説明

再カシメ留め方法

【課題】溶着ボスを用いたカシメ留めにおいて、再カシメ留め時の引っ張り及び剪断強度を高める再カシメ留め方法を提供する。
【解決手段】最初のカシメ部において、溶着ボス31の直径より外に膨出している膨大部を除去し、溶着ボス31の先端側をそのまま残して被固定物34を取り外す。次に、再度被固定物34を残存している溶着ボス31に取り付けたのち溶着ボス31の先端上に樹脂ペレット40を戴置し、この上から溶着チップ10を押し当てて樹脂ペレット40と溶着ボス31の先端を同時に溶融し、融合させて再カシメ留めを行う。このようにすると、再カシメにおいても引っ張り及び剪断強度を最初のカシメと同等とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂で成形された成形品側に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔に通し、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を加熱溶融して被固定物の外側に膨大部を形成することにより、成形品に被固定物をカシメ留めした製品において、被固定物の品質不良などの理由により該カシメ留めを一旦解除して被固定物を取り外し、または交換して再度前記溶着ボスを用いて再カシメ留めを行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂で成形された成形品に被固定物を固定する場合、先ず、成形品側に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定穴内に通し、この固定穴から突出した溶着ボスの先端部分を凹曲面を有する溶着チップを用いて加熱溶融することにより被固定物の表面に膨大部を形成して被固定物を成形品にカシメ留めする方法が公知である(特公平4−19016号公報)。
【0003】
このようにしてカシメ留めした製品において、被固定物側に不都合が発生したり、被固定物を新品に交換したりする際には、カシメ留めを解除して被固定物を成形品から取り外し、修理した上で、あるいは新規被固定物を再度同じ箇所に付け直すことが必要になる。
【0004】
この方法として、特許第2524895号公報には、カシメ部分(膨大部)を切除して被固定物を一旦取り外したのち、再度被固定物を溶着ボスに取り付け、ビスを用いて被固定物を溶着ボスに固定するという方法が開示されている。
【0005】
しかし、この方法によると、溶着チップを用いたカシメ留めから、ビス止めという異種作業が必要となり、手間がかかる。
【0006】
このような、ビス止めに代る作業として、特開2008−126601号公報には、溶着ボスのカシメ部(膨大部)を切除し、再度被固定物を溶着ボスに取り付けたのち、切除した溶着ボスの天面に樹脂ペレットを載せ、溶着チップを押し当って樹脂ペレットを溶融することにより、切除した溶着ボスの上にカシメ部を新規に成形して再固定するという方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−19016号公報
【特許文献2】特表平5−502285号公報
【特許文献3】特開2008−126601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献3の方法によると、溶着ボス上に新規にカシメ部が成形されているため、見掛け上は再カシメ状態を呈しているが、溶着チップで溶融するのは樹脂ペレットだけで、溶着ボスの先端は被固定物と面一になっていることもあり、溶着ボス側の溶融は殆どない。
【0009】
この結果、カシメ部と溶着ボスの切除面との間において樹脂の融合が無いため、引っ張り及び剪断に対する応力が殆ど期待できないという欠点がある。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みて提供されるものであって、その目的は、再カシメ留めにおいても引っ張り及び剪断に対する応力を最初のカシメ留め部と同等に期待できる再カシメ留め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明においては、
a.熱可塑性樹脂で成形された成形品側に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔に通し、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を加熱溶融して被固定物の外側に膨大部を形成することにより、成形品に被固定物をカシメ留めした製品において、
