説明

写真風タオル織物及び写真風タオル織物の製織方法

【課題】パイルに跨られる緯糸に写真分解色に夫々染色された複数本の色糸を1組として用い、1組の色糸のうち写真風柄の表現に必要な色糸を下経糸で表面側に押し上げ、不必要な他の色糸は裏面側に形成した上経糸よりなるパイル内に包み込んで隠蔽して織成し、地緯糸間密度を縦方向に高めることで精密且つ緻密な写真風柄表現を可能にした。
【解決手段】写真織組織部分4では、上経糸32は地緯糸7、8、9と交錯し、裏面側にて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで裏面側に順次パイルを形成している。下経糸33は、1組の色糸10、11、12、13のうち柄表現に必要な色糸10のみを表面側に押し上げ表面を繻子織の写真風柄に形成している。隣り合う地緯糸は製織方向と逆方向に密度を高めて織成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真風柄表現部分に写真織組織部分と無写真織組織部分を設けた写真風タオル織物及び写真風タオル織物の製織方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緯糸で写真風柄を表現する織物として、コンピュータに取り込まれた画像データを基にディザ法により中間的色調を限定した色数によって擬似的に再現するマトリックス組織図を作成し、この組織図に従い緯糸を割り当て、緯糸のうちから1色を経色糸として選定する写真織が提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。しかしながら、この方法はゴブラン織の応用で減色した色を緯糸とし、緯色糸のうちの1色を経糸の色としているため、色の濃淡により写真風織物を織成する方法とは異なる。
【0003】
又、両面パイル(輪奈)タオル地の表面又は裏面の一部のパイル経糸を裏面側又は表面側に寄せて、表面又は裏面に無パイル領域を設け、該無パイル領域によって模様等を表現することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3記載の発明は、パイル経糸を表面又は裏面の何れかに寄せて無パイル面を形成するため、複数本の先染糸を緯糸の一部として射出使用して写真風柄を織成することは不可能であるという問題点があった。
【0004】
そこで、本願発明者は日夜研究を重ね、特許文献4及び特許文献5に係る発明を開発し特許出願した。特許文献4に係る発明は、写真等を光学的に読み取りフルカラー又はモノトーン画像データとしてコンピュータに取り込み、フルカラー又はモノトーン画像データのコントラストを強調させ高周波成分を削除して減色し使用するタオル織機の色糸限定数の範囲内で色を選定し、選定された色を緯糸又は上経糸に割り当てて色糸情報と密度情報が入力されたコンピュータにより画像データを変換して作成された織成データに従いタオル織機を駆動させ、緯糸又は上経糸をタオル織物の表面に表出させグラディエーションにより遠近感を有する写真風織物の製織方法に関するものである。特許文献5に係る発明は、コンピュータに取り込まれたフルカラー画像データをCMYKに白を加えた色分解をし、C、M、Y、Kの夫々の濃度差を白黒2階調のハーフトーン分解し、白黒に変換された4つの画像信号を統合し、使用するタオル織機色糸限定数の範囲内に減色し、減色された色に染色された色糸を緯糸又は上経糸に割り当てて、色糸情報と密度情報が入力されたコンピュータにより画像データを変換して作成された織成データに従いタオル織機を駆動させ、緯糸又は上経糸をタオル織物の表面組織に表出させコンピュータに取り込まれたフルカラー画像データと近似したフルカラーの写真風織物の製織方法に関するものである。
しかしながら、特許文献4若しくは特許文献5に係る発明において、筬は緯糸を織前まで打ち寄せ緯糸の密度を決定可能であり、又、タオル織機自体に糸の密度を所望密度に調整する機能(高密度化機能)がある。タオル織機が具備する密度調整機能を利用して高密度でタオルを織成すると物理的にタオル織機に負担がかかり、又、超高速でタオルを織成するとタオル織機の性能が追いつかずパイルが形成されなくなるという不具合があった。このように、分解色を緯糸にした場合は、高密度、高精度に柄を織り込むことができるのに対し、タオル織機には上経糸間の距離を縮めて高密度化する機能はないため、分解色に先染めした経糸で柄を製織すると経糸間の横方向距離が長く、高精度な写真風織物を製織不可能であるという問題点があった。又、特許文献4若しくは特許文献5に記載の発明は繻子織の写真風柄表現とタオルの基本的特徴であるパイルを同時に混在させて形成することはできなかった。
