説明

再生信号処理装置、及び再生信号処理方法

第1図に示すように、本発明の再生信号処理装置(100)は、パターン予測器(103)において、再生信号Xのデータ系列である予測値を予測すると共に、該予測値と予め設定された特定パターンとが一致するか否かを判別し、適応等化器(110)において、前記パターン予測器(103)からの判別結果に応じてデジタルフィルタの係数Wを適時更新しながら再生信号Xに対し適応等化処理を行い、選択回路(104)において、前記判別結果に基づいて、波形等化出力Yとして、前記適応等化器(110)からの出力か、あるいは前記予測値のいずれかを出力するようにした。このような構成の再生信号処理装置(100)は、再生信号に含まれる非線形歪みに対応した最適な波形等化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理装置、及びその再生信号処理方法に関する。
【背景技術】
光ディスク、磁気ディスク等の再生回路では、再生信号に含まれる波形歪みやノイズを除去するために、その再生回路内に再生信号の波形等化を行う等化器を設けて、記録系列中の符号間干渉の補償が行われており、その波形等化の方法としては、該再生信号から波形歪みを推定して、等化器の特性を決定するという適応等化の方法がとられている。
ここで、第12図を参照しながら、光ディスク、磁気ディスク等の記録ピットが一様に形成されている場合と、該記録ピットにムラがある場合の再生信号を比較する。第12図は、記録ピットが一様に形成されている場合と、記録ピットにムラがある場合における、それぞれのマーク形状とその再生信号を示した波形図である。
第12図に示すように、記録ピットが一様に形成されている場合、そのマーク形状がきれいな長方形になっている。一方、記録ピットにムラが生じている場合、そのマーク形状はピットの両端や中央での歪みが大きくなっている。そして、これらの信号を再生回路のピックアップなどで読み取ると、記録ピットが一様に形成されている場合は、再生信号のレベルはその中央部において一定値をとるが、記録ピットにムラがある場合は、再生信号のレベルはその中央部において歪み、再生信号Xは、ある周波数が重畳された信号のようになってしまう。
しかし、従来の等化器は、再生信号の遅延、係数の乗算、加算といった線形操作のみによって構成され、再生信号の線形歪みの除去を目的としているため、光ディスクや磁気ディスク等の媒体の製造ばらつきなどが一因の非線形歪みが再生信号に含まれていた場合(例えば、第12図の記録ピットにムラがある場合の再生信号参照)、従来の等化器ではその歪み成分を取り除くことができなかった。そして、この再生信号に含まれる非線形歪みは、等化器の等化能力を著しく低下させるため、例えば、ビットエラーレートの劣化など、再生回路の性能の低下が避けられなかった。
この従来の問題を解決したものとして、特許第2768296号公報に、再生信号の非線形歪みの影響を考慮した波形等化処理を行う再生信号処理装置が開示されている。
以下、第13図、第14図、及び第15図を用いて、従来の再生信号処理装置について説明する。第13図は、従来の再生信号処理装置の構成を示す図であり、第14図は、従来の再生信号処理装置におけるデジタルフィルタの詳細な構成を示す図であり、第15図は、従来の再生信号処理装置における係数更新器の詳細な構成を示す図である。
第13図において、従来の再生信号処理装置400は、デジタルフィルタ401と、係数更新器402とから構成されている。そして、前記デジタルフィルタ401は、CDやDVD等の光ディスクから再生された信号が再生回路内の量子化部(図示せず)でデジタル化された再生信号Xを受け取るフィルタで、ここでは第14図に示すように5タップのFIR(Finite Impulse Response)フィルタであるとする。以下、第14図を用いて詳細に説明すると、前記デジタルフィルタ401は、再生信号Xの伝搬を遅延させるための複数段の遅延素子を構成するように互いに接続された5個のDフリップフロップ411a〜411eと、該各Dフリップフロップ411a〜411eから出力される遅延信号X〜Xにそれぞれ係数W〜Wを乗算する5個の乗算器412a〜412eと、該各乗算器412からの出力を加算する1個の加算器413とからなる。よって、デジタルフィルタ401の出力X’は、再生信号Xを遅延させた遅延信号X〜Xを各々係数W〜Wで乗じ、その乗算結果すべてを加算器413で加算した値となる。
そして、前記係数更新器402は、前記デジタルフィルタ401の等化特性を決定する係数W〜Wを、該デジタルフィルタ401の出力に応じて適応的に更新するものであり、ここでは、第15図に示すように、相関器421、積分器422、減算器423、基準振幅発生回路424、三値判定回路425、誤差信号選択回路426、及びスイッチ427で構成されている。そして、前記三値判定回路425は、前記デジタルフィルタ401から出力されるデジタルフィルタ出力X’を予め設定したしきい値によって、3つの値(例えば、−1,0,+1)に判定し、前記基準振幅発生回路424は、該三値判定回路425から出力される3つの値(例えば、−1,0,+1)を、デジタルフィルタ401の出力レベルに対応する振幅値にし、前記減算器423は、前記基準振幅発生回路424からの出力と、前記デジタルフィルタ出力X’との差分である等化誤差εを算出し、前記相関器421は、デジタルフィルタ401から入力される遅延信号Xと前記減算器423からの等化誤差εとの相関をとり、前記積分器422は、該相関器421においてとられた各相関をそれぞれ時間積分した値を、更新後の係数Wとしてデジタルフィルタ401に供給し、前記誤差信号選択回路426は、前記三値判定回路425の出力の時系列情報に基づいて、前記減算器423において算出された等化誤差εを相関器421に入力するか否かを選択する選択信号を発生させ、前記スイッチ427は、該誤差信号選択回路426からの選択信号に応じて、そのオン、オフを切り替える。
このような従来の再生信号処理装置400では、前記係数更新器402において、前記三値判定回路425の出力のうち、非線形歪みがあると思われる特徴的なパターンを予め誤差信号選択回路426に設定しておき、該誤差信号選択回路426で、その予め設定された特徴的なパターンと前記三値判定回路425からの出力が一致するか否かを判断して、一致しなければスイッチ427をオンにして前記係数W〜Wの更新を行い、一致すればスイッチ427をオフにして前記係数W〜Wの更新を行わないようにすることで、再生信号Xの非線形歪みが前記係数W〜Wの更新に与える影響を抑制することができる。
