説明

再生磁気カード

【課題】 使用済み定期券の基板材と磁気データ記録層の再利用を可能にし、原材料のリサイクル化が図れる再生磁気カードを提供する。
【解決手段】 使用済み磁気カード型定期券の表裏面の印刷層を剥離し、磁気データ記録層6を残した基板材1を得る。基板材1の表側面には感熱発色層2、アンダーコート層3を設け、この上に絵柄印刷層4、潤滑保護層5を形成する。また、磁気データ記録層6の上には裏面保護層7、裏面印刷層8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリペイドカードやポイントカード等として使用される磁気カードに関し、特に使用済みの磁気カード型定期券を利用した再生磁気カードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、鉄道では磁気データ記録部を有する所謂磁気カード型の定期券が広く普及している。図4に示すように、この種の定期券10の構造は、ポリエステル系の樹脂からなる基板材1の表裏両側に各機能層が設けられている。すなわち、基板材1の表側面には模様印刷層11が形成され、模様印刷層11の上には、樹脂製の受像層12が設けられている。さらに、受像層12の上には樹脂系インクリボンによる熱転写印字(熱転写文字印字層13)がされている。一方、基板材1の裏面側には磁気データ記録層6が設けられ、磁気データ記録層6の上には、文字印刷層14と保護層15が順次形成されている。
【0003】カード型定期券の原反10は、印字13の無い状態で各鉄道事業者に納入され、原反10の表面に熱転写タイプのインクリボンにより個別的な必要事項、例えば、利用者氏名、利用可能区間、利用有効期間等を印字13すると共に、磁気データ記録層6に必要なデータを記録して各利用者に渡される。
【0004】ところで従来は、有効期限を徒過した使用済み定期券については、不正乗車や偽造変造を防止するために、新たな定期券を発行する際に回収し、回収した使用済み定期券は、厳重な管理のもとに焼却した後廃棄処分していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、定期券は使用目的を終えた時点で廃棄しているが、使用済みの定期券の数は、鉄道業界全体では膨大な数に上っている。最近の統計によると、年間に数千万枚の使用済み定期券が発生し、そして廃棄処分されている。このため、定期券の原材料が無駄に消費されるとともに、焼却処理時の排煙などが環境汚染の要因になるおそれがある。したがって、使用済み定期券の処理問題については、各鉄道事業者にとっては無論のこと、社会全体にとっても廃棄物処理上の深刻な問題になりつつある。本発明は上記問題点に鑑み、磁気カード型の使用済み定期券を再利用して原材料の再資源化を図ることができる再生磁気カードを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、基板材に磁気データ記録層を積層してなる使用済みの磁気カード型定期券の表裏両側面の印刷層を剥離して、前記磁気データ記録層を残した状態に加工し、該基板材及び/又は磁気データ記録層に新たな印刷層を積層して形成したことを第1の特徴とする。
【0007】そして、新たな印刷層が感熱発色層を有することを第2の特徴とする。
【0008】本発明は、使用済みの磁気カード型定期券を再利用する観点から想起されたもので、定期券の再利用にあたっては、第一に使用済み定期券を他の用途に利用すること、第二に製品原料を効率よく資源化することを考慮する必要がある。そこで、少ないエネルギーで定期券を有効に再利用するには、原形をなるべくそのまま保って活用することが理想的である。つまり、定期券の磁気記録部はそのまま残しながら再加工することが肝要である。
【0009】ところで、この種の定期券では表面に地紋印刷を施しているが、これは再利用時に消去する必要がある。また、裏面側の磁気記録部上には注意書き等の文字が印刷されているが、この印刷文字も消去する必要がある。したがって、定期券両面の印刷部分を消去することにより、用途の異なる新しい磁気カードとして再生でき、カード原反の再資源化を実現できる。
【0010】本発明では、使用済み定期券の表面印刷層を剥離する。この剥離の仕方としては、印刷インキを溶剤によって溶解するか、研磨機により研磨除去する方法がある。この場合、溶解による方法では、基板材と磁気データ層を損傷させない範囲で、確実に印刷インキを溶解できる溶剤を用いる。同様に、定期券の裏面印刷層を剥離するが、溶剤による場合は、磁気データ記録層の特性を損なわない範囲で確実に溶かすことができる溶剤を用い、溶解剥離後は水洗いにより付着した溶剤を取り除く。