【0005】
又、分解色に先染した上経糸を使用するには、前段階としてノベに異なる色に夫々先染した上経糸を正確な順番に巻き付ける作業を必要とし、ノベへの上経糸巻着作業には外部委託で約1週間という長期間を要する。上経糸のノベへの巻着作業後、クレーン、滑車を用いてノベをタオル織機に取り付け、更に、ノベをタオル織機に取り付け後も数千本の上経糸を筬に1本づつ連結する作業を必要とし、多大な労力と時間を要するという欠点があった。
又、経糸で柄部分を製織する場合、ドラムに巻き付ける糸の使用量計算と出来上がりの予測が困難であるという欠点がある。ノベに巻着する糸量は、綿糸の伸縮性や不良品の発生を考慮に入れ、余分な長さの経糸を巻着するが、必ずしも経糸の使用量計算通りのタオル枚数は仕上がらず、経糸の過不足が生じる。このことは、必要なタオルを織るためには、必ず余剰在庫を抱える結果を招くという欠点があった。
又、写真の色分解は微細な分解であり、タオル織物が完成しなければ写真精度が判らず、先ずはサンプルを顧客に提示する必要がある。ノベは直径が約30cm程度あり、タオル織機までの距離を考慮するとノベと機械の距離は約1m程度もあり、ノベの外周面に1周巻着し、タオル製織に必要な糸量はタオル1枚分に使用する経糸の長さを超過している。そのため、色分解した画像データの色分解の正確度を確認の為に1枚のサンプルを製織すると、ノベ外周に巻着していた余分な糸を廃棄処分しなければならず、人件費、糸代、電気代、時間等の無駄が生じるという欠点があった。経糸を使用した写真風タオル織物は多ロットになり、人件費がかかり、余剰在庫発生リスクが大になるという欠点を有していた。
【0006】
又、画像データを色分解し、緯糸に分解色又は選定された色に染色した先染色糸を使用し、緯糸を表出して写真風柄を表現する場合、緯糸は緯糸射出モータであるアキュムレータに連結するという5分程度の作業で製織開始可能になる。そのため、色糸の染め、順番等に過誤がある場合や1枚のみの注文に対しても、多種類の色糸を緯糸として準備していれば、アキュムレータに緯糸を付け替える作業のみで製織開始可能で、小ロット注文に即座に対応できるという長所がある。写真風タオル織物はサンプル製織後、写真分解が失敗していることが判明した場合であっても、数分程度の短時間で緯糸のアキュムレータへの連結作業により修正が可能で、結果的に商品の低価格化及び仕上がりの迅速化を実現可能である。
しかし、緯糸で写真風柄を表現する場合は、主として次の3の欠点がある。第1の欠点は、緯糸の使用量を多くし縦方向の緯糸密度を高めなければ写真風柄に要求される精密さや柄の緻密さに欠けるため、緯糸の使用量を多くする必要があり、コスト高を招来するという欠点がある。第2の欠点は、写真風柄の精密度や緻密度を高めるために、超強度の圧力を緯糸にかけることが必要で、タオル織機に無理な動作を強制することになり、タオル製品の完成に時間を要し、タオル織機が短寿命化するという欠点がある。第3の欠点は、緯糸のみで写真風柄を製織すると、緯糸が横方向に長く浮く朱子織組織による柄の表現となり、パイルの無いゴワゴワした平面的織物となり、パイルが無いために織物の構造上はタオルとは言えず、又、パイルが無いために肌触りが悪く、吸水性も低下するという欠点があった。
【特許文献1】特公平7−88610号公報
【特許文献2】特公平7−88608号公報
【特許文献3】特開2004−183144号公報
【特許文献4】特開2006−152520号公報
【特許文献5】特開2006−219810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、緯糸のみで写真風柄を製織した場合において、パイルの無い構造はタオルとは言えない平面的な織物である点である。本願発明は、写真等から光学的に読み取ったフルカラー又はモノトーンの画像データを色分解し特定された色に夫々染色された色糸を1組とし、該1組の色糸をパイルが跨る位置の緯糸として配設し、1組の色糸のうち必要な色糸のみを表面側に表出し、不要な色糸は裏面側に形成したパイルで隠蔽するようにして緯糸で表面側に平面的な写真風柄を表現し、写真風柄表現部分には写真織組織部分と無写真織組織部分を縦方向(製織方向)に交互に設け、地緯糸間密度を高めることで、写真織組織部分においては表面に表出した色糸間の縦方向密度を高めて柄の精密度を向上させると共に、無写真織組織部分においては縦方向パイル密度を高め、結果的に無写真織組織部分の縦幅を短くし、タオル織物としてのパイルを保持しつつ写真織組織部分で表現される全体としての写真風柄が精密性及び緻密性を有するようにした写真風タオル織物及び写真風タオル織物の製織方