再生専用型光ディスク媒体
【課題】再生専用型光ディスク媒体において後天的に記録された追加情報データについて、特別な読み取り装置を必要とすることなく信号を検出することを可能とする。
【解決手段】情報信号記録面内の情報信号領域が、変調された情報データに応じたピットとして形成され、金属合金反射膜によって被覆されている。また情報信号領域内に追加情報記録区間が設けられ、この追加情報記録区間上の金属合金反射膜が、情報データに応じて穴空きマークとして形成される。この場合に、nTに対応する穴空きマークの長さをLh(n)、幅をWh(n)、円錐台形状とされるピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)、幅をWp1(n)、円錐台形上面の長さをLp2(n)、幅をWp2(n)とした場合に、Lh(n)>Lp1(n)及びWh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2を満たすようにする。
【解決手段】情報信号記録面内の情報信号領域が、変調された情報データに応じたピットとして形成され、金属合金反射膜によって被覆されている。また情報信号領域内に追加情報記録区間が設けられ、この追加情報記録区間上の金属合金反射膜が、情報データに応じて穴空きマークとして形成される。この場合に、nTに対応する穴空きマークの長さをLh(n)、幅をWh(n)、円錐台形状とされるピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)、幅をWp1(n)、円錐台形上面の長さをLp2(n)、幅をWp2(n)とした場合に、Lh(n)>Lp1(n)及びWh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2を満たすようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生専用型光ディスク媒体に関する。特にはピット転写により大量に製造される再生専用型光ディスク媒体において個別に固有の情報等を付与できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−135021号公報
【特許文献2】国際公開第01/008145号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/101733号パンフレット
【0003】
例えば再生専用すなわちROM(Read Only Memory)型のCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray disc:登録商標)、HD−DVD(High Definition DVD)等の光ディスク媒体にあって、音楽、映像、ゲーム、アプリケーションプログラム、そのほかの情報データは、コンテンツエリアと呼ばれる領域に、所定の記録変調方式により記録されている。
例えばこれらの再生専用型光ディスク媒体は、その優れた量産性による低い生産コストにより多くのコンテンツホルダーがコンテンツの提供手段として利用している。
【0004】
再生専用型光ディスク媒体の製造工程は、DVDを例に挙げると、大きく分けて、光ディスクの原盤をレーザビームによって作製するマスタリング工程と、光ディスク原盤から作製されたスタンパを使用して多数のディスク基板を作製し、ディスク基板上へ膜を形成する成形成膜工程と、対となる2枚の0.6mm厚の光ディスクを所定の厚みを有する接着剤で貼り合わせて1.2mm厚のDVDディスク媒体とする貼り合せ工程とがある。
【0005】
上記成型成膜工程において、スタンパを用いて大量生産されるディスク基板は、スタンパに形成された凹凸パターンが転写されたものである。即ち情報記録面となる部分に凹凸形状のパターンとしてのピット/ランドによる記録データ列が形成され、この記録データ列がスパイラル状もしくは同心円状の記録トラックと成るようにされている。そしてピット/ランドが形成される情報記録面には、その凹凸形状に対して金属合金反射膜が被覆される。
ディスク完成後は、この反射膜により、再生装置から照射されるレーザ光がピット/ランドの部分で反射されるようにしている。なお、ピット列におけるピットとピットの間のランド部分は「スペース」とも呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで再生専用型光ディスクは、製造された後に、追加的な情報を記録することは想定されていない。また上記のように情報記録面には反射膜が被着されているが、この反射膜を記録用の膜として使用することは考えられていない。
ところが近年では、所定の情報データを記録した再生専用型光ディスクの管理のために、製造される再生専用型光ディスクの1枚ごとにユニークな識別番号等の追加的な情報を記録する方法が要望されている。
【0007】
しかしながら、再生専用型光ディスクは、上述した作製工程によって製作されるため、成形成膜工程によって処理された後の、既に所定の情報データがピットとして記録された再生専用型光ディスクに対して、ピットによる情報データに影響を与えずに追加情報を記録することは難しかった。
すなわち情報データが既にピットとして存在している情報記録領域(コンテンツエリア等)への追加情報の記録は困難であった。
【0008】
このため、従来提案されている、再生専用型光ディスクに識別番号等の追加情報を記録する方式は、そのほとんどがコンテンツエリア以外の領域に記録されることを前提としているか、あるいは主信号(スタンパから転写されるピット/ランドで記録された信号)の記録変調方式とは異なった方式で追加情報を記録する方法を採用している。
しかしながら、これらの方法で追加情報が記録された再生専用型光ディスクは、追加情報データが主信号とは異なる信号出力、あるいは変調方式であるなど、コンテンツエリア以外の領域の読み取りを前提としている。そのため、専用の読み取り機能を持った再生装置以外では読み出すことが出来ず、既存の再生装置では追加情報が読めないという状況を生じさせ、その点で互換性に乏しいという問題があった。
【0009】
例えばDVD−ROM規格で規定されているBCA(Burst Cutting Area)は情報記録領域とは別の領域へ、主信号とは異なる記録変調方式を用いて記録されている。このため、専用の読み取り機能を備えた再生装置が必要である。
また上記特許文献1には、追加情報の記録にあたって情報記録領域以外の領域を選択することが記載されている。
また上記特許文献2においては、追加情報記録がなされた信号の読み取りには、既存の情報記録部との反射率の差を用いることが開示されている。この場合、専用の読み取り機能を備えた再生装置が必要である。
【0010】
そこで本発明は、再生専用型光ディスク媒体において、上記の成型成膜工程で同一の記録内容のディスク基板が形成された後にディスク個体毎に追加的に記録された情報を、特別な読み取り装置を必要とすることなく読み出せるようにすることを目的とする。さらに、その読出がより安定にかつ確実に実行できるようにすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の再生専用型光ディスク媒体は、第1の変調信号に基づいて形成された凹凸形状を有する情報記録面と、前記情報記録面を被覆する反射膜とを有し、前記凹凸形状をピット及びランドから成る第1の記録データ列として記録トラックを形成する再生専用型光ディスク媒体において、上記ピット及びランドから成る第1の記録データ列が形成された上記記録トラック中に上記記録層が平面形状となる追加情報記録区間が設けられ、該追加情報記録区間において、第2の変調信号に基づいて反射膜を消失又は減少させたマークから成る第2の記録データ列が形成されており、上記第1の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式と上記第2の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式とが同一である。
そして変調された情報データの基準クロック周期をTとし、情報データの長さをnT(nは自然数)としたときの上記nTに対応する上記マークの長さをLh(n)とし、上記nTに対応する、上記マークの幅をWh(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の幅をWp1(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形上面の長さを、上記Lp1(n)より長いLp2(n)とし、上記nTに対応する、円錐台形上面の幅を上記Wp1(n)より長いWp2(n)とした場合に、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
及び、
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
を満たすものとされる。
【0012】
また、いわゆる多層ディスクとして、上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記全反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされるようにする。
或いは、上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記半透過反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされるようにする。
【0013】
このような本発明の再生専用型光ディスク媒体を製造するには、例えばスタンパを用いてディスク基板を大量に製造する段階では、ピット/ランドによる第1の記録データ列で形成される記録トラック内に、予め追加情報記録区間としてピット/ランドが形成されない区間が形成されるようにする。金属合金反射膜は、このような追加情報記録区間も含めて情報記録面上に被覆される。そしてその後、追加情報記録区間に対して、金属合金反射膜の一部領域を消失又は減少させたマーク(以下、穴空きマーク)を形成することで、第2の記録データ列として追加情報を記録する。
つまり追加情報は、情報記録領域(ピット/ランドによる第1の記録データ列で情報が記録された領域であって、コンテンツエリアやリードイン等の管理エリアを含む領域)における記録トラックの一部領域に記録されるものとなる。
なお、穴空きマークを有する第2の記録データ列として記録される追加情報をどのような情報とするかは多様に想定される。例えば再生専用型光ディスク媒体の1枚ごとにユニークな識別番号等であってもよいし、再生専用光ディスク媒体に記録する主データの一部などとしてもよい。
【0014】
ここで、このようにピット/ランドによる第1の記録データ列(以下、プリピット信号列ともいう)と穴空きマークによる第2の記録データ列(以下、穴空きマーク信号列ともいう)が形成される場合、プリピット信号列と穴空きマーク信号列の両方の再生信号を安定して読み出すことが要請される。
プリピット信号列から読み出されるプリピット信号は「位相差検出」に基づいて再生される。
ピット部とランド部とで反射光の位相が異なるため、再生レーザ光のスポット内にピットが入る場合の反射光は、ピット部とランド部との光の干渉によって光量が減少する。プリピット信号においてはピットの深さが位相差に関係し、再生光スポット内のピットの位置およびピットの占有面積が再生光スポット内におけるピット部とランド部の光量比に関係する。光の干渉は位相が180度異なると最も弱め合い、さらに同じ光量ならば干渉の結果ほぼ0となって大きな信号変調度が得られる。したがって、プリピット信号の信号変調度は、ピットの深さ、およびピットの面積に大きく影響される。
