説明

再生粒子の製造方法及び再生粒子

【課題】製紙用の填料又は塗工用顔料として必要な特性を備えた再生粒子を、安定して得ることができる再生粒子の製造方法とする。
【解決手段】脱水後の被処理物10を乾燥する手段60と、この乾燥後に熱処理する第1の熱処理手段42と、この熱処理温度を超える温度で更に熱処理する第2の熱処理手段14と、この熱処理温度を超える温度で更に熱処理する第3の熱処理手段32とで被処理物10を熱処理し、第1の熱処理手段42及び第2の熱処理手段14を外熱式とし、第3の熱処理手段32を内熱式とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生粒子の製造方法及び再生粒子に関するものである。より詳しくは、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法及びこの方法によって製造された再生粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙パルプ工場の各種工程から排出される製紙スラッジは、回収後、流動床炉やストーカー炉等の燃焼炉で含有有機物を燃焼して減容化を図るとともに、熱エネルギーを回収している。しかしながら、製紙スラッジは、無機充填剤や無機顔料等の無機物を多量に含有しているため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化にも限度がある。
【0003】
そこで、製紙スラッジの燃焼灰を好適な製紙用材料に転化することを目的として、様々な方法が提案されており、例えば、製紙スラッジの燃焼処理前に炭化処理を行なう方法、製紙スラッジを炭化処理せず特定条件で燃焼処理を行なう方法などが存在する。また、これらの方法は、製紙スラッジを乾式酸化(いわゆる燃焼)するものであるが、乾式酸化と湿式酸化とを組み合せて製紙スラッジを処理する方法も提案されている。
【0004】
このほか、過剰空気雰囲気下、燃焼温度650℃以下で製紙スラッジ中の易燃焼性有機物を燃焼除去する一次燃焼工程と、過剰空気雰囲気下、燃焼温度700℃〜850℃で製紙スラッジ中の難燃焼性有機物を燃焼除去する二次燃焼工程との2段階の燃焼工程を経ることで、製紙スラッジを効率的に処理し、白色度が高く高品位の燃焼灰を得る方法(特許文献1参照)も提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の再生粒子の製造方法は、次のような問題を有している。
(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く。(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質(例えば、特許文献2参照。)を生じやすくなり、抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する。(3)原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下する。(4)原料の表面が高温に晒されて溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留する。結果として白色度の低下を招く。
【0006】
また、様々な工程から排出されたスラッジが混在する製紙スラッジは、再生粒子の原料となる微細な無機微粒子を含有するほか、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含むため、燃焼処理においては製紙スラッジそのものが自ら燃焼(酸化)してしまう。したがって、製紙スラッジ一般を原料として、再生粒子を製造すると、熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を引き起こす問題が生じ得る。したがって、当該発熱が原料の過剰燃焼の要因となることを防止しつつ、逆に、エネルギーとして有効利用することができないかが模索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008‐207173号公報
【特許文献2】特開2008‐190049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする主たる課題は、製紙用填料又は塗工用顔料とするに好適な硬質物質の含有量が低く、スラリー化するに容易で、白色度の高い再生粒子を安定して得ることができ、好ましくはエネルギー効率に優れる再生粒子の製造方法及び再生粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法であって、
前記熱処理を、前記脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段を外熱式とし、前記第3の熱処理手段を内熱式とする、
ことを特徴とする再生粒子の製造方法。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
熱風を前記第3の熱処理手段の内熱源として利用し、
当該第3の熱処理手段の排ガスを前記第2の熱処理手段の外熱源として利用し、
当該第2の熱処理手段の排ガスの一部を前記第1の熱処理手段の外熱源として利用し、
当該第1の熱処理手段の排ガス、前記第2の熱処理手段の排ガスの残部、並びに、前記第1及び第2の熱処理手段において外熱源として利用した後の排ガスの少なくとも一方を、前記乾燥手段の熱源として利用する、
請求項1記載の再生粒子の製造方法。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記第1の熱処理手段、前記第2の熱処理手段及び前記第3の熱処理手段として、炉本体の一方端部側に前記被処理物の供給口が設けられ、前記炉本体の他方端部側に前記被処理物の排出口が設けられた横型回転キルン炉を用い、
前記熱風は、前記第3の熱処理手段の排出口側から供給し、
前記第2の熱処理手段の排ガスは、当該第2の熱処理手段の供給口側から排出し、
前記第1の熱処理手段の排ガスは、当該第1の熱処理手段の供給口側から排出する、
請求項2記載の再生粒子の製造方法。
【0012】
〔請求項4記載の発明〕
前記炉本体内の温度がそれぞれ、前記第1の熱処理手段において250〜400℃、前記第2の熱処理手段において360〜550℃、前記第3の熱処理手段において550〜780℃となるように、前記熱風を調節するほか、前記第1の熱処理手段の外熱源として利用する前記第2の熱処理手段からの排ガスの割合を調節する、
請求項2又は請求項3記載の再生粒子の製造方法。
【0013】
〔請求項5記載の発明〕
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造され、
かつ、下記の方法で測定したCa2Al2SiO7及びCaAl2Si28の合計含有量が1.5質量%以下とされた、
ことを特徴とする再生粒子。
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明のように、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造するにあたり、熱処理を、脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、第1の熱処理手段及び第2の熱処理手段を外熱式とし、第3の熱処理手段を内熱式とすると、製紙用填料又は塗工用顔料とするに好適な硬質物質の含有量が低く、スラリー化するに容易で、白色度の高い再生粒子を安定して得ることができる。
【0015】
また、請求項2や請求項3に係る発明のように、熱風を第3の熱処理手段の内熱源として利用し、当該第3の熱処理手段の排ガスを第2の熱処理手段の外熱源として利用し、当該第2の熱処理手段の排ガスの一部を第1の熱処理手段の外熱源として利用し、当該第1の熱処理手段の排ガス、第2の熱処理手段の排ガスの残部、並びに、第1及び第2の熱処理手段において外熱源として利用した後の排ガスの少なくとも一方を、乾燥手段の熱源として利用すること、あるいは第1の熱処理手段、第2の熱処理手段及び第3の熱処理手段として、炉本体の一方端部側に被処理物の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側に被処理物の排出口が設けられた横型回転キルン炉を用い、熱風は、第3の熱処理手段の排出口側から供給し、第2の熱処理手段の排ガスは、当該第2の熱処理手段の供給口側から排出し、第1の熱処理手段の排ガスは、当該第1の熱処理手段の供給口側から排出することにより、熱風による加熱処理以上の発熱(エネルギー)が生じることを極めて有効に利用できることができる。
【0016】
さらに、請求項4に係る発明のように、炉本体内の温度がそれぞれ、第1の熱処理手段において250〜400℃、第2の熱処理手段において360〜550℃、第3の熱処理手段において550〜780℃となるように、熱風を調節するほか、第1の熱処理手段の外熱源として利用する第2の熱処理手段からの排ガスの割合を調節することにより、上記作用効果が確実に奏せられるようになる。
【0017】
また、請求項5に係る発明にように、再生粒子が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造され、かつ、下記の方法で測定したCa2Al2SiO7及びCaAl2Si28の合計含有量が1.5質量%以下とされることにより、製紙用填料又は塗工用顔料として好適に用いることができ、例えば、摩耗が防止され、スラリー化するに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】再生粒子の製造設備フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
〔本発明の位置付け等〕
例えば、製紙用スラッジを燃焼する場合、当該製紙用スラッジに含有される有機物は、出所の違いや製紙工場内での抄造品種、定期修理や生産変動などにより多様に変化し、その品質変動が製紙スラッジの熱量変動を招き、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を来たし、最終的に得られる燃焼物(再生粒子)の品質が低下、例えば、硬質物質の含有量が増えて抄紙設備の磨耗性が増す原因となる、均質にスラリー化するのが困難になる、白色度が不均一となるなどの問題が生じる。
【0021】
そこで、本発明者らは、製紙スラッジの熱量変動を所定の範囲に調整し、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を生じさせないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ね、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、適宜粉砕して再生粒子を製造するにあたり、「前記熱処理を、前記脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段を外熱式とし、前記第3の熱処理手段を内熱式とする」ことで、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できることを見出した。
【0022】
