再狭窄発生リスクの遺伝子マーカー
本発明は、ステント移植後に再狭窄に罹る個体のリスクを決定する方法に関する。この方法は、CCNB1遺伝子のrs350099、rs350104、rs164390およびrs875459、および場合によっては、それぞれCCNA1およびCDKN1A遺伝子のrs2282411および/またはrs733590から選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)における遺伝子型を決定するための試料の分析に基づいており、前記多型のいずれかにおけるある種の対立遺伝子の存在が再狭窄に罹るリスクを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分子生物学分野における健康管理部門で適用される。詳細には、本発明は、一塩基多型(SNP)の検出に基づくステント移植による血行再建後の再狭窄の発生するリスクを診断する方法を得ようとするものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
動脈硬化症に冒されている血管の血行再建に最もよく用いられる臨床治療は、経皮的冠動脈形成術(PCTA)である。この介入としばしば関連付けられる病理学的過程は、手術した血管の過度の再閉塞からなる再狭窄である。再狭窄は、PCTAを繰り返すことや、または罹患した患者に代替血行再建療法(例えば、大動脈冠状動脈バイパス)を施すことが必要になるので、健康管理および社会経済的に大きな影響を及ぼす。進行が遅い(典型的には、数十年)ことを特徴とする本来のアテローム性病変と比較して、再狭窄病変は、通常はPCTA後の最初の4〜12ヶ月の間に成長する(Serruys, Kutryk and Ong,「冠状動脈ステント(Coronary-artery stents)」, N Engl J Med 2006, 354, 483-95)。現在では、90%を超えるPCTAで、処置の安全性を高め、かつ典型的には通常のPCTAに関連した再狭窄率が25〜50%であるのと比較して再狭窄率を15〜30%にまで減少させているステントと呼ばれる支持用の金属製体内プロテーゼが用いられている(Serruys, Kutryk and Ong,「冠状動脈ステント(Coronary-artery stents)」, N Engl J Med 2006, 354, 483-95, Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signalling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21)。再狭窄率は、薬剤溶出ステントの使用によって更に低下する。
【0003】
再狭窄は、主として血小板、単球/マクロファージ、内皮細胞(EC)、および平滑筋細胞(SMC)のような様々な細胞型が介在する多因子過程である。新生内膜病変とも呼ばれる再狭窄病変の増殖は、ステントの移植が引き起こす機械的損傷によって開始される過程である(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73)。再狭窄の初期の急性期は、損傷した動脈表面上で循環する単球、好中球およびリンパ球の動員を伴う血小板および局在化血栓の活性化を含んでいる。これらの細胞型は、中膜に内在するSMCの活性化を特徴とする慢性的炎症反応を招き、形態変化、収縮性タンパク質の胚性アイソフォームの発現、成長および走化性刺激に対する高応答性、および細胞外マトリックスの豊富な合成を特徴とする「合成的」表現型をとっている。新生内膜病変の細胞によって産生される過度の走化性および分裂促進因子は、中膜のSMCの最初の増殖期と病変へのそれらの移動に続いて、新生内膜病変のSMCの第二の増殖性応答を引き起こす(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73)。PCTAの後期段階における血管病変の炎症消散および瘢痕化は、新生内膜SMCの収縮型表現型の再生と細胞外マトリックスの組成変化を伴い、損傷を受けていない動脈壁に一層似てくる。上記のように、再狭窄が過度である場合には、臨床症状が再発して、更なる血行再建介入が必要となる。
【0004】
動物およびヒトの研究で同定された新生内膜過形成調節因子の中では、下記のものが挙げられる:血栓形成因子(例えば、組織因子、トロンビン受容体)、細胞接着分子(例えば、VCAM、ICAM、LFA−1、Mac−1)、シグナルトランスデューサー(例えば、PI3K、MEK/ERK)、転写因子(例えば、NF−κB、E2F、AP−1、c−myc、c−myb、YY1、Gax)、細胞周期調節タンパク質(例えば、pRb、p21、p27、CDK2、CDC2、サイクリンB1、PCNA)、増殖因子(例えば、PDGF−BB、TGFβ、FGF、IGF、EGF、VEGF)、炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)、走化性因子(例えば、CCR2、MCP−1)、およびメタロプロテアーゼ(例えば、MMP−2、MMP−9)。
【0005】
再狭窄の本質的過剰増殖性は、細胞周期調節遺伝子がこの病理学的過程において果たすことがある役割の研究に大きな興味を生じた。哺乳類では、細胞周期は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれる触媒サブユニットとサイクリンと呼ばれる調節サブユニットからなるホロ酵素によって正に調節される(Ekholm and Reed,「哺乳類の細胞周期におけるG(1)サイクリン依存性キナーゼの調節」, Curr Opin Cell Biol 2000, 12, 676-84)。CDK/サイクリンの逐次活性化により、細胞増殖に関連した細胞基質の異なる事象のリン酸化が可能となる。一方、CKI(CDK阻害剤)と呼ばれるCDK/サイクリンの阻害タンパク質があり、これはCIP/KIP(p21、p27およびp57)およびINK4(p15、p16、p18およびp19)サブファミリーに再分される。抗分裂促進刺激に呼応するCKIの蓄積は、CDK/サイクリン複合体の可逆阻害を誘発する。発現研究および遺伝子療法実験から、新生内膜病変の発生におけるこれらの分子の重要性が明らかになっている。例えば、血管形成術の動物およびヒトモデルにおける機械的損傷によって誘発された閉塞性血管病変の分析は、細胞周期調節遺伝子(例えば、CDK、サイクリン、CKI、p53、pRb)の発現における変化を明らかに示しており、また多数の実験動物による研究は、CDKおよびサイクリン(例えば、サイクリンB、CDK2、CDK1)の不活性化または増殖抑制因子(例えば、p21、p27、pRb、p53)の過剰発現は、血管形成術後の閉塞性血管病変の発生を阻害することを示している(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Nabel,「CDKおよびCKI:組織リモデリングのための分子標的」, Nat Rev Drug Discov 2002, 1, 587-98, Dzau, Braun-Dullaeus and Sedding,「血管増殖およびアテローム性動脈硬化症:新たな展望および治療法(Vascular proliferation and atherosclerosis: new perspectives and therapeutic strategies)」, Nat Med 2002, 8, 1249-56)。
【0006】
様々な動物モデルに由来する有望な前臨床データーにも拘わらず、再狭窄を予防し、または治療するための数多くの全身療法は、臨床試験に失敗した。しかしながら、抗増殖性の薬剤溶出性ステント(DES)が最近導入されたことにより、インターベンション心臓病学に大変革が起きた。細胞増殖の共通の最終経路である真核細胞の有糸分裂周期を標的とする2種類の親油性薬剤であるシロリムス(ラパマイシンまたはラパミューンとも呼ばれる)およびパクリタキセル(タキソールとも呼ばれる)を運ぶためのステントの使用を強調すべきである。損傷した動脈壁において高用量の薬剤を局部的に放出するこれらの装置の使用により、再狭窄率が有意に減少した(Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出性ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73, Wessely, Schomig and Kastrati,「ポリマー基剤の薬剤溶出性ステント上のシロリムスおよびパクリタキセル:類似点と相違点(Sirolimus and Paclitaxel on polymer-based drug-eluting stent: similar but different)」, J Am Coll Cardiol 2006, 47, 708-14)。このため、ヨーロッパで現在移植に用いられている3種類総てのステントのうち2種類のDESが移植されている(Baz, Mauri, Albarran and Pinar,「[スペインの心臓カテーテル法および冠動脈インターベンションレジストリー(Spanish Cardiac Catheterization and Coronariy Intervention Registry)。スペイン心臓病学会ワーキンググループの心臓カテーテル法およびインターベンション心臓病学についての第16回公式報告(1990−2006)]」, Rev Esp Cardiol 2007, 60, 1273-89)。通常のステントと比較してDESを用いることの関連する欠点は、それらの価格が高価であり(2〜3倍以上)、遅発性血栓症に関連した有害事象を回避するための抗血小板治療を長くする必要があることである(Lazaro and de Mercado, “Stents recubiertos de farmacos: eficacia, efectividad, eficiencia y evidencia”, Revista Espanola de Cardiologia 2004, 57, 608-12で概説)。
【0007】
再狭窄の健康管理および社会経済的影響が大きいため、血行再建を必要とする患者では再現性があり信頼性が高くかつ価格的に有効な形態で定量することができるバイオマーカーを有することはきわめて有用である。これらの患者での再狭窄のリスクを評価することができれば、大動脈冠状動脈バイパスに対してステントの移植、またはDESに対して通常のステント使用(費用が一層かかりかつ遅発性血栓症のリスクが増加する)など治療法を決定するのに役立つこととなる。
【0008】
一塩基多型(SNP)は、ヒトゲノム中に数百万存在する遺伝子変異体である。近年、SNPは、β2−アドレナリン作動性受容体、CD14、コロニー刺激因子(CSF)、エオタキシン、カスパーゼ−1、P2RY12受容体、およびインターロイキン−10の遺伝子など再狭窄を発生する多少のリスクと関連しているヒト遺伝子で同定された(Monraats et al.「炎症およびアポトーシス遺伝子、および経皮冠動脈インターベンショナン後の再狭窄の危険性(Inflammation and apoptosis genes and the risk of restenosis after percutaneous coronary intervention), Pharmacogenet Genomics 2006, 16, 747-754; Monraats et al.「インターロイキン10:経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄発生の新たなリスクマーカー(Interleukin 10: a new risk marker for the development of restenosis after percutaneous coronary intervention)」, Genes Immun 2007, 8, 44-50; Monraats et al.「遺伝子炎症性因子は経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄を予測する(Genetic inflammatory factors predict restenosis after percutaneous coronary interventions)」, Circulation 2005, 112, 2417-25; Rudez et al.「血小板受容体P2RY12ハプロタイプは経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄を予測する(Platelet receptor P2RY12 haplotypes predict restenosis after percutaneous coronary interventions)」, Hum Mutat 2008, 29, 375-80)。
【0009】
しかしながら、遺伝子型−表現型の関連は、再狭窄を発生する多少のリスクを有する細胞周期調節遺伝子のSNPに関してはこれまでは報告されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、重要な研究作業の後、再狭窄を発生する遺伝子リスクマーカーとしての潜在的診断値を有する様々な細胞周期調節遺伝子における異なるSNPを同定した。具体的に言えば、本発明者らは、CCNB1遺伝子(サイクリンB1タンパク質)においてSNPrs164390、rs350099、rs350104、rs875459;CCNA1遺伝子(サイクリンA1タンパク質)においてrs2282411;およびCDKN1A遺伝子(p21Kip1/Cip1タンパク質)においてrs733590を、再狭窄を発生するリスク診断マーカーとして同定した。
【0011】
これらのマーカーは、治療法の決定においてきわめて重要な進歩を構成する。例えば、再狭窄を発生するリスクが比較的低い患者は、通常のステントを受けることができ、DES(一層高価で、遅発性血栓症のリスクを有する)の使用はリスクの一層高い患者に限定できる。
【0012】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、前記リスク診断マーカーとしてのこれら6つのSNPの検出に基づくステントの移植後の再狭窄のリスクを決定する方法を開発した。また、前記診断を行うためのキットも開発した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】サイクリン遺伝子で検討した25多型をまとめた表。
【図2】細胞増殖抑制遺伝子で検討した22多型をまとめた表。
【図3】ステントの移植後、再狭窄を発生するリスクと統計学的に有意に関連した6つのSNPをまとめた表。
【図4】ステントの移植後、再狭窄を発生するリスクと関連したSNPの対数回帰分析の結果をまとめた表。分析は、SNPStatソフトウェアを用いて行った。
【図5】SNPrs350099(SNP1)およびrs350104(SNP2)の局在化、および転写因子NF−Y(NF−Ybs)の結合部位を示すヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域の略図。
【図6】ゲルシフトアッセイ(EMSA)に用いたプローブのリスト。
【図7】放射性標識プローブNF−Ycons、SNP1−TおよびSNP1−Cを子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物と共にインキュベーションしたものから得られるEMSA。スーパーシフト分析は、抗−NF−YBおよび抗−CREBII抗体(後者は、特異性コントロールとして用いた)とインキュベーションすることによって行った。
