説明

再生機能付き弁装置

【課題】再生操作可能な油圧アクチュエータに対するオペレータの意図する制御を実現できる再生機能付き弁装置の提供。
【解決手段】油圧ショベルに設けられ、アームシリンダ6の駆動を制御する方向切換弁1と、この方向切換弁1を介してアームシリンダ6からの戻り油を再生させてアームシリンダ6に供給可能な再生弁30とを備え、再生弁30の第1油室35に、再生弁スプール32を付勢するばね37の力に抗して、再生弁スプール32を再生解除の方向に摺動させる制御圧であって、アームシリンダ6の駆動に関連する制御圧が導かれると共に、再生弁スプール32に、上述の制御圧に対抗する別の制御圧、例えばアームシリンダ6の操作装置の操作に伴って出力されるパイロット圧を与える通路45と、ばね室36とを含む制御圧付与手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に設けられ、油圧アクチュエータの駆動を制御する方向切換弁を備えるとともに、戻り油を油圧アクチュエータに供給可能な再生弁を備えた再生機能付き弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の従来技術として、特許文献1に記載のものがある。この従来技術は、油圧ショベル等の作業機械に設けられ、油圧アクチュエータ例えばアームシリンダの駆動を制御する方向切換弁と、この方向切換弁を介してアームシリンダからの戻り油を再生させてアームシリンダに対して増速用に供給可能な再生弁とを備えている。再生弁のスプールの端部には、このスプールを付勢するばねの力に抗して、スプールを再生解除の方向に摺動させる制御圧、例えばアームシリンダの駆動に関連する方向切換弁内のブリッジ通路の圧力が導かれる制御室が形成されている。
【0003】
この従来技術では、アームシリンダすなわち油圧アクチュエータの駆動状態に応じて再生あるいは再生解除がなされる。例えば、アームシリンダの負荷圧が低い状態では、再生弁のスプールの制御室に与えられる制御圧が低く、再生弁のスプールを付勢するばねの力の方が制御圧による力に比べて大きいことから、再生弁のスプールは再生解除の方向に摺動せず、再生が行なわれる。このとき、アームシリンダからの戻り油が方向切換弁を介して、主油圧ポンプからアームシリンダに供給される圧油に合流して供給され、アームシリンダを速い速度で作動させることができる。また、アームシリンダの負荷圧が高くなって、再生弁のスプールの制御室に与えられる制御圧による力が、再生弁のスプールを付勢するばねの力よりも大きくなると、再生弁のスプールが再生解除の方向に作動する。これによって、再生が一部解除され、あるいは再生が完全に解除され、アームシリンダからの戻り油の一部、あるいは全量がタンクに戻され、アームシリンダの速度は再生時に比べて低下する。
【特許文献1】特開2004−076792公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は、アームシリンダの負荷圧に応じて再生、及び再生解除がなされることから、例えばアームを下方に回動させるアームクラウドを行なわせながらブーム上げを行なう水平引き操作開始時に、負荷圧が低い状態にあるアームシリンダの作動速度が速過ぎ、このためにアームの先端に取付けたバケットが降下し、スムーズな水平引き操作を行なうことができない。
【0005】
また、再生操作可能な油圧アクチュエータがブームシリンダであって、ブームを下げながらアームを上方に回動させるアームダンプを行なわせる水平押し出し操作開始時に、負荷圧が低い状態にあるブームシリンダの作動速度が速過ぎ、このために接地面に対するバケットの位置を所望の位置に保てなくなることがある。
【0006】
このようなことは、再生操作が可能な油圧アクチュエータがバケットシリンダであって、バケットを微操作させようとする開始時にも起こり得る。すなわち、バケットを緩やかな速度で動かしたいにも拘わらず、オペレータの意図するところに反して、再生操作が実施されるために速く動いてしまうことがある。
【0007】
