説明

写真ホルダ付きプリンタ及びその写真ホルダ

【課題】回転自在に写真ホルダを取り付ける。
【解決手段】プリンタ本体12の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態ではプリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態ではプリンタ本体12の前面を覆う蓋として機能する前面扉14の外表面に設けられた軸穴76に写真ホルダ60のホルダ軸66が取り付けられている。こうすることにより、写真ホルダ60を縦長に保持する縦位置又は横長に保持する横位置に回転させることが可能となる。また、前面扉14の外表面に気に入った写真を飾ることが可能となるため、プリンタ本体12の前面の殺風景な印象を払拭し、インテリアとしての機能を持たせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真ホルダ付きプリンタ及びその写真ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ本体の外側面に写真ホルダを取り付けた写真ホルダ付きプリンタが知られている。例えば、特許文献1に記載のテーププリンタでは、プリンタ本体の外側面に複数の嵌合部が形成され、該嵌合部に着脱自在に写真ホルダが取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−39774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の写真ホルダは複数の嵌合部により定められた向きで取り付けられ回転させることができないので、縦撮りの写真又は横撮りの写真のいずれかにしか対応できないという問題があった。
【0004】
本発明の写真ホルダ付きプリンタ及びその写真ホルダは、このような課題に鑑みなされたものであり、縦撮り又は横撮りのいずれの写真にも対応可能とすることを目的の一つとする。また、閉状態ではプリンタ本体の前面を覆う蓋として機能するのみの殺風景な前面扉の外表面に、インテリアとしての機能を持たせることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的の少なくとも1つを達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のプリンタは、
プリント機構を収容するプリンタ本体と、
前記プリンタ本体の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態では前記プリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態では前記プリンタ本体の前面を覆う蓋として機能し、該蓋として機能したときの外表面に軸穴が設けられた前面扉と、
前記軸穴に回転自在に取り付けられた軸を有する写真ホルダと、
を備えたものである。
【0007】
このプリンタには、プリンタ本体の前面に前面扉が開閉自在に取り付けられている。前面扉は開状態ではプリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態ではプリンタ本体の前面を覆う蓋として機能する。そして、この前面扉の外表面の軸穴に回転自在に取り付けられた軸を有する写真ホルダが取り付けられている。こうすることにより、写真ホルダを縦長に保持する縦位置又は横長に保持する横位置に回転させることが可能となる。したがって、ユーザは縦撮りの写真又は横撮りの写真のいずれであっても飾ることができる。また、前面扉の外表面に気に入った写真を飾ることで、プリンタ本体前面の殺風景な印象を払拭し、インテリアとしての機能を持たせることができる。
【0008】
本発明のプリンタにおいて、前記軸は、前記軸穴に挿脱可能に取り付けられるものとしてもよい。こうすれば、ユーザが写真を飾らず、写真ホルダを不要と感じたときに取り外すことができる。
【0009】
本発明のプリンタにおいて、前記軸穴に前記軸を挿入した状態で前記写真ホルダを前記前面扉に対して回転したときに、前記写真ホルダを縦長に保持する縦位置及び横長に保持する横位置のいずれかに選択的に固定する位置決め機構を備えるものとしてもよい。こうすれば、ユーザは縦位置又は横位置の微調整をすることなく、縦撮りの写真又は横撮りの写真を飾ることができる。