【図8】子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物を放射性標識したNF−Yconsプローブ、および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドNF−Ycons、NF−Ymut、SNP1−TおよびSNP1−Cと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行った競合分析。
【図9】子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物を放射性標識NF−Yプローブ(−30/−10)および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドNF−Y(−30/−10)、SNP1−TおよびSNP1−Cと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行った競合分析。
【図10】a)ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS)の可溶性核画分の抽出物を放射性標識AP−1consプローブ、および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドAP−1cons、SNP2−CおよびSNP2−Tと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行われる競合分析。b)5回のEMSAの平均のDNA−タンパク質複合体の相対強度、および片側ANOVAおよびBonferroni post−hoc検定による統計解析。コンペティターを有する分析におけるバンド強度対コンペティターなしのバンド強度の比較は、*:p<0.05、**:p<0.01として表している。
【図11】ステントの移植後、再狭窄の発生リスクと統計的に有意な関連を示す6つのSNPに隣接するヌクレオチドの配列。
【図12】SNP1の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図13】SNP2の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図14】SNP3の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図15】SNP4の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図16】SNP5の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図17】SNP6の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【0014】
本発明の目的
本発明の目的は、CCNB1遺伝子におけるrs350099、rs350104、rs164390およびrs875459、および場合によってはそれぞれCCNA1およびCDKN1A遺伝子におけるrs2282411および/またはrs733590から選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)における遺伝子型を決定するための試料の分析に基づいた、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、下記に示すように、これらの多型のいずれかにおける特定の対立遺伝子の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、方法である。
【0015】
引用された多型の遺伝子型の決定に適当なプローブと試薬とのセットを含んでなる、前記方法を行うためのキットも、本発明の目的である。
【0016】
最後に、本発明の目的は、引用された多型rs350099、rs350104、rs164390、rs875459、および場合によってはrs2282411およびrs733590の1つ以上の、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとしての使用である。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明の主態様は、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、a)個体の試料からゲノムDNAを得て、b)試料のDNAを分析して、図3に定義されているrs350099(SNP1)、rs350104(SNP2)、rs164390(SNP3)およびrs875459(SNP4)から選択されるCCNB1遺伝子における少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定することを含んでなり、これらの多型のいずれかにおける特定の対立遺伝子の存在が、下記に定義されるように、再狭窄を発生するリスクを示す、方法である(図4参照)。
【0018】
好ましい態様では、段階b)は、試料のDNAを分析して多型SNP1およびSNP2の遺伝子型の組み合わせを決定することを含んでなる。
【0019】
多型rs350099(SNP1)(図3参照)は、機械的血管損傷によって誘発される新生内膜病変の発生(Morishita, Gibbons, Kaneda, Ogihara and Dzau,「インビボでの血管壁におけるアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド(サイクリンB1およびCDC2キナーゼ)の薬物動態:HVJ−リポソーム送達による再狭窄に対する治療上の有用性の増加(Pharmacokinetics of antisense oligodeoxyribonucleotides (cyclin B1 and CDC 2 kinase))」,Gene 1994, 149, 13-9)など、様々な生理病理学的状況において細胞増殖に本質的な正の調節因子であるサイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始から−957のプロモーター領域に局在している(Santamaria and Ortega,「発生および癌におけるサイクリンおよびCDKS:遺伝子修飾マウスからの教訓(Cyclins and CDKS in development and cancer: lessons from genetically modified mice)」,Front Biosci 2006, 11, 1164-88)。−957位はCCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号U22364)の1172塩基対(bp)の配列の36位の塩基にも対応する。ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(T/T遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。更に、本発明者らは、T対立遺伝子を有する配列において、転写因子NF−Yに対する特異的結合部位を構成する配列(CCAAT)を同定した(図7〜9参照)。
【0020】
転写因子NF−Yは、ヒト遺伝子プロモーターCCNB1の領域−150〜+182領域に局在化している2つのシス−調節配列へのその結合により、高増幅率を有する細胞におけるその転写活性化に本質的である(Sciortino, Gurtner, Manni, Fontemaggi, Dey, Sacchi, Ozato and Piaggio,「サイクリンB1遺伝子はHeLa細胞において有糸分裂の際に積極的に転写される(The cyclin B1 gene is actively transcribed during mitosis in HeLa cells)」,EMBO Rep 2001, 2, 1018-23, Farina, Manni, Fontemaggi, Tiainen, Cenciarelli, Bellorini, Mantovani, Sacchi and Piaggio,「末端が分化した骨格筋におけるサイクリンB1遺伝子転写のダウンレギュレーションは、機能性CCAAT−結合NF−Y複合体の喪失と関連している(Down-regulation of cyclin B1 gene transcription in terminally differentiated skeletal muscle cells is associated with loss of functional CCAAT-binding NF-Y complex)」,Oncogene 1999, 18, 2818-27)。
【0021】
図5は、EMSA分析によって検討したSNP(SNP1およびSNP2)の局在化を示すヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域の略図である。NF−Ybsボックスは、転写因子NF−Yが結合しているプロモーターの−21/−17位に位置したCCAAT配列を表す。転写の開始は、+1の値で表され、これは曲がった矢印で表されている。
【0022】
多型rs350104(SNP2)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始から−475のプロモーター領域に局在化している。−475位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号U22364)の1172bpの配列の519位の塩基に対応している。ヒトにおけるステント移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(C/C遺伝子型)におけるC対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。更に、本発明者らは、この多型のT対立遺伝子を有する配列と比較して一層大きなアフィニティーの転写因子AP−1についての結合部位を、C対立遺伝子を有する配列で同定した(図10参照)。
【0023】
AP−1は、サイクリンなどの多量の細胞周期遺伝子の活性化の調節過程に広く関係している転写因子である(Shaulian and Karin,「細胞増殖および生存におけるAP−1(AP-1 in cell proliferation and survival)」, Oncogene 2001, 20, 2390-400)。
【0024】
多型rs164390(SNP3)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の+102位の5’非翻訳領域に局在化している。+102位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000005)の11160bpの配列の104位の塩基に対応している。再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(G/G遺伝子型)におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0025】
多型rs875459(SNP4)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始に関する+7010に局在化している。+7010位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000005)の11160bpの配列の7012位の塩基にも対応している。再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(G/G遺伝子型)におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0026】
特定態様では、この方法の段階b)は、図3に定義されているCCNA1遺伝子の多型rs2282411(SNP5)の遺伝子型を決定することを更に含んでなる。
【0027】
多型rs2282411(SNP5)(図3参照)は、細胞周期の正の調節因子でもあるタンパク質サイクリンA1をコードするCCNA1遺伝子の転写開始に関する+7733に局在化している(Santamaria and Ortega,「発生および癌におけるサイクリンおよびCDKS:遺伝子修飾マウスからの教訓(Cyclins and CDKS in development and cancer: lessons from genetically modified mice)」, Front Biosci 2006, 11, 1164-88)。+7733位は、CCNA1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000013)の10376bpの配列の7735位の塩基にも対応している。再狭窄ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPの共優性モデルにおいてホモ接合またはヘテロ接合(TTまたはCT遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出、または優性モデル(GG遺伝子型)においてホモ接合におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0028】
もう一つの特定態様では、この方法の段階b)は、図3に定義されているCDKN1A遺伝子の多型rs733590(SNP6)の遺伝子型の決定を更に含んでなる。
【0029】
多型rs733590(SNP6)(図3参照)は、機械的血管損傷によって誘発される新生内膜病変の発生(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」,Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Nabel,「CDKおよびCKI:組織リモデリングのための分子標的(CDKs and CKIs: molecular targets for tissue remodelling)」Nat Rev Drug Discov 2002, 1, 587-98)など、様々な生理病理学的状況において細胞周期の負の調節因子であるタンパク質p21Kip1/Cip1をコードするCDKN1A遺伝子の転写開始から−1284のプロモーター領域に局在化している(Massague,「G1細胞周期制御および癌(G1 cell-sycle control and cancer)」, Nature 2004, 432, 298-306)。−1284位は、CDKN1A遺伝子(アクセス番号:AF497972、GenBankデーターベース)の10907bpの配列の57位の塩基にも対応している。ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPの優性および共優性モデルのいずれにおいても、ホモ接合(T/T遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出を含んでなる(図4参照)。
【0030】
図11は、パブリックデーターベースGenBank(“National Center of Biotechnology Information”, NCBI)に記録されている情報に従って6つのSNP(SNP1〜SNP6)に隣接するヌクレオチドの6つの配列(配列番号1〜6)を示している。それぞれのSNPの2つの多型変異体を、括弧内に示している。
【0031】
この方法は、唾液、血液または血液から精製した白血球のような患者の様々な試料から得られるDNAに適用することができる。
【0032】
