説明

再生信号処理装置

【課題】サンプル値系列の量子化分解能を十分に高くすることができ、さらにサンプリングクロックの高速化が可能なPRML方式の再生信号処理装置を実現する。
【解決手段】A/D変換器2として、例えば5値程度の低分解能のものを使用する。これにより高速なA/D変換が可能になって、再生速度を向上させることができる。さらに、補間演算回路4による補間演算により、高い量子化分解能にて再生信号のサンプル系列を得る。このため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体からの再生信号を処理する再生信号処理装置に係り、特に、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式を用いる復号回路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクや磁気ディスクなどの情報記録/再生装置において、PRML方式の信号処理が用いられるようになってきた。PRML方式とは、記録および再生系の周波数特性を、パーシャルレスポンス特性を有するチャンネルと考え、記録媒体から読み取られた再生信号に対して最尤復号の一種であるビタビアルゴリズムを使用した復号を行うことによりデータ系列を再生する再生信号処理法のことである。PRML方式を使用する再生信号処理回路の例は特許文献1などに記載されている。
【0003】
図9はPRML方式の再生信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
【0004】
図9において、記録媒体から読み取られた再生信号は、アナログフィルタ21を通過後、A/D(アナログ/デジタル)変換器22に入力される。A/D変換器22は、サンプリングクロックにより、再生信号をサンプリングして、デジタル化された再生信号サンプル値の系列に変換する。
【0005】
A/D変換後のサンプル値の系列は、デジタルフィルタ23によって所定のチャンネル特性に等化される。PLL回路24は、等化後のサンプル値系列から再生信号に同期したサンプリングクロックを生成する。また、等化後のサンプル値系列は、ビタビ復号回路25に入力されてビタビアルゴリズムを使用した復号が行われる。
【特許文献1】特開平10−27348号公報
【特許文献2】特開2001−283523号公報
【特許文献3】特開2002−74844号公報
【非特許文献1】「日経エレクトロニクス」1997年1月6日発行 第679号 129頁 図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のPRML方式の再生信号処理回路において、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持するためには、A/D変換後のサンプル値系列の量子化分解能は十分に高いものである必要がある。例えば、非特許文献1の記載例では、分解能が8ビットのA/D変換器を使用している。
【0007】
またA/D変換器は、サンプリングクロックに同期して高速に再生信号をサンプリング,デジタル化する必要がある。
【0008】
近年、CD,DVDの再生装置において、再生速度の高速化が急速に進んでいるが、再生速度が高速化すると、サンプリングクロックの周波数も非常に高速なものとなる。
【0009】
しかし、A/D変換器の変換分解能を高く保ったまま、サンプリングクロック周波数を高速化することは困難であるため、従来のPRML方式の再生信号処理回路では、再生速度の向上が非常に困難であった。
【0010】
本発明の目的は、サンプル値系列の量子化分解能を十分に高くすることができ、さらにサンプリングクロックの高速化が可能なPRML方式の再生信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式にて、デジタル化された再生信号サンプル値系列を基に記録情報の復号を行う再生信号処理装置において、再生信号のサンプル信号を発生するサンプル信号発生手段と、前記再生信号のレベルを第1の振幅分解能でデジタル化し、第1のデジタル信号を発生するデジタル化手段と、前記サンプル信号の発生時刻を、サンプル信号発生間隔よりも細かい第1の時間分解能で検出し、サンプル時刻を出力する第1の時刻検出手段と、前記第1のデジタル信号の変化時刻を、前記第1の時間分解能で検出し、信号変化時刻を出力する第2の時刻検出手段と、前記サンプル時刻と、該サンプル時刻近傍の複数の前記信号変化時刻と、該信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルとの関係から、前記サンプル時刻における前記再生信号のレベルを、前記第1の振幅分解能よりも細かい第2の振幅分解能で補間演算により検出し、第2のデジタル信号を発生する演算手段とを有し、前記第2のデジタル信号を基に記録情報の復号を行うことを特徴とし、この構成によって、デジタル化手段として低分解能のものを使用することができ、高速なA/D変換が可能になり、容易に再生速度を向上させることができる。