説明

再生された切断刃及び剪断式破砕機

【課題】 切断刃を再生するための費用及び手間を低減して効率良く再生することができ、剪断式破砕機に取り付けて使用すると、剪断式破砕機の破砕効率を新品の切断刃に近付けることができる再生された切断刃を提供すること。
【解決手段】 固定部125と、この固定部125から外向きに突出する刃先部127とを備え、刃先部127は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部109を有し、刃先部127を含む側面外縁部にサイドエッジ部110を有し、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成され、側面には、サイドエッジ部110から回転の中心側又は中心方向に向かって延びる被破砕物のすり抜け防止肉盛り溶接部111、112、113が3つ再生処理によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断式破砕機に用いられる再生された切断刃及び剪断式破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、木片、紙、金属、ゴム、繊維、及び皮革等の固形状の被破砕物を剪断破砕する剪断式破砕機が知られている。例えば、この種の剪断式破砕機として、本出願人が先に出願した剪断式破砕機がある(特許文献1参照)。
【0003】
図11の剪断式破砕機を示す横断面図と、図12に示すC−C断面図とに示すように、この剪断式破砕機100は、回転軸101、102の軸方向に、複数の回転刃103がスペーサ104を挟んで交互に設けられている。スペーサ104は、図11に示すように、回転刃103の基部を軸方向に位置決めできる外径に形成され、これによって、回転刃103を軸方向に位置決めして着脱自在に取り付けている。
【0004】
これらの回転刃103は、図11に示すように、回転軸101、102に着脱自在に取り付けられている刃台部106と、この刃台部106の周囲を取り囲むように着脱自在に取り付けられている分割式の切断刃105とを有しており、回転方向R側に回転する回転刃103の互いに対向する側面間には、例えば、0.5mm〜1mm程度の軸方向隙間を設けた状態で互いの切断刃105が噛合うようにオーバーラップした状態で配置されている。
【0005】
この回転刃103の外周に設けられた切断刃105は、被破砕物120を引き込むとともに、互いに対向する回転刃103どうし間での剪断作用によって被破砕物120を破砕する。
【0006】
また、図13に示すように、切断刃105の取付面には係合段部107が設けられており、この係合段部107が刃台部106に設けられた係合突起108と係合して破砕反力を受けるようになっている。この分割式の切断刃105は、外向きに突出する刃先部127の回転方向に尖った先端エッジ部109と、側面外縁部に沿って形成されたサイドエッジ部110(側縁)とを備えている。
【0007】
これらエッジ部109、110は、図14(a)、(b)に示すように、剪断破砕によって早期摩耗するが、これらのエッジ部109、110を有する切断刃105を分割式とすることにより、エッジ部109、110が磨耗しても切断刃105のみを交換できるようにしている。
【0008】
ところで、この種の剪断式破砕機100における切断刃105は、先端エッジ部109で被破砕物の引き込み及び破砕を行い、この先端エッジ部109及びサイドエッジ部110で剪断破砕を行うため、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110に早期摩耗が生じる。図14(a)、(b)に示すMは、磨耗した部分である。
【0009】
この早期摩耗としては、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110が丸味を帯びた状態(ラウンド状)となる摩耗であり、この摩耗が生じると破砕性能が低下して破砕効率が落ちてしまう。また、被破砕物によってはエッジ部109、110に欠損等が生じることがあり、この欠損が生じても、破砕性能が低下して破砕効率が低下してしまう。
【0010】
そして、このように摩耗が生じると破砕性能が低下して破砕効率が落ちてしまうのは、図14(b)に示すように、互いに隣合う切断刃105の側面と側面との隙間S1が、磨耗した部分Mの2倍の寸法だけ広がり、この広がった隙間S1に被破砕物が入り込んですり抜けて行くからである。
【0011】
そのため、このような摩耗・欠損(これら「摩耗」と「欠損」とを総称して「磨損」と言う。)が発生した場合には、一般的に、その都度新しい切断刃105に交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−323232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記したような分割式の切断刃105を採用している破砕機100であっても、例えば1台で数十個の切断刃105が使用されており、交換のために多くの費用と労力を要する。