【0010】
本発明のプリンタにおいて、前記位置決め機構は、前記写真ホルダの前記軸の軸端外周面及び前記前面扉の前記軸穴の内周面のいずれか一方に設けられた凹部と、前記軸端外周面及び前記軸穴の内周面のもう一方に設けられ前記凹部に入り込むことが可能な凸部とを、前記写真ホルダが前記縦位置に位置しているときと前記写真ホルダが前記横位置に位置しているときに互いに嵌り合うようにそれぞれ一以上備えているものとしてもよい。こうすれば、ユーザは写真ホルダが縦位置又は横位置に位置したときに凸部が凹部に入り込む感触を感じることができる。
【0011】
本発明のプリンタにおいて、前記凸部は、前記軸穴の内周面に設けられた窪み部に挿入された弾性部材により半径内方向に付勢されており、前記写真ホルダの前記軸端外周面に設けられた凹部以外の箇所に面しているときには前記弾性部材の付勢に抗して前記窪み部に没入され、前記写真ホルダが前記縦位置又は前記横位置に位置しているときに前記凹部に面し前記弾性部材の付勢により前記窪み部から突出して前記写真ホルダを固定するものとしてもよい。こうすれば、凸部が凹部に弾性部材の付勢により入り込んでいるので、より確実な固定が可能となる。したがって、前面扉を繰り返し開閉した際にも写真ホルダの位置ずれを防ぐことができる。
【0012】
本発明の写真ホルダは、プリント機構を収容するプリンタ本体と、前記プリンタ本体の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態では前記プリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態では前記プリンタ本体の前面を覆う蓋として機能する前面扉とを備えたプリンタに装着される写真ホルダであって、前記前面扉の外表面に設けられた軸穴に回転自在に取り付け可能な軸を有するものである。こうすることにより、写真ホルダを縦長に保持する縦位置又は横長に保持する横位置に回転させることが可能となる。したがって、ユーザは縦撮りの写真又は横撮りの写真のいずれであっても飾ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるフォトプリンタ10の前面扉14とカバー30を開けた状態の斜視図、図2は、フォトプリンタ10の前面扉14とカバー30を閉めた状態の斜視図、図3はフォトプリンタ10の操作パネル20を表す説明図、図4はフォトプリンタ10のプリント機構50を表す斜視図である。
【0014】
本実施形態のフォトプリンタ10は、プリンタ本体12の上面に設けられた操作パネル20と、プリンタ本体12の上面の奥の一辺に開閉自在に取り付けられ閉状態で操作パネル20を覆うカバー30と、プリンタ本体12に内蔵されたプリント機構50と、プリンタ本体12の前面に開閉自在に取り付けられた前面扉14と、前面扉14の外表面に回転自在に取り付けられている写真ホルダ60と、を備えている(図1参照)。
【0015】
操作パネル20は、文字や図形、記号などを表示するディスプレイ22と、このディスプレイ22の周囲に配置されたボタン群24とを備えている(図3参照)。ボタン群24は、図3に示すように、電源のオンオフを行うための電源ボタン24a、印刷対象の写真を選択したり用紙サイズを選択したりするメインメニュー画面(図3参照)を呼び出すためのメニューボタン24b、操作を途中でキャンセルしたり用紙Pへの印刷を途中で中断したりするためのキャンセルボタン24c、用紙Pへの印刷実行を指示するための印刷ボタン24dなどで構成されている。
【0016】
カバー30は、プリンタ本体12の上面を覆うことのできる大きさに成形された樹脂板であり、開状態では操作パネル20の表面を外部に露出し(図1参照)、閉状態では操作パネル20を覆う(図2参照)。カバー30は、ディスプレイ22と同じ大きさの窓32を備えており、カバー30が閉状態のときにはユーザはこの窓32を介してディスプレイ22の表示内容を確認することができる。更に、カバー30は、開状態のときに操作パネル20に対して斜め後方に傾斜した状態で保持されるようになっている。このため、開状態のカバー30は、用紙Pをプリント機構50へ供給するためのトレイとして利用可能である。また、操作パネル20の奥には、プリント機構50の給紙口58が設けられている。