しかしながら、前述した係数更新器402における係数更新の適応制御のみが波形等化の失敗の原因ではなく、前記デジタルフィルタ401において波形等化が施されたデジタルフィルタの出力X’(以下、「波形等化出力X’」ともいう。)そのものが、波形等化失敗の一因となる場合がある。
以下、第16図を用いて具体的に説明する。第16図は、非線形歪みを含む再生信号Xと、該再生信号Xを適応等化した波形等化出力Yとを示す図である。
第12図で説明したように、非線形歪みの大きい再生信号は、再生信号の正常な波形には含まれない、ある周波数帯域の信号を重畳したものとなってしまう。この重畳される周波数帯域が、再生信号の周波数帯域とはかけ離れた周波数帯域である場合には、該重畳される信号を前記デジタルフィルタ401で容易に取り除くことができるが、前記重畳される周波数帯域が、前記再生信号と同じような周波数帯域の場合は、その再生信号の波形の大きな歪みが、非線形歪みの影響による波形の歪みなのか、それとも再生信号の正常な波形なのか、の区別がつけられないため、波形の非線形歪みの補正が非常に困難になる。
例えば、第16図に示す再生信号Xの波形の大きな歪みA〜D部分のうち、A,B,D部分は正常な波形に同じ周波数帯域の信号が重畳された非線形歪みであり、C部分は正常な再生信号の波形である。このような波形に対して従来装置400により波形等化を施すと、再生信号Xが、正常な波形部分の周波数帯域と同じ周波数帯域の歪み成分をもっている場合には、該歪み部分において係数W〜Wの更新が行われなかったとしても、その再生信号そのものの歪み成分が同様に増幅されてしまうので、結局波形等化は失敗してしまう(第16図のA,B,D部分参照)。そして、この波形等化の失敗は、符号化の制約を満たしてしまうと、図示していない後段の復号器、例えばビタビ復号器においても誤り訂正が不可能であるためにそのまま復号化されてしまうこととなるので、再生回路の復号性能を劣化させる一因となる。
従って、従来の再生信号処理装置400のように、再生信号Xの波形の非線形歪みと思われる部分において、前記係数W〜Wの更新を行わないようにするだけでは、前記波形等化出力X’に対する非線形歪みの影響を抑制できない場合があり、この結果、従来の再生信号処理装置400では、デジタルフィルタ401において非線形歪みを考慮した波形等化特性を十分なものとすることができず、非線形歪みを含む再生信号を最適に波形等化することができないという課題があった。
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、再生信号に含まれる非線形歪みに対応した、最適な波形等化を実現できる再生信号処理装置を提供することを目的とするものである。
【発明の開示】
前記課題を解決するために、本発明の再生信号処理装置は、記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理装置であって、前記再生信号を等化するデジタルフィルタと、前記デジタルフィルタの等化特性を決定する係数を適応的に更新する係数更新器と、前記再生信号のデータ系列を予測して前記再生信号の予測値を出力するとともに、前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力するパターン予測器と、波形等化後の出力として、前記デジタルフィルタの出力か、前記再生信号の予測値のいずれか一方を選択し、出力する選択回路と、を備えるものである。
これにより、再生信号に対して適応等化処理をした後、波形等化出力として、該適応等化処理した出力か、あるいは該再生信号から予測されたデータ系列のいずれかを選択して出力するようにしたので、該再生信号に含まれる非線形歪みに対応した最適な波形等化を実現することができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記選択回路は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記デジタルフィルタの出力を選択し、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合、前記予測値を選択するものである。
これにより、前記再生信号に含まれる非線形歪みが、波形等化後の出力に与える影響を最適に抑制することができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記係数更新器は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記デジタルフィルタの係数を更新し、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が特定パターンでないことを示す場合、前記デジタルフィルタの係数を更新しないものである。
これにより、前記再生信号に含まれる非線形歪みが、前記デジタルフィルタの係数の更新に与える影響を抑制することができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記係数更新器は、前記予測値を用いて、前記デジタルフィルタの係数を適応的に更新するものである。
これにより、前記再生信号に含まれる非線形歪みが前記デジタルフィルタの係数の更新に与える影響を、最適に抑制することができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記デジタルフィルタは、前記再生信号を多値に等化して出力し、前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記再生信号のデータ系列のうちの、最小値から最大値に、及び該最大値から該最小値に遷移する部分であるものである。
これにより、再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記デジタルフィルタは、前記再生信号を多値に等化して出力し、前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記再生信号のデータ系列のうちの、最小値及び最大値以外の部分であるものである。
これにより、再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記パターン予測器は、パーシャルレスポンス等化を用いて、前記再生信号のデータ系列を予測し、該予測した再生信号のデータ系列が、前記特定パターンと一致するか否かを判別するものである。
これにより、該再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