本発明の目的であるSNPの遺伝子型解析を、ステント移植後に再狭窄を発生するリスクを診断するキットの開発に用いる。SNPの同定に最適方法は、ミニシークエンシング(多型および伸張の前に自動シークエンサーで検討するために蛍光標識したddNTPと共にプローブの使用)、定量的PCR(それぞれの多型が見られる領域の増幅、および様々なタイプのプローブまたは融解曲線による同定)、PCRおよび制限による消化(多型がある領域を増幅するための制限部位を作り出すように修飾されたPCRオリゴヌクレオチドの反応におけるプライマーの使用、および自動シークエンサー、アガロースゲルなどと共にその使用に適した制限酵素による消化)、および自動シークエンサー、アガロースゲルなどにおける対立遺伝子特異増幅および検出である。
【0033】
好ましくは、これらの多型を決定するため、「高解像度融解曲線」による融解曲線の方法を用い、目的の多型が見出される領域からDNAを増幅し、融解曲線を定量的サーモサイクラーで分析する。これは、単純で迅速かつ信頼性のある方法であり、多型を含む領域からの適当なオリゴヌクレオチドを用いて増幅することからなり、後者は、得られた産物を、用いた系の特徴に準じて温度ランプ(temperature ramp)に当てるときに得られる融解曲線によって同定される。これにより、単純かつ信頼性のある方法での診断試験を開発することができる。
【0034】
従って、本発明のもう一つの主態様では、本発明の方法を行うためのキットであって、オリゴヌクレオチドと、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4およびそれらの組み合わせから選択されるCCNB1遺伝子の多型の遺伝子型を決定するのに適した試薬とのセットを含んでなるキットが考えられる。
【0035】
好ましい態様では、SNP1の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチド(プライマー)の対は、配列番号7(センス)および配列番号8(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0036】
もう一つの好ましい態様では、SNP2の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号9(センス)および配列番号10(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0037】
もう一つの好ましい態様では、SNP3の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号11(センス)および配列番号12(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0038】
もう一つの好ましい態様では、SNP4の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号13(センス)および配列番号14(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0039】
場合によっては、特定態様では、キットは、CCNA1遺伝子のSNP5の遺伝子型解析に適当なオリゴヌクレオチドを更に含むことができる。好ましくは、用いられるオリゴヌクレオチドは、配列番号15(センス)および16(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0040】
もう一つの特定態様では、キットは、CDKN1A遺伝子のSNP6の遺伝子型解析に適当なオリゴヌクレオチドを更に含むことができる。好ましくは、用いられるオリゴヌクレオチドは、配列番号17(センス)および18(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0041】
最後に、本発明のもう一つの主態様は、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとして、図3に定義されている多型SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、および場合によっては、SNP5およびSNP6の1つ以上の使用に関する。
【実施例】
【0042】
患者のコホートの説明
患者母集団
12ヶ月間、Clinica Mediterranea(ナポリ、イタリア)に入院しかつ下記の参入基準を満たしている総ての継続患者を検討に登録した:1)本来の冠動脈における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、2)デ・ノボ病変の治療、3)むき出しの金属ステントの移植、および4)6〜9ヶ月目に冠動脈造影を行う有用性。地元の倫理委員会は、この研究プロトコルを承認し、総ての患者は文書によるインフォームド・コンセントを与えた。
【0043】
研究に登録された434名の患者の中、284名(65%)が6〜9ヶ月目の冠動脈造影による追跡調査を受けた。これらの284名の患者が患者の母集団を表している。
【0044】
生化学的測定
血中総コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)およびトリグリセリドは、酵素法で測定した。評価した糸球体濾過量(eGFR)は、腎疾患における食事療法のレベル調節変更(MDRD)式を適用することによって計算した。慢性腎疾患は、eGFR<60ml/分/1.73m2として定義した。
【0045】
血液サンプリング
静脈血試料を、PCI前に患者から採取した。総ての試料はクエン酸三ナトリウムコーティングした試験管に集め、直ちに氷に入れた。採取の1時間以内に、血液試料を4000rpm(1400g)で20分間遠心分離し、血漿を採取して、バッチ分析まで−80℃で分割保管した。
【0046】
経皮的冠状血管形成術
患者は、最初および最後の血管造影図の前にイソソルビドジニトレート(0.1〜0.3mg)の冠状動脈内投与を受け、血管をできるだけ拡張した。血管造影は、自動コンピューター利用システム(QCA−CMS version3.0、MEDIS、ライデン、オランダ)を用いて測定した。追跡の再狭窄は、ステント後6〜9ヶ月目の最小管腔直径(MLD)を測定することによって分析した。更に、下記の変数を評価した:処置後のMLDから処置前のMLDを引いたものと定義される初期獲得(acute gain);処置後のMLDから追跡時のMLDを引いたものと定義される晩期損失(late loss);および晩期損失対初期獲得の平均比率と定義される損失係数(loss index)。再狭窄は、追跡時の狭窄の程度が≧50%と定義された。
【0047】
統計分析
連続変数は、平均値±標準偏差(SD)として表される。2群(血管造影による病変の進行によって定義される)の連続値の差は、適宜Studentのt検定またはMann−WhitneyのU検定によって行った。カテゴリー変数は、χ2検定によって分析した。検定は、二方向であった。データーは、SPSS Windows用、version13.0(SPSS Inc.,シカゴ、イリノイ)で解析した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
本研究では、増殖アクチベーター(サイクリンA1、E1、B1およびD1)(図1参照)および細胞増殖抑制因子(p21、p27、p57およびp53)(図2参照)を含む細胞周期を調節する8つのヒト遺伝子に局在化した47のSNPを分析した。
【0051】
図1は、細胞周期アクチベーター遺伝子およびそれらが括弧内でコードするタンパク質:CCNA1(サイクリンA1)、CCNE1(サイクリンE1)、CCNB1(サイクリンB1)およびCCND1(サイクリンD1)において検討した25のSNPを示している。「多型」欄は、位置および前記多型に結合した対立遺伝子を含む。多型の位置は、ヌクレオチド塩基+1として同定される遺伝子転写の開始に関して示されている。多型は、それが転写の開始前に見出されるときには負の数で示され、それが後の位置に局在しているときには正の数で示される。「局在化」欄は、遺伝子の機能的構造に関する多型の位置を表している。更に詳細には、「プロモーター領域」局在化は、多型が遺伝子の転写を調節する領域に局在化していることを示し、転写の開始前に局在化している(+1と表示)。「エクソン」局在化は、多型が遺伝子のコード領域に局在化していることを示している。「イントロン」局在化は、多型が遺伝子の非コードイントロン領域に局在化していることを示している。UTR3’およびUTR5’局在化は、多型がそれぞれ領域3’または5’の非翻訳配列に局在化していることを示している。
【0052】
図2は、細胞周期阻害遺伝子およびそれらが括弧内でコードするタンパク質CDKN1A(p21 Kip1/Cip1)、CDKN1B(p27 Kip1/Cip1)、CDKN1C(p57 Kip1/Cip1)およびTP53(p53)において検討した22のSNPを示している。
【0053】
47のSNP(以下に記載)の遺伝子型決定は、ステント移植による血行再建を受けた284名の患者のうち、168名は再狭窄に罹っておらず、116名はこの疾患(再狭窄は、血管の管腔の内径が、介入後6〜9ヶ月期間に行った血管造影評価後に介入部分に隣接する部位の管腔に比較して50%以上の減少と定義する)に罹っている者の循環白血球から精製したDNAの試料で行った。再狭窄を発生するリスクを増加する可能性がある多型を同定するための統計分析は、SNPtatプログラムを用いるロジスティック回帰分析によって行った(Sole, Guino, Valls, Iniesta and Moreno,「SNPStats:関連度研究の分析のためのウェブツール(SNPStats: a web tool for the analysis of association studies)」, Bioinformatics 2006, 22, 1928-9)。分析した全部で47のSNPから、再狭窄のリスクが一層大きい統計的に有意な関連性は、CCNB1遺伝子におけるSNP1〜4のrs164390、rs350099、rs350104、rs875459;CCNA1遺伝子におけるSNP5のrs2282411、およびCDKN1A遺伝子におけるSNP6のrs733590にのみ見られた。
【0054】
図3は、ステント移植後に再狭窄を発生するリスクと統計的に有意な関連性を示した6つのSNPをまとめている。
【0055】
図4は、ステント移植後の再狭窄のリスクと関連性を示したSNPのロジスティック回帰分析の結果を示している。分析は、SNPStatソフトウェア(Sole, Guino, Valls, Iniesta and Moreno,「SNPtats:関連度研究の分析のためのウェブツール(SNPStats: a web tool for the analysis of association studies)」, Bioinformatics 2006, 22, 1928-9)を用いて行い、年齢および性別によって補正した。
【0056】
結果は、SNP1に関しては、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(C/C)またはヘテロ接合(C/T)のC対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生するリスクが有意な1.74倍の増加となることを示した(図4参照)。
【0057】
SNP2に関しては、ホモ接合(C/C)のC対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(T/C)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する引き起こす可能性リスクを有意な1.77倍の増加とする(図4参照)。
【0058】
SNP3に関しては、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な1.81倍の増加とする(図4参照)。
【0059】
SNP4に関しては、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な1.78倍の増加とする。SNP4に適用したロジスティック回帰分析は、下記の因子、すなわち再狭窄、性別、年齢、および分析した患者の家族歴を考慮した(図4参照)。
【0060】
共優性モデルのSNP5に関しては、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(C/T)におけるT対立遺伝子の存在は、ホモ接合(C/C)のC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性をそれぞれ有意な1.26倍および3.10倍に増加する。優性モデルでは、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子の存在は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性の有意な1.78倍への増加と関連している。SNP5に適用したロジスティック回帰分析は、下記の因子、すなわち再狭窄、性別、年齢、および分析した患者の家族歴を考慮した(図4参照)。
【0061】
共優性モデルのSNP6に関しては、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子の存在は、ヘテロ接合(C/T)またはホモ接合(C/C)におけるC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性をそれぞれ有意な1.92倍および2.38倍に増加する。優性モデルでは、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子の存在は、ヘテロ接合(T/C)またはホモ接合(C/C)のC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な2.08倍に増加する(図4参照)。
【0062】
遺伝子分析
多型の検出および試料の遺伝子型解析のため、LightCycler480ScanningソフトウェアおよびLightCycler480HighResolutionMeltingMasterキットを用いた。
【0063】
キットの混合物は、DNAの二本鎖に均質に結合して、その化学特性により増幅反応を阻害することなく高濃度で用いることができる蛍光体LightCycler480ResoLightを含んでいた。
【0064】
PCR反応サイクル中に、増幅断片の形成を観察した。配列に変動を有する試料は、融解曲線の相違によって識別した。この手法を用いることによって、ホモ接合体およびヘテロ接合体試料間と野生および突然変異ホモ接合体間とで区別することかできた。
【0065】
プライマーのデザイン
遺伝子当たりのPCR反応に用いるプライマーのそれぞれの対のデザインは、Primer3プログラム(Howard Hughes Medical Institute and National Institutes of Health, National Human Genome Research Institute http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて行った(表3参照)。
【0066】
プライマーのデザインにおいて(表3参照)、融解温度は約62℃であり、アンプリコンのサイズは100〜250bpであった。
【0067】
【表3】
【0068】
増幅反応
増幅反応のため、ロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science)製のHighResolution the LightCycler(商標)480Masterキットを用いた。2x混合物は、MgCl2を含まない反応緩衝液中にFastStartTaqポリメラーゼDNAおよび蛍光体LightCycler480ResoLightを含んでいた。この混合物は、GC含量の高い配列の増幅を向上させるためのDMSO付加と適合しうる。
