冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物並びに該抗ガン作用を有する組成物を含有する食品及び薬品

【課題】 本発明は、冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物を日常的に摂取できる食品に配合することにより、もしくはそれら成分を含有する組成物を薬品に配合することにより、ガンを予防又は改善することを目的としてなされたものである。
【解決手段】 冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を所定条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物とすることにより、ガンを予防又は改善することができる。
【解決手段】 冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を所定条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物とすることにより、ガンを予防又は改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物並びに該抗ガン作用を有する組成物を含有する食品及び薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンは、日本での死亡原因の第1位であり、老化と共に自然に発生してくる病気である。しかし、ガンは食事やライフスタイルを改善することによりある程度予防できる病気でもある。近年、様々な食品の抗ガン作用が研究され、食品中に含まれる抗ガン物質が特定されてきている。しかし、抗ガン物質が含まれている食品を摂取することにより、ガンを予防するには、その食品を大量に摂取する必要があり、現実的ではない。そこで、食品等に配合することができる抗ガン作用を有する化合物が望まれている。
【0003】
抗ガン作用を有する化合物としては、腫瘍細胞の核酸合成を阻害する核酸塩基を修飾したフルオロウラシル等が知られ、さらに、核酸塩基金属塩として、ウラシルの6位にゲルマニウムが結合した核酸塩基金属塩も知られている(特許文献1)。しかしながら、フルオロウラシル等の抗ガン剤は、副作用が強く、又、ゲルマニウムは毒性が強いという問題を有しており、食品等に配合するのは困難である。
【0004】
これに対して、中国古来の漢方薬として用いられてきた冬虫夏草や、ウコン等は、様々な薬理効果があるとともに安全なものであることから、近年注目を浴びている。漢方薬として珍重されてきた冬虫夏草は、コウモリガ科の蛾の幼虫に寄生して成長するバッカクキン科冬虫夏草属(Cordyceps)の菌種の一種であり、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布している。この冬虫夏草は、医薬品、医薬部外品、飲食物としての利用が進んできている。
【0005】
冬虫夏草の薬理効果としては、冬虫夏草を抽出して得られた抽出物が、免疫賦活効果、抗腫瘍性効果、血糖値降下作用、血圧降下作用、アポトーシス誘導機能を有することが従来知られており、当該抽出物を免疫賦活やガンの予防又は治療を目的として医薬品、医薬部外品、飲食物とすることも知られている(特許文献2参照)。しかしながら、冬虫夏草からの抽出物では、有効成分の均一性を確保するのが困難であり、安定的な効果を得られないという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献3では、冬虫夏草から有効成分を単離し、その成分を用いて、エリテマトーデス性腎炎及び/又はIgA腎炎を予防及び/又は治療するための方法が開示されている。しかしながら、冬虫夏草中のコルジセピンが抗ガン作用を有することが開示されているが、冬虫夏草の他の成分を含有する抗ガン作用を有する組成物については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭59−35918号公報
【特許文献2】特開2005−35928号公報
【特許文献3】特許第3823030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであって、冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物を日常的に摂取することができる食品に配合することにより、もしくはそれら成分を含有する組成物を薬品に配合することにより、ガンを予防又は改善することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を下記条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物に関する。
カラム:LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製);
移動相:A 1%ギ酸水溶液、B メタノール;
グラジエント:A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配;
流速:1.0〜1.5mL/min
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1で得られた前記画分F2−4を下記条件のHPLCに供して得られた画分のうち、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及び/又はリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bに含まれる成分を含有する請求項1記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
カラム:コスモシール5C18・MS・II 4.6×250mm;
移動相:A 0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、B 30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7
グラジエント:0分 A(100%)/B(0%)→25分 A(0%)/B(100%)→35分まで A(0%)/B(100%)保持