【0014】
しかも、このような切断刃105は、耐摩耗性を高めるために全体が合金工具鋼のような高価な材料で製造されており、上記したように多くの切断刃105が使用されている剪断式破砕機100の場合には、その切断刃105の全てを新品に交換しようとすると多大な費用を要する。また、資源の有効活用にならない。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、切断刃を再生するための費用及び手間を低減して効率良く再生することができ、剪断式破砕機に取り付けて使用すると、剪断式破砕機の破砕効率を新品の切断刃に近付けることができる再生された切断刃及びそれを使用する剪断式破砕機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る再生された切断刃は、固定部と、この固定部から半径方向外向きに突出する刃先部とを備え、前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有し、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成され、側面には、前記サイドエッジ部から前記回転の中心側又は中心方向に向かって延びる被破砕物のすり抜け防止肉盛り溶接部が1又は2以上再生処理によって形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る再生された切断刃によると、この再生された切断刃と、相手側の切断刃との間に被破砕物を挟み込んで、この被破砕物を、順次剪断破砕するように使用することができる。そして、再生された切断刃の側面のうち、すり抜け防止肉盛り溶接部が形成されていない部分では、この切断刃の摩損によって刃幅が小さくなっているが、すり抜け防止肉盛り溶接部が形成されている部分では、刃幅をこのすり抜け防止肉盛り溶接部の肉盛り高さ分だけ大きくすることができる。これによって、被破砕物を剪断破砕するときに、再生された切断刃の側面のうちすり抜け防止肉盛り溶接部と、この側面と対向して配置される相手側の切断刃の側面との間の隙間の寸法を、切断刃が新品の場合と同程度に近付けることができる。
【0018】
従って、被破砕物を剪断破砕するときに、再生された切断刃の側面と、相手側の切断刃の側面との間の隙間から、被破砕物、特に長物が破砕されずにすり抜けて行くことを抑制することができる。
【0019】
また、再生された切断刃の先端エッジ部及びサイドエッジ部は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成されているので、破砕能力を新品の切断刃に近付けることができる。
【0020】
この発明に係る再生された切断刃は、前記すり抜け防止肉盛り溶接部が、前記刃先部の側面を通るように形成されているものとすることができる。
【0021】
この刃先部は、被破砕物を剪断破砕する部分であり、剪断破砕が行なわれるときに、この再生された切断刃の刃先部の側面と、この側面と対向して配置される相手側の切断刃の側面との間の隙間に被破砕物が入り込んですり抜けようとするが、刃先部の側面を通るように形成されたすり抜け防止肉盛り溶接部によって、被破砕物がこの隙間に入り込んですり抜けることを効果的に抑制することができる。
【0022】
この発明に係る再生された切断刃は、前記すり抜け防止肉盛り溶接部における前記再生された切断刃の刃幅が、新品の切断刃の刃幅と略同一であるものとすることができる。
【0023】
このようにすると、被破砕物を剪断破砕するときに、再生された切断刃の側面と、相手側の切断刃の側面との間の隙間から、被破砕物、特に長物が破砕されずにすり抜けて行く可能性を、新品の切断刃を使用した場合と同程度に低く抑えることができる。
【0024】
この発明に係る再生された切断刃は、前記再生された切断刃の側面が、当該再生された切断刃をその回転中心の軸方向の位置決めをするスペーサに当接するスペーサ当接部を有し、前記すり抜け防止肉盛り溶接部が、前記スペーサ当接部と間隔を隔てて形成されているものとすることができる。
【0025】
このようにすると、摩損した切断刃の側面に対してすり抜け防止肉盛り溶接部を溶接によって形成したときに、この溶接の熱によってスペーサ当接部が変形したり、この肉盛り溶接部の一部がスペーサ当接部の表面に形成されることを防止することができる。これによって、この再生された切断刃を剪断式破砕機に取り付けるときに、スペーサとスペーサとの間に形成された所定寸法の隙間に、この再生された切断刃をスムースに装着して取りつけることができる。また、再生された切断刃をその回転中心の軸方向の位置決めを、スペーサによって正確に行うことができる。
