再生ヘッドの非線形性評価方法
【課題】再生ヘッドからの再生波形がDCオフセットを有する場合でも、伝達特性の特定が可能な非線形性の評価方法を提供。
【解決手段】磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターンを記録し、再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む1Tパターンの波形データを取得するステップ、磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターンを記録し、再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む前記3Tパターンの波形データを取得するステップ、各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップ、パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、再生信号から記録信号を求めることができ、さらに再生ヘッドの非線形性を評価する。
【解決手段】磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターンを記録し、再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む1Tパターンの波形データを取得するステップ、磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターンを記録し、再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む前記3Tパターンの波形データを取得するステップ、各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップ、パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、再生信号から記録信号を求めることができ、さらに再生ヘッドの非線形性を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置に使用される再生ヘッドの非線形性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの高記録密度化の進展に伴い、記録時及び再生時のそれぞれにおいて非線形歪の問題が顕在化している。記録時の信号処理方法は、従来のピーク検出法に代わり、現在はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式、PRML方式を改良したEPRML方式、E2PRML方式などが一般に用いられている。磁気ディスクの高記録密度化に伴い、ビット間隔が狭くなると、波形の干渉が生じ、ピーク検出法ではビット検出が困難になる。PRML方式では信号が線形的に干渉していることを前提にビット検出を行うため、記録密度の高い磁気ディスクのビット検出が可能となる。しかし、記録密度がさらに高くなると、記録時の非線形歪みが増大し、ビット検出の性能は低下する。記録時の非線形歪みの原因としては、隣接ビットの反磁界の影響により磁化遷移の形成位置が本来形成されるべき位置に対して前後にシフトする非線形遷移シフト(NLTS : Non-Linear Transition Shift)と、反磁界の影響や隣接ビットの磁性粒子の相互作用によって、隣り合う逆極性のパルス波形の幅が拡大するパーシャルイレージャ(PE : Partial Erasure)が挙げられる。この内、NLTSは記録時に記録電流のタイミングをコントロールすることで補償することが可能である。これに対して、パーシャルイレージャによる非線形歪みは、NTLSのような補償は出来ない。
【0003】
一方、高密度化が進みビットサイズが小さくなると、ディスクからの漏洩磁束が少なくなる。そのため、少ない漏洩磁束でも十分な再生感度が得られるMR(Magneto Resistance)ヘッドが一般に使用されている。MRヘッドは、磁界の変化を抵抗値の変化に変換するMR素子をディスクからの漏れ磁束を検知するためのセンサとして用いる。一般にMR素子は非線形的な特性を示す。そのためMRヘッドで再生した信号波形は非線形歪を含んだ波形となる。
【0004】
これら、すなわちNLTSとパーシャルイレージャからなる記録時の非線形歪と、再生ヘッドのMR素子の非線形特性に起因する再生時の非線形歪の和はビットエラーレートを左右する。そのため、高密度対応の媒体やヘッドの開発において、ビットエラーレートを計算する際に、これらの非線形性を定量的に評価することが重要となっている。ここで、これらの非線形性を定量的に評価するとは、記録時の信号と再生時の信号の関係を得ることを指す。再生時の信号波形からビットエラーレートを計算する方法は、非特許文献1に記述されている。記録時の信号と再生時の信号の関係を用いることで、再生ヘッドで再生した信号波形が非線形性を有していても、より正確な記録時の信号を得ることができる。
【0005】
再生ヘッドの非線形性の評価方法に関しては、非特許文献2に、周波数領域での評価方法が記述されている。本方法は、周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)をヘッドで再生した場合の信号波形の3次高調波成分のマグニチュードをV3、周期Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)をヘッドで再生した場合の信号波形の基本波成分のマグニチュードをV1とした場合に、非線形性の量をR31=V3/V1として算出する。ここで非線形性が無い場合にはR31=3、非線形性がある場合にはR31≠3であり、R31の値が3から離れているほど非線形歪が大きいとしている。しかし本方法は非線形歪の大小を評価できても、再生ヘッドの入出力の伝達特性を算出することはできなかった。
【0006】
また、非特許文献3に、時間領域での評価方法が記述されている。本方法は以下に述べる原理に基づく。1Tパターンの再生信号波形をv1(t)、3Tパターンの再生信号波形をv3(t)とした場合に、非線形性が無い場合にv3(t)は、v1(t)の位相を±2Tずらせた波形と元の波形との和として表わされる。すなわち以下が成り立つ。
【0007】
【数1】
【0008】
さらに再生ヘッドの伝達特性が時不変な関数f(x)として表わされ、さらにf(x)が逆関数f-1(x)を持つ場合、非線形歪を受けたそれぞれの波形u3(t)(=f(v3(t))、u1(t)(=f(v1(t))について以下が成り立つ。
【0009】
【数2】
【0010】
ここでf(x)-1を以下のように多項式で近似する。
【0011】
【数3】
【0012】
式(2)、(3)より次の式が導かれる。
【0013】
【数4】
【0014】
ここで、εはフィッティング誤差である。本方法は、非線形歪を含む1Tパターンと3Tパターンの時間波形データを取得し以下の正規方程式を作成する。
【0015】
【数5】
【0016】
ここで、u1(tn)、u3(tn) (t=t1,t2,..,tN)はそれぞれ、1Tパターンと3Tパターンの時間波形データである。
【0017】
そして上式によりεを最小化するα、βを擬似逆行列法によって求めることで、再生ヘッドの逆伝達特性を求める。ただし本方法は逆伝達特性f(x)が、f(0)=0かつf'(0)=1である多項式で近似できることを必要条件とした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】R. D. Cideciyan et al., IEEE J.on Selected Areas in Communications, 10(1),January 1992 p38-56 "A PRML System for Digital Magnetic Recording"
【非特許文献2】X.Xing and H.N.Bertam, J.Appl. Phys. 79(8), 15 April 1996 p5883-5885 "Experimental studies of nonlinearigies in MR heads"