b.前記膨大部の周囲であって、被固定物の表面において溶着ボスの外径より外に拡大している部分のみをカットして除去することにより溶着ボスの先端側を被固定物の表面上にそのまま残す工程、
c.前記カシメ留めされていた被固定物を溶着ボスから取り外したのち、再度当該被固定物を溶着ボスに取り付ける工程、
d.前記溶着ボスに被固定物を再取付けした後、被固定物から突出している溶着ボスの先端上に樹脂ペレットを戴置する工程、
e.発熱している溶着チップを前記樹脂ペレット上に押し当てながら押し下げることにより、前記樹脂ペレット及び溶着ボスを溶融してこの溶融した樹脂ペレットにより被固定物の表面に再度膨大部を形成し、カシメ留めを行うこと、を特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、前記カシメ留めされる被固定物は、旧被固定物に替えた新規被固定物であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、前記再カシメ留めに使用される溶着チップの当接面には、溶着チップを押し当てて押し下げたときに、溶着ボスの先端に突き刺さり、溶着ボスの先端の溶融を助勢するための突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明においては、前記膨大部をカットして除去する方法として、熱加熱により膨大部をカットする熱カットチップを用いることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明においては、前記熱カットチップの中央には溶着ボスの先端に窪みを形成する突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明においては、前記樹脂チップの下面には、溶着ボスの先端の面に形成された窪みに係合する凸部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように、最初に形成されたカシメ部において、被固定物を取り外すため
に障害となる溶着ボスの直径よりも外に膨出している部分のみを除去し、最初の溶着ボス
の軸部はそのまま残存させ、この残存させた溶着ボスの先端上に樹脂ペレットを戴置し、この樹脂ペレットを溶着チップで溶融するときに残存している溶着ボスの先端を一緒に溶融するものである。
【0018】
この結果、樹脂ペレットと溶着ボスの先端部分において溶融した樹脂の融合が起り、冷
却後のカシメ留め部分において引っ張りと剪断強度を最初のカシメ留め時と同等に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は熱カットチップの説明図、(b)は熱カットチップの断面図である。
【図2】(a)は溶着チップの説明図、(b)は溶着チップの断面図である。
【図3】は最初のカシメ留め状態の説明図である。
【図4】(a)は膨大部の切除直前の説明図、(b)は膨大部を切除した状態の説明図、(c)は被固定物を取り外した状態の説明図である。
【図5】(a)は残存した溶着ボス上に樹脂ペレットを戴置し、溶着チップにより溶融する直前の説明図、(b)は溶着チップを用いて樹脂ペレットを溶融している状態の説明図、(c)は樹脂ペレット及び残存した溶着ボスの先端を溶融している状態の説明図、(d)は再カシメ部を成形し、この再カシメ部を冷却している状態の説明図である。
【図6】実施例2で使用する熱チップの説明図である。
【図7】(a)は膨大部の切除直前の説明図、(b)は膨大部を切除した状態の説明図、(c)は被固定物を取り外した状態の説明図である。
【図8】(a)は残存した溶着ボス上に樹脂ペレットを戴置し、溶着チップにより溶融する直前の説明図、(b)は溶着チップを用いて樹脂ペレットを溶融している状態の説明図、(c)は樹脂ペレット及び残存した溶着ボスの先端を溶融している状態の説明図、(d)は再カシメ部を成形し、この再カシメ部を冷却している状態の説明図である。
【図9】従来のカシメ部の引っ張り強度と引用文献3によるカシメ部の引っ張り強度の試験データの説明図である。
【図10】本発明によるカシメ部の引っ張り強度の試験データの説明図である。
【図11】剪断強度測定方法の説明図である。
【図12】剪断強度の試験データの説明図である。
【図13】実施例3の溶着チップの説明図である。