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、地経糸と地緯糸を交錯させてタオル地組織を織成し、該タオル地組織内に上経糸又は/及び下経糸でパイルを形成するタオル織物に写真風柄表現部分を設けた写真風タオル織物であって、前記写真風柄表現部分は、タオル織物に表現する写真風柄の原図柄を色分解して特定した夫々の色に染色された色糸を複数本で1組とし、パイル形成部分に於ける上経糸と下経糸との間に緯糸として配設され、前記写真風柄表現部分は写真織組織部分と無写真織組織部分とを縦方向に交互に配設してなり、前記写真織組織部分は、前記上経糸で裏面側にパイルを形成し、前記1組の色糸のうち図柄表現のために必要な色糸のみを、下経糸上に配設し表面側に表出させて写真風柄を表現し、写真風柄の表現に不必要な残りの色糸は下経糸と上経糸との間に隠蔽し、前記無写真織組織部分は、上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を隠蔽して表面又は/及び裏面にパイルを形成し、写真風柄表現部分を全体として精密な写真風柄に表現可能にするために、表面側に表出される色糸と無写真織組織部分のパイルを夫々縦方向に高密度に配設したことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、地経糸と緯糸を交錯させてタオル地組織を織成し、該タオル地組織内に上経糸又は/及び下経糸でパイルを形成するタオル織物に写真風柄表現部分を設けた写真風タオル織物であって、前記写真風柄表現部分は、タオル織物に表現する写真風柄の原図柄を色分解して特定した夫々の色に染色された色糸を複数本で1組とし、パイル形成部分に於ける上経糸と下経糸との間に緯糸として配設され、前記上経糸で裏面側にパイルを形成し、前記1組の色糸のうち図柄表現のために必要な色糸のみを下経糸上に配設し表面側に表出させて写真風柄を表現し、写真風柄の表現に不必要な残りの色糸は下経糸と裏面側に形成した上経糸よりなるパイルとの間に隠蔽して写真織組織部分を形成し、写真風柄表現部分の周囲は無写真織組織部分に形成し、該無写真織組織部分は、上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を隠蔽して表面又は/及び裏面にパイルを形成し、写真風柄表現部分を全体として精密な写真風柄に表現可能にするために、表面側に表出される色糸と無写真織組織部分のパイルを夫々縦方向に高密度に配設したことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、コンピュータ処理されたデータにより、タオル織機で写真風柄表現部分を設けたタオル織物を製織する写真風タオル織物の製織方法であって、写真、絵画等を画像入力手段により光学的に読み取り、画像データとして、解像度が使用するタオル織機のデータに対応してピクセル調整されたコンピュータに取り込む工程と、取り込まれた画像データを色分解し、分解された色のうち写真風柄の表現に必要な色を、使用するタオル織機の色糸限定数の範囲内で複数色を特定する工程と、前記分解された画像を、所定縦幅を有し横方向に延設された写真織組織部分と、所定縦幅を有し横方向に延設された無写真織組織部分を、交互に縦方向に沿って横縞状に区分けする工程と、使用するタオル織機の色糸情報と、色分解された画像データを写真織組織部分と無写真織組織部分に区分けした縦方向織り組織情報をコンピュータに入力し、前記色糸情報と前記縦方向織り組織情報に基づいて前記画像データを変換する工程とにより作成された織成データに従ってタオル織機を駆動させ、写真風柄表現部分に於いて上経糸又は/及び下経糸よりなるパイル部分が跨る位置には、前記画像データを色分解し特定された複数本の色糸を1組として射出配設され、写真風柄表現部分の写真織組織部分では、前記1組の色糸のうち写真風柄表現のために必要な色糸は、下経糸で押し上げ下経糸上に配設してタオル織物の表面側に表出し、前記1組の色糸のうち表面側に押し上げられた色糸を除く他の色糸は、裏面側に上経糸でパイルを形成し、該上経糸よりなるパイルと前記下経糸との間に配設して隠蔽し、無写真織組織部分では、前記上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を配設して隠蔽し、地緯糸が射出されている間は、前記タオル織機の製織進行を停止させるか、或いは地緯糸を縦方向に高密度に製織するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は写真風柄表現部分に於いて、表面側に写真織組織部分と無写真織組織部分を縦方向に交互に設け、写真織組織部分には上経糸を裏面側に引き出して裏面にパイルを形成し、該パイルの内側に不要な色糸を隠蔽しているので、タオル織物としてパイルを有する形状を呈し、緻密な写真風柄を保持しつつタオルの基本的機能として要求されるゴワゴワ感の無いパイル独特の柔軟な肌触り及び吸水性を有するという効果がある。