【非特許文献3】B.A.Wilson et al., J.Appl. Phys. 81(8), 15 April 1997, p4828-4830"Generalized method for measuring read-back nonlinearity using a spin stand"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
一般に非線形歪を受けた信号波形は正・負のパルスの振幅が異なるアシンメトリ波形となる。再生回路のACカップリングにより正・負のパルスの面積が等しくなるようにベースラインが上下に移動するため、再生波形はDCオフセットを持つ。ところが従来の再生ヘッドの非線形性の評価方法は、逆伝達特性f(x)に対してf(0)=0なる制約を課していたため、再生波形がDCオフセットを持つ場合には、求められた逆伝達特性の精度が著しく低下する問題があった。
【0020】
本発明は、上述した従来の再生ヘッドの非線形性の評価方法の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、再生波形がDCオフセットを持つ場合でも、伝達特性の推定が可能な再生ヘッドの非線形性の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成させるために、本発明の磁気ヘッドの特性評価方法は、
磁気記録システムにおいて信号再生を司る再生ヘッドの非線形性を評価する方法であって、磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)を記録し、1Tパターンを再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む1Tパターンの波形データを取得するステップと、磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)を記録し、3Tパターンを再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む3Tパターンの波形データを取得するステップと、各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップと、パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、記録信号と再生信号との関係を得ることにより、再生信号から記録信号を求めることができ、さらに再生ヘッドの非線形性を評価するステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
また、確率的探索手段に基づく演算が、遺伝的アルゴリズムに従ってフィッティング関数の各パラメータを所定回数だけ繰り返し修正することにより、パラメータとDCオフセット値の最適な値を決定することを特徴とする。
【0023】
また、遺伝的アルゴリズムは、フィッティング関数のパラメータとDCオフセット値をエンコードした染色体を保持する複数の親個体の初期集団を発生させた後、親個体の各染色体に対して、所定の評価関数をそれぞれ計算し、得られた関数値より親個体の適応度を決定するステップと、適応度がより高い個体を優先的に選択することにより新たな親個体の集団を決定するステップと、新たな親個体の集団から2つの親個体の組を複数選択し、各組の各染色体に対して、交叉の操作を行うことにより2つの子個体の組を複数発生させるステップと、新たな親個体の集団から親個体を1つまたは複数選択し、各親個体の各染色体に対して、突然変異の操作を行うことにより新たな子個体を1つまたは複数発生させるステップと、新たな親個体と子個体を合わせて新たな親個体の集団を生成するステップとを複数回繰り返し行うことを特徴とする。
【0024】
また、各個体の各染色体をデコードして得られるフィッティング関数のパラメータとDCオフセット値に基づき、非線形歪を含む1Tパターン及び3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、補正した各波形データを周波数解析し、補正した1Tパターンの波形データの基本周波数成分のマグニチュードV1と、補正した3Tパターンの波形データの3次高調波成分のマグニチュードV3とをそれぞれ求め、R=(V1/V3-3)2を所定の評価関数として算出することを特徴とする。
【0025】
また、各個体の各染色体をデコードして得られるフィッティング関数のパラメータとDCオフセット値に基づき、非線形歪を含む1Tパターン及び3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、補正した1Tパターンの波形データと、3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形、3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形、および3Tパターンの波形を重ね合せた波形データとの、所定区間の平均2乗誤差を所定の評価関数として算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法によれば、ヘッド再生波形についてDCオフセットの補償が行われるので、ヘッド再生波形がDCオフセットを持つ場合に測定精度が著しく低下することが無くなる。そのため評価の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形性の評価装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形性の評価手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態における非線形歪を含む1Tパターンの波形を示した図である。
【図4】本発明の実施形態における非線形歪を含む3Tパターンの波形を示した図である。
【図5】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形特性を表わす図である。
【図6】本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法における非線形性の測定精度の検証結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係わる再生ヘッドの非線形性評価方法について、図面を用いて以下に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る再生ヘッドの非線形性の評価に用いられる評価装置100の概略構成図である。この評価装置100は、評価対象の再生ヘッド101の非線形性を評価するために、次のように構成されている。すなわち、この装置は、所定のデータ・パターンを発生するデータ・ジェネレータ103と、データ・パターンに応じた記録電流を発生するライト・アンプ104と、回転する磁気ディスク102の所定のトラックに対して記録・再生を行う磁気ヘッド101(正確には記録ヘッド)と、磁気ヘッド101(再生ヘッド)からの再生信号を増幅するためのリード・アンプ105と、増幅した信号波形112をサンプリングするための波形サンプリング部106、増幅した信号波形を観測するためのオシロスコープ107、および評価部108を備える。
【0030】
本評価装置で所定のパターンの記録を再生して、その再生波形のデータを収集するには、まず磁気ヘッド101(記録ヘッド)を磁気ディスク102の所定のトラックへ移動させた後、データ・ジェネレータ103から所定のデータ・パターンを発生させ、ライト・アンプ104によりデータ・パターンに応じたライト電流を発生し、磁気ヘッド101(記録ヘッド)によりライト電流の変化を磁束の変化に変換し、磁気ディスク102にデータ・パターンに応じた磁気信号を記録する。そして記録した磁気信号を磁気ヘッド101(再生ヘッド)で再生し、その再生信号をリード・アンプ105を経由して、波形サンプリング部106でサンプリングしてその波形データをメモリに格納する。波形サンプリング部106のメモリに保存された波形データは適宜評価部108が読み出して、磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性を表わすデータの演算に利用する。