【0069】
FastStartTaqポリメラーゼDNAは、化学修飾された熱に安定な酵素であり、75℃までの温度では活性を示さない。この酵素は高温でのみ活性であり、プライマーは配列に非特異的に結合することはできない。
【0070】
a.試薬および容積
表4に、それぞれの増幅反応に用いた試薬、初期および最終濃度および必要容積を示す。
【0071】
【表4】
【0072】
b.反応条件
表5に、様々なパラメーターの最適化後の増幅反応の条件を示す。
【0073】
【表5】
【0074】
検定の推定時間は、PCRについては75分間であり、変性曲線(高解像度融解)については15分間であった。反応は、通常のサーマルサイクラーで行うことができ、結果はLightCycler480システムで解析した。
【0075】
多型SNP1、SNP3およびSNP4の特定の場合には、それぞれの多型について野生型ホモ接合体を有する標準試料1μLを、増幅反応後で変性段階の前にそれぞれのウェルに加えた。この方法で、2つのホモ接合体を明らかに区別することができる。
【0076】
結果の分析
LightCycler(商標)480GeneScanningソフトウェアを用いて、LightCycler(商標)480HighResolutionMeltingシステムを用いて得られる実験データーの解析によって試料のヘテロ二本鎖構造を決定した。
【0077】
試料をPCRによって増幅し、変性して融解曲線を得た後、ソフトウェアによってそれらを分析し、同じような融解曲線を有する試料を分類した。
【0078】
図12および13に、SNP1およびSNP2の融解曲線をそれぞれ示す。両多型を含むCCNB1遺伝子の2つの断片を、「LightCycler480HighResolutionMeltingMaster」キットを用いてヒトゲノムDNAの様々な試料中で増幅し、「LightCycler480Scanning」ソフトウェアによって分析した。このソフトウェアは、PCR産物の配列の変動間の差から生じる融解曲線の差を検出し、それぞれの遺伝子型によって試料を分類する。両方の図では、それぞれの遺伝子型は明確に識別され、特にホモ接合体変異体(赤および緑)が識別される。パネル(a)では、正常および(温度によって変化する)多型の存在によって変更された曲線の表示を見ることができ、一方、パネル(b)は、正常曲線と(温度によって変化する)多型の存在によって変更された曲線との差を表している。
【0079】
図14、15、16および17は、検討を行った多型の残りのもの、すなわちCCNB1遺伝子の多型SNP3(図14)およびSNP4(図15)、CCNA1遺伝子の多型SNP5(図16)、およびCDKN1A遺伝子のSNP6(図17)について、前節で記載したのと同じ方法を用いて、標準化融解曲線を示している。
【0080】
多型SNP1およびSNP2に関連した機能研究
多型rs350099(SNP1)およびrs350104(SNP2)は、ヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域に局在化しているので、本発明者らは、ステント移植後に再狭窄を発生する一層大きなリスクと統計的に有意な関連性を示すこれらの多型の対立遺伝子が、転写アクチベーターおよび/または抑制因子の結合を促進し、これらは次に遺伝子の転写活性を修飾することができるという可能性を検討した。
【0081】
Transfac(商標)7.0データーベースの使用は、それぞれ多型SNP1およびSNP2のTおよびC対立遺伝子を含むヌクレオチド配列のNF−YおよびAP−1結合部位の存在を予測した。これらの可能性を、EMSA法を用いて試験した。
【0082】
例えば、SNP1のT対立遺伝子を有する配列の分析は、転写因子NF−Yの結合に対して特異性を有するCCAAT配列の存在を予測した。しかしながら、SNP1のC対立遺伝子についての同じ種類の分析では、前記結合部位を予測しなかった。
【0083】
これらの予測により、検討で得られたデーターから、SNP1にC対立遺伝子と比較してT対立遺伝子を含む配列にNF−Y因子が効率的かつ特異的に結合することが確認された(図7〜9参照)。
【0084】
一方、SNP2のC対立遺伝子を有する配列の分析は、AP−1結合部位の存在を予測した。しかしながら、SNP2のT対立遺伝子についての同じ種類の分析では、このような結合部位を予測しなかった。この検討で得られたデーターから、C対立遺伝子がSNP2に含まれるときには、同じ多型のT対立遺伝子を含む配列と比較して一層大きなAP−1DNA結合活性が確認された(図10参照)。
【0085】
電気泳動移動度シフト分析(EMSA)
プローブの放射能標識を、二本鎖オリゴヌクレオチド1pmolを最終容積10μLで65℃にて10分間インキュベーションして行い、可能な二次構造を不安定化した。次いで、これを氷中で素早く冷却し、T4−ポリヌクレオチドキナーゼ1μLと、[γ32P]−dATP(10mCi/ml)1μLとを加えた。標識反応を、37℃にて30分間インキュベーションした。反応を氷中で停止し、プローブをSephadexG−50カラムで精製し、最後に、最終容積を100μLとした。
【0086】
図6は、EMSA分析のプローブとして用いた二本鎖オリゴヌクレオチドの詳細なリストを示している。「配列」欄は、それぞれのプローブの2本の相補性鎖の配列を示している。プローブに含まれる配列の詳細な説明を、「説明」欄に示す。NF−YおよびAP−1に対する予測および共通結合配列は太字で強調し、SNPの対立遺伝子は白箱に囲まれて示されている。
【0087】
ヒト細胞の可溶性核画分のタンパク質(3μg)を、氷中で、EMSA緩衝液(20mMTris−HCl pH:7.8、5%グリセロール、3mMMgCl2、60mMKCl、0.5mMEDTA、0.1mMDTT、50μg/mlポリ(d(I−C))の最終容積17μLで10分間予備インキュベーションした。次いで、放射性標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ1μLを加え、氷中で30分間インキュベーションした。最後に、ローディングバッファー(loading buffer)1μLをそれぞれの試験管に加え、試料を5%未変性ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動によって分離した。分離は、TBE0.5X緩衝液(5Xストックから調製)で調製した5%ポリアクリルアミドゲル(80:1,アクリルアミド:ビスアクリルアミド)中で、TBE0.5x緩衝液中において200mVで約2時間行った。ゲルを80℃の温度で2時間真空乾燥し、オートラジオグラフィーによって分析した(図7〜10参照)。競合アッセイのため、過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドを、放射性標識プローブの添加前の予備インキュベーション段階中に加えた。スーパーシフトアッセイのため、特異抗体(抗−NF−YB Santacruz Biotechnology,参照番号sc−13045x)または非特異抗体(抗−CREB−II, Santa Cruz Biotechnology,参照番号sc−180x)を、放射性標識プローブの添加前に核抽出物と共に30分間インキュベーションした。
【0088】
図7は、EMSAアッセイを用いるHeLa細胞中のSNP1−Cプローブ(SNP1のC対立遺伝子を有する多型変異体)にではなく、SNP1−Tプローブ(SNP1のT対立遺伝子を有する多型変異体)に関連したNF−Y活性の同定を示す。このアッセイは、プローブであるNF−Ycons、SNP1−TおよびSNP1−Cであって放射能標識したもの10fmol、およびHeLa細胞の可溶性核画分の抽出物(それぞれタンパク質3μg、12μgおよび12μg)のインキュベーションによって行った。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。結合反応コントロールは、核抽出物の非存在下でインキュベーションした(レーン1、5および9)。スーパーシフトアッセイは、抗−NF−YBおよび抗−CREB−II抗体(後者は特異性コントロールとして使用)と共に30分間予備インキュベーションによって行った。
【0089】
図8は、SNP1−Cではなく過剰のSNP1−Tプローブが、NF−YconsプローブのNF−Y配列に関連したDNA結合活性とどのように競合するかを示している。競合アッセイは、NF−Ycons放射性標識プローブ10fmolと、HeLa細胞の可溶性核画分のタンパク質抽出物3μgおよび過剰量の放射能標識していないプローブ(「コールド」プローブ)のインキュベーションによって行ったEMSA法を用いて行った。競合アッセイに用いた未標識二本鎖オリゴヌクレオチド(過剰量は括弧内に示す)は、NF−Ycons(レーン3:100x)、NF−Ymut(レーン4:100x)、SNP1−T(レーン5:100x;レーン6:300x;レーン7:900x)、およびSNP1−T(レーン8:100x;レーン9:300x;レーン10:900x)である。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。
【0090】
図9は、SNP1−Cではなく過剰のSNP1−Tプローブが、ヒト遺伝子プロモーターCCNB1の−30/−10領域のNF−Y配列に関連したDNA結合活性とどのように競合するかを示している。更に詳細には、この図は、CCNB1プロモーターの−27/−17領域のNF−Yに対する結合配列活性の分析を示している(NF−Yプローブ(−30/−10)は、過剰の「コールド」プローブSNP1−TおよびSNP1−Cと競合した。競合研究は、放射能標識したNF−Yプローブ(−30/−10)10fmol、HeLa細胞の可溶性核画分のタンパク質抽出物8μg、および過剰の「コールド」プローブNF−Y(−30/−10)(レーン3:20x;レーン4:60x)、SNP1−T(レーン5:20x;レーン6:60x)およびSNP1−C(レーン7:20x;レーン8:60x)をインキュベーションするEMSA法によって行った。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。
【0091】
図10は、SNP2−Tプローブ(SNP2のT対立遺伝子を有する多型変異体)と比較して、過剰のSNP2−Cプローブ(SNP2のC対立遺伝子を有する多型変異体)が、どのようにして共通AP−1プローブ(AP−1cons)に関連したDNA結合活性と一層効率的に競合するかを示している。このアッセイは、ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS)の可溶性核抽出物と放射性標識AP−1consプローブをインキュベーションするEMSA法によって行った。競合実験は、下記の未標識二本鎖オリゴヌクレオチド、すなわちAP−1プローブ(25倍過剰量,レーン3)、SNP2−C(25倍〜200倍,レーン4〜7)、およびSNP2−T(25倍〜200倍,レーン8〜11)をインキュベーションすることによって行った。この図は、総数が5つからの代表的EMSAを示す。それぞれのEMSAにおけるDNA−タンパク質複合体の相対バンド強度を、コンピューター処理によるイメージ分析システム(「Metamorphソフトウェア」)によって独立して分析し、値は平均値±SEMとしてグラフに表す。結果の統計分析は、片側ANOVAおよびBonferroni post−hoc検定によって行った。コントロール(コンペティターなし)に対する比較は、*p<0.05,**p<0.01として表す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分子生物学分野における健康管理部門で適用される。詳細には、本発明は、一塩基多型(SNP)の検出に基づくステント移植による血行再建後の再狭窄の発生するリスクを診断する方法を得ようとするものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
動脈硬化症に冒されている血管の血行再建に最もよく用いられる臨床治療は、経皮的冠動脈形成術(PCTA)である。この介入としばしば関連付けられる病理学的過程は、手術した血管の過度の再閉塞からなる再狭窄である。再狭窄は、PCTAを繰り返すことや、または罹患した患者に代替血行再建療法(例えば、大動脈冠状動脈バイパス)を施すことが必要になるので、健康管理および社会経済的に大きな影響を及ぼす。進行が遅い(典型的には、数十年)ことを特徴とする本来のアテローム性病変と比較して、再狭窄病変は、通常はPCTA後の最初の4〜12ヶ月の間に成長する(Serruys, Kutryk and Ong,「冠状動脈ステント(Coronary-artery stents)」, N Engl J Med 2006, 354, 483-95)。現在では、90%を超えるPCTAで、処置の安全性を高め、かつ典型的には通常のPCTAに関連した再狭窄率が25〜50%であるのと比較して再狭窄率を15〜30%にまで減少させているステントと呼ばれる支持用の金属製体内プロテーゼが用いられている(Serruys, Kutryk and Ong,「冠状動脈ステント(Coronary-artery stents)」, N Engl J Med 2006, 354, 483-95, Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signalling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21)。再狭窄率は、薬剤溶出ステントの使用によって更に低下する。
【0003】
再狭窄は、主として血小板、単球/マクロファージ、内皮細胞(EC)、および平滑筋細胞(SMC)のような様々な細胞型が介在する多因子過程である。新生内膜病変とも呼ばれる再狭窄病変の増殖は、ステントの移植が引き起こす機械的損傷によって開始される過程である(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73)。再狭窄の初期の急性期は、損傷した動脈表面上で循環する単球、好中球およびリンパ球の動員を伴う血小板および局在化血栓の活性化を含んでいる。これらの細胞型は、中膜に内在するSMCの活性化を特徴とする慢性的炎症反応を招き、形態変化、収縮性タンパク質の胚性アイソフォームの発現、成長および走化性刺激に対する高応答性、および細胞外マトリックスの豊富な合成を特徴とする「合成的」表現型をとっている。新生内膜病変の細胞によって産生される過度の走化性および分裂促進因子は、中膜のSMCの最初の増殖期と病変へのそれらの移動に続いて、新生内膜病変のSMCの第二の増殖性応答を引き起こす(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73)。PCTAの後期段階における血管病変の炎症消散および瘢痕化は、新生内膜SMCの収縮型表現型の再生と細胞外マトリックスの組成変化を伴い、損傷を受けていない動脈壁に一層似てくる。上記のように、再狭窄が過度である場合には、臨床症状が再発して、更なる血行再建介入が必要となる。
【0004】
動物およびヒトの研究で同定された新生内膜過形成調節因子の中では、下記のものが挙げられる:血栓形成因子(例えば、組織因子、トロンビン受容体)、細胞接着分子(例えば、VCAM、ICAM、LFA−1、Mac−1)、シグナルトランスデューサー(例えば、PI3K、MEK/ERK)、転写因子(例えば、NF−κB、E2F、AP−1、c−myc、c−myb、YY1、Gax)、細胞周期調節タンパク質(例えば、pRb、p21、p27、CDK2、CDC2、サイクリンB1、PCNA)、増殖因子(例えば、PDGF−BB、TGFβ、FGF、IGF、EGF、VEGF)、炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)、走化性因子(例えば、CCR2、MCP−1)、およびメタロプロテアーゼ(例えば、MMP−2、MMP−9)。