また、本発明の再生信号処理装置は、記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理装置であって、前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力するパターン予測器と、前記判別結果に基づいて、前記再生信号に対して部分的にフィルタ処理を行う予測フィルタと、前記予測フィルタの出力を適応等化する適応等化器とを、備えるものである。
これにより、再生信号は部分的にフィルタ処理が施された後、適応等化されることとなり、該再生信号に含まれる非線形歪みに対応した最適な波形等化を実現することができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記パターン予測器は、前記再生信号のデータ系列の判別を行うと共に、前記再生信号のデータ系列を予測して前記再生信号の予測値を出力し、前記予測フィルタは、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記再生信号を出力し、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合、前記再生信号の予測値を出力するものである。
これにより、再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記予測フィルタのフィルタ処理は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合のみ、前記再生信号の波形からある特定の周波数帯域を除去するものである。
これにより、前記再生信号のデータ系列の特定パターン部分以外でフィルタ処理による影響が生じないようにして、後段の適応等化器に、非線形歪みのほとんどない信号を供給できる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記予測された前記再生信号のデータ列のうちの、最小値から最大値に、及び該最大値から該最小値に遷移する部分である。
これにより、再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
さらに、本発明の再生信号処理装置において、前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記予測された前記再生信号のデータ列のうちの、最小値及び最大値以外の部分である。
これにより、再生信号の正常な波形と同じ周波数帯域の非線形歪みが含まれていても、該非線形歪みが波形等化後の出力に与える影響を抑制して、波形等化を最適に行うことができる。
また、本発明の再生信号処理方法は、記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理方法であって、波形の等化特性を決定する係数を更新しながら、前記再生信号を適応的に等化して出力する適応等化ステップと、前記再生信号のデータ系列を予測して該再生信号の予測値を出力する予測ステップと、該再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力する判別ステップと、波形等化後の出力として、前記等化ステップの出力か、前記予測ステップの出力のいずれか一方を選択し、出力する選択ステップと、を含むものである。
これにより、波形等化出力として、適応等化処理した再生信号か、あるいは該再生信号から予測された予測値のいずれかが選択されて出力されることとなり、該再生信号に含まれる非線形歪みに対応した最適な波形等化を実現することができる。
また、本発明の再生信号処理方法は、記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理方法であって、前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力する判別ステップと、前記判別結果に基づいて、前記再生信号に対して部分的にフィルタ処理を行うフィルタステップと、前記フィルタステップの出力を適応等化する適応等化ステップとを、含むものである。
これにより、再生信号に対してフィルタ処理を行った後、該フィルタ処理後の出力を適応等化することができるため、該再生信号に含まれる非線形歪みに対応した最適な波形等化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の構成を示す図である。
第2図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の、係数更新器の詳細な構成を示す図である。
第3図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の、パターン予測器の詳細な構成を示す図である。
第4図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の、パターン予測器の動作を示す波形図である。
第5図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置に入力される再生信号が、正常な場合(Xa)と非線形歪みが大きい場合(Xb)とにおける、それぞれの再生信号とその予測値とを示す波形図である。
第6図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の、係数更新器の動作を説明する図である。
第7図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置の、選択回路の動作を説明する図である。
第8図は、本発明の実施の形態1に係る再生信号処理装置に入力された再生信号と、該再生信号の予測値と、該再生信号を等化処理した波形等化出力と、を示す波形図である。
第9図は、本発明の実施の形態2に係る再生信号処理装置の構成を示す図である。
第10図は、本発明の実施の形態2に係る再生信号処理装置の、予測フィルタの動作を示す波形図である。
第11図は、本発明の実施の形態2に係る再生信号処理装置の変形例の、予測フィルタの動作を示す波形図である。
第12図は、記録媒体に記録される記録ピットが一様な場合と、ムラが生じている場合とにおける、マーク形状とその再生信号を示す図である。
第13図は、従来の再生信号処理装置の構成を示す図である。
第14図は、従来の再生信号処理装置の、デジタルフィルタの詳細な構成を示す図である。
第15図は、従来の再生信号処理装置の、係数更新器の詳細な構成を示す図である。
第16図は、従来の再生信号処理装置に入力された再生信号と、該再生信号を等化処理した波形等化出力とを示す波形図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(実施の形態1)