【0031】
磁気ヘッド101は巨大磁気抵抗(GMR)素子(図省略)又はトンネル磁気抵抗(TMR)素子(図省略)を含む再生ヘッドと、単磁極又はリング状の記録磁極を有する記録ヘッドから構成される。また磁気ディスク102は、磁性膜が垂直磁気異方性を有する垂直記録媒体、又は面内磁気異方性を有する長手記録媒体を用いることができる。
【0032】
また、図示するように、この評価装置100は、さらに、算出された再生ヘッドの非線形性をグラフに表示するディスプレイ109、ディスク駆動部110、評価装置100の全体を制御する制御部111なども含んでいる。制御部111は、ユーザからの設定および開始指示にしたがって、内部メモリに内蔵したプログラムコードにより、評価装置100内のそれぞれの構成要素を制御して、最終的に本発明の方法を実行する。実行結果は、ディスプレイ109に表示する。制御部111は、マイクロ・プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェース等を備えた、基本的なコンピュータの構成を備えることができる。なお、評価装置100は、図1に示していないが、装置に通常備えられる、入出力のユーザ・インターフェースを備えている。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係わる再生ヘッドの非線形性評価方法を実施するための手順を示した図である。この手順は以下のステップで実施される。
【0034】
まずステップ200では、磁気ディスク102の所定のトラックに1Tパターンを記録し、その再生波形データを取得する。その具体的な手順は前述した手順と同様の手順となる。ここで1Tパターンは周期T(Tは記録時の非線形歪効果が無視できる十分に長い時間)で磁化反転するパターン(NRZI表記で111111....)である。磁気ディスク102に記録するパターンは、パーシャルイレージャの影響を除外するために、記録時の非線形歪みが発生しない程度の線記録密度、例えば100kFCI以下で記録することが好ましい。上記1Tパターンは記録時の非線形歪みが発生しない程度の線記録密度(100kFCI以下)で記録されており、パーシャルイレージャは含まれていないと仮定した。またパターンを記録する所定のトラックは、記録時の非線形歪が生じないようにあらかじめAC消去されているものとする。本ステップの操作により波形サンプリング部106の図示しないメモリに1Tパターンの波形データが取得される。取得した1Tパターンの波形データを図3に示す。図3中の値S1、S1‘はそれぞれ斜線部の面積を表し、Vdc1はS1=S1’となるように決定される。本波形データは、磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性により歪を受け、正負の極性のパルスが非対称になっている。正負の極性パルスの非対称性を数値で表す一例として、V1h、V1h‘を、V1h=(V1u+Vdc1)/2、V1h’=(V1l+Vdc1)/2と定義する。図3では、|V1h|≠|Vh1’|であり、正負の極性パルスは非対称になっている。またリードアンプ105のアナログ回路(図省略)のACカップリングにより、波形のベースラインは正負極性のパルスの面積が等しくなる位置に移動するため、波形はDCオフセットを有しており、DCオフセット値はVdc1である。
【0035】
次にステップ201では、磁気ディスク102の所定のトラックに3Tパターンを記録し、その再生波形データを取得する。ここで3Tパターンは周期3Tで磁化反転するパターン(NRZI表記で100100....)である。本ステップの操作により波形サンプリング部106の図示しないメモリに3Tパターンの波形データが保存される。本波形データを図4に示す。図4の波形データも図3に示すh波形データと同様の理由により非線形歪とDCオフセットを有している。
【0036】
次にステップ202〜207では、評価部108が磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性を求めるために遺伝的アルゴリズムを実行する。
【0037】
遺伝的アルゴリズム(GA : Genetic Algorithm)は、自然淘汰によって選択された遺伝子が残されるという、生物の進化の過程を真似て作られた確率的探索、学習、最適化の手法である。GAは以下の処理を繰り返すことで人工的な進化を行い最適な解を発見する。
【0038】
初期集団の生成 : 決められた個体数の染色体をランダムに生成する。一般に、染色体はバイナリーコードで表される。
【0039】
適応度の評価 : それぞれの個体がどの程度環境に適応しているかを、予め定められた評価関数を用いて、個体ごとに評価する。
【0040】
選択 : 評価関数値に基づいて適応度の高い個体を2つ選択し、両親とみなす。
【0041】
交叉 : 選択によって選出された、両親とみなされた個体に対して、交叉確率に従ってある交叉位置で双方の染色体の一部ずつを採ってきて採った部分を交換し、子の染色体を生成する。
【0042】
突然変異 : 突然変異確率に従って染色体の一部の値をランダムな値に置き換える。交叉だけでは生成できない子を生成して個体群の多様性を維持する働きをする。
【0043】
新しく生成された子を加えた新しい集団を生成し、適応度の評価に戻り、突然変異までを繰り返し行う。
【0044】
本実施例ではGAを用いて再生ヘッドの非線形性を求めるために、以下のフィッティング関数を用いて再生ヘッドの非線形性を近似する。
【0045】
【数6】
【0046】
そしてフィッティング関数の係数a、b、cと、1Tパターンと3TパターンのそれぞれのDCオフセット値Vdc1、Vdc2の5個の変数を最適化の対象とする。これらの変数は染色体に所定の形式でエンコードされる。本実施例では染色体の長さは100ビットとし、下表1のように各変数に20ビットずつ割り当てる。
【0047】
【表1】
【0048】
染色体の各20ビットのデータについて、それぞれ00...0がその変数の下限値、11..1が上限値となるようにエンコードする。ここで各変数の下限値と上限値は、再生ヘッドの非線形性とDCオフセットのばらつきを考慮して決定する。
【0049】
次にステップ202〜207における遺伝的アルゴリズムの手順を順に説明する。
【0050】
まずステップ202では、ある染色体を有するフィッティング関数を1個の個体とし、初期設定としてN個の個体からなる初期集団を生成する。ここでNの値としては50〜200程度が望ましい。そして上記5個の変数のそれぞれの下限値と上限値の範囲内でランダムな値を選び、各個体の染色体の初期値として設定する。
【0051】
次にステップ203では、各個体について、その染色体の値と1Tパターン及び3Tパターンの波形データから評価関数を計算し、その結果から各個体の適応度を決定する。
【0052】
そのためまず、評価部108が波形サンプリング部106の図示しないメモリに格納されている1Tパターンと3Tパターンの波形データを読み出す。
【0053】
そして集団の中の一つの個体について、その染色体をデコードすることにより、フィッティング関数の係数a,b,cとDCオフセットVdc1、Vdc2を得る。そしてフィッティング関数の係数a,b,cから再生ヘッドの入力と出力の変換テーブルを作成する。
【0054】
そして1Tパターンの波形データに対してDCオフセットの補償と非線形性の補正を行う。これは1Tパターンの波形データからDCオフセット値Vdc1を引き算すると共に、変換テーブルの補間により入力電圧に変換することにより行われる。同様に3Tパターンの波形データに対してもDCオフセット(Vdc2)の補償と非線形性の補正を行う。
【0055】
次に補正した1Tパターンの波形データを周波数解析し基本周波数(1/2T)のマグニチュードV1を求める。また補正した3Tパターンの波形データを周波数解析し3次高調波(1/6T×3)のマグニチュードV3を求める。そして本実施例においては、以下で定義されるRを計算し、これをその個体の評価関数の値とする。
【0056】
【数7】
【0057】
これを集団の全ての個体について行う。そして評価関数の値に基づいて各個体の適応度を決定する。ここで本実施例では下式により適応度を決定する。
【0058】
【数8】
【0059】