【図14】実施例3の溶着工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、熱可塑性樹脂で成形された成形品側に形成された溶着ボスを被固定物側に形成された固定孔に通し、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を加熱溶融して被固定物の外側に膨大部を形成することにより、成形品に被固定物をカシメ留めした製品において、前記カシメ留め部において、被固定物の固定穴(溶着ボスの直径)より広がっている膨大部のみを除去することにより、カシメ留め部を一旦解除して被固定物を取り外し、再度同一又は別の被固定物を同じ溶着ボスを用いてカシメ留めする方法であって、成形品の材料としては、ABS、PP、PS、PE、PC、POM、PMMA,PBT、ABSとPCのアロイ、PPS、PPA、PET、LCP、PAなどの熱可塑性樹脂が代表例として挙げられるが、これに限定するものではない。また、ガラスフィラー入り樹脂を用いた成形品でも適用が可能である。
【実施例1】
【0021】
以下に本発明の実施例1を図1〜図5を用いて詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明において使用されるカシメ除去用熱カットチップを図1(a)(b)に基づいて説明すると、符号の1は熱カットチップであって、この熱カットチップ1は、先端2に環状の当接面3を形成すると共に両サイド対称位置であって、前記当接面3に近い位置に窓4、4aを形成し、更にこの窓4、4aから上方に向けてスリット5、5aを形成して、熱カットチップ1を陽極と陰極に分け、この陽極と陰極に陽極リード端子7と陰極リード端子7aを接続し、更に前記熱カットチップ1の上端部内に絶縁体8を嵌合し、この絶縁体8の中心孔を経由して熱カットチップ1の当接面3の裏面に近い位置にその先端9aを臨ませて冷却エアー供給パイプ9を挿入した構成である。図中6、6aは電源供給リード線である。
【0023】
次に、再カシメ留めに利用される溶着チップ10を図2(a)(b)に基づいて説明する。但し、この溶着チップ10は公知のものである。
【0024】
図2(a)(b)に示した溶着チップ10は、先端11に凹状の当接面12を形成し、両サイド対称位置であって、前記当接面12に近い位置に窓13、13aを形成すると共にこの窓13、13aから上方に向けてスリット14、14aを形成することにより、陽極と陰極に分け、この陽極と陰極にリード端子16、16aを接続し、更に前記溶着チップ10の上端部内に絶縁体17を嵌合し、この絶縁体17の中心孔を経由して溶着チップ10の当接面12の裏面に近い位置にその先端18aを臨ませて冷却エアー供給パイプ18を挿入した構成である。
【0025】
因に、実施例1の熱カットチップ1及び溶着チップ10の主要部寸法は次のとおりである。
(熱カットチップ1)
チップ1の外径 φ10mm
熱カットチップ先端2の外径 φ6mm
当接面3の外径 φ6mm
当接面3の内径 φ2.15mm(外径−内径=当接面積24.7平方ミリメートル)
当接面3内の凹深さ 2mm
(溶着チップ10)
チップ本体10の外径 φ10mm
チップ先端11の外径 φ6mm
当接面12の直径 φ3.3mm (当接面積8.5平方ミリメートル)
当接面12の凹R R2mm
【0026】
次に、実施例1における再カシメ留め工程を図3〜図5に基づいて詳細に説明する。なお、成形品30の樹脂材料にはABS樹脂、被固定物34の樹脂材料にはベークを用いた。
【0027】
図3は、最初の熱溶着カシメ部の説明図であって、分離前のカシメ形状を図3に示す。この熱溶着カシメ部の成形には図2(a)(b)に示す公知の溶着チップ10が用いられた。
【0028】
カシメ部の除去工程の説明
【0029】
まず図3のカシメ部32において、溶着ボス31の直径(固定穴35の直径)より大きくハミ出ている膨大部33のみを溶融して除去するため、図4(a)に示すように熱カットチップ1を前記カシメ部32に接近させる。
【0030】
次に、前記熱カットチップ1の当接面3を溶着ボス31の先端へ適宣な押し圧で押し付け保持しながら電源装置(図示せず)から電圧を印加すると電気抵抗により熱カットチップ1は発熱し、該カシメ部32の膨大部33を加熱溶融する。更に、図4(b)のように樹脂の溶融温度に達すると膨大部33は押し圧力で潰されると共に、溶融したバリ36として当接部3の外周に押し出され、当接面3は膨大部33を固定穴35の外に排除する。
【0031】
次に、この時点で熱カットチップ1への電圧の印加を止めると同時に、熱カットチップ1にエアーパイプ9から冷却エアーaが供給され、さらに噴出した冷却エアーで熱カットチップ1を内部から冷却した後、窓4、4aから外部へ放出される。
【0032】