一方、穴空きマーク信号列から読み出される穴空きマーク信号は「反射率差検出」に基づいて再生される。これはランド部分からの反射率は不変であるのに対して、穴空きマーク部分からの反射率はほぼ0と変わるため、再生光スポット内に穴空きマークが入る場合の反射光はやはり減少するからである。
したがって穴空きマーク信号列においては、再生光スポット内の穴空きマークの位置および面積が反射光量に関係し、面積が再生光スポットに比して大きくなるほど反射光量が減少して大きな変調度が得られる。したがって、穴空きマーク信号の信号変調度は、穴空きマークの面積に大きく影響される。
【0015】
再生専用型光ディスク媒体の再生信号の検出において、光検出器からの信号を波形等化回路へ入力して処理する際に、プリピット信号と穴空きマーク信号のそれぞれの入力レベルが異なると、出力信号においては両信号の切替部分で波形に歪みが生じて再生信号の検出が不安定になる。そのため安定な信号検出には両信号の信号レベル(変調度)を同等程度にすることが好ましい。
そこで本発明では、ピットのサイズと穴空きマークのサイズを規定することにより、プリピット信号と穴空きマーク信号のそれぞれの信号レベルを略同等とする。即ち位相差検出と反射率差検出としての検出方式の違いや、ピットと穴空きマークの形状の違いに鑑みて、上記(式1)(式2)の関係を導き出した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、情報記録領域における記録トラックの一部領域に追加情報データが穴空きマークによる第2の記録データ列として記録される。また穴空きマークによる第2の記録データ列と、ピット/ランドによる第1の記録データ列は、記録する情報データに対して同一の変調方式により変調した変調信号に基づいて形成される。
そして本発明の場合、ピットおよび穴空きマークの面積を決定するピットや穴空きマークの長さや幅についての相対的な大小関係を上述の(式1)(式2)のように規定する。これによりプリピット信号と穴空きマーク信号の信号変調度を同等程度とすることができ、その結果両者の入力信号レベルを略同一として特別な読み取り装置を必要とすることなく両信号を安定に読み出せるようになるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、本発明の再生専用型光ディスク媒体を、DVD方式の再生専用型光ディスクとする例を挙げる。
まず、実施の形態の再生専用型光ディスク90の製造工程を図1で説明する。
【0018】
図1は本実施の形態のDVDとしての再生専用型光ディスクを製造する工程を示している。本例のディスク製造工程は、図示するように大きく分けて、光ディスクの原盤をレーザビームによって作製するマスタリング工程と、光ディスク原盤から作製されたスタンパを使用して多数のディスク基板を作製し、ディスク基板上へ膜を形成する成形成膜工程と、対となる2枚の0.6mm厚の光ディスクを所定の厚みを有する接着剤で貼り合わせて1.2mm厚の光ディスクとする貼り合せ工程と、貼り合わせ済の個々の光ディスクに対して例えば識別情報などの追加情報を記録する追記工程とを有する。
【0019】
各工程を説明していく。
マスタリング工程は、マスターディスク91に記録された情報データに基づいて、光ディスク原盤92を製造する工程である。この工程では、記録変調信号生成部100とレーザビームレコーダ110を有するマスタリング装置が用いられる。
記録変調信号生成部100は、マスターディスク91を再生して、記録する情報データを読み込み、読み込んだ情報データの信号をEFM+(Eight to Fourteen Modulation plus)変調して生成したEFM+信号をレーザビームレコーダ110へ出力する。
【0020】
光ディスク原盤92はガラス板に感光物質であるフォトレジストが塗布されたものである。このフォトレジストの塗付厚はピットの深さに相当するものであり、ピット深さを変更したい場合はフォトレジストの塗付厚を変更すればよい。レーザビームレコーダ110は、供給されたEFM+信号に応じてレーザ光を光ディスク原盤92に照射し、EFM+信号に基づいたピットパターンの露光を行う。この露光時のレーザビーム強度や露光時間によって、ピットの幅や長さを調整できる。その後、フォトレジスト膜が現像処理されると、ポジ型レジストの場合では、露光された箇所が溶けて凹凸パターンがフォトレジスト膜状に形成され、所定のフォーマットに従ったピットパターン(ピット/ランドの凹凸形状)が光ディスク原盤92表面に形成される。
後に図11で説明するが、形成されるピットは円錐台形状をしている。光ディスク原盤92の段階で言えば、光ディスク原盤92上に形成されるピットは、通常はガラス板側の面積が小さく、フォトレジストの露光面側の面積が大きくなる。
【0021】
なお、上記のように記録変調信号生成部100はマスターディスク91から読み出した信号に基づいてEFM+信号を生成するが、追記管理部160からの指示に基づいて、EFM+信号の一部の特定の期間に無変調信号を挿入する。
無変調信号のタイミング期間では、レーザビームレコーダ110におけるレーザ光はオフ期間となる。つまりEFM+信号において無変調信号が挿入されることで、光ディスク原盤92上で露光されない区間が形成される。この区間は全てランドとなって凹凸形状が形成されない区間となり、これが後述する追加情報記録区間となる。
【0022】
このような光ディスク原盤92に基づき、この光ディスク原盤92のピットパターンが反転転写されたスタンパ93と称される金型が製作される。当然、スタンパ93にも追加情報記録区間が形成される。
【0023】
次に成形成膜工程においては、まず成形装置120がスタンパ93を用いて光ディスク基板94を作製する。光ディスク基板94には光ディスク原盤92に形成された凹凸パターンが転写されてピットパターンが形成される。
光ディスク基板94の作製方法としては、圧縮成形、射出成形、光硬化法等が知られている。
スタンパ93からピットパターンが転写された光ディスク基板94に対しては、続いて成膜装置130で、反射膜等の被覆膜が被着されることによって、反射膜形成済み光ディスク基板95が形成される。
【0024】
次に貼り合せ工程では、上記の反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合せ基板96との貼り合せが行われる。
貼り合せ基板96としては、上記同様の工程で作製した反射膜形成済み光ディスク基板か、あるいは、半透過反射膜形成済み光ディスク基板か、反射膜を被覆していないダミー用光ディスク基板が用いられる。
基板貼り合せ装置140は、反射膜形成済光ディスク基板95に対して、上記いずれかの貼り合せ基板96を貼り合せ、貼り合せ済光ディスク97を製造する。
貼り合せの際の接着手法としては、紫外線硬化樹脂を用いる手法や、粘着剤付きシートによる手法等が知られている。
【0025】
従来のDVDでは、上記貼り合せ済光ディスク97が、完成品としてのDVDとなるが、本例の場合、上述のようにピットパターンが形成された記録トラック上の一部区間に、ピットパターンが形成されていない追加情報記録区間が設けられている。
そこで貼り合せ済光ディスク97に対して追記工程が行われる。追記工程では、追加情報記録装置150が、上記貼り合せ済光ディスク97における追加情報記録区間に追加情報を書き込む。例えば光ディスク個体毎に異なる識別情報などを追加情報として書き込む。
追加情報記録装置150は、追記管理部160から追加情報記録区間の位置情報(アドレス)を指示され、また書き込む追加情報が提供されて、追加情報の書込を行う。
この場合、追加情報記録装置150は、追加情報をEFM+変調するとともに、そのEFM+信号に基づいて記録用の高出力レーザパルスを照射し、追加情報記録区間における反射膜を消失又は低減させることで穴空きマークを形成するという手法で書き込みを行う。穴空きマークの幅や長さは、記録用レーザの出力や発光時間を変更することで調整できる。
【0026】
このような追記工程が完了することで、再生専用型光ディスク90の製造が完了される。そして以上の工程で大量生産される再生専用型光ディスク90は、同一内容のコンテンツ(音楽、映像、ゲーム、アプリケーションプログラム等)を記録した光ディスクでありながら、個々に固有の追加情報が記録された光ディスクとすることができる。
【0027】
以上のようにして製造される本例の再生専用型光ディスク90(DVD)について説明する。
図2は、再生専用型光ディスク90の平面図である。再生専用型光ディスク90は直径12cmのディスクとされ、そのうちで矢印の半径範囲で示す領域が情報記録領域1である。この情報記録領域1とは、EFM+信号に基づいたピット/ランドによる記録データ列が、例えばスパイラル状の記録トラックとして形成されている領域であり、管理情報が記録されたリードインエリア、コンテンツデータが記録されたコンテンツエリア、及びリードアウトエリアなどを含む領域である。
【0028】
この情報記録領域1において、図2中、範囲AR1,範囲AR2で示した部分の拡大図及び模式的な断面図を図3,図4に示す。
ここで範囲AR1は通常のピット/ランドによる記録データ列としての記録トラックが生成された部分であり、範囲AR2は、穴空きピットが形成された追加情報記録区間を含む部分としている。
【0029】
範囲AR1の拡大図を図3(a)に示し、また図3(a)の破線部分の模式的な断面図を図3(b)に示している。
図3(a)には、ピット2及びランド3による記録データ列としてのパターンが形成されている様子を示している。
そして図3(b)からわかるように、この再生専用型光ディスク90は、それぞれが例えばポリカーボネートより成る厚さ0.6mmの反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせ基板(ダミー用光ディスク基板)96が接着剤5(例えば紫外線硬化樹脂や接着シート)により張り合わされて、1.2mm厚とされる。
この場合、反射膜形成済光ディスク基板95の一主面が情報記録面L0とされ、この情報記録面L0は、ピット2およびランド3による凹凸パターンとして形成されている。また、このピット2およびランド3は、その表面に反射膜4が形成されている。
なお、ピット2とランド3の凹凸関係は逆である場合もある。
【0030】
反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせられる、貼り合わせ基板96は、図3(b)ではダミー用光ディスク基板(反射膜が被覆されていないディスク基板)としているが、上述したように、貼り合わせ基板96として反射膜形成済光ディスク基板や、半透過反射膜形成済光ディスク基板を貼り合わせ基板96として用いても良い。
接着剤5は光透過性であるのが一般的であるが、構造によっては光透過性でなくてもよい。反射膜形成済み光ディスク基板95と接着され貼り合わせ基板96が、反射膜あるいは半透過反射膜を有している場合は、その接着面は反射膜あるいは半透過反射膜が形成されている面となる。
【0031】
次に図2における範囲AR2の拡大図を図4(a)に示し、また図4(a)の破線部分の模式的な断面図を図4(b)に示す。