【0017】
プリント機構50は、プリンタ本体12の内部に配置されている。このプリント機構50は、左右方向にループ状に架け渡されたタイミングベルト51により駆動されガイド52に沿って左右に往復動するキャリッジ53と、このキャリッジ53に搭載されシアン・マゼンタ・イエロー・ブラック等の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ54と、各インクカートリッジ54から供給された各インクに圧力をかけてノズルから用紙Pに向かってインクを吐出する印刷ヘッド55と、操作パネル20に形成された給紙口58から供給された用紙Pを排紙トレイである開状態の前面扉14へ送り出す搬送ローラ56とを備えている(図4参照)。印刷ヘッド55は、ここでは圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用しているが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。キャリッジ53は、用紙Pの左右端や上下端を検出する紙端検出センサ57を備えている。この紙端検出センサ57は、給紙口58にセットされた用紙Pに対して印刷前にキャリッジ53が左右方向に走査したときにその用紙Pの左右端を検出して用紙幅の認識を可能にしたり、印刷途中で用紙Pの後端を検出して用紙長さの認識を可能にしたりする。
【0018】
前面扉14は、プリンタ本体12の前面に開閉自在に取り付けられている。この前面扉14は、開状態のときには、プリンタ本体12の前面から排紙される用紙Pを受けるための排紙トレイとして機能すると共に、プリンタ本体12の前面に設けられた各種のメモリカードスロット18をユーザが利用可能な状態となる(図1参照)。一方、閉状態のときには、プリンタ本体12の前面を覆う蓋として機能する(図2参照)。図5は、前面扉14の外表面の説明図である。図6は、前面扉14の外表面の拡大図であり、図6(a)は軸穴76及び軸挿脱用穴90の構成図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図である。前面扉14の外表面には、小径開口76aと、この小径開口76aの左上に形成された大径開口90aとが設けられ、両者は小径開口76aと略同じ幅の線状溝94により連通されている。小径開口76aは、その奥に設けられた軸穴76に繋がっており、軸穴76の径に比べて小さな径となっている。一方、大径開口90aは、その奥に設けられた軸挿脱用穴90に繋がっており、軸挿脱用穴90の径と略同じになっている。また、軸穴76と軸挿脱用穴90とは略同じ径であり、両者はその径と略同じ幅の連通路92によって繋がっている。軸挿脱用穴90の底面は、連通路92の底面と面一になっているが、軸穴76の底面はそれよりも一段深く形成されている。この結果、軸穴76の内周面は全周にわたって存在することになる。軸穴76の内周面には、時計針で6時の位置に窪み部78が設けられ、この窪み部78にバネ80(本発明の弾性部材に相当)を介してピン82(本発明の凸部に相当)が配置されている。このピン82は、バネ80により半径内方向つまり軸穴76の中心に向かって付勢されており、窪み部78へ押し込まれる力が働いていないときには軸穴76の内周面から軸穴76の中心に向けて突出し、窪み部78へ押し込まれる力が働いているときには窪み部78に収まるように没入する。同様に、軸穴76の内周面には、時計針で3時の位置にも窪み部84が設けられ、この窪み部84にバネ86(本発明の弾性部材に相当)を介してピン88(本発明の凸部に相当)が配置されている。このピン88は、バネ86により半径内方向つまり軸穴76の中心に向かって付勢されており、窪み部84へ押し込まれる力が働いていないときには軸穴76の内周面から軸穴76の中心に向けて突出し、窪み部84へ押し込まれる力が働いているときには窪み部84に収まるように没入する。
【0019】