また、演算手段による補間演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができるため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の再生信号処理装置において、デジタル化手段は、フラッシュ型A/D変換器であることを特徴とし、この構成によって、高速なアナログ/デジタル変換が可能となり、容易に再生速度を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の再生信号処理装置において、演算手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが異なる場合、前記2点の時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の2点を仮定し、前記2点またはその近傍を通過する直線を使用して、直線補間により前記2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とし、この構成によって、連続する2点の信号変化時刻における通過閾値が異なる場合、直線補間により、その2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算するため、容易な演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができる。このため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の再生信号処理装置において、演算手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが同じ場合、前記2点と、その前または後の前記信号変化時刻を合わせた3点以上の複数点を仮定し、それらの時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の複数点またはその近傍を通過する曲線を使用して、曲線補間により略2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の再生信号処理装置において、曲線が複数点を通過する正弦波関数であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4記載の再生信号処理装置において、曲線が複数点を通過する2次関数であることを特徴とする。
【0017】
請求項4〜6に記載の発明によれば、連続する2点の信号変化時刻における通過閾値が同じ場合、その2点とその前、または後の信号変化時刻を合わせた3点以上の複数点を通過する曲線、例えば正弦波関数あるいは2次関数を使用して、曲線補間により、2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算するため、容易な演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができる。このため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1記載の再生信号処理装置において、補間手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが異なる場合、前記2点の時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の2点、および前記2点のデジタル信号レベルとは別の第3のデジタル信号レベルを仮定し、前記2点またはその近傍を通過し、前記第3のデジタル信号レベルに漸近する曲線を使用して、曲線外そう補間により、略2点の近傍にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の再生信号処理装置において、曲線が前記2点を通過し、かつ前記2点とは異なる第3値に漸近する指数関数であることを特徴とする。
【0020】
請求項7,8に記載の発明によれば、連続する2点の信号変化時刻における通過閾値が異なる場合、その2点を通過し、それらとは異なる信号レベルに漸近する曲線、例えば指数関数を使用して曲線外そう補間を行い、2点の後にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算するため、容易な演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができる。このため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することができる。
【0021】
