説明

再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法

【課題】
ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して再生樹脂組成物を40重量部超えて配合しても、十分な押出発泡が行なうことができ、シート化が可能となり、しかも廃棄物である再生樹脂組成物を有効に利用することができる再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物に該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を加えて再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法において、前記再生樹脂組成物が重量平均分子量(Mw)300×10以上であり、且つ、溶融張力が2.0cN以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生樹脂を含有したポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法に関する。特に、押出発泡シートを製造する過程で発生する不良品又は製造した発泡シートから表皮を除去するスライス過程において発生する非製品部分などの廃棄物を有効に利用して、十分な押出発泡が行なうことができる再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生樹脂組成物ではない未使用のバージン原料を発泡成形又は加工する際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を、バージン原料100重量部に対して、5〜40重量部利用してシート化を行なうものが公開されている(特許文献1)。この特許文献1によれば、樹脂発泡体の製造工程で発生する廃棄物を有効に活用して、ピンホールが少ない再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することができるとされている。
【0003】
しかし特許文献1は、再生樹脂組成物の利用が、ポリオレフィン系樹脂組成物のバージン原料100重量部に対して40重量部を超えると、良好な発泡体が得られなくなるという問題があった。発泡体の表皮をスライス加工で除去して中心部分のみを製品として使用する場合、発泡シートの30重量%以上の多量の廃棄物が発生するため、より多くの再生樹脂組成物を使用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−225571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して再生樹脂組成物を40重量部を超えて配合しても、十分な押出発泡が行なうことができる再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物に該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を加えて再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法において、前記再生樹脂組成物が重量平均分子量(Mw)300×10以上であり、且つ、溶融張力が2.0cN以上であることを特徴とする再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法である。
【0007】
本発明は再生樹脂組成物のZ平均分子量(Mz)が1300×10以上であることが好ましい。また本発明は再生樹脂組成物の230℃でのMFRが2.0 g/10min以下であることが好ましい。またポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に対して、該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を10〜250重量部加えることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、再生樹脂組成物ではない未使用のポリオレフィン系樹脂組成物に対してこの再生樹脂組成物を用いることで、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡組成物の発泡性を改善でき、公開されている方法ではできなかった比率の再生樹脂を用いても良好な発泡体を得ることが可能となる。
従って、本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して再生樹脂組成物を40重量部を超えて配合しても、十分な押出発泡が行なうことができ、シート化が可能となり、しかも廃棄物である再生樹脂組成物を有効に利用することができる再生樹脂を含有したポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物に該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を加えて再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法において、前記再生樹脂組成物が重量平均分子量(Mw)300×10以上であり、且つ、溶融張力が2.0cN以上であることを特徴とする再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法である。
【0010】
(ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物)
バージン原料(未使用原料)となるポリオレフィン系樹脂としては、メルトフローレート(MFR)が0.2〜5g/10min程度であれば、特に限定されない。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体の何れであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体が好ましい。
プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数が4〜10であるα−オレフィンが挙げられる。