写真ホルダ60は、図7に示す構成からなるものである。図7は、写真ホルダ60の説明図であり、図7(a)が正面斜視図、図7(b)が背面斜視図、図7(c)が断面図である。この写真ホルダ60は、四角形状のベース62と、そのベース62の表面の周囲に沿って設けられた写真枠64と、ベース62の背面の中央付近に設けられたホルダ軸66(本発明の軸に相当)とを備えている。ベース62は本実施形態では樹脂材料により形成されている。写真枠64は、ベース62と一体成形されていてもよいし、ベース62と別体に成形したものをベース62に装着してもよい。この写真枠64には、アクリル樹脂又はガラスなどからなる透明板64aが嵌め込まれている。また、写真ホルダ60の上部には、写真枠64に写真を挿入するためのスリット状の挿入口74が形成されている。ホルダ軸66は、ベース62の背面に垂設された軸体68の先端に円筒状の軸頭70が形成されたものであり、軸体68の径に比べて軸頭70の径の方が大きい。また、軸体68の径は線状溝94の幅より僅かに小さく、軸頭70の径は軸挿脱用穴90の径や連通路92の幅、軸穴76の径より僅かに小さい。軸頭70は、外周面にピン82が入り込むことが可能な凹部72を備えている。この凹部72は、写真ホルダ60の長辺を縦にしたときの軸頭70の外周面の6時の位置に設けられている。そして、ホルダ軸66が前面扉14の軸穴76に挿入されると、凹部72に軸穴76の内周面に設けられ窪み部78に挿入されたバネ80により半径内方向に付勢されるピン82又は窪み部84に挿入されたバネ86により半径内方向に付勢されるピン88が入り込む。この結果、写真ホルダ60が前面扉14の外表面に位置決めされた状態で取り付けられる。ここで、ピン82又はピン88と凹部72が本発明の位置決め機構を構成する。
【0020】
メモリカードスロット18には、メモリカードが差し込まれる。このメモリカードには、複数の画像ファイルが記憶されている。ユーザは、メニューボタン24bを押下してディスプレイ22にメインメニュー画面を呼び出した後、そのメインメニュー画面からメモリカードに記憶された複数の画像ファイルのうち所望の画像ファイルを選択し、印刷ボタン24dを押下することにより、所望の画像が印刷された用紙Pを得ることができる。
【0021】
次に、写真ホルダ60の使用方法について、縦撮りの写真Tを入れる場合を例として説明する。図8は、写真ホルダ60をフォトプリンタ10の前面扉14の外表面へ取り付ける様子を表した斜視図である。図9は、写真ホルダ60を縦位置に合わせるまでの順序を示した説明図であり、図9(a)は写真ホルダ60の位置を表す図、図9(b)はホルダ軸66の軸頭70の位置を表す拡大図、図9(1)は写真ホルダ60のホルダ軸66を前面扉14の外表面の軸挿脱用穴90に入れた図、図9(2)は写真ホルダ60のホルダ軸66を前面扉14の外表面の軸穴76に挿入した図、図9(3)は写真ホルダ60が縦位置の図である。なお、説明の便宜のため、図9(a)では写真ホルダ60中の縦撮りの写真Tは表示せず、図9(b)では写真ホルダ60のベース62、写真枠64は表示しない。まず、ユーザは縦撮りの写真Tを写真ホルダ60に入れ(図8(1)参照)、写真ホルダ60のホルダ軸66を前面扉14の外表面の軸挿脱用穴90に入れる(図8(2)、図9(1)参照)。次に、写真ホルダ60を右下にスライドさせ、ホルダ軸66の軸頭70が軸穴76の位置に達したら、写真ホルダ60を前面扉14側へ押し込み、一段深く形成された軸穴76にホルダ軸66の軸頭70を挿入する(図9(2)参照)。そして、写真ホルダ60を縦長に保持する縦位置まで回転させる。写真ホルダ60が縦位置に達した場合、軸穴76の内周面に設けられ窪み部78に挿入されたバネ80により半径内方向に付勢されるピン82がホルダ軸66の軸頭70の凹部72に入り込む(図9(3)参照)。そのため、ユーザはその感触を感じることができ、所定の位置に達したことがわかる。これで、写真ホルダ60の前面扉14への取り付けは完了する。位置決め後は凹部72にバネ80により付勢されるピン82が入り込んでいるため、前面扉14を繰り返し開閉しても位置ずれは発生しない。また、軸穴76は一段深く形成されているので内周面が壁となって、凹部72にバネ80により付勢されるピン82が入り込んだ軸頭70を保持している。なお、写真ホルダ60のホルダ軸66を軸穴76に挿入後に写真ホルダ60を回転させて縦位置に合わせるため、挿入時の写真ホルダ60の向きは問わず、どの向きでもよい。
【0022】