【0026】
本発明に係る剪断式破砕機は、この発明に係る再生された切断刃が、刃台部に着脱自在に複数取り付けられて成る回転刃を備え、この回転刃が第1及び第2のそれぞれの回転軸に2以上ずつ設けられ、前記回転刃を両側から挟み込むように、スペーサが前記第1及び第2のそれぞれの回転軸に設けられ、前記第1回転軸に設けられた第1回転刃と、前記第2回転軸に設けられた第2回転刃との間で被破砕物を剪断破砕することを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係る剪断式破砕機によると、第1及び第2回転軸を回転させることによって、第1回転刃と、第2回転刃との間で被破砕物を剪断破砕することができる。この剪断式破砕機に設けられている再生された切断刃は、本発明に係る再生された切断刃と同様に作用する。
【0028】
この発明に係る再生された剪断式破砕機において、回転する前記第1回転刃と前記第2回転刃との間で被破砕物を剪断破砕するときに、前記第1回転刃が備えている再生された第1切断刃の前記すり抜け防止肉盛り溶接部と、前記第2回転刃が備えている再生された第2切断刃の前記すり抜け防止肉盛り溶接部とが、互いに対向する状態となるように、それぞれの前記すり抜け防止肉盛り溶接部が形成されているものとすることができる。
【0029】
このようにすると、剪断破砕が行なわれるときに、この再生された第1切断刃の側面と、この側面と対向して配置される再生された第2切断刃の側面との間の隙間に被破砕物が入り込んですり抜けようとするが、再生された第1切断刃のすり抜け防止肉盛り溶接部と、再生された第2切断刃のすり抜け防止肉盛り溶接部とが、互いに対向する状態となって、この隙間を当該一対のすり抜け防止肉盛り溶接部によって狭めることができる。これによって、被破砕物がこの隙間に入り込んですり抜けることを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係る再生された切断刃及び剪断式破砕機によると、被破砕物を剪断破砕するときに、再生された切断刃の側面のうち、すり抜け防止肉盛り溶接部と、相手側の切断刃の側面との間の隙間から、被破砕物が破砕されずにすり抜けて行くことを抑制することができる構成としたので、この再生された切断刃を剪断式破砕機に取り付けて使用すると、又は再生された切断刃が取り付けられた剪断式破砕機によると、剪断式破砕機の破砕効率を、新品の切断刃を剪断式破砕機に取り付けたときの破砕効率に近付けることができる。
【0031】
そして、摩損した切断刃の側面の全体にではなく、側面の一部にすり抜け防止肉盛り溶接部を形成することによって、摩損した切断刃を再生するための費用、時間、及び手間の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る再生された切断刃を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す再生された切断刃を示す側面図、(b)は、図1(a)に示す再生された切断刃を備える回転刃どうしの隙間を示すA−A方向から見た断面図である。
【図3】図1に示す再生された切断刃を備える回転刃の側面図である。
【図4】(a)は、図3に示す回転刃の正面図、(b)は、図3に示す回転刃のB−B断面図である。
【図5】図3に示す回転刃の斜視図である。
【図6】図3に示す2つの回転刃が噛合うようにオーバーラップした状態を示す側面図である。
【図7】(a)〜(b)は、図1に示す再生された切断刃の製造方法を示す斜視図である。
【図8】(a)〜(b)は、図7に続く再生された切断刃の製造方法を示す斜視図である。
【図9】(a)〜(b)は、図8に続く再生された切断刃の製造方法を示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る切断刃が噛合うようにオーバーラップした状態を示す側面図である。
【図11】従来の剪断式破砕機を示す横断面図である。
【図12】図11に示す剪断式破砕機のC−C断面図である。
【図13】新品の回転刃を示す斜視図である。
【図14】(a)は、磨耗した回転刃を示す斜視図、(b)は、図14(a)に示す磨耗した切断刃を備える回転刃どうしの隙間を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る再生された切断刃、及びこれを備える剪断式破砕機の一実施形態を、図1〜図9等を参照して説明する。図13に示す新品の切断刃105を備える回転刃103は、図11及び図12に示す剪断式破砕機100に取り付けて、或る一定時間以上使用すると、先端エッジ部109、及びサイドエッジ部110が磨耗して破砕性能が低下し、その結果、破砕効率が低下してしまうのが現状である。