次に、冷却エアーaで熱カットチップ1の当接面3が冷却され、溶融部の樹脂が固化すると、冷却エアーaの供給を止め、直後に前記カットチップ1を離脱させる。
その後図4(c)のように成形品30の溶着ボス31から被固定物34を取り外して分離作業を完了する。
【0033】
膨大部33が溶融して被固定物34のカシメ部32の周囲に付着した樹脂バリは特別な工具を使用することなく手で簡単に取り払う事が可能である。
【0034】
なお、ここでは電気抵抗による熱カットチップ1の発熱で膨大部33を溶融してカシメ部32を除去したが、溶着ボス31の直径部分を残し溶着ボス31の膨大部33だけを削除してカシメを除去するのであれば、熱溶融を含め切削や刃物による手作業など、他の方法を用いることは何ら問題ない。
【0035】
再溶着カシメ工程の説明
【0036】
次に、熱溶チップ10を用いた再溶着方法について図5(a)〜(d)を用いて説明する。まず図5(a)のように一旦分離した成形品30の溶着ボス31に被固定物34を取り付けたのち、溶着ボス31の先端中央に溶融して切除された膨大部33とほぼ同体積の樹脂チップ40を載置する。
【0037】
次に、溶着チップ10を下降させて溶着チップ10の当接面12を樹脂チップ40へ適宣な押し圧で押し付け保持しながら電源装置(図示せず)から電圧を印加すると電気抵抗により溶着チップ10は発熱し、樹脂チップ40を加熱する。
【0038】
更に、図5(b)のように樹脂の溶融温度に達すると、樹脂チップ40及び溶着ボス31の先端が溶融すると同時に押し圧力で潰されて、この溶融した樹脂41は当接面12に形成された凹部に充満されはじめる。
【0039】
さらに、溶着チップ10を押し進めると図5(c)のように当接面12に形成された凹部全体に充満しながら溶着ボス31も加熱溶融され一体化が進行し、図5(c)に示すように溶着チップ10の先端が被固定物34に接触する位置では前記溶着ボス31と、溶着ボス31に載置した樹脂チップ40は溶融一体化する。溶着チップ10の降下位置はその先端11が被固定物34の表面に接触する位置となるように制御装置(図示せず)を予め設定しておいた。
【0040】
設定された溶融工程時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に、溶着チップ10にエアーパイプ18から冷却エアーaが供給され、さらに噴出された冷却エアーは溶着チップ10を内部から冷却した後、窓14、14aから外部へ放出される。この冷却エアーaで溶着チップ10の当接面12が冷却され、溶融部41の樹脂が固化すると、冷却エアーaの供給を止め、溶着チップ10を上昇させる。その結果、図5に示すように新たに再カシメ部42が形成され、成形品30へ被固定物34が再固定される。
【0041】
なおここではカシメ部の再固定に溶着チップ10の電気抵抗による発熱を用いたが樹脂を溶融しながら加圧してカシメ形状を形成するのであれば超音波溶着、赤外線溶着など他の溶着方法を用いることは何ら問題ない。
【0042】
・再溶着カシメ部の引っ張り強度評価
【0043】
実施例1による再溶着カシメ部42の引っ張り強度試験の結果を図9、図10に示す。
成形品の樹脂はABS、熱カシメ部の寸法はボス径φ2mm、熱カシメ凸0.8mm、凸部R2mmで、通常の熱溶着カシメを設定温度220℃加熱5秒で行った場合、引っ張り強度は104.4N(N=8の平均、以下同様)である。(使用した強度計 イマダ DPS-201)
条件1(図9)
再溶着カシメ温度設定220℃加熱5秒では48Nで前記通常溶着の約半分の強度であった。
条件2(図10)
再溶着カシメ温度を250℃に変更することで引っ張り強度は平均94.6N ばらつき範囲は92.4〜97.4Nであり安定して再溶着カシメされ、通常の溶着とほぼ同等の強度であった。これにより本出願による再溶着カシメが実用に耐える強度を有することが確認できた。
・再カシメの剪断強度評価
実施例1による再溶着カシメ部42の剪断強度測定方法を図11、測定結果を図12に示す。

測定方法(図11)
T=2mmの鋼板43にφ3.3の穴44を設け、再溶着熱カシメ部42に勘合し、横方向から引っ張り荷重Fを加え、再溶着熱カシメ部42の剪断強度を測定した。

成形品30の樹脂はABS、熱カシメ部の寸法はボス径φ2mm、熱カシメ凸0.8mm、凸部R2mmで、通常の熱溶着カシメを設定温度220℃加熱5秒で行った場合、剪断強度は133.9N(N=8の平均、以下同様)である(図12)。(使用した強度計 イマダ DPS-201)