以下、第1図〜第8図、及び第14図を用いて、本実施の形態1に係る再生信号処理装置について説明する。
本実施の形態1においては、非線形歪みを含む再生信号に対して適応等化処理を行う場合に、その非線形歪みの影響を、デジタルフィルタの等化特性を決定する係数W〜Wの更新に対してだけでなく、該デジタルフィルタから出力される適応等化後の波形等化出力に対しても考慮するようにしたものである。
まず、第1図〜第3図、及び第14図を用いて、本実施の形態1における再生信号処理装置の構成について説明する。第1図は、本実施の形態1に係る再生信号処理装置の構成を示す図であり、第2図は、本実施の形態1に係る再生信号処理装置の係数更新器の詳細な構成を示す図であり、第3図は、本実施の形態1に係る再生信号処理装置のパターン予測器の詳細な構成を示す図である。
第1図において、本実施の形態1の再生信号処理装置100は、デジタルフィルタ101、及び係数更新器102とからなる適応等化器110と、パターン予測器103と、選択回路104とで構成されているものである。
そして、前記適応等化器110の前記デジタルフィルタ101は、CD、DVDなどの光ディスクから再生された信号が、該適応等化器110の前段の量子化回路(図示せず)においてデジタル化された再生信号Xを受け取るものであり、前記係数更新器102は、前記デジタルフィルタ101の等化特性を決定する係数W〜Wを、再生信号Xと、後述するパターン予測器103の予測値P及び判別結果と、前記デジタルフィルタ101の出力X’とに応じて、適応的に更新するものであり、前記適応等化器110は、該係数更新器102において適時更新された係数Wを用いて、前記デジタルフィルタ101において該再生信号Xを適応等化するものである。なお、本実施の形態1では、前記デジタルフィルタ101の構成が、前述した従来のデジタルフィルタ401と同様、第14図に示される5タップのFIR(Finite Impulse Response)フィルタであるものとし、前記係数更新器102において適時更新される係数Wは5つ(W〜W)であるとする。
そして、前記パターン予測器103は、再生信号Xから得られる2値のデータ系列(予測値P)を予測すると共に、その予測したデータ系列である予測値Pが、予め設定された特定のパターンと一致しているか否かを判別し、その判別結果を出力するものであり、さらに、前記選択回路104は、前記デジタルフィルタ101からのデジタルフィルタ出力X’と、前記パターン予測器103からの前記予測値P及び判別結果とを受信し、該判別結果に基づいて、前記デジタルフィルタ出力X’か、前記予測値Pのいずれか一方を、波形等化出力Yとして出力するものである。
以下、第2図及び第3図を用いて、前記係数更新器102と、前記パターン予測器103の詳細な構成について説明する。
まず、前記係数更新器102は、第2図に示すように、デジタルフィルタ101から出力されるデジタルフィルタ出力X’と、予測値Pとの差分である等化誤差εを算出する減算器221と、クロック遅延を考慮して前記デジタルフィルタ101において再生信号XをDフリップフロップにより遅延させた各遅延信号Xと、前記減算器221からの等化誤差εとの相関をとる乗算器222と、該乗算器222からの出力を増幅率μで増幅する増幅器223と、該増幅器223からの出力と、(n−1)番目の係数Wn−1とを加算して、更新後の前記係数Wを出力する加算器224と、前記予測パターン測定器103からの判別結果を元に、前記加算器224から更新後の係数Wを出力するか否かを制御する制御回路225とからなり、前記制御回路225の制御の下、前記等化誤差εの2乗を最小にするように係数Wを更新していくことで、再生信号Xの波形特性に応じたデジタルフィルタ101の等化特性を適応制御するものである。なお、第2図に示す係数更新器102の構成では、1回の更新につき1個の係数Wしか更新できないが、同様の回路を係数Wの個数分(ここでは5つ)用意すれば、1回の更新ですべての係数Wn−4,Wn−3,Wn−2,Wn−1,W(ここでは、係数W〜W)を更新できる。
そして、前記パターン予測器103は、第3図に示すように、再生信号Xを1クロック遅延させるDフリップフロップ231a〜231dと、該再生信号Xと前記Dフリップフロップ231aにより1クロック遅延させた信号とを加算する加算器232と、前記加算器232の出力の符号を算出する符号器233と、該符号器233からの出力と、該符号器233の出力を3つのDフリップフロップ231b〜231dによりそれぞれ1クロック遅延させた各出力とを加算することでPR(1,1,1,1)を実行する加算器234と、前記PR(1,1,1,1)の結果より予測値Pを出力する予測値メモリ235と、その予測値Pが予め設定されていた特定パターンか否かを判別する判別器236とからなり、パーシャルレスポンスPR(1,1,1,1)を使って、再生信号Xのデータ系列を予測して予測値Pを出力すると共に、該予測された予測値Pが、予め設定されていた前記特定パターンか否かを判別して、その判別結果を出力するものである。なお、前記PR(1,1,1,1)とは、1+D+D+Dで得られる信号であり、Dm(m=1〜3)はmクロックだけ遅延した信号のことである。そして、多値に等化された再生信号Xの2値のデータ系列(予測値P)が、前記PR(1,1,1,1)によって得ることができるのは、DVDの信号が、EFM+という変復調方式により符号化され、記録時にはNRZI(Non Return to Zero Inverted)という変調方式で記録されるためである。
次に、第4図〜第8図を用いて、前述した構成を有する本実施の形態1に係る再生信号処理装置の一連の動作について説明する。第4図は、本実施の形態1におけるパターン予測器の各部において得られる値を示す図である。
まず、図示されていない量子化手段によりデジタル化された再生信号Xが、適応等化器110に入力されると共に、パターン予測器103に入力される。
前記適応等化器110では、前記デジタルフィルタ101において、入力された再生信号Xに対し、既に説明した従来装置400と同様、係数更新器102から供給される係数W〜Wに応じた適応等化を実行し、該等化処理後のデジタルフィルタ出力X’を選択回路104に出力する。
これと同時に、前記パターン予測器103では、入力された再生信号Xのデータ系列を予測してそれを再生信号Xの予測値Pとして選択回路104に出力すると共に、その予測した前記予測値Pが予め設定された特定パターンと一致しているか否かを判別して、その判別結果を、前記係数更新器102及び選択回路104に出力する。