【0034】
そして、図14(a)、(b)に示すように、切断刃105の先端エッジ部109及びサイドエッジ部110が磨耗によって丸味を帯びた状態となり、エッジ部109、110に欠損が生じることもある。
【0035】
このように、特にサイドエッジ部110が磨耗して、図14(b)に示す切断刃105の刃幅W1の寸法が小さくなると、剪断断式破砕機100に取り付けられているこの磨耗した切断刃105の互いに対向する側面間には、規定以上の隙間S1が形成されることになり、破砕効率が低下してしまうことになる。
【0036】
そこで、切断刃の再生方法及びその再生設備(図示せず)を使用して、このように磨耗した切断刃105の先端エッジ部109、及びサイドエッジ部110に対して補修(再生処理)を行なうことによって、磨耗した切断刃105を再生して再利用できるようにすることができる。このようにして再生された切断刃105が、本発明に係る再生された切断刃105(図1参照)である。
【0037】
また、図13に示す回転刃103が備える新品の切断刃105は、半径方向外向きに突出する刃先部127の回転方向R側に尖った先端エッジ部109と、側面外縁部に沿って形成されたサイドエッジ部110とを備えている。そして、切断刃105の取付面(固定部125の下面)には係合段部107が設けられており、この係合段部107が、刃台部106に設けられた係合突起108と係合して破砕反力を受けるようになっている。
【0038】
これらエッジ部109、110は、図14(a)、(b)に示すように、剪断破砕によって摩耗するが、これらのエッジ部109、110を有する切断刃105は、分割式であるので、エッジ部109、110が磨耗しても、刃台部106を交換せずに切断刃105のみを交換できるようになっている。
【0039】
また、図13に示す126は、ボルト挿通孔である。このボルト挿通孔126は、切断刃105を刃台部106に対して着脱自在に取り付けるための固定ボルトを挿通するためのものである。
【0040】
次に、本発明に係る図1に示す再生された切断刃105を説明する。この再生された切断刃105は、図14に示す回転刃103が備える磨耗した切断刃105に対して再生処理を施したものである。
【0041】
図1及び図2に示すように、再生された切断刃105は、その先端エッジ部109及びサイドエッジ部110は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成されている。
【0042】
そして、この再生された切断刃105の側面には、サイドエッジ部110から回転の中心方向(又は回転の中心側)に向かって延びる被破砕物120のすり抜け防止肉盛り溶接部111、112、113が1又は2以上、例えば3つ肉盛り溶接等によって再生処理されて形成されている。この回転の中心方向とは、図6に示すように、この再生された切断刃105を備える回転刃103の回転の中心方向である。
【0043】
また、図1及び図2に示すように、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113は、切断刃105の側面に、帯状に所定の長さ及び幅で形成されている。この実施形態では、第1すり抜け防止肉盛り溶接部111が、刃先部127の側面を通り、かつ、先端エッジ部109の近傍も通る位置に形成されている。そして、第2すり抜け防止肉盛り溶接部112は、刃先部127の掬い面127aを基準にして、第1すり抜け防止肉盛り溶接部111と反対側の位置に形成されている。また、第3すり抜け防止肉盛り溶接部113は、刃先部127の掬い面127aを基準にして、第1すり抜け防止肉盛り溶接部111よりも掬い面127aから反回転方向に向かって離れる位置に形成されている。
【0044】
更に、図2(b)に示すように、第1〜第3すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113における再生された切断刃105の刃幅W2は、新品の切断刃105の刃幅W2と略同一となるように形成されている。そして、同様に、サイドエッジ部110における再生された切断刃105の刃幅W2は、新品の切断刃105の刃幅W2と略同一となるように形成されている。
【0045】
そして、図2(a)、(b)に示すように、再生された切断刃105の側面は、当該再生された切断刃105をその回転中心の軸方向(回転軸101、102の軸方向)の位置決めをするスペーサ104に当接するスペーサ当接部114を有している。そして、第1〜第3すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113は、スペーサ当接部114と間隔を隔てて形成されている。
【0046】
なお、このスペーサ当接部114の表面は、スペーサ104と当接しており、被破砕物120と接触することが無い部分であるので、新品の切断刃105の刃幅W2と同一の刃幅W2となっている。
