説明

再生コンクリート製造方法並びにこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物。

【課題】 有用微生物を廃コンクリート骨材に含浸もしくは表面に被覆した形でセメントコンクリートとすることにより、廃コンクリートを全て骨材としても十分な強度を出すとともに、中性化が抑えられる、鉄筋コンクリート構造物としても十分な耐久性がある再生コンクリート製造方法を提供することにある。
【解決手段】 骨材とセメント、水および混和剤を含むコンクリートにあって、骨材の全てもしく一部である廃コンクリート骨材を予め有用微生物を含む水溶液を散布処理もしくは浸したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築や土木構造物として供用してきたコンクリートを破砕した廃コンクリート骨材の有効利用に関し、より詳細には、破砕された廃コンクリート骨材をもう一度資材資源として建築や土木用途に供するための再生コンクリート製造方法並びにこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
廃コンクリート骨材は、これまで路盤用骨材としてほぼ9割が適用されてきた。しかし、今後寿命を迎える古い建築などの立て替えなどに伴い廃コンクリート骨材に大量に発生してくると予測されており、路盤以外への用途開拓が緊急の課題となっている。
廃コンクリート骨材をコンクリート用の骨材として適用することはこれまで多数試みられてきた。しかし、古くなった廃コンクリート骨材の表面はセメントとの反応が著しく損なわれ、強度が出ない状況にあった。特に、細粒分に含まれるモルタル分が悪影響を及ぼしていた。
旧建設省から出されている「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)について」(平成6竿4月11目建設省技調発第88号)」によると廃コンクリート骨材を使用した再生コンクリートの強度分類としては、1(細骨材が普通骨材)(圧緒強産180〜210kgf/cm2)、2(圧縮強度160〜180 kgf/cm2)、3(粗骨材細骨材全て廃コンクリート)(圧脂強度160 kgf/cm2以下)と区分され、一般の強度範囲と比較すると低強度となっている。
このため廃コンクリート骨材を800℃程度に昇温させて、粗骨材を分離する方法がある。しかし、この方法では多量のエネルギーを必要とすることと、使用しにくい細粒分が発生してしまうことが課題である。
また、寿命がきたことにより壊された廃コンクリート骨材は中性化した廃コンクリート骨材が多いと予想され、鉄筋コンクリート構造物への適用は慎重になっている状況にある。膨張収縮性や凍結融解特性に劣るが背景にある。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0003】
有用微生物を廃コンクリート骨材に含浸もしくは表面に被覆した形でセメントコンクリートとすることにより、廃コンクリートを全て骨材としても十分な強度が出る。旧建設省が提示している(成6年4月11日建設省技調発醍88号)による1(細骨材が普通骨材)(圧縮強度180〜210kgf/cm2)2(圧縮強度160〜180kgf/cm2)3(粗骨材細骨材全て廃コンクリート)(圧縮強度160kgf/cm2 以下)と比較すると全て廃コンクリートである3種に比べて十分な強度が出ており、さらには新しい細骨材を用いる1種よりも強度が出ている。
また、中性化試験より本発明により中性化が抑えられることが判明した。これは鉄筋コンクリート構造物としても十分な耐久性があることを示している。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、廃コンクリート骨材を有用微生物でバイオ処理することにより、強度が高く、また中性化を改善して鉄筋が錆びにくい再生コンクリートの製造方法並びにこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、骨材とセメント水および混和剤を含むコンクリートにあって、骨材の全てもしくは一部である廃コンクリート骨材を、予め有用微生物を含む水溶液を散布処理もしくは浸したことを特徴とする再生コンクリート製造方法とこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物である。
また、骨材とセメント水および混和剤を含むコンクリートにあって、骨材の全てもしくは一部である廃コンクリート骨材からなる再生コンクリートを製造するときに有用微生物を含む水溶液を水と置換したことを特徴とする再生コンクリート製造方法とこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物である。
そしてまた、有用微生物を含む水溶液に廃コンクリート骨材を浸した後、60℃以上の温度で乾燥させた後に、骨材および水、セメント、混和剤などと混合することを特徴とする再生コンクリート製造方法とこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物である。
さらに、骨材とセメント、水および混和剤を含むコンクリートにあって、骨材の全てもしくは一部である廃コンクリート骨材に予め有用微生物を含む粘土混合物を焼却して粉砕したセラミックを混合したことを特徴とする再生コンクリート製造方法とこの再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物である。
さらにまた、以上のコンクリート構造物が鉄筋を含む再生コンクリート構造物である。
【機能】
【0006】
有用徴生物は、放線菌に属する、例えばStreptomyces sp.(ATCC3004)、Streptverticillium sp. (ATCC23654)、Nocardia
sp.(ATCC19247)、Micromonospora sp. (ATCC12452)、Rhodococcus sp. 、光合成菌に属するものとして、例えば
RhodopseudomonasRsphaeroides 、Rhodospirillum sp.(P.halophlus) 、Streptococcus
sp.(S.lactis 、S.faecalis) 、糸状菌に属するものとして、例えばAspergillus sp.(RIFY5770、RIFY5024) 、mucor
sp.(ifo8567) 、酵母菌に属するものとして、例えばSaccharomyces sp. (NRRL1346、Y977) 、Candida
sp.(C.utilis)が上げられる。これらの菌の内3種以上の菌を汲み合わせて使用するのが本発明でいう有用微生物であり、水溶液の形態で用いる。
廃コンクリート骨材に付着したモルタル分の表面や内部に浸透した有用微生物の酵素が廃コンクリートのモルタル表面に作用して非イオン化(帯電しているものが放電される)によって新セメントモルタルとの付着性を高めるものである。
【0007】
実施例1
配合1は、廃コンクリート(路盤用に破砕された再生コンクリート骨材を5mmフルイで分級した粗骨材と細骨材であり、すべてが廃コンクリートである。以下全て骨材はすべて廃コンクリートを使用)を有用微生物溶液(市版EM-1)の10%水溶液に1週間浸して、これを110℃乾燥の後に、セメント、水と混合したものである。これに対し、有用微生物の処理をしなかつた配合2との圧縮強度の比較でわかるように、強度が2倍ほど大きくなっている。配合2のいわゆる従来の再生コンクリートの強度は小さい。有用微生物による強度上の効果が明らかである。
実施例2
そこで、配合3のように、有用微生物5%水溶液に1週間浸漬して表乾にした後、同様のセメント、水配合に、AE減水剤(ポゾリス物産社のNo.70)、空気連行補助剤(同社303A)を加えて混合し、水中養生した後、1週強度4週強度を測定した。この場合の比較をプレーンの配合9と行う(配合9はAE剤および減水剤の効果で4週強度が配合2よりもやや大きいが、旧建設省の分類1種に相当している。)配合3は配合9よりも30%大きく、本発明の効果が明らかである。しかも、スランプが3cm大きくなっており、有用微生物が流動化剤的な働きを示している。
実施例3
有用微生物の配合を見るために配合4、配合5を行った。配合4は有用微生物の濃度10%水溶液とし、配合5は20%濃度とし、廃コンクリート骨材をこれらのEM水溶液に1週間浸漬してさらに表乾した廃コンクリート骨材を用いた。スランプの伸びはそれほどないが、28日圧縮強度はやや大きくなっている。しかし、有用微物10%でほぼ飽和した形になっており、10%程度が好ましいと考えられる。
実施例4
浸漬時間を見るために、有用微生物の濃度を10%として、浸漬時間を1日、1時間と変化させた配合が配合6、7である。スランプが配合4よりも減少しており、浸漬時間が流動性に影響を与えていると判断できる。強度はやや大きくなっているが、配合4とほぼ同程度と判断され、本発明の効果は明らかである。そこで、配合4よりも水を減らした場合の配合8の強度が同程度になっていることから理解できる。
【0008】
【表1】