さらに、次の信号変化時刻発生前に外そう処理を行うため、補間演算の遅延が小さくできる。このため、例えばデータを一時保持するバッファの小型化、あるいはPLL回路の安定化が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デジタル化手段として低分解能のものを使用することができ、高速なアナログ信号からデジタル信号への変換が可能になり、容易に再生速度を向上させることが可能になり、また、演算手段による補間演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができ、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することが可能になる等、サンプル値系列の量子化分解能が十分に高く、かつサンプリングクロックが高速になるRML方式の再生信号処理装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態である再生信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1において、光ディスクや磁気ディスクなどの記録媒体から読み取られた再生信号は、アナログフィルタ1を通過後、デジタル化手段としてのA/D変換器2に入力される。A/D変換器2は、再生信号をデジタル値に変換する。本実施形態においては、A/D変換器2の変換分解能は低いものでよく、例えば再生信号レベルを5値程度のデジタル値に変換するものでよい。
【0026】
図2によって5値変換の場合の本実施形態における再生信号と再生信号デジタル値との関係を説明する。本例では、「1」から「4」までの4つの変換閾値が存在する。再生信号レベルが、閾値「1」未満であれば、再生信号デジタル値は「0」である。再生信号レベルが、閾値「1」以上、閾値「2」未満であれば、再生信号デジタル値は「1」となる。以下、同様にして、再生信号デジタル値は「0」から「4」までの5値のいずれかとなる。
【0027】
第2の時刻検出手段としてのデータ変化時刻検出器3は、再生信号デジタル値の変化時刻を、サンプル信号発生手段としてのPLL回路7が発生するサンプリングクロックよりも細かい分解能で検出する。クロック源9からは、データ変化時刻検出用の計時クロックが供給される。
【0028】
第1の時刻検出手段としてのクロック発生時刻検出器8は、PLL回路7が出力するサンプリングクロックの発生時刻を、サンプリングクロックよりも細かい分解能で検出する。クロック源9からは、クロック発生時刻検出用の計時クロックが供給される。
【0029】
演算手段である補間演算回路4は、検出されたデータ変化時刻と、変化時に通過した閾値データ、およびクロック発生時刻を入力し、クロック発生時刻における再生信号レベルを、A/D変換器2の変換分解能よりも細かい分解能にて補間演算により検出し、補間サンプル値を出力する。補間サンプル値の分解能は、例えばビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持できる値(例えば8ビット)とする。
【0030】
図3は本実施形態における補間演算の説明図である。
【0031】
ここでは、クロック発生時刻として、T11,T12の2点が検出され、また、その近傍で、データ変化時刻として、T1,T2,T3の3点が検出され、各データ変化時刻の通過データは、それぞれL1,L2,L3であったとする。
【0032】
時刻Tを横軸、データレベルLを縦軸とする平面状に、(T1,L1)を座標とする点P1と、(T2,L2)を座標とする点P2と、(T3,L3)を座標とする点P3との3点を考える。そして、これら3点を通過するTの関数L(T)を考える。関数は、例えばTの多項式などで表現することができる。
【0033】
そして、Tの値がクロック発生時刻T11,T12の場合における、この関数値L11,L12を求め、補間サンプル値とする。図3でも分るように、L11,L12は補間値であるため、A/D変換器2の変換分解能によって離散化された閾値レベルの中間値などを取り得る。すなわち、補間演算によって得られた補間サンプル値は、A/D変換器2の変換分解能よりも細かい分解能を有することになる。
【0034】
補間演算回路4によって検出された補間サンプル値は、従来の再生信号処理回路における処理と同様に、デジタルフィルタ5によって所定のチャンネル特性に等化される。PLL回路7は、等化後のサンプル値系列から、再生信号に同期したサンプリングクロックを生成する。また、等化後のサンプル値系列は、ビタビ復号回路6に入力され、ビタビアルゴリズムを使用した復号が行われる。
【0035】
以上の説明で示したように、本実施形態によれば、A/D変換器2として、5値程度の低分解能のものを使用するため、高速なA/D変換が可能である。このため、再生速度の向上が容易である。また、補間演算回路4による補間演算により、高い量子化分解能で再生信号のサンプル系列を得ることができる。このため、ビタビ復号における復号エラー率を十分に低い値に維持することができる。
【0036】
図4は本実施形態における補間演算回路の詳細構成例を示すブロック図である。
【0037】
図1では記載を省略しているが、データ変化時刻検出器3からは、検出されたデータ変化時刻の他、データ変化が生じたことを示すデータ変化フラグが、またクロック発生時刻検出器8からは、クロック発生フラグが出力される。
【0038】
前記2つのフラグは、補間演算回路4内のエンコード部401でマージされ、発生順にシフトレジスタ402に入力される。この結果、シフトレジスタ402には、データ変化フラグとクロック発生フラグとの発生履歴が保存される。例えば、図3に示す例では、T1,T2と続けてデータ変化フラグ(D)が発生し、その後、T11,T12と続けてクロック発生フラグ(C)が発生し、最後にT3で再度データ変化フラグ(D)が発生している。図3の下部に各フラグを示しており、本例では、発生履歴はD−D−C−C−Dの順である。
【0039】