【0047】
上記のように構成された再生された切断刃105は、図3〜図5に示すように、刃台部106に対して例えば5つ着脱自在にボルトで取り付けられ、このようにして回転刃103を製作することができる。この回転刃103は、図11に示すように、従来と同様に、第1及び第2のそれぞれの回転軸101、102に2以上ずつ設けられ、図2(b)に示すように、これら再生された切断刃105の両側面の各スペーサ当接部114を両側から挟み込むようにスペーサ104が配置されて剪断式破砕機100に取り付けて使用される。
【0048】
この剪断式破砕機100によると、図6の側面図に示すように、第1回転軸101に設けられた複数の第1回転刃103と、第2回転軸102に設けられた複数の第2回転刃103との間に被破砕物120を挟み込んで剪断破砕することができる。
【0049】
また、図6に示すように、第1回転刃103と、第2回転刃103との間で被破砕物120を剪断破砕するときに、つまり、第1回転刃103の切断刃105と、第2回転刃103の切断刃105とが噛合うようにオーバーラップした状態の範囲Tで回転するときに、第1回転刃103の再生された第1切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113と、第2回転刃103の再生された第2切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113とが、互いに対向する状態となるように、又は略同じ回転位置となるように、それぞれのすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113が形成されている。
【0050】
次に、上記のように構成された再生された切断刃105、及びこれが取り付けられている剪断式破砕機100の作用を説明する。この再生された切断刃105が取り付けられている剪断式破砕機100によると、図6に示すように、第1回転軸101に取り付けられた再生された切断刃105と、第2回転軸102に取り付けられた相手側の再生された切断刃105との間に被破砕物120を挟み込んで、この被破砕物120を、順次剪断破砕することができる。
【0051】
そして、図2(b)に示すように、再生された切断刃105の側面のうち、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113が形成されていない部分では、この切断刃105の摩損によって刃幅W1が小さくなっているが、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113が形成されている部分では、刃幅がW2となり、このすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113の肉盛り高さ分だけ大きくすることができる。これによって、被破砕物120を剪断破砕するときに、再生された切断刃105の側面のうち、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113と、この側面と対向して配置される相手側の再生された切断刃105の側面のうち、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113との間の隙間の寸法S2を、切断刃105が新品の場合と同程度に近付けることができる。
【0052】
従って、被破砕物120を剪断破砕するときに、再生された切断刃105の側面と、相手側の再生された切断刃105の側面との間の隙間S2から、被破砕物120、特に長物が破砕されずにすり抜けて行くことを抑制することができる。
【0053】
このように、特に長物の被破砕物120が破砕されずにすり抜けて行く可能性を低く抑えることができるのは、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113によって、長物を含む被破砕物120が隙間S2からすり抜けることを防止でき、しかも、図3に示す回転刃103に取り付けられている5つの再生された切断刃105によって、そのピッチ分以下の比較的短い長さに被破砕物120を破砕することができるからである。
【0054】
また、再生された切断刃105の先端エッジ部109及びサイドエッジ部110は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成されているので、破砕能力を新品の切断刃105に近付けることができる。これによって、この再生された切断刃105を剪断式破砕機100に取り付けて使用すると、剪断式破砕機100の破砕効率を、新品の切断刃105を剪断式破砕機100に取り付けたときの破砕効率に近付けることができる。