再溶着カシメ温度は、引っ張り試験において条件1の220℃加熱では強度が不十分であることが判明しているため、ここでは条件2の250℃加熱5秒で実施した。
この時の再溶着カシメ剪断強度は120.7N ばらつき範囲は101.1〜130.8Nであり安定して再溶着カシメされ、通常の溶着とほぼ同等の強度であった。これにより本実施例による再溶着カシメが実用に耐える強度を有することが確認できた。
【実施例2】
【0044】
再溶着において溶着ボス31に載置する樹脂チップ40と溶着ボス31の密着強度をさらにあげるには、分離した溶着ボス31の先端に凹又は凸部を設けて溶融時の接触面積を大きくすることが有効である。この詳細を図6〜図8に基づいて次に説明する。
図6 は実施例2における熱カットチップ1の断面図、
図7(a)は溶着カシメ部を熱カットチップ1で分離する直前の状態、
図7(b)はカシメ部32の膨大部33の溶融が完了した状態、
図7(c)はカシメ部の膨大部33を解除し被固定物34を成型品30から取り外した状態、
図8(a)は再溶着のため溶着ボス31の先端31aに樹脂ペレット40を載せて溶着チップ10を当てた状態、
図8(b)は再溶着加工中の状態、
図8(c)は再溶着完了直前の状態、
図8(d)は再溶着完了の状態の説明図である。
【0045】
先ず、実施例2の熱カットチップ1においては実施例1の熱カットチップ1先端当接部3の環状凸形状に加えて、該当接面の内側凹部の中央に円筒先端球状の凸形状3aを設けて前記凸形状3aにより該溶着ボス31先端に凹形状31bをカシメ分離と同時に形成するものである。
【0046】
以下に、上記した熱カットチップ1によるカシメ分離工程を次に説明する。まず図7(a)のように該カシメ部32に熱カットチップ1を前記カシメ部32に接近させる。
【0047】
次に、前記カットチップ1の当接面3を溶着ボス31の先端へ適宣な押し圧で押し付け保持しながら電源装置(図示せず)から電圧を印加すると、電気抵抗により熱カットチップ1は発熱し、該カシメ部32の膨大部33を加熱溶融する。
【0048】
次に、図7(b)のように樹脂の溶融温度に達すると膨大部33は押し圧力で潰されると共に、溶融したバリ36として当接部3の外周に押し出される。同時に、残った溶着ボス31先端31aには熱カットチップ1中央部に設けられたに円筒先端球の凸形状3aが転写され凹形状31bが形成される。この時点で熱カットチップ1への電圧の印加を止めると同時に、熱チップ1にエアーパイプ9から冷却エアーaが供給され、さらに噴出された冷却エアーは熱カットチップ1を内部から冷却した後、窓4、4aから外部へ放出される。この冷却エアーで熱カットチップ1の当接面3が冷却され、溶融部41の樹脂が固化すると、冷却エアーの供給を止め、直後に熱カットチップ1を離脱させる。その後図7(c)のように成形品30から被固定物34を取り外して分離作業は完了する。
【0049】
次に再溶着工程を説明する。
【0050】
まず図8(a)のように一旦分離した成形品30の溶着ボス31を被固定物34に形成された固定穴35へ挿通させて、溶着ボス31の先端31aを被固定物34の表面から突き出させ、溶着ボス31の先端中央に溶融して切除された膨大部33及び溶着ボス31の先端に形成された凹形状31bとほぼ同体積の樹脂チップ40を載置する。
【0051】
次に溶着チップ10を下降させて溶着チップ10の当接面12を樹脂ペレット40へ適宜な押し圧で押し付け保持しながら電源装置(図示せず)から電圧を印加すると電気抵抗により溶着チップ10は発熱し、樹脂ペレット40を加熱する。
【0052】
次に、図8(b)のように樹脂の溶融温度に達すると樹脂ペレット40は押し圧力で潰されると共に、溶融部41として溶着チップ10の当接面12全体に充満されはじめる。同時に溶着ボス31の先端31aに形成された凹部31bにも溶け込んでいく。
【0053】
さらに、溶着チップ10を押し進めると図8(c)のように当接面12の凹部全体に充満しながら溶着ボス31も加熱溶融され一体化が進行し、図8(d)では溶着チップ10の先端が被固定物34に接触する位置で前記溶着ボス31と、溶着ボス31に載置した樹脂ペレット40は溶融一体化する。溶着チップ10の降下位置は事前に設定してあり、その降下位置は溶着チップ10が被固定物34の表面に接触する位置となるように制御装置(図示せず)を予め設定しておいた。
【0054】