図4(a)に示すように、或る1周回トラックの一部区間が追加情報記録区間10とされており、この追加情報記録区間10には、上述の追記工程で形成された穴空きマーク6による記録データ列が形成されている。つまり追加情報が穴空きマーク6による記録データ列として記録されたものである。追加情報記録区間10の部分のトラック線方向の前後は、ピット2及びランド3による記録データ列となり、また追加情報記録区間10に隣接するトラックもピット2及びランド3による記録データ列となっている。
図4(b)に示すように、範囲AR2の基本的な層構造は図3(b)と同様となるが、情報記録面L0の一部に穴空きマーク6が形成されている。即ち穴空きマーク6は、金属合金反射膜4が消失又は低減されて、ほとんど存在しない状態となるようにして形成されたものである。
【0032】
図5(a)(b)は、上述した追記工程で追加情報が記録される前の様子を図4(a)(b)に対応させて示したものである。
図5(a)に示すように、追加情報記録区間10は、無変調区間としてピット2、ランド3による凹凸パターンが形成されていない区間とされている。図5(b)からわかるように、この追加情報記録区間10は、ランド3と同一平面上に存在し、反射膜4が被覆されていわゆるミラー部となっている。
このような追加情報記録区間10に対して、追記工程において追加情報が記録される。
即ち、上述した追加情報記録装置150は、例えば高出力赤色半導体レーザを用いた専用の記録装置として用意され、例えばDPD(differential phase detection)を用いて情報記録領域1のピット列へトラッキングをかける機能と、所望の区間で記録用の高出力レーザパルスを発光させる機能とを有し、図5の状態の追加情報記録区間10に対して記録を行って、図4のように穴空きマーク6を形成する。その際の発光パターンの変調は、情報記録領域のピット列に対応した変調と同じ変調方式として、EFM+信号が用いられる。
【0033】
図6は再生専用型光ディスク90における追加情報記録区間10への追加情報の記録として、高出力レーザを入射して穴空きマーク6を形成したサンプルの様子を示している。これは、穴空きマーク6が形成された追加情報記録区間10のSEM(走査型電子顕微鏡)観察写真である。
SEM観察時には反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせ基板96(ダミー用光ディスク基板)とを接着面で剥がし、反射膜4がむき出しになった部分へ電子線を入射して観察した。反射膜4としては、Alを基合金としてFeを約1原子%、Tiを約5原子%含有したAl合金を用いた。
この図6からわかるとおり、追加情報記録区間10に形成されている金属合金反射膜が追加情報の変調信号に応じて消失或いは減少されて楕円形状に穴が空き、ピットに対応した穴空きマーク6が綺麗に形成されていることがわかる。
【0034】
ところで、以上の図3〜図5では、情報記録面として情報記録面L0が1つ設けられたいわゆる単層ディスクについて示したが、情報記録面が複数設けられる多層ディスクの場合であっても、上記のように穴空きマーク6による記録データ列が形成できる。図7(a)(b)に断面構造例を示す。
【0035】
図7(a)(b)はそれぞれ2つの情報記録面L0,L1が形成された再生専用型光ディスク90を示し、特に追加情報記録区間10が設けられた部分の断面構造を示している。
2層構造の再生専用型光ディスク90の場合、反射膜形成済光ディスク基板95に対して、貼り合わせ基板96としては半透過反射膜形成済光ディスク基板が用いられる。半透過反射膜形成済光ディスク基板は、ピット/ランドによる所要の記録データ列が形成されたディスク基板上に半透過反射膜7が形成された光ディスク基板である。
情報記録面L0は反射膜形成済光ディスク基板95の一主面上に形成され、情報記録面L1は半透過反射膜形成済光ディスク基板の一主面上に形成される。
【0036】
これら情報記録面L0、L1は周知の方法によって形成することができる。例えば同時に2枚の光ディスク基板94を成型し、成型と同時に一方の光ディスク基板94へはその一主面に第1の情報記録面L0を形成するピット2およびランド3を成型し、他方の光ディスク基板94へはその一主面に第2の情報記録面L1を形成するピット2およびランド3を成型する。
次に、一方の光ディスク基板94の情報記録面L0の表面に反射膜4を、また他方の光ディスク基板94の情報記録面L1の表面に半透過反射膜7を、それぞれ例えばスパッタすることによって形成する。
そして、この一方の光ディスク基板94の情報記録面L0上に例えば紫外線硬化樹脂を塗布し、他方の光ディスク基板94の情報記録面L1側と接着することで貼り合せ、紫外線を照射することで紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0037】
情報記録面が2つ以上の場合でも、穴空きマーク6の形成は前述と同様に実行できる。つまり追加情報記録装置150では、無変調区間として追加情報記録区間10が形成された側の情報記録面に対して記録用のレーザをフォーカシングさせ、適切な出力で、追加情報の変調信号に応じてレーザ発光させることで、穴空きマーク6を形成する。
図7(a)は、情報記録面L0側に追加情報記録区間10が設けられ、ここにレーザ照射をおこなって反射膜4(全反射膜)を消失又は減少させることで穴空きマーク6を形成した例である。
また図7(b)は、情報記録面L1側に追加情報記録区間10が設けられ、ここにレーザ照射をおこなって半透過反射膜7を消失又は減少させることで穴空きマーク6を形成した例である。
【0038】
なお、このとき、記録用レーザを照射する方向は制限されないが、例えば図7(a)に示すようにレーザ入射方向を設定し、情報記録面L0側に穴空きマーク6を形成する場合、情報記録面L0にフォーカシングされるレーザ光の実効的な出力は半透過反射膜7により減衰された値となるから、出射する際のレーザ出力はその減衰分を考慮して値を大きく設定しておく必要がある。
【0039】
この図7の例のように、多層構造の再生専用型光ディスク90であっても、いずれかの情報記録面に追加情報記録区間10を設け、その追加情報記録区間10に穴空きマーク6によるデータ列として追加情報を書き込むことができる。
なお、ここではいずれかの情報記録面としたが、例えば情報記録面L0,L1の両方に追加情報記録区間10を設け、それぞれに穴空きマーク6による記録データ列を形成するようにしてもよい。
【0040】
ここで本例の再生専用型光ディスク90をDVDとして使用できるようにするには、当然ながらDVD規格に準拠したディスクとする必要があり、つまり穴空きマーク6による記録データ列が形成された部分も、DVD規格に適合していなければならない。
このためには穴空きマーク6による記録データ列部分において、少なくとも以下の条件を満たす必要がある。
・穴空きマーク6による記録データ列が、ランレングス制限を満たしていること。
・穴空きマーク6による記録データ列において反射率がDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分の再生信号の変調度がDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分の再生信号のアシンメトリがDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分のジッター値がDVD規格に適合すること。
【0041】
まず穴空きマーク6による記録データ列が、DVDのランレングス制限を満たしているということは、3T〜14T(Tは記録の際に変調された情報データの基準クロック周期)の穴空きマーク6及びランドのパターンとなっていることが必要である。このためには追加情報が通常のピット/ランドによる記録データ列の形成の際と同様にEFM+信号に変調され、このEFM+信号に基づいて穴空きマーク6が形成されること、及び追加情報記録区間の前後のピット列との関係でも、ランレングス制限を満たすようにすればよい。
【0042】
また反射率は、DVD規格では、単層ディスクの場合で60%以上85%以下(無偏光光学系の場合)、或いは45%以上85%以下(偏光光学系の場合)とされる。2層ディスクの場合は18%以上30%以下とされる。
穴空きマーク6部分の反射率と反射膜の膜厚の関係を図8に示した。ここでは反射膜として純Ag、純Alを採用した場合について、それぞれ波長650nmの光を屈折率約1.5の樹脂を通して照射した場合の反射率を計算機により算出したものを示している。
この図8から、膜厚が薄くなる程反射率が低くなることがわかる。反射膜が純Agの場合は、膜厚約30nmで反射率が約80%となり、膜厚50nm以上で反射率が90%を超えて横ばいとなる。また、反射膜が純Alの場合は、膜厚約10nmで反射率が約70%となり、膜厚約20nmで反射率が85%を超え、膜厚約35nm以上で横ばいとなる。
本実施の形態においては、追加情報データを穴空きマーク6として安定に形成するために、例えば純Alへ元素を添加したAl合金を反射膜として用いる。Al合金になると同じ膜厚で比較した場合の反射率は純Alの場合より低減するため、反射膜材料としては横ばいになったときの反射率が上記DVD規格を満たすように、例えば無偏光光学系で60%以上となるように、Al合金の組成と膜厚を制御すればよい。
ここで、穴空きマーク6の部分とは、反射膜が消失または減少されて形成された部分であり、穴空きマーク6と穴空きマーク6の間のスペース部分(ランド部分)が、反射膜が通常に残されている部分である。基本的には穴空きマーク6と穴空きマーク6の間のスペース部分は、ピット2及びランド3による記録データ列のランド3の部分と同様の膜厚となり、必要な反射率が得られる。
【0043】
変調度に関しては、DVD規格では、
I14/I14H≧0.60
I3/I14≧0.15(単層ディスクの場合)
I3/I14≧0.20(2層ディスクの場合)
とされる。
またアシンメトリに関しては、DVD規格では、
−0.05≦{(I14H+I14L)/2−(I3H+I3L)/2}/I14≦0.15
とされる。
図9に再生信号のアイパターンの概略図を示している。I14は14Tパターンのピーク−ボトムの振幅レベル、I14Hは14Tパターンのピークレベル、I14Lは14Tパターンのボトムレベル、I3は3Tパターンのピーク−ボトムの振幅レベル、I3Hは3Tパターンのピークレベル、I3Lは3Tパターンのボトムレベルである。
図10に本実施の形態によるピット2及びランド3による記録データ列での再生信号振幅と、穴空きマーク6による記録データ列での再生信号振幅の概略を示す。図10のように、ピット2およびランド3による記録データ列からも、穴空きマーク6による記録データ列からも、I14H、I14L、I3H、I3Lとして、ほぼ同等のレベルを得ることが出来、上記変調度及びアシンメトリの規格を満たすことができる。
ジッター値(対チャネルビットクロック時間)に関しては、8.0%以下とされるように穴空きマーク6による記録データ列が形成されればよい。
【0044】
既に公知のとおり、ピット/ランドによる記録データ列では、位相差による反射光強度の変化でピット/ランドよる情報を検出する。つまりピット2の部分では回折光の位相差による干渉と再生装置の対物レンズの開口の関係によって反射光量が低減する。これによってランド3とピット2の部分では検出される反射光量の差が得られ、それによってピット/ランドに応じた再生信号波形が得られる。