ここでxiは各固体を評価関数の大きいものから順位付けした場合のi番目の個体の順位、N'は親個体と子個体を合わせた集団の総個体数である。評価関数が小さい個体ほど高い適応度を有する。なおGAにおける最初の繰り返しでは子個体は存在しないので、N'は親個体の数Nに等しい。
【0060】
次にステップ204では、適応度の高い順にN個の個体を選び、新たな親として残す。次にステップ205では、親個体から複数のペアを選び、それぞれの染色体に対して交叉の操作を行い子個体を作成する。次にステップ206では、親個体と子個体について一定の確率で染色体の特定のビットを反転させることにより突然変異の操作を行う。次にステップ207では、終了条件の判定を行う。すなわちステップ203〜207の処理の繰り返し回数が所定値に到達したら終了と判定する。所定値に達していない場合は、ステップ203に戻る。
【0061】
ステップ203〜207の処理を繰り返す度に、適応度の低い個体(評価関数値が大きい個体)が淘汰される。その一方で、評価関数値のより小さな個体が発見されるとそれが優先的に保存される。その結果、集団の平均的な評価関数値は徐々に減少する。そして十分な繰り返し回数の後、最も適応度の高い個体の染色体は、再生ヘッドの非線形性を良好に近似するフィッティング関数の係数(a,b,c)と、1Tパターンと3Tパターンの波形データのそれぞれのDCオフセット(Vdc1,Vdc2)の良好な推定値を保持する。
【0062】
次にステップ208では、集団の中の最も高い適応度の個体を選択し、その染色体をデコードしてフィッティング関数の係数a,b,cを得る。そして最後に、再生ヘッドの非線形性の測定結果として図5に示すようなフィッティング関数のグラフをディスプレイ109に表示する。
【0063】
図5に示すフィッティング関数により、記録信号と再生信号の関係を得ることができ、したがって再生信号からより正確な記録信号を求めることができる。さらに、図5のフィッティング関数から再生ヘッドの非線形性の程度を知ることができる。
【0064】
なお本実施例で定義された評価関数と異なる定義による評価関数を用いることもできる。
【0065】
別の定義による評価関数の一例を以下に挙げる。「背景技術」の式(1)に示されるように、非線形歪の無い場合、1Tパターンの波形は、3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形と、3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形と、3Tパターンの波形とを重ね合せた波形と等しい。このことを利用して、例えば、本実施例で述べた手順に基づき、1Tパターンの波形データと、3Tパターンの波形データのそれぞれに対してDCオフセットの補償と非線形性の補正を行った後、3Tパターンの波形データの重ね合わせによる1Tパターンの波形データと、本来の1Tパターンの波形データの所定区間の平均2乗誤差を計算し、これを評価関数とすることもできる。
【0066】
次に、本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法における非線形性の測定精度をシミュレーションにより検証した結果を図6に示し、図6を引用しながら説明する。
【0067】
図6に示す301は、再生ヘッドの入出力特性、302は本発明の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性、303は従来の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性である。再生信号のDCオフセットは+0.1Vとした。
【0068】
図6に示すように、本発明の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性302は、再生ヘッドの入出力特性301と極めて良く一致した。一方、従来の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性303は、入力電圧の絶対値が0.3Vより大きい場合に、再生ヘッドの入出力特性301との差を明確に認識できる。
【0069】
この結果から、本発明の非線形性評価方法は再生ヘッドの入出力特性を従来方式より高い精度で算出することができることが分かる。
【符号の説明】
【0070】
100 磁気ディスクの特性評価装置
101 磁気ヘッド
102 磁気ディスク
103 データ・ジェネレータ
104 ライト・アンプ
105 リード・アンプ
106 波形サンプリング部
107 オシロスコープ
108 評価部
109 ディスプレイ
110 ディスク駆動部
111 制御部
112 リード・アンプ105の出力信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置に使用される再生ヘッドの非線形性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの高記録密度化の進展に伴い、記録時及び再生時のそれぞれにおいて非線形歪の問題が顕在化している。記録時の信号処理方法は、従来のピーク検出法に代わり、現在はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式、PRML方式を改良したEPRML方式、E2PRML方式などが一般に用いられている。磁気ディスクの高記録密度化に伴い、ビット間隔が狭くなると、波形の干渉が生じ、ピーク検出法ではビット検出が困難になる。PRML方式では信号が線形的に干渉していることを前提にビット検出を行うため、記録密度の高い磁気ディスクのビット検出が可能となる。しかし、記録密度がさらに高くなると、記録時の非線形歪みが増大し、ビット検出の性能は低下する。記録時の非線形歪みの原因としては、隣接ビットの反磁界の影響により磁化遷移の形成位置が本来形成されるべき位置に対して前後にシフトする非線形遷移シフト(NLTS : Non-Linear Transition Shift)と、反磁界の影響や隣接ビットの磁性粒子の相互作用によって、隣り合う逆極性のパルス波形の幅が拡大するパーシャルイレージャ(PE : Partial Erasure)が挙げられる。この内、NLTSは記録時に記録電流のタイミングをコントロールすることで補償することが可能である。これに対して、パーシャルイレージャによる非線形歪みは、NTLSのような補償は出来ない。
【0003】
一方、高密度化が進みビットサイズが小さくなると、ディスクからの漏洩磁束が少なくなる。そのため、少ない漏洩磁束でも十分な再生感度が得られるMR(Magneto Resistance)ヘッドが一般に使用されている。MRヘッドは、磁界の変化を抵抗値の変化に変換するMR素子をディスクからの漏れ磁束を検知するためのセンサとして用いる。一般にMR素子は非線形的な特性を示す。そのためMRヘッドで再生した信号波形は非線形歪を含んだ波形となる。
【0004】
これら、すなわちNLTSとパーシャルイレージャからなる記録時の非線形歪と、再生ヘッドのMR素子の非線形特性に起因する再生時の非線形歪の和はビットエラーレートを左右する。そのため、高密度対応の媒体やヘッドの開発において、ビットエラーレートを計算する際に、これらの非線形性を定量的に評価することが重要となっている。ここで、これらの非線形性を定量的に評価するとは、記録時の信号と再生時の信号の関係を得ることを指す。再生時の信号波形からビットエラーレートを計算する方法は、非特許文献1に記述されている。記録時の信号と再生時の信号の関係を用いることで、再生ヘッドで再生した信号波形が非線形性を有していても、より正確な記録時の信号を得ることができる。
【0005】
再生ヘッドの非線形性の評価方法に関しては、非特許文献2に、周波数領域での評価方法が記述されている。本方法は、周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)をヘッドで再生した場合の信号波形の3次高調波成分のマグニチュードをV3、周期Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)をヘッドで再生した場合の信号波形の基本波成分のマグニチュードをV1とした場合に、非線形性の量をR31=V3/V1として算出する。ここで非線形性が無い場合にはR31=3、非線形性がある場合にはR31≠3であり、R31の値が3から離れているほど非線形歪が大きいとしている。しかし本方法は非線形歪の大小を評価できても、再生ヘッドの入出力の伝達特性を算出することはできなかった。