地緯糸を縦方向に高密度に詰めて織成しているので、写真織組織部分では表面に浮き出た色糸が縦方向に高密度に配設されて緻密な柄を呈し、又、写真風柄表現部分内の無写真織組織部分では縦方向にパイルが高密度に形成され無写真織組織部分の縦幅が細くなり、写真風柄表現部分全体として無写真織組織部分の存在を理由として写真風柄がぼやけることがなく精密な柄を表現可能であるという効果がある。
上経糸で写真風柄を製織する場合の製織開始準備期間が約1週間という長期間が必要であったのに比較して、本願発明は表現に必要な色糸をアキュムレータに夫々連結すれば足りるため、製織開始準備時間に5分程度の短時間しか要せず、製織準備に要する時間が著しく短縮可能となり、又、小ロット注文に即座に対応可能であるという効果がある。
又、製織開始後に色糸特定の誤りに気付いた場合は、数十秒程度でアキュムレータへの色糸付け替え作業による修正が可能で、従来の上経糸による写真風タオル織物の製織では不可能であった色糸の付け替え修正作業を、僅か数十秒という短時間で行い得るという効果がある。そのため、顧客へ提示するサンプルも極めて容易に短時間で製織完成可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
写真風柄表現部分に写真織組織部分及び無写真織組織部分の双方を有するという目的を、パイルに跨られる緯糸に写真分解色に夫々染色された複数本の色糸を1組として用い、写真織組織部分においては1組の色糸のうち写真風柄の表現に必要な色糸を下経糸で表面側に押し上げ、1組の色糸のうち写真風柄の表現に不必要な他の色糸は裏面側に形成した上経糸よりなるパイル内に包み込んで隠蔽して織成し、無写真織組織部分においては1組の色糸を上経糸と下経糸との間に隠蔽し、地緯糸間密度を縦方向に高めることで地組織を外部から視認しにくくし、写真風柄を表現するために表面に浮き出た色糸間密度を縦方向に高め、精密且つ緻密な写真風柄表現を実現した。
【実施例1】
【0011】
図1及び図2に示される実施例1の写真風タオル織物について説明する。図1は写真風タオル織物の平面図、図2は写真風タオル織物の構成を示す縦断面図写真風タオルである。
【0012】
図1に示すタオル織物は縦方向に長い矩形状に形成され、パイルタオル地1の前後両端にはヘム2、2を設けている。パイルタオル地1は、写真風柄表現部分3に例えば車の写真風柄を表現している。写真風柄表現部分3は、横方向に延び所定縦幅を有する写真織組織部分4と、横方向に延び所定縦幅を有する無写真織組織部分5を、縦方向に交互に設けている。写真織組織部分4は、写真風柄の原図柄を色分解し特定した色に先染めした色糸のうち写真風柄の表現に必要な色糸を、表面に横方向に浮き出した朱子織に織成されて柄を表現している。無写真織組織部分5はパイルを表面側及び裏面側に表出して形成されている。実施例1では、無写真織組織部分5が、表裏面にパイルを形成した場合を例に説明しているが、表裏面の何れか一方の面に表出しているものも本願発明に含まれる。
【0013】
図2は、写真織組織部分4と無写真織組織部分5の縦断面図である。図中、図2において、地経糸の上糸6は、地緯糸7、8、9の表面側を通って4本で1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸14、15、16の表面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸17、18、19の表面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸20、21、22の表面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸23、24、25の表面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸26、27、28の表面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸29、30の表面側を通っている。