以下、第4図を用いて、前記パターン予測器103の動作を詳細に説明すると、まず、第4図に示すような値を有する再生信号Xがパターン予測器103に入力されると、該再生信号XはDフリップフロップ231aにより1クロック遅延された後、加算器232において再生信号Xと加算されて、値(1+D)Xが得られる。ここで、まず(1+D)という演算を行うのは、ナイキストフィルタによる補間フィルタと同等の機能を簡易的に実現するためである。ここでは、演算(1+D)を行うことによって、隣り合う2つのサンプリング点の中点と等価なレベルを得ている。なお、複数タップのFIRフィルタでナイキストフィルタを構成してもよい。
次に、前記加算器232から出力された値(1+D)Xは、符号器233に入力され、該符号器233において、符号(1+D)Xの値を得る。ここでは、前記加算器232の出力(1+D)Xの値が負のとき、符号(1+D)Xの値を“0”とし、前記の値が負でないとき、符号(1+D)Xの値を“1”としている。
そして、前記符号器233から出力された符号(1+D)Xの値は、Dフリップフロップ231b〜231dにおいてそれぞれ1クロックづつ遅延され、加算器234において、該符号器233の出力と、各Dフロップフロップ231b〜231dからの出力とを加算して、PR(1,1,1,1)の値を得る。なお、ここでのPR(1,1,1,1)の値は、再生信号XをDフリップフロップ231a〜231dにより1クロックずつ遅延させ、該遅延させた値すべてを加算器234により加算することによって得られるため、該加算器234から出力されるPR(1,1,1,1)の値は、第4図に示すように“0”〜“4”の値をとる。
PR(1,1,1,1)の値は、DVDの再生信号の特徴から、常に前の値の+1、−1、0だけ変化する。従って、ここで再生信号処理装置100に入力される前記再生信号XがDVDの再生信号の場合、その再生信号Xから予測される信号の値PR(1,1,1,1)は、0→0→1→2→3→4→4→4→3→2→1→2→3→4などのように遷移し、決して0→4→2→4→1→3のように遷移することはない。
そして、前記予測値メモリ235は、前記加算器234からの出力を元に、再生信号Xの予測されたデータ系列である予測値Pを出力する。ここでは、加算器234の出力値0、1、2、3、4に対応する値をそれぞれ、−44、−25、0、25、44とし、前記予測値メモリ235において、入力された前記加算器234の出力値PR(1,1,1,1)に対応するように、前記5つの値をあてはめて、その値を再生信号Xの予測値Pとして出力する。このように、前記予測値Pとして、加算器234の出力値に対応する5つの値を用意する理由は、前記予測値Pを再生信号Xの取りうる値の範囲に合わせるためであり、これにより本再生信号処理装置100から出力される波形等化出力Yはこれら5つの値付近に等化されることとなる。なお、ここで挙げた5つの値(−44、−25、0、25、44)は一例であって、再生信号Xの取りうる値であればよい。また、本実施の形態1では、予測値Pを出力するものを予測値メモリ235と表現したが、これと同等の機能を有するものであれば、メモリに限定されるものではなく、例えば、レジスタとマルチプレクサの組み合わせであってもよい。
ここで、前述のようにして得られる再生信号Xの予測値Pを、該再生信号Xが正常な場合(波形Xa)と、非線形歪みが大きい場合(波形Xb)とで比較してみると、第5図に示すように、図示していないオフセットキャンセラにより基準となる信号、例えば0(ゼロ)のレベルが非線形歪みの有無に関わらず一定に保たれている場合には、該再生信号の波形の歪みの大小によらず、再生信号の予測値Pは同一のものとなる。これはパターン予測器103の演算内容、すなわち、隣り合う2つのサンプリング点の中点の符号により、前記PR(1,1,1,1)を実行していることからも明らかである。
そして、前記予測値メモリ235から出力される前記再生信号Xの予測値Pは、前記判別器236に出力され、該判別器236において、予め設定された特定パターンと一致するか否かが判別される。
例えば、前記判別器236に予め、前記予測値Pが最大値、あるいは最小値まで遷移する部分、すなわち、前記予測値Pが“−25”,“0”,“25”と変化する部分を前記特定パターンとして設定し、前記予測値Pの変化が前記特定パターンと一致すればエッジを立ち上げる判別結果を出力するものとすると、前記判別器236は、第4図に示されるように、判別結果として、前記予測値Pのうち“−25”,“0”,“25”と変化する部分をエッジ部分とする判別結果を出力する。なお、本実施の形態1では、前記判別器236に前記予測値メモリ235の出力である予測値Pが入力されているが、前記加算器234の出力値(0〜4)と、前記予測値P(−44、−25、0、25、44)とは、前述したように対応しており等価であることから、前記判別器236に前記加算器234の出力を入力するようにしてもよい。このようにする場合、前記判別器236には予め、特定パターンとして、前記加算器234の出力値が“1”,“2”,“3”と変化する部分と設定しておけば、前述のように、特定パターンを前記予測値“−25”,“0”,“25”と変化する部分と設定した場合と同じ結果が得られる。
そして、このようにして得られた判別結果は、前記係数更新器102の制御回路225、及び前記選択回路104に出力され、前記係数更新器102の制御回路225においては、該判別結果に応じて係数W〜Wを更新するか否かが制御され、前記選択回路104においては、前記判別結果に応じてデジタルフィルタ出力X’か、前記再生信号Xの予測値Pのいずれを波形等化出力Yとして出力するかが選択される。
まず第6図を参照しながら、前記判別結果を係数W〜Wの更新に使用する場合を説明する。第6図は、本実施の形態1の、係数更新時における判別器での判別方法を説明する図である。なお、第6図中に示す“学習”とは、等化特性を適応的に変えること、すなわち係数更新を実行することであり、“非学習”とは、等化特性を変えない、すなわち係数更新を実行しないことである。
例えば、特定パターンが、前記予測値Pのうち、最大値から最小値に、及び最小値から最大値に遷移する部分と設定された場合、パターン予測器103の判別器236からは、第6図に示す信号Aが判別結果として出力され、また、特定パターンが、前記予測値Pの最大値及び最小値でない部分と設定された場合、前記パターン予測器103の判別器236からは、第6図に示す信号Bが判別結果として出力される。