流速:0.8mL/min;
カラム温度:40℃;
検出:UV検出器 波長254nm
【0011】
請求項3に係る発明は、前記画分F2−4が、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含むことからなることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記核酸塩基アルカリ金属塩及び前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の金属塩からなることを特徴とする請求項3記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記核酸塩基誘導体が、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の誘導体からなることを特徴とする請求項3又は4記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、核酸塩基マグネシウム塩であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品に関する。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び2に係る発明によれば、冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出された成分は安全であるので、この成分を含有する組成物は毎日摂取することができ、これにより日常的に腫瘍細胞の増殖を抑制し、ガンを予防又は改善することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2記載の組成物において、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、請求項3記載の組成物において、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の核酸塩基アルカリ金属塩及び核酸塩基アルカリ土類金属塩を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、請求項3又は4記載の組成物において、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の核酸塩基誘導体を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、請求項3乃至5のいずれかに記載の組成物において、核酸塩基マグネシウム塩を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品であるので、安全性の高い抗ガン作用を有する組成物を毎日簡便に摂取することができることから、効率良く日常的にガンを予防又は改善することができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品であるので、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】培養サナギタケ菌糸体の各分画部の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【図2】培養サナギタケ菌糸体のメタノール抽出画分のクロマトグラムである。
【図3】図2のクロマトグラムの画分F2−4の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【図4】画分F2−4のHPLCクロマトグラムと標準品のHPLCクロマトグラムを比較した図である。
【図5】図4のピークBの化合物のLC−MS分析結果である。
【図6】図4のピークBの化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図4のピークBの化合物のICP−MS分析結果である。
【図8】図4のピークAの化合物のLC−MS分析結果である。
【図9】図4のピークAの化合物のIR分析結果である。
【図10】図4のピークAの化合物のUV分析結果である。
【図11】図4のピークAの化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図12】図4のピークAの化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図13】図4のピークA及びBの化合物のHL60に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る組成物は、冬虫夏草及びその菌糸体培養液に含まれている抗ガン作用を有する成分を含有する組成物である。以下に、冬虫夏草から抽出された成分を含有する組成物について詳述する。
【0026】
冬虫夏草とは、コウモリガ科の蛾の幼虫に寄生して成長するバッカクキン科冬虫夏草属(Cordyceps)の菌種の一種であり、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布している。これまで、中国古来の漢方薬として、用いられており、非常に高価なものとして珍重されている。
【0027】
冬虫夏草の薬理効果としては、冬虫夏草を抽出して得られた抽出物が、免疫賦活効果、抗腫瘍性効果、血糖値降下作用、血圧降下作用、アポトーシス誘導機能を有することが知られており、当該抽出物は免疫賦活やガンの予防又は治療を目的として用いられている。
【0028】
本発明で用いられる冬虫夏草としては、冬虫夏草乾燥物、冬虫夏草抽出物及び培養サナギダケ菌糸体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で用いられる冬虫夏草の菌糸体培養液としては、サナギタケ菌糸体培養液が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
冬虫夏草及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出する。特に、冬虫夏草の菌糸体培養液を用いる際には熱水抽出を行うのが好ましい。有効成分の抽出には、熱水抽出液のほうを使用する。
【0030】
冬虫夏草及び/又はその菌糸体培養液、又は上記熱水抽出液を抽出する。