上述したように従来技術にあっては、再生操作によって油圧アクチュエータの操作性が劣化する場合があり、この操作性の劣化を生じた場合には、当該作業機械で実施される作業の能率の低下、及び作業の精度の低下を生じてしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、再生操作可能な油圧アクチュエータに対するオペレータの意図する制御を実現できる再生機能付き弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械に設けられ、油圧アクチュエータの駆動を制御する方向切換弁と、この方向切換弁を介して上記油圧アクチュエータからの戻り油を再生させて当該油圧アクチュエータに供給可能な再生弁とを備えると共に、上記再生弁のスプールを付勢するばねの力に抗して、上記再生弁のスプールを再生解除の方向に摺動させる制御圧であって、上記油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧が導かれる制御室を備えた再生機能付き弁装置において、上記再生弁のスプールに、上記制御圧に対抗する別の制御圧を与える制御圧付与手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、制御圧付与手段を介して再生弁のスプールに、このスプールを再生解除の方向に摺動させる制御圧、すなわち油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧に対抗して、スプールを再生方向に摺動させる別の制御圧を与えることができる。したがって、オペレータによって上述の別の制御圧の制御を行なうことにより、オペレータの意図する油圧アクチュエータの制御を実現できる。すなわち、油圧アクチュエータの作動速度をオペレータの操作感覚に応じた速度とすることができる。
【0011】
本発明は、あらかじめ、再生弁のスプールを付勢するばねの力を比較的弱く設定しておくことにより、油圧アクチュエータの負荷圧が比較的低いときから、再生弁のスプールを再生解除の方向に摺動させることができる。したがって、例えば油圧アクチュエータの駆動開始時に、制御圧付与手段を介して再生弁のスプールに与えられる別の制御圧が低くなるようにオペレータが制御することにより、この別の制御圧による力と再生弁のスプールを付勢するばねの力の和よりも、油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧による力の方を大きくすることができる。すなわち、この油圧アクチュエータの駆動開始時に再生弁のスプールを再生解除の方向に摺動させることが可能となり、油圧アクチュエータの作動速度が速くなり過ぎないように制御することができる。また、油圧アクチュエータの負荷圧が比較的低い状況において、別の制御圧が大きくなるようにオペレータが制御することにより、この別の制御圧による力と再生弁のスプールを付勢するばねの力の和の方が、油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧による力よりも大きくなり、再生弁のスプールが再生方向に摺動し、所望の再生操作、すなわち油圧アクチュエータの増速を実現させることができる。
【0012】
さらに、油圧アクチュエータの負荷圧が高くなったときには、油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧による力の方が、別の制御圧による力と再生弁のスプールを付勢するばねの力の和よりも大きくなり、再生弁のスプールが再生解除の方向に摺動し、油圧アクチュエータの速度が低下する。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記制御圧付与手段が、上記再生弁のスプールを付勢するばねが配置されるばね室を含み、このばね室に上記別の制御圧を導くことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記発明において、上記別の制御圧が、上記方向切換弁のスプールを切換えるパイロット圧であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記制御圧付与手段が、上記方向切換弁のスプールを切換えるパイロット圧が導かれる上記方向切換弁の制御室と、上記再生弁のスプールを付勢するばねが配置されるばね室とを連通させる通路を含むことを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記発明において、上記方向切換弁と上記再生弁の双方を内蔵するケーシングを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、制御圧付与手段を介して、再生弁のスプールに互いに対抗する力を生じさせる2つの制御圧を与えるようにしたことから、制御圧付与手段によって供給される別の制御圧をオペレータが制御することにより、再生操作可能な油圧アクチュエータに対するオペレータの意図する制御を実現でき、従来に比べて、この油圧アクチュエータの操作性を向上させることができる。これに伴って当該作業機械で実施される作業の能率を従来よりも向上させることができ、同時に従来に比べて作業精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明に係る再生機能付き弁装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る再生機能付き弁装置の第1実施形態を示す断面図、図2は図1に示す第1実施形態に備えられる再生弁部分の拡大図である。
