再生脱硫剤の輸送方法
【課題】溶銑脱硫コストの削減とスラグ発生量の低減とを図ることを可能にし、加えてスラグ量が減少して環境問題の解決にもつながる溶銑の脱硫方法を提供する。
【解決手段】本発明は、KR溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を再度溶銑用の脱硫剤として利用する。
【解決手段】本発明は、KR溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を再度溶銑用の脱硫剤として利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械攪拌式溶銑予備処理工程で発生した脱硫滓(KR滓)を有効に再利用する溶銑の脱硫剤の製造方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼の品質に悪影響を及ぼす硫黄(S)が高濃度で含まれているものの、転炉工程では、不純物の酸化除去を目的としているために、一部気化脱硫するものを除いて溶鋼の脱硫は見込めない。そこで、要求される品質に応じて、高炉と転炉の間の工程で種々の溶銑予備処理や転炉の後工程で溶鋼脱硫が行われている。図23は溶銑予備処理の一例を示す。図示する例では、高炉からの溶銑を脱Si処理、脱S処理、脱P処理を順に行なった後、転炉に入れて脱C処理している。
【0003】
脱硫に際しては、石灰系の脱硫剤が多く用いられており、この場合の脱硫反応は以下に示される反応式にしたがって進行する。
【0004】
CaO+S→CaS+O
こうした脱硫反応はCaO単体では高融点であり、工業的には一般的に蛍石やアルミナ系造滓剤等が石灰の滓化促進用に用いられている。しかしながら、これらの造滓剤は一般に高価であり、こうした造滓剤の配合率を増やすことは脱硫剤コストの増大につながる。さらに、造滓剤の配合率を高めた場合には脱硫剤中の石灰濃度が低下して反応効果が低下することが懸念される。
【0005】
また、高炉や転炉などの乾式精錬工程で生成するスラグは、メタル分を除去した後、高炉セメント、コンクリート材、肥料、あるいは道路材などに再利用されている。しかしながら、脱硫滓はCaO分が高く、風化しやすい特徴から、前処理に多くの手間をかけてセメント原料にするしかない。しかも、その処理には多くのコストがかかっているのが現状である。
【0006】
なお、特開平4−120209号公報には転炉滓を造滓剤として利用する技術が記載されている。ここでは、転炉滓の粒径は3〜50mmに規定され、この範囲の粒径で充分な脱燐効果が得られていることが述べられている。しかしながら、脱硫を主目的としたものではなく、脱硫に関しては何等言及されていない。
【0007】
また、特開平10−30115号公報には、冷却・破砕し鉄分を分離・回収した転炉滓に石灰、蛍石を配合し、脱硫剤として利用する技術が開示されているものの、上述した技術と同様に脱硫滓を再利用することに関しては何等言及されていない。
【0008】
脱硫滓のリサイクルの例としては、未反応石灰分の多いインジェクション脱硫滓を、石灰利用効率に優れた機械攪拌式溶銑脱硫処理に再利用するプロセスが報告されている(住友金属Vol.45−3(1993)p.52〜58)。しかし、ここに報告されている処理(以下、脱硫滓リサイクルの先行技術という)は、後述するように石灰の利用効率向上に限界があり、また添加方法・撹拌方法の異なるプロセスへの再利用であるため、複数のプロセスをもたない場合には適用できない。
【0009】
なお、機械撹拌式溶銑脱硫装置は、インペラー(羽根車)を溶銑中に浸漬し回転させ、溶銑上部より脱硫剤(通常は石灰)を添加し、インペラーの回転による撹拌によって溶銑の脱硫をする装置であり、この装置を用いた溶銑脱硫処理としては、通称KR法とよばれるものがある。図24は脱S設備の一例を示す。
【0010】
上述したように、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓は、有効に再利用されておらず、また溶銑の脱硫に当たっては改善を要する点が多く存在しているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、KR脱硫工程において利用される脱硫剤の利用効率を調べた。図18は、機械撹拌式溶銑脱硫処理方法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合と、インジェクション法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫滓として使用する場合について、投入石灰に対して脱硫に有効利用された石灰の割合の比較を示す図である。図18に示すように、KR脱硫工程の一回の使用において利用される脱硫剤の利用効率は7%程度であり、残りの93%は未反応で残存しているという事実が見出された。従って、この知見から発明者らは、KR脱硫処理工程で使用された後の脱硫剤は、次処理の脱硫に寄与する石灰分をまだ93%程度含有しているので、この石灰分を再利用できるようにすれば、脱硫剤の安価な石灰源として利用することが期待できると考えた。
【0012】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を有効に再利用し、それによって溶銑脱硫コストの削減とスラグ発生量の低減とを図ることを可能にした溶銑の脱硫方法に用いる、脱硫滓の輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこの目的を達成すべくなされたもので、 本発明に係る溶銑用脱硫剤の製造方法は以下の工程を備えている。
【0014】
1 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう溶銑用脱硫剤の製造方法。
【0015】
2 機械攪拌式溶銑処理に用いられる溶銑用脱硫剤の製造方法であって、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう方法。
【0016】
3 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓を用意する工程と、用意された脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう工程とを備えた方法。
【0017】
4 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離することを含んでいる方法。
【0018】
5 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を空冷すること及び/又は脱硫滓に機械的なエネルギーを付与することにより、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離する方法。
【0019】
6 脱硫滓の冷却は、空冷及び水冷の群から選択された一種または二種である方法。
【0020】
7 空冷は、自然冷却及び強制冷却の群から選択された一種又は二種である方法。
【0021】
8 水冷により新しい界面を創出する処理を行う工程は、脱硫滓に散水する工程を備え、この散水工程は、散水終了時の脱硫滓温度を100℃以上に維持するようにその散水量を制御して、散水による冷却のみで脱硫滓凝縮物の分離及び/又は脱硫滓粒子の破砕を可能とした方法。
【0022】
9 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を水冷する工程と、水冷により得られた再生脱硫剤を乾燥する工程とを備えた方法。
【0023】
10 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を冷却する工程と、脱硫滓および再生脱硫剤の粒度を調整する工程とを備えている製造方法。
【0024】
11 再生脱硫剤を篩で粒度調整する工程は、温度600℃以上でおこなう製造方法。
【0025】
12 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓又は再生脱硫剤中に含有されている地金を磁選除去する処理、脱硫滓又は再生脱硫剤中の大塊を除去して粒径を100mm以下にする処理、及び脱硫滓又は再生脱硫剤の温度を200℃以下とする処理からなる群から選択された一種または二種以上の処理を行なう工程を備えている方法。
【0026】
13 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓の粒径を100mm以下、かつ、温度を200℃以下とする工程を備えている方法。
【0027】
14 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、開閉可能な一対の可動かご部を用いて輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【0028】
15 輸送車を用いて輸送する工程の前またはこの工程と同時に冷却破砕後の再生脱硫剤を篩い分けて大塊を除去する工程を備えた方法。
【0029】
16 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、再生脱硫剤吸引能力を有する輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【0030】
17 再生脱硫剤を積み込む工程は、輸送車への再生脱硫剤の落下高さを1.5m以内に調整しておこなう方法。
【0031】
18 破砕された再生脱硫剤を篩い分ける篩目を有する装置本体と、この装置本体に取り付けられ、装置本体への再生脱硫剤の吸引を促進するエアー吸引用ホースとを備えた、再生脱硫剤の篩い分け装置。
【0032】
19 斜めに配置された篩目を有する部材と、この部材の下に斜めに配置され、篩下が通る斜め板と、斜め板からの篩下が落下して通る滑り台とを備え、篩目を有する部材と斜め板との間隔、及び斜め板と滑り台のつなぎ部分の垂直落下高さを500mm以下とし、滑り台から地表への落下高さを1500mm以下にするように配置されている再生脱硫剤の篩い分け装置。
【0033】
20 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0034】
21 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする、機械攪拌式溶銑脱硫処理で用いられる溶銑用脱硫剤。
【0035】
22 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0036】
23 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤粒子の凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0037】
24 最大粒径が100mm以下である溶銑用脱硫剤。
【0038】
25 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とし、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種をさらに含む、溶銑用脱硫剤。
【0039】
26 石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種は、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と混合されており、この混合物を溶銑に添加するようになっている溶銑用脱硫剤。
【0040】
27 石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種と、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤とは分離されて、溶銑に別々に添加するようになっている溶銑用脱硫剤。
【0041】
28 石灰源は、石灰、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの群から選択された一種または二種以上である溶銑用脱硫剤。
【0042】
29 石灰源のうち炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの総和は、溶銑用脱硫剤全体に対して40質量%以下含有する溶銑用脱硫剤。
【0043】
30 炭素源は、溶銑用脱硫剤全体に対して30質量%以下含有する溶銑用脱硫剤。
【0044】
31 炭素源は、1mm以下の粉状である溶銑用脱硫剤。
【0045】
32 炭素源は、石炭、コークス及びピッチからなる群から選択された一種または二種以上である溶銑用脱硫剤。
【0046】
33 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0047】
34 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を機械攪拌式溶銑脱硫処理により脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0048】
35 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0049】
36 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0050】
37 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0051】
38 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを混合し、この混合物を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0052】
39 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを別々に溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0053】
40 石灰源を添加する際に、所定のCaO純分となるように混合割合を調整する方法。
【0054】
41 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤の嵩密度を算出する工程と、算出された嵩密度から再生脱硫剤のCaO純分を算定する工程と、算定された再生脱硫剤のCaO純分を基準として、破砕された再生脱硫剤と石灰源との添加割合を調整する工程とを備えた方法。
【0055】
42 炭素源を添加する際に、炭素源の粒径を1mm以下に調整する工程を備えた方法。
【0056】
(定義)
脱硫剤:脱硫のために使用するフラックス全般をさす。新しい界面を創出する処理を行なった後の再生されたスラグも含む。
【0057】
再生脱硫剤:脱硫剤の中で特に新しい界面を創出する処理を行なった後の再生されたスラグからなるものであって、このスラグには地金などが含まれうる。
【0058】
脱硫滓:CaO分、他のスラグ分、地金分全てを含む脱硫スラグをさし、新しい界面を創出する処理を行なうまえのスラグである。
【0059】
石灰:広くCaO分をさす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(脱硫滓の再利用)
本発明の溶銑脱硫方法は、機械撹拌式溶銑脱硫処理(以下、KR法として説明する)において生成した脱硫滓を、別の溶銑脱硫処理において脱硫剤として再利用するものである(例えば、KR法で生じた脱硫滓をKR法の脱硫剤として、或いはKR法で生じた脱硫滓をインジェクション法の脱硫剤として)。再利用する溶銑脱硫処理は何等限定されず、通常行われている溶銑脱硫処理をさす。本発明においては、脱硫滓が生じたプロセスと同一のプロセスでも脱硫滓を再利用できるため、本発明の方法は、単一の添加方法・撹拌方法が同一の溶銑脱硫処理プロセスしか設けていない製鉄設備においても有効である。本発明では、特に、脱硫滓再利用をKR法に適用した場合再利用効率が高く、特に有効である。
【0061】
すなわち、インジェクション法は、微粉石灰を浴の深いところに添加するので、浴内を浮上中に反応する。従って、短時間しか反応を期待できず、微粉のごく表層に脱S生成物が形成される。浴面に浮上後は、再度巻き込むような攪拌は期待できず、反応界面積の増大は無く、脱S反応はほとんど期待できない。そして、この段階で凝集が始まるため、個々微粉の表面に脱S生成物があり、それが凝集した形態となる。
【0062】
これに対し、KR法は、粉石灰を浴表面に添加するので、浴表面から浴内に巻き込み、添加当初から、表面近傍での粉脱S剤の凝集が起こる。その結果、ほとんど反応しない石灰を内部に包んだまま、”だま”になる。凝集が始まっても、メタルと接触する表面部分が反応し、脱S生成物が形成される。この反応は処理時間中起こり、長時間反応が可能である。以上の反応機構から、脱S後には、凝集した粗粒の表面から一定の厚みを持って脱S生成物で覆われたものができ、その内部は脱S生成物が少ない。すなわち内部はフレッシュな石灰に近い、未反応石灰が存在する形態となる。発明者らは、機械撹拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓の凝集物をSEMで観察した写真及びそれのS元素をライン分析した。その結果、図21に示すように上記の知見が正しいことが確認された。
【0063】
このように、KR法による脱硫滓は、粗粒であるので再利用する前の事前処理が簡易、すなわち再利用処理費が低減する。また、上記のように未反応の石灰が凝集した形で存在することが多く、破砕や粒度調整に特別な方法を付加せずとも再利用できる。
【0064】
これに対し、インジェクション法による脱硫滓では、個々の微粉の周囲に脱S生成物があり、微粉を更に細かくする特別な破砕などが必要となり、工程や時間が増える。
【0065】
以上説明したように、KR法では、再利用時の反応効率が高い。再利用での反応に、未反応石灰分の界面がそのまま利用でき、フレッシュな石灰を用いた時と同等の反応効率が期待できる。KR滓の再利用では、石灰分の原単位が同じで脱S可能である。これに対し、インジェクション滓では、事前処理が煩雑であり、または簡易な事前処理では石灰分として少なくとも倍の使用量が必要である。
【0066】
また、KR滓を利用すると、処理時間も短く(フレッシュ剤と同じ)でき、発生スラグ量の低減効果が大きく、1回リサイクルでも50%減であり、多数回リサイクルすることも可能である。
【0067】
これに対し、インジェクション法では、個々微粉の表面に脱S生成物があり、それが凝集した形態となる。このため、再利用には、個々の粒子(一次粒子)を粉砕する必要がある。再生後の粒子は、非常に細かいもの(一次粒子径の半分以下)になる。そのため、KR法での再使用時に、添加時に飛散大となり、飛散した石灰分を補う為の石灰がさらに必要になる。例えば、従来の1回目の使用の脱硫剤のみの場合は約7kg/tの脱硫剤(内石灰分約90%:実質石灰分6.3kg/T)が必要であるのに対して、再生脱硫剤使用の場合は10kg/t(内石灰分約66%:実質石灰分6.6kg/T)+従来の1回目使用の脱硫剤3kg/t(内石灰分約90%:実質石灰分2.7kg/T)が必要となる。つまり、再生脱硫剤中の石灰分は9.3kg/T存在しているが、有効な新界面の創出が不十分であったり、飛散によるロスが生じたりして、3kg/T程度は有効に脱硫に寄与していない可能性がある。つまり、再生脱硫剤中の有効な石灰分は約55%程度で補助的に脱硫剤を加えて使用していることは前記文献(住友金属Vol.45−3(1993)p.52〜58)中にも記載されている。
【0068】
KR法では、上述のように、ある程度粗粒の表面が脱S生成物で覆われたものができ、その内部は脱S生成物が少ない。すなわちフレッシュな石灰に近い、未反応石灰が存在する形態となる。このため、再利用の為に風化生成物を積極的に生成し、再生後の粒子は一次粒子と同じかそれよりも大きくても脱硫可能となる。そして、KR法での再使用時に、飛散量は石灰使用時と同じかそれ以下になる。例えば、再生脱硫剤使用の場合に再生脱硫剤使用量は14kg/t(内石灰分約50%)、添加される再生脱硫剤中の石灰の有効分はフレッシュな石灰を添加した場合と同様である。
【0069】
以上の関係をまとめたものを図18に示す。本発明例であるKR法の脱硫滓をKR法の脱硫剤に再利用する場合には処理1回ごとに添加された石灰分の約7%が脱硫に使用され、多数回使用されれば有効利用率が着実に積みあがっていく。それに対し、脱硫滓リサイクルの先行技術であるインジェクション法の脱硫滓をKR法の脱硫剤に再利用する場合では、所詮トータルでKR1回分の利用効率をわずかに上回るにすぎない。