抽出溶媒としては、含水アルコールを用いる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールを挙げることができ、メタノールが好適に使用される。
【0031】
抽出操作は、抽出残渣に対して1回又はそれ以上繰り返すことが好ましい。これにより抽出効率を向上させることができるからである。尚、抽出に用いる溶媒は同じ溶媒を用いてもよいし、異なる溶媒を用いてもよい。
【0032】
上記抽出物を、逆相カラムクロマトグラフィーに供し、粗分画する。カラムはLC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製)を使用し、移動相Aが1%ギ酸水溶液、移動相Bがメタノールで、A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配でグラジエント分離を行う。流速は1.0〜1.5mL/minで行う。
【0033】
上記粗分画により、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)が得られる。この画分F2−4を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、さらに分画する。コスモシール5C18・MS・II(4.6×250mm)カラムを用いて、移動相Aが0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、移動相Bが30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7であり、A(100%)/B(0%)で分離を開始し、25分でA(0%)/B(100%)となるようにグラジエント分離を行い、その後10分間A(0%)/B(100%)の条件を保持する。流速は0.8mL/min、カラム温度は40℃とし、UV254nmで検出を行う。
【0034】
上記分画により、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及びリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bが得られる。
【0035】
後述の実施例で記述するHPLCの分析結果(図4参照)から判別することができる如く、上記画分F2−4は、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含む。
【0036】
本発明に用いられる核酸塩基アルカリ金属塩及び核酸塩基アルカリ土類金属塩は、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の核酸塩基金属塩である。
【0037】
本発明に用いられる核酸塩基誘導体は、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の核酸塩基誘導体である。
【0038】
本発明で使用する核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体は、必ずしも冬虫夏草及びその菌糸体培養液の抽出物から得られるものでなくてもよく、他の植物又は動物からの抽出物であってもよいし、或いは標準品であってもよい。
【0039】
ウラシル金属塩とは、核酸塩基であるウラシルに金属塩が結合したものであり、ウラシル誘導体とは、核酸塩基であるウラシルの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。ウラシルは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0040】
【化1】

【0041】
アデニン金属塩とは、核酸塩基であるアデニンに金属塩が結合したものであり、アデニン誘導体とは、核酸塩基であるアデニンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。アデニンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0042】
【化2】

【0043】
グアニン金属塩とは、核酸塩基であるグアニンに金属塩が結合したものであり、グアニン誘導体とは、核酸塩基であるグアニンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。グアニンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0044】
【化3】

【0045】
シトシン金属塩とは、核酸塩基であるシトシンに金属塩が結合したものであり、シトシン誘導体とは、核酸塩基であるシトシンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。シトシンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0046】
【化4】

【0047】
チミン金属塩とは、核酸塩基であるチミンに金属塩が結合したものであり、チミン誘導体とは、核酸塩基であるチミンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。チミンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0048】
【化5】

【0049】
本発明に用いられるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウムが挙げられ、本発明に用いられるアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム及びカルシウムが挙げられる。
【0050】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は安全であるので、直接、食品類に調整することができる。また、本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は、医薬部外組成物、あるいは医薬組成物として、薬品類に調整することができる。さらに、食品類、医薬部外品類、医薬品類の添加剤もしくは、配合剤として使用してもよく、通常用いられる添加剤又は配合剤に混合して用いてもよい。配合比率は食品類、薬品類によって適宜変更することができる。