これらの内、発泡性や耐熱性が優れるホモポリプロピレンや、ブロック共重合体ポリプロピレンが好ましく、さらに耐熱性に優れるホモポリプロピレンがより好ましい。
【0011】
また、本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、発泡性に優れることから、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。高溶融張力ポリプロピレン系樹脂としては、電子線架橋などにより分子構造中に自由末端長鎖分岐を有している高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)や、高分子量成分を含むことで溶融張力を上げたもの等がある。この高溶融張力ポリプロピレンとしては、市販品を使用でき、市販品の具体例としては、日本ポリプロ社製の商品名「ニューストレンSH9000」や、Borealis社製の商品名「DaployWB135HMS」などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を適宜組み合わせ混合して用いてもよい。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂のMFRは低いと、押出機の負荷が大きくなって生産性が低下し、又は、発泡剤を含む溶融したポリオレフィン系樹脂組成物が金型内を円滑に流れることができなくなって、得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の表面にムラが発生して外観が低下する一方、高いと、円環ダイ手前での樹脂圧力が低下し、円環ダイ気泡生成部における樹脂圧力も低下することから、気泡生成部手前で気泡が生成してしまい発泡体成形部で破泡が急激に生じることにより発泡性が低下し、得られる発泡体の外観が低下もしくは、発泡体が得られなくなるので、0.2〜5g/10minが好ましい、0.2〜4g/10minがより好ましく、0.3〜3.5g/10minが特に好ましい。
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999のB法に準拠して、試験温度230℃、試験荷重21.18Nにて測定されたものをいう。
ポリオレフィン系樹脂のMFRは、ポリオレフィン系樹脂を一種単独で用いた場合には、その樹脂のMFRを上記方法で測定されたものをいう。
また、ポリオレフィン系樹脂二種以上を混合して用いた場合には、それぞれ個々のポリオレフィン系樹脂のMFRを上記測定方法で測定し、それぞれのMFRの値から、下記の様にして、算出したものをいう。
即ち、ポリオレフィン系樹脂が、n種類のポリオレフィン系樹脂の混合物であるとした場合、ポリオレフィン系樹脂1のMFRをMFR、ポリオレフィン系樹脂2のMFRをMFR、・・・ポリオレフィン系樹脂nのMFRをMFRとすると共に、ポリオレフィン系樹脂1の含有量をC1、ポリオレフィン系樹脂2の含有量をC2、・・・ポリオレフィン系樹脂nの含有量をCnとする。なお、ポリオレフィン系樹脂nの含有量は、ポリオレフィン系樹脂nの重量をポリオレフィン系樹脂全体の重量で除したものとする。そして、バージン原料のポリオレフィン系樹脂のMFRは、下記式によって算出される。
メルトフローレート(g/10min)=(MFR1)C1×(MFR2)C2×・・・×(MFRn)Cn
【0013】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂発泡用組成物には、気泡核剤が含まれる。気泡核剤はポリオレフィン系樹脂発泡用組成物が気泡を形成する際に気泡核の生成を促すものであり、気泡の微細化と均一性に効果を示す。気泡核剤としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、ガラスビーズなどの無機化合物;ポリテトラフルオロエチレン、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などの有機化合物、窒素などの不活性ガスなどが挙げられる。その中でも、無機化合物ではタルク、有機化合物ではポリテトラフルオロエチレンが気泡微細化に効果が高いため好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレンは分散させた際にフィブリル状になることで樹脂の溶融張力が上がるようになるものが特に好ましい。
【0014】
気泡核剤の量は、少ないと得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡数を増加させることが困難となり、得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがある。一方、多いと二次凝集を起こしやすくなり押出発泡不良による発泡体の表面平滑性が低下することがあるので、配合樹脂組成物100重量部に対して0.01〜15重量部であることが好ましく、0.1〜12重量部であることがより好ましい。
【0015】
本発明で使用される気泡核剤は、そのものの形態で配合樹脂組成物と混合し熱可塑性樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良く、更にマスターバッチとして配合樹脂組成物と混合し熱可塑性樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良い。
マスターバッチの基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0016】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂発泡用組成物には、ポリオレフィン系樹脂及び気泡核剤以外に、任意成分として、発泡成形に通常用いられる各種添加剤を配合することができる。該添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、光安定剤、顔料、染料、難燃剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの内、界面活性剤は、すべり性及びアンチブロッキング性を付与するものである。また、分散剤は、無機充填剤の分散性を向上させるもので、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