【0005】
再狭窄の本質的過剰増殖性は、細胞周期調節遺伝子がこの病理学的過程において果たすことがある役割の研究に大きな興味を生じた。哺乳類では、細胞周期は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれる触媒サブユニットとサイクリンと呼ばれる調節サブユニットからなるホロ酵素によって正に調節される(Ekholm and Reed,「哺乳類の細胞周期におけるG(1)サイクリン依存性キナーゼの調節」, Curr Opin Cell Biol 2000, 12, 676-84)。CDK/サイクリンの逐次活性化により、細胞増殖に関連した細胞基質の異なる事象のリン酸化が可能となる。一方、CKI(CDK阻害剤)と呼ばれるCDK/サイクリンの阻害タンパク質があり、これはCIP/KIP(p21、p27およびp57)およびINK4(p15、p16、p18およびp19)サブファミリーに再分される。抗分裂促進刺激に呼応するCKIの蓄積は、CDK/サイクリン複合体の可逆阻害を誘発する。発現研究および遺伝子療法実験から、新生内膜病変の発生におけるこれらの分子の重要性が明らかになっている。例えば、血管形成術の動物およびヒトモデルにおける機械的損傷によって誘発された閉塞性血管病変の分析は、細胞周期調節遺伝子(例えば、CDK、サイクリン、CKI、p53、pRb)の発現における変化を明らかに示しており、また多数の実験動物による研究は、CDKおよびサイクリン(例えば、サイクリンB、CDK2、CDK1)の不活性化または増殖抑制因子(例えば、p21、p27、pRb、p53)の過剰発現は、血管形成術後の閉塞性血管病変の発生を阻害することを示している(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」, Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Nabel,「CDKおよびCKI:組織リモデリングのための分子標的」, Nat Rev Drug Discov 2002, 1, 587-98, Dzau, Braun-Dullaeus and Sedding,「血管増殖およびアテローム性動脈硬化症:新たな展望および治療法(Vascular proliferation and atherosclerosis: new perspectives and therapeutic strategies)」, Nat Med 2002, 8, 1249-56)。
【0006】
様々な動物モデルに由来する有望な前臨床データーにも拘わらず、再狭窄を予防し、または治療するための数多くの全身療法は、臨床試験に失敗した。しかしながら、抗増殖性の薬剤溶出性ステント(DES)が最近導入されたことにより、インターベンション心臓病学に大変革が起きた。細胞増殖の共通の最終経路である真核細胞の有糸分裂周期を標的とする2種類の親油性薬剤であるシロリムス(ラパマイシンまたはラパミューンとも呼ばれる)およびパクリタキセル(タキソールとも呼ばれる)を運ぶためのステントの使用を強調すべきである。損傷した動脈壁において高用量の薬剤を局部的に放出するこれらの装置の使用により、再狭窄率が有意に減少した(Costa and Simon,「再狭窄の分子基盤および薬剤溶出性ステント(Molecular basis of restenosis and drug-eluting stents)」, Circulation 2005, 111, 2257-73, Wessely, Schomig and Kastrati,「ポリマー基剤の薬剤溶出性ステント上のシロリムスおよびパクリタキセル:類似点と相違点(Sirolimus and Paclitaxel on polymer-based drug-eluting stent: similar but different)」, J Am Coll Cardiol 2006, 47, 708-14)。このため、ヨーロッパで現在移植に用いられている3種類総てのステントのうち2種類のDESが移植されている(Baz, Mauri, Albarran and Pinar,「[スペインの心臓カテーテル法および冠動脈インターベンションレジストリー(Spanish Cardiac Catheterization and Coronariy Intervention Registry)。スペイン心臓病学会ワーキンググループの心臓カテーテル法およびインターベンション心臓病学についての第16回公式報告(1990−2006)]」, Rev Esp Cardiol 2007, 60, 1273-89)。通常のステントと比較してDESを用いることの関連する欠点は、それらの価格が高価であり(2〜3倍以上)、遅発性血栓症に関連した有害事象を回避するための抗血小板治療を長くする必要があることである(Lazaro and de Mercado, “Stents recubiertos de farmacos: eficacia, efectividad, eficiencia y evidencia”, Revista Espanola de Cardiologia 2004, 57, 608-12で概説)。
【0007】
再狭窄の健康管理および社会経済的影響が大きいため、血行再建を必要とする患者では再現性があり信頼性が高くかつ価格的に有効な形態で定量することができるバイオマーカーを有することはきわめて有用である。これらの患者での再狭窄のリスクを評価することができれば、大動脈冠状動脈バイパスに対してステントの移植、またはDESに対して通常のステント使用(費用が一層かかりかつ遅発性血栓症のリスクが増加する)など治療法を決定するのに役立つこととなる。
【0008】
一塩基多型(SNP)は、ヒトゲノム中に数百万存在する遺伝子変異体である。近年、SNPは、β2−アドレナリン作動性受容体、CD14、コロニー刺激因子(CSF)、エオタキシン、カスパーゼ−1、P2RY12受容体、およびインターロイキン−10の遺伝子など再狭窄を発生する多少のリスクと関連しているヒト遺伝子で同定された(Monraats et al.「炎症およびアポトーシス遺伝子、および経皮冠動脈インターベンショナン後の再狭窄の危険性(Inflammation and apoptosis genes and the risk of restenosis after percutaneous coronary intervention), Pharmacogenet Genomics 2006, 16, 747-754; Monraats et al.「インターロイキン10:経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄発生の新たなリスクマーカー(Interleukin 10: a new risk marker for the development of restenosis after percutaneous coronary intervention)」, Genes Immun 2007, 8, 44-50; Monraats et al.「遺伝子炎症性因子は経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄を予測する(Genetic inflammatory factors predict restenosis after percutaneous coronary interventions)」, Circulation 2005, 112, 2417-25; Rudez et al.「血小板受容体P2RY12ハプロタイプは経皮的冠動脈インターベンション後の再狭窄を予測する(Platelet receptor P2RY12 haplotypes predict restenosis after percutaneous coronary interventions)」, Hum Mutat 2008, 29, 375-80)。
【0009】
しかしながら、遺伝子型−表現型の関連は、再狭窄を発生する多少のリスクを有する細胞周期調節遺伝子のSNPに関してはこれまでは報告されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、重要な研究作業の後、再狭窄を発生する遺伝子リスクマーカーとしての潜在的診断値を有する様々な細胞周期調節遺伝子における異なるSNPを同定した。具体的に言えば、本発明者らは、CCNB1遺伝子(サイクリンB1タンパク質)においてSNPrs164390、rs350099、rs350104、rs875459;CCNA1遺伝子(サイクリンA1タンパク質)においてrs2282411;およびCDKN1A遺伝子(p21Kip1/Cip1タンパク質)においてrs733590を、再狭窄を発生するリスク診断マーカーとして同定した。
【0011】
これらのマーカーは、治療法の決定においてきわめて重要な進歩を構成する。例えば、再狭窄を発生するリスクが比較的低い患者は、通常のステントを受けることができ、DES(一層高価で、遅発性血栓症のリスクを有する)の使用はリスクの一層高い患者に限定できる。
【0012】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、前記リスク診断マーカーとしてのこれら6つのSNPの検出に基づくステントの移植後の再狭窄のリスクを決定する方法を開発した。また、前記診断を行うためのキットも開発した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】サイクリン遺伝子で検討した25多型をまとめた表。
【図2】細胞増殖抑制遺伝子で検討した22多型をまとめた表。
【図3】ステントの移植後、再狭窄を発生するリスクと統計学的に有意に関連した6つのSNPをまとめた表。
【図4】ステントの移植後、再狭窄を発生するリスクと関連したSNPの対数回帰分析の結果をまとめた表。分析は、SNPStatソフトウェアを用いて行った。
【図5】SNPrs350099(SNP1)およびrs350104(SNP2)の局在化、および転写因子NF−Y(NF−Ybs)の結合部位を示すヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域の略図。
【図6】ゲルシフトアッセイ(EMSA)に用いたプローブのリスト。
【図7】放射性標識プローブNF−Ycons、SNP1−TおよびSNP1−Cを子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物と共にインキュベーションしたものから得られるEMSA。スーパーシフト分析は、抗−NF−YBおよび抗−CREBII抗体(後者は、特異性コントロールとして用いた)とインキュベーションすることによって行った。
【図8】子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物を放射性標識したNF−Yconsプローブ、および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドNF−Ycons、NF−Ymut、SNP1−TおよびSNP1−Cと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行った競合分析。
【図9】子宮頚癌(HeLa)由来のヒト細胞の可溶性核画分の抽出物を放射性標識NF−Yプローブ(−30/−10)および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドNF−Y(−30/−10)、SNP1−TおよびSNP1−Cと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行った競合分析。
【図10】a)ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS)の可溶性核画分の抽出物を放射性標識AP−1consプローブ、および過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドAP−1cons、SNP2−CおよびSNP2−Tと共にインキュベーションすることによって得られるEMSA法によって行われる競合分析。b)5回のEMSAの平均のDNA−タンパク質複合体の相対強度、および片側ANOVAおよびBonferroni post−hoc検定による統計解析。コンペティターを有する分析におけるバンド強度対コンペティターなしのバンド強度の比較は、*:p<0.05、**:p<0.01として表している。
【図11】ステントの移植後、再狭窄の発生リスクと統計的に有意な関連を示す6つのSNPに隣接するヌクレオチドの配列。
【図12】SNP1の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図13】SNP2の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図14】SNP3の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図15】SNP4の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図16】SNP5の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【図17】SNP6の融解曲線。a)正常および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線を表す。b)正常曲線および(温度に依存する)多型の存在によってシフトした曲線間の差を表す。融解曲線の差は、それぞれの遺伝子型によって変化する試料を分類するPCR産物の配列における変動の差の結果である。
【0014】
本発明の目的
本発明の目的は、CCNB1遺伝子におけるrs350099、rs350104、rs164390およびrs875459、および場合によってはそれぞれCCNA1およびCDKN1A遺伝子におけるrs2282411および/またはrs733590から選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)における遺伝子型を決定するための試料の分析に基づいた、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、下記に示すように、これらの多型のいずれかにおける特定の対立遺伝子の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、方法である。
【0015】
引用された多型の遺伝子型の決定に適当なプローブと試薬とのセットを含んでなる、前記方法を行うためのキットも、本発明の目的である。
【0016】
最後に、本発明の目的は、引用された多型rs350099、rs350104、rs164390、rs875459、および場合によってはrs2282411およびrs733590の1つ以上の、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとしての使用である。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明の主態様は、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、a)個体の試料からゲノムDNAを得て、b)試料のDNAを分析して、図3に定義されているrs350099(SNP1)、rs350104(SNP2)、rs164390(SNP3)およびrs875459(SNP4)から選択されるCCNB1遺伝子における少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定することを含んでなり、これらの多型のいずれかにおける特定の対立遺伝子の存在が、下記に定義されるように、再狭窄を発生するリスクを示す、方法である(図4参照)。