【0070】
また、上記説明の理解を助けるために、機械攪拌式溶銑脱硫滓とインジェクション法による溶銑脱硫滓との違いを模式的に示した図22を添付する。図22は、機械撹拌式溶銑脱硫処理において生成する脱硫滓粒子の凝集物を分離して、新しい界面を創出した状態及びインジェクション法で生成する脱硫滓粒子の凝集物の各脱硫滓粒子を破砕した状態をしめす。なお、図ではインジェクション法で生成する脱硫滓粒子は機械撹拌式溶銑脱硫処理において生成する脱硫滓粒子とほぼ同じ粒径であるが、実際はそれよりも微細である。
【0071】
(脱硫滓の具体的な処理)
図17Aは、実機によるスラグ処理パターンを示し、図17Bは、図17Aのスラグ処理パターンの一例を、従来のスラグ処理パターンとともに示す。
【0072】
本発明は、脱硫工程において発生した脱硫滓を任意の方法により新界面を創出した後、脱硫剤として再利用する。この場合、未反応石灰分を次回の脱硫剤として使用する際の脱硫反応面として露出させることが必要である。その際の方法は何ら制約されるものではない。新界面の創出の際に放冷または散水、冷却過程を経た場合、CaCO3,Ca(OH)2が生じる。これらCaCO3,Ca(OH)2の残留は、特に脱硫反応を阻害するものではなく、むしろ適量発生させることにより脱硫反応の向上が期待できる。また、大径の地金分は磁選もしくは篩による篩分けなどで除去し、滓分を主に脱硫剤として回収することも可能である。さらに、この再生脱硫剤の粒度は、使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。又、一方再生脱硫剤には小径の残存地金が残留する場合もあるが、次回溶銑予備処理工程での鉄源として再度使用することも出来るため、鉄歩留りの向上に対して大きく寄与できるメリットもある。以下に各種具体例を例示する。
【0073】
(i)散水処理による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、乾燥処理を行うことにより脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓に対して散水設備を用いて、スラグが完全に含水する状態まで過剰に散水を行う。その後、乾燥装置を用いてこの含水スラグを完全に乾燥させることにより、粒径が100mm以下程度に細粒化した脱硫剤を得る。但し、粒径は細かいほど好ましく、実質的に最大粒径が30mm以下が良く、5mm以下では更に良い。必要に応じては、散水・乾燥前後に機械的な粉砕を行っても良い。また、実プロセスにおいては、脱硫滓の搬送中に機械的な振動により脱硫滓の少なくとも一部が破砕される。この乾燥の際に用いる装置は、具体的には、乾燥機でも良いし、ロータリーキルン等の装置を用いて大掛かりに乾燥を行っても良く、要求される処理量等により、装置の大きさ等の設定が可能であり、冷却後のスラグ中の含水を十分に除去できれば、どのような装置・方法を用いても問題ない。このように再生処理を施した脱硫滓を脱硫剤として用いる。
【0074】
(ii)散水・攪拌処理による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を適度な散水及び撹拌処理によって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓に散水設備を用いて、均一に散水を行いながらシャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓が100℃程度の温度に冷却されるまで散水を行い、その後常温まで放置冷却することにより、粒径が100mm以下程度の細粒化した脱硫剤を得る。但し、粒径は細かいほど好ましく、実質的に最大粒径が30mm以下が良く、5mm以下では更に良い。必要に応じては、散水前後に機械的な粉砕を行っても良い。この冷却目標温度は、特定の温度に限定されるものではなく、要求される処理量等によりこの冷却目標温度の設定が可能である。この適量の散水と攪拌により、冷却時間が短縮できる。ただし、100℃以下まで散水してしまうと、乾燥処理が必要となるため、100℃以上で散水を止めることが望ましい。また、攪拌は、冷却速度向上と、均一な散水の為に行うものであり、この実施の頻度は要求される処理時間・量により変更可能なものであり、省略しても良い。
【0075】
(iii)放冷による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷することによって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓を可能な限り空気との接触面積が大きくなるような状態で放置し、シャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓を厚さ0.5m以下の状態に広げ、1日に1〜3回程度の撹拌を行うことにより、3日間で200℃以下の十分に細粒化した再生脱硫剤を得ることができる。この冷却時の厚さは、この厚みに限定されるものではなく、要求される処理時間・量、再生処理の為に使用可能な場所の面積等によりこの目標厚さの設定が可能である。また、撹拌は、冷却速度向上の為に行うものであり、この頻度も要求される処理時間・量により変更可能なものであり、処理時間・量に余裕がある場合には省略しても良い。さらに、脱硫滓の厚さを低くすることなく放置した場合にも同様に再生脱硫剤が得られる。
【0076】
これらの冷却破砕された脱硫滓粒子は、その最大粒径が100mm以下、好ましくは30mm以下、更に好ましくは5mmであるので、脱硫反応に関与するのに十分な表面積を確保することができ、微粉でなければ添加時には飛散も起こらずハンドリングの点でも有利である。また、必要に応じては、機械的な粉砕を併用しても良い。
【0077】
(iv)熱滓の篩い分け この例では、脱硫工程で発生した脱硫滓を900〜1200℃の熱滓のまま、篩(30mm×30mm〜100mm×100mm)にて篩い分けを行うことで、その際にスラグ成分も含有されている大径の地金と、小径の脱硫滓とに分離する。篩い分けの基準は、再度脱硫剤として使用する際の供給装置側の制約であり、通常は上記範囲が適当である。
【0078】
篩い分け後の小径の脱硫滓は、そのまま、自然冷却後に脱硫剤として再利用される。この時、篩い分けでもFe分(スラグ中T,Fe及びメタリックFe)が約20〜30%残存するが、次回脱硫使用時に溶銑側へ回収されるため、鉄歩留まりの向上となる。
【0079】
上記のスラグ成分を含む大径の地金が冷却される際には、スラグ成分中の未反応石灰分により、下式の反応
CaO+H2O=Ca(OH)2 CaO+CO2=CaCO3
所謂、‘ふける’反応が進行するため、脱硫滓中のスラグ成分が崩壊し、地金分とスラグ分とに分離出来る。この工程のあと再度上記篩い分けを行ってもよく、磁選作業を行わなくとも、効率的に脱硫滓を大塊の地金分(少量のスラグ分を含む)と再生脱硫剤(小径の地金分を含む)へと分離できる。この結果、脱硫滓中の未反応石灰分の約90%が再生脱硫剤として回収される。
【0080】
この際に使用する篩は、900〜1200℃の温度域にて使用可能なものであれば、何ら問題無く鉄製のものでも十分である。この篩は脱硫滓処理場にて、使用できるものであれば形状、仕様など制約されるものではない。また篩のメッシュは、再生後の脱硫剤として使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。
【0081】
以上の様に、脱硫滓を簡易な方法で、未反応の石灰分を露出させ、かつ、磁選することなしに脱硫滓中の大塊の地金をすることが出来、安価な石灰源として再生できる。更に、これらの篩い分け後に回収された脱硫滓を主原料とする再生脱硫剤は、依然として十分な脱硫能を有しており、複数回の再利用により、石灰を更に有効に利用できる。
【0082】
(V)発塵の抑制 乾燥状態の脱硫滓は非常に発塵しやすい。しかし、発生直後の脱硫滓は高温のため、塊状のものが大半であることに着目した。つまり、脱硫滓が発生した後、高温のうちに篩い分け等ハンドリングすれば、大きな発塵を生じることなく対応できる。この温度は高温であればあるほど抑制には有利である。実際に落下高3mで温度を変えスラグを落下させ、発塵量を調べたところ、600℃以下で発塵量が、急激に増加することがわかった。また、高温での篩い分けの付帯効果として、高温で脱硫滓を大気に効率よくさらすことで、脱硫滓の急激な冷却、およびそれによる粉化効果があり、後での冷却負荷も軽減できる。
【0083】
また、篩い分けに使用する設備に関しては、垂直に脱硫滓が落下する高さを小さくする設備で発塵抑制が可能である。この設備構成を図12に示す。
【0084】
上記設備は、斜めに配置された網(12)、その下に篩下が流れる斜板(14)、滑り台(16)からなる。ここでの特徴は脱硫滓供給装置(11)からの落下高さを抑制するため、網(12)と斜板(14)の間隔(13)を500mm以下に設置する。また、斜板(14)と滑り台(16)の間隔(15)を500mm以下とする。また、滑り台(16)から地表(18)への落下高さ(17)を1500mm以下とする設備構成をとることで発塵は大きく低減できる。これを利用して、簡単な設備で、しかも安価な運転費で乾燥脱硫滓を整粒し(たとえば、70mm以下)、しかも600℃以上の状態で篩い分けを実施することにより、その処理時の発塵も抑制できることを図ったものである。
【0085】
また、上記方法で整粒した脱硫滓を冷却後、再使用のためダンプに積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。これを、図13に示すような設備で積込む。可動かご部(21)が両側に開き、再生脱硫剤(22)を掴みとる。可動かご部(21)を閉じた状態で掴んだ再生脱硫剤をダンプ荷台(23)直上に持って行き、そこで可動部(21)を開放する。その際の落下高さ(24)を1.5m以内とすることで、発塵の発生を大幅に抑制しつつダンプへの積込が可能である。
【0086】
(vi)別の発塵の抑制 ところで、上述のごとく再生処理を行った乾燥状態の再生脱硫剤を再使用のためダンプ等の輸送用車に積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。しかし、この再生脱硫剤の輸送にトラックを用いず、吸引能力を有する車を用いることにより、粉塵の発生を最大限に低減できると共に、吸引の際に吸引口に篩目を用いれば、同時に再生脱硫剤の篩い分けが可能となり、低発塵かつ高効率のハンドリング・輸送が可能となる。
【0087】
具体的には、溶銑脱硫工程において発生した脱硫滓を冷却・粉砕した後の再生脱硫剤に対して、吸引能力を有する車に吸引用のホースを接続し、吸引により積込みを行う。この際に吸引口に篩い分けの為の篩目を有する治具を用いると、同時に必要な粒度までの篩い分けが可能である。ここで、吸引の際に吸引口に取り付ける治具は、必要な篩の度合い、つまりは要求される再生脱硫剤の粒度により使い分けることができる。
【0088】
さらに、吸引の際に篩い分けが不必要である場合には、吸引口に篩目を必要とせず、ホースのみで吸引することも有り得る。
【0089】
さらには、数十cmレベルの大塊のみを除去する必要がある場合には、図11に示したような治具の先端部に金棒で仕切りを付けただけの簡易な治具を用いて吸引することも可能である。その治具の1例を図11に示した。この治具は、ホースの径と同じ径を有する円筒(1)と、その先に円錐状に付けられた金棒(2)とからなる簡易なものである。これらの篩の網目のサイズや治具の形状については、とくに限定されるものではなく、必要な粒度、前処理工程などにより、決まるものである。さらに、吸引を促進する為に、これらの治具にエアー吸引用の口(3)を取り付けた。これらの吸引用の治具を用いて再生脱硫剤の吸引による積込み・篩い分けを同時に行う。
【0090】
上述のごとく処理して得られた冷却・破砕後の再生脱硫剤粒子は、単独で、または必要に応じて他の成分と組み合わせて本発明の脱硫剤を構成することができる。すなわち、本発明の脱硫剤は、上述した工程で得られた再生脱硫剤粒子のみにより構成してもよく、また場合によっては、石灰・蛍石等の他の成分と組み合わせて、本発明の脱硫剤を構成してもよい。この場合、他の成分の配合量は、再生脱硫剤中含有石灰成分量や必要脱硫率等に応じて適宜決定することができる。その好適な決定方法は後述する。
【0091】
(最適な脱硫剤の製造)
次に脱硫滓から得られた再生脱硫剤を用いて最適な脱硫剤を製造する方法を説明する。同一再生脱硫剤であっても投入原単位により脱硫率は大きく変化する。しかし再生脱硫剤中のCaO純分で整理すると、脱硫量(処理前S−処理後S)と良い相関が得られることがわかった。
【0092】
このことから、再生脱硫剤成分が変動しても、CaO純分を合わせて投入することで安定した脱硫率が得られる。つぎに、再生脱硫剤中のCaO%を確定することが必要になる。これについては、下記手段により解決することができる。脱硫滓は大きく分けると地金分とスラグ分に分けられるが、含有量が大きく変化するのは、地金分とスラグの割合であり、スラグ分中のCaOの割合はあまり変動しないことに着目した。つまり、再生脱硫剤中の地金分とスラグ分の割合を知れば結果的にCaO含有量を推定することができる。さらに、地金の比重は7程度とかなり大きいのに対し、スラグの比重は2〜3程度に過ぎない。
【0093】
このことから、地金含有量に比例し嵩密度が変化することがわかる。これを利用し使用直前に一定容積の再生脱硫剤を切出し、その質量を測ることは容易であり、それを投入量に反映することも簡単である。本発明はこれを利用して、簡単かつ迅速に、再生脱硫剤中のCaO含有量を精度よく推定し、脱硫に必要な再生脱硫剤量を求めることができる。
【0094】
脱硫滓から得られた脱硫剤を使用する最に、再生脱硫剤成分が変動しても、CaO純分を合わせて投入することで安定した脱硫率が得られることがわかっている。そのため、再生脱硫剤中のCaO純分が低い場合には、添加量が多くなる場合があり、溶銑温度の悪化、排出スラグ量の増加といった悪影響が生じる。
【0095】
そこで再生脱硫剤に石灰(CaO)または生石(炭酸カルシウムCaCO3)または消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)のいずれか、もしくは2種類以上を混合した脱硫剤を使用することにより、脱硫剤量を低減させることができる。炭酸カルシウム(CaCO3)および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)添加の場合には、下記の分解反応により溶銑中において微細なフラックスが生成し、反応界面積が増大することにより脱硫反応率が向上する。一方、これらの分解反応は吸熱反応であり、還元反応である脱硫反応を阻害する酸化物が生成することから、大量に添加した場合には溶銑温度の低下や脱硫反応を阻害することもあるため、その添加量は、40質量%以下にすることが必要である。
【0096】
また、炭酸カルシウム成分を添加することに関しては、石灰を焼成する際に焼成の程度を調節して石灰中に炭酸カルシウム成分を残留させた状態でも良い。この場合にも脱硫剤中の合計の炭酸カルシウム量が40質量%以下になる様に混合する。2種類以上混合する場合には、石灰中の炭酸カルシウム成分および生石および消石灰の合計添加量を脱硫剤全体の40質量%以下になるように混合すればよい。石灰の添加量に限定はなく、処理対象の溶銑の温度や必要とされる脱硫量・処理時間等により自由に添加量を調整可能である。
【0097】
さらに、これらを添加する場合には、予め所定量を混合して添加しても良いし、それぞれを別々に溶銑中に添加しても同じ効果が得られる。特に短時間に脱硫量を大きくする場合、処理対象の溶銑温度が低温の場合等ではCaOなどの添加はより有効である。
【0098】
また、この再生脱硫剤にC源を添加することにより、再生脱硫剤の脱硫能力をさらに向上させることができる。
【0099】
C源添加の場合には、C源は還元剤として働き下記の反応により溶銑中において脱硫が進行し、脱硫反応効率が向上する。
【0100】
CaO+S+C→CaS+CO (1)
また、C源の一部は溶銑中に溶解し、転炉での脱炭による昇温のための熱源を増加させることができる。大量に添加しすぎた場合には、上記の還元反応や溶銑中への溶解分以上の過剰なC源が残留してしまい、スラグ量の増加により操業の悪化および環境問題にも悪影響を及ぼす恐れがあるため、脱硫剤中のC源の添加量を30質量%以下になるように混合する方が望ましい。また、使用するC源によっては、硫黄成分が含まれているため、添加量によっては溶銑中のS濃度の増加に繋がる恐れもある。特に溶銑中への溶解量は溶銑温度によって変化するものであるため、使用するC源の種類、処理対象の溶銑の温度や溶銑中のS濃度および必要とされる脱硫量・処理時間等により添加量を調整することが可能である。添加するC源としては、特に限定されず、石炭、コークス、ピッチコークス、プラスチック等C源となるものなら、何れを用いても構わない。
【0101】
さらに、これを添加する場合には、予め所定量を再生脱硫剤に混合して添加しても良いし、それぞれを別々に溶銑中に添加しても同じ効果が得られる。C源は、塊状・粒状・粉状いずれの形でも添加することが可能であるが、溶銑中への溶解を容易にするためには1mm以下程度の粉状の方が好ましい。
【0102】
(溶銑の脱硫方法)
以上の様にして得られた再生脱硫剤と必要により添加する石灰源及び/又は炭素源とを含む脱硫剤を溶銑脱硫プロセスに適用する。溶銑脱硫方法の設備構成、手法に依存せずに前記の再生脱硫剤を適用できる。
【0103】
再生脱硫剤を使用する脱硫設備は、機械撹拌式(KR法)、インジェクション法(トピード)、転炉式のいずれでも可能である。主な溶銑の化学成分として、[質量%C]=3.5〜5.0、[質量%Si]=0〜0.3、[質量%S]=0.02〜0.05、[質量%P]=0.1〜0.15とし、温度が1250〜1450℃の範囲である。処理においては、5〜300tonの溶銑を精錬容器に装入する。脱硫剤配合は、再生脱硫剤と石灰分を予め混合しても、別々のホッパーから切出して添加することでもいずれでも可能であるが、操業の自由度を確保する上では、複数のホッパーを有することが有効である。いずれの精錬容器においても、効果的に浴面へ供給される方法であれば良く、溶銑中のSi,S,P濃度に応じて投入量を変更し、最大でも20kg/tの範囲であることが望ましい。
【0104】
次にこの発明の実施例を説明する。
【0105】
実施例1(KR法での溶銑予備処理で生じた脱硫滓を同一のKR法による溶銑脱硫プロセスの脱硫剤として再利用する実施例)
この実施例では、KR法による脱硫工程において発生した脱硫滓を最適な処理方法によって積極的に冷却・破砕を行った後、再びKR法による脱硫工程において脱硫剤として再利用する。再生処理に当たっては機械的粉砕・放冷・散水処理を適度に組み合わせ、具体的には、以下のような方法で再生処理をおこなった。
【0106】
KR法における溶銑予備処理において発生した脱硫滓を、熱滓時にまず機械的に粉砕を行う。具体的には、この粉砕はショベルなどの重機を用いることにより粉砕を行う事ができる。さらに、この熱滓に対して散水処理を行うことにより、冷却と崩壊を促進することが可能である。具体的には、冷却は、散水設備を用いた。
【0107】
また、散水を行わずに放置し、冷却を行ってもよい。この場合には、冷却を促進する為に、脱硫滓を可能な限り薄く広げ、大気との接触面積を大きくすることにより、冷却を促進し、さらには空気中の水蒸気や二酸化炭素との反応を促進することにより、石灰分の崩壊と炭酸カルシウム・水酸化カルシウムといった化合物の生成を促進するとよい。さらに、熱滓を粉砕した後、篩に通し、メタルなどの大塊をあらかじめ分離しておくことも可能である。
【0108】
こうした方法により生成した脱硫滓に積極的な処理を行うことによって脱硫滓の冷却と破砕を進めることにより、最大粒径30mm以下の再生脱硫剤粒子が得られた。必要に応じて、これをさらに機械粉砕してもよい。
【0109】
得られる再生脱硫剤の最大粒径が30mm以下であるので、脱硫反応に関与するのに十分な表面積を確保することができ、必要以上に微粉ではない為、処理中の粉塵を防止することができると同時に、KR法による再使用時には飛散による歩留まりの低下や巻込みの悪化をも改善することが可能である。
【0110】
また、上記に示したように積極的に冷却・崩壊を進めることにより、炭酸カルシウムや水酸化カルシウムといった化合物の生成を促進することができる。これらの化合物は、溶銑に添加された際の脱水・脱ガス反応を伴う分解により溶銑の撹拌が促進され、また分解による反応界面積が増加することにより、脱硫効率の向上が望める。