地経糸の下糸31は、地緯糸7、8、9の裏面側を通って4本で1組の色糸10、11、12、13の表面に表出して絡ませ、地緯糸14、15、16の裏面側を通って1組の色糸10、11、12、13の表面側を通って絡ませ、地緯糸17、18、19の裏面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸20、21、22の裏面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸23、24、25の裏面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸26、27、28の裏面側を通って1組の色糸10、11、12、13を絡ませ、地緯糸29、30の裏面側を通っている。地経糸の上糸6と下糸31に地緯糸7、8、9、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30を絡ませてタオル地組織を織成する。
【0014】
タオル地組織に上経糸(パイル経糸)32を、地緯糸7に絡ませて地緯糸8、9の表面側を通って裏面側にて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで裏面側にパイルを形成し、地緯糸14の表面を通って地緯糸15、16に交互に絡んだ後に裏面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで裏面側にパイルを形成し、地緯糸17の表面側に出て、地緯糸18、19に交互に絡んだ後に裏面側にて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで裏面側にパイルを形成し、地緯糸20、21の表面側を通って地緯糸22と絡んで裏面側を通った後に表面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで表面側にパイルを形成し、地緯糸23、24、25と交互に絡んで地緯糸25の裏面側から表面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで表面側にパイルを形成し、地緯糸26、27、28と交互に絡んで表面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を包み込んで表面側にパイルを形成している。
【0015】
タオル地組織に下経糸(パイル経糸)33を、地緯糸7、8の表面を通って地緯糸9及び1組の色糸10、11、12、13のうち柄表現に必要な色糸10の裏面側を通り、地緯糸14、15の表面側を通って地緯糸16及び1組の色糸10、11、12、13のうち柄表現に必要な色糸11の裏面側を通り、地緯糸17、18の表面側を通って地緯糸19及び1組の色糸10、11、12、13のうち柄表現に必要な色糸12の裏面側を通り、地緯糸20の表面側に引き出され地緯糸21、22と交互に絡んだ後、裏面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を内側に配設して裏面側にパイルを形成し、地緯糸23の表面側に引き出されて地緯糸24、25と交互に絡んだ後に裏面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を内側に配設して裏面側にパイルを形成し、地緯糸26の表面側に引き出され地緯糸27、28と交互に絡んだ後、裏面側に引き出されて1組の色糸10、11、12、13を内側に配設して裏面側にパイルを形成している。
【0016】
このように、写真織組織部分4では、下経糸33で1組の色糸10、11、12、13のうち柄表現に必要な色糸のみを表面側に押し上げ、不要な残りの3本の色糸は上経糸32で裏面側にパイルを形成し、該パイルで不要な残りの3本の色糸を隠蔽し、無写真織組織部分5では、上経糸32で表面側に形成されたパイルと下経糸33で裏面側に形成したパイルの内側に1組の色糸10、11、12、13を隠蔽して構成されている。
【0017】
隣り合う3本の地緯糸は互いに縦方向に高密度に配設されている。つまり、地緯糸7、8、9の組、地緯糸14、15、16の組、地緯糸17、18、19の組、地緯糸20、21、22の組、地緯糸23、24、25の組、地緯糸26、27、28の組において、夫々の組における3本の地緯糸は縦方向に高密度に織成されて、タオル地組織が外部から視認しにくく織成されている。そのため、写真織組織部分4では、表面に表出する色糸の縦方向密度が高く、柄の精密度が向上する。又、無写真織組織部分5ではパイル間密度が高くなり、写真風柄表現部分3が全体として柄が明瞭になる。
【実施例2】
【0018】
図3に示される実施例2について説明する。パイルタオル地1には、写真風柄表現部分34の周囲に表面側にパイルを形成した無写真織組織部分5を設けている。写真風柄表現部分3は全体が写真織組織部分4に形成されている。すなわち、表面側は色糸10、11、12、13のうちの写真風柄の表現に必要な色糸を表面側に横方向に長く浮き出した朱子織にし、裏面側は上経糸32によりパイルに形成され、該パイル内に表出しない残りの色糸を隠蔽して織成している。無写真織組織部分5は、両面パイルに織成されているが、片面パイルであってもよい。