一方、穴空きマーク6による記録データ列では、穴空きマーク6部分とスペース部分での反射率差によって検出される反射光量差が得られる。図8からわかるように、反射膜が殆ど消失された穴空きマーク6の部分は、反射率は低くなり、一方、反射膜が残されているスペース部分では高い反射率が得られる。
この結果、再生信号波形で見れば、図10にも示したようにピット列と穴空きマーク6による記録データ列では、ほぼ同等の再生信号波形が得られ、穴空きマーク6からはピット2と同一の論理性が得られる。
【0045】
ここで、以上のように、プリピット信号列からも、穴空きマーク信号列からも、I14H、I14L、I3H、I3Lとして、ほぼ同等のレベルを得ることが出来るようにする条件について説明する。つまり、プリピット信号列から読み出されるプリピット信号と穴空きマーク信号列から読み出される穴空きマーク信号について、変調度とアシンメトリをほぼ同等とし、両信号を安定に読み出せるようにするための条件である。
【0046】
図11(a)に、ピット2及び穴空きマーク6についての上面図を示し、また図11(a)の破線部分に相当する断面図を図11(b)に示す。
図11(a)(b)からわかるように、ピット2は円錐台形状の凹部となる。
このピット2として、nTに対応するピットの面積の小さい底面(円錐台形底面)の長さをLp1(n)、幅をWp1(n)とする。
またピット2の、面積の大きい面(円錐台形上面)の長さをLp2(n)、幅をWp2(n)とする。
この場合当然、Lp1(n)<Lp2(n)であり、Wp1(n)<Wp2(n)となる。
また穴空きマーク6については、nTに対応する穴空きマークの長さをLh(n)、幅をWh(n)とする。
【0047】
結論を言えば、穴空きマーク6のサイズとピット2のサイズに関して、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
の両方が満たされるようにすればよい。
即ちnTの穴空きマーク6の長さLh(n)は、nTのピット2の円錐台形底面の長さLp1(n)より長くなるようにする。
またnTの穴空きマーク6の幅Wh(n)は、nTのピット2の円錐台形底面の幅Wp1(n)と円錐台形上面の幅Wp2(n)の中間サイズより長くなるようにする。
このようなピット2及び穴空きマーク6のサイズ設定により、プリピット信号列と穴空きマーク信号列について、図10に示したようなほぼ同等の振幅が得られ、変調度やアシンメトリをほぼ同等とできる。
【0048】
ピット2のサイズ設定は、既に知られているとおり、原盤露光時のレーザビーム強度や発光時間(露光時間)によって可能である。
レーザビーム強度を調整することで、ピットの幅や長さの調整が可能となる。
また原盤露光時のレーザビームの発光時間(露光時間)によって、ピット長を微調整することが可能である。ピット長自体は、例えば3T〜14Tとして規定され、各Tに対応したレーザ発光時間が設定されるが、その各Tのレーザ発光時間を微調整することで、各Tのピット長を僅かに長くしたり短くすることができる。
【0049】
穴空きマーク6についても、そのサイズを、追加情報記録装置150の記録用レーザの出力や発光時間を変更することで調整できる。
穴空きマーク6を形成するための記録用レーザパワーと、穴空きマーク6の幅、長さの関係を調べたものが図12、図13である。
図12(a)は3Tマークについて、記録用レーザパワーと長さLh(3)の関係を示し、図12(b)は11Tマークについて、記録用レーザパワーと長さLh(11)の関係を示している。
また図13(a)は3Tマークについて、記録用レーザパワーと幅Wh(3)の関係を示し、図13(b)は11Tマークについて、記録用レーザパワーと幅Wh(11)の関係を示している。
【0050】
図12,図13からわかるように、3Tマークにおいても11Tマークにおいても、記録用レーザパワーにより穴空きマーク6の幅や長さが制御できることがわかる。
なお本実験においてはパルス発光時間を固定し、記録用レーザパワーを変えることで穴空きマークの幅、長さの関係を図11,図12のように得たが、パルス発光時間を変えることによっても光エネルギー量が変わり、穴空きマークの幅、長さが制御できる。その場合においては図12,図13とは異なる関係グラフとなるが、記録用レーザパワーとパルス発光時間によって穴空きマーク6の幅と長さを制御できることが成り立つ。
【0051】
以下、穴空きマーク6の記録データ列により追加情報を記録した再生専用型光ディスク90としてのDVDが、特別な読み取り機能を備えた再生装置を必要とすることなく信号を検出することが可能であることを確認した実験結果について説明する。
【0052】
実験では、コンテンツエリア内に複数の追加情報記録区間10を有する光ディスク基板を用意し、そこへ図6で用いたAl合金膜とは異なる組成を有するAl合金膜を約35nm形成して、ダミー用光ディスク基板と貼り合せ、再生専用型DVDを作製した。
追加情報記録区間10のトラック線方向の長さX(図4参照)は約40μmとした。
次に複数の追加情報記録区間10全てに対して、個々の追加情報記録区間10の前後のピット列の情報データを考慮して、再生信号検出後のEFM+信号が正しくデコードされるように、追加情報を穴空きマーク6によって形成した。穴空きマーク6の形成にもちいる追加情報記録装置150としては、波長650nm、対物レンズのNA0.60の光学系を有する高出力レーザライターを用いた。
【0053】
追加情報記録区間10への追加情報の記録が成功していなければ、デコードエラーが増加し、最悪の場合読み取り不能となる。
【0054】
そしてこの実験では、追加情報記録装置150のレーザ出力をディスク盤面上で78mWとして追加情報記録区間10への記録を行った再生専用型光ディスク90(DVD)を用意した。
そして市販の7社のメーカー製DVDプレイヤーを各1台ずつ用意し再生テストを行った。その結果、7機種全てにおいてデコードエラーが発生することなく追加情報を読み取ることが出来た。
【0055】
次にプリピット信号列と穴空きマーク信号列の様子を観察するため、再生専用型光ディスク90(DVD)を接着剤5の部分で剥がし、0.6mmの反射膜形成済光ディスク基板95の反射膜付加面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
図14は倍率1万倍での二次電子および反射電子の両方による観察像で、長さや幅を計測するのに適当な個所を抜粋したものである。
プリピット信号列と穴空きマーク信号列の中から、3T、5T、6T,10Tに相当するものの長さおよび幅を計測し、比較したものを図15に示す。3T、5T、6T、10Tのいずれにおいても、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・ (式1)
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・ (式2)
の関係が満たされていることがわかった。
【0056】
上述したように、穴空きマーク6の長さおよび幅は追加情報記録装置150のレーザ出力の増減に伴い増減し、出力が小さいときは市販のDVDプレイヤーで再生するとデコードエラーが発生することがわかっている。これは理由として穴空きマーク信号の信号変調度がプリピット信号の信号変調度に比べて小さいためで、上記(式1)、(式2)のいずれか一方、または両方を満たしていないことが原因である。
【0057】
以上の結果より、(式1)、(式2)を満たすような穴空きマーク6として追加情報を記録した本実施の形態の再生専用型光ディスク90は、特別な読み取り装置を必要とすることなく市販の通常のDVDプレイヤーで再生が可能となることが検証された。
なお、実施の形態ではDVD方式の再生専用型光ディスク90として、本発明を実現した例を述べたが、他のディスク方式の再生専用型光ディスク媒体及び製造方法としても、本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図2】実施の形態の再生専用型光ディスクの平面図である。
【図3】実施の形態の再生専用型光ディスクの部分拡大図と模式的断面図である。
【図4】実施の形態の再生専用型光ディスクの部分拡大図と模式的断面図である。
【図5】実施の形態の再生専用型光ディスクの追加情報記録前の部分拡大図と模式的断面図である。
【図6】実施の形態の再生専用型光ディスクの追加情報記録区間のSEM写真を用いた説明図である。
【図7】実施の形態の2層構造の再生専用型光ディスクの模式的断面図である。
【図8】実施の形態の反射膜の膜厚と反射率の関係の説明図である。
【図9】再生信号のアイパターンの説明図である。
【図10】実施の形態の再生信号波形の説明図である。
【図11】実施の形態のピットと穴空きマークの上面図と断面図である。
【図12】実施の形態の穴空きマークの長さと記録レーザパワーの関係の説明図である。
【図13】実施の形態の穴空きマークの幅と記録レーザパワーの関係の説明図である。
【図14】実施の形態の再生専用型光ディスクの実験例についてのSEM写真を用いた説明図である。
【図15】実施の形態の再生専用型光ディスク媒体の実験例での測定値の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 情報記録領域、2 ピット、3 ランド、4 反射膜、5 接着剤、6 穴空きマーク、7 半透過反射膜、10 追加情報記録区間、90 再生専用型光ディスク、92 光ディスク原盤、150 追加情報記録装置
【技術分野】
【0001】
本発明は再生専用型光ディスク媒体に関する。特にはピット転写により大量に製造される再生専用型光ディスク媒体において個別に固有の情報等を付与できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−135021号公報
【特許文献2】国際公開第01/008145号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/101733号パンフレット
【0003】
例えば再生専用すなわちROM(Read Only Memory)型のCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray disc:登録商標)、HD−DVD(High Definition DVD)等の光ディスク媒体にあって、音楽、映像、ゲーム、アプリケーションプログラム、そのほかの情報データは、コンテンツエリアと呼ばれる領域に、所定の記録変調方式により記録されている。
例えばこれらの再生専用型光ディスク媒体は、その優れた量産性による低い生産コストにより多くのコンテンツホルダーがコンテンツの提供手段として利用している。
【0004】
再生専用型光ディスク媒体の製造工程は、DVDを例に挙げると、大きく分けて、光ディスクの原盤をレーザビームによって作製するマスタリング工程と、光ディスク原盤から作製されたスタンパを使用して多数のディスク基板を作製し、ディスク基板上へ膜を形成する成形成膜工程と、対となる2枚の0.6mm厚の光ディスクを所定の厚みを有する接着剤で貼り合わせて1.2mm厚のDVDディスク媒体とする貼り合せ工程とがある。
【0005】
上記成型成膜工程において、スタンパを用いて大量生産されるディスク基板は、スタンパに形成された凹凸パターンが転写されたものである。即ち情報記録面となる部分に凹凸形状のパターンとしてのピット/ランドによる記録データ列が形成され、この記録データ列がスパイラル状もしくは同心円状の記録トラックと成るようにされている。そしてピット/ランドが形成される情報記録面には、その凹凸形状に対して金属合金反射膜が被覆される。