次に、縦撮りの写真Tから横撮りの写真Yへ交換する場合について説明する。図10は、写真ホルダ60を縦位置から横位置に合わせるまでの順序を示した説明図であり、図10(a)は写真ホルダ60の位置を表す図、図10(b)はホルダ軸66の軸頭70の回転位置を表す拡大図、図10(1)は写真ホルダ60が縦位置の図、図10(2)は写真ホルダ60が回転途中の図、図10(3)は写真ホルダ60が横位置の図である。なお、説明の便宜のため、図10(b)では写真ホルダ60のベース62、写真枠64は表示しない。まず、ユーザは写真ホルダ60から縦撮りの写真Tを抜き取り、横撮りの写真Yを入れる。この場合、縦撮りの写真Tを飾っていたので、写真ホルダ60は縦位置に位置しており、ホルダ軸66の軸頭70の凹部72にバネ80により付勢されるピン82が入り込んでいる(図10(1)参照)。それでも、そのまま写真ホルダ60を回せば、バネ80の付勢による力よりも写真ホルダ60を回す力の方が大きく、ピン82には窪み部78へ押し込む力が働くため、ピン82は窪み部78に収まるように没入する(図10(2)参照)。更に、写真ホルダ60を回し続ければ、所望の位置である横位置に達し、軸穴76の内周面に設けられ窪み部84に挿入されたバネ86により半径内方向に付勢されるピン88がホルダ軸66の軸頭70の凹部72に入り込む(図10(3)参照)。そのため、ユーザはその感触を感じることができ、横位置に達したことがわかる。これで、縦撮りの写真Tから横撮りの写真Yへの交換は完了する。なお、最初に横撮りの写真Yを取り外した状態の写真ホルダ60に入れ、前面扉14に写真ホルダ60を取り付ける場合も、上述の実施形態を組み合わせて行うことができる。
【0023】
次に、縦位置に取り付けられた写真ホルダ60を取り外す場合について説明する。写真ホルダ60が縦位置に位置しているため、ホルダ軸66の軸頭70の凹部72にバネ80により付勢されるピン82が入り込んでいる。この場合でも写真ホルダ60を手前に引けば、バネ80の付勢による力よりも写真ホルダ60を手前に引く力の方が大きく、ピン82には窪み部78へ押し込む力が働くため、ピン82は窪み部78に収まるように没入する。あるいは、写真ホルダ60を回すことによりピン82を窪み部78に収まるように没入させてから、手前に引いてもよい。そして、ホルダ軸66の軸頭70の端面が軸穴76と連通路92の底面との段差を乗り越えられる位置まで写真ホルダ60を手前に引いた後、写真ホルダ60を左上にスライドさせる。ホルダ軸66の軸頭70が軸挿脱用穴90の位置に達したら、写真ホルダ60をさらに手前に引くと、ホルダ軸66は軸挿脱用穴90から抜かれる。これで、写真ホルダ60の前面扉14からの取り外しは完了する。
【0024】
以上詳述した本実施形態のフォトプリンタ10によれば、プリンタ本体12の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態ではプリント機構50で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態ではプリンタ本体12の前面を覆う蓋として機能する前面扉14の外表面に設けられた軸穴76に写真ホルダ60のホルダ軸66が取り付けられている。こうすることにより、写真ホルダ60を縦長に保持する縦位置又は横長に保持する横位置に回転させることが可能となる。したがって、ユーザは縦撮りの写真T又は横撮りの写真Yのいずれであっても飾ることができる。また、前面扉14の外表面に気に入った写真を飾ることが可能となるため、プリンタ本体12の前面の殺風景な印象を払拭し、インテリアとしての機能を持たせることができる。
【0025】
また、写真ホルダ60のホルダ軸66は前面扉14の外表面の軸穴76に挿脱可能に取り付けられているため、ユーザが写真を飾らず、写真ホルダ60を不要と感じたときに取り外すことができる。
【0026】
更に、写真ホルダ60を縦長に保持する縦位置及び横長に保持する横位置のいずれかに選択的に固定する位置決め機構を備えているので、ユーザは縦位置又は横位置の微調整をすることなく、縦撮りの写真T又は横撮りの写真Yを飾ることができる。
【0027】