【0111】
上記の再生方法により、脱硫能力をもつ新界面を有した粒径30mm以下の脱硫剤が効率よく得られるものであり、これを実施例脱硫剤として用いた。
【0112】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。比較例の従来脱硫剤、および本実施例の再生剤の平均組成を表1に示す。
【0113】
この脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0114】
機械撹拌式脱硫装置による溶銑脱硫後の脱硫率を各脱硫剤について調べ、添加剤原単位(フラックス原単位)と脱硫率との関係を図3に示す。図3のグラフ中、曲線aは本発明の再生脱硫剤、曲線bは比較例の従来脱硫剤についての結果である。
【0115】
図3のグラフから、脱硫剤原単位が等しい場合、再生脱硫剤は比較脱硫剤の50〜90%程度の脱硫率を示していることがわかる。さらに、これを石灰分原単位において比較を行ったものが図4のグラフである。このグラフから、再生脱硫剤はその含有石灰分で比較すると、比較脱硫剤とほぼ同等の脱硫能力を有しているといえる。よって再生脱硫剤を用いた処理においても、添加する再生脱硫剤中の石灰分原単位を脱硫反応に必要な石灰量と同等量に見積もれば、石灰を用いた脱硫処理と同程度の脱硫効果が見込めると考えられる。
【0116】
表3に本プロセス導入前後の使用石灰量変化を示す。脱硫滓を再利用することにより確実に石灰使用量は低下しており導入前と比較して約40%の処理コスト削減を実現した。
【0117】
表4に本プロセス導入前後のスラグ発生量変化を示す。スラグ発生量で4000t/月の減少が図られており、脱硫コストの削減だけでなくスラグ量の低減により環境問題をも解決するプロセスであることが証明された。
【0118】
この実施例によれば、脱硫コストが低減でき、かつ脱硫スラグの再利用が可能となり、加えてスラグ量が減少して環境問題の解決にもつながるという顕著な効果が得られ、その工業的価値は大きい。
【0119】
実施例2(再利用脱硫滓の脱硫率と脱硫滓の再利用回数に関する実施例)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷または散水処理によって冷却・破砕後、同一プロセスにおいて脱硫剤として再利用した。これは、機械的な粉砕を行わずに粒径100mm以下、200℃以下の再生脱硫剤が得られるものであり、これを実施例の脱硫剤として用いた。さらに、再生脱硫剤使用し脱硫を実施した後、そのスラグを再度回収し、上記方法で100mm以下、温度200℃以下とし、実施例の脱硫剤として再度使用した。
【0120】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表1に示す(各表は明細書の最後にまとめました)。
【0121】
この脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0122】
図1は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、図1の1回目使用の再生脱硫剤、2回目使用の再生脱硫剤は比較脱硫剤の80%以上の脱硫能力を有していることがわかる。よって2回目使用の再生脱硫剤を用いた処理においても、添加する石灰原単位を適宜増加すれば、石灰を用いた脱硫処理と同程度の脱硫効果が見込める。
【0123】
図2に本プロセス導入前後の脱硫剤使用量変化を脱硫剤リサイクル回数と使用再生脱硫剤量変化を示す。脱硫剤多数回リサイクルにより再生脱硫剤使用量は大幅に低下しており、3回程度リサイクルすれば導入前と比較して約75%の脱硫剤使用量の削減が実現した。同時に発生するスラグ量も大幅に減少しスラグ量の低減により環境問題にも有効なプロセスであることが証明された。
【0124】
このように、この実施例から本発明の脱硫剤を用いることにより脱硫コストが低減でき、且つ、脱硫滓の多数回再利用が可能となり、廃棄物量が減少し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0125】
実施例3(散水処理による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、乾燥処理を行うことにより脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓に対して散水設備を用いて、スラグが完全に含水する状態まで過剰に散水を行う。その後、乾燥装置を用いてこの含水スラグを完全に乾燥させることにより、粒径が5mm以下程度の十分に細粒化した脱硫剤を得た。この乾燥の際に用いる装置は、具体的には、乾燥機でも良いし、ロータリーキルン等の装置を用いて大掛かりに乾燥を行っても良く、要求される処理量等により、装置の大きさ等の設定が可能であり、冷却後のスラグ中の含水を十分に除去できれば、どのような装置・方法を用いても問題ない。
【0126】
このように再生処理を施した再生脱硫剤を実施例脱硫剤として用いた。
【0127】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表5に示す。
【0128】
この再生脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0129】
図5は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、再生脱硫剤(実線表示)は比較脱硫剤(破線表示)の7割程度の脱硫能力を有していることがわかる。
【0130】
実施例4(散水処理による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓に散水設備を用いて、均一に散水を行いながらシャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓が150℃〜80℃程度の温度に冷却されるまで散水を行い、その後常温まで放置冷却することにより、粒径が5mm以下程度の十分に細粒化した脱硫剤を得た。この冷却目標温度は、ある温度に限定されるものではなく、要求される処理量等によりこの冷却目標温度の設定が可能である。これを実施例脱硫剤として用いた。
【0131】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表7に示す。
【0132】
この脱硫滓剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0133】
図9は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、150℃までの散水により再生処理した再生脱硫剤は比較脱硫剤のほぼ同等の脱硫能力を有していることがわかる。
【0134】
しかし、同じ散水処理を行った再生脱硫剤においても100℃までで散水をやめた場合と100℃以下まで散水を行った場合では、脱硫能力に違いがある。これは、図7に示した通り100℃以下まで冷却を行うと再生脱硫剤中に生成する水酸化カルシウムの量が著しく増加しており、この生成量が増加しすぎることにより、脱硫に悪影響を及ぼしているものと考えられる。
【0135】
なお、散水終了温度と40Tの脱硫滓を常温まで冷却するのに必要な時間との関係を図6に示した。高い温度で終了する程、常温までの冷却に時間を要している。
【0136】
この実施例の脱硫滓処理方法を用いることにより効率的な脱硫滓の処理を行うことができ、脱硫滓再生に要する時間とコストが低減でき、かつ、それにより大量の脱硫滓の再利用が可能となり、スラグ量が激減し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0137】
実施例5(放冷による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷することによって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓を可能な限り空気との接触面積が大きくなるような状態で放置し、シャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓を厚さ0.5m以下の状態に広げ、1日に1〜3回程度の撹拌を行うことにより、3日間で200℃以下の十分に細粒化した再生脱硫剤を得ることができた。この冷却時の厚みは、この厚みに限定されるものではなく、要求される処理時間・量、再生処理の為に使用可能な場所の面積等によりこの目標厚さの設定が可能である。また、撹拌は、冷却速度向上の為に行うものであり、この頻度も要求される処理時間・量により変更可能なものであり、処理時間・量に余裕がある場合には省略しても良い。これを実施例脱硫剤として用いた。
【0138】
さらに、脱硫滓の厚みを低くすることなく放置した場合にも同様に再生脱硫剤が得られる。これについても実施例脱硫剤として示した。
【0139】
また、冷却方法に関する比較として、機械的に粉砕を行った脱硫滓(機械粉砕剤)を使用した。
【0140】
さらに、脱硫挙動の比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表8に示す。
【0141】
この脱硫滓剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0142】
図10は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、放冷により再生処理した再生脱硫剤は比較脱硫剤のほぼ同等の脱硫能力を有していることがわかる。
【0143】
また、同じ非散水処理においても、機械粉砕した方が、放冷処理した再生脱硫剤よりも、脱硫能力が劣ることがわかる。放冷により処理を行った再生脱硫剤中には、機械的に粉砕した再生脱硫剤とは異なり、表8に示したようにいずれも数%の炭酸カルシウムが生成しており、脱硫処理中においてこの炭酸カルシウムの分解が溶銑の撹拌を促進し、また分解による反応界面積の増加により脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0144】
以上の実施例3〜5に示した脱硫滓の再生方法の違いによる、再生脱硫剤の脱硫能力と再生処理に要する時間の比較を以下に示す。
【0145】
同じ再生脱硫剤を用いた場合においても機械的に粉砕を行ったものよりも散水により粉砕したものの(150℃散水、散水)方が高い脱硫能力を有していることがわかる。これは、散水により粉砕した再生脱硫剤中には数%の炭酸カルシウムが生成しており、脱硫処理中においてこの炭酸カルシウムの分解が溶銑の撹拌を促進し、また分解による反応界面積の増加により脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0146】
しかし、同じ散水処理を行った再生脱硫剤においても散水を制御した場合(150℃散水)と含水状態まで散水(散水)を行った場合では、脱硫能力に違いがある。これは、図7に示した通り100℃以下まで冷却を行うと再生された脱硫滓中に生成する水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の量が著しく増加しており、この生成量が増加しすぎることにより、脱硫に悪影響を及ぼしているものと考えられる。
【0147】
また表6は脱硫滓の処理条件および脱硫滓を約40T再生処理するのに要した時間を比較したものである。この表から散水処理した脱硫滓が非散水で放置した脱硫滓と比較して非常に早い時間で冷却が行われていることがわかる。また、散水による処理の場合、この冷却に要する時間内で同時に粉砕も完了している。さらに、散水量を制御した場合、散水処理後の乾燥処理が不必要であり、粉砕や乾燥にかかる設備や費用さらに時間を節約できる。また、処理時に散水することにより、処理中の脱硫滓からの発塵をも防止できる。
【0148】
一方、非散水放冷による処理において、脱硫滓厚を1.5mとした場合には処理時間が170時間必要であるのに対して、厚さを0.4mとした場合には処理時間が70時間と大幅に減少している。なお、それぞれの処理時の厚さにおける処理時間と温度の関係を図8に示した(実線は厚さ0.4m、破線は厚さ1.5m)。この厚さは、薄くするほど処理速度を向上させることが可能であるが、必要とされる冷却速度や使用可能な冷却場所面積等により決定され得るものである。本発明における非散水での処理方法においては、散水処理に比べ処理時間はやや必要となるが、散水設備は不要である。また、散水処理においては、大量処理の際に、均一な散水が困難である為、含水スラグが生じる恐れがあり、これを生成しないように制御するのが困難である。含水スラグは、再生処理後の取り扱いが困難で、かつ投入時にフレームが発生する、脱硫能力が悪い等の問題点がある。一方、非散水放冷処理方法においては、大量処理の際にも均一な処理が容易であり、かつ、冷却中にスラグ中の石灰分が“ふける”(すなわち、スラグ中の石灰分の一部が、放冷中に空気中の水分や二酸化炭素と反応し、体積変化を生じ粉化する)ことにより、時間の経過に伴いスラグ粒度が減少していく為、冷却処理後の機械的な粉砕を全く必要としない。さらには、スラグ中の石灰分の一部は、放冷中に空気中の二酸化炭素と反応し、脱硫反応効率向上に効果のある炭酸カルシウムを生成する。
【0149】
以上説明のように、再生処理する脱硫滓量や所有する設備等の条件により、実施例の脱硫滓処理方法を効果的に用いることにより安価で効率的な脱硫滓の処理を行うことができ、脱硫滓再生に要する時間とコストが低減でき、かつ、それにより大量の脱硫滓の再利用が可能となり、スラグ量が激減し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0150】
実施例6(地金分離後の脱硫滓の篩い分け)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を900〜1200℃の熱滓のまま□70mmの網目の篩い分け装置12にて篩い分けを行い、未反応石灰分を多く含有する小径の脱硫滓と、大径の地金とにまず分離する。篩は、900〜1200℃の温度域にて使用可能なものであれば、何ら問題なく鉄製のもので十分である。この篩は脱硫滓処理場にて、使用できるものであれば形状、仕様など制約されるものではない。また篩のメッシュは、脱硫剤として使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。
【0151】
篩い分けられた小径の脱硫滓は冷却後、再生脱硫剤として、脱硫設備上の供給装置へ搬送され、使用される。
【0152】
一方残存した地金は、上記の方法を用いることで、簡易に回収でき、しかも、溶銑予備処理工程での鉄源として再度使用することも出来るため、鉄歩留まりの向上に対して大きく寄与できるメリットもある。
【0153】
この例では、表9に示すような条件において、脱硫滓の再生を行った。篩は、水平面に対して角度を持って設置し、その上方により熱滓を落下させることで、篩い分けを行った。その再生過程での脱硫剤マスバランスを表10に示す。脱硫処理にて生じた脱硫滓に対して、篩い分けを行っても、脱硫滓中約90%のCaOが回収されることが確認され、かつ地金分が有効に除去されている。すなわち、本発明による方法を用いることで、磁選分離を行わずとも、有効に脱硫滓中のスラグ分の回収が可能であることが証明された。
【0154】
この再生脱硫剤と石灰を脱硫処理に適用して、脱硫挙動の調査を行った。一部水準に関しては、再生脱硫剤と石灰の混合は、予め混合してホッパーへ装入し、切出した場合と、2系統のホッパーより両者を切出した場合の双方にて行った。表17には、従来脱硫剤として、石灰系の脱硫剤の平均組成も合わせて示す。これらの脱硫剤を表11に示す試験条件にて、機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑脱硫を行った。
【0155】
図16には、石灰分原単位と脱硫率の関係を示す。再生脱硫剤中の石灰分相当濃度が比較例より少ないため、応じて脱硫剤投入量は増加するものの、脱硫能としては比較例と同等であり、本発明の有効性が証明された。
【0156】
次に発塵への脱硫滓温度の影響をみるため、熱滓発生後30分〜4時間の範囲で放置し、前述した、篩い分け装置12を通し、発塵状態、温度変化を調べた。温度を変化させ篩い分けをした場合の発塵状況を表14に示す。篩い分け前温度で600℃を境として、発塵状況が大きく変化することがわかった。これを、利用し、集塵機なしでも篩い分け等の作業が可能である。また篩い分け作業での温度降下を測定した結果が表15である。篩い分け時の温度降下は約100℃程度あり、その分冷却必要時間は短縮できる。また、表16に本発明での篩い分け設備と、図12の斜板(14)、滑り台(16)のない篩い分け設備での発塵状況を示す。
【0157】
本発明の篩い分けにより、600℃以下の発塵の発生のしやすい脱硫滓でも、集塵機なしで、篩い分け処理を行うことができる。この実施例の方法を用いることにより脱硫滓リサイクルのための乾燥脱硫滓整粒設備が大幅に簡略化でき、且つ、篩い分け時の発塵も簡単な設備で対応できる。また、篩い分け時に外気と効率よく接触することで冷却促進にもつながる。さらに本発明で述べられている、積込方法でダンプに積込むことで集塵機なしで発塵を抑制しながら積込が可能である。
【0158】
この実施例の処理を行うことで、安価でかつ効率的な脱硫剤の処理が可能であり、従来処理を行う脱硫滓量が減少するため、大幅なコスト低減が達成される。又、大量の脱硫滓の再生及び再利用が可能となり、更にスラグ量が低減し、環境問題の解決にもつながる顕著な効果が得られる。
【0159】
実施例7(再生脱硫剤のハンドリング)
再生処理を行った乾燥状態の脱硫剤を再使用のためダンプ等の輸送用車に積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。しかし、この再生脱硫剤の輸送にトラックを用いず、吸引能力を有する車を用いることにより、粉塵の発生を最大限に低減できると共に、吸引の際に吸引口に篩目を用いれば、同時に再生剤の篩い分けが可能となり、低発塵かつ高効率のハンドリング・輸送が可能となる。
【0160】
具体的には、溶銑脱硫工程において発生した脱硫滓を冷却・粉砕した後の再生脱硫剤に対して、吸引能力を有する車に吸引用のホースを接続し、吸引により積込みを行う。この際に吸引口に篩い分けの為の篩目を有する治具を用いると、同時に必要な粒度までの篩い分けが可能である。ここで、吸引の際に吸引口に取り付ける治具は、必要な篩の度合い、つまりは要求される再生滓の粒度により使い分けることができる。
【0161】
さらに、吸引の際に篩い分けが不必要である場合には、吸引口に篩目を必要とせず、ホースのみで吸引することも有り得る。
【0162】
さらには、数十cmレベルの大塊のみを除去する必要がある場合には、先に延べた図11に示したような治具の先端部に金棒で仕切りを付けただけの簡易な治具を用いて再生脱硫剤の吸引による積め込み、・篩い分けを同時に行った。この実施例では、機械的撹拌脱硫工程において発生した脱硫滓を用いた。これを、建屋内で約6日間空冷放置し、その途中で冷却を早めるために、3回/日程度の撹拌を行った。
【0163】
今回、吸引に用いたホースの径は直径15cm、吸引の際に吸引口に取り付ける治具11としては、30mm、5mm目の網2種類と円錐型治具を用いた。これらの治具には、すべてエアー吸引口を有している。さらには、治具を用いずにホースのみで吸引を行った例も比較例として行った。また、使用した吸引車の仕様を表12に示した。
【0164】
先に述べた種々の吸引口種を用いて再生脱硫剤の吸引を行った際の処理量、吸引能力を示した結果が表13である。これらの結果から、どのような吸引口種を用いた場合においても、篩い分けを同時に行いながら1t/min.程度の効率の良い積込みが可能であるといえる。また、吸引時に再生脱硫剤と外気との積極的な接触により、処理前後で約30℃前後の温度降下が確認されている。
【0165】
さらに、篩い分けられた大塊及び篩上のスラグの大半は地金であり、これらは別途使用が可能である。
【0166】
本発明のハンドリング方法により、微粉化された発塵しやすい再生脱硫剤でも、集塵機なしで、篩い分け処理と輸送車への積込み作業を同時に効率良く行えることが確認された。
【0167】
この実施例では、脱硫滓リサイクルのための脱硫剤処理方法において、吸引能力を持つ輸送車を用いることで、集塵機なしで発塵を最大限に制御しながらの積込みが可能となった。さらには、吸引時に篩い分けを同時に行うことにより、効率良く再生脱硫剤の処理が可能となった。また、篩い分け、吸引時に外気や吸引の空気と効率よく接触することで冷却促進にもつながるという効果がある。
【0168】