データ/クロックシーケンス判定部403では、シフトレジスタ出力から前記発生履歴を監視し、補間演算が可能なタイミングを判定し、補間演算開始フラグを出力する。例えば図3に示す例では、T1,T2の後、T11,T12と続けてクロック発生フラグ(C)が発生しているが、これらの時点では、まだP1,P2,P3を通過する関数L(T)は確定できないために、T11,T12時点の補間サンプル値を演算することができない。T3の時点になってからはじめて、関数L(T)を確定することができ、T11,T12に対応する補間サンプル値の演算が可能になる。
【0040】
図3に示す例では、データ/クロックシーケンス判定部403は、T3のデータ変化フラグ発生が生じてから、T11,T12時点の補間演算開始フラグを出力する。
【0041】
変化データバッファ404,データ変化時刻バッファ405,クロック発生時刻バッファ406は、それぞれ入力される変化データ,データ変化時刻,クロック発生時刻をバッファリングする。前述のように、クロック発生時刻が検出されても、直ちにそれらに対応した補間サンプル値の演算ができない場合があるため、演算が保留されている間、それらのデータは前記各バッファ中に一時保持される。
【0042】
ゲイン/関数設定部407は、補間演算開始フラグを受信すると、補間演算のためのゲインや使用関数を選定する。例えば図3に示す例では、T3の時点で、P1,P2,P3の座標が確定し、補間に使用する関数が確定するため、いくつかの関数が用意された関数テーブル409の中から最適なものを選定する。
【0043】
また、バッファ404,405から、必要な変化データ,データ変化時刻を読み出し、図3のP1,P2,P3の座標を判断する。そして、これら座標から、入力されるクロック発生時刻に対するゲイン,オフセットを設定する(T補正部408)と共に、テーブル出力に対するゲイン,オフセットも設定する(L補正部410)。これらのゲイン,オフセット設定については後述する。
【0044】
これらの補正値が設定されると、演算対象となるクロック発生時刻がバッファ406から読み出され、補間テーブルを使用して対応する補間サンプル値が得られる。
【0045】
図5は本実施形態における直線内そう補間演算の説明図である。
【0046】
本例では、クロック発生時刻として、T11の1点が検出され、また、その前後で、データ変化時刻として、T2,T3の2点が検出され、各データ変化時刻の通過データは、それぞれL2,L3であったとする。なお、通過データL2,L3は、異なる値である。この場合、補間演算回路4は、直線内そう補間により、クロック発生時刻T11における補間サンプル値L11を算出する。
【0047】
座標P2(T2,L2)とP3(T3,L3)の2点を通過する直線の式は、
L(T)=(L3−L2)・[(T−T2)/(T3−T2)]+L2‥‥式(1)
で表される。式(1)のTに、クロック発生時刻T11を代入することにより、T11における補間サンプル値L11が算出される。
【0048】
補間演算回路4は、直線内そう補間を行う場合、関数テーブル409から、
y(x)=x‥‥式(2)
となる直線関数を選択する。直線関数では、テーブル入力xがそのままyとして出力される。
【0049】
そして、T補正部408とL補正部410とで、それぞれ、
x=(T−T2)/(T3−T2)‥‥式(3)
L(T)=(L3−L2)・y+L2‥‥式(4)
のように、T2,T3,L2,L3に応じたゲイン、オフセット設定が行われ、総合的に式(1)に相当する関数を用いた補間演算が可能となる。
【0050】
図6は本実施形態における正弦関数を使用した内そう補間演算の説明図である。
【0051】
本例では、クロック発生時刻として、T11,T12の2点が検出され、その前に、データ変化時刻とT1,T2の2点が、また、その後にデータ変化時刻T3が検出されたとする。また、各データ変化時刻の通過データは、それぞれL1,L2,L2であったとする。なお、T2,T3における通過データは同じ値である。
【0052】
この場合、補間演算回路4は、正弦波関数を使用した内そう補間により、クロック発生時刻T11,T12における補間サンプル値L11,L12を算出する。
【0053】
座標P2(T2,L2)とP3(T3,L3)との2点を通過し、P2(T2,L2)における傾きが、P1(T1,L1)−P2(T2,L2)を通過する直線と同じである正弦波関数は、
L(T)=[(L2−L1)/π]・[(T3−T2)/(T2−T1)]・sin[π・(T−T2)/(T3−T2)]+L2‥‥式(5)
で表される。式(5)のTに、クロック発生時刻T11,T12を代入することにより、T11,T12における補間サンプル値L11,L12が算出される。
【0054】
補間演算回路4は、正弦波関数を使用した内そう補間を行う場合、関数テーブル409から、
y(x)=sin[π・x]‥‥式(6)
なる基本的な正弦波関数を選択する。
【0055】
そして、T補正部408とL補正部410とで、それぞれ、
x=(T−T2)/(T3−T2)‥‥式(7)
L(T)=[(L2−L1)/π]・[(T3−T2)/(T2−T1)]・y+L2‥‥式(8)
のように、T1,T2,T3,L1,L2,L3に応じたゲイン,オフセット設定が行われ、総合的に式(5)に相当する関数を用いた補間演算が可能となる。
【0056】