設定された溶融工程時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に、溶着チップ10にエアーパイプ18から冷却エアーaが供給され、さらに噴出された冷却エアーは溶着チップ10を内部から冷却した後、窓13、13aから外部へ放出される。この冷却エアーaで溶着チップ10の当接面12が冷却され、溶融部41の樹脂が固化すると、冷却エアーaの供給を止め、溶着チップ10を上昇させる。その結果、図3に示すようにカシメ部32と同様の再カシメ部42が形成され、成形品30へ被固定物34が再固定された。
【0055】
本実施例2では前記熱カットチップ1の当接部3の形状を図6のように環状凸形状に加えて中央に円筒先端球状凸形状3aを設けたが、溶着ボス31の先端31aに凹または凸または凹凸を形成するものであれば柱状や錐状の突起あるいは剣山状の突起などとしてもよい。
【0056】
実施例1と2において、溶着チップ10の動作は、溶着装置に取り付けて溶着チップ10の位置決め、上下動作、通電などを自動化して行う構成であるが作業者の手持ちによる作業においても位置決め、加熱、加圧、冷却の各工程は本発明の要旨に沿って問題無く対応が可能である。
【実施例3】
【0057】
本実施例3は、図13に示すように、溶着チップ10の当接面12の中央に突起部12aを形成することにより、この突起部12aの効果で溶着チップ10の熱が樹脂ペレット40及び溶着ボス31の先端31aに伝わり易くすることにより、その溶融の促進を図る請求項3に記載の発明に対応するものである。
【0058】
この溶着工程を図14(a)〜(d)に示す。この図14(a)〜(d)では、突起部12aが樹脂ペレット40の中央に突き刺り(b)、やがて溶着ボス31の先端31aに突き刺り、伝熱を促進することにより樹脂ペレット40と溶着ボス30の先端31aが融合して奇麗な膨大部42(再カシメ部)を形成することができる(d)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.熱可塑性樹脂で成形された成形品側に溶着ボスを突設し、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔に通し、この固定孔から突き出た溶着ボスの先端側を加熱溶融して被固定物の外側に膨大部を形成することにより、成形品に被固定物をカシメ留めした製品において、
b.前記膨大部の周囲であって、被固定物の表面において溶着ボスの外径より外に拡大している部分のみをカットして除去することにより溶着ボスの先端側を被固定物の表面上にそのまま残す工程、
c.前記カシメ留めされていた被固定物を溶着ボスから取り外したのち、再度当該被固定物を溶着ボスに取り付ける工程、
d.前記溶着ボスに被固定物を再取付けした後、被固定物から突出している溶着ボスの先端上に樹脂ペレットを戴置する工程、
e.発熱している溶着チップを前記樹脂ペレット上に押し当てながら押し下げることにより、前記樹脂ペレット及び溶着ボスを溶融してこの溶融した樹脂ペレットにより被固定物の表面に再度膨大部を形成し、カシメ留めを行う工程、
f.から成る一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。
【請求項2】
前記カシメ留めされる被固定物は、旧被固定物に替えた新規被固定物であることを特徴とする請求項1に記載の一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。
【請求項3】
前記再カシメ留めに使用される溶着チップの当接面には、溶着チップを押し当てて押し下げたときに、溶着ボスの先端に突き刺さり、溶着ボスの先端の溶融を助勢するための突起部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。
【請求項4】
前記膨大部をカットして除去する方法として、熱加熱により膨大部をカットする熱カットチップを用いることを特徴とする請求項1に記載の一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。
【請求項5】
前記熱カットチップの中央には溶着ボスの先端に窪みを形成する突起部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。
【請求項6】
前記樹脂チップの下面には、溶着ボスの先端の面に形成された窪みに係合する凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の一旦カシメ留めに利用された溶着ボスを用いて再度カシメ留めを行うカシメ留め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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