実施例8(脱硫滓中のCaO含有量の測定)
この実施例では、機械的撹拌脱硫工程において発生した脱硫滓を用いた。これを、□70mmの網目の金網からなる、篩い分け装置を通した。
【0169】
この整粒された再生脱硫剤を機械撹拌式脱硫設備で再使用した結果を示す。CaO純分と脱硫量ΔS(処理前硫黄量(S)−処理後硫黄量(S))の関係を図14に示す。CaO純分で整理することにより、脱硫量との間に明確な相関が得られることがわかった。これを利用して、処理前硫黄量(S)ごとに脱硫剤投入量を容易に決定し、安定した脱硫率を得ることができる。
【0170】
また、嵩密度とCaO質量%の関係を見たのが図15である。CaOの増加とともに嵩密度が減少することがわかる。これを利用して、嵩密度を測定することで、再生脱硫剤中のCaO質量%を推定することが可能である。
【0171】
この実施例に撚れば、脱硫滓を機械撹拌式脱硫設備で再使用する場合、必要な脱硫剤量を簡単かつ迅速に決定し、また、安定した脱硫率を得ることができた。
【0172】
実施例9(石灰源(CaO,CaCO3,Ca(OH)2)の添加による脱硫効率の向上に関する実施例)
脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷または散水処理によって冷却・粉砕した脱硫剤(再生脱硫剤と標記)に、上記の脱硫剤の1種類以上を添加して実施例の脱硫剤として使用した。比較として再生脱硫剤のみを使用した場合も実施した。添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量、を表18に示す。
【0173】
これらの脱硫剤を表19に示す条件で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0174】
図19は各水準における石灰分原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰分原単位が等しい場合、図19の(a)再生脱硫剤のみを用いた場合と比較して(d)再生脱硫剤+石灰を使用した場合には脱硫効率が若干上昇しており、さらに(b)再生脱硫剤+CaCO3、(c)再生脱硫剤+CaCO3+Ca(OH)2、(e)再生脱硫剤+石灰+CaCO3+Ca(OH)2の場合には、CaCO3とCa(OH)2の添加量の増加と共に脱硫効率が向上していくことがわかる。これは、先に述べたように脱硫処理中においてこのCaCO3やCa(OH)2の分解による反応界面積の増加、または分解により溶銑の撹拌が促進され、脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0175】
実施例において使用した組成の脱硫剤中の石灰分を8kg−CaO/Tとした場合の再生脱硫剤中に含まれるCaO比率、添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量、合計脱硫剤量を表20に示す。同量の石灰分を必要とした場合に、再生脱硫剤を単独で用いた際には再生脱硫剤中の石灰純分が少ない場合に多くの脱硫剤量を必要とするが、これに石灰および炭酸カルシウムや水酸化カルシウムのような脱硫剤を添加することにより、脱硫効率の向上と使用脱硫剤量の低減が可能となり、処理後に排出されるスラグ量の低減にもつながる。さらに、処理溶銑の状態や必要とされる処理条件によりこの脱硫剤の組成は自由に調整できるものであり、これらの脱硫剤は混合せずに別々に溶銑に添加した場合においても同様の効果を発揮し得るものである。
【0176】
実施例10(各種炭素源の添加による脱硫効率の向上に関する実施例)
脱硫工程において発生した脱硫剤を放冷または散水処理によって冷却・粉砕した脱硫剤(再生脱硫剤と標記)に、様々なC源を添加して実施例の脱硫剤として使用した。比較として再生脱硫剤のみを使用した場合も実施した。添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量を表21に示す。なお、C源は1mm以下の粉状として使用した。
【0177】
これらの脱硫剤を表22に示す条件で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0178】
図20は各水準における石灰分原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰分原単位が等しい場合、図20の(a)再生脱硫剤のみを用いた場合と比較して(b)〜(e)再生脱硫剤+C源を使用した場合には、C源の添加量の増加と共に脱硫効率が向上していくことがわかる。また、C源の種類や添加の方法によらず、同等の効果が得られることが確認できた。これは、先に述べたように脱硫処理中においてC源が還元剤として働き、脱硫効率が向上したためであると考えられる。また、C源の一部は溶銑中に溶解しており、実施例の条件において、いずれの場合にも溶銑中のC濃度が0.1〜0.5%程度増加していた。
【0179】
このように無煙炭やコークス等のC源を添加することにより、脱硫効率の向上が可能となり、処理後に排出されるスラグ量の低減にもつながる。ここで使用するC源としては、石炭、コークス、ピッチコークス、さらにはプラスチック等C源となるものならば何でも良い。さらに、処理溶銑の状態や必要とされる処理条件によりこの脱硫剤の組成は自由に調整できるものであり、これらの脱硫剤は混合せず別々に溶銑に添加した場合においても同様の効果を発揮し得るものである。
【0180】
産業上の利用可能性 以上説明したように本発明によれば、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を有効に再利用し、それによって溶銑脱硫コストの削減とスラグ発生量の低減とを図ることを可能にした溶銑の脱硫方法が提供される。また本発明によれば、スラグの発生量を低減した溶銑脱硫処理を低コストで行うための脱硫剤が提供される。本発明を用いることにより脱硫コストが低減でき、かつ脱硫スラグの再利用が可能となり、加えてスラグ量が減少して環境問題の解決にもつながるという顕著な効果が得られ、その工業的価値は大きい。
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
【0185】
【表6】
【0186】
【表7】
【0187】
【表8】
【0188】
【表9】
【0189】
【表10】
【0190】
【表11】
【0191】
【表12】
【0192】
【表13】
【0193】
【表14】
【0194】
【表15】
【0195】
【表16】
【0196】
【表17】
【0197】
【表18】
【0198】
【表19】
【0199】
【表20】
【0200】
【表21】
【0201】
【表22】
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の1回リサイクル再生脱硫剤、2回リサイクル再生脱硫剤及び比較としての従来石灰分脱硫剤の原単位と脱硫率との関係を表す図。
【図2】本発明により、複数回のスラグのリサイクルを行った場合の、脱硫滓のリサイクル回数と使用脱硫剤の原単位との関係を表す図。
【図3】本発明脱硫剤および比較として従来脱硫剤の脱硫剤原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図4】本発明脱硫剤および比較として従来脱硫剤の石灰分原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図5】本発明方法により処理された再生脱硫剤および比較として従来脱硫剤の原単位と脱硫率との関係を表す図。
【図6】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、散水終了時のスラグ温度と常温までの冷却に要する時間との関係を表す図。
【図7】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、散水終了時の温度と再生脱硫剤中のCa(OH)2生成量との関係を表す図。
【図8】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、それぞれのスラグ厚における冷却時間とスラグ温度との関係を表す図。
【図9】本発明方法により処理された再生脱硫剤及び比較として従来脱硫剤の原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図10】本発明により再生処理された再生脱硫剤と比較例として従来脱硫剤における原単位と脱硫率の関係を示す図。
【図11】本発明の篩い分け冶具の一例を示す図。
【図12】本発明での篩い分け設備を示す図。
【図13A】再生脱硫剤詰め込み装置の要部説明図、
【図13B】再生脱硫剤詰め込み装置の全体概略図。
【図14】脱硫剤中のCaO純分と脱硫量(処理前硫黄量(S)−処理後硫黄量(S))の関係を示す図。
【図15】脱硫滓の嵩密度とCaO質量%の関係を示す図。
【図16】本発明により再生処理された再生脱硫剤と石灰を混合した脱硫剤と比較例として従来脱硫剤における原単位と脱硫率の関係を示す図。
【図17A】実機によるスラグ処理パターンを示す説明図。
【図17B】図17Aのスラグ処理パターンの一例を、従来のスラグ処理パターンとともに示す図。
【図18】機械撹拌式溶銑脱硫処理方法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合と、インジェクション法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合について、投入石灰に対して脱硫に有効利用された石灰の割合の比較を示す図。
【図19】脱硫各水準における石灰分原単位と脱硫率との関係を示す図。
【図20】脱硫各水準における石灰分原単位と脱硫率との関係を示す図。
【図21】機械撹拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓の凝集物をSEMで観察した写真及びそれのS元素をライン分析した結果を示す図。
【図22】攪拌式溶銑脱硫滓とインジェクション法による溶銑脱硫滓との違いを模式的に示す。
【図23】溶銑予備処理の一例を示す。
【図24】図23の脱S設備の一例を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械攪拌式溶銑予備処理工程で発生した脱硫滓(KR滓)を有効に再利用する溶銑の脱硫剤の製造方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼の品質に悪影響を及ぼす硫黄(S)が高濃度で含まれているものの、転炉工程では、不純物の酸化除去を目的としているために、一部気化脱硫するものを除いて溶鋼の脱硫は見込めない。そこで、要求される品質に応じて、高炉と転炉の間の工程で種々の溶銑予備処理や転炉の後工程で溶鋼脱硫が行われている。図23は溶銑予備処理の一例を示す。図示する例では、高炉からの溶銑を脱Si処理、脱S処理、脱P処理を順に行なった後、転炉に入れて脱C処理している。
【0003】
脱硫に際しては、石灰系の脱硫剤が多く用いられており、この場合の脱硫反応は以下に示される反応式にしたがって進行する。
【0004】
CaO+S→CaS+O
こうした脱硫反応はCaO単体では高融点であり、工業的には一般的に蛍石やアルミナ系造滓剤等が石灰の滓化促進用に用いられている。しかしながら、これらの造滓剤は一般に高価であり、こうした造滓剤の配合率を増やすことは脱硫剤コストの増大につながる。さらに、造滓剤の配合率を高めた場合には脱硫剤中の石灰濃度が低下して反応効果が低下することが懸念される。
【0005】
また、高炉や転炉などの乾式精錬工程で生成するスラグは、メタル分を除去した後、高炉セメント、コンクリート材、肥料、あるいは道路材などに再利用されている。しかしながら、脱硫滓はCaO分が高く、風化しやすい特徴から、前処理に多くの手間をかけてセメント原料にするしかない。しかも、その処理には多くのコストがかかっているのが現状である。
【0006】
なお、特開平4−120209号公報には転炉滓を造滓剤として利用する技術が記載されている。ここでは、転炉滓の粒径は3〜50mmに規定され、この範囲の粒径で充分な脱燐効果が得られていることが述べられている。しかしながら、脱硫を主目的としたものではなく、脱硫に関しては何等言及されていない。
【0007】
また、特開平10−30115号公報には、冷却・破砕し鉄分を分離・回収した転炉滓に石灰、蛍石を配合し、脱硫剤として利用する技術が開示されているものの、上述した技術と同様に脱硫滓を再利用することに関しては何等言及されていない。
【0008】
脱硫滓のリサイクルの例としては、未反応石灰分の多いインジェクション脱硫滓を、石灰利用効率に優れた機械攪拌式溶銑脱硫処理に再利用するプロセスが報告されている(住友金属Vol.45−3(1993)p.52〜58)。しかし、ここに報告されている処理(以下、脱硫滓リサイクルの先行技術という)は、後述するように石灰の利用効率向上に限界があり、また添加方法・撹拌方法の異なるプロセスへの再利用であるため、複数のプロセスをもたない場合には適用できない。
【0009】
なお、機械撹拌式溶銑脱硫装置は、インペラー(羽根車)を溶銑中に浸漬し回転させ、溶銑上部より脱硫剤(通常は石灰)を添加し、インペラーの回転による撹拌によって溶銑の脱硫をする装置であり、この装置を用いた溶銑脱硫処理としては、通称KR法とよばれるものがある。図24は脱S設備の一例を示す。
【0010】
上述したように、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓は、有効に再利用されておらず、また溶銑の脱硫に当たっては改善を要する点が多く存在しているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、KR脱硫工程において利用される脱硫剤の利用効率を調べた。図18は、機械撹拌式溶銑脱硫処理方法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合と、インジェクション法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫滓として使用する場合について、投入石灰に対して脱硫に有効利用された石灰の割合の比較を示す図である。図18に示すように、KR脱硫工程の一回の使用において利用される脱硫剤の利用効率は7%程度であり、残りの93%は未反応で残存しているという事実が見出された。従って、この知見から発明者らは、KR脱硫処理工程で使用された後の脱硫剤は、次処理の脱硫に寄与する石灰分をまだ93%程度含有しているので、この石灰分を再利用できるようにすれば、脱硫剤の安価な石灰源として利用することが期待できると考えた。
【0012】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を有効に再利用し、それによって溶銑脱硫コストの削減とスラグ発生量の低減とを図ることを可能にした溶銑の脱硫方法に用いる、脱硫滓の輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこの目的を達成すべくなされたもので、 本発明に係る溶銑用脱硫剤の製造方法は以下の工程を備えている。
【0014】
1 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう溶銑用脱硫剤の製造方法。
【0015】
2 機械攪拌式溶銑処理に用いられる溶銑用脱硫剤の製造方法であって、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう方法。
【0016】
3 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓を用意する工程と、用意された脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう工程とを備えた方法。
【0017】
4 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離することを含んでいる方法。
【0018】
5 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を空冷すること及び/又は脱硫滓に機械的なエネルギーを付与することにより、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離する方法。
【0019】
6 脱硫滓の冷却は、空冷及び水冷の群から選択された一種または二種である方法。
【0020】
7 空冷は、自然冷却及び強制冷却の群から選択された一種又は二種である方法。
【0021】
8 水冷により新しい界面を創出する処理を行う工程は、脱硫滓に散水する工程を備え、この散水工程は、散水終了時の脱硫滓温度を100℃以上に維持するようにその散水量を制御して、散水による冷却のみで脱硫滓凝縮物の分離及び/又は脱硫滓粒子の破砕を可能とした方法。
【0022】
9 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を水冷する工程と、水冷により得られた再生脱硫剤を乾燥する工程とを備えた方法。
【0023】
10 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を冷却する工程と、脱硫滓および再生脱硫剤の粒度を調整する工程とを備えている製造方法。
【0024】
11 再生脱硫剤を篩で粒度調整する工程は、温度600℃以上でおこなう製造方法。
【0025】
12 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓又は再生脱硫剤中に含有されている地金を磁選除去する処理、脱硫滓又は再生脱硫剤中の大塊を除去して粒径を100mm以下にする処理、及び脱硫滓又は再生脱硫剤の温度を200℃以下とする処理からなる群から選択された一種または二種以上の処理を行なう工程を備えている方法。
【0026】
13 新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓の粒径を100mm以下、かつ、温度を200℃以下とする工程を備えている方法。
【0027】
14 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、開閉可能な一対の可動かご部を用いて輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【0028】
15 輸送車を用いて輸送する工程の前またはこの工程と同時に冷却破砕後の再生脱硫剤を篩い分けて大塊を除去する工程を備えた方法。
【0029】
16 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、再生脱硫剤吸引能力を有する輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【0030】
17 再生脱硫剤を積み込む工程は、輸送車への再生脱硫剤の落下高さを1.5m以内に調整しておこなう方法。
【0031】
18 破砕された再生脱硫剤を篩い分ける篩目を有する装置本体と、この装置本体に取り付けられ、装置本体への再生脱硫剤の吸引を促進するエアー吸引用ホースとを備えた、再生脱硫剤の篩い分け装置。
【0032】
19 斜めに配置された篩目を有する部材と、この部材の下に斜めに配置され、篩下が通る斜め板と、斜め板からの篩下が落下して通る滑り台とを備え、篩目を有する部材と斜め板との間隔、及び斜め板と滑り台のつなぎ部分の垂直落下高さを500mm以下とし、滑り台から地表への落下高さを1500mm以下にするように配置されている再生脱硫剤の篩い分け装置。
【0033】
20 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0034】
21 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする、機械攪拌式溶銑脱硫処理で用いられる溶銑用脱硫剤。
【0035】
22 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0036】
23 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤粒子の凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【0037】
24 最大粒径が100mm以下である溶銑用脱硫剤。
【0038】