【実施例3】
【0019】
写真風タオル織物の製織方法について、図1、図2、図4〜図7に基づいて説明する。
図4に示すように、先ずはタオル織物のどの部分に写真風柄表現部分を設けるか等のタオル織物全体のデザインデータを作成する。
【0020】
タオル織物中の写真風柄表現部分の基礎となる写真等をコンピュータに取り込む工程について説明する。写真、絵等のグラディエーションを多用した画像をカラースキャナ等の画像入力装置により読み取り、コンピュータにフルカラー又はモノトーンのデジタル画像データとして取り込む。画像データ取り込みの場合、ピクセルと使用するタオル織機の紋丈及び紋口との関係を関連づけるピクセル調整を行う必要がある。つまり、1ピクセルを糸の上と落のデータとしてとらえ、ピクセルの存在するところは糸の組織も存在すると設定し、解像度は使用するタオル織機のデータに対応するようにピクセル調整を行なう。ピクセル調整を行わない場合、写真の網点を調整しても網点は織機データとしては消去され、又、網がけを行うことで擬似的なグラディエーションを作成している部分が消去されてしまうという理由による。
【0021】
取り込まれたフルカラー又はモノトーンの画像データはコントラストを強調する画像調節を行う。画面の明度や色彩差を増幅することで色の濃淡を調整する。原画像の位置(x,y)の画素濃度f(x,y)を処理画像(x,y)における濃度g(x,y)とし、画像の濃度、つまり明るさをn倍する場合は、これらの関係はg(x,y)=n×f(x,y)となる。画像データはコントラスト強調の段階ではフルカラーで行う。1画素8ビットの場合、表現可能な濃度範囲は0〜255となり計算値が255を越える場合は255に制限することになるため、nの値を大にすると画像データは白くなる。それゆえ、実際の画像のコントラストを調整しながらnの値を選定する。
【0022】
次に減色工程について説明する。
例えば、R、G、Bを夫々1ビット=8色(2(R)×2(G)×2(B))まで減色する。つまり、人間の目に明瞭に認識しにくい高周波成分を削除する。この削除方法の具体例として、ランレングス符号、予測符号化(DPCM)、ハフマン符号化等が考えられる。グラフィックVRAMは画素当り4ビットの容量の場合、2=16種類のパレットを使用でき、16色の濃淡情報を割り当て可能である。又、R、G、Bの夫々が2=16色表示となる。減色の場合、特定の色を表現する場合は色の選択に幅を持たせるためにR、G、Bを2ビット以上、つまり2×2×2=64色以上で減色することも考えられる。
例えば6色しか使用できないタオル織機の場合、毛中のパイル部分に緯糸1色を使用するとすると、ボーダー部の緯糸には残り5色が割り当てられる。グラフィックの初期状態では、パレット各色は0:黒、1:薄青、2:薄赤、3:薄黄、4:薄緑、5:薄水色、6:薄黄色、7:明るい灰色、8:暗い灰色、9:青、10:赤、11:紫、12:緑、13:水色、14:黄色、15:白に設定されている。この段階で写真風織物を作成するのに不必要な色を除去する。白黒写真を使用する場合を例にとると、濃淡情報は1色目は写真の最も暗い影部分として使用する黒色、パレット0:R(0)G(0)B(0)、2色目は光の当たっている最も明るい部分として使用する白色、パレット15:R(15)G(15)B(15)、3色目は1色目と2色目のグラディエーションとなる濃灰色、パレット3:R(3)G(3)B(3)、4色目は中間灰色、パレット7:R(7)G(7)B(7)、5色目は薄灰色、パレット12:R(12)G(12)B(12)と設定し、パレット番号とR、G、Bを割り当てることで擬似色に5色の写真風織物が作成可能となる。モノトーン写真風織物を作成する場合は上記パレット番号+R、G、Bに最も近い色を色糸に使用する。又、カラー写真風織物を作成する場合は、インデックスカラー変換したものを最も近い色の集合体を選び、目測によりグラディエーションの違和感を感じないように不要な色を削除、若しくは置換して選定した色で表現する。選定された色は彩度と明度が近いものであり、カラーパレットの上の彩度と明度が同系統であるものであると、グラディエーションにより写真風に表現しやすい。
実施例3では、モノトーンの写真風柄を製織する場合であって、高周波成分の削除を行って目立たない色を削除し減色後、残った色の中から例えば薄灰色、中間灰色、濃灰色、黒色の4色を特定した4色分解を例に説明する。
【0023】