【0011】本発明は、上記のように前処理を施した使用済みの磁気カード型定期券に、新たな表面加工処理を施して、感熱発色層を設けサーマル発色仕様の磁気カードに仕上げるものである。すなわち、カードリーダライターによる感熱発色印字機能が付与され、プリペイドカードやポイントカードとして、商店街、スーパー、レストラン、ガソリンスタンド等で使用されるものである。例えば、磁気カードに数字専用または数字とマークの両方を書き込むことができ、磁気データに識別記号を設けることで、プリペイドカードとポイントカードの自動選択及び併用を行うことができる。具体的には、基板材の表側面にサーマル発色層とアンダーコート層を設け、その上に絵柄印刷層とトップコート層を形成する。
【0012】上記感熱発色層は感熱発色色素を含む塗料で形成する。感熱発色層の平滑性を保つため、その上にアンダーコート層を設ける。尚、このアンダーコート層は、感熱発色層の平滑精度が得られれば不要である。アンダーコート層とトップコート層は、例えば紫外線照射で硬化する耐熱性樹脂で印刷する。また、絵柄印刷層には必要により絵柄、図形、記号等を印刷する。
【0013】一方、基板材裏側の磁気データ記録層の上には、印刷層及び保護層を設ける。印刷層には、必要によりカード利用上の注意事項等を印刷する。裏面側の保護層は、耐磨耗性能の高い樹脂で形成し、磁気記録時に磁気カードを搬送する際に、磁気データ記録層の磁気データが損傷しないように被覆する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施例を図面により説明する。図1は本発明に係る再生磁気カードの各機能層を示す説明図、図2は再生磁気カードの各機能層の一部を変更して示す説明図、図3は同磁気カードの基板材と磁気データ記録層を示す説明図、図4は使用済み定期券を示す説明図である。
【0015】
【実施例】図1において、9は、サーマルヘッドを有するカードリーダライターにより印字可能な印刷機能を付与されたサーマル発色仕様の再生磁気カードで、磁気ヘッドにより、数字のみ又は数字・マークの双方を適宜書き込みできるようになっている。この再生磁気カード9は、商店街、スーパー、レストラン、ガソリンスタンド等でポイントカード又はプリペイドカードとして使用されるものである。再生磁気カード9の基板材1はポリエステル系の樹脂からなり、基板材1の表裏面両側に各機能層が設けられている。具体的には、基板材1の表面側には基板材1側から順に感熱発色層2、アンダーコート層3が設けられている。このアンダーコート層3の上には絵柄印刷層4が設けられ、更に絵柄印刷層4の上には、潤滑保護層5が形成されている。
【0016】一方、基板材1の裏面側には基板材1側から順に磁気データ記録層6、裏面保護層7が形成されている。裏面保護層7の上には、裏面印刷層8が設けられている。この場合、図2に示すように、裏面保護層7と裏面印刷層8の配置は、その順序を逆にして形成しても良い。つまり、磁気データ記録層6の上に裏面印刷層8を形成した後、この上に裏面保護層7を設けても構わない。
【0017】本発明に係る再生磁気カード9は、図4に示した使用済み定期券10を用いて作製する。先ず、定期券10の表裏両側面の剥離処理を行う。表面側剥離処理では、受像層12及び模様印刷層11を有機溶剤によって溶解して剥離する。一方、磁気カード型定期券10の裏面側の剥離処理では、保護層15と文字印刷層14を有機溶剤によって溶解して剥離する。これら表裏両側面の溶解剥離は同時に行なわれるが、各層の溶解では、基板材1と磁気データ記録層6を損傷させることなく効果的に剥離できる混合物の有機溶剤を用いる。溶解剥離後、基板材1及び磁気データ記録層6を水洗いすることによって、表面に付着した有機溶剤を完全に除去する。定期券10両側の剥離処理により、図3に示すように、基板材1の裏側に磁気データ記録層6のみを残した中間処理品が得られる。
【0018】この後、基板材1の表裏両側に新たな機能層を設ける。まず、基板材1の表側面には感熱発色層2及びアンダーコート層3を順次形成し、さらに、この上に絵柄印刷層4及び潤滑保護層5を順次設ける。
【0019】感熱発色層2は、具体的にはサーマル発色部であって、感熱発色色素で構成された塗料を3〜30ミクロンの厚さで印刷する。この範囲の厚さであれば、最適な発色濃度が得られると共に、塗料の使用量を必要最小限に抑えることができ経済的である。また、アンダーコート層3は、感熱発色層2の平滑性を保つもので、感熱発色層2の耐熱特性向上のために、0.5〜3ミクロンの厚さに形成する。このアンダーコート層3は、例えば紫外線照射により硬化するポリエステル系の樹脂により印刷する。アンダーコート層3を上記の厚さにすると、サーマルヘッドで感熱発色層2を加熱した時に最適な発色効果が得られるが、この厚さの範囲以外では、感熱発色層2の発色性を悪化させるおそれがある。