また、このことを前提に、「熱風を前記第3の熱処理手段の内熱源として利用し、当該第3の熱処理手段の排ガスを前記第2の熱処理手段の外熱源として利用し、当該第2の熱処理手段の排ガスの一部を前記第1の熱処理手段の外熱源として利用し、当該第1の熱処理手段の排ガス、前記第2の熱処理手段の排ガスの残部、並びに、前記第1及び第2の熱処理手段において外熱源として利用した後の排ガスの少なくとも一方を、前記乾燥手段の熱源として利用する」ことで、熱風による加熱処理以上の発熱(エネルギー)が生じることを極めて有効に利用できることを見出した。
【0023】
本発明において、熱処理を、乾燥工程(手段)のほか、第1〜第3の熱処理工程(手段)に分ける利点は、以下のとおりである。
製紙スラッジは、各種有機物(有機成分)を含有し、この有機物のなかには、紙由来の220℃近傍で発熱量のピークをもつアクリル系有機物、320℃近傍で発熱量のピークをもつセルロース、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系有機分が含まれ、古紙等の出発原料の種類や量により変動幅が大きいものの、例えば、1000〜2000cal/gの発熱量を有する。従来の再生粒子の製造方法においては、これらの有機分を、燃焼工程(酸化工程)において、他の有機分と一緒に燃焼(酸化)させて除去する方策が取られていた。しかしながら、本発明者等は、以上の各有機物が上記温度の近傍で発熱量のピークをもつ発熱量が高い物質であること、200〜300℃で熱分解される有機分を燃焼させる際に発火・過燃焼が生じ、燃焼制御が困難となり、白色度の低下のみならず、ゲーレナイトやアノーサイトからなる硬質物質の生成をまねくことを見出し、まず、第1の熱処理工程(手段)において、所定の高発熱量成分(アクリル系有機物及びセルロース)を被処理物中から、熱処理除去することで、過燃焼を抑え、硬質物質の生成を抑制できることを見出した。
【0024】
また、第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点は、従来の再生粒子の製造方法においては、被処理物中の微細繊維や有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水及び乾燥させ、高温で熱処理する方法を採用していた。しかしながら、本発明の製造方法においては、上記したように第1の熱処理工程において被処理物中の200〜300℃で熱分解・揮発蒸散する有機物を熱分解ガス化してしまうため、第2の熱処理工程においては、安定的に熱処理を進行させることができ、被処理物の過燃焼や微粉化が抑制される。また、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを分け、第1の熱処理工程において被処理物に含まれるアクリル系有機物及びセルロースを熱分解ガス化し、第2の熱処理工程において被処理物に含まれるスチレン系有機物を熱分解ガス化することで、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きく、均一かつ安定的に再生粒子を得ることができる。このようにして、第3の熱処理工程においては、被処理物中の残カーボン等を含む有機物を、効率良く熱処理除去することができ、また、過燃焼によって生じる硬質物質の生成を抑えることができる。さらに、セルロースの熱分解ガスの発火温度はスチレンの熱分解温度を下回るため、第1の熱処理工程においてセルロースを熱分解除去してしまい、スチレンは第2の熱処理工程において熱分解するのが好適であり、ここにも第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点が存在する。
【0025】
さらに、第1の熱処理手段(工程)及び第2の熱処理手段(工程)を外熱式とし、第3の熱処理手段(工程)を内熱式とするのは、以下の理由からである。
すなわち、第1及び第2の熱処理手段(工程)においては、被処理物が高発熱量成分を含み、発火のリスクが高いため、低酸素濃度条件であるのが好ましく、外熱式が好適である。他方、第3の熱処理手段においては、前記高発熱量成分が既に熱分解・除去されており、発火のリスクが少ないため、熱効率等の観点から、内熱式が好適である。
【0026】
ところで、本発明においては、乾燥工程(手段)を除く各熱処理工程(手段)において、キルン炉を用いるのが好適である。この理由は、次のとおりである。
従来から慣用的に用いられてきた熱処理炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者等は、それぞれの熱処理炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
【0027】
ストーカー炉(固定床)は、脱墨フロス等の製紙スラッジの燃焼度合い調整が困難であり、再生粒子が不均一となるうえに、灰分の多い脱墨フロスの熱処理では、火格子間のクリアランスから落塵を生じる。火格子を通し被処理物の下から空気を吹き上げ、燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留りの低下が問題となる。ストーカ(階段状)を、所定幅で被処理物を通過させながら熱処理するため、撹拌が不十分で幅方向で熱処理にバラツキが発生する。
【0028】
流動床炉は、炉内において珪砂等の粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂等が被処理物中に混入し、品質の低下をまねく問題や、均一な撹拌ができないとの問題を有する。硅砂等を流動層に混合して熱処理させた後、硅砂等と被処理物とを分離し、硅砂等は炉内へ戻し被処理物のみを取り出すが、被処理物も硅砂等と同程度の粒径であるため分離が困難である。被処理物を硅砂等と浮遊した状態で熱処理させるため、熱処理の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。硬度の高い珪砂等との摩擦、衝突により被処理物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
【0029】
サイクロン炉は、被処理物が炉内を一瞬で通過するため、被処理物中の有機物を十分に熱処理することができず、白色度の低下に繋がる。また、風送によるため、細かい粒子がサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留りが低下する。
【0030】
以上の諸問題について鋭意検討を重ねた結果、本発明の乾燥工程(手段)を除く熱処理工程(手段)においては、内熱又は外熱キルン炉が好適な熱処理手段として選択された。
【0031】
〔本発明の形態例〕
次に、本発明の実施の形態を、再生粒子の製造設備フローの構成例を示した図1を参照しながら説明する。本製造設備には、各種センサーが備わっており、被処理物10や設備状態の確認、処理速度の制御等を行うことができる。なお、本形態は、排ガスの熱源としての利用方法に特徴の1つが存在するが、この点については、排ガスの流れの理解が容易になるよう、最後に連続して説明する。
【0032】
(被処理物)
本形態の被処理物10は、製紙スラッジを主原料(50質量%以上)とする。当該製紙スラッジは、例えば、パルプ等の繊維成分、澱粉や合成樹脂接着剤等の有機物、填料や塗工用顔料等の無機物などが利用されずに廃水中へ移行したもの、パルプ化工程等で発生するリグニンや微細繊維、古紙由来の填料や印刷インキ、生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥などからなる。また、例えば、古紙パルプ製造工程において印刷インキ等を除去する脱墨工程や製紙用原料を回収して洗浄する洗浄工程に由来する固形成分等を含有していてもよい。
【0033】
ただし、古紙パルプ製造工程においては、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産するために、選定、選別を行った一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類や比率、量等は、基本的に一定になる。しかも、本形態の再生粒子の製造方法において未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類が、古紙中に含まれていても、これらは脱墨フロスが生成される脱墨工程に至る前段階の例えば、パルパーやスクリーン、クリーナー等で除去される。したがって、工場排水工程や製紙原料調成工程等の他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、脱墨フロスは、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための被処理物10の好適な原料となる。
【0034】
(脱水工程)
被処理物10は、例えば、公知の脱水装置を用いて、脱水する。本形態においては、被処理物10を、例えば、スクリーンによって水分率65〜90%まで脱水し、次いで、スクリュープレスによって水分率30〜60%まで、好ましくは30〜50%まで、より好ましくは35〜45%まで脱水する。
【0035】
ここで水分率は、定温乾燥機を用い、乾燥機内に試料(被処理物)を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式にて乾燥前後の質量測定結果より算出した値である。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
【0036】
脱水後の被処理物10の水分率が60%を超えると、乾燥装置60における乾燥のためのエネルギーロスが大きくなる。しかも、乾燥装置60における乾燥温度の変動が大きくなるため、乾燥ムラが生じるおそれがある。特に、被処理物10の好適な解し効果を目的として乾燥装置60に気流乾燥装置を用いる場合は、乾燥が十分に進む前に被処理物10が乾燥装置60から排出されてしまうため、被処理物10が十分に解れないおそれや、第1の熱処理炉42におけるエネルギーロスの原因、熱処理変動の原因などとなるおそれがある。
【0037】
他方、脱水後の被処理物10の水分率が30%未満となるまで脱水をすると、被処理物10が高圧縮により、いわば固まった状態となるため、特に乾燥装置60として気流乾燥装置を用いたとしても被処理物10が解れないおそれがある。
【0038】
また、本形態のように被処理物10の脱水を多段で行い、急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、しかも、被処理物10のフロックが硬くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0039】
本脱水工程においては、被処理物10を凝集させる凝集剤等の助剤を添加し、脱水効率の向上を図ることもできる。ただし、助剤としては、鉄分を含まないものを使用するのが好ましい。鉄分を含むと、当該鉄分の酸化により、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0040】
本脱水工程の装置は、他の工程の装置に隣接して設けると生産効率の面で好ましいが、古紙パルプ製造工程の装置等に隣接して設け、脱水した被処理物10をトラックやベルトコンベア等の搬送手段によって搬送し、貯槽12や乾燥装置60に供給することもできる。