【0009】
【表2】



【0010】
【表3】

【0011】
実施例5
配合10、11、12は有用微生物を粘土に混ぜて燒結させ、さらに微粉砕した有用微生物セラミック((株)イーエム総合ネット)をセメントの5%、1O%、15%添加した場合の強度である。プレーンの配合9に比べて28日圧縮強度は約2割増加しているが、5%以上添加を増やしても大きな増加は見られなく、5%でよいと考えられる。
実施例6
中性化について測定した。中性化の測定には各種の方法があるが、ここでは材例20日に達したφ100mmX 20mmの円柱供試体を恒温室にて6日間乾燥させ、上面、下面を、プライマーを塗布してさらにシリコンで封印し、炭酸ガス養生層内で促進中性化させ、圧縮試験機で割裂させ割裂面を乾燥させた後にフェノールフタレイン(1%エタノール溶液(15%水を含む)JISK8001)を霧吹きで吹き付け、変色しない深さをミリ単位で測定し、これを中性深さとした。打設底面から25mm打設方向に1点を取りさらに15mm間隔で中性化面各10点の測定を行い、平均中性深さを求めた。検討した配合3,4,5および配合10,11,12である。図は測定結果である。いずれの配合においてもプレーンに比べて半分以下の中性深さを示している。すなわち、有用微生物により処理する、あるいは処理されたセラミック粉末を添加することにより、中性化を抑制できることが明らかである。この結果は鉄筋構造物とした場合でも鉄筋が錆びにくいことを意味し、その年齢はプレーンの場合の2倍から3倍に相当する。
【0012】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0013】
有用微生物を廃コンクリート骨材に含浸もしくは表面に被覆した形でセメントコンクリートとすることにより、廃コンクリートを全て骨材としても十分な強度が出る。
また、中性化試験より本発明により中性化が抑えられ、これは鉄筋コンクリート構造物としても十分な耐久性があることを示している。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材とセメント、水および混和剤を含むコンクリートにあって、骨材の全てもしくは一部である廃コンクリート骨材を、予め有用微生物を含む水溶液を散布処理もしくは浸したことを特徴とする再生コンクリート製造方法。
【請求項2】
1項記載の、骨材とセメント、水および混和剤を含む再生コンクリート製造方法にあって、骨材の全てもしくは一部である廃コンクリート骨材から在る再生コンクリートを製造するときに、有用微生物を含む水溶液を水と置換したことを特徴とする再生コンクリート製造方法。
【請求項3】
1項記載の、骨材とセメント、水および混和剤を含む再生コンクリート製造方法にあって、有用微生物を含む水溶液に廃コンクリート骨材を浸した後、60℃以上の温度で乾燥させた後に、骨材および水、セメント、混和剤などと混合することを特徴とする再生コンクリート製造方法。
【請求項4】
骨材とセメント、水および混和剤を含むコンクリートであって、骨材の全てもしく一部である廃コンクリート骨材に予め有用微生物を含む粘土混合物を焼却して粉砕したセラミックを混合したことを特徴とする再生コンクリート製造方法。
【請求項5】
1〜4記載の再生コンクリート製造方法により製造された再生コンクリートを用いた再生コンクリート構造物。
【請求項6】
5項記載の再生コンクリート構造物が鉄筋を含む再生コンクリート構造物。

【公開番号】特開2006−27979(P2006−27979A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211801(P2004−211801)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【出願人】(595030826)株式会社EM研究機構 (7)
【Fターム(参考)】