25 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とし、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種をさらに含む、溶銑用脱硫剤。
【0039】
26 石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種は、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と混合されており、この混合物を溶銑に添加するようになっている溶銑用脱硫剤。
【0040】
27 石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種と、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤とは分離されて、溶銑に別々に添加するようになっている溶銑用脱硫剤。
【0041】
28 石灰源は、石灰、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの群から選択された一種または二種以上である溶銑用脱硫剤。
【0042】
29 石灰源のうち炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの総和は、溶銑用脱硫剤全体に対して40質量%以下含有する溶銑用脱硫剤。
【0043】
30 炭素源は、溶銑用脱硫剤全体に対して30質量%以下含有する溶銑用脱硫剤。
【0044】
31 炭素源は、1mm以下の粉状である溶銑用脱硫剤。
【0045】
32 炭素源は、石炭、コークス及びピッチからなる群から選択された一種または二種以上である溶銑用脱硫剤。
【0046】
33 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0047】
34 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を機械攪拌式溶銑脱硫処理により脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0048】
35 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0049】
36 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【0050】
37 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0051】
38 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを混合し、この混合物を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0052】
39 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを別々に溶銑中に添加して溶銑を脱硫する方法。
【0053】
40 石灰源を添加する際に、所定のCaO純分となるように混合割合を調整する方法。
【0054】
41 機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤の嵩密度を算出する工程と、算出された嵩密度から再生脱硫剤のCaO純分を算定する工程と、算定された再生脱硫剤のCaO純分を基準として、破砕された再生脱硫剤と石灰源との添加割合を調整する工程とを備えた方法。
【0055】
42 炭素源を添加する際に、炭素源の粒径を1mm以下に調整する工程を備えた方法。
【0056】
(定義)
脱硫剤:脱硫のために使用するフラックス全般をさす。新しい界面を創出する処理を行なった後の再生されたスラグも含む。
【0057】
再生脱硫剤:脱硫剤の中で特に新しい界面を創出する処理を行なった後の再生されたスラグからなるものであって、このスラグには地金などが含まれうる。
【0058】
脱硫滓:CaO分、他のスラグ分、地金分全てを含む脱硫スラグをさし、新しい界面を創出する処理を行なうまえのスラグである。
【0059】
石灰:広くCaO分をさす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(脱硫滓の再利用)
本発明の溶銑脱硫方法は、機械撹拌式溶銑脱硫処理(以下、KR法として説明する)において生成した脱硫滓を、別の溶銑脱硫処理において脱硫剤として再利用するものである(例えば、KR法で生じた脱硫滓をKR法の脱硫剤として、或いはKR法で生じた脱硫滓をインジェクション法の脱硫剤として)。再利用する溶銑脱硫処理は何等限定されず、通常行われている溶銑脱硫処理をさす。本発明においては、脱硫滓が生じたプロセスと同一のプロセスでも脱硫滓を再利用できるため、本発明の方法は、単一の添加方法・撹拌方法が同一の溶銑脱硫処理プロセスしか設けていない製鉄設備においても有効である。本発明では、特に、脱硫滓再利用をKR法に適用した場合再利用効率が高く、特に有効である。
【0061】
すなわち、インジェクション法は、微粉石灰を浴の深いところに添加するので、浴内を浮上中に反応する。従って、短時間しか反応を期待できず、微粉のごく表層に脱S生成物が形成される。浴面に浮上後は、再度巻き込むような攪拌は期待できず、反応界面積の増大は無く、脱S反応はほとんど期待できない。そして、この段階で凝集が始まるため、個々微粉の表面に脱S生成物があり、それが凝集した形態となる。
【0062】
これに対し、KR法は、粉石灰を浴表面に添加するので、浴表面から浴内に巻き込み、添加当初から、表面近傍での粉脱S剤の凝集が起こる。その結果、ほとんど反応しない石灰を内部に包んだまま、”だま”になる。凝集が始まっても、メタルと接触する表面部分が反応し、脱S生成物が形成される。この反応は処理時間中起こり、長時間反応が可能である。以上の反応機構から、脱S後には、凝集した粗粒の表面から一定の厚みを持って脱S生成物で覆われたものができ、その内部は脱S生成物が少ない。すなわち内部はフレッシュな石灰に近い、未反応石灰が存在する形態となる。発明者らは、機械撹拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓の凝集物をSEMで観察した写真及びそれのS元素をライン分析した。その結果、図21に示すように上記の知見が正しいことが確認された。
【0063】
このように、KR法による脱硫滓は、粗粒であるので再利用する前の事前処理が簡易、すなわち再利用処理費が低減する。また、上記のように未反応の石灰が凝集した形で存在することが多く、破砕や粒度調整に特別な方法を付加せずとも再利用できる。
【0064】
これに対し、インジェクション法による脱硫滓では、個々の微粉の周囲に脱S生成物があり、微粉を更に細かくする特別な破砕などが必要となり、工程や時間が増える。
【0065】
以上説明したように、KR法では、再利用時の反応効率が高い。再利用での反応に、未反応石灰分の界面がそのまま利用でき、フレッシュな石灰を用いた時と同等の反応効率が期待できる。KR滓の再利用では、石灰分の原単位が同じで脱S可能である。これに対し、インジェクション滓では、事前処理が煩雑であり、または簡易な事前処理では石灰分として少なくとも倍の使用量が必要である。
【0066】
また、KR滓を利用すると、処理時間も短く(フレッシュ剤と同じ)でき、発生スラグ量の低減効果が大きく、1回リサイクルでも50%減であり、多数回リサイクルすることも可能である。
【0067】
これに対し、インジェクション法では、個々微粉の表面に脱S生成物があり、それが凝集した形態となる。このため、再利用には、個々の粒子(一次粒子)を粉砕する必要がある。再生後の粒子は、非常に細かいもの(一次粒子径の半分以下)になる。そのため、KR法での再使用時に、添加時に飛散大となり、飛散した石灰分を補う為の石灰がさらに必要になる。例えば、従来の1回目の使用の脱硫剤のみの場合は約7kg/tの脱硫剤(内石灰分約90%:実質石灰分6.3kg/T)が必要であるのに対して、再生脱硫剤使用の場合は10kg/t(内石灰分約66%:実質石灰分6.6kg/T)+従来の1回目使用の脱硫剤3kg/t(内石灰分約90%:実質石灰分2.7kg/T)が必要となる。つまり、再生脱硫剤中の石灰分は9.3kg/T存在しているが、有効な新界面の創出が不十分であったり、飛散によるロスが生じたりして、3kg/T程度は有効に脱硫に寄与していない可能性がある。つまり、再生脱硫剤中の有効な石灰分は約55%程度で補助的に脱硫剤を加えて使用していることは前記文献(住友金属Vol.45−3(1993)p.52〜58)中にも記載されている。
【0068】
KR法では、上述のように、ある程度粗粒の表面が脱S生成物で覆われたものができ、その内部は脱S生成物が少ない。すなわちフレッシュな石灰に近い、未反応石灰が存在する形態となる。このため、再利用の為に風化生成物を積極的に生成し、再生後の粒子は一次粒子と同じかそれよりも大きくても脱硫可能となる。そして、KR法での再使用時に、飛散量は石灰使用時と同じかそれ以下になる。例えば、再生脱硫剤使用の場合に再生脱硫剤使用量は14kg/t(内石灰分約50%)、添加される再生脱硫剤中の石灰の有効分はフレッシュな石灰を添加した場合と同様である。
【0069】
以上の関係をまとめたものを図18に示す。本発明例であるKR法の脱硫滓をKR法の脱硫剤に再利用する場合には処理1回ごとに添加された石灰分の約7%が脱硫に使用され、多数回使用されれば有効利用率が着実に積みあがっていく。それに対し、脱硫滓リサイクルの先行技術であるインジェクション法の脱硫滓をKR法の脱硫剤に再利用する場合では、所詮トータルでKR1回分の利用効率をわずかに上回るにすぎない。
【0070】
また、上記説明の理解を助けるために、機械攪拌式溶銑脱硫滓とインジェクション法による溶銑脱硫滓との違いを模式的に示した図22を添付する。図22は、機械撹拌式溶銑脱硫処理において生成する脱硫滓粒子の凝集物を分離して、新しい界面を創出した状態及びインジェクション法で生成する脱硫滓粒子の凝集物の各脱硫滓粒子を破砕した状態をしめす。なお、図ではインジェクション法で生成する脱硫滓粒子は機械撹拌式溶銑脱硫処理において生成する脱硫滓粒子とほぼ同じ粒径であるが、実際はそれよりも微細である。
【0071】
(脱硫滓の具体的な処理)
図17Aは、実機によるスラグ処理パターンを示し、図17Bは、図17Aのスラグ処理パターンの一例を、従来のスラグ処理パターンとともに示す。
【0072】
本発明は、脱硫工程において発生した脱硫滓を任意の方法により新界面を創出した後、脱硫剤として再利用する。この場合、未反応石灰分を次回の脱硫剤として使用する際の脱硫反応面として露出させることが必要である。その際の方法は何ら制約されるものではない。新界面の創出の際に放冷または散水、冷却過程を経た場合、CaCO3,Ca(OH)2が生じる。これらCaCO3,Ca(OH)2の残留は、特に脱硫反応を阻害するものではなく、むしろ適量発生させることにより脱硫反応の向上が期待できる。また、大径の地金分は磁選もしくは篩による篩分けなどで除去し、滓分を主に脱硫剤として回収することも可能である。さらに、この再生脱硫剤の粒度は、使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。又、一方再生脱硫剤には小径の残存地金が残留する場合もあるが、次回溶銑予備処理工程での鉄源として再度使用することも出来るため、鉄歩留りの向上に対して大きく寄与できるメリットもある。以下に各種具体例を例示する。
【0073】
(i)散水処理による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、乾燥処理を行うことにより脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓に対して散水設備を用いて、スラグが完全に含水する状態まで過剰に散水を行う。その後、乾燥装置を用いてこの含水スラグを完全に乾燥させることにより、粒径が100mm以下程度に細粒化した脱硫剤を得る。但し、粒径は細かいほど好ましく、実質的に最大粒径が30mm以下が良く、5mm以下では更に良い。必要に応じては、散水・乾燥前後に機械的な粉砕を行っても良い。また、実プロセスにおいては、脱硫滓の搬送中に機械的な振動により脱硫滓の少なくとも一部が破砕される。この乾燥の際に用いる装置は、具体的には、乾燥機でも良いし、ロータリーキルン等の装置を用いて大掛かりに乾燥を行っても良く、要求される処理量等により、装置の大きさ等の設定が可能であり、冷却後のスラグ中の含水を十分に除去できれば、どのような装置・方法を用いても問題ない。このように再生処理を施した脱硫滓を脱硫剤として用いる。
【0074】
(ii)散水・攪拌処理による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を適度な散水及び撹拌処理によって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓に散水設備を用いて、均一に散水を行いながらシャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓が100℃程度の温度に冷却されるまで散水を行い、その後常温まで放置冷却することにより、粒径が100mm以下程度の細粒化した脱硫剤を得る。但し、粒径は細かいほど好ましく、実質的に最大粒径が30mm以下が良く、5mm以下では更に良い。必要に応じては、散水前後に機械的な粉砕を行っても良い。この冷却目標温度は、特定の温度に限定されるものではなく、要求される処理量等によりこの冷却目標温度の設定が可能である。この適量の散水と攪拌により、冷却時間が短縮できる。ただし、100℃以下まで散水してしまうと、乾燥処理が必要となるため、100℃以上で散水を止めることが望ましい。また、攪拌は、冷却速度向上と、均一な散水の為に行うものであり、この実施の頻度は要求される処理時間・量により変更可能なものであり、省略しても良い。
【0075】
(iii)放冷による破砕 この例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷することによって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓を可能な限り空気との接触面積が大きくなるような状態で放置し、シャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓を厚さ0.5m以下の状態に広げ、1日に1〜3回程度の撹拌を行うことにより、3日間で200℃以下の十分に細粒化した再生脱硫剤を得ることができる。この冷却時の厚さは、この厚みに限定されるものではなく、要求される処理時間・量、再生処理の為に使用可能な場所の面積等によりこの目標厚さの設定が可能である。また、撹拌は、冷却速度向上の為に行うものであり、この頻度も要求される処理時間・量により変更可能なものであり、処理時間・量に余裕がある場合には省略しても良い。さらに、脱硫滓の厚さを低くすることなく放置した場合にも同様に再生脱硫剤が得られる。
【0076】
これらの冷却破砕された脱硫滓粒子は、その最大粒径が100mm以下、好ましくは30mm以下、更に好ましくは5mmであるので、脱硫反応に関与するのに十分な表面積を確保することができ、微粉でなければ添加時には飛散も起こらずハンドリングの点でも有利である。また、必要に応じては、機械的な粉砕を併用しても良い。
【0077】
(iv)熱滓の篩い分け この例では、脱硫工程で発生した脱硫滓を900〜1200℃の熱滓のまま、篩(30mm×30mm〜100mm×100mm)にて篩い分けを行うことで、その際にスラグ成分も含有されている大径の地金と、小径の脱硫滓とに分離する。篩い分けの基準は、再度脱硫剤として使用する際の供給装置側の制約であり、通常は上記範囲が適当である。
【0078】
篩い分け後の小径の脱硫滓は、そのまま、自然冷却後に脱硫剤として再利用される。この時、篩い分けでもFe分(スラグ中T,Fe及びメタリックFe)が約20〜30%残存するが、次回脱硫使用時に溶銑側へ回収されるため、鉄歩留まりの向上となる。
【0079】
上記のスラグ成分を含む大径の地金が冷却される際には、スラグ成分中の未反応石灰分により、下式の反応
CaO+H2O=Ca(OH)2 CaO+CO2=CaCO3
所謂、‘ふける’反応が進行するため、脱硫滓中のスラグ成分が崩壊し、地金分とスラグ分とに分離出来る。この工程のあと再度上記篩い分けを行ってもよく、磁選作業を行わなくとも、効率的に脱硫滓を大塊の地金分(少量のスラグ分を含む)と再生脱硫剤(小径の地金分を含む)へと分離できる。この結果、脱硫滓中の未反応石灰分の約90%が再生脱硫剤として回収される。
【0080】
この際に使用する篩は、900〜1200℃の温度域にて使用可能なものであれば、何ら問題無く鉄製のものでも十分である。この篩は脱硫滓処理場にて、使用できるものであれば形状、仕様など制約されるものではない。また篩のメッシュは、再生後の脱硫剤として使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。
【0081】
以上の様に、脱硫滓を簡易な方法で、未反応の石灰分を露出させ、かつ、磁選することなしに脱硫滓中の大塊の地金をすることが出来、安価な石灰源として再生できる。更に、これらの篩い分け後に回収された脱硫滓を主原料とする再生脱硫剤は、依然として十分な脱硫能を有しており、複数回の再利用により、石灰を更に有効に利用できる。
【0082】
(V)発塵の抑制 乾燥状態の脱硫滓は非常に発塵しやすい。しかし、発生直後の脱硫滓は高温のため、塊状のものが大半であることに着目した。つまり、脱硫滓が発生した後、高温のうちに篩い分け等ハンドリングすれば、大きな発塵を生じることなく対応できる。この温度は高温であればあるほど抑制には有利である。実際に落下高3mで温度を変えスラグを落下させ、発塵量を調べたところ、600℃以下で発塵量が、急激に増加することがわかった。また、高温での篩い分けの付帯効果として、高温で脱硫滓を大気に効率よくさらすことで、脱硫滓の急激な冷却、およびそれによる粉化効果があり、後での冷却負荷も軽減できる。
【0083】
また、篩い分けに使用する設備に関しては、垂直に脱硫滓が落下する高さを小さくする設備で発塵抑制が可能である。この設備構成を図12に示す。
【0084】
上記設備は、斜めに配置された網(12)、その下に篩下が流れる斜板(14)、滑り台(16)からなる。ここでの特徴は脱硫滓供給装置(11)からの落下高さを抑制するため、網(12)と斜板(14)の間隔(13)を500mm以下に設置する。また、斜板(14)と滑り台(16)の間隔(15)を500mm以下とする。また、滑り台(16)から地表(18)への落下高さ(17)を1500mm以下とする設備構成をとることで発塵は大きく低減できる。これを利用して、簡単な設備で、しかも安価な運転費で乾燥脱硫滓を整粒し(たとえば、70mm以下)、しかも600℃以上の状態で篩い分けを実施することにより、その処理時の発塵も抑制できることを図ったものである。
【0085】
また、上記方法で整粒した脱硫滓を冷却後、再使用のためダンプに積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。これを、図13に示すような設備で積込む。可動かご部(21)が両側に開き、再生脱硫剤(22)を掴みとる。可動かご部(21)を閉じた状態で掴んだ再生脱硫剤をダンプ荷台(23)直上に持って行き、そこで可動部(21)を開放する。その際の落下高さ(24)を1.5m以内とすることで、発塵の発生を大幅に抑制しつつダンプへの積込が可能である。
【0086】
(vi)別の発塵の抑制 ところで、上述のごとく再生処理を行った乾燥状態の再生脱硫剤を再使用のためダンプ等の輸送用車に積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。しかし、この再生脱硫剤の輸送にトラックを用いず、吸引能力を有する車を用いることにより、粉塵の発生を最大限に低減できると共に、吸引の際に吸引口に篩目を用いれば、同時に再生脱硫剤の篩い分けが可能となり、低発塵かつ高効率のハンドリング・輸送が可能となる。
【0087】
具体的には、溶銑脱硫工程において発生した脱硫滓を冷却・粉砕した後の再生脱硫剤に対して、吸引能力を有する車に吸引用のホースを接続し、吸引により積込みを行う。この際に吸引口に篩い分けの為の篩目を有する治具を用いると、同時に必要な粒度までの篩い分けが可能である。ここで、吸引の際に吸引口に取り付ける治具は、必要な篩の度合い、つまりは要求される再生脱硫剤の粒度により使い分けることができる。
【0088】
さらに、吸引の際に篩い分けが不必要である場合には、吸引口に篩目を必要とせず、ホースのみで吸引することも有り得る。