【0041】
(解し工程)
脱水後の被処理物10は、貯槽12から切り出し、乾燥工程に送り、乾燥することができる。ただし、この乾燥をするに先立って、例えば、撹拌機や機械式ロール等によって、粒子径50mm以上の割合が、30〜70質量%となるように、好ましくは40〜70質量%となるように、より好ましくは50〜70質量%となるように解して(ほぐして)おくと好適である。
【0042】
ここで「粒子径50mm以上の割合」は、被処理物全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった試料の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いる。
【0043】
乾燥する際の被処理物10には、大きな粒子径の被処理物が存在しない方が好ましく、具体的には粒子径50mm以上の割合が70質量%以下であるのが好ましい。もっとも、本形態においては、特に好ましい形態として乾燥工程でロータリーキルン等を用いず、気流乾燥装置60を用いるため、被処理物10を過度に解す必要はなく、粒子径50mm以上の割合が30質量%未満となるまで解さなくとも、十分に均質な製品を得ることができる。
【0044】
なお、被処理物10が、脱水後において既に「粒子径50mm以上の割合が70質量%以下」となっている場合は、解し工程を省略することもできる。この場合は、脱水後の被処理物10を、そのままの状態で「粒子径50mm以上の割合が70%以下」の被処理物10として、乾燥工程に送ることができる。
【0045】
(乾燥工程)
脱水後の被処理物10は、適宜解す等した後、乾燥工程に備わる乾燥手段たる乾燥装置60に供給する。この乾燥装置60の形態は特に限定されず、例えば、ストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の公知の乾燥装置を用いることができるが、
【0046】
ただし、本形態においては、この乾燥装置60として、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥する「気流乾燥装置」を用いる(気流乾燥方式)。気流乾燥装置を用いると、被処理物10が、乾燥されるのと同時に、圧縮力が加えられることなく大きな分散力(被処理物10を分散させる力)のもとで均一に解されるため、後段で行う熱処理(特に第1の熱処理)が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができるようになる。
【0047】
この点、乾燥に先立って後段の熱処理に好適な状態となるまで被処理物を均一に解すのは、現実的に困難な場合がある。また、乾燥に先立って被処理物を解すのであれば、脱水率を高めておく必要があるが、脱水率を高めると被処理物が高圧縮化され、被処理物の乾燥効率が部分的に低下するおそれがあり、乾燥処理の不均一化、ひいては製品の不均一化をまねくおそれがある。他方、乾燥後に被処理物を解すのでは、不均一な状態にある被処理物を乾燥することになるため、乾燥が均一に行われなくなり、熱処理も均一に行われなくなるおそれがある。結果、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できなくなるおそれがある。
【0048】
本形態の乾燥装置(気流乾燥装置)60としては、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥することができる適宜の装置を用いることができ、例えば、新日本海重工業社製の商品名:クダケラ等の公知の装置のほか、これらを改良した気流乾燥装置等も用いることができる。
【0049】
本形態の乾燥装置60は、貯槽12から脱水後の被処理物10が供給されるととともに、後述する第1の排ガス流路R1から排ガス(混合ガス)Gが熱源として吹き込まれ、この吹き込まれた排ガスGによって生じる熱気流に供給された被処理物10が同伴するように構成されている。したがって、例えば、当該排ガスGの温度や流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、被処理物10の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。なお、この排ガスGの温度や流量、流速等の調節方法については、後述する。
【0050】
また、図示はしないが、乾燥装置60にバーナーが備わる熱風発生炉から熱風を吹き込み、この熱風を上記排ガスGの補助熱源・補助熱気流発生源とすることもできる。この熱風による補助の度合いを調節することによっても、被処理物10の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
【0051】
また、図示例では、排ガスGが被処理物10とともに乾燥装置60の側方から吹き込まれる形態を模式的に示しているが、排ガスGを下方から吹き込み、被処理物10を吹き上げるのも好ましい形態である。
【0052】
このような排ガスG等の制御は、乾燥工程において粒子径50mm以上の被処理物10が存在しなくなるように、かつ被処理物10の平均粒子径が1〜7mmとなるように、好ましくは1〜5mmとなるように、より好ましくは1〜3mmとなるように行うと好適である。
【0053】
ここで、被処理物10の「平均粒子径」は、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。なお、被処理物10の「粒子径50mm以上の割合」は、前述したとおりである。
【0054】
被処理物10の平均粒子径が1mm未満であると、第1の熱処理において過剰な熱処理が生じ易くなる。他方、被処理物10の平均粒子径が7mmを超え、あるいは粒子径50mm以上の被処理物10が存在すると、被処理物10を表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。
【0055】
本形態において、熱気流の温度は、特に限定されるものではないが、排ガスGの温度(乾燥装置60に排ガスGとは別に熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均温度。以下、「流入ガスGの温度」ともいう。)を200〜600℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガス(排ガス)G6の温度が500℃以下となるように制御するのが好ましく、流入ガスGの温度を300〜500℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガスG6の温度が400℃以下となるように制御するのがより好ましく、流入ガスGの温度を300〜400℃とし、かつ乾燥装置60からの流出ガスG6の温度が300℃以下となるように制御するのが特に好ましい。
【0056】
この形態によると、わずか1〜3秒で被処理物10の水分率が、好ましくは0〜5%になるまで、より好ましくは0〜3%になるまで、特に好ましくは0〜1%になるまで乾燥することができる。しかも、この乾燥は、熱気流によって被処理物10が解されながら行われるため、被処理物10全体にわたって均一な水分率である。加えて、被処理物10は、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置60から排出されているため、意図しない有機物の熱分解・燃焼等の熱処理が生じるおそれもない。
【0057】
乾燥装置60から排出された流出ガスG6は、サイクロン等の集塵手段により排ガスG6中に混入した被処理物10を回収した後、脱臭装置、バグフィルター等のガス処理装置を適宜組み合わせて構成したガス処理設備22を通過させ、煙突30から排出することができる。乾燥装置60における被処理物10からの水分の蒸発により排ガスG6の温度は低下しているので、通常の排ガス処理設備には設ける熱交換器を設けないこともできる。また、乾燥装置60に供給する排ガスGは、後述するように、有機物の熱分解ガスを十分に高温で燃焼させたものが主であるため、再燃焼炉等のガス処理装置を設けなくとも排ガスG中の有害物質を十分に除去することができる。なお、再燃焼炉を設けた場合、再燃焼炉で燃焼された被処理物10は過焼により硬質かつ低白色度となっているため、原料として利用することができず、廃棄することになる。結果、歩留りが低下する。
【0058】
(第1の熱処理工程)
乾燥後の被処理物10は、第1の熱処理工程に送られ、熱分解等の熱処理をされる。
第1の熱処理工程においては、被処理物10が図示しない装入機等によって第1の熱処理手段たる第1の熱処理炉42に装入される。この第1の熱処理炉42としては、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等の公知の熱処理炉を用いることも考えられる。しかしながら、本形態においては、被処理物10の発火防止や熱エネルギーの有効利用という観点から、第1の熱処理炉42として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を用いる。
【0059】
エネルギーの有効利用という観点からは、第1の熱処理炉42として、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも考えられる。しかしながら、第1の熱処理炉42に供給される被処理物10は、アクリル系有機物やセルロース等の高発熱量成分を含有しているため、被処理物10の発火防止という観点から、炉本体内を低酸素濃度とするのが好ましく、本形態においては、外熱キルン炉を用いる。外熱キルン炉は、熱処理温度の制御が容易であるとの利点も有する。
【0060】
また、被処理物10の乾燥(水分の蒸発)及び熱分解・燃焼等を同一の装置(炉)で行う場合は、異質な熱処理を連続して行うことになり、熱処理温度の制御が複雑になる。しかしながら、本形態においては、第1の熱処理に先立って被処理物10を乾燥しているため、熱処理温度の制御が比較的容易になっており、外熱キルン炉を用いることによって、極めて均質な再生粒子を安定的に得ることができるようになる。
【0061】
本形態において、第1の熱処理炉42は、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
【0062】
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
【0063】
本形態の第1の熱処理炉42においては、炉本体の外表面上に、外熱ジャケット43が設けられている。この外熱ジャケット43には、後述する第2の排ガス流路R2から排ガスG2が流入され、この排ガスG2による間接加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。
【0064】
本形態において、再生粒子の製造のみを目的とするのであれば、外熱ジャケット15として、例えば、電気ヒーター等を用いることもできるが、排ガスG2(エネルギー)の有効利用という観点からは、本形態による構成が好適である。
【0065】
外熱ジャケット43は、炉本体の軸方向に関して適宜の数の空間(室)に分割し、分割された各空間を各別に加熱することができるようにするのも好適な形態である。このように外熱ジャケット43を適宜の数の空間に分割し、各別に加熱することができる形態とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