そして、前述したようにして得られた判別結果を、係数更新器102内の制御回路225で受信すると、該係数更新器102の制御回路225は、“非学習”期間(エッジでない部分)では、再生信号Xに応じて適応的に係数W〜Wの更新を実行しないように制御し、一方、“学習”期間(エッジ部分)では、係数W〜Wの更新を実行するように制御する。これにより、非線形歪みが大きい再生信号が入力された場合であっても、該非線形歪みにより不適切な係数更新が行われるのが回避されることとなり、係数更新の収束性は改善される。
次に第7図を参照しながら、前記判別結果を、波形等化に使用する場合を説明する。第7図は、本実施の形態1の、波形等化時における判別器での判別方法を説明する図である。ここでは、第6図の判別結果信号Bを例に挙げて説明する。
前述したように、前記パターン予測器103内の判別器236において得られた判別結果は、選択回路104に出力される。そして、前記選択回路104は、前記パターン予測器103からの判別結果に基づいて、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分は、波形等化出力Yとしてデジタルフィルタ出力X’を、また再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する以外の部分は、波形等化出力Yとして、該デジタルフィルタ出力X’に代えて、対応する予測値Pを出力する。
これは、第5図を用いて既に説明したように、再生信号の波形が正常(波形Xa)であっても、非線形歪みを含んでいても(波形Xb)、その予測値Pは同じになることを利用したものであり、このように再生信号Xの波形に非線形歪みが含まれる可能性のある部分では、波形等化出力Yとして、デジタルフィルタ出力X’の代わりに、該再生信号Xから生成した予測値Pを出力するようにすれば、第8図中の点線で囲まれた領域に示されるように、従来装置400であれば波形等化に失敗していた箇所も、波形等化に失敗することなく波形等化を行うことが可能となる。
以上のように、本実施の形態1によれば、パターン予測器103において再生信号Xの予測値Pを作成すると共に、及び該予測値Pが予め設定された特定パターンか否かを判別し、再生信号Xに対して適応等化器110において適応等化処理を施した後、前記判別結果に応じて、選択回路104にて、該適応等化器110からの出力か、パターン予測器103からの再生信号の予測値Pのいずれかを選択して、波形等化出力Yとして出力するようにしたので、本再生信号処理装置100に入力される再生信号Xが、第16図で説明したような、正常な波形と同じ帯域の周波数成分が重畳された、非線形歪みを有する波形であっても、それに起因する波形等化の失敗がなくなって、該波形等化出力Yでの波形歪みの影響を抑えることが可能となる。そしてその結果、本実施の形態1の再生信号処理装置100では、良好な等化特性を得られると共に、再生信号Xに対し常に最適な適応等化処理を施すことができる。
なお、本実施の形態1においては、デジタルフィルタ101の等化特性を決定する係数Wが5つである場合を一例に挙げて説明したが、この係数Wの数はこれに限るものではない。
(実施の形態2)
以下、第9図及び第10図を用いて、本実施の形態2に係る再生信号処理装置について説明する。
前記実施の形態1においては、まず適応等化器で再生信号Xに対して適応等化処理を行った後、後段の選択回路で、該適応等化器の出力(デジタルフィルタ出力X’)か、あるいはパターン予測器において予測した再生信号Xの予測値Pのいずれかを選択することで、非線形歪みを取り除いた波形等化出力Yを出力するようにしたが、本実施の形態2においては、まずフィルタよって再生信号Xの非線形歪みを取り除いた後、後段の適応等化器で、該非線形歪みを取り除いた信号に対して適応等化処理を行うようにしたものである。
まず、第9図を用いて、本実施の形態2における再生信号処理装置の構成について説明する。
第9図において、本実施の形態2の再生信号処理装置300は、適応等化器301と、予測フィルタ302と、パターン予測器303とで構成されており、前記適応等化器301は、後述する予測フィルタ302の出力に応じて、その等化特性を適応的に変えて、該予測フィルタ302の出力に対して波形等化を行うものであり、主としてデジタルフィルタと、該デジタルフィルタの等化特性を決定する係数W(nは整数)を更新する係数更新器とで構成される。この適応等化器の具体的な構成については、例えば、従来のデジタルフィルタ401及び係数更新器402からなるもの、あるいは前記実施の形態1において説明したデジタルフィルタ101及び係数更新器102からなるものが挙げられる。
そして、前記パターン予測器303は、前記再生信号Xから得られる2値のデータ系列(予測値P)を予測すると共に、該予測した予測値Pと予め設定された特定のパターンが一致しているか否かを判別して判別結果を出力するものであり、該パターン予測器303の構成、及び動作は、前記実施の形態1のパターン予測器103と同様であるとする。
そして、前記予測フィルタ302は、前記再生信号Xに対してフィルタ処理を行うもので、その実行するフィルタ処理内容は、前記パターン予測器303によって決定されるものであり、ここでは、前記パターン予測器303から出力される判別結果に応じて、再生信号Xか、該パターン予測器303において予測された前記再生信号Xの予測値Pのいずれかを出力するものである。この予測フィルタ302の構成としては、例えば、前記判別結果に応じて出力値を選択する選択回路が考えられる。
次に、第10図を用いて、前述した構成を有する本実施の形態2に係る再生信号処理装置300の一連の動作について説明する。第10図は、本実施の形態2に係る再生信号処理装置の、予測フィルタのフィルタ処理を説明する波形図である。
まず、図示されていない量子化手段によりデジタル化された再生信号Xが、予測フィルタ302、及びパターン予測器303に入力される。
前記パターン予測器303に入力された再生信号Xは、前記実施の形態1において説明したのと同様にして、予測値Pと判別結果とを生成し、予測フィルタ302に出力する。なおここでは、予め設定された特定パターンを、前記予測値Pのうちの、最大値及び最小値でない部分とし、前記パターン予測器303の判別器236からは、第6図に示す信号Bが判別結果として出力されるものとする。
そして、前記予測フィルタ302は、該判別結果に基づいて、再生信号Xか、前記予測値Pのいずれかを予測フィルタ出力として出力する。
以下、第10図を用いて具体的に説明すると、まず、第10図に示す再生信号Xが本再生信号処理装置300に入力されると、前記パターン予測器303において予測値Pの生成、及び該予測値Pが予め設定された特定パターンと一致するか否かの判別が行われ、前記予測フィルタ302は、前記判別結果に基づき、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分は、再生信号Xをそのまま予測フィルタ出力として出力し、また再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する以外の部分は、再生信号Xに代えて、対応する予測値Pを予測フィルタ出力として出力する。