図6に示すような場合では2次関数を使用した内そう補間演算も可能である。
【0057】
座標P2(T2,L2)とP3(T3,L3)との2点を通過し、P2(T2,L2)における傾きが、P1(T1,L1)−P2(T2,L2)を通過する直線と同じである2次関数は、
L(T)=(L2−L1)・[T−(T2+T3)/2]/[(T2−T3)・(T2−T1)]+L2−(L2−L1)・(T2−T3)/[4・(T2−T1)]‥‥式(9)
で表される。式(5)のTに、クロック発生時刻T11,T12を代入することにより、T11,T12における補間サンプル値L11,L12が算出される。
【0058】
補間演算回路4は、2次関数を使用した内そう補間を行う場合、関数テーブル409から、
y(x)=x‥‥式(10)
なる基本的な正弦波関数を選択する。
【0059】
そして、T補正部408とL補正部410とで、それぞれ、
x=[T−(T2+T3)/2]/√[(T2−T3)・(T2−T1)]‥‥式(11)
L(T)=(L2−L1)・y+L2−(L2−L1)・(T2−T3)/[4・(T2−T1)]‥‥式(12)
のように、T1,T2,T3,L1,L2,L3に応じたゲイン、オフセット設定が行われ、総合的に式(9)に相当する関数を用いた補間演算が可能となる。
【0060】
図7は本実施形態における指数関数を使用した外そう補間演算の説明図である。
【0061】
本例では、データ変化時刻としてT1,T2の2点が検出された後、クロック発生時刻として、T11〜T18の8点が検出されたとする。各データ変化時刻の通過データは、それぞれL1,L2であったとする。この場合、さらに補間演算の保留を続け、次のデータ変化時刻の発生を待ち続ければ、図5または図6に示す内そう補間が可能となる場合がある。しかし、あまり長時間の間、補完演算の保留を続けるためには、404,405,406の各バッファの容量を拡大する必要がある。
【0062】
また、図1に示したPLL回路7での位相差検出は、補間サンプル値をデジタルフィルタに通過させたサンプル値系列から行っているため、補完演算回路4で長時間にわたる補完演算の保留し続けると、位相差検出が、実際の再生信号検出タイミングから大幅に遅れることになる。この遅延は、PLL回路7のループ安定性を損なう場合がある。
【0063】
このような場合、例えばデータ変化時刻T2が検出された後、所定数以上のクロック発生時刻が連続して検出された後も、まだ次のデータ変化時刻が検出されない場合、本例に示す外そう補間を行うことにより、補間演算の保留が連続することを防ぐことができる。この場合、補間演算回路4は、指数関数を使用した外そう補間により、クロック発生時刻T11〜T18における補間サンプル値L11〜L18を算出する。
【0064】
座標P1(T1,L1)とP2(T2,L2)との2点を通過し、L2の次の閾値レベルL3に漸近する指数関数は、
L(T)=(L2−L3)・exp[Log[(L1−L3)/(L2−L3)]・(T−T2)/(T1−T2)]+L3‥‥式(13)
で表される。式(13)のTに、クロック発生時刻T11〜T18を代入することにより、T11〜T18における補間サンプル値L11〜L18が算出される。
【0065】
補間演算回路4は、指数関数を使用した外そう補間を行う場合、関数テーブル409から、
y(x)=exp(x)‥‥式(14)
なる基本的な指数関数を選択する。そして、T補正部408とL補正部410とで、それぞれ、
x=Log[(L1−L3)/(L2−L3)]・(T−T2)/(T1−T2)‥‥式(15)
L(T)=(L2−L3)・y+L3‥‥式(16)
のように、T1,T2,L1,L2に応じたゲイン,オフセット設定が行われ、総合的に式(13)に相当する関数を用いた補間演算が可能となる。
【0066】
図8は本実施形態におけるA/D変換器として用いられるフラッシュ型A/Dコンバータの構成例を示す回路図であり、フラッシュ型A/Dコンバータは、図2に示す変換閾値に相当する数(本例では4つ)だけコンパレータ201を備え、その数に相当する閾値を抵抗分圧202などして作成し、各コンパレータ201の基準電圧として、全コンパレータ201にA/Dコンバータ入力電圧を与え、コンパレータ201からエンコーダ203に出力するものである。
【0067】
フラッシュ型A/Dコンバータは、閾値の数だけコンパレータ201が必要になるため、あまり多値の高分解能のものは作りにくい。その代わり、コンパレータ201の応答時間だけの極めて高速なA/D変換結果が得られる。この特徴は、本実施形態におけるA/D変換器に適用することができ、本実施形態においては、A/D変換器2としてフラッシュ型A/Dコンバータを使用することにより、高速なA/D変換が可能となり、再生速度を向上させることが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、記録媒体からの再生信号処理装置に適用され、特に、サンプル値系列の量子化分解能を高くしたり、サンプリングクロックの高速化が要求されるPRML方式の再生信号処理回路などに実施して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態である再生信号処理回路の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態における再生信号と再生信号デジタル値との関係の説明