図6に示すように、分解された画像1を、写真織組織部分4と無写真織組織部分5を縦方向に交互に区分けし、区分けされた織組織情報をコンピュータに入力する。詳しくは、分解された画像1を、縦方向に沿って互いに平行な位置関係となる境界線により線引きし、該線引きにより区分けされた部分を、縦方向に交互に写真織組織部分4と無写真織組織部分5とする織組織情報を、コンピュータに入力する。区分け作業は色分解後に行う場合に限定しない。区分け作業は、写真等をコンピュータに入力後、取り込まれた画像データを色分解する前の段階で行ってもよい。
【0024】
次に製織データの作成を行う。
画像データは、縦横のピクセル数と織機データであるCGSの紋丈、紋口が、横ピクセル数=紋口、縦のピクセル数=紋丈の関係にあり、画像データを紋口数と紋丈数を織成する織物のサイズに合わせる。画像データの縦方向に区分けした写真織組織部分4と無写真織組織部分5の夫々のデータも鑑みて製織データ(ジャガードデータ)を作成する。
【0025】
上記製織データをコンピュータに入力後、図4及び図5のプログラムに沿ってジャガード機であるタオル織機は駆動する。通常、地緯糸3本1組でパイルを形成するため、図5に示すプログラムに沿って、1本づつ3回地緯糸が射出されると、実施例3では、図4のフロー図に示すように、パイル包み込み開始信号が有りになり、色糸が射出される。必要な色糸は下経糸33を下げて、必要な色糸を下経糸33上に配設する。次に、不必要な色糸はパイルで包み込んで隠蔽し、表面が朱子織で裏面にパイルが形成された写真織組織部分4を織成する。無写真織組織部分5では、パイル包み込み信号が有りでパイル包み込み針上げも同時に行われ、1組の色糸を上経糸32と下経糸33との間に隠蔽したパイルを形成する。
【0026】
地緯糸が射出されている間は、タオル織機の製織進行を停止するようにして、図7中の矢印で示す方向に地緯糸に対し力が作用し、3本が縦方向に隣り合う地緯糸7、8、9、地緯糸14、15、16、地緯糸17、18、19、地緯糸20、21、22、地緯糸23、24、25、地緯糸26、27、28、を製織方向の逆方向に圧接し、図7の状態から図8に示す状態になり、色糸間やパイル間距離を短縮して写真風柄の精度を向上させるものである。尚、図8中の矢印は製織進行方向である。
縦方向の色糸やパイルの密度を高める方法は、地緯糸射出中は、製織進行を停止する方法に限定しない。地緯糸が1本射出毎に地緯糸を製織進行と反対方向に力を作用して隣り合う地緯糸を高密度に製織する方法も本願発明に含まれる。
【0027】
実施例1及び3では特色分解で4色を色糸にするという場合を例に説明したが、CMYK分解、RGB分解等の公知の色分解方法のすべてが本願発明に含まれ、使用した色分解手段に対応して色糸数が使用タオル織機の色糸限定数の範囲で増減される。例えば、特開2006−219810号公報記載の色分解をしようすると、シアン、マゼンダ、黄色、黒、白の5本の色糸を1組の色糸として用いる。
又、図1、図7及び図8では1針並み組織を例に説明したが、本願発明は隣り合う地緯糸が詰められて高密度に製織されていれば、織組織は如何なる組織であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】写真風タオル織物の平面図である。(実施例1)
【図2】写真風タオル織物の構成を示す縦断面図である。(実施例1)
【図3】写真風タオル織物の平面図である。(実施例2)
【図4】写真風タオル織物の製織プログラムのフロー図である。(実施例3)
【図5】パイル作成のための製織プログラムのフロー図である。(実施例3)
【図6】分解された画像を写真織組織部分と無写真織組織部分に区分けした状態を示す説明図である。(実施例3
【図7】写真風タオル織物の構成を示す縦断面図であって、地緯糸間を詰めない場合の糸の位置関係を示す説明図である。(実施例3)
【図8】写真風タオル織物の構成を示す縦断面図であって、地緯糸間を詰めた状態の糸の位置関係を示す説明図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0029】
3、34 写真風柄表現部分
4 写真織組織部分
5 無写真織組織部分
7、8、9、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26,27、28、29、30 地緯糸
10、11、12、13 色糸
32 上経糸
33 下経糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地経糸と地緯糸を交錯させてタオル地組織を織成し、該タオル地組織内に上経糸又は/及び下経糸でパイルを形成するタオル織物に写真風柄表現部分を設けた写真風タオル織物であって、