ディスク完成後は、この反射膜により、再生装置から照射されるレーザ光がピット/ランドの部分で反射されるようにしている。なお、ピット列におけるピットとピットの間のランド部分は「スペース」とも呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで再生専用型光ディスクは、製造された後に、追加的な情報を記録することは想定されていない。また上記のように情報記録面には反射膜が被着されているが、この反射膜を記録用の膜として使用することは考えられていない。
ところが近年では、所定の情報データを記録した再生専用型光ディスクの管理のために、製造される再生専用型光ディスクの1枚ごとにユニークな識別番号等の追加的な情報を記録する方法が要望されている。
【0007】
しかしながら、再生専用型光ディスクは、上述した作製工程によって製作されるため、成形成膜工程によって処理された後の、既に所定の情報データがピットとして記録された再生専用型光ディスクに対して、ピットによる情報データに影響を与えずに追加情報を記録することは難しかった。
すなわち情報データが既にピットとして存在している情報記録領域(コンテンツエリア等)への追加情報の記録は困難であった。
【0008】
このため、従来提案されている、再生専用型光ディスクに識別番号等の追加情報を記録する方式は、そのほとんどがコンテンツエリア以外の領域に記録されることを前提としているか、あるいは主信号(スタンパから転写されるピット/ランドで記録された信号)の記録変調方式とは異なった方式で追加情報を記録する方法を採用している。
しかしながら、これらの方法で追加情報が記録された再生専用型光ディスクは、追加情報データが主信号とは異なる信号出力、あるいは変調方式であるなど、コンテンツエリア以外の領域の読み取りを前提としている。そのため、専用の読み取り機能を持った再生装置以外では読み出すことが出来ず、既存の再生装置では追加情報が読めないという状況を生じさせ、その点で互換性に乏しいという問題があった。
【0009】
例えばDVD−ROM規格で規定されているBCA(Burst Cutting Area)は情報記録領域とは別の領域へ、主信号とは異なる記録変調方式を用いて記録されている。このため、専用の読み取り機能を備えた再生装置が必要である。
また上記特許文献1には、追加情報の記録にあたって情報記録領域以外の領域を選択することが記載されている。
また上記特許文献2においては、追加情報記録がなされた信号の読み取りには、既存の情報記録部との反射率の差を用いることが開示されている。この場合、専用の読み取り機能を備えた再生装置が必要である。
【0010】
そこで本発明は、再生専用型光ディスク媒体において、上記の成型成膜工程で同一の記録内容のディスク基板が形成された後にディスク個体毎に追加的に記録された情報を、特別な読み取り装置を必要とすることなく読み出せるようにすることを目的とする。さらに、その読出がより安定にかつ確実に実行できるようにすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の再生専用型光ディスク媒体は、第1の変調信号に基づいて形成された凹凸形状を有する情報記録面と、前記情報記録面を被覆する反射膜とを有し、前記凹凸形状をピット及びランドから成る第1の記録データ列として記録トラックを形成する再生専用型光ディスク媒体において、上記ピット及びランドから成る第1の記録データ列が形成された上記記録トラック中に上記記録層が平面形状となる追加情報記録区間が設けられ、該追加情報記録区間において、第2の変調信号に基づいて反射膜を消失又は減少させたマークから成る第2の記録データ列が形成されており、上記第1の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式と上記第2の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式とが同一である。
そして変調された情報データの基準クロック周期をTとし、情報データの長さをnT(nは自然数)としたときの上記nTに対応する上記マークの長さをLh(n)とし、上記nTに対応する、上記マークの幅をWh(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の幅をWp1(n)とし、上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形上面の長さを、上記Lp1(n)より長いLp2(n)とし、上記nTに対応する、円錐台形上面の幅を上記Wp1(n)より長いWp2(n)とした場合に、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
及び、
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
を満たすものとされる。
【0012】
また、いわゆる多層ディスクとして、上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記全反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされるようにする。
或いは、上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記半透過反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされるようにする。
【0013】
このような本発明の再生専用型光ディスク媒体を製造するには、例えばスタンパを用いてディスク基板を大量に製造する段階では、ピット/ランドによる第1の記録データ列で形成される記録トラック内に、予め追加情報記録区間としてピット/ランドが形成されない区間が形成されるようにする。金属合金反射膜は、このような追加情報記録区間も含めて情報記録面上に被覆される。そしてその後、追加情報記録区間に対して、金属合金反射膜の一部領域を消失又は減少させたマーク(以下、穴空きマーク)を形成することで、第2の記録データ列として追加情報を記録する。
つまり追加情報は、情報記録領域(ピット/ランドによる第1の記録データ列で情報が記録された領域であって、コンテンツエリアやリードイン等の管理エリアを含む領域)における記録トラックの一部領域に記録されるものとなる。
なお、穴空きマークを有する第2の記録データ列として記録される追加情報をどのような情報とするかは多様に想定される。例えば再生専用型光ディスク媒体の1枚ごとにユニークな識別番号等であってもよいし、再生専用光ディスク媒体に記録する主データの一部などとしてもよい。
【0014】
ここで、このようにピット/ランドによる第1の記録データ列(以下、プリピット信号列ともいう)と穴空きマークによる第2の記録データ列(以下、穴空きマーク信号列ともいう)が形成される場合、プリピット信号列と穴空きマーク信号列の両方の再生信号を安定して読み出すことが要請される。
プリピット信号列から読み出されるプリピット信号は「位相差検出」に基づいて再生される。
ピット部とランド部とで反射光の位相が異なるため、再生レーザ光のスポット内にピットが入る場合の反射光は、ピット部とランド部との光の干渉によって光量が減少する。プリピット信号においてはピットの深さが位相差に関係し、再生光スポット内のピットの位置およびピットの占有面積が再生光スポット内におけるピット部とランド部の光量比に関係する。光の干渉は位相が180度異なると最も弱め合い、さらに同じ光量ならば干渉の結果ほぼ0となって大きな信号変調度が得られる。したがって、プリピット信号の信号変調度は、ピットの深さ、およびピットの面積に大きく影響される。
一方、穴空きマーク信号列から読み出される穴空きマーク信号は「反射率差検出」に基づいて再生される。これはランド部分からの反射率は不変であるのに対して、穴空きマーク部分からの反射率はほぼ0と変わるため、再生光スポット内に穴空きマークが入る場合の反射光はやはり減少するからである。
したがって穴空きマーク信号列においては、再生光スポット内の穴空きマークの位置および面積が反射光量に関係し、面積が再生光スポットに比して大きくなるほど反射光量が減少して大きな変調度が得られる。したがって、穴空きマーク信号の信号変調度は、穴空きマークの面積に大きく影響される。
【0015】
再生専用型光ディスク媒体の再生信号の検出において、光検出器からの信号を波形等化回路へ入力して処理する際に、プリピット信号と穴空きマーク信号のそれぞれの入力レベルが異なると、出力信号においては両信号の切替部分で波形に歪みが生じて再生信号の検出が不安定になる。そのため安定な信号検出には両信号の信号レベル(変調度)を同等程度にすることが好ましい。
そこで本発明では、ピットのサイズと穴空きマークのサイズを規定することにより、プリピット信号と穴空きマーク信号のそれぞれの信号レベルを略同等とする。即ち位相差検出と反射率差検出としての検出方式の違いや、ピットと穴空きマークの形状の違いに鑑みて、上記(式1)(式2)の関係を導き出した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、情報記録領域における記録トラックの一部領域に追加情報データが穴空きマークによる第2の記録データ列として記録される。また穴空きマークによる第2の記録データ列と、ピット/ランドによる第1の記録データ列は、記録する情報データに対して同一の変調方式により変調した変調信号に基づいて形成される。
そして本発明の場合、ピットおよび穴空きマークの面積を決定するピットや穴空きマークの長さや幅についての相対的な大小関係を上述の(式1)(式2)のように規定する。これによりプリピット信号と穴空きマーク信号の信号変調度を同等程度とすることができ、その結果両者の入力信号レベルを略同一として特別な読み取り装置を必要とすることなく両信号を安定に読み出せるようになるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、本発明の再生専用型光ディスク媒体を、DVD方式の再生専用型光ディスクとする例を挙げる。
まず、実施の形態の再生専用型光ディスク90の製造工程を図1で説明する。
【0018】
図1は本実施の形態のDVDとしての再生専用型光ディスクを製造する工程を示している。本例のディスク製造工程は、図示するように大きく分けて、光ディスクの原盤をレーザビームによって作製するマスタリング工程と、光ディスク原盤から作製されたスタンパを使用して多数のディスク基板を作製し、ディスク基板上へ膜を形成する成形成膜工程と、対となる2枚の0.6mm厚の光ディスクを所定の厚みを有する接着剤で貼り合わせて1.2mm厚の光ディスクとする貼り合せ工程と、貼り合わせ済の個々の光ディスクに対して例えば識別情報などの追加情報を記録する追記工程とを有する。
【0019】
各工程を説明していく。
マスタリング工程は、マスターディスク91に記録された情報データに基づいて、光ディスク原盤92を製造する工程である。この工程では、記録変調信号生成部100とレーザビームレコーダ110を有するマスタリング装置が用いられる。
記録変調信号生成部100は、マスターディスク91を再生して、記録する情報データを読み込み、読み込んだ情報データの信号をEFM+(Eight to Fourteen Modulation plus)変調して生成したEFM+信号をレーザビームレコーダ110へ出力する。
【0020】