添加剤の添加量は、気泡の形成、得られる発泡体の物性等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性樹脂の成形に用いられる添加量を採用できる。
前記気泡核剤及び上記添加剤は、取扱いの容易性や粉体飛散による製造環境汚染の防止のため、又熱可塑性樹脂中への分散性を向上させるため、マスターバッチとして、使用することもできる。
マスターバッチは、通常、熱可塑性の基材樹脂に、添加剤等を高濃度で練り込み、ペレット状とすることにより、行うことができる。基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0017】
(再生樹脂組成物)
再生樹脂組成物とは前記ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生したものをいう。
従って、特開2006−225571に記載されている例えば気泡が安定するまで製品として巻き取らない初期流動品、発泡体表面を平滑にするためにスライスされる表面部分(いわゆるスキン層)、さらに特定の形状に打ち抜き加工される場合の不要部分、などの廃棄物を再生したものを挙げることができる。
また廃棄物を再生する工程は通常、粉砕・溶融・ペレット化の各工程からなる。各工程を個別に実施しても良いが、これらの工程を連続して行うことができる装置を用いて一連の工程として連続して行うことが好ましい。
【0018】
再生樹脂組成物の分子量は後述の様にして測定されたものをいうが、再生樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、小さいと良好な発泡シートを得ることが難しいので300×10以上に限定される。また、大きくても良好な発泡シートが得られる押出条件の範囲が狭くなることがあるので、1500×10以下が好ましい。350×10〜1000×10の範囲であることがより好ましく、400×10〜800×10の範囲であることが特に好ましい。
同様の理由で、再生樹脂組成物のZ平均分子量(Mz)は、1300×10以上であることが好ましい。1300×10〜5500×10の範囲であることがより好ましく、1500×10〜5000×10の範囲であることがさらに好ましく、1700×10〜4500×10の範囲であることが特に好ましい。
【0019】
再生樹脂組成物の溶融張力は後述の様にして測定されたものをいうが、低いと発泡時の張力を維持できず、発泡倍率の高いシートを得ることが難しいので2cN以上に限定される。一方、高すぎても気泡生成の際に膨らみにくく、発泡倍率の高いシートを得ることが難しくなることがあるので、50cN以下であることが好ましい。2〜40cNの範囲であることがより好ましく、2〜30cNの範囲であることが特に好ましい。
【0020】
再生樹脂組成物のMFRは後述の様にして測定されたものをいうが、大きいと押出時に金型先端の圧力を保持できず良好な発泡体が得られないことがあるので2g/10min以下であることが好ましい。一方、小さすぎても、金型先端の圧力が上がり過ぎることがあるので0.1g/10min以上であることが好ましい。0.1〜1.8g/10minの範囲であることがより好ましく、0.1〜1.6g/10minの範囲であることが特に好ましい。
【0021】
(発泡剤)
発泡剤は、押出発泡成形に用いることができる公知の発泡剤を用いることができる。発泡倍率の調整が容易なことから、押出機内に圧入させて供給される物理的発泡剤が好ましい。本発明においては、特に二酸化炭素を用いることが好ましい。二酸化炭素は、超臨界状態、亜臨界状態、又は液化された二酸化炭素を用いることで、従来の発泡体以上に微細な気泡を形成させることが出来、得られる発泡体の表面平滑性や柔軟性を向上させることが出来る。押出機内に圧入される発泡剤の量は、ポリオレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整されればよいが、少ないと、ポリオレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率が低くなり、軽量性及び断熱性が低下することがある一方、多いと、金型内において発泡を生じ、破泡を生じたり、或いは、ポリオレフィン系樹脂発泡体中に大きな空隙が生じることがあるので、ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物あるいは再生樹脂組成物含有ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に対して1〜10重量部程度であるのが好ましく、2〜8重量部程度であるのがより好ましく、3〜6重量部程度であるのが特に好ましい。
【0022】
(再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物)
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物に該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を加えて再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法であるが、前記ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に対して、前記廃棄物を再生した再生樹脂組成物を10〜250重量部加えることができる。
前記廃棄物を再生した再生樹脂組成物が250重量部を越えると倍率、厚みの低下が起こり、従来品と同等の発泡体が得られない。200重量部以下であることが好ましい。
なお、前記廃棄物を再生した再生樹脂組成物は、廃棄物をより有効活用(マテリアルリサイクル)できると共に、コスト削減にもつながる点で、前記ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に対して、40重量部を越えて配合することが好ましく、50重量部を越えて配合することがより好ましい。
【0023】
(押出機)