前記写真風柄表現部分は、タオル織物に表現する写真風柄の原図柄を色分解して特定した夫々の色に染色された色糸を複数本で1組とし、パイル形成部分に於ける上経糸と下経糸との間に緯糸として配設され、
前記写真風柄表現部分は写真織組織部分と無写真織組織部分とを縦方向に交互に配設してなり、
前記写真織組織部分は、前記上経糸で裏面側にパイルを形成し、前記1組の色糸のうち図柄表現のために必要な色糸のみを、下経糸上に配設し表面側に表出させて写真風柄を表現し、写真風柄の表現に不必要な残りの色糸は下経糸と上経糸との間に隠蔽し、
前記無写真織組織部分は、上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を隠蔽して表面又は/及び裏面にパイルを形成し、
写真風柄表現部分を全体として精密な写真風柄に表現可能にするために、表面側に表出される色糸と無写真織組織部分のパイルを夫々縦方向に高密度に配設したことを特徴とする写真風タオル織物。
【請求項2】
地経糸と緯糸を交錯させてタオル地組織を織成し、該タオル地組織内に上経糸又は/及び下経糸でパイルを形成するタオル織物に写真風柄表現部分を設けた写真風タオル織物であって、
前記写真風柄表現部分は、タオル織物に表現する写真風柄の原図柄を色分解して特定した夫々の色に染色された色糸を複数本で1組とし、パイル形成部分に於ける上経糸と下経糸との間に緯糸として配設され、
前記上経糸で裏面側にパイルを形成し、前記1組の色糸のうち図柄表現のために必要な色糸のみを下経糸上に配設し表面側に表出させて写真風柄を表現し、写真風柄の表現に不必要な残りの色糸は下経糸と裏面側に形成した上経糸よりなるパイルとの間に隠蔽して写真織組織部分を形成し、
写真風柄表現部分の周囲は無写真織組織部分に形成し、該無写真織組織部分は、上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を隠蔽して表面又は/及び裏面にパイルを形成し、
写真風柄表現部分を全体として精密な写真風柄に表現可能にするために、表面側に表出される色糸と無写真織組織部分のパイルを夫々縦方向に高密度に配設したことを特徴とする写真風タオル織物。
【請求項3】
コンピュータ処理されたデータにより、タオル織機で写真風柄表現部分を設けたタオル織物を製織する写真風タオル織物の製織方法であって、
写真、絵画等を画像入力手段により光学的に読み取り、画像データとして、解像度が使用するタオル織機のデータに対応してピクセル調整されたコンピュータに取り込む工程と、取り込まれた画像データを色分解し、分解された色のうち写真風柄の表現に必要な色を、使用するタオル織機の色糸限定数の範囲内で複数色を特定する工程と、
前記分解された画像を、所定縦幅を有し横方向に延設された写真織組織部分と、所定縦幅を有し横方向に延設された無写真織組織部分を、交互に縦方向に沿って横縞状に区分けする工程と、
使用するタオル織機の色糸情報と、色分解された画像データを写真織組織部分と無写真織組織部分に区分けした縦方向織り組織情報をコンピュータに入力し、前記色糸情報と前記縦方向織り組織情報に基づいて前記画像データを変換する工程とにより作成された織成データに従ってタオル織機を駆動させ、
写真風柄表現部分に於いて上経糸又は/及び下経糸よりなるパイル部分が跨る位置には、前記画像データを色分解し特定された複数本の色糸を1組として射出配設され、
写真風柄表現部分の写真織組織部分では、前記1組の色糸のうち写真風柄表現のために必要な色糸は、下経糸で押し上げ下経糸上に配設してタオル織物の表面側に表出し、
前記1組の色糸のうち表面側に押し上げられた色糸を除く他の色糸は、裏面側に上経糸でパイルを形成し、該上経糸よりなるパイルと前記下経糸との間に配設して隠蔽し、
無写真織組織部分では、前記上経糸と下経糸との間に前記1組の色糸を配設して隠蔽し、地緯糸が射出されている間は、前記タオル織機の製織進行を停止させるか、或いは地緯糸を縦方向に高密度に製織するようにしたことを特徴とする写真風タオル織物の製織方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−255540(P2008−255540A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117715(P2007−117715)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(504474013)伊予屋タオル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】