【0006】
また、非特許文献3に、時間領域での評価方法が記述されている。本方法は以下に述べる原理に基づく。1Tパターンの再生信号波形をv1(t)、3Tパターンの再生信号波形をv3(t)とした場合に、非線形性が無い場合にv3(t)は、v1(t)の位相を±2Tずらせた波形と元の波形との和として表わされる。すなわち以下が成り立つ。
【0007】
【数1】
【0008】
さらに再生ヘッドの伝達特性が時不変な関数f(x)として表わされ、さらにf(x)が逆関数f-1(x)を持つ場合、非線形歪を受けたそれぞれの波形u3(t)(=f(v3(t))、u1(t)(=f(v1(t))について以下が成り立つ。
【0009】
【数2】
【0010】
ここでf(x)-1を以下のように多項式で近似する。
【0011】
【数3】
【0012】
式(2)、(3)より次の式が導かれる。
【0013】
【数4】
【0014】
ここで、εはフィッティング誤差である。本方法は、非線形歪を含む1Tパターンと3Tパターンの時間波形データを取得し以下の正規方程式を作成する。
【0015】
【数5】
【0016】
ここで、u1(tn)、u3(tn) (t=t1,t2,..,tN)はそれぞれ、1Tパターンと3Tパターンの時間波形データである。
【0017】
そして上式によりεを最小化するα、βを擬似逆行列法によって求めることで、再生ヘッドの逆伝達特性を求める。ただし本方法は逆伝達特性f(x)が、f(0)=0かつf'(0)=1である多項式で近似できることを必要条件とした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】R. D. Cideciyan et al., IEEE J.on Selected Areas in Communications, 10(1),January 1992 p38-56 "A PRML System for Digital Magnetic Recording"
【非特許文献2】X.Xing and H.N.Bertam, J.Appl. Phys. 79(8), 15 April 1996 p5883-5885 "Experimental studies of nonlinearigies in MR heads"
【非特許文献3】B.A.Wilson et al., J.Appl. Phys. 81(8), 15 April 1997, p4828-4830"Generalized method for measuring read-back nonlinearity using a spin stand"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
一般に非線形歪を受けた信号波形は正・負のパルスの振幅が異なるアシンメトリ波形となる。再生回路のACカップリングにより正・負のパルスの面積が等しくなるようにベースラインが上下に移動するため、再生波形はDCオフセットを持つ。ところが従来の再生ヘッドの非線形性の評価方法は、逆伝達特性f(x)に対してf(0)=0なる制約を課していたため、再生波形がDCオフセットを持つ場合には、求められた逆伝達特性の精度が著しく低下する問題があった。
【0020】
本発明は、上述した従来の再生ヘッドの非線形性の評価方法の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、再生波形がDCオフセットを持つ場合でも、伝達特性の推定が可能な再生ヘッドの非線形性の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成させるために、本発明の磁気ヘッドの特性評価方法は、
磁気記録システムにおいて信号再生を司る再生ヘッドの非線形性を評価する方法であって、磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)を記録し、1Tパターンを再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む1Tパターンの波形データを取得するステップと、磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)を記録し、3Tパターンを再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む3Tパターンの波形データを取得するステップと、各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップと、パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、記録信号と再生信号との関係を得ることにより、再生信号から記録信号を求めることができ、さらに再生ヘッドの非線形性を評価するステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
また、確率的探索手段に基づく演算が、遺伝的アルゴリズムに従ってフィッティング関数の各パラメータを所定回数だけ繰り返し修正することにより、パラメータとDCオフセット値の最適な値を決定することを特徴とする。
【0023】
また、遺伝的アルゴリズムは、フィッティング関数のパラメータとDCオフセット値をエンコードした染色体を保持する複数の親個体の初期集団を発生させた後、親個体の各染色体に対して、所定の評価関数をそれぞれ計算し、得られた関数値より親個体の適応度を決定するステップと、適応度がより高い個体を優先的に選択することにより新たな親個体の集団を決定するステップと、新たな親個体の集団から2つの親個体の組を複数選択し、各組の各染色体に対して、交叉の操作を行うことにより2つの子個体の組を複数発生させるステップと、新たな親個体の集団から親個体を1つまたは複数選択し、各親個体の各染色体に対して、突然変異の操作を行うことにより新たな子個体を1つまたは複数発生させるステップと、新たな親個体と子個体を合わせて新たな親個体の集団を生成するステップとを複数回繰り返し行うことを特徴とする。
【0024】
また、各個体の各染色体をデコードして得られるフィッティング関数のパラメータとDCオフセット値に基づき、非線形歪を含む1Tパターン及び3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、補正した各波形データを周波数解析し、補正した1Tパターンの波形データの基本周波数成分のマグニチュードV1と、補正した3Tパターンの波形データの3次高調波成分のマグニチュードV3とをそれぞれ求め、R=(V1/V3-3)2を所定の評価関数として算出することを特徴とする。
【0025】
また、各個体の各染色体をデコードして得られるフィッティング関数のパラメータとDCオフセット値に基づき、非線形歪を含む1Tパターン及び3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、補正した1Tパターンの波形データと、3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形、3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形、および3Tパターンの波形を重ね合せた波形データとの、所定区間の平均2乗誤差を所定の評価関数として算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法によれば、ヘッド再生波形についてDCオフセットの補償が行われるので、ヘッド再生波形がDCオフセットを持つ場合に測定精度が著しく低下することが無くなる。そのため評価の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形性の評価装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形性の評価手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態における非線形歪を含む1Tパターンの波形を示した図である。