【0066】
エネルギーの有効利用という観点からは、第1の熱処理炉42として、外熱キルン炉に変えて排ガスG2が直接炉本体内に直接吹き込まれる内熱キルン炉や、外熱及び内熱の併用キルン炉を用いることも考えられる。しかしながら、本発明においては、外熱キルン炉、又はこの外熱キルン炉に内熱機構が付加された外熱及び内熱併用キルン炉を用い、特に本形態では、外熱キルン炉を用いる。外熱キルン炉を用いると、炉本体内の酸素濃度を低く保つことができるため、被処理物10の発火を可及的に防止することができる。なお、長期的な温度低下等に対しては、補助熱源等を設けておくことにより、対応することができる。この補助熱源等による補助の度合いを調節することによって、被処理物10の熱処理状態を調節することもできる。
【0067】
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、250〜400℃となるように加熱するのが好ましく、300〜360℃となるように加熱するのがより好ましく、310〜350℃となるように加熱するのが特に好ましい。
【0068】
炉本体外表面の温度が250℃以上であると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われる。また、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14及び第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14や第3の熱処理炉32において、スチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。
【0069】
もっとも、炉本体内表面の温度が400℃を超えると、炉本体内において熱分解ガスが発火するおそれがあり、また、第2の熱処理炉14における熱処理エネルギーが増加し、さらに、難燃性カーボンが生成し易くなり、製紙用の填料や顔料等として必要な特性を備えた再生粒子を安定して得ることができなくなるおそれがある。なお、第1の熱処理工程の前段に乾燥工程を設けない場合においては、本熱処理工程において被処理物10を乾燥させるために、熱処理温度をより高く設定する必要があり、以上のようなリスクを伴うことになる。
【0070】
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において温度が、炉本体外表面の温度と同じに、つまり、通常250〜400℃、好ましくは300〜360℃、より好ましくは310〜350℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
【0071】
ところで、以上のように第1の熱処理炉42は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱併用方式とすることも可能である。内熱併用方式とする場合は、例えば、第2の熱処理工程からの排ガスG2を空気で希釈冷却して吹き込むこと等ができる。また、図示しないバーナーが備わる熱風発生炉から酸素含有ガスたる熱風を炉本体内に吹き込む(供給する)こともできる。
【0072】
第1の熱処理炉42を外熱方式とする場合においては、被処理物10の供給や排出と同時に炉本体内に酸素が取り込まれるが、別途、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
【0073】
第1の熱処理炉42の炉本体内に酸素含有ガスを吹き込む場合、当該酸素含有ガスの酸素濃度を1.0〜20.0%、好ましくは2.0〜18.0%、より好ましくは4.0〜18.0%に調節しつつ、第1の熱処理炉42から流出する排ガス(流出ガス)G1の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%となるように管理すると好適である。
【0074】
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0075】
被処理物10の発火等を原因とする過剰な熱処理の防止という観点からは、低酸素濃度であるのが好ましく、酸素含有ガスの酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ流出ガスG1の酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。もっとも、酸素含有ガスの酸素濃度が1.0%未満、あるいは流出ガスG1の酸素濃度が0.1%未満であると、有機物の炭化が促進されるため、後工程である第3の熱処理工程において白色度が得難くなるおそれがある。しかも、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理が充分に進まず、有機発熱量の減少率を所定の範囲に調整することが困難となるおそれもある。なお、炭化物はいったん燃え始めると高温となって燃焼温度制御ができなくという特性を有するため、有機物の炭化が促進されると、いずれかの熱処理工程において燃焼温度制御が困難になるおそれもある。
【0076】
第1の熱処理炉42の炉本体内の酸素濃度は、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理に際して酸素消費され変動する可能性があるため、本形態のように、酸素含有ガスの酸素濃度の調節及び流出ガスG1の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
【0077】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の発熱量が20〜90%減少するように、好ましくは50〜80%減少するように、より好ましくは50〜70%減少するように熱処理するのが好ましい。
【0078】
発熱量の減少率が90%以下であると、過剰な熱処理が抑えられ、硬質物質の生成が好ましくは1.5質量%以下に抑制される。この点、90%を超える発熱量の減少は、被処理物10中のスチレン系有機物までもが熱分解していることを意味し、したがって炉本体内がセルロース等の熱分解ガスが発火しうる状態(つまり、高温状態)になっていることを意味する。他方、発熱量の減少率が20%未満であると、被処理物10中の高発熱量成分であるアクリル系有機物が残留し、第2の熱処理炉14における熱処理温度の変動が大きなものとなるおそれがある。
【0079】
ここで、発熱量の減少率は、第1の熱処理炉42に供給される被処理物10の発熱量と、第1の熱処理炉42から排出される被処理物10の発熱量とを比較した値である。この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。
【0080】
特に第1の熱処理炉42において、アクリル系有機物、セルロースを除去し、発熱量を20〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300〜500cal/gとなるように熱処理することにより、第2の熱処理炉14における炉本体内温度の変動幅を10〜40℃の範囲に抑制し易くなり、得られる再生粒子を均質化するに有用である。この点、当該炉本体内温度の変動幅が40℃を超えると、得られる再生粒子が硬い・柔らかい等のばらつきや白色度のばらつきを有するものとなるおそれがある。他方、当該炉本体内温度の変動幅を10℃未満にまで抑制するのは、現実的ではない。
【0081】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の未燃率が13〜30質量%となるように、好ましくは14〜26質量%となるように、より好ましくは15〜23質量%となるように熱処理を行うと好適である。
【0082】
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
【0083】
未燃率が30質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第2の熱処理炉14における熱処理を緩慢に行うことができるようになる。もっとも、未燃率が13質量%未満となるまで熱処理を行うと、第1の熱処理炉42におけるエネルギーコストが高くなる。
【0084】
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは45〜105分、より好ましくは60〜90分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるアクリル系有機物、セルロースが緩慢に熱分解され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
【0085】
ここで、滞留時間は、色で識別できる金属片を被処理物10の供給口から炉本体内に投入し、被処理物10の排出口から排出されるまでの実測時間である。
【0086】
(第2の熱処理工程)
第1の熱処理炉42において熱処理した被処理物10は、第2の熱処理工程に送られ、熱分解等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第2の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1〜7mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径は、通常上記の範囲内にあり、本粒子径の調節を省略することができる。
【0087】
第2の熱処理工程においては、被処理物10が第2の熱処理手段たる第2の熱処理炉14に装入される。この第2の熱処理炉14としては、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等の公知の熱処理炉を用いることも考えられる。しかしながら、本形態においては、得られる再生粒子の品質や後述する排ガスG3(エネルギー)の有効利用という観点から、第2の熱処理炉14として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を用いる。
【0088】
この第2の熱処理炉14も、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
【0089】
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
【0090】
また、第2の熱処理炉14は、本形態のように第1の熱処理炉42と同形状のものを用いることもできるが、例えば、軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、被処理物10の滞留時間を異なるものとすることなどもできる。
【0091】
本形態の第2の熱処理炉14においては、炉本体の外表面上に、外熱ジャケット15が設けられている。この外熱ジャケット15には、後述する第3の排ガス流路R3から排ガスG3が流入され、この排ガスG3による間接加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。
【0092】
本形態において、再生粒子の製造のみを目的とするのであれば、外熱ジャケット15として、例えば、電気ヒーター等を用いることもできるが、排ガスG3(エネルギー)の有効利用という観点からは、本形態による構成が好適である。