光ディスク原盤92はガラス板に感光物質であるフォトレジストが塗布されたものである。このフォトレジストの塗付厚はピットの深さに相当するものであり、ピット深さを変更したい場合はフォトレジストの塗付厚を変更すればよい。レーザビームレコーダ110は、供給されたEFM+信号に応じてレーザ光を光ディスク原盤92に照射し、EFM+信号に基づいたピットパターンの露光を行う。この露光時のレーザビーム強度や露光時間によって、ピットの幅や長さを調整できる。その後、フォトレジスト膜が現像処理されると、ポジ型レジストの場合では、露光された箇所が溶けて凹凸パターンがフォトレジスト膜状に形成され、所定のフォーマットに従ったピットパターン(ピット/ランドの凹凸形状)が光ディスク原盤92表面に形成される。
後に図11で説明するが、形成されるピットは円錐台形状をしている。光ディスク原盤92の段階で言えば、光ディスク原盤92上に形成されるピットは、通常はガラス板側の面積が小さく、フォトレジストの露光面側の面積が大きくなる。
【0021】
なお、上記のように記録変調信号生成部100はマスターディスク91から読み出した信号に基づいてEFM+信号を生成するが、追記管理部160からの指示に基づいて、EFM+信号の一部の特定の期間に無変調信号を挿入する。
無変調信号のタイミング期間では、レーザビームレコーダ110におけるレーザ光はオフ期間となる。つまりEFM+信号において無変調信号が挿入されることで、光ディスク原盤92上で露光されない区間が形成される。この区間は全てランドとなって凹凸形状が形成されない区間となり、これが後述する追加情報記録区間となる。
【0022】
このような光ディスク原盤92に基づき、この光ディスク原盤92のピットパターンが反転転写されたスタンパ93と称される金型が製作される。当然、スタンパ93にも追加情報記録区間が形成される。
【0023】
次に成形成膜工程においては、まず成形装置120がスタンパ93を用いて光ディスク基板94を作製する。光ディスク基板94には光ディスク原盤92に形成された凹凸パターンが転写されてピットパターンが形成される。
光ディスク基板94の作製方法としては、圧縮成形、射出成形、光硬化法等が知られている。
スタンパ93からピットパターンが転写された光ディスク基板94に対しては、続いて成膜装置130で、反射膜等の被覆膜が被着されることによって、反射膜形成済み光ディスク基板95が形成される。
【0024】
次に貼り合せ工程では、上記の反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合せ基板96との貼り合せが行われる。
貼り合せ基板96としては、上記同様の工程で作製した反射膜形成済み光ディスク基板か、あるいは、半透過反射膜形成済み光ディスク基板か、反射膜を被覆していないダミー用光ディスク基板が用いられる。
基板貼り合せ装置140は、反射膜形成済光ディスク基板95に対して、上記いずれかの貼り合せ基板96を貼り合せ、貼り合せ済光ディスク97を製造する。
貼り合せの際の接着手法としては、紫外線硬化樹脂を用いる手法や、粘着剤付きシートによる手法等が知られている。
【0025】
従来のDVDでは、上記貼り合せ済光ディスク97が、完成品としてのDVDとなるが、本例の場合、上述のようにピットパターンが形成された記録トラック上の一部区間に、ピットパターンが形成されていない追加情報記録区間が設けられている。
そこで貼り合せ済光ディスク97に対して追記工程が行われる。追記工程では、追加情報記録装置150が、上記貼り合せ済光ディスク97における追加情報記録区間に追加情報を書き込む。例えば光ディスク個体毎に異なる識別情報などを追加情報として書き込む。
追加情報記録装置150は、追記管理部160から追加情報記録区間の位置情報(アドレス)を指示され、また書き込む追加情報が提供されて、追加情報の書込を行う。
この場合、追加情報記録装置150は、追加情報をEFM+変調するとともに、そのEFM+信号に基づいて記録用の高出力レーザパルスを照射し、追加情報記録区間における反射膜を消失又は低減させることで穴空きマークを形成するという手法で書き込みを行う。穴空きマークの幅や長さは、記録用レーザの出力や発光時間を変更することで調整できる。
【0026】
このような追記工程が完了することで、再生専用型光ディスク90の製造が完了される。そして以上の工程で大量生産される再生専用型光ディスク90は、同一内容のコンテンツ(音楽、映像、ゲーム、アプリケーションプログラム等)を記録した光ディスクでありながら、個々に固有の追加情報が記録された光ディスクとすることができる。
【0027】
以上のようにして製造される本例の再生専用型光ディスク90(DVD)について説明する。
図2は、再生専用型光ディスク90の平面図である。再生専用型光ディスク90は直径12cmのディスクとされ、そのうちで矢印の半径範囲で示す領域が情報記録領域1である。この情報記録領域1とは、EFM+信号に基づいたピット/ランドによる記録データ列が、例えばスパイラル状の記録トラックとして形成されている領域であり、管理情報が記録されたリードインエリア、コンテンツデータが記録されたコンテンツエリア、及びリードアウトエリアなどを含む領域である。
【0028】
この情報記録領域1において、図2中、範囲AR1,範囲AR2で示した部分の拡大図及び模式的な断面図を図3,図4に示す。
ここで範囲AR1は通常のピット/ランドによる記録データ列としての記録トラックが生成された部分であり、範囲AR2は、穴空きピットが形成された追加情報記録区間を含む部分としている。
【0029】
範囲AR1の拡大図を図3(a)に示し、また図3(a)の破線部分の模式的な断面図を図3(b)に示している。
図3(a)には、ピット2及びランド3による記録データ列としてのパターンが形成されている様子を示している。
そして図3(b)からわかるように、この再生専用型光ディスク90は、それぞれが例えばポリカーボネートより成る厚さ0.6mmの反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせ基板(ダミー用光ディスク基板)96が接着剤5(例えば紫外線硬化樹脂や接着シート)により張り合わされて、1.2mm厚とされる。
この場合、反射膜形成済光ディスク基板95の一主面が情報記録面L0とされ、この情報記録面L0は、ピット2およびランド3による凹凸パターンとして形成されている。また、このピット2およびランド3は、その表面に反射膜4が形成されている。
なお、ピット2とランド3の凹凸関係は逆である場合もある。
【0030】
反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせられる、貼り合わせ基板96は、図3(b)ではダミー用光ディスク基板(反射膜が被覆されていないディスク基板)としているが、上述したように、貼り合わせ基板96として反射膜形成済光ディスク基板や、半透過反射膜形成済光ディスク基板を貼り合わせ基板96として用いても良い。
接着剤5は光透過性であるのが一般的であるが、構造によっては光透過性でなくてもよい。反射膜形成済み光ディスク基板95と接着され貼り合わせ基板96が、反射膜あるいは半透過反射膜を有している場合は、その接着面は反射膜あるいは半透過反射膜が形成されている面となる。
【0031】
次に図2における範囲AR2の拡大図を図4(a)に示し、また図4(a)の破線部分の模式的な断面図を図4(b)に示す。
図4(a)に示すように、或る1周回トラックの一部区間が追加情報記録区間10とされており、この追加情報記録区間10には、上述の追記工程で形成された穴空きマーク6による記録データ列が形成されている。つまり追加情報が穴空きマーク6による記録データ列として記録されたものである。追加情報記録区間10の部分のトラック線方向の前後は、ピット2及びランド3による記録データ列となり、また追加情報記録区間10に隣接するトラックもピット2及びランド3による記録データ列となっている。
図4(b)に示すように、範囲AR2の基本的な層構造は図3(b)と同様となるが、情報記録面L0の一部に穴空きマーク6が形成されている。即ち穴空きマーク6は、金属合金反射膜4が消失又は低減されて、ほとんど存在しない状態となるようにして形成されたものである。
【0032】
図5(a)(b)は、上述した追記工程で追加情報が記録される前の様子を図4(a)(b)に対応させて示したものである。
図5(a)に示すように、追加情報記録区間10は、無変調区間としてピット2、ランド3による凹凸パターンが形成されていない区間とされている。図5(b)からわかるように、この追加情報記録区間10は、ランド3と同一平面上に存在し、反射膜4が被覆されていわゆるミラー部となっている。
このような追加情報記録区間10に対して、追記工程において追加情報が記録される。
即ち、上述した追加情報記録装置150は、例えば高出力赤色半導体レーザを用いた専用の記録装置として用意され、例えばDPD(differential phase detection)を用いて情報記録領域1のピット列へトラッキングをかける機能と、所望の区間で記録用の高出力レーザパルスを発光させる機能とを有し、図5の状態の追加情報記録区間10に対して記録を行って、図4のように穴空きマーク6を形成する。その際の発光パターンの変調は、情報記録領域のピット列に対応した変調と同じ変調方式として、EFM+信号が用いられる。
【0033】
図6は再生専用型光ディスク90における追加情報記録区間10への追加情報の記録として、高出力レーザを入射して穴空きマーク6を形成したサンプルの様子を示している。これは、穴空きマーク6が形成された追加情報記録区間10のSEM(走査型電子顕微鏡)観察写真である。
SEM観察時には反射膜形成済光ディスク基板95と貼り合わせ基板96(ダミー用光ディスク基板)とを接着面で剥がし、反射膜4がむき出しになった部分へ電子線を入射して観察した。反射膜4としては、Alを基合金としてFeを約1原子%、Tiを約5原子%含有したAl合金を用いた。
この図6からわかるとおり、追加情報記録区間10に形成されている金属合金反射膜が追加情報の変調信号に応じて消失或いは減少されて楕円形状に穴が空き、ピットに対応した穴空きマーク6が綺麗に形成されていることがわかる。
【0034】
ところで、以上の図3〜図5では、情報記録面として情報記録面L0が1つ設けられたいわゆる単層ディスクについて示したが、情報記録面が複数設けられる多層ディスクの場合であっても、上記のように穴空きマーク6による記録データ列が形成できる。図7(a)(b)に断面構造例を示す。
【0035】
図7(a)(b)はそれぞれ2つの情報記録面L0,L1が形成された再生専用型光ディスク90を示し、特に追加情報記録区間10が設けられた部分の断面構造を示している。
2層構造の再生専用型光ディスク90の場合、反射膜形成済光ディスク基板95に対して、貼り合わせ基板96としては半透過反射膜形成済光ディスク基板が用いられる。半透過反射膜形成済光ディスク基板は、ピット/ランドによる所要の記録データ列が形成されたディスク基板上に半透過反射膜7が形成された光ディスク基板である。
情報記録面L0は反射膜形成済光ディスク基板95の一主面上に形成され、情報記録面L1は半透過反射膜形成済光ディスク基板の一主面上に形成される。
【0036】
これら情報記録面L0、L1は周知の方法によって形成することができる。例えば同時に2枚の光ディスク基板94を成型し、成型と同時に一方の光ディスク基板94へはその一主面に第1の情報記録面L0を形成するピット2およびランド3を成型し、他方の光ディスク基板94へはその一主面に第2の情報記録面L1を形成するピット2およびランド3を成型する。