これにより、前記予測フィルタ302において、入力される再生信号Xの波形の非線形歪みを取り除き、非線形歪みのない信号(予測フィルタ出力)を後段の適応等化器301へ供給することができる。
そして、この非線形歪みを取り除いた予測フィルタ出力に対して、適応等化器301において適応等化処理を施して、波形等化出力Yを得る。
なお、前記説明においては、予測フィルタ302におけるフィルタ処理を、前記パターン予測器303からの判別結果に基づいて、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分は、再生信号Xをそのまま予測フィルタ出力として出力し、また再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する以外の部分は、再生信号Xに代えて、対応する予測値Pを予測フィルタ出力として出力するものとしたが、前記予測フィルタ302の別のフィルタ処理方法として、例えば、前記再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する以外の部分で、前記再生信号Xの特定の周波数帯域の成分をカットして出力するものであってもよい。
以下、第9図及び第11図を用いて詳細に説明する。第11図は、本実施の形態2の変形例に係る再生信号処理装置の、予測フィルタのフィルタ処理を説明する図である。
本実施の形態2の変形例の再生信号処理装置300は、前述した第9図に示す実施の形態2の構成と同様、予測フィルタ302と、適応等化器301と、パターン予測器303とで構成されるものである。そして本実施の形態2の変形例における予測フィルタ302は、判別結果に応じて、入力される再生信号Xの特定の周波数帯域の成分をカットして出力するものであり、例えば第14図に示すようなデジタルフィルタで構成される。なお、予測フィルタ302である前記デジタルフィルタの係数Wは、固定であっても、前記実施の形態1と同様適応更新されるものであってもよく、入力される再生信号Xの波形の非線形歪みの影響を取り除く特性を有しているものであればよい。また、前記実施の形態2では前記パターン予測器303から前記予測フィルタ302に、判別結果と予測値Pとが出力されたが、本実施の形態2の変形例においては判別結果のみが出力されればよい。その他の構成は、前述した本実施の形態2の再生信号処理装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
次に、第11図を用いて、前述した構成を有する本実施の形態2の変形例における再生信号処理装置300の動作について説明すると、まず第11図に示すような再生信号Xが再生信号処理装置300に入力されると、パターン予測器303において、前記再生信号Xの予測値Pが予測され、該予測値Pに基づいて判別結果が出力される。そして、前記予測フィルタ302は、前記パターン予測器303から判別結果のみを受信し、該判別結果に基づいて再生信号Xのフィルタ処理を実行する。なお、ここでは、第6図に示す判別結果信号Bを例に挙げて説明する。
そして、前記予測フィルタ302は、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分は、入力された再生信号Xをそのまま予測フィルタ出力として出力し、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分以外の部分は、再生信号Xに代えて、再生信号Xの特定の周波数帯域の成分をカットして、予測フィルタ出力として出力する。
このように、本実施の形態2の変形例の予測フィルタ302では、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分に対して、再生信号Xの特定の周波数帯域の成分をカットするフィルタ処理を実行し、再生信号の予測値Pが“−25”,“0”,“25”と遷移する部分に、前記予測フィルタ302において周波数カットの対象となる信号と同じ帯域の成分が含まれていたとしても、これがカットされることはない。
これにより、前記予測フィルタ302において、入力される再生信号Xの波形の非線形歪みを確実に取り除き、非線形歪みのほとんどない波形を後段の適応等化器301へ供給することができる。
そして、前述のようにして非線形歪みを取り除いた予測フィルタの出力を、適応等化器301において適応等化処理し、波形等化出力Yを得る。
以上のように、本実施の形態2においては、再生信号Xを予測フィルタ302においてフィルタ処理した後、該フィルタ処理した再生信号を適応等化器301において適応等化処理するようにしたので、本再生信号処理装置300に入力される再生信号Xが、第16図で説明したような、正常な波形と同じ帯域の周波数成分が重畳された、非線形歪みを有する波形であっても、非線形歪みに起因する波形等化の失敗がなくなって、該波形等化出力Yでの波形歪みの影響を抑えることが可能となる。そしてこの結果、本実施の形態2の再生信号処理装置300では、良好な等化特性を得ることができる共に、再生信号Xに対し常に最適な適応等化処理を施すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
本発明の再生信号処理装置、及び再生信号処理方法は、光ディスクや磁気ディスク等の媒体の製造ばらつきなどが一因の非線形歪みに対応した最適な等化処理を実現するものとして極めて有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理装置であって、
前記再生信号を等化するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタの等化特性を決定する係数を適応的に更新する係数更新器と、
前記再生信号のデータ系列を予測して前記再生信号の予測値を出力するとともに、前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンが否かを判別して判別結果を出力するパターン予測器と、
波形等化後の出力として、前記デジタルフィルタの出力か、前記再生信号の予測値のいずれか一方を選択し、出力する選択回路と、を備える、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の再生信号処理装置において、