【0093】
外熱ジャケット15は、炉本体の軸方向に関して適宜の数の空間(室)に分割し、分割された各空間を各別に加熱することができるようにするのも好適な形態である。このように外熱ジャケット15を適宜の数の空間に分割し、各別に加熱することができる形態とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
【0094】
エネルギーの有効利用という観点からは、第2の熱処理炉14として、外熱キルン炉に変えて排ガスG3が直接炉本体内に直接吹き込まれる内熱キルン炉や、外熱及び内熱の併用キルン炉を用いることも考えられる。しかしながら、本発明においては、外熱キルン炉、又はこの外熱キルン炉に内熱機構が付加された外熱及び内熱併用キルン炉を用い、特に本形態では、外熱キルン炉を用いる。内熱キルン炉は熱効率が高いとの利点を有するが、排ガスG3は第3の熱処理炉32の排ガスであるため、瞬間的に(一時的に)温度変動が生じる可能性がある。そして、第3の熱処理炉32は高温で熱処理を行うため、その分、当該温度変動の幅が大きなものとなる可能性がある。しかしながら、排ガスG3が外熱ジャケット15に流入され、被処理物10が間接加熱される本形態によれば、当該温度変動が緩和される。また、外熱キルン炉を用いると、炉本体内の酸素濃度を低く保つことができるため、被処理物10の発火を可及的に防止することができる。なお、長期的な温度低下等に対しては、補助熱源等を設けておくことにより、対応することができる。
【0095】
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、360〜550℃となるように加熱するのが好ましく、360〜500℃となるように加熱するのがより好ましく、360〜400℃となるように加熱するのが特に好ましい。
【0096】
炉本体外表面の温度が360℃以上であると、被処理物10中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われる。また、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32において、残カーボン等の有機物を緩やかに燃焼することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。他方、炉本体外表面の温度が550℃以下であると、本工程における残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。これに対し、炉本体外表面の温度が360℃を下回ると、被処理物10中のスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が550℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。また、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
【0097】
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において温度が、炉本体外表面の温度と同じに、つまり、通常360〜550℃、好ましくは360〜500℃、より好ましくは360〜400℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
【0098】
ところで、以上のように第2の熱処理炉14は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱併用方式とすることも可能である。内熱併用方式とする場合は、例えば、第3の熱処理工程からの排ガスG3を空気で希釈冷却して吹き込むこと等ができる。また、図示しないバーナーが備わる熱風発生炉から酸素含有ガスたる熱風を炉本体内に吹き込む(供給する)こともできる。
【0099】
第2の熱処理炉14を外熱方式とする場合においては、被処理物10の供給や排出と同時に炉本体内に酸素が取り込まれるが、別途、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
【0100】
第2の熱処理炉14の炉本体内に酸素含有ガスを吹き込む場合、当該酸素含有ガスの酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、第2の熱処理炉14から流出する排ガス(流出ガス)G2の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。
【0101】
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0102】
被処理物10の発火等を原因とする過剰な熱処理の防止という観点からは、低酸素濃度であるのが好ましく、酸素含有ガスの酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ流出ガスG2の酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。もっとも、酸素含有ガスの酸素濃度が5.0%未満、あるいは流出ガスG2の酸素濃度が0.1%未満であると、スチレン系有機物等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整するのが困難で白色化が進まないおそれがある。他方、酸素含有ガスや流出ガスG2の酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。
【0103】
第2の熱処理炉14の炉本体内の酸素濃度は、スチレン系有機物等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じる可能性がある。したがって、本形態のように、酸素含有ガスの酸素濃度の調節及び流出ガスG2の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
【0104】
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは40〜100分、より好ましくは40〜80分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるスチレン等由来の有機物が緩慢に熱処理され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
【0105】
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の未燃率が2〜20質量%となるように、好ましくは5〜17質量%となるように、より好ましくは7〜12質量%となるように熱処理を行うと好適である。
【0106】
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
【0107】
未燃率が20質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第3の熱処理炉32における熱処理(燃焼等)を短時間で効率よく行うことができるようになり、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上の高白色度とすることができる。もっとも、未燃率が2質量%未満となるまで熱処理を行うと、第2の熱処理炉14におけるエネルギーコストが高くなり、また、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬度が高くなるなど、再生粒子の品質低下につながるおそれがある。
【0108】
(第3の熱処理工程)
第2の熱処理炉14において熱処理した被処理物10は、第3の熱処理工程に送られ、熱分解や燃焼等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第3の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1〜4mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。平均粒子径が1mm未満であると、第3の熱処理炉32において被処理物10が過燃焼するおそれがある。他方、平均粒子径が5mmを超えると、残カーボンの熱処理(燃焼等)が困難となり、芯部まで熱処理が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0109】
また、この被処理物10の粒揃えは、粒子径1〜5mmの割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75〜95質量%となるように、より好ましくは80〜95質量%となるように行うと好適である。
【0110】
ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径や粒揃えは、各熱処理工程を経ることにより、通常上記の範囲内となり、本平均粒子径や粒揃えの調節を省略することができる。
【0111】
第3の熱処理工程においては、被処理物10が図示しない装入機等によって第3の熱処理手段たる第3の熱処理炉32に装入される。この第3の熱処理炉32としては、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等の公知の熱処理炉を用いることも考えられる。しかしながら、本形態においては、エネルギーの有効利用という観点から、第3の熱処理炉32として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用いる。
【0112】
第3の熱処理炉32としては、外熱キルン炉を用いることも考えられ、外熱キルン炉は熱処理温度や滞留時間の制御が容易であるとの利点を有する。しかしながら、外熱キルン炉は、被処理物10を間接的に熱処理するものであり、熱処理効率は内熱キルン炉に及ばない。したがって、熱処理温度を相対的に高温とする第3の熱処理工程においては、熱処理効率や生産性の観点から、本形態のように、内熱キルン炉を用いる方が好ましい。この点、内熱キルン炉を用いると、炉本体内の酸素濃度が高まるが、第3の熱処理炉32に装入される被処理物10は、アクリル系有機物、セルロース、スチレン系有機物等の高発熱量成分が熱分解・除去されているため、被処理物10が発火するおそれは少ない。
【0113】
また、内熱キルン炉を用いる第3の燃焼炉32においても、炉本体の内壁にリフターを設け、もって被処理物10の搬送を制御し、滞留時間を制御することができる。滞留時間の制御により、例えば、被処理物10を緩慢に熱処理(燃焼等)することができ、被処理物10中の残留有機分や、残カーボンを限りなくゼロに近づけることができ、また、最終的な再生粒子の品質及び性状を均質化、安定化させることができる。
【0114】
この炉本体の内壁に設けるリフターは特に限定されるものではないが、被処理物10の供給口側32Aから排出口側32Bに向けて、軸心に対して例えば45〜70°の傾斜角を有する複数の螺旋状リフター及び軸心と平行な複数の平行リフターをこの順で設けるのが好ましい。
【0115】