【図4】本発明の実施形態における非線形歪を含む3Tパターンの波形を示した図である。
【図5】本発明の実施形態における再生ヘッドの非線形特性を表わす図である。
【図6】本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法における非線形性の測定精度の検証結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係わる再生ヘッドの非線形性評価方法について、図面を用いて以下に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る再生ヘッドの非線形性の評価に用いられる評価装置100の概略構成図である。この評価装置100は、評価対象の再生ヘッド101の非線形性を評価するために、次のように構成されている。すなわち、この装置は、所定のデータ・パターンを発生するデータ・ジェネレータ103と、データ・パターンに応じた記録電流を発生するライト・アンプ104と、回転する磁気ディスク102の所定のトラックに対して記録・再生を行う磁気ヘッド101(正確には記録ヘッド)と、磁気ヘッド101(再生ヘッド)からの再生信号を増幅するためのリード・アンプ105と、増幅した信号波形112をサンプリングするための波形サンプリング部106、増幅した信号波形を観測するためのオシロスコープ107、および評価部108を備える。
【0030】
本評価装置で所定のパターンの記録を再生して、その再生波形のデータを収集するには、まず磁気ヘッド101(記録ヘッド)を磁気ディスク102の所定のトラックへ移動させた後、データ・ジェネレータ103から所定のデータ・パターンを発生させ、ライト・アンプ104によりデータ・パターンに応じたライト電流を発生し、磁気ヘッド101(記録ヘッド)によりライト電流の変化を磁束の変化に変換し、磁気ディスク102にデータ・パターンに応じた磁気信号を記録する。そして記録した磁気信号を磁気ヘッド101(再生ヘッド)で再生し、その再生信号をリード・アンプ105を経由して、波形サンプリング部106でサンプリングしてその波形データをメモリに格納する。波形サンプリング部106のメモリに保存された波形データは適宜評価部108が読み出して、磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性を表わすデータの演算に利用する。
【0031】
磁気ヘッド101は巨大磁気抵抗(GMR)素子(図省略)又はトンネル磁気抵抗(TMR)素子(図省略)を含む再生ヘッドと、単磁極又はリング状の記録磁極を有する記録ヘッドから構成される。また磁気ディスク102は、磁性膜が垂直磁気異方性を有する垂直記録媒体、又は面内磁気異方性を有する長手記録媒体を用いることができる。
【0032】
また、図示するように、この評価装置100は、さらに、算出された再生ヘッドの非線形性をグラフに表示するディスプレイ109、ディスク駆動部110、評価装置100の全体を制御する制御部111なども含んでいる。制御部111は、ユーザからの設定および開始指示にしたがって、内部メモリに内蔵したプログラムコードにより、評価装置100内のそれぞれの構成要素を制御して、最終的に本発明の方法を実行する。実行結果は、ディスプレイ109に表示する。制御部111は、マイクロ・プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェース等を備えた、基本的なコンピュータの構成を備えることができる。なお、評価装置100は、図1に示していないが、装置に通常備えられる、入出力のユーザ・インターフェースを備えている。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係わる再生ヘッドの非線形性評価方法を実施するための手順を示した図である。この手順は以下のステップで実施される。
【0034】
まずステップ200では、磁気ディスク102の所定のトラックに1Tパターンを記録し、その再生波形データを取得する。その具体的な手順は前述した手順と同様の手順となる。ここで1Tパターンは周期T(Tは記録時の非線形歪効果が無視できる十分に長い時間)で磁化反転するパターン(NRZI表記で111111....)である。磁気ディスク102に記録するパターンは、パーシャルイレージャの影響を除外するために、記録時の非線形歪みが発生しない程度の線記録密度、例えば100kFCI以下で記録することが好ましい。上記1Tパターンは記録時の非線形歪みが発生しない程度の線記録密度(100kFCI以下)で記録されており、パーシャルイレージャは含まれていないと仮定した。またパターンを記録する所定のトラックは、記録時の非線形歪が生じないようにあらかじめAC消去されているものとする。本ステップの操作により波形サンプリング部106の図示しないメモリに1Tパターンの波形データが取得される。取得した1Tパターンの波形データを図3に示す。図3中の値S1、S1‘はそれぞれ斜線部の面積を表し、Vdc1はS1=S1’となるように決定される。本波形データは、磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性により歪を受け、正負の極性のパルスが非対称になっている。正負の極性パルスの非対称性を数値で表す一例として、V1h、V1h‘を、V1h=(V1u+Vdc1)/2、V1h’=(V1l+Vdc1)/2と定義する。図3では、|V1h|≠|Vh1’|であり、正負の極性パルスは非対称になっている。またリードアンプ105のアナログ回路(図省略)のACカップリングにより、波形のベースラインは正負極性のパルスの面積が等しくなる位置に移動するため、波形はDCオフセットを有しており、DCオフセット値はVdc1である。
【0035】
次にステップ201では、磁気ディスク102の所定のトラックに3Tパターンを記録し、その再生波形データを取得する。ここで3Tパターンは周期3Tで磁化反転するパターン(NRZI表記で100100....)である。本ステップの操作により波形サンプリング部106の図示しないメモリに3Tパターンの波形データが保存される。本波形データを図4に示す。図4の波形データも図3に示すh波形データと同様の理由により非線形歪とDCオフセットを有している。
【0036】
次にステップ202〜207では、評価部108が磁気ヘッド101(再生ヘッド)の非線形性を求めるために遺伝的アルゴリズムを実行する。
【0037】
遺伝的アルゴリズム(GA : Genetic Algorithm)は、自然淘汰によって選択された遺伝子が残されるという、生物の進化の過程を真似て作られた確率的探索、学習、最適化の手法である。GAは以下の処理を繰り返すことで人工的な進化を行い最適な解を発見する。
【0038】
初期集団の生成 : 決められた個体数の染色体をランダムに生成する。一般に、染色体はバイナリーコードで表される。
【0039】
適応度の評価 : それぞれの個体がどの程度環境に適応しているかを、予め定められた評価関数を用いて、個体ごとに評価する。
【0040】
選択 : 評価関数値に基づいて適応度の高い個体を2つ選択し、両親とみなす。
【0041】
交叉 : 選択によって選出された、両親とみなされた個体に対して、交叉確率に従ってある交叉位置で双方の染色体の一部ずつを採ってきて採った部分を交換し、子の染色体を生成する。
【0042】
突然変異 : 突然変異確率に従って染色体の一部の値をランダムな値に置き換える。交叉だけでは生成できない子を生成して個体群の多様性を維持する働きをする。
【0043】
新しく生成された子を加えた新しい集団を生成し、適応度の評価に戻り、突然変異までを繰り返し行う。
【0044】
本実施例ではGAを用いて再生ヘッドの非線形性を求めるために、以下のフィッティング関数を用いて再生ヘッドの非線形性を近似する。
【0045】
【数6】
【0046】
そしてフィッティング関数の係数a、b、cと、1Tパターンと3TパターンのそれぞれのDCオフセット値Vdc1、Vdc2の5個の変数を最適化の対象とする。これらの変数は染色体に所定の形式でエンコードされる。本実施例では染色体の長さは100ビットとし、下表1のように各変数に20ビットずつ割り当てる。
【0047】
【表1】
【0048】