本発明の製造方法において、押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、およびタンデム型押出機のいずれの押出機をも用いることができる。本発明では、これらの内、押出条件を調整しやすいことから、タンデム型押出機が好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において用いられる金型は、樹脂流路の絞りにより形成された気泡生成部と、生成した気泡の成長及び発泡体表面の平滑化を行う発泡体成形部とを有している円環ダイで構成される。本発明による再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体は、従来よりも微細な気泡を有しているため、従来の円環ダイを用いて発泡させた場合、発泡体表面には多数のコルゲートが発生し、得られる発泡体の表面平滑性が悪くなる。しかしながら、発泡体形成部の有する円環ダイは、発泡体成形部における適度なすべり抵抗によって、気泡生成部でのコルゲートの発生を抑制でき、表面平滑な発泡体を得ることができる。ここで言うコルゲートとは、円環ダイから出た発泡体が体積膨張による円周方向の線膨張分を吸収するために波打ちしてできる、多数の山谷状のヒダのことである。
【0025】
本発明の製造方法では、気泡生成部での樹脂の吐出速度Vは、50〜300kg/cm・hrかつ、円環ダイ手前での樹脂圧力が7MPa以上とすることが好ましい。
吐出速度Vは70〜250kg/cm・hr程度であることがより好ましく、100〜200kg/cm・hr程度であることがさらに好ましい。かつ円環ダイ手前での樹脂圧力は7MPa以上が好ましく、8MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。上記条件による押出発泡で、ポリオレフィン系樹脂の発泡性を向上させることができることに加え、気泡を微細化することができるとともに気泡膜の強度がより高まる。これら条件により、得られた発泡体は二次加工する場合の加工性が向上し、スライス加工して得られるシート状の発泡体は、表面平滑性に優れたものが得られる。吐出速度Vが50kg/cm・hr程度より小さい場合、気泡の微細化や高発泡倍率の発泡体を得ることが困難となることがある。一方で300kg/cm・hr程度より大きい場合、金型気泡生成部で樹脂が発熱して気泡破れをきたし、発泡倍率が低下しやすくなることに加え、皺状のコルゲートが発生しやすくなり気泡径が不均一となって発泡体の表面平滑性が低下するため好ましくない。吐出速度Vは、円環ダイ気泡生成部の断面積、押出吐出量により適宜調節される。
【0026】
気泡生成部の断面積の調整方法としては、金型の気泡生成部の長さ(フラット金型の場合)や口径(円環ダイの場合)を変える方法と、金型の気泡生成部の間隔(フラット金型又は円環ダイの場合)を変える方法との2通りの方法が挙げられる。
【0027】
円環ダイ手前での樹脂圧力は、7MPaよりも低いと円環ダイ気泡生成部より手前で気泡生成が始まり、良好な発泡体が得られなくなるため好ましくない。また、20MPaより高くなると、押出機の負荷が高くなりすぎたり、発泡剤の注入圧力が高くなりすぎて圧入出来なくなる恐れがあるため、好ましくない。
円環ダイ手前での樹脂圧力は、溶融樹脂粘度と押出吐出量、円環ダイ気泡生成部断面積によって適宜調節される。更に溶融樹脂粘度は配合樹脂組成物の粘度と発泡剤の添加量、及び溶融樹脂温度によって適宜調節される。なお、本明細書での溶融樹脂温度とは、円環ダイ手前での樹脂圧力を測定する直管金型において、溶融樹脂に直接接触させる形で取り付けられた熱電対にて測定された温度を言う。
【0028】
(再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体)
本発明方法により得られた再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径は、小さいと、破泡が多くなり、ポリオレフィン系樹脂発泡体の見かけ密度が大きくなることがある一方、大きいと、圧縮時の回復性や機械的強度などの物性が低下することがあるので、0.02〜0.2mm程度であるのが好ましく、0.04〜0.18mm程度であるのがより好ましく、0.06〜0.16mm程度であるのが特に好ましい。
【0029】
(測定方法)
以下、測定方法を記載する。
平均気泡径
本明細書において、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して、下記の様にして、測定されたものをいう。
具体的には、発泡シートをMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−3000N)で拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、画像上に長さ60mmの直線を一本、描く。なお、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に、VD方向(厚み方向)はMD方向及びTD方向に対して垂直(シートに対して垂直)に直線を描く。このとき、60mmの直線上に気泡が10〜20個程度となる様に、上記の電子顕微鏡での拡大倍率を調整した。
上記直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出し、この平均弦長を各方向(MD方向、TD方向及びVD方向)の平均気泡径とした。
平均弦長 t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
前記式で算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出する。
気泡径(mm)D=t/0.616
そして、得られたMD方向の気泡径(DMD)、TD方向の気泡径(DTD)とVD方向の気泡径(DVD)の相加平均値を再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(DMD+DTD+DVD)/3
【0030】
見掛け密度