【0055】
更に、図1に示すように、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113を、摩損した切断刃105の側面の全体にではなく、側面の一部に形成することによって、摩損した切断刃105を再生するための費用、時間、及び手間の低減を図ることができる。
【0056】
そして、図2(a)に示す切断刃105の刃先部127は、被破砕物120を剪断破砕する部分であり、剪断破砕が行なわれるときに、この再生された切断刃105の刃先部127の側面と、この側面と対向して配置される相手側の再生された切断刃105の側面との間の隙間S2に被破砕物120が入り込んですり抜けようとするが、刃先部127の側面及びその近傍を通るように形成されたすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113によって、被破砕物120がこの隙間S2に入り込んですり抜けることを効果的に抑制することができる。
【0057】
また、図2(b)に示すように、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113における再生された切断刃105の刃幅W2を、新品の切断刃105の刃幅W2と略同一とすると、被破砕物120を剪断破砕するときに、再生された切断刃105の側面と、相手側の再生された切断刃105の側面との間の隙間S2から、被破砕物120、特に長物が破砕されずにすり抜けて行く可能性を、新品の切断刃105を使用した場合のように低く抑えることができる。
【0058】
このように、特に長物の被破砕物120が破砕されずにすり抜けて行く可能性を低く抑えることができる理由は、上記と同様である。
【0059】
更に、図1に示すように、すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113は、スペーサ当接部114と間隔を隔てて形成されているので、摩損した切断刃105の側面に対してすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113を溶接によって形成したときに、この溶接の熱によってスペーサ当接部114が変形したり、この肉盛り溶接部の一部がスペーサ当接部114の表面に形成されることを防止することができる。これによって、この再生された切断刃105を剪断式破砕機100の刃台部106に取り付けるときに、スペーサ104とスペーサ104との間に形成された所定寸法の隙間に、この再生された切断刃105をスムースに装着して取りつけることができる。また、再生された切断刃105をその回転中心の軸方向(回転軸101、102の軸方向)の位置決めを、スペーサ104によって正確に行うことができる。
【0060】
更に、図6に示すように、第1回転刃103の再生された第1切断刃105と、第2回転刃103の再生された第2切断刃105とが噛合うようにオーバーラップした状態の範囲Tで回転するときに、第1回転刃103の再生された第1切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113と、第2回転刃103の再生された第2切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113とが、互いに対向する状態となるように、又は略同じ回転位置となるように、それぞれのすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113が形成されている。
【0061】
このようにすると、剪断破砕が行なわれるときに、第1回転刃103の再生された第1切断刃105の側面と、この側面と対向して配置される第2回転刃103の再生された第2切断刃105の側面との間の隙間S2に被破砕物120が入り込んですり抜けようとするが、再生された第1切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113と、再生された第2切断刃105のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113とが、互いに対向する状態等となって、この隙間S2を当該一対のすり抜け防止肉盛り溶接部111〜113によって狭めることができる。これによって、被破砕物120がこの隙間S2に入り込んですり抜けることを効果的に抑制することができる。
【0062】