次に、一方の光ディスク基板94の情報記録面L0の表面に反射膜4を、また他方の光ディスク基板94の情報記録面L1の表面に半透過反射膜7を、それぞれ例えばスパッタすることによって形成する。
そして、この一方の光ディスク基板94の情報記録面L0上に例えば紫外線硬化樹脂を塗布し、他方の光ディスク基板94の情報記録面L1側と接着することで貼り合せ、紫外線を照射することで紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0037】
情報記録面が2つ以上の場合でも、穴空きマーク6の形成は前述と同様に実行できる。つまり追加情報記録装置150では、無変調区間として追加情報記録区間10が形成された側の情報記録面に対して記録用のレーザをフォーカシングさせ、適切な出力で、追加情報の変調信号に応じてレーザ発光させることで、穴空きマーク6を形成する。
図7(a)は、情報記録面L0側に追加情報記録区間10が設けられ、ここにレーザ照射をおこなって反射膜4(全反射膜)を消失又は減少させることで穴空きマーク6を形成した例である。
また図7(b)は、情報記録面L1側に追加情報記録区間10が設けられ、ここにレーザ照射をおこなって半透過反射膜7を消失又は減少させることで穴空きマーク6を形成した例である。
【0038】
なお、このとき、記録用レーザを照射する方向は制限されないが、例えば図7(a)に示すようにレーザ入射方向を設定し、情報記録面L0側に穴空きマーク6を形成する場合、情報記録面L0にフォーカシングされるレーザ光の実効的な出力は半透過反射膜7により減衰された値となるから、出射する際のレーザ出力はその減衰分を考慮して値を大きく設定しておく必要がある。
【0039】
この図7の例のように、多層構造の再生専用型光ディスク90であっても、いずれかの情報記録面に追加情報記録区間10を設け、その追加情報記録区間10に穴空きマーク6によるデータ列として追加情報を書き込むことができる。
なお、ここではいずれかの情報記録面としたが、例えば情報記録面L0,L1の両方に追加情報記録区間10を設け、それぞれに穴空きマーク6による記録データ列を形成するようにしてもよい。
【0040】
ここで本例の再生専用型光ディスク90をDVDとして使用できるようにするには、当然ながらDVD規格に準拠したディスクとする必要があり、つまり穴空きマーク6による記録データ列が形成された部分も、DVD規格に適合していなければならない。
このためには穴空きマーク6による記録データ列部分において、少なくとも以下の条件を満たす必要がある。
・穴空きマーク6による記録データ列が、ランレングス制限を満たしていること。
・穴空きマーク6による記録データ列において反射率がDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分の再生信号の変調度がDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分の再生信号のアシンメトリがDVD規格に適合すること。
・穴空きマーク6による記録データ列部分のジッター値がDVD規格に適合すること。
【0041】
まず穴空きマーク6による記録データ列が、DVDのランレングス制限を満たしているということは、3T〜14T(Tは記録の際に変調された情報データの基準クロック周期)の穴空きマーク6及びランドのパターンとなっていることが必要である。このためには追加情報が通常のピット/ランドによる記録データ列の形成の際と同様にEFM+信号に変調され、このEFM+信号に基づいて穴空きマーク6が形成されること、及び追加情報記録区間の前後のピット列との関係でも、ランレングス制限を満たすようにすればよい。
【0042】
また反射率は、DVD規格では、単層ディスクの場合で60%以上85%以下(無偏光光学系の場合)、或いは45%以上85%以下(偏光光学系の場合)とされる。2層ディスクの場合は18%以上30%以下とされる。
穴空きマーク6部分の反射率と反射膜の膜厚の関係を図8に示した。ここでは反射膜として純Ag、純Alを採用した場合について、それぞれ波長650nmの光を屈折率約1.5の樹脂を通して照射した場合の反射率を計算機により算出したものを示している。
この図8から、膜厚が薄くなる程反射率が低くなることがわかる。反射膜が純Agの場合は、膜厚約30nmで反射率が約80%となり、膜厚50nm以上で反射率が90%を超えて横ばいとなる。また、反射膜が純Alの場合は、膜厚約10nmで反射率が約70%となり、膜厚約20nmで反射率が85%を超え、膜厚約35nm以上で横ばいとなる。
本実施の形態においては、追加情報データを穴空きマーク6として安定に形成するために、例えば純Alへ元素を添加したAl合金を反射膜として用いる。Al合金になると同じ膜厚で比較した場合の反射率は純Alの場合より低減するため、反射膜材料としては横ばいになったときの反射率が上記DVD規格を満たすように、例えば無偏光光学系で60%以上となるように、Al合金の組成と膜厚を制御すればよい。
ここで、穴空きマーク6の部分とは、反射膜が消失または減少されて形成された部分であり、穴空きマーク6と穴空きマーク6の間のスペース部分(ランド部分)が、反射膜が通常に残されている部分である。基本的には穴空きマーク6と穴空きマーク6の間のスペース部分は、ピット2及びランド3による記録データ列のランド3の部分と同様の膜厚となり、必要な反射率が得られる。
【0043】
変調度に関しては、DVD規格では、
I14/I14H≧0.60
I3/I14≧0.15(単層ディスクの場合)
I3/I14≧0.20(2層ディスクの場合)
とされる。
またアシンメトリに関しては、DVD規格では、
−0.05≦{(I14H+I14L)/2−(I3H+I3L)/2}/I14≦0.15
とされる。
図9に再生信号のアイパターンの概略図を示している。I14は14Tパターンのピーク−ボトムの振幅レベル、I14Hは14Tパターンのピークレベル、I14Lは14Tパターンのボトムレベル、I3は3Tパターンのピーク−ボトムの振幅レベル、I3Hは3Tパターンのピークレベル、I3Lは3Tパターンのボトムレベルである。
図10に本実施の形態によるピット2及びランド3による記録データ列での再生信号振幅と、穴空きマーク6による記録データ列での再生信号振幅の概略を示す。図10のように、ピット2およびランド3による記録データ列からも、穴空きマーク6による記録データ列からも、I14H、I14L、I3H、I3Lとして、ほぼ同等のレベルを得ることが出来、上記変調度及びアシンメトリの規格を満たすことができる。
ジッター値(対チャネルビットクロック時間)に関しては、8.0%以下とされるように穴空きマーク6による記録データ列が形成されればよい。
【0044】
既に公知のとおり、ピット/ランドによる記録データ列では、位相差による反射光強度の変化でピット/ランドよる情報を検出する。つまりピット2の部分では回折光の位相差による干渉と再生装置の対物レンズの開口の関係によって反射光量が低減する。これによってランド3とピット2の部分では検出される反射光量の差が得られ、それによってピット/ランドに応じた再生信号波形が得られる。
一方、穴空きマーク6による記録データ列では、穴空きマーク6部分とスペース部分での反射率差によって検出される反射光量差が得られる。図8からわかるように、反射膜が殆ど消失された穴空きマーク6の部分は、反射率は低くなり、一方、反射膜が残されているスペース部分では高い反射率が得られる。
この結果、再生信号波形で見れば、図10にも示したようにピット列と穴空きマーク6による記録データ列では、ほぼ同等の再生信号波形が得られ、穴空きマーク6からはピット2と同一の論理性が得られる。
【0045】
ここで、以上のように、プリピット信号列からも、穴空きマーク信号列からも、I14H、I14L、I3H、I3Lとして、ほぼ同等のレベルを得ることが出来るようにする条件について説明する。つまり、プリピット信号列から読み出されるプリピット信号と穴空きマーク信号列から読み出される穴空きマーク信号について、変調度とアシンメトリをほぼ同等とし、両信号を安定に読み出せるようにするための条件である。
【0046】
図11(a)に、ピット2及び穴空きマーク6についての上面図を示し、また図11(a)の破線部分に相当する断面図を図11(b)に示す。
図11(a)(b)からわかるように、ピット2は円錐台形状の凹部となる。
このピット2として、nTに対応するピットの面積の小さい底面(円錐台形底面)の長さをLp1(n)、幅をWp1(n)とする。
またピット2の、面積の大きい面(円錐台形上面)の長さをLp2(n)、幅をWp2(n)とする。
この場合当然、Lp1(n)<Lp2(n)であり、Wp1(n)<Wp2(n)となる。
また穴空きマーク6については、nTに対応する穴空きマークの長さをLh(n)、幅をWh(n)とする。
【0047】
結論を言えば、穴空きマーク6のサイズとピット2のサイズに関して、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
の両方が満たされるようにすればよい。
即ちnTの穴空きマーク6の長さLh(n)は、nTのピット2の円錐台形底面の長さLp1(n)より長くなるようにする。
またnTの穴空きマーク6の幅Wh(n)は、nTのピット2の円錐台形底面の幅Wp1(n)と円錐台形上面の幅Wp2(n)の中間サイズより長くなるようにする。
このようなピット2及び穴空きマーク6のサイズ設定により、プリピット信号列と穴空きマーク信号列について、図10に示したようなほぼ同等の振幅が得られ、変調度やアシンメトリをほぼ同等とできる。
【0048】
ピット2のサイズ設定は、既に知られているとおり、原盤露光時のレーザビーム強度や発光時間(露光時間)によって可能である。
レーザビーム強度を調整することで、ピットの幅や長さの調整が可能となる。
また原盤露光時のレーザビームの発光時間(露光時間)によって、ピット長を微調整することが可能である。ピット長自体は、例えば3T〜14Tとして規定され、各Tに対応したレーザ発光時間が設定されるが、その各Tのレーザ発光時間を微調整することで、各Tのピット長を僅かに長くしたり短くすることができる。
【0049】
穴空きマーク6についても、そのサイズを、追加情報記録装置150の記録用レーザの出力や発光時間を変更することで調整できる。
穴空きマーク6を形成するための記録用レーザパワーと、穴空きマーク6の幅、長さの関係を調べたものが図12、図13である。
図12(a)は3Tマークについて、記録用レーザパワーと長さLh(3)の関係を示し、図12(b)は11Tマークについて、記録用レーザパワーと長さLh(11)の関係を示している。
また図13(a)は3Tマークについて、記録用レーザパワーと幅Wh(3)の関係を示し、図13(b)は11Tマークについて、記録用レーザパワーと幅Wh(11)の関係を示している。
【0050】
図12,図13からわかるように、3Tマークにおいても11Tマークにおいても、記録用レーザパワーにより穴空きマーク6の幅や長さが制御できることがわかる。
なお本実験においてはパルス発光時間を固定し、記録用レーザパワーを変えることで穴空きマークの幅、長さの関係を図11,図12のように得たが、パルス発光時間を変えることによっても光エネルギー量が変わり、穴空きマークの幅、長さが制御できる。その場合においては図12,図13とは異なる関係グラフとなるが、記録用レーザパワーとパルス発光時間によって穴空きマーク6の幅と長さを制御できることが成り立つ。