【0089】
さらには、数十cmレベルの大塊のみを除去する必要がある場合には、図11に示したような治具の先端部に金棒で仕切りを付けただけの簡易な治具を用いて吸引することも可能である。その治具の1例を図11に示した。この治具は、ホースの径と同じ径を有する円筒(1)と、その先に円錐状に付けられた金棒(2)とからなる簡易なものである。これらの篩の網目のサイズや治具の形状については、とくに限定されるものではなく、必要な粒度、前処理工程などにより、決まるものである。さらに、吸引を促進する為に、これらの治具にエアー吸引用の口(3)を取り付けた。これらの吸引用の治具を用いて再生脱硫剤の吸引による積込み・篩い分けを同時に行う。
【0090】
上述のごとく処理して得られた冷却・破砕後の再生脱硫剤粒子は、単独で、または必要に応じて他の成分と組み合わせて本発明の脱硫剤を構成することができる。すなわち、本発明の脱硫剤は、上述した工程で得られた再生脱硫剤粒子のみにより構成してもよく、また場合によっては、石灰・蛍石等の他の成分と組み合わせて、本発明の脱硫剤を構成してもよい。この場合、他の成分の配合量は、再生脱硫剤中含有石灰成分量や必要脱硫率等に応じて適宜決定することができる。その好適な決定方法は後述する。
【0091】
(最適な脱硫剤の製造)
次に脱硫滓から得られた再生脱硫剤を用いて最適な脱硫剤を製造する方法を説明する。同一再生脱硫剤であっても投入原単位により脱硫率は大きく変化する。しかし再生脱硫剤中のCaO純分で整理すると、脱硫量(処理前S−処理後S)と良い相関が得られることがわかった。
【0092】
このことから、再生脱硫剤成分が変動しても、CaO純分を合わせて投入することで安定した脱硫率が得られる。つぎに、再生脱硫剤中のCaO%を確定することが必要になる。これについては、下記手段により解決することができる。脱硫滓は大きく分けると地金分とスラグ分に分けられるが、含有量が大きく変化するのは、地金分とスラグの割合であり、スラグ分中のCaOの割合はあまり変動しないことに着目した。つまり、再生脱硫剤中の地金分とスラグ分の割合を知れば結果的にCaO含有量を推定することができる。さらに、地金の比重は7程度とかなり大きいのに対し、スラグの比重は2〜3程度に過ぎない。
【0093】
このことから、地金含有量に比例し嵩密度が変化することがわかる。これを利用し使用直前に一定容積の再生脱硫剤を切出し、その質量を測ることは容易であり、それを投入量に反映することも簡単である。本発明はこれを利用して、簡単かつ迅速に、再生脱硫剤中のCaO含有量を精度よく推定し、脱硫に必要な再生脱硫剤量を求めることができる。
【0094】
脱硫滓から得られた脱硫剤を使用する最に、再生脱硫剤成分が変動しても、CaO純分を合わせて投入することで安定した脱硫率が得られることがわかっている。そのため、再生脱硫剤中のCaO純分が低い場合には、添加量が多くなる場合があり、溶銑温度の悪化、排出スラグ量の増加といった悪影響が生じる。
【0095】
そこで再生脱硫剤に石灰(CaO)または生石(炭酸カルシウムCaCO3)または消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)のいずれか、もしくは2種類以上を混合した脱硫剤を使用することにより、脱硫剤量を低減させることができる。炭酸カルシウム(CaCO3)および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)添加の場合には、下記の分解反応により溶銑中において微細なフラックスが生成し、反応界面積が増大することにより脱硫反応率が向上する。一方、これらの分解反応は吸熱反応であり、還元反応である脱硫反応を阻害する酸化物が生成することから、大量に添加した場合には溶銑温度の低下や脱硫反応を阻害することもあるため、その添加量は、40質量%以下にすることが必要である。
【0096】
また、炭酸カルシウム成分を添加することに関しては、石灰を焼成する際に焼成の程度を調節して石灰中に炭酸カルシウム成分を残留させた状態でも良い。この場合にも脱硫剤中の合計の炭酸カルシウム量が40質量%以下になる様に混合する。2種類以上混合する場合には、石灰中の炭酸カルシウム成分および生石および消石灰の合計添加量を脱硫剤全体の40質量%以下になるように混合すればよい。石灰の添加量に限定はなく、処理対象の溶銑の温度や必要とされる脱硫量・処理時間等により自由に添加量を調整可能である。
【0097】
さらに、これらを添加する場合には、予め所定量を混合して添加しても良いし、それぞれを別々に溶銑中に添加しても同じ効果が得られる。特に短時間に脱硫量を大きくする場合、処理対象の溶銑温度が低温の場合等ではCaOなどの添加はより有効である。
【0098】
また、この再生脱硫剤にC源を添加することにより、再生脱硫剤の脱硫能力をさらに向上させることができる。
【0099】
C源添加の場合には、C源は還元剤として働き下記の反応により溶銑中において脱硫が進行し、脱硫反応効率が向上する。
【0100】
CaO+S+C→CaS+CO (1)
また、C源の一部は溶銑中に溶解し、転炉での脱炭による昇温のための熱源を増加させることができる。大量に添加しすぎた場合には、上記の還元反応や溶銑中への溶解分以上の過剰なC源が残留してしまい、スラグ量の増加により操業の悪化および環境問題にも悪影響を及ぼす恐れがあるため、脱硫剤中のC源の添加量を30質量%以下になるように混合する方が望ましい。また、使用するC源によっては、硫黄成分が含まれているため、添加量によっては溶銑中のS濃度の増加に繋がる恐れもある。特に溶銑中への溶解量は溶銑温度によって変化するものであるため、使用するC源の種類、処理対象の溶銑の温度や溶銑中のS濃度および必要とされる脱硫量・処理時間等により添加量を調整することが可能である。添加するC源としては、特に限定されず、石炭、コークス、ピッチコークス、プラスチック等C源となるものなら、何れを用いても構わない。
【0101】
さらに、これを添加する場合には、予め所定量を再生脱硫剤に混合して添加しても良いし、それぞれを別々に溶銑中に添加しても同じ効果が得られる。C源は、塊状・粒状・粉状いずれの形でも添加することが可能であるが、溶銑中への溶解を容易にするためには1mm以下程度の粉状の方が好ましい。
【0102】
(溶銑の脱硫方法)
以上の様にして得られた再生脱硫剤と必要により添加する石灰源及び/又は炭素源とを含む脱硫剤を溶銑脱硫プロセスに適用する。溶銑脱硫方法の設備構成、手法に依存せずに前記の再生脱硫剤を適用できる。
【0103】
再生脱硫剤を使用する脱硫設備は、機械撹拌式(KR法)、インジェクション法(トピード)、転炉式のいずれでも可能である。主な溶銑の化学成分として、[質量%C]=3.5〜5.0、[質量%Si]=0〜0.3、[質量%S]=0.02〜0.05、[質量%P]=0.1〜0.15とし、温度が1250〜1450℃の範囲である。処理においては、5〜300tonの溶銑を精錬容器に装入する。脱硫剤配合は、再生脱硫剤と石灰分を予め混合しても、別々のホッパーから切出して添加することでもいずれでも可能であるが、操業の自由度を確保する上では、複数のホッパーを有することが有効である。いずれの精錬容器においても、効果的に浴面へ供給される方法であれば良く、溶銑中のSi,S,P濃度に応じて投入量を変更し、最大でも20kg/tの範囲であることが望ましい。
【0104】
次にこの発明の実施例を説明する。
【0105】
実施例1(KR法での溶銑予備処理で生じた脱硫滓を同一のKR法による溶銑脱硫プロセスの脱硫剤として再利用する実施例)
この実施例では、KR法による脱硫工程において発生した脱硫滓を最適な処理方法によって積極的に冷却・破砕を行った後、再びKR法による脱硫工程において脱硫剤として再利用する。再生処理に当たっては機械的粉砕・放冷・散水処理を適度に組み合わせ、具体的には、以下のような方法で再生処理をおこなった。
【0106】
KR法における溶銑予備処理において発生した脱硫滓を、熱滓時にまず機械的に粉砕を行う。具体的には、この粉砕はショベルなどの重機を用いることにより粉砕を行う事ができる。さらに、この熱滓に対して散水処理を行うことにより、冷却と崩壊を促進することが可能である。具体的には、冷却は、散水設備を用いた。
【0107】
また、散水を行わずに放置し、冷却を行ってもよい。この場合には、冷却を促進する為に、脱硫滓を可能な限り薄く広げ、大気との接触面積を大きくすることにより、冷却を促進し、さらには空気中の水蒸気や二酸化炭素との反応を促進することにより、石灰分の崩壊と炭酸カルシウム・水酸化カルシウムといった化合物の生成を促進するとよい。さらに、熱滓を粉砕した後、篩に通し、メタルなどの大塊をあらかじめ分離しておくことも可能である。
【0108】
こうした方法により生成した脱硫滓に積極的な処理を行うことによって脱硫滓の冷却と破砕を進めることにより、最大粒径30mm以下の再生脱硫剤粒子が得られた。必要に応じて、これをさらに機械粉砕してもよい。
【0109】
得られる再生脱硫剤の最大粒径が30mm以下であるので、脱硫反応に関与するのに十分な表面積を確保することができ、必要以上に微粉ではない為、処理中の粉塵を防止することができると同時に、KR法による再使用時には飛散による歩留まりの低下や巻込みの悪化をも改善することが可能である。
【0110】
また、上記に示したように積極的に冷却・崩壊を進めることにより、炭酸カルシウムや水酸化カルシウムといった化合物の生成を促進することができる。これらの化合物は、溶銑に添加された際の脱水・脱ガス反応を伴う分解により溶銑の撹拌が促進され、また分解による反応界面積が増加することにより、脱硫効率の向上が望める。
【0111】
上記の再生方法により、脱硫能力をもつ新界面を有した粒径30mm以下の脱硫剤が効率よく得られるものであり、これを実施例脱硫剤として用いた。
【0112】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。比較例の従来脱硫剤、および本実施例の再生剤の平均組成を表1に示す。
【0113】
この脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0114】
機械撹拌式脱硫装置による溶銑脱硫後の脱硫率を各脱硫剤について調べ、添加剤原単位(フラックス原単位)と脱硫率との関係を図3に示す。図3のグラフ中、曲線aは本発明の再生脱硫剤、曲線bは比較例の従来脱硫剤についての結果である。
【0115】
図3のグラフから、脱硫剤原単位が等しい場合、再生脱硫剤は比較脱硫剤の50〜90%程度の脱硫率を示していることがわかる。さらに、これを石灰分原単位において比較を行ったものが図4のグラフである。このグラフから、再生脱硫剤はその含有石灰分で比較すると、比較脱硫剤とほぼ同等の脱硫能力を有しているといえる。よって再生脱硫剤を用いた処理においても、添加する再生脱硫剤中の石灰分原単位を脱硫反応に必要な石灰量と同等量に見積もれば、石灰を用いた脱硫処理と同程度の脱硫効果が見込めると考えられる。
【0116】
表3に本プロセス導入前後の使用石灰量変化を示す。脱硫滓を再利用することにより確実に石灰使用量は低下しており導入前と比較して約40%の処理コスト削減を実現した。
【0117】
表4に本プロセス導入前後のスラグ発生量変化を示す。スラグ発生量で4000t/月の減少が図られており、脱硫コストの削減だけでなくスラグ量の低減により環境問題をも解決するプロセスであることが証明された。
【0118】
この実施例によれば、脱硫コストが低減でき、かつ脱硫スラグの再利用が可能となり、加えてスラグ量が減少して環境問題の解決にもつながるという顕著な効果が得られ、その工業的価値は大きい。
【0119】
実施例2(再利用脱硫滓の脱硫率と脱硫滓の再利用回数に関する実施例)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷または散水処理によって冷却・破砕後、同一プロセスにおいて脱硫剤として再利用した。これは、機械的な粉砕を行わずに粒径100mm以下、200℃以下の再生脱硫剤が得られるものであり、これを実施例の脱硫剤として用いた。さらに、再生脱硫剤使用し脱硫を実施した後、そのスラグを再度回収し、上記方法で100mm以下、温度200℃以下とし、実施例の脱硫剤として再度使用した。
【0120】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表1に示す(各表は明細書の最後にまとめました)。
【0121】
この脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0122】
図1は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、図1の1回目使用の再生脱硫剤、2回目使用の再生脱硫剤は比較脱硫剤の80%以上の脱硫能力を有していることがわかる。よって2回目使用の再生脱硫剤を用いた処理においても、添加する石灰原単位を適宜増加すれば、石灰を用いた脱硫処理と同程度の脱硫効果が見込める。
【0123】
図2に本プロセス導入前後の脱硫剤使用量変化を脱硫剤リサイクル回数と使用再生脱硫剤量変化を示す。脱硫剤多数回リサイクルにより再生脱硫剤使用量は大幅に低下しており、3回程度リサイクルすれば導入前と比較して約75%の脱硫剤使用量の削減が実現した。同時に発生するスラグ量も大幅に減少しスラグ量の低減により環境問題にも有効なプロセスであることが証明された。
【0124】
このように、この実施例から本発明の脱硫剤を用いることにより脱硫コストが低減でき、且つ、脱硫滓の多数回再利用が可能となり、廃棄物量が減少し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0125】
実施例3(散水処理による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、乾燥処理を行うことにより脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓に対して散水設備を用いて、スラグが完全に含水する状態まで過剰に散水を行う。その後、乾燥装置を用いてこの含水スラグを完全に乾燥させることにより、粒径が5mm以下程度の十分に細粒化した脱硫剤を得た。この乾燥の際に用いる装置は、具体的には、乾燥機でも良いし、ロータリーキルン等の装置を用いて大掛かりに乾燥を行っても良く、要求される処理量等により、装置の大きさ等の設定が可能であり、冷却後のスラグ中の含水を十分に除去できれば、どのような装置・方法を用いても問題ない。
【0126】
このように再生処理を施した再生脱硫剤を実施例脱硫剤として用いた。
【0127】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表5に示す。
【0128】
この再生脱硫剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0129】
図5は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、再生脱硫剤(実線表示)は比較脱硫剤(破線表示)の7割程度の脱硫能力を有していることがわかる。
【0130】
実施例4(散水処理による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を散水処理によって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。すなわち、脱硫処理後の熱滓に散水設備を用いて、均一に散水を行いながらシャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓が150℃〜80℃程度の温度に冷却されるまで散水を行い、その後常温まで放置冷却することにより、粒径が5mm以下程度の十分に細粒化した脱硫剤を得た。この冷却目標温度は、ある温度に限定されるものではなく、要求される処理量等によりこの冷却目標温度の設定が可能である。これを実施例脱硫剤として用いた。
【0131】
なお、比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表7に示す。
【0132】
この脱硫滓剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0133】
図9は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、150℃までの散水により再生処理した再生脱硫剤は比較脱硫剤のほぼ同等の脱硫能力を有していることがわかる。
【0134】
しかし、同じ散水処理を行った再生脱硫剤においても100℃までで散水をやめた場合と100℃以下まで散水を行った場合では、脱硫能力に違いがある。これは、図7に示した通り100℃以下まで冷却を行うと再生脱硫剤中に生成する水酸化カルシウムの量が著しく増加しており、この生成量が増加しすぎることにより、脱硫に悪影響を及ぼしているものと考えられる。
【0135】
なお、散水終了温度と40Tの脱硫滓を常温まで冷却するのに必要な時間との関係を図6に示した。高い温度で終了する程、常温までの冷却に時間を要している。
【0136】
この実施例の脱硫滓処理方法を用いることにより効率的な脱硫滓の処理を行うことができ、脱硫滓再生に要する時間とコストが低減でき、かつ、それにより大量の脱硫滓の再利用が可能となり、スラグ量が激減し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0137】
実施例5(放冷による冷却・破砕)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷することによって冷却・破砕を同時に行った後、脱硫剤として再利用する。具体的には、脱硫処理後の熱滓を可能な限り空気との接触面積が大きくなるような状態で放置し、シャベルなどの重機により撹拌を行う。具体的には、熱滓を厚さ0.5m以下の状態に広げ、1日に1〜3回程度の撹拌を行うことにより、3日間で200℃以下の十分に細粒化した再生脱硫剤を得ることができた。この冷却時の厚みは、この厚みに限定されるものではなく、要求される処理時間・量、再生処理の為に使用可能な場所の面積等によりこの目標厚さの設定が可能である。また、撹拌は、冷却速度向上の為に行うものであり、この頻度も要求される処理時間・量により変更可能なものであり、処理時間・量に余裕がある場合には省略しても良い。これを実施例脱硫剤として用いた。
【0138】
さらに、脱硫滓の厚みを低くすることなく放置した場合にも同様に再生脱硫剤が得られる。これについても実施例脱硫剤として示した。
【0139】
また、冷却方法に関する比較として、機械的に粉砕を行った脱硫滓(機械粉砕剤)を使用した。
【0140】
さらに、脱硫挙動の比較として、従来用いていた石灰を90%、螢石を5%程度配合する脱硫剤を使用した。また、使用した再生脱硫剤および従来脱硫剤の平均組成を表8に示す。
【0141】
この脱硫滓剤を表2に示す条件下で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0142】
図10は各水準における石灰原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰原単位が等しい場合、放冷により再生処理した再生脱硫剤は比較脱硫剤のほぼ同等の脱硫能力を有していることがわかる。
【0143】
また、同じ非散水処理においても、機械粉砕した方が、放冷処理した再生脱硫剤よりも、脱硫能力が劣ることがわかる。放冷により処理を行った再生脱硫剤中には、機械的に粉砕した再生脱硫剤とは異なり、表8に示したようにいずれも数%の炭酸カルシウムが生成しており、脱硫処理中においてこの炭酸カルシウムの分解が溶銑の撹拌を促進し、また分解による反応界面積の増加により脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0144】
以上の実施例3〜5に示した脱硫滓の再生方法の違いによる、再生脱硫剤の脱硫能力と再生処理に要する時間の比較を以下に示す。
【0145】
同じ再生脱硫剤を用いた場合においても機械的に粉砕を行ったものよりも散水により粉砕したものの(150℃散水、散水)方が高い脱硫能力を有していることがわかる。これは、散水により粉砕した再生脱硫剤中には数%の炭酸カルシウムが生成しており、脱硫処理中においてこの炭酸カルシウムの分解が溶銑の撹拌を促進し、また分解による反応界面積の増加により脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0146】