この形態によると、被処理物10が、まず、螺旋状リフターにて適切な速度で搬送されつつ、持ち上げられて落下し、この落下する間に熱分解ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触する。また、被処理物10は、続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返し、この落下を繰り返す間に可燃焼ガスと効率的に接触する。したがって、熱交換効率が極めてよい。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる被処理物10の量が制御されるため、平行リフターにおける被処理物10の持ち上げ及び落下が適切に行われ、被処理物10の熱処理(燃焼等)が均一かつ効率的に行われる。螺旋状リフターや平行リフターは、例えば、耐熱性を有し、伝熱効率が高いステンレス鋼板等の金属製とすると好適である。
【0116】
第3の熱処理炉32の炉本体内には、酸素含有ガスたる熱風が吹き込まれ、当該熱風によって、供給口から供給され、炉本体の回転に伴って排出口側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる。
【0117】
本形態において、この熱風の発生方法は特に限定されないが、本形態のように、熱風源たるLPG(液化石油ガス)バーナーL1を利用すると好適である。従来は、キルン炉のバーナーとして、通常、重油バーナーが使用されていた。しかしながら、重油バーナーを使用すると、重油バーナーからの重油燃焼残カーボンや硫黄酸化物等による被処理物10の汚染が生じ、得られる再生粒子の白色度低下やバラツキの要因となる。したがって、本形態のように、LPGバーナーL1を用いるのが好ましい。LPGの利用は、CO2の排出量を削減することができる、温度制御が容易である、空燃比制御が容易である、被処理物10が着色しない等の利点を有する。
【0118】
第3の熱処理炉32においては、当該LPGバーナーL1を利用して発生させられる熱風の酸素濃度(第3の熱処理炉32に熱風とは別に他の熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均酸素濃度。以下、「流入ガスの酸素濃度」ともいう。)を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、第3の熱処理炉32から流出する排ガス(流出ガス)G3の酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。
【0119】
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
【0120】
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、流入ガス(酸素含有ガス)及び流出ガスG3の酸素濃度が低くなるように管理するのがより好ましい。もっとも、流入ガス(酸素含有ガス)や流出ガスG3の酸素濃度が低すぎると、残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に進まず、また、白色化が進まないおそれがある。他方、流入ガス(酸素含有ガス)や流出ガスG3の酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、流出ガスG3の酸素濃度を高くするためには、過剰の空気を炉本体内に吹き込む必要があり、炉内温度の低下や炉内温度制御が困難になる等の問題を生じるおそれがある。
【0121】
炉本体内の酸素濃度は、残カーボンや残留有機物の熱処理に際して酸素消費され変動を生じるため、本形態のように、流入ガス(酸素含有ガス)の酸素濃度の調節及び流出ガスG3の酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
【0122】
また、第3の熱処理炉32は、LPGバーナーL1を利用して発生させられる熱風の温度(第3の熱処理炉32に熱風とは別に他の熱風や希釈空気等を吹き込む場合は、全ガスの平均温度。以下、「流入ガスの温度」ともいう。)を550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節しつつ、第3の熱処理炉32から流出する排ガス(流出ガス)G3の温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように管理すると好適である。
【0123】
ここで、流出ガスG3の温度は、流出ガスG3の煙道(第3の排ガス流路R3)に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、流入ガスの温度は、当該流入ガスの煙道において熱電対にて温度を実測した値である。なお、流入ガスが複数の場合は、各煙道において、熱電対にて温度を実測した値と流量とから算出した値である。
【0124】
流入ガスの温度が550℃以上で、かつ流出ガスG3の温度も550℃以上であると、被処理物10中の残カーボンや第2の熱処理炉14で熱処理しきれなかったスチレン‐アクリルやスチレン等の残留有機物の熱処理が確実に行われる。他方、流入ガスの温度が750℃以下で、かつ流出ガスG3の温度も750℃以下であると、残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、流入ガスの温度が780℃を超え、あるいは流出ガスG3の温度が780℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。しかも、得られた再生粒子をスラリー化したときに、固まるおそれがある。
【0125】
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、流入ガスの温度の調節及び流出ガスG3の温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、上記調節・管理と同様、つまり、通常550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
【0126】
第3の熱処理炉32においては、被処理物10の滞留時間を60〜240分、好ましくは90〜150分、より好ましくは120〜150分とすると好適である。滞留時間を60分以上とすることにより、被処理物10に含まれる残留有機物や残カーボンが確実に熱処理され、また、再生粒子を安定して生産することができるようになる。他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムの分解が促進され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
【0127】
この点、第1の熱処理炉42において被処理物10の発熱量が20〜90%減少し、アクリル系有機物及びセルロースが熱分解するように熱処理され、また、第2の熱処理炉14において被処理物10のスチレン系有機物が熱分解するように熱処理されていると、第3の熱処理炉32における被処理物10の滞留時間を短くすることができ、過燃焼、白色度の低下、硬質物質の増加等のリスクを低減することができる。
【0128】
(硬質物質)
被処理物10の主成分となる製紙スラッジは、製紙用に供される填料や顔料としての炭酸カルシウム、カオリン、タルク、抄紙助剤としての硫酸アルミニウム等の無機物を多く含み、示差熱熱重量分析(TG/DTA6200)とX線回折(RAD2X)とによる燃焼物の分析から、被処理物10を熱処理するに際しては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)は600〜750℃にて質量減少し、硬質かつ水溶性の酸化カルシウム(CaO)に変化し、クレー(Al2Si25(OH)4)は500℃前後で脱水により質量減少し、メタカオリンとなり、1000℃前後の高温では硬質なムライト(Al2Si213)に変化することが知見された。また、タルク(Mg3Si410(OH)2)は900℃前後で質量減少し、エンスタタイト(MgSiO3)に変化することも知見された。一方、X線回折(RAD2X)による燃焼物の分析から、燃焼物中にCa2Al2SiO7(ゲーレナイト)、CaAl2Si28(アノーサイト)の存在が確認された。
【0129】
また、製紙用に供される填料や顔料と比べ、ゲーレナイトやアノーサイトは極めて硬質(硬質物質)であり、微量の存在で、製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合には、ドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となることも知見された。
【0130】
この点、従来、ゲーレナイトやアノーサイトは、900℃を超える高温での熱処理において生成されるものと予想されていたが、本発明者等の検討において、ゲーレナイトやアノーサイトの生成は熱処理温度が500℃前後でも生じ、熱処理温度の上昇に応じて生成量が増大することが見出された。
【0131】
また、製紙スラッジ中の酸化物換算によるカルシウムの含有量が増えると、アノーサイトは減少し、ゲーレナイトは増える傾向を示すことも知見された。アノーサイトは、炭酸カルシウムの過燃焼により生じる酸化カルシウムとカオリンとの混合燃焼により生成され易く、したがって、上記各種熱処理工程においては、25〜800℃における示差熱熱重量分析において、重量減量割合が5%(TG)以上となるように熱処理を行い、酸化カルシウムの生成自体を可及的に抑制するのが好ましい。
【0132】
また、水酸化カルシウムは、酸化カルシウムよりも一段とアノーサイトを生成し易いため、上記被処理物10の脱水率(水分率)や、各種熱処理における酸素濃度は、厳格に調節するのが好ましい。
【0133】
また、本発明者等は、シリカがゲーレナイトやアノーサイトの生成を助長することを知見した。したがって、被処理物10は、可及的にシリカ分含有量を低減しておくのが好ましく、例えば、新聞古紙や新聞抄紙系白水の使用を抑え、比較的低融点のゲーレナイトやアノーサイトの生成を抑制するのが好ましく、得られた再生粒子をシリカ被覆するのがより好ましい。
【0134】
(付帯工程)
第3の熱処理炉32から排出された被処理物10は、平均粒子径15.0μm以下、好ましくは0.1〜10.0μm、より好ましくは1.0〜5.0μmとなるように粉砕等して調節すると好適である。
【0135】
ここで粉砕後の平均粒子径は、粉砕後の被処理物スラリーをレーザー回折方式の粒度分布径(型番:SA−LD−2200、島津製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径(D50)である。
【0136】
この被処理物10の粉砕方法は特に限定されるものではなく、例えば、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機などを用いることができる。
【0137】
この粉砕を行った被処理物10は、好適には凝集体であり、冷却機34において冷却した後、振動篩機等の粒径選別機36により選別をし、再生粒子としてサイロ38に一時貯留し、適宜填料や顔料等の用途先に仕向ける。
【0138】
(再生粒子)