本明細書において、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の見かけ密度はJIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定される。具体的には、試料から10cm以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を試料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出する。
密度(kg/m)=試験片質量(g)/試験片体積(cm)×10
【0031】
再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の見かけ密度は、小さいと、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体のクッション性又は柔軟性が低下することがあるので、30〜100kg/m程度の範囲内であるのが好ましく、30〜90kg/m程度の範囲内であるのがより好ましく、35〜70kg/m程度の範囲内であるのが特に好ましい。
【0032】
分子量(GPC分析)
本明細書において、再生樹脂組成物の分子量は下記の様にして、測定されたものをいう。具体的には、試料約10mgをサンプル瓶に秤量後、ODCB約4mLを加えて密閉し、高温GPC溶解装置用のアルミブロック中で160℃で2時間程度加熱溶解させ、溶解後に高温GPC濾過装置専用器具中に液を移し、30分程度加熱後にプラスチック製注射器にて濾過し、濾過液を高温GPC用試験管に再度移して試料溶液を作成した。試料溶液を、カラム温度145℃、流量1.0mL/minで測定し、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)を算出した。測定装置としては、TOSOH HLC-8121GPC/HTを用いることができ、カラムとして、UT-806M×3 (Shodex)を用いることができる。
【0033】
溶融張力
本明細書において、再生樹脂組成物の分子量は下記の様にして、測定されたものをいう。具体的には、試験温度230℃に設定し、バレル径15mm、ダイ径2.095mm、ダイ長さ8mmのキャピラリー形状であり、押出速度0.0676mm/s、巻取速度初速4mm/sから12mm/s2で加速である。測定装置としては、チアスト社製のツインボアキャピラリーレオメーター Rheologic 5000Tを用いることができる。
【0034】
MFR
本明細書において、再生樹脂組成物のMFRはJIS K 7210:1999 熱可塑性プラスチックのMFR及びMVRの試験方法に記載の方法に準拠した方法により測定される。具体的には、試験温度230℃、試験荷重21.18Nで行う。測定装置としては、東洋精機社製 セミオートメルトインデクサーを用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、各例において、部及び%は、原則として、重量基準である。
【0036】
(ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造)
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
このタンデム型押出機の第一押出機に、ポリオレフィン系樹脂(日本ポリプロ社製 ニューストレンSH9000 MFR:0.3g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーである熱可塑性エラストマー(三菱化学社製 サーモランZ101N MFR:14g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させたポリオレフィン系樹脂発泡用組成物を第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、溶融状態のポリオレフィン系樹脂発泡用組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm)、発泡体成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70の円環ダイから吐出量30kg/hr(吐出速度V=109kg/cm・hr)、樹脂温度175℃、円環ダイ手前での樹脂圧力9.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。
上記方法により得られたオレフィン系樹脂発泡体は、コルゲートの発生が無く、表面平滑性に優れるため、スライス加工等の二次加工性に優れる。また、二次加工を行なうのに充分な厚みを維持したシートが得られた。
【0037】
(再生樹脂組成物の製造)
得られたポリオレフィン系樹脂発泡体の両面をスプリッティングマシンによりスライス加工して表皮を除去しスライス加工された発泡シート加工製品を得た。一方、除去した表皮を回収した。回収した表皮を粉砕し、押出機にて溶融混練し、ストランド状に押出した後、水冷し、円筒形のペレット状に成形した再生樹脂組成物Aを得た。ペレタイザーの回転刃は自由に速度調整できるため、任意のサイズのペレットを得ることができる。再生樹脂組成物Aは、重量平均分子量(Mw)が446×10、Z平均分子量(Mz)が1865×10、溶融張力が2.3cN、230℃でのMFRが1.6 g/10minであった。
【0038】
(再生樹脂組成物含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造)
[実施例1](再生樹脂組成物30重量%)
ポリオレフィン系樹脂(日本ポリプロ社製 ニューストレンSH9000 MFR:0.3g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーである熱可塑性エラストマー(三菱化学社製 サーモランZ101N MFR:14g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させたポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に、上記で製造した再生樹脂組成物Aを43重量部混合させた、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、溶融状態の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm)、発泡体成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70の円環ダイから吐出量30kg/hr(吐出速度V=109kg/cm・hr)、樹脂温度176℃、円環ダイ手前での樹脂圧力9.3MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。得られた発泡シートは、厚みが2.1mm、平均気泡径が0.14mm、見掛け密度が54.2kg/mであった。