しかし、同じ散水処理を行った再生脱硫剤においても散水を制御した場合(150℃散水)と含水状態まで散水(散水)を行った場合では、脱硫能力に違いがある。これは、図7に示した通り100℃以下まで冷却を行うと再生された脱硫滓中に生成する水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の量が著しく増加しており、この生成量が増加しすぎることにより、脱硫に悪影響を及ぼしているものと考えられる。
【0147】
また表6は脱硫滓の処理条件および脱硫滓を約40T再生処理するのに要した時間を比較したものである。この表から散水処理した脱硫滓が非散水で放置した脱硫滓と比較して非常に早い時間で冷却が行われていることがわかる。また、散水による処理の場合、この冷却に要する時間内で同時に粉砕も完了している。さらに、散水量を制御した場合、散水処理後の乾燥処理が不必要であり、粉砕や乾燥にかかる設備や費用さらに時間を節約できる。また、処理時に散水することにより、処理中の脱硫滓からの発塵をも防止できる。
【0148】
一方、非散水放冷による処理において、脱硫滓厚を1.5mとした場合には処理時間が170時間必要であるのに対して、厚さを0.4mとした場合には処理時間が70時間と大幅に減少している。なお、それぞれの処理時の厚さにおける処理時間と温度の関係を図8に示した(実線は厚さ0.4m、破線は厚さ1.5m)。この厚さは、薄くするほど処理速度を向上させることが可能であるが、必要とされる冷却速度や使用可能な冷却場所面積等により決定され得るものである。本発明における非散水での処理方法においては、散水処理に比べ処理時間はやや必要となるが、散水設備は不要である。また、散水処理においては、大量処理の際に、均一な散水が困難である為、含水スラグが生じる恐れがあり、これを生成しないように制御するのが困難である。含水スラグは、再生処理後の取り扱いが困難で、かつ投入時にフレームが発生する、脱硫能力が悪い等の問題点がある。一方、非散水放冷処理方法においては、大量処理の際にも均一な処理が容易であり、かつ、冷却中にスラグ中の石灰分が“ふける”(すなわち、スラグ中の石灰分の一部が、放冷中に空気中の水分や二酸化炭素と反応し、体積変化を生じ粉化する)ことにより、時間の経過に伴いスラグ粒度が減少していく為、冷却処理後の機械的な粉砕を全く必要としない。さらには、スラグ中の石灰分の一部は、放冷中に空気中の二酸化炭素と反応し、脱硫反応効率向上に効果のある炭酸カルシウムを生成する。
【0149】
以上説明のように、再生処理する脱硫滓量や所有する設備等の条件により、実施例の脱硫滓処理方法を効果的に用いることにより安価で効率的な脱硫滓の処理を行うことができ、脱硫滓再生に要する時間とコストが低減でき、かつ、それにより大量の脱硫滓の再利用が可能となり、スラグ量が激減し環境問題の解決にもつながるという顕著な効果がある。
【0150】
実施例6(地金分離後の脱硫滓の篩い分け)
この実施例では、脱硫工程において発生した脱硫滓を900〜1200℃の熱滓のまま□70mmの網目の篩い分け装置12にて篩い分けを行い、未反応石灰分を多く含有する小径の脱硫滓と、大径の地金とにまず分離する。篩は、900〜1200℃の温度域にて使用可能なものであれば、何ら問題なく鉄製のもので十分である。この篩は脱硫滓処理場にて、使用できるものであれば形状、仕様など制約されるものではない。また篩のメッシュは、脱硫剤として使用する際の脱硫設備側の供給装置に制約されるものであって、適切なものを使用すれば問題ない。
【0151】
篩い分けられた小径の脱硫滓は冷却後、再生脱硫剤として、脱硫設備上の供給装置へ搬送され、使用される。
【0152】
一方残存した地金は、上記の方法を用いることで、簡易に回収でき、しかも、溶銑予備処理工程での鉄源として再度使用することも出来るため、鉄歩留まりの向上に対して大きく寄与できるメリットもある。
【0153】
この例では、表9に示すような条件において、脱硫滓の再生を行った。篩は、水平面に対して角度を持って設置し、その上方により熱滓を落下させることで、篩い分けを行った。その再生過程での脱硫剤マスバランスを表10に示す。脱硫処理にて生じた脱硫滓に対して、篩い分けを行っても、脱硫滓中約90%のCaOが回収されることが確認され、かつ地金分が有効に除去されている。すなわち、本発明による方法を用いることで、磁選分離を行わずとも、有効に脱硫滓中のスラグ分の回収が可能であることが証明された。
【0154】
この再生脱硫剤と石灰を脱硫処理に適用して、脱硫挙動の調査を行った。一部水準に関しては、再生脱硫剤と石灰の混合は、予め混合してホッパーへ装入し、切出した場合と、2系統のホッパーより両者を切出した場合の双方にて行った。表17には、従来脱硫剤として、石灰系の脱硫剤の平均組成も合わせて示す。これらの脱硫剤を表11に示す試験条件にて、機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑脱硫を行った。
【0155】
図16には、石灰分原単位と脱硫率の関係を示す。再生脱硫剤中の石灰分相当濃度が比較例より少ないため、応じて脱硫剤投入量は増加するものの、脱硫能としては比較例と同等であり、本発明の有効性が証明された。
【0156】
次に発塵への脱硫滓温度の影響をみるため、熱滓発生後30分〜4時間の範囲で放置し、前述した、篩い分け装置12を通し、発塵状態、温度変化を調べた。温度を変化させ篩い分けをした場合の発塵状況を表14に示す。篩い分け前温度で600℃を境として、発塵状況が大きく変化することがわかった。これを、利用し、集塵機なしでも篩い分け等の作業が可能である。また篩い分け作業での温度降下を測定した結果が表15である。篩い分け時の温度降下は約100℃程度あり、その分冷却必要時間は短縮できる。また、表16に本発明での篩い分け設備と、図12の斜板(14)、滑り台(16)のない篩い分け設備での発塵状況を示す。
【0157】
本発明の篩い分けにより、600℃以下の発塵の発生のしやすい脱硫滓でも、集塵機なしで、篩い分け処理を行うことができる。この実施例の方法を用いることにより脱硫滓リサイクルのための乾燥脱硫滓整粒設備が大幅に簡略化でき、且つ、篩い分け時の発塵も簡単な設備で対応できる。また、篩い分け時に外気と効率よく接触することで冷却促進にもつながる。さらに本発明で述べられている、積込方法でダンプに積込むことで集塵機なしで発塵を抑制しながら積込が可能である。
【0158】
この実施例の処理を行うことで、安価でかつ効率的な脱硫剤の処理が可能であり、従来処理を行う脱硫滓量が減少するため、大幅なコスト低減が達成される。又、大量の脱硫滓の再生及び再利用が可能となり、更にスラグ量が低減し、環境問題の解決にもつながる顕著な効果が得られる。
【0159】
実施例7(再生脱硫剤のハンドリング)
再生処理を行った乾燥状態の脱硫剤を再使用のためダンプ等の輸送用車に積込む場合、当然粉化が進み、非常に発塵しやすくなっている。しかし、この再生脱硫剤の輸送にトラックを用いず、吸引能力を有する車を用いることにより、粉塵の発生を最大限に低減できると共に、吸引の際に吸引口に篩目を用いれば、同時に再生剤の篩い分けが可能となり、低発塵かつ高効率のハンドリング・輸送が可能となる。
【0160】
具体的には、溶銑脱硫工程において発生した脱硫滓を冷却・粉砕した後の再生脱硫剤に対して、吸引能力を有する車に吸引用のホースを接続し、吸引により積込みを行う。この際に吸引口に篩い分けの為の篩目を有する治具を用いると、同時に必要な粒度までの篩い分けが可能である。ここで、吸引の際に吸引口に取り付ける治具は、必要な篩の度合い、つまりは要求される再生滓の粒度により使い分けることができる。
【0161】
さらに、吸引の際に篩い分けが不必要である場合には、吸引口に篩目を必要とせず、ホースのみで吸引することも有り得る。
【0162】
さらには、数十cmレベルの大塊のみを除去する必要がある場合には、先に延べた図11に示したような治具の先端部に金棒で仕切りを付けただけの簡易な治具を用いて再生脱硫剤の吸引による積め込み、・篩い分けを同時に行った。この実施例では、機械的撹拌脱硫工程において発生した脱硫滓を用いた。これを、建屋内で約6日間空冷放置し、その途中で冷却を早めるために、3回/日程度の撹拌を行った。
【0163】
今回、吸引に用いたホースの径は直径15cm、吸引の際に吸引口に取り付ける治具11としては、30mm、5mm目の網2種類と円錐型治具を用いた。これらの治具には、すべてエアー吸引口を有している。さらには、治具を用いずにホースのみで吸引を行った例も比較例として行った。また、使用した吸引車の仕様を表12に示した。
【0164】
先に述べた種々の吸引口種を用いて再生脱硫剤の吸引を行った際の処理量、吸引能力を示した結果が表13である。これらの結果から、どのような吸引口種を用いた場合においても、篩い分けを同時に行いながら1t/min.程度の効率の良い積込みが可能であるといえる。また、吸引時に再生脱硫剤と外気との積極的な接触により、処理前後で約30℃前後の温度降下が確認されている。
【0165】
さらに、篩い分けられた大塊及び篩上のスラグの大半は地金であり、これらは別途使用が可能である。
【0166】
本発明のハンドリング方法により、微粉化された発塵しやすい再生脱硫剤でも、集塵機なしで、篩い分け処理と輸送車への積込み作業を同時に効率良く行えることが確認された。
【0167】
この実施例では、脱硫滓リサイクルのための脱硫剤処理方法において、吸引能力を持つ輸送車を用いることで、集塵機なしで発塵を最大限に制御しながらの積込みが可能となった。さらには、吸引時に篩い分けを同時に行うことにより、効率良く再生脱硫剤の処理が可能となった。また、篩い分け、吸引時に外気や吸引の空気と効率よく接触することで冷却促進にもつながるという効果がある。
【0168】
実施例8(脱硫滓中のCaO含有量の測定)
この実施例では、機械的撹拌脱硫工程において発生した脱硫滓を用いた。これを、□70mmの網目の金網からなる、篩い分け装置を通した。
【0169】
この整粒された再生脱硫剤を機械撹拌式脱硫設備で再使用した結果を示す。CaO純分と脱硫量ΔS(処理前硫黄量(S)−処理後硫黄量(S))の関係を図14に示す。CaO純分で整理することにより、脱硫量との間に明確な相関が得られることがわかった。これを利用して、処理前硫黄量(S)ごとに脱硫剤投入量を容易に決定し、安定した脱硫率を得ることができる。
【0170】
また、嵩密度とCaO質量%の関係を見たのが図15である。CaOの増加とともに嵩密度が減少することがわかる。これを利用して、嵩密度を測定することで、再生脱硫剤中のCaO質量%を推定することが可能である。
【0171】
この実施例に撚れば、脱硫滓を機械撹拌式脱硫設備で再使用する場合、必要な脱硫剤量を簡単かつ迅速に決定し、また、安定した脱硫率を得ることができた。
【0172】
実施例9(石灰源(CaO,CaCO3,Ca(OH)2)の添加による脱硫効率の向上に関する実施例)
脱硫工程において発生した脱硫滓を放冷または散水処理によって冷却・粉砕した脱硫剤(再生脱硫剤と標記)に、上記の脱硫剤の1種類以上を添加して実施例の脱硫剤として使用した。比較として再生脱硫剤のみを使用した場合も実施した。添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量、を表18に示す。
【0173】
これらの脱硫剤を表19に示す条件で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0174】
図19は各水準における石灰分原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰分原単位が等しい場合、図19の(a)再生脱硫剤のみを用いた場合と比較して(d)再生脱硫剤+石灰を使用した場合には脱硫効率が若干上昇しており、さらに(b)再生脱硫剤+CaCO3、(c)再生脱硫剤+CaCO3+Ca(OH)2、(e)再生脱硫剤+石灰+CaCO3+Ca(OH)2の場合には、CaCO3とCa(OH)2の添加量の増加と共に脱硫効率が向上していくことがわかる。これは、先に述べたように脱硫処理中においてこのCaCO3やCa(OH)2の分解による反応界面積の増加、または分解により溶銑の撹拌が促進され、脱硫効率が向上したためであると考えられる。
【0175】
実施例において使用した組成の脱硫剤中の石灰分を8kg−CaO/Tとした場合の再生脱硫剤中に含まれるCaO比率、添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量、合計脱硫剤量を表20に示す。同量の石灰分を必要とした場合に、再生脱硫剤を単独で用いた際には再生脱硫剤中の石灰純分が少ない場合に多くの脱硫剤量を必要とするが、これに石灰および炭酸カルシウムや水酸化カルシウムのような脱硫剤を添加することにより、脱硫効率の向上と使用脱硫剤量の低減が可能となり、処理後に排出されるスラグ量の低減にもつながる。さらに、処理溶銑の状態や必要とされる処理条件によりこの脱硫剤の組成は自由に調整できるものであり、これらの脱硫剤は混合せずに別々に溶銑に添加した場合においても同様の効果を発揮し得るものである。
【0176】
実施例10(各種炭素源の添加による脱硫効率の向上に関する実施例)
脱硫工程において発生した脱硫剤を放冷または散水処理によって冷却・粉砕した脱硫剤(再生脱硫剤と標記)に、様々なC源を添加して実施例の脱硫剤として使用した。比較として再生脱硫剤のみを使用した場合も実施した。添加した再生脱硫剤量、脱硫剤の種類と添加量を表21に示す。なお、C源は1mm以下の粉状として使用した。
【0177】
これらの脱硫剤を表22に示す条件で機械撹拌式脱硫装置に適用し、溶銑予備脱硫処理を行った。
【0178】
図20は各水準における石灰分原単位と脱硫率の関係を示した図である。この図より石灰分原単位が等しい場合、図20の(a)再生脱硫剤のみを用いた場合と比較して(b)〜(e)再生脱硫剤+C源を使用した場合には、C源の添加量の増加と共に脱硫効率が向上していくことがわかる。また、C源の種類や添加の方法によらず、同等の効果が得られることが確認できた。これは、先に述べたように脱硫処理中においてC源が還元剤として働き、脱硫効率が向上したためであると考えられる。また、C源の一部は溶銑中に溶解しており、実施例の条件において、いずれの場合にも溶銑中のC濃度が0.1〜0.5%程度増加していた。
【0179】
このように無煙炭やコークス等のC源を添加することにより、脱硫効率の向上が可能となり、処理後に排出されるスラグ量の低減にもつながる。ここで使用するC源としては、石炭、コークス、ピッチコークス、さらにはプラスチック等C源となるものならば何でも良い。さらに、処理溶銑の状態や必要とされる処理条件によりこの脱硫剤の組成は自由に調整できるものであり、これらの脱硫剤は混合せず別々に溶銑に添加した場合においても同様の効果を発揮し得るものである。
【0180】
産業上の利用可能性 以上説明したように本発明によれば、溶銑脱硫処理で得られた脱硫滓を有効に再利用し、それによって溶銑脱硫コストの削減とスラグ発生量の低減とを図ることを可能にした溶銑の脱硫方法が提供される。また本発明によれば、スラグの発生量を低減した溶銑脱硫処理を低コストで行うための脱硫剤が提供される。本発明を用いることにより脱硫コストが低減でき、かつ脱硫スラグの再利用が可能となり、加えてスラグ量が減少して環境問題の解決にもつながるという顕著な効果が得られ、その工業的価値は大きい。
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
【0185】
【表6】
【0186】
【表7】
【0187】
【表8】
【0188】
【表9】
【0189】
【表10】
【0190】
【表11】
【0191】
【表12】
【0192】
【表13】
【0193】
【表14】
【0194】
【表15】
【0195】
【表16】
【0196】
【表17】
【0197】
【表18】
【0198】
【表19】
【0199】
【表20】
【0200】
【表21】
【0201】
【表22】
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の1回リサイクル再生脱硫剤、2回リサイクル再生脱硫剤及び比較としての従来石灰分脱硫剤の原単位と脱硫率との関係を表す図。
【図2】本発明により、複数回のスラグのリサイクルを行った場合の、脱硫滓のリサイクル回数と使用脱硫剤の原単位との関係を表す図。
【図3】本発明脱硫剤および比較として従来脱硫剤の脱硫剤原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図4】本発明脱硫剤および比較として従来脱硫剤の石灰分原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図5】本発明方法により処理された再生脱硫剤および比較として従来脱硫剤の原単位と脱硫率との関係を表す図。
【図6】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、散水終了時のスラグ温度と常温までの冷却に要する時間との関係を表す図。
【図7】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、散水終了時の温度と再生脱硫剤中のCa(OH)2生成量との関係を表す図。
【図8】本発明の脱硫滓処理方法を用いて処理を行った際の、それぞれのスラグ厚における冷却時間とスラグ温度との関係を表す図。
【図9】本発明方法により処理された再生脱硫剤及び比較として従来脱硫剤の原単位と脱硫率の関係を表す図。
【図10】本発明により再生処理された再生脱硫剤と比較例として従来脱硫剤における原単位と脱硫率の関係を示す図。
【図11】本発明の篩い分け冶具の一例を示す図。
【図12】本発明での篩い分け設備を示す図。
【図13A】再生脱硫剤詰め込み装置の要部説明図、
【図13B】再生脱硫剤詰め込み装置の全体概略図。
【図14】脱硫剤中のCaO純分と脱硫量(処理前硫黄量(S)−処理後硫黄量(S))の関係を示す図。
【図15】脱硫滓の嵩密度とCaO質量%の関係を示す図。
【図16】本発明により再生処理された再生脱硫剤と石灰を混合した脱硫剤と比較例として従来脱硫剤における原単位と脱硫率の関係を示す図。
【図17A】実機によるスラグ処理パターンを示す説明図。
【図17B】図17Aのスラグ処理パターンの一例を、従来のスラグ処理パターンとともに示す図。
【図18】機械撹拌式溶銑脱硫処理方法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合と、インジェクション法で得られた脱硫滓を機械撹拌式溶銑脱硫処理方法の脱硫剤として使用する場合について、投入石灰に対して脱硫に有効利用された石灰の割合の比較を示す図。
【図19】脱硫各水準における石灰分原単位と脱硫率との関係を示す図。
【図20】脱硫各水準における石灰分原単位と脱硫率との関係を示す図。
【図21】機械撹拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓の凝集物をSEMで観察した写真及びそれのS元素をライン分析した結果を示す図。
【図22】攪拌式溶銑脱硫滓とインジェクション法による溶銑脱硫滓との違いを模式的に示す。
【図23】溶銑予備処理の一例を示す。
【図24】図23の脱S設備の一例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう溶銑用脱硫剤の製造方法。
【請求項2】
機械攪拌式溶銑処理に用いられる溶銑用脱硫剤の製造方法であって、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう請求項1記載の方法。
【請求項3】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓を用意する工程と、用意された脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう工程とを備えた請求項1に記載の方法。
【請求項4】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離することを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項5】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を空冷すること及び/又は脱硫滓に機械的なエネルギーを付与することにより、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