本形態の再生粒子の製造方法によって得られる再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の割合とされていると好適である。カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とされていると、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制されるため、脱水性が良好である。
【0139】
このカルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を調節する方法としては、被処理物10の原料構成を調節することが本筋ではあるが、第1の熱処理工程や、第2の熱処理工程、第3の熱処理工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で添加し、あるいは焼却炉スクラバー石灰を添加して、調節することもできる。例えば、カルシウムの調節には、中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調節には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量に添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調節には酸性抄紙系の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
【0140】
ところで、被処理物10の原材料ともいえる古紙は、近年の中性抄紙化、ビジュアル化の進展にともなう印刷見栄えの良い塗工紙使用量の増加にともない、填料・顔料としての炭酸カルシウムの使用量増加により、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムの含有量増加につながり、結果としてゲーレナイトやアノーサイトの生成量増加に繋がるため、再生粒子に含有されるゲーレナイトやアノーサイト、いわゆる硬質物質の含有量をできる限り減少させる必要が大きくなっている。したがって、硬質物質の含有量を減らすことができる上記再生粒子の製造方法は、極めて有用であり、この製造方法によって製造された本形態の再生粒子は、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量が1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とされている。
【0141】
ここで、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量は、下記の方法によって測定した値である。
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。
【0142】
(エネルギーの有効化)
本形態の再生粒子の製造方法・製造設備は、被処理物10から加熱処理以上の発熱が生じ、この発熱が過剰燃焼の要因となることを、逆に、熱源として有効利用し、もってエネルギー効率を極めて高めたものである。以下、詳細に説明する。
【0143】
本形態の製造設備においては、主要な熱発生装置(熱風源)として、前述LPGバーナーL1のみが備えられている。このLPGバーナーL1を利用して発生させられた熱風は、第3の熱処理炉32の炉本体内に吹き込まれ(供給され)、内熱源として利用される。
【0144】
LPGバーナーL1を利用して発生させられた熱風が、第3の熱処理炉32のどの部位から吹き込まれるかは特に限定されない。第3の熱処理炉32が「炉本体の一方端部側32Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側32Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉」である本形態においては、例えば、図示はしないが、当該熱風が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)32Aから吹き込まれ、炉本体内の排ガスG3が他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)32Bから排出される形態とすることもできる(並流方式)。なお、当該熱風によって加熱される被処理物10は、供給口側32Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口側32Bに順次移送される。
【0145】
このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10が直ちに残カーボン等の熱処理に好適な温度まで昇温される。しかも、供給口側32Aから排出口側32Bに向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。
【0146】
ただし、本形態においては、前記熱風が排出口側32Bから吹き込まれ、炉本体内の排ガスG3が供給口側32Aから排出され形態とされている(向流方式)。向流方式とされていることにより、排ガスG3中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。
すなわち、第3の熱処理炉32においては、供給された被処理物10中の残カーボン等が直ちに燃焼等の熱処理をされるため、向流方式とされていると、残カーボン等の燃焼に伴って発生する煤塵が、供給口側32Aから排ガスG3とともに速やかに炉本体外に排出され、被処理物10に混入してしまうのが防止される。
【0147】
第3の熱処理炉32の炉本体内から排出された排ガスG3は、第3の排ガス流路R3を通して第2の熱処理炉14に備わる外熱ジャケット15内に流入され、第2の熱処理炉14の外熱源として利用される。
【0148】
第3の排ガス流路R3内を通される排ガスG3は、当該流路R3の途中に備えられたバーナーB1等によって、必要に応じて加温され、もって第2の熱処理炉14における熱処理温度が調節される。
【0149】
本形態の第2の熱処理炉14も、外熱ジャケット15の有無を除いて第3の熱処理炉32と同様に、「炉本体の一方端部側14Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側14Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉」とされている。
【0150】
第2の熱処理炉14の炉本体内の排ガスG2は、例えば、図示はしないが、他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)14Bから排出される形態とすることもできる。ただし、本形態においては、排ガスG2が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)14Aから排出される形態とされている。排ガスG2が供給口側14Aから排出されることにより、前述第3の熱処理手段32の場合と同様、排ガスG2中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。
【0151】
もっとも、本形態の製造方法・設備においては、被処理物10の熱処理が少なくとも4つの手段に分けて行われ、第2の熱処理炉14における熱処理が可及的に低温で行われるように構成されている。したがって、第2の熱処理炉14における熱処理は、有機物の燃焼ではなく、スチレン系有機物の熱分解が主となり、煤塵が発生するおそれがほとんどない。
【0152】
しかも、熱処理温度が低温であると、当該スチレン系有機物の熱分解によって発生した熱分解ガス(可燃性ガス)は、炉本体内において発火(燃焼)することなく、そのまま排ガスG2として炉本体内から排出される。したがって、被処理物10の過燃焼が生じるおそれもない。
【0153】
以上のように、排ガスG2の主たる成分はスチレン系有機物の熱分解ガスであるため、排ガスG2は、極めて大きな熱量を有する。そこで、本形態においては、排ガスG2が第2の排ガス流路R2を通して第1の熱処理炉42に備わる外熱ジャケット43内に流入され、第1の熱処理炉42の外熱源などとして有効利用されるように構成されている。
【0154】
より詳細には、まず、第2の排ガス流路R2内を通る排ガスG2は、当該流路R2の途中に備わるバーナーB2等によって着火され、高温の燃焼ガスとされる。そして、第2の排ガス流路R2は、その途中から第4の排ガス流路R4が分岐しており、排ガスG2の一部が第1の熱処理炉42に備わる外熱ジャケット43内に送られて外熱源として利用され、排ガスG2の残部が第4の排ガス流路R4に分流される。
【0155】
図示はしないが、第2の排ガス流路R2の第1の熱処理炉42側に、排ガスG2の一部にエア等を混入するエア混入手段を備えることができる。このエア混入手段からのエア混入量を調節することにより、第1の熱処理炉42における熱処理温度を調節することができる。また、この熱処理温度の調節は、上記第4の排ガス流路R4に分流させる排ガスG2の割合を調節することによることもできる。
【0156】
本形態の第1の熱処理炉42も、外熱ジャケット43の有無を除いて第3の熱処理炉32と同様に、「炉本体の一方端部側42Aに被処理物10の供給口が設けられ、炉本体の他方端部側42Bに被処理物10の排出口が設けられた横型回転キルン炉」とされている。
【0157】
第1の熱処理炉42の炉本体内の排ガスG1は、例えば、図示はしないが、他方端部側(以下、「排出口側」ともいう。)42Bから排出される形態とすることもできる。ただし、本形態においては、排ガスG1が一方端部側(以下、「供給口側」ともいう。)42Aから排出される形態とされている。排ガスG1が供給口側42Aから排出されることにより、前述第3の熱処理手段32の場合と同様、排ガスG1中の煤塵が被処理物10中に混入して得られる再生粒子の品質が低下するのが確実に防止される。
【0158】
もっとも、本形態の製造方法・設備においては、被処理物10の熱処理が少なくとも4つの手段に分けて行われ、第1の熱処理炉42における熱処理が可及的に低温で行われるように構成されている。したがって、第1の熱処理炉42における熱処理は、有機物の燃焼ではなく、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解が主となり、煤塵が発生するおそれがほとんどない。
【0159】
しかも、熱処理温度が低温であると、当該アクリル系有機物及びセルロースの熱分解によって発生した熱分解ガス(可燃性ガス)は、炉本体内において発火(燃焼)することなく、そのまま排ガスG1として炉本体内から排出される。したがって、被処理物10の過燃焼が生じるおそれもない。
【0160】
以上のように、排ガスG1の主たる成分はアクリル系有機物及びセルロースの熱分解ガスであるため、排ガスG1は、極めて大きな熱量を有する。そこで、本形態においては、排ガスG1が第1の排ガス流路R1を通して乾燥装置60に送られ、乾燥装置60の熱源などとして有効利用されるように構成されている。
【0161】