【0020】また絵柄印刷層4には、顧客の希望に応じて絵柄等を印刷する。絵柄印刷層4上の潤滑保護層5は、滑剤を混合した耐熱性能の高い樹脂で形成する。例えば紫外線照射により硬化するポリエステル系の樹脂を1〜5ミクロンの厚さに印刷する。潤滑保護層5の厚さを1〜5ミクロンにすると、サーマルヘッドで加熱した時に最適な発色効果が得られる。この数値の範囲以外では、感熱発色性を劣化させるおそれがある。
【0021】一方、基板材1裏面側の磁気層6の上には、裏面保護層7及び裏面印刷層8を順次形成する。裏面保護層7は、カードリーダー等におけるカード搬送時に磁気データが傷付くのを防止するため、0.5〜5ミクロンの厚さに形成する。裏面保護層7の厚さをこの数値範囲にすると、磁気ヘッドで磁気データを読み書きした時に、最適な読み書きが状態が得られるが、この数値の範囲外では磁気ヘッドによる読み書きに支障をきたすおそれがある。裏面保護層7は耐磨耗性能の高い樹脂で形成する。
【0022】また、裏面保護層7の上の裏面印刷層8は、利用上の注意事項など顧客要求に応じた必要事項を印刷し、その厚さを0.5〜5ミクロンに設定する。裏面印刷層8の厚さをこの範囲に設定すると、磁気データ記録層6に磁気ヘッドで磁気データを読み書きした時に最適な読み書き状態が得られる。この数値の範囲以外では、磁気ヘッドによる読み書きに支障を生ずるおそれがある。
【0023】このように、使用済みの磁気カード型定期券10の表裏両面の印刷層を剥離した後、感熱発色層2等を新たに形成することで、新品のサーマル発色仕様の磁気カード9が得られる。したがって、使用済みの磁気カード型定期券10の原反を有効に活用でき、併せて再生製品の磁気カード9を短時間で作ることができ、生産コストも従来に比べて半減する。
【0024】尚、本発明は上記実施例に限定されない。例えば、上記実施例の磁気カードはポイントカード又はプリペイドカードとして使用されるものとしたが、記録データを随時更新できる多機能カードとしても幅広く利用することができる。
【0025】
【発明の効果】以上のごとく本発明によれば、使用済みの磁気カード型定期券の印刷層を剥離して、その基板材と磁気データ記録層に印刷層を新たに形成したことにより、従来は廃棄処理されていた使用済み定期券を再活用することができる。また、従来に比べて磁気カードの生産効率が向上し、磁気カードを安価に量産化できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る再生磁気カードの各機能層を示す説明図である。
【図2】磁気カードの各機能層の一部を変更して示す説明図である。
【図3】同磁気カードの基板材と磁気データ記録層を示す説明図である。
【図4】使用済み定期券の各機能層を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基板材
2 感熱発色層
3 アンダーコート層
4 絵柄印刷層
5 潤滑保護層
6 磁気データ記録層
7 裏面保護層
8 裏面印刷層
9 再生磁気カード
10 使用済み定期券
11 模様印刷層
12 受像層
13 熱転写文字印刷層
14 文字印刷層
15 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板材に磁気データ記録層を積層してなる使用済みの磁気カード型定期券の表裏両側面の印刷層を剥離して、前記磁気データ記録層を残した状態に加工し、該基板材及び/又は磁気データ記録層に新たな印刷層を積層して形成したことを特徴とする再生磁気カード。
【請求項2】 新たな印刷層が感熱発色層を有することを特徴とする請求項1記載の再生磁気カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−287485(P2001−287485A)
【公開日】平成13年10月16日(2001.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−107135(P2000−107135)
【出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(500164868)ジェイアール西日本商事株式会社 (1)
【出願人】(500149201)株式会社今井三正堂 (1)
【出願人】(000177346)三和ニューテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】