【0020】
これらの図1,2に示すように、本発明の第1実施形態は、作業機械例えば油圧ショベルに設けられるもので、油圧アクチュエータ例えば油圧シリンダを構成するアームシリンダ6の駆動を制御する方向切換弁1と、この方向切換弁1を介してアームシリンダ6からの戻り油を再生させてアームシリンダ6に供給可能な再生弁30とを含んでいる。すなわち、この第1実施形態は、アームシリンダ6が再生可能な油圧アクチュエータを構成している。
【0021】
図1に示すように、方向切換弁1は、ケーシング2内に摺動自在な方向切換弁スプール3を有している。この方向切換弁スプール3は、アームシリンダ6の図示しない操作装置の操作に伴って出力され、パイロットポート4に与えられるパイロット圧により同図1の左方向に摺動し、パイロットポート5に与えられるパイロット圧により同図1の右方向に摺動する。また、パイロットポート4,5にパイロット圧が導かれなくなると、ばね室24に配置したばねの力により中立位置に復帰する。
【0022】
この方向切換弁1のケーシング2内には、アームシリンダ6のボトム側室6aに主管路7を介して接続されるシリンダポート8と、アームシリンダ6のロッド側室6bに主管路9を介して接続されるシリンダポート10とを有する。
【0023】
また、アームシリンダ6を駆動する圧油を供給する主油圧ポンプ25からの当該圧油を導くブリッジ通路11,16を有する。これらのブリッジ通路11,16中には、それぞれ逆止弁13,17を配置してある。
【0024】
方向切換弁スプール3には、この方向切換弁スプール3が同図1の左方向に摺動したときに、ケーシング2のブリッジ通路11と、シリンダポート8に連通する通路14とを連通可能にさせる切り欠き18を設けてある。また、方向切換弁スプール3が同図1の右方向に摺動したときに、ケーシング2のブリッジ通路16と、シリンダポート10に連通する通路14aとを連通可能にさせる切り欠き18aを設けてある。
【0025】
さらに、この方向切換弁スプール3には、外周面に開口し、ケーシング2の通路15に連通する穴20と、この穴20に連通し、方向切換弁スプール3の軸心に沿って延設され、アームシリンダ6のロッド側室6bからの戻り油を導くことが可能な通路21と、この通路21に設けた逆止弁22と、この逆止弁22の作動時に通路21とブリッジ通路11とを連通させる穴23とを設けてある。また、この方向切換弁スプール3が同図1の左方向に摺動したときにケーシング2の通路14aと通路15とを連通可能にさせる切り欠き19を設けてある。
【0026】
再生弁30は、例えば方向切換弁1の外部に設けてある。すなわち、方向切換弁1のケーシング2に連設させて再生弁30のケーシング31を設けてある。
【0027】
この再生弁30のケーシング31には、前述した通路15の他に、方向切換弁1のケーシング2のブリッジ通路16に連通する通路34を設けてある。
【0028】
再生弁30は図2にも示すように、大径部32aと、この大径部32aに連設される小径部32bとを含む段差形状に設定した再生弁スプール32を有する。大径部32aと小径部32bとの接続部分に段差部32cが形成されている。この再生弁スプール32は、ばね室36に収納したばね37によって同図2の左方向に向って、すなわち再生方向に付勢されるようになっている。
【0029】
この再生弁スプール32の小径部32bの近傍のケーシング31部分に、例えば小径部32bの外周面に対向させるようにして、前述した通路34に連通する制御室、すなわちアームシリンダ6の駆動に関連する制御圧が導かれる第1油室35を設けてある。また、小径部32bの端部付近に第2油室39を設けてある。
【0030】
上述した第1油室35に導かれる制御圧による力が、ばね37による力と、後述の抵抗付与手段による力と、後述の制御圧付与手段によって与えられる別の制御圧による力との和よりも大きくなると、再生弁スプール32が同図2の右方向に摺動する。このときの第1油室35に導かれる制御圧として、例えばアームシリンダ6のボトム側室6aの負荷圧(厳密にはブリッジ通路16の圧力)を用いるようにしてある。