次に、この実施形態に係る切断刃の再生方法を説明する。この切断刃の再生方法は、図14(a)、(b)に示す摩耗した切断刃105の先端エッジ部109及びサイドエッジ部110に対して、図7(a)に示すように、面取り加工を行う面取り工程と、図7(b)、(c)、図8、図9に示すように、面取り加工が行われた先端エッジ部109及びサイドエッジ部110、並びに、切断刃105の側面に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接工程と、図1に示すように、切断刃105の肉盛り溶接部を所定の形状となるように再生加工する加工工程とを備えている。このようにして、補修される切断刃105を再生して再利用できる再生された切断刃105(図1参照)を製造することができる。
【0063】
図7(a)〜(c)は、図1に示す再生された切断刃105の製造方法を示す斜視図であり、図8(a)〜(c)は、図7に続く再生された切断刃105の製造方法を示す斜視図、図9(a)〜(c)は、図8に続く再生された切断刃の製造方法を示す斜視図である。これらの図に基づいて、再生された切断刃105の製造工程を説明する。これらの図では、説明上、切断刃105の各角位置に記号(A)〜(F)を付し、作業順に(1)〜(13)を付して説明する。
【0064】
まず、図7(a)に示すように、切断刃105の先端エッジ部109とサイドエッジ部110とに所定の面取り10、11を施す。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、先端エッジ部109の厚み方向両端部(A)、(B) 位置に、溶接ノズル8によって硬化肉盛溶接材料のアークスポット溶接12、13を順に行う[(1)、(2)] 。
【0066】
そして、図7(c)に示すように、先端エッジ部109のアークスポット溶接12、13間に硬化肉盛溶接材料で肉盛り溶接14を行う[(3)]。この肉盛り溶接14は、先にアークスポット溶接12を行った(A)位置から(B)位置に向けて行われ、アークスポット溶接12、13による効果的な溶接だれ防止を図っている。
【0067】
また、先端エッジ部4は磨損が激しいため、図8(a)に示すように、少なくとも2層で肉盛り溶接14を行うことにより硬度が高い部分が増え、先端エッジ部109の耐衝撃性、耐摩耗性を向上させることができて好ましい。
【0068】
次に、図8(b)に示すように、上記サイドエッジ部110の反回転方向端部における鋭角部の厚み方向両端部(C)、(D)の位置に、硬化肉盛溶接材料でアークスポット溶接15、16を順に行う[(4)、(5)]。
【0069】
そして、図8(c)に示すように、アークスポット溶接15、16を行った端部(C)、(D)の位置から先端エッジ部109の(A)、(B)位置に向けて肉盛り溶接17、18を行う[(6)、(7)]。この肉盛り溶接17、18も、先に行ったアークスポット溶接15の(C)の位置から先端エッジ部109の(A)の位置に向けて行われ、アークスポット溶接15、16による効果的な溶接だれ防止を図っている。
【0070】
次に、図9(a)に示すように、サイドエッジ部110の他方の周方向端部(E)、(F)の位置から先端エッジ部110の(A)、(B)の位置に向けて肉盛り溶接19、20を行う[(8)、(9)]。この周方向端部(E)、(F)の位置は、角が鋭角ではないため、上記したようなアークスポット溶接15、16を行うことなく肉盛り溶接19、20が行われる。
【0071】
また、図9(b)に示すように、この例では、サイドエッジ部110の肉盛り溶接を、上記したサイドエッジ部110の肉盛り溶接17,18とは逆方向に、先端エッジ部4の(A)、(B)の位置から周方向端部(C)、(D)の位置に向けて肉盛り溶接21、22を行うとともに[(10)、(11)]、図9(c)に示すように、先端エッジ部109の(A)、(B)の位置から周方向端部(E)、(F)の位置に向けて肉盛り溶接23、24を行うことにより[(12)、(13)]、先の肉盛り溶接17〜20によって生じた溶接歪みを取るようにしている。
【0072】
更に、図9(c)に示すように、切断刃105の両方の各側面に対して、第1〜第3すり抜け防止肉盛り溶接部111、112、113を形成する部分に、硬化肉盛り溶接材料で肉盛り溶接25、26、27を行なう[(14)]。
【0073】
しかる後に、この図9(c)に示す肉盛り溶接14、17、22、23、24、25、26、27が完了した後は、図示しない工作機械によって研削加工等を行うことにより、図1に示すように各エッジ部109、110、及びすり抜け防止肉盛り溶接部111、112、113が形成された切断刃105として仕上げる。
【0074】
ただし、上記実施形態では、本発明を、図6に示すように分割式切断刃105を例に説明したが、これに代えて、図10に示すように、一体式切断刃35に適用することができる。この一体式切断刃35の固定部125は、回転軸101又は102に対して固定して取り付けられる。
【0075】