【0018】
好ましい態様では、段階b)は、試料のDNAを分析して多型SNP1およびSNP2の遺伝子型の組み合わせを決定することを含んでなる。
【0019】
多型rs350099(SNP1)(図3参照)は、機械的血管損傷によって誘発される新生内膜病変の発生(Morishita, Gibbons, Kaneda, Ogihara and Dzau,「インビボでの血管壁におけるアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド(サイクリンB1およびCDC2キナーゼ)の薬物動態:HVJ−リポソーム送達による再狭窄に対する治療上の有用性の増加(Pharmacokinetics of antisense oligodeoxyribonucleotides (cyclin B1 and CDC 2 kinase))」,Gene 1994, 149, 13-9)など、様々な生理病理学的状況において細胞増殖に本質的な正の調節因子であるサイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始から−957のプロモーター領域に局在している(Santamaria and Ortega,「発生および癌におけるサイクリンおよびCDKS:遺伝子修飾マウスからの教訓(Cyclins and CDKS in development and cancer: lessons from genetically modified mice)」,Front Biosci 2006, 11, 1164-88)。−957位はCCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号U22364)の1172塩基対(bp)の配列の36位の塩基にも対応する。ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(T/T遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。更に、本発明者らは、T対立遺伝子を有する配列において、転写因子NF−Yに対する特異的結合部位を構成する配列(CCAAT)を同定した(図7〜9参照)。
【0020】
転写因子NF−Yは、ヒト遺伝子プロモーターCCNB1の領域−150〜+182領域に局在化している2つのシス−調節配列へのその結合により、高増幅率を有する細胞におけるその転写活性化に本質的である(Sciortino, Gurtner, Manni, Fontemaggi, Dey, Sacchi, Ozato and Piaggio,「サイクリンB1遺伝子はHeLa細胞において有糸分裂の際に積極的に転写される(The cyclin B1 gene is actively transcribed during mitosis in HeLa cells)」,EMBO Rep 2001, 2, 1018-23, Farina, Manni, Fontemaggi, Tiainen, Cenciarelli, Bellorini, Mantovani, Sacchi and Piaggio,「末端が分化した骨格筋におけるサイクリンB1遺伝子転写のダウンレギュレーションは、機能性CCAAT−結合NF−Y複合体の喪失と関連している(Down-regulation of cyclin B1 gene transcription in terminally differentiated skeletal muscle cells is associated with loss of functional CCAAT-binding NF-Y complex)」,Oncogene 1999, 18, 2818-27)。
【0021】
図5は、EMSA分析によって検討したSNP(SNP1およびSNP2)の局在化を示すヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域の略図である。NF−Ybsボックスは、転写因子NF−Yが結合しているプロモーターの−21/−17位に位置したCCAAT配列を表す。転写の開始は、+1の値で表され、これは曲がった矢印で表されている。
【0022】
多型rs350104(SNP2)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始から−475のプロモーター領域に局在化している。−475位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号U22364)の1172bpの配列の519位の塩基に対応している。ヒトにおけるステント移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(C/C遺伝子型)におけるC対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。更に、本発明者らは、この多型のT対立遺伝子を有する配列と比較して一層大きなアフィニティーの転写因子AP−1についての結合部位を、C対立遺伝子を有する配列で同定した(図10参照)。
【0023】
AP−1は、サイクリンなどの多量の細胞周期遺伝子の活性化の調節過程に広く関係している転写因子である(Shaulian and Karin,「細胞増殖および生存におけるAP−1(AP-1 in cell proliferation and survival)」, Oncogene 2001, 20, 2390-400)。
【0024】
多型rs164390(SNP3)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の+102位の5’非翻訳領域に局在化している。+102位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000005)の11160bpの配列の104位の塩基に対応している。再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(G/G遺伝子型)におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0025】
多型rs875459(SNP4)(図3参照)は、サイクリンB1タンパク質をコードするCCNB1遺伝子の転写開始に関する+7010に局在化している。+7010位はまた、CCNB1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000005)の11160bpの配列の7012位の塩基にも対応している。再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPのホモ接合(G/G遺伝子型)におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0026】
特定態様では、この方法の段階b)は、図3に定義されているCCNA1遺伝子の多型rs2282411(SNP5)の遺伝子型を決定することを更に含んでなる。
【0027】
多型rs2282411(SNP5)(図3参照)は、細胞周期の正の調節因子でもあるタンパク質サイクリンA1をコードするCCNA1遺伝子の転写開始に関する+7733に局在化している(Santamaria and Ortega,「発生および癌におけるサイクリンおよびCDKS:遺伝子修飾マウスからの教訓(Cyclins and CDKS in development and cancer: lessons from genetically modified mice)」, Front Biosci 2006, 11, 1164-88)。+7733位は、CCNA1遺伝子(GenBankデーターベースのアクセス番号NC_000013)の10376bpの配列の7735位の塩基にも対応している。再狭窄ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPの共優性モデルにおいてホモ接合またはヘテロ接合(TTまたはCT遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出、または優性モデル(GG遺伝子型)においてホモ接合におけるG対立遺伝子の検出によって決定される(図4参照)。
【0028】
もう一つの特定態様では、この方法の段階b)は、図3に定義されているCDKN1A遺伝子の多型rs733590(SNP6)の遺伝子型の決定を更に含んでなる。
【0029】
多型rs733590(SNP6)(図3参照)は、機械的血管損傷によって誘発される新生内膜病変の発生(Andres,「サイクリン依存性キナーゼシグナリングによる血管細胞増殖および移動の制御:新たな展望および治療可能性(Control of vascular cell proliferation and migration by cyclin-dependent kinase signaling: new perspectives and therapeutic potential)」,Cardiovasc Res 2004, 63, 11-21, Nabel,「CDKおよびCKI:組織リモデリングのための分子標的(CDKs and CKIs: molecular targets for tissue remodelling)」Nat Rev Drug Discov 2002, 1, 587-98)など、様々な生理病理学的状況において細胞周期の負の調節因子であるタンパク質p21Kip1/Cip1をコードするCDKN1A遺伝子の転写開始から−1284のプロモーター領域に局在化している(Massague,「G1細胞周期制御および癌(G1 cell-sycle control and cancer)」, Nature 2004, 432, 298-306)。−1284位は、CDKN1A遺伝子(アクセス番号:AF497972、GenBankデーターベース)の10907bpの配列の57位の塩基にも対応している。ヒトにおけるステントの移植後に再狭窄を発生するリスクの診断マーカーとしてのその使用は、このSNPの優性および共優性モデルのいずれにおいても、ホモ接合(T/T遺伝子型)におけるT対立遺伝子の検出を含んでなる(図4参照)。
【0030】
図11は、パブリックデーターベースGenBank(“National Center of Biotechnology Information”, NCBI)に記録されている情報に従って6つのSNP(SNP1〜SNP6)に隣接するヌクレオチドの6つの配列(配列番号1〜6)を示している。それぞれのSNPの2つの多型変異体を、括弧内に示している。
【0031】
この方法は、唾液、血液または血液から精製した白血球のような患者の様々な試料から得られるDNAに適用することができる。
【0032】
本発明の目的であるSNPの遺伝子型解析を、ステント移植後に再狭窄を発生するリスクを診断するキットの開発に用いる。SNPの同定に最適方法は、ミニシークエンシング(多型および伸張の前に自動シークエンサーで検討するために蛍光標識したddNTPと共にプローブの使用)、定量的PCR(それぞれの多型が見られる領域の増幅、および様々なタイプのプローブまたは融解曲線による同定)、PCRおよび制限による消化(多型がある領域を増幅するための制限部位を作り出すように修飾されたPCRオリゴヌクレオチドの反応におけるプライマーの使用、および自動シークエンサー、アガロースゲルなどと共にその使用に適した制限酵素による消化)、および自動シークエンサー、アガロースゲルなどにおける対立遺伝子特異増幅および検出である。
【0033】
好ましくは、これらの多型を決定するため、「高解像度融解曲線」による融解曲線の方法を用い、目的の多型が見出される領域からDNAを増幅し、融解曲線を定量的サーモサイクラーで分析する。これは、単純で迅速かつ信頼性のある方法であり、多型を含む領域からの適当なオリゴヌクレオチドを用いて増幅することからなり、後者は、得られた産物を、用いた系の特徴に準じて温度ランプ(temperature ramp)に当てるときに得られる融解曲線によって同定される。これにより、単純かつ信頼性のある方法での診断試験を開発することができる。
【0034】
従って、本発明のもう一つの主態様では、本発明の方法を行うためのキットであって、オリゴヌクレオチドと、SNP1、SNP2、SNP3、SNP4およびそれらの組み合わせから選択されるCCNB1遺伝子の多型の遺伝子型を決定するのに適した試薬とのセットを含んでなるキットが考えられる。
【0035】
好ましい態様では、SNP1の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチド(プライマー)の対は、配列番号7(センス)および配列番号8(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0036】
もう一つの好ましい態様では、SNP2の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号9(センス)および配列番号10(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0037】
もう一つの好ましい態様では、SNP3の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号11(センス)および配列番号12(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0038】
もう一つの好ましい態様では、SNP4の遺伝子型解析に用いられるオリゴヌクレオチドの対は、配列番号13(センス)および配列番号14(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0039】
場合によっては、特定態様では、キットは、CCNA1遺伝子のSNP5の遺伝子型解析に適当なオリゴヌクレオチドを更に含むことができる。好ましくは、用いられるオリゴヌクレオチドは、配列番号15(センス)および16(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0040】
もう一つの特定態様では、キットは、CDKN1A遺伝子のSNP6の遺伝子型解析に適当なオリゴヌクレオチドを更に含むことができる。好ましくは、用いられるオリゴヌクレオチドは、配列番号17(センス)および18(アンチセンス)の配列を有する(表3参照)。
【0041】
最後に、本発明のもう一つの主態様は、ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとして、図3に定義されている多型SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、および場合によっては、SNP5およびSNP6の1つ以上の使用に関する。
【実施例】
【0042】
患者のコホートの説明
患者母集団
12ヶ月間、Clinica Mediterranea(ナポリ、イタリア)に入院しかつ下記の参入基準を満たしている総ての継続患者を検討に登録した:1)本来の冠動脈における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、2)デ・ノボ病変の治療、3)むき出しの金属ステントの移植、および4)6〜9ヶ月目に冠動脈造影を行う有用性。地元の倫理委員会は、この研究プロトコルを承認し、総ての患者は文書によるインフォームド・コンセントを与えた。