【0031】
さらに、再生弁スプール32には、その軸心に沿って延設され、第2油室39に連通する通路40を設けてある。この通路40は、ケーシング31に形成したドレン回路44に連通し、再生弁スプール32の摺動方向に垂直に設けた管路40bと、この管路40bに連通し、再生弁スプール32の摺動方向に設けた管路40cと、この管路40cと第2油室39とに連通し、再生弁スプール32に垂直に設けた管路40dとを含む構成にしてある。
【0032】
また、この再生弁スプール32には、当該再生弁スプール32が、同図2の右方向に摺動したとき、前述した通路15と、ケーシング31に設けた排出通路33とを連通させる切り欠き38を設けてある。
【0033】
また、この第1実施形態は、再生弁スプール32の摺動に際して抵抗を与える上述の抵抗付与手段、例えばシール材41を、第1油室35と第2油室39との間に位置する小径部32bの外周面、及びこの外周面に対向するケーシング31の内周面のうちの少なくとも一方、例えば小径部32bの外周面に装着させてある。
【0034】
そして、この第1実施形態は特に、再生弁スプール32に、第1油室35に導かれる前述の制御圧に対抗する別の制御圧を与える制御圧付与手段を備えた構成にしてある。別の制御圧は、例えば図1に示す方向切換弁スプール3を切換える図示しない操作装置から出力されるパイロット圧である。制御圧付与手段は、例えば再生弁30のばね室36と、このばね室36の形成部分に設けられ、ばね室36に連通する通路45とを含んでおり、上述したパイロット圧が通路45を介してばね室36に導かれるようになっている。なお、ばね室36のばね37は比較的弱いばね力に予め設定されている。
【0035】
このように構成した第1実施形態の動作は以下のとおりである。
【0036】
[再生解除]
例えば水平引き操作のために実施されるアームクラウドの開始時に、オペレータがアームシリンダ6の図示しない操作装置を微操作すると、図1に示す方向切換弁1のパイロットポート4、及び再生弁30の通路45にパイロット圧が与えられる。方向切換弁1のパイロットポート4に与えられたパイロット圧により、方向切換弁スプール3は同図1の左方向に摺動し、切り欠き18を介してブリッジ通路11と通路14とが連通し、切り欠き19を介して通路14aと通路15とが連通する。
【0037】
これにより、主油圧ポンプ25の圧油が逆止弁13、ブリッジ通路11、切り欠き18、通路14、シリンダポート8を経て主管路7に導かれ、アームシリンダ6のボトム側室6aに供給される。このとき、上述した主油圧ポンプ25の圧油が逆止弁17、ブリッジ通路16、通路34を介して再生弁30の第1油室35に制御圧として導かれる。
【0038】
すなわち、再生弁スプール32には、第1油室35に導かれる制御圧と、アームシリンダ6の図示しない操作装置の操作に伴って出力されるパイロット圧とが互いに対抗するように与えられる。
【0039】
アームシリンダ6の駆動開始時にあって、上述のようにアームシリンダ6の図示しない操作装置が微操作されるときには、再生弁30のばね室36に与えられるパイロット圧による力が小さいことから、このパイロット圧による力と、ばね37の力と、シール材41の摩擦力の和よりも、アームシリンダ6の駆動に関連する第1油室35に導かれる制御圧による力の方が大きくなり、再生弁スプール32が図1,2の右方向に、すなわち再生解除の方向に摺動する。これに伴って、再生弁スプール32の大きな開口を形成する切り欠き38を介して通路15と排出通路33とが連通する。
【0040】
上述のように、再生弁スプール32の切り欠き38を介して通路15と排出通路33とが連通することにより、アームシリンダ6のロッド側室6bからの戻り油の一部あるいは全量が、主管路9、シリンダポート10、通路14a、方向切換弁スプール3の切り欠き19、通路15、再生弁スプール32の切り欠き38、排出通路33を経てタンク12に戻される。したがって、例えば方向切換弁3の通路21にはアームシリンダ6からの戻り油は導かれなくなる傾向となり、再生が一部解除、あるいは完全に解除される。これによりアームシリンダ6の作動速度を低く抑えることができ、ブーム上げと同調させたアームクラウド操作を実現できる。
【0041】
[再生]