脱硫滓の冷却は、空冷及び水冷の群から選択された一種または二種である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空冷は、自然冷却及び強制冷却の群から選択された一種又は二種である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水冷により新しい界面を創出する処理を行う工程は、脱硫滓に散水する工程を備え、この散水工程は、散水終了時の脱硫滓温度を100℃以上に維持するようにその散水量を制御して、散水による冷却のみで脱硫滓凝縮物の分離及び/又は脱硫滓粒子の破砕を可能とした請求項6に記載の方法。
【請求項9】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を水冷する工程と、水冷により得られた再生脱硫剤を乾燥する工程とを備えた請求項1に記載の方法。
【請求項10】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を冷却する工程と、脱硫滓および再生脱硫剤の粒度を調整する工程とを備えている請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
再生脱硫材を篩で粒度調整する工程は、温度600℃以上でおこなう請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓又は再生脱硫剤中に含有されている地金を磁選除去する処理、脱硫滓又は再生脱硫剤中の大塊を除去して粒径を100mm以下にする処理、及び脱硫滓又は再生脱硫剤の温度を200℃以下とする処理からなる群から選択された一種または二種以上の処理を行なう工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項13】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓の粒径を100mm以下、かつ、温度を200℃以下とする工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項14】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、開閉可能な一対の可動かご部を用いて輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【請求項15】
輸送車を用いて輸送する工程の前またはこの工程と同時に冷却破砕後の再生脱硫剤を篩い分けて大塊を除去する工程を備えた請求項14記載の方法。
【請求項16】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、再生脱硫剤吸引能力を有する輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【請求項17】
再生脱硫剤を積み込む工程は、輸送車への再生脱硫剤の落下高さを1.5m以内に調整しておこなう請求項14に記載の方法。
【請求項18】
破砕された再生脱硫剤を篩い分ける篩目を有する装置本体と、この装置本体に取り付けられ、装置本体への再生脱硫剤の吸引を促進するエアー吸引用ホースとを備えた、再生脱硫剤の篩い分け装置。
【請求項19】
斜めに配置された篩目を有する部材と、この部材の下に斜めに配置され、篩下が通る斜め板と、斜め板からの篩下が落下して通る滑り台とを備え、篩目を有する部材と斜め板との間隔、及び斜め板と滑り台のつなぎ部分の垂直落下高さを500mm以下とし、滑り台から地表への落下高さを1500mm以下にするように配置されている再生脱硫剤の篩い分け装置。
【請求項20】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【請求項21】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする、機械攪拌式溶銑脱硫処理で用いられる請求項20記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項22】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項23】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤粒子の凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項24】
最大粒径が100mm以下である請求項20記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項25】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とし、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種をさらに含む、請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項26】
石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種は、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と混合されており、この混合物を溶銑に添加するようになっている請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項27】
石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種と、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤とは分離されて、溶銑に別々に添加するようになっている請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項28】
石灰源は、石灰、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの群から選択された一種または二種以上である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項29】
石灰源のうち炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの総和は、溶銑用脱硫剤全体に対して40質量%以下含有する請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項30】
炭素源は、溶銑用脱硫剤全体に対して30質量%以下含有する請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項31】
炭素源は、1mm以下の粉状である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項32】
炭素源は、石炭、コークス及びピッチからなる群から選択された一種または二種以上である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項33】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【請求項34】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を機械攪拌式溶銑脱硫処理により脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【請求項35】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33に記載の低硫溶銑の製造方法。
【請求項36】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33に記載の低硫溶銑の製造方法。
【請求項37】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項38】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを混合し、この混合物を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項39】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを別々に溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項40】
石灰源を添加する際に、所定のCaO純分となるように混合割合を調整する請求項37記載の方法。
【請求項41】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤の嵩密度を算出する工程と、算出された嵩密度から再生脱硫剤のCaO純分を算定する工程と、算定された再生脱硫剤のCaO純分を基準として、破砕された再生脱硫剤と石灰源との添加割合を調整する工程とを備えた請求項37記載の方法。
【請求項42】
炭素源を添加する際に、炭素源の粒径を1mm以下に調整する工程を備えた請求項37記載の方法。
【請求項1】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう溶銑用脱硫剤の製造方法。
【請求項2】
機械攪拌式溶銑処理に用いられる溶銑用脱硫剤の製造方法であって、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう請求項1記載の方法。
【請求項3】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた脱硫滓を用意する工程と、用意された脱硫滓に対して、新しい界面を創出する処理を行なう工程とを備えた請求項1に記載の方法。
【請求項4】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離することを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項5】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を空冷すること及び/又は脱硫滓に機械的なエネルギーを付与することにより、脱硫滓粒子を破砕すること及び/又は複数の脱硫滓粒子の凝集物を脱硫滓粒子に分離する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
脱硫滓の冷却は、空冷及び水冷の群から選択された一種または二種である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空冷は、自然冷却及び強制冷却の群から選択された一種又は二種である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水冷により新しい界面を創出する処理を行う工程は、脱硫滓に散水する工程を備え、この散水工程は、散水終了時の脱硫滓温度を100℃以上に維持するようにその散水量を制御して、散水による冷却のみで脱硫滓凝縮物の分離及び/又は脱硫滓粒子の破砕を可能とした請求項6に記載の方法。
【請求項9】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を水冷する工程と、水冷により得られた再生脱硫剤を乾燥する工程とを備えた請求項1に記載の方法。
【請求項10】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓を冷却する工程と、脱硫滓および再生脱硫剤の粒度を調整する工程とを備えている請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
再生脱硫材を篩で粒度調整する工程は、温度600℃以上でおこなう請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓又は再生脱硫剤中に含有されている地金を磁選除去する処理、脱硫滓又は再生脱硫剤中の大塊を除去して粒径を100mm以下にする処理、及び脱硫滓又は再生脱硫剤の温度を200℃以下とする処理からなる群から選択された一種または二種以上の処理を行なう工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項13】
新しい界面を創出する処理を行なう工程は、脱硫滓の粒径を100mm以下、かつ、温度を200℃以下とする工程を備えている請求項1に記載の方法。
【請求項14】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、開閉可能な一対の可動かご部を用いて輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【請求項15】
輸送車を用いて輸送する工程の前またはこの工程と同時に冷却破砕後の再生脱硫剤を篩い分けて大塊を除去する工程を備えた請求項14記載の方法。
【請求項16】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を、再生脱硫剤吸引能力を有する輸送車に積み込む工程と、輸送車でこの再生脱硫剤を脱硫処理設備に輸送する工程を備えた再生脱硫剤の輸送方法。
【請求項17】
再生脱硫剤を積み込む工程は、輸送車への再生脱硫剤の落下高さを1.5m以内に調整しておこなう請求項14に記載の方法。
【請求項18】
破砕された再生脱硫剤を篩い分ける篩目を有する装置本体と、この装置本体に取り付けられ、装置本体への再生脱硫剤の吸引を促進するエアー吸引用ホースとを備えた、再生脱硫剤の篩い分け装置。
【請求項19】
斜めに配置された篩目を有する部材と、この部材の下に斜めに配置され、篩下が通る斜め板と、斜め板からの篩下が落下して通る滑り台とを備え、篩目を有する部材と斜め板との間隔、及び斜め板と滑り台のつなぎ部分の垂直落下高さを500mm以下とし、滑り台から地表への落下高さを1500mm以下にするように配置されている再生脱硫剤の篩い分け装置。
【請求項20】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤。
【請求項21】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする、機械攪拌式溶銑脱硫処理で用いられる請求項20記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項22】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項23】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤粒子の凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項24】
最大粒径が100mm以下である請求項20記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項25】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とし、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種をさらに含む、請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項26】
石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種は、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と混合されており、この混合物を溶銑に添加するようになっている請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項27】
石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種と、機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤とは分離されて、溶銑に別々に添加するようになっている請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項28】
石灰源は、石灰、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの群から選択された一種または二種以上である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項29】
石灰源のうち炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの総和は、溶銑用脱硫剤全体に対して40質量%以下含有する請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項30】
炭素源は、溶銑用脱硫剤全体に対して30質量%以下含有する請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項31】
炭素源は、1mm以下の粉状である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項32】
炭素源は、石炭、コークス及びピッチからなる群から選択された一種または二種以上である請求項20に記載の溶銑用脱硫剤。
【請求項33】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【請求項34】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を、溶銑中に添加して溶銑を機械攪拌式溶銑脱硫処理により脱硫する低硫溶銑の製造方法。
【請求項35】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、新しい界面が創出されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33に記載の低硫溶銑の製造方法。
【請求項36】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じ、かつ、再生脱硫剤凝縮物の一部又は全部が分離されている再生脱硫剤を主成分とする溶銑用脱硫剤を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33に記載の低硫溶銑の製造方法。
【請求項37】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項38】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを混合し、この混合物を溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項39】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤と、石灰源及び炭素源からなる群から選択された一種または二種とを別々に溶銑中に添加して溶銑を脱硫する請求項33記載の方法。
【請求項40】
石灰源を添加する際に、所定のCaO純分となるように混合割合を調整する請求項37記載の方法。
【請求項41】
機械攪拌式溶銑脱硫処理で生じた再生脱硫剤の嵩密度を算出する工程と、算出された嵩密度から再生脱硫剤のCaO純分を算定する工程と、算定された再生脱硫剤のCaO純分を基準として、破砕された再生脱硫剤と石灰源との添加割合を調整する工程とを備えた請求項37記載の方法。
【請求項42】
炭素源を添加する際に、炭素源の粒径を1mm以下に調整する工程を備えた請求項37記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−107102(P2007−107102A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11802(P2007−11802)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2002−510728(P2002−510728)の分割
【原出願日】平成13年6月14日(2001.6.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2002−510728(P2002−510728)の分割
【原出願日】平成13年6月14日(2001.6.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
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