前記選択回路は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記デジタルフィルタの出力を選択し、
前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合、前記予測値を選択する、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項3】
請求の範囲第1項に記載の再生信号処理装置において、
前記係数更新器は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記デジタルフィルタの係数を更新し、
前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が特定パターンでないことを示す場合、前記デジタルフィルタの係数を更新しない、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の再生信号処理装置において、
前記係数更新器は、前記予測値を用いて、前記デジタルフィルタの係数を適応的に更新する、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の再生信号処理装置において、
前記デジタルフィルタは、前記再生信号を多値に等化して出力し、
前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記再生信号のデータ系列のうちの、最小値から最大値に、及び該最大値から該最小値に遷移する部分である、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載の再生信号処理装置において、
前記デジタルフィルタは、前記再生信号を多値に等化して出力し、
前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記再生信号のデータ系列のうちの、最小値及び最大値以外の部分である、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項7】
請求の範囲第5項または請求の範囲第6項に記載の再生信号処理装置において、
前記パターン予測器は、パーシャルレスポンス等化を用いて、前記再生信号のデータ系列を予測し、該予測した再生信号のデータ系列が、前記特定パターンと一致するか否かを判別する、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項8】
記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理装置であって、
前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力するパターン予測器と、
前記判別結果に基づいて、前記再生信号に対して部分的にフィルタ処理を行う予測フィルタと、
前記予測フィルタの出力を適応等化する適応等化器とを、備える、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項9】
請求の範囲第8項に記載の再生信号処理装置において、
前記パターン予測器は、前記再生信号のデータ系列の判別を行うと共に、前記再生信号のデータ系列を予測して前記再生信号の予測値を出力し、
前記予測フィルタは、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンであることを示す場合、前記再生信号を出力し、
前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合、前記再生信号の予測値を出力する、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項10】
請求の範囲第8項に記載の再生信号処理装置において、
前記予測フィルタのフィルタ処理は、前記判別結果が前記再生信号のデータ系列が前記特定パターンでないことを示す場合のみ、前記再生信号の波形からある特定の周波数帯域を除去するものである、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項11】
請求の範囲第8項に記載の再生信号処理装置において、
前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記予測された前記再生信号のデータ列のうちの、最小値から最大値に、及び該最大値から該最小値に遷移する部分である、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項12】
請求の範囲第8項に記載の再生信号処理装置において、
前記パターン予測器に予め設定される前記特定パターンは、前記予測された前記再生信号のデータ列のうちの、最小値及び最大値以外の部分である、
ことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項13】
記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理方法であって、
波形の等化特性を決定する係数を更新しながら、前記再生信号を適応的に等化して出力する適応等化ステップと、
前記再生信号のデータ系列を予測して該再生信号の予測値を出力する予測ステップと、
該再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力する判別ステップと、
波形等化後の出力として、前記等化ステップの出力か、前記予測ステップの出力のいずれか一方を選択し、出力する選択ステップと、を含む、
ことを特徴とする再生信号処理方法。
【請求項14】
記録媒体から再生された再生信号の波形を等化する再生信号処理方法であって、
前記再生信号のデータ系列が予め設定された特定パターンか否かを判別して判別結果を出力する判別ステップと、
前記判別結果に基づいて、前記再生信号に対して部分的にフィルタ処理を行うフィルタステップと、
前記フィルタステップの出力を適応等化する適応等化ステップとを、含む、
ことを特徴とする再生信号処理方法。

【国際公開番号】WO2005/024822
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508773(P2005−508773)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011200
【国際出願日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】