染色体の各20ビットのデータについて、それぞれ00...0がその変数の下限値、11..1が上限値となるようにエンコードする。ここで各変数の下限値と上限値は、再生ヘッドの非線形性とDCオフセットのばらつきを考慮して決定する。
【0049】
次にステップ202〜207における遺伝的アルゴリズムの手順を順に説明する。
【0050】
まずステップ202では、ある染色体を有するフィッティング関数を1個の個体とし、初期設定としてN個の個体からなる初期集団を生成する。ここでNの値としては50〜200程度が望ましい。そして上記5個の変数のそれぞれの下限値と上限値の範囲内でランダムな値を選び、各個体の染色体の初期値として設定する。
【0051】
次にステップ203では、各個体について、その染色体の値と1Tパターン及び3Tパターンの波形データから評価関数を計算し、その結果から各個体の適応度を決定する。
【0052】
そのためまず、評価部108が波形サンプリング部106の図示しないメモリに格納されている1Tパターンと3Tパターンの波形データを読み出す。
【0053】
そして集団の中の一つの個体について、その染色体をデコードすることにより、フィッティング関数の係数a,b,cとDCオフセットVdc1、Vdc2を得る。そしてフィッティング関数の係数a,b,cから再生ヘッドの入力と出力の変換テーブルを作成する。
【0054】
そして1Tパターンの波形データに対してDCオフセットの補償と非線形性の補正を行う。これは1Tパターンの波形データからDCオフセット値Vdc1を引き算すると共に、変換テーブルの補間により入力電圧に変換することにより行われる。同様に3Tパターンの波形データに対してもDCオフセット(Vdc2)の補償と非線形性の補正を行う。
【0055】
次に補正した1Tパターンの波形データを周波数解析し基本周波数(1/2T)のマグニチュードV1を求める。また補正した3Tパターンの波形データを周波数解析し3次高調波(1/6T×3)のマグニチュードV3を求める。そして本実施例においては、以下で定義されるRを計算し、これをその個体の評価関数の値とする。
【0056】
【数7】
【0057】
これを集団の全ての個体について行う。そして評価関数の値に基づいて各個体の適応度を決定する。ここで本実施例では下式により適応度を決定する。
【0058】
【数8】
【0059】
ここでxiは各固体を評価関数の大きいものから順位付けした場合のi番目の個体の順位、N'は親個体と子個体を合わせた集団の総個体数である。評価関数が小さい個体ほど高い適応度を有する。なおGAにおける最初の繰り返しでは子個体は存在しないので、N'は親個体の数Nに等しい。
【0060】
次にステップ204では、適応度の高い順にN個の個体を選び、新たな親として残す。次にステップ205では、親個体から複数のペアを選び、それぞれの染色体に対して交叉の操作を行い子個体を作成する。次にステップ206では、親個体と子個体について一定の確率で染色体の特定のビットを反転させることにより突然変異の操作を行う。次にステップ207では、終了条件の判定を行う。すなわちステップ203〜207の処理の繰り返し回数が所定値に到達したら終了と判定する。所定値に達していない場合は、ステップ203に戻る。
【0061】
ステップ203〜207の処理を繰り返す度に、適応度の低い個体(評価関数値が大きい個体)が淘汰される。その一方で、評価関数値のより小さな個体が発見されるとそれが優先的に保存される。その結果、集団の平均的な評価関数値は徐々に減少する。そして十分な繰り返し回数の後、最も適応度の高い個体の染色体は、再生ヘッドの非線形性を良好に近似するフィッティング関数の係数(a,b,c)と、1Tパターンと3Tパターンの波形データのそれぞれのDCオフセット(Vdc1,Vdc2)の良好な推定値を保持する。
【0062】
次にステップ208では、集団の中の最も高い適応度の個体を選択し、その染色体をデコードしてフィッティング関数の係数a,b,cを得る。そして最後に、再生ヘッドの非線形性の測定結果として図5に示すようなフィッティング関数のグラフをディスプレイ109に表示する。
【0063】
図5に示すフィッティング関数により、記録信号と再生信号の関係を得ることができ、したがって再生信号からより正確な記録信号を求めることができる。さらに、図5のフィッティング関数から再生ヘッドの非線形性の程度を知ることができる。
【0064】
なお本実施例で定義された評価関数と異なる定義による評価関数を用いることもできる。
【0065】
別の定義による評価関数の一例を以下に挙げる。「背景技術」の式(1)に示されるように、非線形歪の無い場合、1Tパターンの波形は、3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形と、3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形と、3Tパターンの波形とを重ね合せた波形と等しい。このことを利用して、例えば、本実施例で述べた手順に基づき、1Tパターンの波形データと、3Tパターンの波形データのそれぞれに対してDCオフセットの補償と非線形性の補正を行った後、3Tパターンの波形データの重ね合わせによる1Tパターンの波形データと、本来の1Tパターンの波形データの所定区間の平均2乗誤差を計算し、これを評価関数とすることもできる。
【0066】
次に、本発明の再生ヘッドの非線形性評価方法における非線形性の測定精度をシミュレーションにより検証した結果を図6に示し、図6を引用しながら説明する。
【0067】
図6に示す301は、再生ヘッドの入出力特性、302は本発明の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性、303は従来の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性である。再生信号のDCオフセットは+0.1Vとした。
【0068】
図6に示すように、本発明の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性302は、再生ヘッドの入出力特性301と極めて良く一致した。一方、従来の非線形性評価方法により推定した再生ヘッドの入出力特性303は、入力電圧の絶対値が0.3Vより大きい場合に、再生ヘッドの入出力特性301との差を明確に認識できる。
【0069】
この結果から、本発明の非線形性評価方法は再生ヘッドの入出力特性を従来方式より高い精度で算出することができることが分かる。
【符号の説明】
【0070】
100 磁気ディスクの特性評価装置
101 磁気ヘッド
102 磁気ディスク
103 データ・ジェネレータ
104 ライト・アンプ
105 リード・アンプ
106 波形サンプリング部
107 オシロスコープ
108 評価部
109 ディスプレイ
110 ディスク駆動部
111 制御部
112 リード・アンプ105の出力信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録システムにおいて信号再生を司る再生ヘッドの非線形性を評価する方法であって、
磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)を記録し、前記1Tパターンを前記再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む前記1Tパターンの波形データを取得するステップと、
前記磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)を記録し、前記3Tパターンを前記再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、前記非線形歪を含む前記3Tパターンの波形データを取得するステップと、
前記各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、前記再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、前記各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップと、