【図3】本実施形態における補間演算の説明図
【図4】本実施形態における補間演算回路の詳細構成例を示すブロック図
【図5】本実施形態における直線内そう補間演算の説明図
【図6】本実施形態における正弦関数を使用した内そう補間演算の説明図
【図7】本実施形態における指数関数を使用した外そう補間演算の説明図
【図8】本実施形態におけるA/D変換器として用いられるフラッシュ型A/Dコンバータの構成例を示す回路図
【図9】従来のPRML方式の再生信号処理回路の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
【0070】
1 アナログフィルタ
2 A/D変換器
201 コンパレータ
202 抵抗分圧
203 エンコーダ
3 データ変化時刻検出器
4 補間演算回路
401 エンコード部
402 シフトレジスタ
403 データ/クロックシーケンス判定部
404 変化データバッファ
405 データ変化時刻バッファ
406 クロック発生時刻バッファ
407 ゲイン/関数設定部
408 T補正部
409 関数テーブル
410 L補正部
5 デジタルフィルタ
6 ビタビ復号回路
7 PLL回路
8 クロック発生時刻検出器
9 クロック源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式にて、デジタル化された再生信号サンプル値系列を基に記録情報の復号を行う再生信号処理装置において、
再生信号のサンプル信号を発生するサンプル信号発生手段と、
前記再生信号のレベルを第1の振幅分解能でデジタル化し、第1のデジタル信号を発生するデジタル化手段と、
前記サンプル信号の発生時刻を、サンプル信号発生間隔よりも細かい第1の時間分解能で検出し、サンプル時刻を出力する第1の時刻検出手段と、
前記第1のデジタル信号の変化時刻を、前記第1の時間分解能で検出し、信号変化時刻を出力する第2の時刻検出手段と、
前記サンプル時刻と、該サンプル時刻近傍の複数の前記信号変化時刻と、該信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルとの関係から、前記サンプル時刻における前記再生信号のレベルを、前記第1の振幅分解能よりも細かい第2の振幅分解能で補間演算により検出し、第2のデジタル信号を発生する演算手段とを有し、
前記第2のデジタル信号を基に記録情報の復号を行うことを特徴とする再生信号処理装置。
【請求項2】
前記デジタル化手段は、フラッシュ型A/D(アナログ/デジタル)変換器であることを特徴とする請求項1記載の再生信号処理装置。
【請求項3】
前記演算手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが異なる場合、前記2点の時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の2点を仮定し、前記2点またはその近傍を通過する直線を使用して、直線補間により前記2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とする請求項1記載の再生信号処理装置。
【請求項4】
前記演算手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが同じ場合、前記2点と、その前または後の前記信号変化時刻を合わせた3点以上の複数点を仮定し、それらの時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の複数点またはその近傍を通過する曲線を使用して、曲線補間により略2点の間にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とする請求項1記載の再生信号処理装置。
【請求項5】
前記曲線が複数点を通過する正弦波関数であることを特徴とする請求項4記載の再生信号処理装置。
【請求項6】
前記曲線が複数点を通過する2次関数であることを特徴とする請求項4記載の再生信号処理装置。
【請求項7】
前記補間手段は、連続する2点の前記信号変化時刻における前記第1のデジタル信号のレベルが異なる場合、前記2点の時刻とデジタル信号レベルとを座標とする平面状の2点、および前記2点のデジタル信号レベルとは別の第3のデジタル信号レベルを仮定し、前記2点またはその近傍を通過し、前記第3のデジタル信号レベルに漸近する曲線を使用して、曲線外そう補間により、略2点の近傍にあるサンプル時刻における再生信号のレベルを演算することを特徴とする請求項1記載の再生信号処理装置。
【請求項8】
前記曲線が前記2点を通過し、かつ前記2点とは異なる第3値に漸近する指数関数であることを特徴とする請求項7記載の再生信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−252630(P2006−252630A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65222(P2005−65222)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】