【0043】
研究に登録された434名の患者の中、284名(65%)が6〜9ヶ月目の冠動脈造影による追跡調査を受けた。これらの284名の患者が患者の母集団を表している。
【0044】
生化学的測定
血中総コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)およびトリグリセリドは、酵素法で測定した。評価した糸球体濾過量(eGFR)は、腎疾患における食事療法のレベル調節変更(MDRD)式を適用することによって計算した。慢性腎疾患は、eGFR<60ml/分/1.73m2として定義した。
【0045】
血液サンプリング
静脈血試料を、PCI前に患者から採取した。総ての試料はクエン酸三ナトリウムコーティングした試験管に集め、直ちに氷に入れた。採取の1時間以内に、血液試料を4000rpm(1400g)で20分間遠心分離し、血漿を採取して、バッチ分析まで−80℃で分割保管した。
【0046】
経皮的冠状血管形成術
患者は、最初および最後の血管造影図の前にイソソルビドジニトレート(0.1〜0.3mg)の冠状動脈内投与を受け、血管をできるだけ拡張した。血管造影は、自動コンピューター利用システム(QCA−CMS version3.0、MEDIS、ライデン、オランダ)を用いて測定した。追跡の再狭窄は、ステント後6〜9ヶ月目の最小管腔直径(MLD)を測定することによって分析した。更に、下記の変数を評価した:処置後のMLDから処置前のMLDを引いたものと定義される初期獲得(acute gain);処置後のMLDから追跡時のMLDを引いたものと定義される晩期損失(late loss);および晩期損失対初期獲得の平均比率と定義される損失係数(loss index)。再狭窄は、追跡時の狭窄の程度が≧50%と定義された。
【0047】
統計分析
連続変数は、平均値±標準偏差(SD)として表される。2群(血管造影による病変の進行によって定義される)の連続値の差は、適宜Studentのt検定またはMann−WhitneyのU検定によって行った。カテゴリー変数は、χ2検定によって分析した。検定は、二方向であった。データーは、SPSS Windows用、version13.0(SPSS Inc.,シカゴ、イリノイ)で解析した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
本研究では、増殖アクチベーター(サイクリンA1、E1、B1およびD1)(図1参照)および細胞増殖抑制因子(p21、p27、p57およびp53)(図2参照)を含む細胞周期を調節する8つのヒト遺伝子に局在化した47のSNPを分析した。
【0051】
図1は、細胞周期アクチベーター遺伝子およびそれらが括弧内でコードするタンパク質:CCNA1(サイクリンA1)、CCNE1(サイクリンE1)、CCNB1(サイクリンB1)およびCCND1(サイクリンD1)において検討した25のSNPを示している。「多型」欄は、位置および前記多型に結合した対立遺伝子を含む。多型の位置は、ヌクレオチド塩基+1として同定される遺伝子転写の開始に関して示されている。多型は、それが転写の開始前に見出されるときには負の数で示され、それが後の位置に局在しているときには正の数で示される。「局在化」欄は、遺伝子の機能的構造に関する多型の位置を表している。更に詳細には、「プロモーター領域」局在化は、多型が遺伝子の転写を調節する領域に局在化していることを示し、転写の開始前に局在化している(+1と表示)。「エクソン」局在化は、多型が遺伝子のコード領域に局在化していることを示している。「イントロン」局在化は、多型が遺伝子の非コードイントロン領域に局在化していることを示している。UTR3’およびUTR5’局在化は、多型がそれぞれ領域3’または5’の非翻訳配列に局在化していることを示している。
【0052】
図2は、細胞周期阻害遺伝子およびそれらが括弧内でコードするタンパク質CDKN1A(p21 Kip1/Cip1)、CDKN1B(p27 Kip1/Cip1)、CDKN1C(p57 Kip1/Cip1)およびTP53(p53)において検討した22のSNPを示している。
【0053】
47のSNP(以下に記載)の遺伝子型決定は、ステント移植による血行再建を受けた284名の患者のうち、168名は再狭窄に罹っておらず、116名はこの疾患(再狭窄は、血管の管腔の内径が、介入後6〜9ヶ月期間に行った血管造影評価後に介入部分に隣接する部位の管腔に比較して50%以上の減少と定義する)に罹っている者の循環白血球から精製したDNAの試料で行った。再狭窄を発生するリスクを増加する可能性がある多型を同定するための統計分析は、SNPtatプログラムを用いるロジスティック回帰分析によって行った(Sole, Guino, Valls, Iniesta and Moreno,「SNPStats:関連度研究の分析のためのウェブツール(SNPStats: a web tool for the analysis of association studies)」, Bioinformatics 2006, 22, 1928-9)。分析した全部で47のSNPから、再狭窄のリスクが一層大きい統計的に有意な関連性は、CCNB1遺伝子におけるSNP1〜4のrs164390、rs350099、rs350104、rs875459;CCNA1遺伝子におけるSNP5のrs2282411、およびCDKN1A遺伝子におけるSNP6のrs733590にのみ見られた。
【0054】
図3は、ステント移植後に再狭窄を発生するリスクと統計的に有意な関連性を示した6つのSNPをまとめている。
【0055】
図4は、ステント移植後の再狭窄のリスクと関連性を示したSNPのロジスティック回帰分析の結果を示している。分析は、SNPStatソフトウェア(Sole, Guino, Valls, Iniesta and Moreno,「SNPtats:関連度研究の分析のためのウェブツール(SNPStats: a web tool for the analysis of association studies)」, Bioinformatics 2006, 22, 1928-9)を用いて行い、年齢および性別によって補正した。
【0056】
結果は、SNP1に関しては、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(C/C)またはヘテロ接合(C/T)のC対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生するリスクが有意な1.74倍の増加となることを示した(図4参照)。
【0057】
SNP2に関しては、ホモ接合(C/C)のC対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(T/C)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する引き起こす可能性リスクを有意な1.77倍の増加とする(図4参照)。
【0058】
SNP3に関しては、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な1.81倍の増加とする(図4参照)。
【0059】
SNP4に関しては、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子を有する個体は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子を有する個体と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な1.78倍の増加とする。SNP4に適用したロジスティック回帰分析は、下記の因子、すなわち再狭窄、性別、年齢、および分析した患者の家族歴を考慮した(図4参照)。
【0060】
共優性モデルのSNP5に関しては、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(C/T)におけるT対立遺伝子の存在は、ホモ接合(C/C)のC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性をそれぞれ有意な1.26倍および3.10倍に増加する。優性モデルでは、ホモ接合(G/G)のG対立遺伝子の存在は、ホモ接合(T/T)またはヘテロ接合(G/T)のT対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性の有意な1.78倍への増加と関連している。SNP5に適用したロジスティック回帰分析は、下記の因子、すなわち再狭窄、性別、年齢、および分析した患者の家族歴を考慮した(図4参照)。
【0061】
共優性モデルのSNP6に関しては、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子の存在は、ヘテロ接合(C/T)またはホモ接合(C/C)におけるC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性をそれぞれ有意な1.92倍および2.38倍に増加する。優性モデルでは、ホモ接合(T/T)のT対立遺伝子の存在は、ヘテロ接合(T/C)またはホモ接合(C/C)のC対立遺伝子と比較して再狭窄を発生する可能性を有意な2.08倍に増加する(図4参照)。
【0062】
遺伝子分析
多型の検出および試料の遺伝子型解析のため、LightCycler480ScanningソフトウェアおよびLightCycler480HighResolutionMeltingMasterキットを用いた。
【0063】
キットの混合物は、DNAの二本鎖に均質に結合して、その化学特性により増幅反応を阻害することなく高濃度で用いることができる蛍光体LightCycler480ResoLightを含んでいた。
【0064】
PCR反応サイクル中に、増幅断片の形成を観察した。配列に変動を有する試料は、融解曲線の相違によって識別した。この手法を用いることによって、ホモ接合体およびヘテロ接合体試料間と野生および突然変異ホモ接合体間とで区別することかできた。
【0065】
プライマーのデザイン
遺伝子当たりのPCR反応に用いるプライマーのそれぞれの対のデザインは、Primer3プログラム(Howard Hughes Medical Institute and National Institutes of Health, National Human Genome Research Institute http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて行った(表3参照)。
【0066】
プライマーのデザインにおいて(表3参照)、融解温度は約62℃であり、アンプリコンのサイズは100〜250bpであった。
【0067】
【表3】
【0068】
増幅反応
増幅反応のため、ロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science)製のHighResolution the LightCycler(商標)480Masterキットを用いた。2x混合物は、MgCl2を含まない反応緩衝液中にFastStartTaqポリメラーゼDNAおよび蛍光体LightCycler480ResoLightを含んでいた。この混合物は、GC含量の高い配列の増幅を向上させるためのDMSO付加と適合しうる。
【0069】
FastStartTaqポリメラーゼDNAは、化学修飾された熱に安定な酵素であり、75℃までの温度では活性を示さない。この酵素は高温でのみ活性であり、プライマーは配列に非特異的に結合することはできない。
【0070】
a.試薬および容積
表4に、それぞれの増幅反応に用いた試薬、初期および最終濃度および必要容積を示す。
【0071】
【表4】
【0072】
b.反応条件
表5に、様々なパラメーターの最適化後の増幅反応の条件を示す。
【0073】
【表5】
【0074】
検定の推定時間は、PCRについては75分間であり、変性曲線(高解像度融解)については15分間であった。反応は、通常のサーマルサイクラーで行うことができ、結果はLightCycler480システムで解析した。
【0075】
多型SNP1、SNP3およびSNP4の特定の場合には、それぞれの多型について野生型ホモ接合体を有する標準試料1μLを、増幅反応後で変性段階の前にそれぞれのウェルに加えた。この方法で、2つのホモ接合体を明らかに区別することができる。
【0076】
結果の分析
LightCycler(商標)480GeneScanningソフトウェアを用いて、LightCycler(商標)480HighResolutionMeltingシステムを用いて得られる実験データーの解析によって試料のヘテロ二本鎖構造を決定した。
【0077】
試料をPCRによって増幅し、変性して融解曲線を得た後、ソフトウェアによってそれらを分析し、同じような融解曲線を有する試料を分類した。
【0078】
図12および13に、SNP1およびSNP2の融解曲線をそれぞれ示す。両多型を含むCCNB1遺伝子の2つの断片を、「LightCycler480HighResolutionMeltingMaster」キットを用いてヒトゲノムDNAの様々な試料中で増幅し、「LightCycler480Scanning」ソフトウェアによって分析した。このソフトウェアは、PCR産物の配列の変動間の差から生じる融解曲線の差を検出し、それぞれの遺伝子型によって試料を分類する。両方の図では、それぞれの遺伝子型は明確に識別され、特にホモ接合体変異体(赤および緑)が識別される。パネル(a)では、正常および(温度によって変化する)多型の存在によって変更された曲線の表示を見ることができ、一方、パネル(b)は、正常曲線と(温度によって変化する)多型の存在によって変更された曲線との差を表している。
【0079】
図14、15、16および17は、検討を行った多型の残りのもの、すなわちCCNB1遺伝子の多型SNP3(図14)およびSNP4(図15)、CCNA1遺伝子の多型SNP5(図16)、およびCDKN1A遺伝子のSNP6(図17)について、前節で記載したのと同じ方法を用いて、標準化融解曲線を示している。
【0080】
多型SNP1およびSNP2に関連した機能研究
多型rs350099(SNP1)およびrs350104(SNP2)は、ヒトCCNB1遺伝子のプロモーター領域に局在化しているので、本発明者らは、ステント移植後に再狭窄を発生する一層大きなリスクと統計的に有意な関連性を示すこれらの多型の対立遺伝子が、転写アクチベーターおよび/または抑制因子の結合を促進し、これらは次に遺伝子の転写活性を修飾することができるという可能性を検討した。
【0081】
Transfac(商標)7.0データーベースの使用は、それぞれ多型SNP1およびSNP2のTおよびC対立遺伝子を含むヌクレオチド配列のNF−YおよびAP−1結合部位の存在を予測した。これらの可能性を、EMSA法を用いて試験した。
【0082】
例えば、SNP1のT対立遺伝子を有する配列の分析は、転写因子NF−Yの結合に対して特異性を有するCCAAT配列の存在を予測した。しかしながら、SNP1のC対立遺伝子についての同じ種類の分析では、前記結合部位を予測しなかった。
【0083】
これらの予測により、検討で得られたデーターから、SNP1にC対立遺伝子と比較してT対立遺伝子を含む配列にNF−Y因子が効率的かつ特異的に結合することが確認された(図7〜9参照)。
【0084】
一方、SNP2のC対立遺伝子を有する配列の分析は、AP−1結合部位の存在を予測した。しかしながら、SNP2のT対立遺伝子についての同じ種類の分析では、このような結合部位を予測しなかった。この検討で得られたデーターから、C対立遺伝子がSNP2に含まれるときには、同じ多型のT対立遺伝子を含む配列と比較して一層大きなAP−1DNA結合活性が確認された(図10参照)。
【0085】