より詳細には、まず、第1の排ガス流路R1内を流れる排ガスG1は、当該流路R1の途中に備わるバーナーB3等によって着火され、高温の燃焼ガスとされる。また、第1の排ガス流路R1は、その途中に第5の排ガス流路R5が接続されている。この第5の排ガス流路R5は、他端が前述第2の熱処理炉14に備わる外熱ジャケット15に接続されており、第2の熱処理炉14において外熱源として利用された後の排ガスG5が流される。さらに、第5の排ガス流路R5は、その途中に、前述第4の流路R4が接続されており、第5の排ガス流路R5内を流れる排ガスG5に第4の排ガス流路R4内を流れる前述排ガスG2の残部G4が混入される。加えて、第5の排ガス流路R5は、その途中に、他端が第1の熱処理炉42に備わる外熱ジャケット43に接続された第5の排ガス流路R5bが接続されており、第1の熱処理炉42において外熱源として利用された後の第5の排ガス流路R5b内を流れる排ガスが、排ガスG5に混入される。したがって、第1の排ガス流路R1内を流れる排ガスG1には排ガス流路R5内を流れる排ガスG5並びにこの排ガスG5に混入された排ガスG2の残部G4及び第5の排ガス流路R5bからの排ガスが混入される。
【0162】
このようにしてなる排ガスG1,G2,G4,G5等からなる混合ガスGは、排ガス流路R1を通して乾燥装置60に送られ、乾燥装置60の熱源として有効利用される。また、第1の排ガス流路R1の乾燥装置60側には、当該混合ガスに希釈エアA2を混入するエア混入手段が備えられている。したがって、当該希釈エアA2の混入量を調節することにより、乾燥装置60における熱処理(乾燥)温度や熱気流の流速・流量等を調節することができる。
【0163】
なお、第1の熱処理炉42及び第2の熱処理手段14において外熱源として利用した後の排ガスは、高発熱量成分を含まないが、少なくとも一方を、好ましくは両方を乾燥装置60の熱源として利用するのが好適である。
【0164】
本形態の製造方法・製造設備において、各流路R1〜R6の形状、素材等は特に限定されず、公知の排ガス等を通すダクトや管等を用いることができる。
【0165】
各種排ガス中に混入する飛灰は、被処理物10の燃焼に伴い火炎に巻き上げられた無機物が各種排ガスと伴に排出されることで生じるものであるが、本形態のように被処理物10の燃焼を伴わないように熱処理する方法によると、原理上飛灰の発生が極めて少なくなるため、産業廃棄物の減量化と共に歩留りが向上する。
【実施例1】
【0166】
本形態の製造方法・設備を用いて再生粒子を製造する場合における各設備(乾燥装置、熱処理炉、排ガス流路等)での熱量を、表1に示した。本熱量は、乾燥装置60に20℃の被処理物10が8.93t/hの供給速度で供給され、熱風を発生させるためのLPGを65kg/hの割合で使用した場合を例示したものである。なお、この例は、本形態の製造方法・設備を、このような熱量になる場合のみに限定する趣旨ではない。
【0167】
本例の製造方法・設備によると、被処理物10は、乾燥装置60において100℃に加温され、5.35t/hの割合で第1の熱処理炉42に送られ、第1の熱処理炉42において370℃に加温され、4.23t/hの割合で第2の熱処理炉14に送られ、第2の熱処理炉14において410℃に加温され、3.75t/hの割合で第3の熱処理炉32に送られ、第3の熱処理炉32において680℃に加温され、3.75t/hの割合で後の工程に送られる。
【0168】
また、第3の熱処理炉32に供給される熱風の温度は700℃、第2の熱処理炉14から排出される排ガスG2の温度は410℃、第1の熱処理炉42から排出される排ガスG1の温度は340℃、乾燥装置60に供給される混合ガスGの温度は450℃になるものと推定される。なお、表1中の符号は、図1中の符号と対応している。
【0169】
【表1】

【実施例2】
【0170】
次に、本発明の作用効果をより明確にするための実施例及び比較例を示す。
製紙スラッジ一般又は脱墨フロスからなる被処理物(試料)を、脱水、熱処理及び湿式粉砕して再生粒子を製造した。各工程における処理条件は、表2〜5に示した。なお、装置形式の「気流乾燥」とは、脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて乾燥することができる装置を用いた場合を意味し、具体的には気流乾燥装置(型番:クダケラ、新日本海重工業社製)を使用して乾燥した場合である。また、炉形式の「キルン」とは、本体が横置きで中心軸周りに回転する横型回転キルン炉(ロータリーキルン炉)を用いた場合を意味する。さらに、湿式粉砕工程においては、セラミックボールミルを用いた。なお、特に断りのない限り、下記の測定方法、評価方法等は、本明細書全体にわたって同様である。
【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
【表5】

【0175】
以上のようにして得られた再生粒子について、その品質を調べ、結果を表6に示した。
【0176】
【表6】

【0177】
本実施例及び比較例における測定手段、評価方法は、次の通りである。
(水分率)
定温乾燥機内に試料を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式により水分率を算出した。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
【0178】
(平均粒子径)
目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。
【0179】
(粒子径50mm以上の割合)
試料全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった試料の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いた。
【0180】
(酸素濃度)
自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした試料の酸素濃度の測定値である。
【0181】
(温度)
各領域(排ガス流路(煙道)、炉本体内、炉本体の外表面等)の温度を、熱電対にて実測した値である。
【0182】
(滞留時間)
色で識別できる金属片を炉本体内に投入し、当該金属片が被処理物の排出口から排出されるまでの時間を実測した値である。
【0183】
(発熱量減少率)
熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて、熱処理前の試料と熱処理後の試料との発熱量を測定し、減少割合から算出した値である。
【0184】
(未燃率)
電気マッフル炉をあらかじめ600℃に昇温後、ルツボに試料を入れ、約2時間で完全燃焼させ、燃焼前後の質量変化から算出した値である。
【0185】
(硬質物質)
得られた各再生粒子に含まれるゲーレナイト及びアノーサイトの合計質量を、X線回析法(理学電気製:RAD2X)によって測定した値である。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とした。
【0186】
((ワイヤー)摩耗度)
得られた各再生粒子について、プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製、3時間)を用い、スラリー濃度2質量%で測定した値である。
【0187】
(分散性)
粉砕後の再生粒子スラリー(60%濃度)について、B型粘度計を用いてローター回転数6rpmでの粘度を測定した値である。なお、粘度(mPa・s)が低いほど分散性が良好であると判定した。
【0188】
(見た目)
目視で再生粒子の色を比較判断し、高白色、白色、灰色、濃灰色、黒色に区分した。
【0189】
(安定性)
得られた各再生粒子の白色度及び平均粒子径について変動割合を測定し、変動が少ない順にランクを付け、上位5位までを◎、6〜19位を〇、20〜23位を△、それ以下を×とした。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法及びこの方法によって製造された再生粒子として、適用可能である。
【符号の説明】
【0191】
10…原料、12…貯槽、14…第2の熱処理炉、15…外熱ジャケット、22…排ガス処理設備、30…煙突、32…第3の燃焼炉、34…冷却機、36…粒径選別機、38…サイロ、42…第1の熱処理炉、A2…希釈エア、B1〜B3…バーナー、G,G1〜G6…ガス、R1〜R6…流路、60…乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理して再生粒子を製造する方法であって、
前記熱処理を、前記脱水後の被処理物を乾燥する乾燥手段と、この乾燥手段で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理手段と、この第1の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理手段と、この第2の熱処理手段で熱処理された被処理物を当該第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理手段と、を含む少なくとも4つの手段に分けて行い、
前記第1の熱処理手段及び前記第2の熱処理手段を外熱式とし、前記第3の熱処理手段を内熱式とする、
ことを特徴とする再生粒子の製造方法。
【請求項2】
熱風を前記第3の熱処理手段の内熱源として利用し、
当該第3の熱処理手段の排ガスを前記第2の熱処理手段の外熱源として利用し、
当該第2の熱処理手段の排ガスの一部を前記第1の熱処理手段の外熱源として利用し、
当該第1の熱処理手段の排ガス、前記第2の熱処理手段の排ガスの残部、並びに、前記第1及び第2の熱処理手段において外熱源として利用した後の排ガスの少なくとも一方を、前記乾燥手段の熱源として利用する、
請求項1記載の再生粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の熱処理手段、前記第2の熱処理手段及び前記第3の熱処理手段として、炉本体の一方端部側に前記被処理物の供給口が設けられ、前記炉本体の他方端部側に前記被処理物の排出口が設けられた横型回転キルン炉を用い、
前記熱風は、前記第3の熱処理手段の排出口側から供給し、
前記第2の熱処理手段の排ガスは、当該第2の熱処理手段の供給口側から排出し、
前記第1の熱処理手段の排ガスは、当該第1の熱処理手段の供給口側から排出する、
請求項2記載の再生粒子の製造方法。
【請求項4】
前記炉本体内の温度がそれぞれ、前記第1の熱処理手段において250〜400℃、前記第2の熱処理手段において360〜550℃、前記第3の熱処理手段において550〜780℃となるように、前記熱風を調節するほか、前記第1の熱処理手段の外熱源として利用する前記第2の熱処理手段からの排ガスの割合を調節する、
請求項2又は請求項3記載の再生粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造され、
かつ、下記の方法で測定したCa2Al2SiO7及びCaAl2Si28の合計含有量が1.5質量%以下とされた、
ことを特徴とする再生粒子。
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。

【図1】
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【公開番号】特開2011−251239(P2011−251239A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126074(P2010−126074)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】