【0051】
以下、穴空きマーク6の記録データ列により追加情報を記録した再生専用型光ディスク90としてのDVDが、特別な読み取り機能を備えた再生装置を必要とすることなく信号を検出することが可能であることを確認した実験結果について説明する。
【0052】
実験では、コンテンツエリア内に複数の追加情報記録区間10を有する光ディスク基板を用意し、そこへ図6で用いたAl合金膜とは異なる組成を有するAl合金膜を約35nm形成して、ダミー用光ディスク基板と貼り合せ、再生専用型DVDを作製した。
追加情報記録区間10のトラック線方向の長さX(図4参照)は約40μmとした。
次に複数の追加情報記録区間10全てに対して、個々の追加情報記録区間10の前後のピット列の情報データを考慮して、再生信号検出後のEFM+信号が正しくデコードされるように、追加情報を穴空きマーク6によって形成した。穴空きマーク6の形成にもちいる追加情報記録装置150としては、波長650nm、対物レンズのNA0.60の光学系を有する高出力レーザライターを用いた。
【0053】
追加情報記録区間10への追加情報の記録が成功していなければ、デコードエラーが増加し、最悪の場合読み取り不能となる。
【0054】
そしてこの実験では、追加情報記録装置150のレーザ出力をディスク盤面上で78mWとして追加情報記録区間10への記録を行った再生専用型光ディスク90(DVD)を用意した。
そして市販の7社のメーカー製DVDプレイヤーを各1台ずつ用意し再生テストを行った。その結果、7機種全てにおいてデコードエラーが発生することなく追加情報を読み取ることが出来た。
【0055】
次にプリピット信号列と穴空きマーク信号列の様子を観察するため、再生専用型光ディスク90(DVD)を接着剤5の部分で剥がし、0.6mmの反射膜形成済光ディスク基板95の反射膜付加面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
図14は倍率1万倍での二次電子および反射電子の両方による観察像で、長さや幅を計測するのに適当な個所を抜粋したものである。
プリピット信号列と穴空きマーク信号列の中から、3T、5T、6T,10Tに相当するものの長さおよび幅を計測し、比較したものを図15に示す。3T、5T、6T、10Tのいずれにおいても、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・ (式1)
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・ (式2)
の関係が満たされていることがわかった。
【0056】
上述したように、穴空きマーク6の長さおよび幅は追加情報記録装置150のレーザ出力の増減に伴い増減し、出力が小さいときは市販のDVDプレイヤーで再生するとデコードエラーが発生することがわかっている。これは理由として穴空きマーク信号の信号変調度がプリピット信号の信号変調度に比べて小さいためで、上記(式1)、(式2)のいずれか一方、または両方を満たしていないことが原因である。
【0057】
以上の結果より、(式1)、(式2)を満たすような穴空きマーク6として追加情報を記録した本実施の形態の再生専用型光ディスク90は、特別な読み取り装置を必要とすることなく市販の通常のDVDプレイヤーで再生が可能となることが検証された。
なお、実施の形態ではDVD方式の再生専用型光ディスク90として、本発明を実現した例を述べたが、他のディスク方式の再生専用型光ディスク媒体及び製造方法としても、本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態のディスク製造工程の説明図である。
【図2】実施の形態の再生専用型光ディスクの平面図である。
【図3】実施の形態の再生専用型光ディスクの部分拡大図と模式的断面図である。
【図4】実施の形態の再生専用型光ディスクの部分拡大図と模式的断面図である。
【図5】実施の形態の再生専用型光ディスクの追加情報記録前の部分拡大図と模式的断面図である。
【図6】実施の形態の再生専用型光ディスクの追加情報記録区間のSEM写真を用いた説明図である。
【図7】実施の形態の2層構造の再生専用型光ディスクの模式的断面図である。
【図8】実施の形態の反射膜の膜厚と反射率の関係の説明図である。
【図9】再生信号のアイパターンの説明図である。
【図10】実施の形態の再生信号波形の説明図である。
【図11】実施の形態のピットと穴空きマークの上面図と断面図である。
【図12】実施の形態の穴空きマークの長さと記録レーザパワーの関係の説明図である。
【図13】実施の形態の穴空きマークの幅と記録レーザパワーの関係の説明図である。
【図14】実施の形態の再生専用型光ディスクの実験例についてのSEM写真を用いた説明図である。
【図15】実施の形態の再生専用型光ディスク媒体の実験例での測定値の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 情報記録領域、2 ピット、3 ランド、4 反射膜、5 接着剤、6 穴空きマーク、7 半透過反射膜、10 追加情報記録区間、90 再生専用型光ディスク、92 光ディスク原盤、150 追加情報記録装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変調信号に基づいて形成された凹凸形状を有する情報記録面と、前記情報記録面を被覆する反射膜とを有し、前記凹凸形状をピット及びランドから成る第1の記録データ列として記録トラックを形成する再生専用型光ディスク媒体において、
上記ピット及びランドから成る第1の記録データ列が形成された上記記録トラック中に上記記録層が平面形状となる追加情報記録区間が設けられ、
該追加情報記録区間において、第2の変調信号に基づいて反射膜を消失又は減少させたマークから成る第2の記録データ列が形成されており、
上記第1の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式と上記第2の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式とが同一であって、
変調された情報データの基準クロック周期をTとし、情報データの長さをnT(nは自然数)としたときの上記nTに対応する上記マークの長さをLh(n)とし、
上記nTに対応する、上記マークの幅をWh(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の幅をWp1(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形上面の長さを、上記Lp1(n)より長いLp2(n)とし、
上記nTに対応する、円錐台形上面の幅を上記Wp1(n)より長いWp2(n)とした場合に、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
及び、
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
を満たすことを特徴とする再生専用型光ディスク媒体。
【請求項2】
上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、
上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記全反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされることを特徴とする請求項1に記載の再生専用型光ディスク媒体。
【請求項3】
上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、
上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記半透過反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされることを特徴とする請求項1に記載の再生専用型光ディスク媒体。
【請求項1】
第1の変調信号に基づいて形成された凹凸形状を有する情報記録面と、前記情報記録面を被覆する反射膜とを有し、前記凹凸形状をピット及びランドから成る第1の記録データ列として記録トラックを形成する再生専用型光ディスク媒体において、
上記ピット及びランドから成る第1の記録データ列が形成された上記記録トラック中に上記記録層が平面形状となる追加情報記録区間が設けられ、
該追加情報記録区間において、第2の変調信号に基づいて反射膜を消失又は減少させたマークから成る第2の記録データ列が形成されており、
上記第1の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式と上記第2の記録データ列を形成する際の情報データの変調方式とが同一であって、
変調された情報データの基準クロック周期をTとし、情報データの長さをnT(nは自然数)としたときの上記nTに対応する上記マークの長さをLh(n)とし、
上記nTに対応する、上記マークの幅をWh(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の長さをLp1(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形底面の幅をWp1(n)とし、
上記nTに対応する、上記ピットの円錐台形上面の長さを、上記Lp1(n)より長いLp2(n)とし、
上記nTに対応する、円錐台形上面の幅を上記Wp1(n)より長いWp2(n)とした場合に、
Lh(n)>Lp1(n) ・・・(式1)
及び、
Wh(n)>(Wp1(n)+Wp2(n))/2 ・・・(式2)
を満たすことを特徴とする再生専用型光ディスク媒体。
【請求項2】
上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、
上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記全反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされることを特徴とする請求項1に記載の再生専用型光ディスク媒体。
【請求項3】
上記情報記録面として複数の情報記録面を有し、1つの情報記録面は、上記反射膜として全反射膜が被覆され、かつ、他の情報記録面は上記反射膜として半透過反射膜が被覆されており、
上記追加情報記録区間は、少なくとも、上記半透過反射膜が被覆された情報記録面に設けられ、上記マークと上記ピットとの間で、上記(式1)及び上記(式2)の関係が満たされることを特徴とする請求項1に記載の再生専用型光ディスク媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図6】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図6】
【図14】
【公開番号】特開2009−146465(P2009−146465A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319511(P2007−319511)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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