【0051】
食品類、医薬部外品類、医薬品類に配合する本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分の形態は特に限定されず、上記夫々に配合可能で最適な形態を任意に選択することができ、液状、固形状、粉末状、ペースト状、ゲル状等のいずれの形態でもよい。
【0052】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の食品類としては、本発明の組成物の効果を損なうものでなければよく、例えば、錠菓、飴、トローチ、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、ようかん、パン、クッキー、ビスケット、スナック、クラッカー、アルコール飲料、コーヒー飲料、ジュース、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料等が挙げられ、これらの飲食品類に本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を適量含有させて提供することができる。本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の上記食品類は、常法により製造することができる。
【0053】
上記した食品類は、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、DL−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルアラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等、本発明の組成物の効果を損なうものでない通常の食品原料として使用されている添加剤を適宜配合して常法により製造することができる。
【0054】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は、有効成分量として、10mg〜500mg/日、より好ましくは100mg〜300mg/日で摂取されるのが好ましい。ラット亜急性毒性については、培養サナギタケ抽出乾燥エキス1000mg/kg投与において、特記すべき事項は観察されなかった。
【0055】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を医薬組成物とし、その医薬組成物を配合する医薬品としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、エキス剤等の経口医薬品、軟膏、眼軟膏、ローション、クリーム、貼付剤、坐剤、点眼薬、点鼻薬、注射剤等の非経口医薬品が挙げられ、これらの医薬品類に本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を適量含有させて提供することができる。
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の上記医薬品類は、常法により製造することができる。
【0056】
上記した医薬品類には、各種添加剤を適宜配合することができる。
使用する添加剤は、本発明の組成物の効果を損なうものでなければ通常用いられているものを使用することができ、その例としてはデンプン、乳糖、白糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、又はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体、各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等の油性担体等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0058】
実施例1 冬虫夏草からの有効成分の抽出
培養サナギタケ菌糸体の乾燥分画部(112.0g)を酢酸エチル、メタノール、及び水で抽出し、酢酸エチル可溶部(F1)0.63g、メタノール可溶部(F2)13.0g、及び水可溶部(F3)61.8gの画分を得た。ヒト由来白血病細胞(HL60)、ヒト由来胃ガン細胞(MKN45)、ラット由来腫瘍細胞(C6)、及びマウス由来骨肉腫細胞(LM8)を使用して夫々の画分の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。
【0059】
抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法にて測定した。HL60細胞、MKN45細胞、C6細胞及びLM8細胞の各種細胞を2×104個/mLに調整した細胞浮遊液を96ウェルプレートに播種し、最終濃度が200μg/mLになるように被検液を添加した。その後、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。
図1は、培養サナギタケ菌糸体の各分画部の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。図1のグラフからも明らかなように、メタノール画分(F2)が、腫瘍細胞の種類に関係なく極めて強い抗腫瘍作用を示すことが見出された。
【0060】
図2は、メタノール画分(F2)を逆相カラムクロマトグラフィーにて分画したクロマトグラムを示している。分離は、LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製)カラムを使用し、移動相Aが1%ギ酸水溶液、移動相Bがメタノールで、A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配でグラジエント分離を行った。流速は1.0〜1.5mL/min、カラム温度は室温で行った。
【0061】
次いで、MKN45細胞を用いて、上記工程で得られた図2に示すF2−1〜F2−6夫々の画分の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法により測定し、各画分から得られた試料の最終濃度を5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL及び400μg/mLとなるように被検液を調整し、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。
