。
【0038】
図14は、一般に、円筒状偏光ビーム向けの、本発明の前述の態様による全体的な技法140の流れ図である。ステップ141で、ガウス形のLP01モード入力が高次LP11モードに変換される。ステップ142で、所望の円筒状偏光モード(例えばTM01モードまたはTE01モード)が他のモードから分離されるように、LP11モードは、スカラのLP11モード輝度プロファイルのピーク振幅のところに、またはその近くに、急峻な屈折率ステップがある屈折率プロファイルを有する導波路を通して供給される。ステップ143で、所望の円筒状偏光モードが結合される。
【0039】
要約すると、寸法形状及び屈折率において、とてもよく環状に対称な最初のPMファイバであると考えられるものが本明細書で説明されている。これらの特性は、PMファイバ・デバイスの簡単な接続及び構成を容易にし、従来のPMファイバより高い伸長率を提供することができる可能性がある。放射状のベクトルモードは、モード領域でかなり大きくなり得るので、このPMファイバがかなりの影響を及ぼす可能性がある領域の1つは高出力レーザ及び増幅器である。このファイバは、安定性、耐屈曲性、及び耐モード混合性のある放射状ベクトルビームを生成することができる構造によって概念的に可能になる。格子変換効率が約99.6%であって、これらのモードを生成するための説明された技法は、現在使用されている非常により複雑な自由空間システムに対する魅力的な代替である。したがって、放射状ベクトルビームに依存する科学技術の多様な領域にも、これらのデバイスを応用することができる。
【0040】
前述の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするはずの詳細を含むが、説明は本来例示であって、これらの教示の利益を有する当業者にはその多くの変更形態及び変形形態が明白になるはずであるということを理解されたい。したがって、本明細書の発明が、もっぱら添付の特許請求の範囲によって定義され、かつ特許請求の範囲が従来技術によって認められるように広義に解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基本LP01モードからなる光信号を提供し、
(b)前記基本LP01モードの光信号の伝搬に対応する入力光ファイバを設け、
(c)モードコンバータデバイスを用いて、円筒状偏光のTM01モードとTE01モード並びに混合HE21(even)モード及び混合HE21(odd)モードの線形結合からなる高次LP11モード出力へ、前記LP01モードの入力を変換し、
(d)前記LP11モード出力を、前記モードコンバータデバイスへ結合されている位相設計されたファイバを通して伝搬させるものであり、前記位相設計されたファイバは、前記円筒状偏光モードのうち少なくとも1つが前記混合モードの実効屈折率から十分に分離された実効屈折率を有するように、前記LP11モード出力のモード輝度プロファイルのピーク振幅に近接した急峻な屈折率ステップからなる屈折率プロファイルを有し、さらに、
(e)前記少なくとも1つの分離された円筒状偏光モードへ結合し、そして、
(f)前記少なくとも1つの分離された円筒状偏光モードを出力として提供する、
ことを特徴とする円筒状偏光ビームを生成する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの分離された円筒状偏光モードが放射状偏光TM01モードである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの分離された円筒状偏光モードが方位偏光TE01モードである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの分離された円筒状偏光モードの前記実効屈折率が、前記他のモードの前記それぞれの実効屈折率から少なくとも1×10−4だけ分離される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モードコンバータデバイスが、前記位相設計されたファイバの一部分の中に製作された格子である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記格子がマイクロベンド格子である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
位相設計されたファイバであって、
半径rcore、屈折率ncore、及び、外側半径rcladdingと屈折率ncladdingとを有する外側クラッディング領域に対する実効屈折率Δncore=ncore−ncladdingを有するコア領域と、
前記コア領域を囲むリング領域とを備え、前記リング領域は、rcoreと等しい内側半径、外側半径rring、ncladdingより大きな屈折率nring、及び、正の実効屈折率Δnring=nring−ncladdingを有し、
cladding、rcore、rring、Δncore、及びΔnringの値によって、前記ファイバが、前記ファイバを伝搬する光信号の高次LP11モードのモード輝度プロファイルのピーク振幅値に近接した屈折率ステップを有し、
前記高次LP11モードは、前記円筒状偏光のTM01モードとTE01モード並びに混合HE21(even)モード及び混合HE21(odd)モードの線形結合からなり、
前記他のモードへの最小結合とともに前記少なくとも1つの円筒状偏光モードへの結合を可能とするために前記円筒状偏光モードのうち少なくとも1つが前記混合モードの実効屈折率から十分に分離された実効屈折率を有するよう、前記屈折率のステップが十分に急峻であることを特徴とするファイバ。
【請求項8】
Δncore=0であり、
ring−ncore及びnring−ncladdingがどちらも約0.015以上であり、
ringとncoreの間並びにncoreとncladdingの間の移行が、どちらも約1マイクロメートルの半径方向の幅を有する請求項7に記載のファイバ。
【請求項9】
前記ファイバの一部分の中に製作された格子をさらに含み、基本LP01入力モードと前記高次LP11モードの間のモード変換をもたらす請求項8に記載のファイバ。
【請求項10】
前記格子がマイクロベンド格子である請求項9に記載のファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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