【0039】
[実施例2](再生樹脂組成物50重量%)
上記ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に再生樹脂組成物Aを100重量部混合させた以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、樹脂温度175℃、円環ダイ手前での樹脂圧力10.2MPaの条件で押出発泡させ、シート状の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。得られた発泡シートは、厚みが1.7mm、平均気泡径が0.12mm、見掛け密度が57.5kg/mであった。
【0040】
[比較例1](バージン原料不使用)
再生樹脂組成物Aのみ100%を押出機に供給して溶融混練した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、樹脂温度172℃、円環ダイ手前での樹脂圧力12.6MPaの条件で押出発泡を行なった。
再生樹脂組成物のみ100%では、樹脂粘度が低く、円環ダイ手前での樹脂圧力と金型クリアランスの調整ができないため、良好な発泡体が得られなかった。
【0041】
[比較例2]
実施例2で製造した再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する際に発生した廃棄物または加工後に発生した廃棄物を回収し、回収した廃棄物を粉砕し、押出機にて溶融混練し、ストランド状に押出した後、水冷し、円筒形のペレット状に成形した再生樹脂組成物Bを得た。ペレタイザーの回転刃は自由に速度調整できるため、任意のサイズのペレットを得ることができる。再生樹脂組成物Bは、重量平均分子量(Mw)が421×10、Z平均分子量(Mz)が1400×10、溶融張力が1.9cN、230℃でのMFRが1.8 g/10minであった。
次に実施例1と同様に、ポリオレフィン系樹脂(日本ポリプロ社製 ニューストレンSH9000 MFR:0.3g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーである熱可塑性エラストマー(三菱化学社製 サーモランZ101N MFR:14g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させた熱可塑性樹脂組成物100重量部に、再生樹脂組成物Bを43重量部を混合させた、再生樹脂組成物B含有熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、樹脂温度175℃、円環ダイ手前での樹脂圧力11.5MPaの条件で押出発泡を行なった。再生樹脂組成物Bでは、円環ダイ手前での樹脂圧力と金型クリアランスの調整が困難であることに加え、張力が低下していることから発泡しにくく、良好な発泡体が得られなかった。
【0042】
[比較例3]
再生樹脂組成物Bを100重量部混合させた以外は比較例2と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、樹脂温度174℃、円環ダイ手前での樹脂圧力9.7MPaの条件で押出発泡を行なった。比較例2と同様に、樹脂圧力及びクリアランスの調整が難しく、再生樹脂組成物の量が増えることから、より張力の低下が著しいため発泡しにくく、良好な発泡体が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば廃棄物を有効活用することができ、廃棄物を使用しての押出を行なった場合においても従来発泡体と同等の厚み、倍率、物性の発泡体を得ることができ、柔軟性や追従性を求められる分野や、シール性、防塵性を求められる電子機器、家電分野、クッション性などを求められる住宅や自動車分野など好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物に該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を加えて再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法において、前記再生樹脂組成物が重量平均分子量(Mw)300×10以上であり、且つ、溶融張力が2.0cN以上であることを特徴とする再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
再生樹脂組成物のZ平均分子量(Mz)が1300×10以上であることを特徴とする請求項1に記載の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
再生樹脂組成物の230℃でのMFRが2.0 g/10min以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂発泡用組成物100重量部に対して、該発泡用組成物を発泡成形又は加工した際に発生する廃棄物を再生した再生樹脂組成物を10〜250重量部加えることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つに記載の再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1つに記載の製造方法で得られた再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡シート。


【公開番号】特開2012−188531(P2012−188531A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52759(P2011−52759)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】