電気泳動移動度シフト分析(EMSA)
プローブの放射能標識を、二本鎖オリゴヌクレオチド1pmolを最終容積10μLで65℃にて10分間インキュベーションして行い、可能な二次構造を不安定化した。次いで、これを氷中で素早く冷却し、T4−ポリヌクレオチドキナーゼ1μLと、[γ32P]−dATP(10mCi/ml)1μLとを加えた。標識反応を、37℃にて30分間インキュベーションした。反応を氷中で停止し、プローブをSephadexG−50カラムで精製し、最後に、最終容積を100μLとした。
【0086】
図6は、EMSA分析のプローブとして用いた二本鎖オリゴヌクレオチドの詳細なリストを示している。「配列」欄は、それぞれのプローブの2本の相補性鎖の配列を示している。プローブに含まれる配列の詳細な説明を、「説明」欄に示す。NF−YおよびAP−1に対する予測および共通結合配列は太字で強調し、SNPの対立遺伝子は白箱に囲まれて示されている。
【0087】
ヒト細胞の可溶性核画分のタンパク質(3μg)を、氷中で、EMSA緩衝液(20mMTris−HCl pH:7.8、5%グリセロール、3mMMgCl2、60mMKCl、0.5mMEDTA、0.1mMDTT、50μg/mlポリ(d(I−C))の最終容積17μLで10分間予備インキュベーションした。次いで、放射性標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ1μLを加え、氷中で30分間インキュベーションした。最後に、ローディングバッファー(loading buffer)1μLをそれぞれの試験管に加え、試料を5%未変性ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動によって分離した。分離は、TBE0.5X緩衝液(5Xストックから調製)で調製した5%ポリアクリルアミドゲル(80:1,アクリルアミド:ビスアクリルアミド)中で、TBE0.5x緩衝液中において200mVで約2時間行った。ゲルを80℃の温度で2時間真空乾燥し、オートラジオグラフィーによって分析した(図7〜10参照)。競合アッセイのため、過剰の未標識二本鎖オリゴヌクレオチドを、放射性標識プローブの添加前の予備インキュベーション段階中に加えた。スーパーシフトアッセイのため、特異抗体(抗−NF−YB Santacruz Biotechnology,参照番号sc−13045x)または非特異抗体(抗−CREB−II, Santa Cruz Biotechnology,参照番号sc−180x)を、放射性標識プローブの添加前に核抽出物と共に30分間インキュベーションした。
【0088】
図7は、EMSAアッセイを用いるHeLa細胞中のSNP1−Cプローブ(SNP1のC対立遺伝子を有する多型変異体)にではなく、SNP1−Tプローブ(SNP1のT対立遺伝子を有する多型変異体)に関連したNF−Y活性の同定を示す。このアッセイは、プローブであるNF−Ycons、SNP1−TおよびSNP1−Cであって放射能標識したもの10fmol、およびHeLa細胞の可溶性核画分の抽出物(それぞれタンパク質3μg、12μgおよび12μg)のインキュベーションによって行った。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。結合反応コントロールは、核抽出物の非存在下でインキュベーションした(レーン1、5および9)。スーパーシフトアッセイは、抗−NF−YBおよび抗−CREB−II抗体(後者は特異性コントロールとして使用)と共に30分間予備インキュベーションによって行った。
【0089】
図8は、SNP1−Cではなく過剰のSNP1−Tプローブが、NF−YconsプローブのNF−Y配列に関連したDNA結合活性とどのように競合するかを示している。競合アッセイは、NF−Ycons放射性標識プローブ10fmolと、HeLa細胞の可溶性核画分のタンパク質抽出物3μgおよび過剰量の放射能標識していないプローブ(「コールド」プローブ)のインキュベーションによって行ったEMSA法を用いて行った。競合アッセイに用いた未標識二本鎖オリゴヌクレオチド(過剰量は括弧内に示す)は、NF−Ycons(レーン3:100x)、NF−Ymut(レーン4:100x)、SNP1−T(レーン5:100x;レーン6:300x;レーン7:900x)、およびSNP1−T(レーン8:100x;レーン9:300x;レーン10:900x)である。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。
【0090】
図9は、SNP1−Cではなく過剰のSNP1−Tプローブが、ヒト遺伝子プロモーターCCNB1の−30/−10領域のNF−Y配列に関連したDNA結合活性とどのように競合するかを示している。更に詳細には、この図は、CCNB1プロモーターの−27/−17領域のNF−Yに対する結合配列活性の分析を示している(NF−Yプローブ(−30/−10)は、過剰の「コールド」プローブSNP1−TおよびSNP1−Cと競合した。競合研究は、放射能標識したNF−Yプローブ(−30/−10)10fmol、HeLa細胞の可溶性核画分のタンパク質抽出物8μg、および過剰の「コールド」プローブNF−Y(−30/−10)(レーン3:20x;レーン4:60x)、SNP1−T(レーン5:20x;レーン6:60x)およびSNP1−C(レーン7:20x;レーン8:60x)をインキュベーションするEMSA法によって行った。試料をポリアクリルアミドゲルで分離し、DNA−タンパク質複合体をオートラジオグラフィーによって可視化した。
【0091】
図10は、SNP2−Tプローブ(SNP2のT対立遺伝子を有する多型変異体)と比較して、過剰のSNP2−Cプローブ(SNP2のC対立遺伝子を有する多型変異体)が、どのようにして共通AP−1プローブ(AP−1cons)に関連したDNA結合活性と一層効率的に競合するかを示している。このアッセイは、ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS)の可溶性核抽出物と放射性標識AP−1consプローブをインキュベーションするEMSA法によって行った。競合実験は、下記の未標識二本鎖オリゴヌクレオチド、すなわちAP−1プローブ(25倍過剰量,レーン3)、SNP2−C(25倍〜200倍,レーン4〜7)、およびSNP2−T(25倍〜200倍,レーン8〜11)をインキュベーションすることによって行った。この図は、総数が5つからの代表的EMSAを示す。それぞれのEMSAにおけるDNA−タンパク質複合体の相対バンド強度を、コンピューター処理によるイメージ分析システム(「Metamorphソフトウェア」)によって独立して分析し、値は平均値±SEMとしてグラフに表す。結果の統計分析は、片側ANOVAおよびBonferroni post−hoc検定によって行った。コントロール(コンペティターなし)に対する比較は、*p<0.05,**p<0.01として表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、a)個体の試料からゲノムDNAを得て、b)前記試料を分析して、図3に定義されているCCNB1遺伝子のSNP1、SNP2、SNP3およびSNP4から選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定することを含んでなり、SNP1のTT遺伝子型、SNP2のCC遺伝子型、SNP3のGG遺伝子型およびSNP4のGG遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、方法。
【請求項2】
段階b)が多型SNP1およびSNP2の遺伝子型を決定することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNA試料が唾液、血液、または血液から精製した白血球から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
図3に定義されているCCNA1遺伝子の多型SNP5の遺伝子型を決定することを更に含んでなり、共優性モデルにおけるTTまたはTC遺伝子型、または優性モデルにおけるGG遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
図3に定義されているCDKN1A遺伝子の多型SNP6の遺伝子型を決定することを更に含んでなり、TT遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
SNP1、SNP2、SNP3、SNP4およびそれらの組み合わせから選択されるCCNB1遺伝子の少なくとも1つのSNPの遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドと試薬とのセットを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項7】
SNP1の遺伝子型の決定が、配列番号7および8の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
SNP2の遺伝子型の決定が、配列番号9および10の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
SNP3の遺伝子型の決定が、配列番号11および12の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項10】
SNP4の遺伝子型の決定が、配列番号13および14の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項11】
CCNA1遺伝子のSNP5の遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドを更に含んでなる、請求項6に記載のキット。
【請求項12】
SNP5の遺伝子型の決定が、配列番号15および16の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
CDKN1A遺伝子のSNP6の遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドを更に含んでなる、請求項6に記載のキット。
【請求項14】
SNP6の遺伝子型の決定が、配列番号17および18の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
図3に定義されている多型SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、および場合によっては、SNP5およびSNP6の1つ以上の、ステント移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとしての使用。
【請求項1】
ステントの移植後に再狭窄を発生する個体のリスクを決定する方法であって、a)個体の試料からゲノムDNAを得て、b)前記試料を分析して、図3に定義されているCCNB1遺伝子のSNP1、SNP2、SNP3およびSNP4から選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定することを含んでなり、SNP1のTT遺伝子型、SNP2のCC遺伝子型、SNP3のGG遺伝子型およびSNP4のGG遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、方法。
【請求項2】
段階b)が多型SNP1およびSNP2の遺伝子型を決定することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNA試料が唾液、血液、または血液から精製した白血球から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
図3に定義されているCCNA1遺伝子の多型SNP5の遺伝子型を決定することを更に含んでなり、共優性モデルにおけるTTまたはTC遺伝子型、または優性モデルにおけるGG遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
図3に定義されているCDKN1A遺伝子の多型SNP6の遺伝子型を決定することを更に含んでなり、TT遺伝子型の存在が再狭窄を発生するリスクを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
SNP1、SNP2、SNP3、SNP4およびそれらの組み合わせから選択されるCCNB1遺伝子の少なくとも1つのSNPの遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドと試薬とのセットを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項7】
SNP1の遺伝子型の決定が、配列番号7および8の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
SNP2の遺伝子型の決定が、配列番号9および10の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
SNP3の遺伝子型の決定が、配列番号11および12の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項10】
SNP4の遺伝子型の決定が、配列番号13および14の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項6に記載のキット。
【請求項11】
CCNA1遺伝子のSNP5の遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドを更に含んでなる、請求項6に記載のキット。
【請求項12】
SNP5の遺伝子型の決定が、配列番号15および16の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
CDKN1A遺伝子のSNP6の遺伝子型の決定に適当なオリゴヌクレオチドを更に含んでなる、請求項6に記載のキット。
【請求項14】
SNP6の遺伝子型の決定が、配列番号17および18の配列のオリゴヌクレオチドの対によって行われる、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
図3に定義されている多型SNP1、SNP2、SNP3、SNP4、および場合によっては、SNP5およびSNP6の1つ以上の、ステント移植後に再狭窄を発生する個体のリスクマーカーとしての使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2012−521744(P2012−521744A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550613(P2011−550613)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070102
【国際公開番号】WO2010/097495
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(509265151)
【氏名又は名称原語表記】FINA BIOTECH, S.L.U.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070102
【国際公開番号】WO2010/097495
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(509265151)
【氏名又は名称原語表記】FINA BIOTECH, S.L.U.
【Fターム(参考)】
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