更にまた、位置決め機構は、写真ホルダ60のホルダ軸66の軸頭70に設けられた凹部72と、軸穴76の内周面に設けられ凹部72に入り込むことが可能なピン82,88とを、写真ホルダ60が縦位置に位置しているときと横位置に位置しているときに互いに嵌り合うように備えているので、ユーザは写真ホルダ60が縦位置に位置したときにピン82が、横位置に位置したときにピン88が、凹部72に入り込む感触を感じることができる。
【0028】
そしてまた、ピン82,88がバネ80,86の付勢により凹部72に入り込んでいるので、より確実な固定が可能となり、前面扉14を繰り返し開閉した際にも写真ホルダ60の位置ずれを防ぐことができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、軸穴76の底面は連通路92の底面より一段深く形成されることにより、ホルダ軸66の軸頭70の凹部72にバネ80,86により付勢されるピン82,88が入り込んでも、軸穴76の内周面が壁となってホルダ軸66の軸頭70を保持するようにしているが、図11に示す構成を採用してもよい。図11は、連通路92の内壁面に軸保持用突起96を設けた説明図であり、図11(a)は、軸穴76及び軸挿脱用穴90の構成図、図11(b)は図11(a)のA−A断面図である。なお、図11以降の図面において上述した実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付し、その説明を省略する。図11では、軸穴76の底面を一段深く形成せず面一とし、連通路92の内壁面になだらかな軸保持用突起96を設けることで、ホルダ軸66の軸頭70を保持する。この軸保持用突起96はなだらかな形状なので、写真ホルダ60をスライドさせるときに力を加えれば乗り越えられるものである。この場合も上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0031】
上述した実施形態では、軸穴76の内周面に縦位置用のピン82と横位置用ピン88をそれぞれ1つ設けたが、図12に示す構成を採用してもよい。図12は、軸穴76の内周面に縦位置用のピン82と横位置用のピン88をそれぞれ2つ設けた説明図であり、図12(a)は、軸穴76及び軸挿脱用穴90の構成図、図12(b)は図12(a)のC−C断面図である。図12では、軸穴76の内周面に、6時と12時の位置に縦位置用のピン82が窪み部78からバネ80により突出可能に設けられ、3時と9時の位置に横位置用のピン88が窪み部84からバネ86により突出可能に設けられている。こうすれば、写真ホルダ60を時計回りでも反時計回りでも90°回すごとに縦位置と横位置とが切り替わるため、操作性に優れている。このとき、ホルダ軸66に、凹部72を軸頭70の外周面の3時、6時、9時、12時の位置に計4つ設けてもよい。こうすれば、4つの凹部72にそれぞれピン82,88が入り込みホルダ軸66の軸頭70を保持するので、上述した実施形態よりもホルダ軸66の軸頭70を保持する力を向上させることができる。
【0032】
上述した実施形態では、凸部としてバネ80,86により付勢されるピン82,88を用いたが、図13に示す構成を採用してもよい。図13は、軸穴76に位置決め用突起98を設けた説明図であり、図13(a)は、軸穴76及び軸挿脱用穴90の構成図、図13(b)は図13(a)のA−A断面図である。図13では、バネにより付勢されることなく、内周面から軸穴76の中心に向けて突出する位置決め用突起98が設けられている。この位置決め用突起98は弾力を有するような、ゴム材料や樹脂材料などにより形成されている。そのため、ホルダ軸66の軸頭70の凹部72以外の場所に面しているときは、軸頭70による圧縮力を受け軸頭70と軸穴76との間に収まり、凹部72に面しているときは凹部72に嵌り込み、ホルダ軸66の軸頭70を保持する。
【0033】