上述のように、アームクラウドの開始早々であって、アームシリンダ6の負荷圧が比較的低い状況において、アームシリンダ6の図示しない操作装置の操作量をそれまでよりも大きくするようにオペレータが制御すると、再生弁30の通路45を介してばね室36に与えられるパイロット圧が高くなる。これにより、このパイロット圧による力と、ばね37の力の和の方が、アームシリンダ6の駆動に関連する第1油室35に導かれる制御圧による力と、シール材41の摩擦力の和よりも大きくなり、再生弁スプール32が再生を行なわせる方向に摺動し、例えば図1,2に示す状態のようになる。
【0042】
なお、このときの再生弁スプール32の摺動に際し、再生弁30の第2油室39の油は、通路40、ドレン回路44、タンク12の方向へ移動する。
【0043】
このような状態となると、図2に示すように、切り欠き38と排出通路33とは例えば遮断された状態となる。また、アームシリンダ6のロッド側室6bからの戻り油は、主管路9からシリンダポート10に導かれ、さらに通路14a、方向切換弁スプール3の切り欠き19、通路15を経て再生弁スプール32の切り欠き38部分に与えられる。
【0044】
今は上述したように、この切り欠き38と排出通路33とが遮断されていることから、通路15に導かれている戻り油が、方向切換弁スプール3の穴20、通路21を経て逆止弁22を押し開き、穴23を経てブリッジ通路11に導かれる。
【0045】
すなわち、アームシリンダ6のロッド側室6bからの戻り油が増速用圧油として再生されて、主油圧ポンプ25から供給される圧油に合流する。この合流した圧油がアームシリンダ6のボトム側室6aに供給される。したがって、このアームシリンダ6が増速し、比較的速い動作のアームクラウドが実施される。
【0046】
[再び再生解除]
また、何らかの理由により、ブリッジ通路16の圧力が十分に高くなり、ブリッジ通路16、通路34を経て再生弁30の第1油室35に与えられる制御圧による力が、再生弁30のばね室36に与えられるパイロット圧による力と、ばね37の力と、シール材41による摩擦力との和よりも大きくなると、再生弁スプール32が図1,2の右方向に、すなわち再生解除方向に摺動する。これによって前述したように、アームシリンダ6の戻り油の一部、あるいは全量がタンク12に戻され、再生が一部解除され、あるいは完全に解除され、アームシリンダ6の作動速度は低下する。
【0047】
図3は上述した図1に示す第1実施形態に備えられる再生弁の特性を示す図である。この図3は、横軸に再生弁30の通路45を介してばね室36に与えられるパイロット圧をとり、縦軸に再生弁スプール32のストローク量をとり、ブリッジ通路16の圧力(50k〜300k)をパラメータとしたものである。
【0048】
例えばブリッジ通路16の圧力が200(kgf/cm)の場合、アームシリンダ6の図示しない操作装置を微操作し、パイロット圧が10(kgf/cm)以下のときには、再生弁スプール32は3mm前後、再生解除方向に摺動し、再生が解除される傾向となり、アームシリンダ6の作動速度が低下する。
【0049】
また、ブリッジ通路16の圧力が200(kgf/cm)に維持されていて、アームシリンダ6の図示しない操作装置が大きく操作され、パイロット圧が例えば25(kgf/cm)以上になると、再生弁スプール32は再生方向に摺動した状態に保たれ、再生操作が行なわれ、アームシリンダ6の作動速度が増速する。
【0050】
また、上述のようにアームシリンダ6の図示しない操作装置が大きく操作されている状態にあって、何らかの理由によりブリッジ通路16の圧力が例えば300(kgf/cm)と高くなったときには、再生弁スプール32は再び再生解除方向に摺動し、再生が解除される傾向となって、アームシリンダ6の作動速度が低下する。このような特性によって、この第1実施形態は上述したような再生解除、及び再生をおこなうことができる。
【0051】
以上のように構成した第1実施形態によれば、制御圧付与手段を構成する再生弁30の通路45、ばね室36を介して、再生弁スプール32に、第1油室35に与えられる制御圧、すなわちアームシリンダ6の駆動に関連する制御圧に対抗する別の制御圧、すなわちアームシリンダ6の図示しない操作装置の操作に伴って出力されるパイロット圧を与えるようにしたことから、オペレータによる操作装置の操作によるパイロット圧の制御により、再生操作可能なアームシリンダ6に対するオペレータの意図する制御を実現できる。これによりアームシリンダ6の操作性を向上させることができ、当該油圧ショベルで実施される水平引き作業による作業の能率を向上させることができ、同時に優れた作業精度を確保できる。
【0052】