前記パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、記録信号と再生信号との関係を得ることにより、前記再生信号から前記記録信号を求めることができ、さらに前記再生ヘッドの非線形性を評価するステップと
を含むことを特徴とする再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項2】
前記確率的探索手段に基づく演算が、遺伝的アルゴリズムに従って前記フィッティング関数の各パラメータを所定回数だけ繰り返し修正することにより、前記パラメータと前記DCオフセット値の最適な値を決定することを特徴とする請求項1に記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項3】
前記遺伝的アルゴリズムは、前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値をエンコードした染色体を保持する複数の親個体の初期集団を発生させた後、
前記親個体の各染色体に対して、所定の評価関数をそれぞれ計算し、得られた関数値より前記親個体の適応度を決定するステップと、
前記適応度がより高い個体を優先的に選択することにより新たな親個体の集団を決定するステップと、
前記新たな親個体の集団から2つの親個体の組を複数選択し、各組の各染色体に対して、交叉の操作を行うことにより2つの子個体の組を複数発生させるステップと、
前記新たな親個体の集団から親個体を1つまたは複数選択し、各親個体の各染色体に対して、突然変異の操作を行うことにより新たな子個体を1つまたは複数発生させるステップと、
前記新たな親個体と子個体を合わせて新たな親個体の集団を生成するステップと
を複数回繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項4】
前記各個体の各染色体をデコードして得られる前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値に基づき、前記非線形歪を含む前記1Tパターン及び前記3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、
前記補正した各波形データを周波数解析し、前記補正した1Tパターンの波形データの基本周波数成分のマグニチュードV1と、前記補正した3Tパターンの波形データの3次高調波成分のマグニチュードV3とをそれぞれ求め、R=(V1/V3-3)2を前記所定の評価関数として算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項5】
前記各個体の各染色体をデコードして得られる前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値に基づき、前記非線形歪を含む前記1Tパターン及び前記3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、
前記補正した1Tパターンの波形データと、前記3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形、前記3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形、および前記3Tパターンの波形を重ね合せた波形データとの、所定区間の平均2乗誤差を前記所定の評価関数として算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項1】
磁気記録システムにおいて信号再生を司る再生ヘッドの非線形性を評価する方法であって、
磁気ディスクに周期1Tで磁化反転するパターン(1Tパターン)を記録し、前記1Tパターンを前記再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、非線形歪を含む前記1Tパターンの波形データを取得するステップと、
前記磁気ディスクに周期3Tで磁化反転するパターン(3Tパターン)を記録し、前記3Tパターンを前記再生ヘッドでリードし、リードした再生信号波形をサンプリングして、前記非線形歪を含む前記3Tパターンの波形データを取得するステップと、
前記各波形データに関する確率的探索手段に基づく演算により、前記再生ヘッドの伝達特性を近似する所定のフィッティング関数のパラメータと、前記各波形データのDCオフセット値をそれぞれ求めるステップと、
前記パラメータにより決定されるフィッティング関数をプロットし、記録信号と再生信号との関係を得ることにより、前記再生信号から前記記録信号を求めることができ、さらに前記再生ヘッドの非線形性を評価するステップと
を含むことを特徴とする再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項2】
前記確率的探索手段に基づく演算が、遺伝的アルゴリズムに従って前記フィッティング関数の各パラメータを所定回数だけ繰り返し修正することにより、前記パラメータと前記DCオフセット値の最適な値を決定することを特徴とする請求項1に記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項3】
前記遺伝的アルゴリズムは、前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値をエンコードした染色体を保持する複数の親個体の初期集団を発生させた後、
前記親個体の各染色体に対して、所定の評価関数をそれぞれ計算し、得られた関数値より前記親個体の適応度を決定するステップと、
前記適応度がより高い個体を優先的に選択することにより新たな親個体の集団を決定するステップと、
前記新たな親個体の集団から2つの親個体の組を複数選択し、各組の各染色体に対して、交叉の操作を行うことにより2つの子個体の組を複数発生させるステップと、
前記新たな親個体の集団から親個体を1つまたは複数選択し、各親個体の各染色体に対して、突然変異の操作を行うことにより新たな子個体を1つまたは複数発生させるステップと、
前記新たな親個体と子個体を合わせて新たな親個体の集団を生成するステップと
を複数回繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項4】
前記各個体の各染色体をデコードして得られる前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値に基づき、前記非線形歪を含む前記1Tパターン及び前記3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、
前記補正した各波形データを周波数解析し、前記補正した1Tパターンの波形データの基本周波数成分のマグニチュードV1と、前記補正した3Tパターンの波形データの3次高調波成分のマグニチュードV3とをそれぞれ求め、R=(V1/V3-3)2を前記所定の評価関数として算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【請求項5】
前記各個体の各染色体をデコードして得られる前記フィッティング関数の前記パラメータと前記DCオフセット値に基づき、前記非線形歪を含む前記1Tパターン及び前記3Tパターンの各波形データに対して、オフセットの補償及び非線形の補正を行い、
前記補正した1Tパターンの波形データと、前記3Tパターンの波形を+2Tだけ時間シフトした波形、前記3Tパターンの波形を−2Tだけ時間シフトした波形、および前記3Tパターンの波形を重ね合せた波形データとの、所定区間の平均2乗誤差を前記所定の評価関数として算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の再生ヘッドの非線形性評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−48776(P2012−48776A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188481(P2010−188481)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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