上述した実施形態では、軸挿脱用穴90、連通路92を設け、写真ホルダ60の取り付け、取り外しの際に写真ホルダ60をスライドさせるものとしたが、図14に示す構成を採用してもよい。図14は、軸挿脱用穴90及び連通路92を設けない場合の軸穴76の説明図であり、図14(a)は、軸穴76の構成図、図14(b)は図14(a)のD−D断面図である。図14では、軸挿脱用穴90、連通路92を設けず、小径開口76aの大きさを軸穴76と略同じにし、直接軸穴76にホルダ軸66を挿脱する。この場合、バネ80,86により付勢されるピン82,88が位置決めとしての役割だけでなく、脱落防止としての役割を担う。そのため、ホルダ軸66の軸頭70を保持する力を向上させるべく、軸穴76の内周面及びホルダ軸66ともに位置決め機構を4つ設けるものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態の写真ホルダ60に代えて、図15及び図16に示す写真ホルダ160を採用してもよい。図15は写真ホルダ160の説明図で、(a)は裏面図、(b)はE−E断面図である。図16は写真ホルダ160の取り付け工程を表す説明図で、(a)は取り付け中を表し、(b)は取り付け後を表す。この写真ホルダ160は、四角形状のベース162と、そのベース162の表面の周囲に沿って設けられた写真枠164と、ベース162の背面の中央付近に設けられたホルダ軸166とを備えている。ベース162及び写真枠164は、上述した実施形態のベース62及び写真枠64と同じであるためその説明を省略する。ホルダ軸166は、ベース162の背面に垂設された軸体168の先端に円筒状の軸頭170が形成されたものである。軸体168の断面は、円形を直径方向と平行で円の中心から等距離離れた2直線で切り取った長円形であり、2直線の距離は線状溝94の幅よりわずかに小さく、円の径は小径開口76aの径よりわずかに小さい。また、軸挿脱用穴90と連通路92と軸穴76の底面は、面一になっている。この写真ホルダ160を取り付けるには、まず、写真ホルダ160の軸頭170を大径開口90aを介して軸挿脱用穴90に挿入し、軸体168の長円形の断面の直線部分を線状溝94に沿わせながらスライドさせる(図16(a)参照)。そして、軸頭170が軸穴76に達したあと、写真ホルダ160が縦位置になるように回転させると、軸穴76の窪み部78に挿入されたバネ80により半径内方向に付勢されるピン82が軸頭170の凹部172に入り込む(図16(b)参照)。このとき、軸体168のうち凹部172と反対側の円弧状の側面が小径開口76aの開口縁に押し当てられるため、容易に位置ずれは発生しない。一方、写真ホルダ160が横位置になるように回転させると、軸穴76の窪み部84に挿入されたバネ86により半径内方向に付勢されるピン88が軸頭170の凹部172に入り込む。このとき、軸体168のうち凹部172と反対側の円弧状の側面が小径開口76aの開口縁に押し当てられるため、容易に位置ずれは発生しない。この写真ホルダ160を採用した場合でも、上述した実施形態とほぼ同様の効果が得られる。更に、軸挿脱用穴90と連通路92と軸穴76の底面が面一なので、軸穴76と軸頭70の高さを略同じにすることができ、上述した実施形態よりもホルダ軸66の軸頭70の前後方向の遊びが少なくなる。その結果、ホルダ軸66の軸頭70をより確実に保持することができる。
【0035】
上述した実施形態では、ピン82,88を付勢するのにバネ80,86を用いたが、弾性部材としてゴムやダンパ等を用いてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、軸穴76に凸部としてピン82,88を設けホルダ軸66の軸頭70に凹部72を設けたが、軸穴76に凹部を設けホルダ軸66に凸部を設けてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、インクジェット方式のフォトプリンタ10を例示したが、その他に熱転写方式や感熱式、ドットインパクト方式、電子写真方式などのプリンタに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】フォトプリンタ10の斜視図。
【図2】フォトプリンタ10の斜視図。
【図3】操作パネル20の説明図。
【図4】プリント機構50の説明図。
【図5】前面扉14の外表面の説明図。
【図6】前面扉14の外表面の拡大図。
【図7】写真ホルダ60の説明図。
【図8】写真ホルダ60の取り付けの説明図。
【図9】写真ホルダ60の取り付けの拡大図。
【図10】写真ホルダ60の縦位置から横位置への回転の説明図。
【図11】軸穴76の別例の説明図。
【図12】軸穴76の別例の説明図。
【図13】軸穴76の別例の説明図。