そして、上記実施形態のすり抜け防止肉盛り溶接部では、図1に示す位置、大きさ、範囲、及び数で切断刃105の側面に形成したが、これ以外の位置、大きさ、範囲、及び数で切断刃105の側面に形成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、図1に示すように、第1〜第3すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113を、スペーサ当接部114と間隔を隔てて形成したが、これに代えて、第1〜第3すり抜け防止肉盛り溶接部111〜113のうちのいずれか又は全部を、スペーサ当接部114と結合するように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る再生された切断刃及び剪断式破砕機は、切断刃を再生するための費用及び手間を低減して効率良く再生することができ、剪断式破砕機に取り付けて使用すると、剪断式破砕機の破砕効率を新品の切断刃に近付けることができる優れた効果を有し、このような再生された切断刃及び剪断式破砕機に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0078】
10、11 面取り
12、13 アークスポット溶接
14 肉盛り溶接
15、16 アークスポット溶接
17〜24 肉盛り溶接
25、26、27 すり抜け防止肉盛り溶接
35 一体式切断刃
100 剪断式破砕機
101、102 回転軸
103 回転刃
104 スペーサ
105 切断刃
106 刃台部
107 係合段部
108 係合突起
109 先端エッジ部
110 サイドエッジ部
111 第1すり抜け防止肉盛り溶接部
112 第2すり抜け防止肉盛り溶接部
113 第3すり抜け防止肉盛り溶接部
114 スペーサ当接部
120 被破砕物
125 固定部
126 ボルト挿通孔
127 刃先部
127a 掬い面
M 磨耗した部分
R 回転方向
S1、S2 隙間
T オーバーラップした状態の範囲
W1、W2 刃幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、この固定部から半径方向外向きに突出する刃先部とを備え、
前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、
前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有し、
前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部は、肉盛り溶接によって再生処理されて形成され、
側面には、前記サイドエッジ部から前記回転の中心側又は中心方向に向かって延びる被破砕物のすり抜け防止肉盛り溶接部が1又は2以上再生処理によって形成されていることを特徴とする再生された切断刃。
【請求項2】
前記すり抜け防止肉盛り溶接部は、前記刃先部の側面を通るように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の再生された切断刃。
【請求項3】
前記すり抜け防止肉盛り溶接部における前記再生された切断刃の刃幅は、新品の切断刃の刃幅と略同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生された切断刃。
【請求項4】
前記再生された切断刃の側面は、当該再生された切断刃をその回転中心の軸方向の位置決めをするスペーサに当接するスペーサ当接部を有し、
前記すり抜け防止肉盛り溶接部は、前記スペーサ当接部と間隔を隔てて形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再生された切断刃。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の再生された切断刃が、刃台部に着脱自在に複数取り付けられて成る回転刃を備え、この回転刃が第1及び第2のそれぞれの回転軸に2以上ずつ設けられ、
前記回転刃を両側から挟み込むように、スペーサが前記第1及び第2のそれぞれの回転軸に設けられ、
前記第1回転軸に設けられた第1回転刃と、前記第2回転軸に設けられた第2回転刃との間で被破砕物を剪断破砕することを特徴とする剪断式破砕機。
【請求項6】
回転する前記第1回転刃と前記第2回転刃との間で被破砕物を剪断破砕するときに、前記第1回転刃が備えている再生された第1切断刃の前記すり抜け防止肉盛り溶接部と、前記第2回転刃が備えている再生された第2切断刃の前記すり抜け防止肉盛り溶接部とが、互いに対向する状態となるように、それぞれの前記すり抜け防止肉盛り溶接部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の剪断式破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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