図4は本発明の第2実施形態を示す断面図である。この第2実施形態は、1つのケーシング50内に、方向切換弁1と再生弁30の双方を内蔵させてある。また、再生弁スプール32に、第1油室35に導かれるアームシリンダ6の駆動に関連する制御圧に対抗する別の制御圧、例えば上述と同等のパイロット圧を与える制御圧付与手段が、再生弁スプール32のばね室36と、このばね室36と方向切換弁スプール3を切換えるパイロット圧が導かれる方向切換弁1の制御室、すなわちばね室24とを連通させる通路51とを含んでいる。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同等である。
【0053】
このように構成した第2実施形態も、アームシリンダ6を操作する図示しない操作装置から出力されるパイロット圧に応じて、再生弁スプール32の動きを制御することができ、前述した第1実施形態におけるものと同等の作用効果が得られる。
【0054】
また特に、この第2実施形態は、方向切換弁1と再生弁30の双方が1つのケーシング50内に収納されているので、部品数が少なく、取り扱いが簡単になる効果もある。
【0055】
なお、上記各実施形態では、再生可能な油圧アクチュエータとしてアームシリンダ6を挙げたが、本発明はこれに限られず、再生可能な油圧アクチュエータがブームシリンダ、バケットシリンダ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る再生機能付き弁装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す第1実施形態に備えられる再生弁部分の拡大図である。
【図3】図1に示す第1実施形態に備えられる再生弁の特性を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 方向切換弁
3 方向切換弁スプール
6 アームシリンダ(油圧シリンダ)〔油圧アクチュエータ〕
6a ボトム側室
6b ロッド側室
7 主管路
9 主管路
11 ブリッジ通路
12 タンク
14 通路
14a 通路
15 通路
16 ブリッジ通路
20 穴
21 通路
22 逆止弁
23 穴
24 ばね室(制御室)
25 主油圧ポンプ
30 再生弁
32 再生弁スプール
32a 大径部
32b 小径部
32c 段差部
33 排出通路
34 通路
35 第1油室(制御室)
36 ばね室(制御圧付与手段)
37 ばね
38 切り欠き
39 第2油室
40 通路
44 ドレン回路
45 通路(制御圧付与手段)
50 ケーシング
51 通路(制御圧付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に設けられ、油圧アクチュエータの駆動を制御する方向切換弁と、この方向切換弁を介して上記油圧アクチュエータからの戻り油を再生させて当該油圧アクチュエータに供給可能な再生弁とを備えると共に、
上記再生弁のスプールを付勢するばねの力に抗して、上記再生弁のスプールを再生解除の方向に摺動させる制御圧であって、上記油圧アクチュエータの駆動に関連する制御圧が導かれる制御室を備えた再生機能付き弁装置において、
上記再生弁のスプールに、上記制御圧に対抗する別の制御圧を与える制御圧付与手段を備えたことを特徴とする再生機能付き弁装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記制御圧付与手段が、上記再生弁のスプールを付勢するばねが配置されるばね室を含み、このばね室に上記別の制御圧を導くことを特徴とする再生機能付き弁装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
上記別の制御圧が、上記方向切換弁のスプールを切換えるパイロット圧であることを特徴とする再生機能付き弁装置。
【請求項4】
上記請求項3記載の発明において、
上記制御圧付与手段が、上記方向切換弁のスプールを切換えるパイロット圧が導かれる上記方向切換弁の制御室と、上記再生弁のスプールを付勢するばねが配置されるばね室とを連通させる通路を含むことを特徴とする再生機能付き弁装置。
【請求項5】
上記請求項4記載の発明において、
上記方向切換弁と上記再生弁の双方を内蔵するケーシングを備えたことを特徴とする再生機能付き弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−2918(P2006−2918A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182536(P2004−182536)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】