【図14】軸穴76の別例の説明図。
【図15】写真ホルダ160の説明図。
【図16】写真ホルダ60の取り付けの説明図。
【符号の説明】
【0039】
10 フォトプリンタ、12 プリンタ本体、14 前面扉、18 メモリカードスロット、20 操作パネル、22 ディスプレイ、24 ボタン群、24a 電源ボタン、24b メニューボタン、24c キャンセルボタン、24d 印刷ボタン、30 カバー、32 窓、50 プリント機構、51 タイミングベルト、52 ガイド、53 キャリッジ、54 インクカートリッジ、55 印刷ヘッド、56 搬送ローラ、57 紙端検出センサ、58 給紙口、60 写真ホルダ、62 ベース、64 写真枠、64a 透明板、66 ホルダ軸、68 軸体、70 軸頭、72 凹部、74 挿入口、76 軸穴、76a 小径開口、78 窪み部(縦位置用)、80 バネ、82 ピン、84 窪み部(横位置用)、86 バネ、88 ピン、90 軸挿脱用穴、90a 大径開口、92 連通路、94 線状溝、96 軸保持用突起、98 位置決め用突起、160 写真ホルダ、162 ベース、164 写真枠、166 ホルダ軸、168 軸体、170 軸頭、172 凹部、P 用紙、T 縦撮りの写真、Y 横撮りの写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント機構を収容するプリンタ本体と、
前記プリンタ本体の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態では前記プリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態では前記プリンタ本体の前面を覆う蓋として機能し、該蓋として機能したときの外表面に軸穴が設けられた前面扉と、
前記軸穴に回転自在に取り付けられた軸を有する写真ホルダと、
を備えた写真ホルダ付きプリンタ。
【請求項2】
前記軸は、前記軸穴に挿脱可能に取り付けられる、
請求項1に記載の写真ホルダ付きプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリンタであって、
前記軸穴に前記軸を挿入した状態で前記写真ホルダを前記前面扉に対して回転したときに、前記写真ホルダを縦長に保持する縦位置及び横長に保持する横位置のいずれかに選択的に固定する位置決め機構
を備えた写真ホルダ付きプリンタ。
【請求項4】
前記位置決め機構は、前記写真ホルダの前記軸の軸端外周面及び前記前面扉の前記軸穴の内周面のいずれか一方に設けられた凹部と、前記軸端外周面及び前記軸穴の内周面のもう一方に設けられ前記凹部に入り込むことが可能な凸部とを、前記写真ホルダが前記縦位置に位置しているときと前記写真ホルダが前記横位置に位置しているときに互いに嵌り合うようにそれぞれ一以上備えている、
請求項3に記載の写真ホルダ付きプリンタ。
【請求項5】
前記凸部は、前記軸穴の内周面に設けられた窪み部に挿入された弾性部材により半径内方向に付勢されており、前記写真ホルダの前記軸端外周面に設けられた凹部以外の箇所に面しているときには前記弾性部材の付勢に抗して前記窪み部に没入され、前記写真ホルダが前記縦位置又は前記横位置に位置しているときに前記凹部に面し前記弾性部材の付勢により前記窪み部から突出して前記写真ホルダを固定する、
請求項4に記載の写真ホルダ付きプリンタ。
【請求項6】
プリント機構を収容するプリンタ本体と、前記プリンタ本体の前面に開閉自在に取り付けられ、開状態では前記プリント機構で印刷された印刷媒体を受け取るトレイとして機能し、閉状態では前記プリンタ本体の前面を覆う蓋として機能する前面扉とを備えたプリンタに装着する写真ホルダであって、
前記前面扉の外表面に設けられた軸穴に回転自在に取り付け可能な軸を有する写真ホルダ。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−173791(P2008−173791A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7092(P2007−7092)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】