【0062】
図3はF2−4の画分の抗腫瘍作用を示したグラフである(F2−1〜F2−3、F2−5及びF2−6は、図示せず)。画分F2−4に含まれる物質にMKN45細胞に対して顕著な抗腫瘍作用が認められた。
【0063】
この画分F2−4を、HPLCを用いてさらに分画した。このHPLC分画は、コスモシール5C18・MS・II(4.6×250mm)カラムを用いて、移動相Aが0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、移動相Bが30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7であり、A(100%)/B(0%)で分離を開始し、25分でA(0%)/B(100%)となるようにグラジエント分離を行い、その後10分間A(0%)/B(100%)の条件を保持した。流速は0.8mL/min、カラム温度は40℃とし、UV254nmで検出を行った。
【0064】
図4は、画分F2−4のHPLCを用いて分離したクロマトグラム(下図)と標準品のHPLCを用いて分離したクロマトグラム(上図)を比較した図である。標準品としては、市販のアデニン、グアニン、シトシン、チアミン、及びウラシル(和光純薬株式会社製)を用いた。その結果、図4に示すピークA(リテンションタイム4.6min)を有する抽出画分A、及びピークB(リテンションタイム5.2min)を有する抽出画分Bを得た。画分F2−4のピークAはアデニン及び/又はグアニンと、画分F2−4のピークBがウラシルと同じリテンションタイムを有している。従って、抽出画分Aはアデニン及び/又はグアニンの骨格構造を有し、抽出画分Bはウラシルの骨格構造を有していると考えられる。
【0065】
図5は、画分F2−4の抽出画分Bの化合物のLC−MS分析結果である。図5中の(I)及び(II)のチャートは、化合物のイオン化(ESIイオン化法)の強度の違いによるものである。(I)は、ソフトイオン化の条件で行い、(II)は電子を分子に衝突させる強い条件でイオン化を行った。(I)の条件の弱いイオン化の場合は、137の質量を示すピークが認められ、(II)の強いイオン化の場合は、112の質量を示すピークが認められた。(II)のイオン化で検出された化合物の質量が、ウラシルと同じ質量である112であること、及び図4のHPLC分析結果もウラシルと同じリテンションタイムであることからすると、抽出画分Bの化合物は、ウラシルの骨格構造を有することが推定された。これを決定するために、抽出画分Bの化合物の1H−NMRスペクトルを行った。1H−NMRの条件は、5.4ppm(1H)、7.3ppm(1H)、10.9ppm(2H)で行った。
図6は、画分F2−4の抽出画分Bの化合物の1H−NMRスペクトルである。図6に示されるように、抽出画分Bの化合物の骨格構造がウラシルであることが明らかとなった。
(I)のイオン化では、抽出画分Bの質量が137となっているが、これは、ウラシルにアルカリ土類金属であるマグネシウム(24)と、水素が付いた形態で検出されたためと考えられ、(II)の強い条件でイオン化を行うことにより、マグネシウムが外れ、ウラシルのみの質量が得られたと考えられる。
【0066】
図7は、画分F2−4の抽出画分BのICP−MS分析結果を示している。抽出画分Bのサンプルを1%硝酸に溶解し、全体量を3mlとして、ICP−MS(島津ICPM8500)で分析した。図7に示されるようにNa、K、Mg等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属が多く検出された。従って、これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、抽出画分Bの化合物の骨格構造であるウラシルと結合していると考えられ、質量分析では、そのイオン化により、ウラシルとの結合が外れてウラシルのみの質量或いは比較的結合の強いウラシルマグネシウム金属塩としての質量が検出されたことを示唆するものである。
【0067】
図8〜12は、それぞれ抽出画分Aの化合物のLC−MS(ESIイオン化法)、IR及びUV分析結果並びに1H−NMR及び13C−NMRスペクトルである。図11及び図12に示されるように、抽出画分Aの化合物の1H−NMR及び13C−NMRのシグナルはアデニン及びグアニンと一致しなかった。LC−MS(ESIイオン化法)分析により、135の質量を示すピークが認められた。IR(KBr法)分析により抽出画分Aの化合物は、3600cm−1〜3100cm−1から水素結合−OH又は−NH、1500cm−1〜1700cm−1からC=O、又はC=C、C=Nという構造を有することが示唆された。UV分析より抽出画分Aの化合物は、λ(H2O)max 260nmから環状ジエン化合物であることが示唆された。1H−NMR(d2 H2O)スペクトルより抽出画分Aの化合物は、3.6ppmから(3H)メトキシ、5.1ppmから(5H)二重結合のプロトン、8.7ppmから(2H)ヘテロ二重結合のプロトンを有することが示唆された。13C−NMRスペクトルより抽出画分Aの化合物は、49.7ppmからO又はNに結合したカーボン、171.5ppmからカルボニル炭素を有することが示唆された。以上を総合的に判断すると、抽出画分Aの化合物は、複素環式化合物等の核酸塩基誘導体と示唆される。
【0068】
図13は、画分F2−4の抽出画分A及びBの化合物のHL60に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。画分F2−4から分離した抽出画分A及び抽出画分Bの化合物に対して、HL60細胞を用いて抽出画分A及び抽出画分Bの試料の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法により測定し、最終濃度を5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、及び200μg/mLとなるように被検液を調整し、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。抽出画分A及び抽出画分Bの化合物いずれにも抗腫瘍作用が認められた。
【0069】
実施例2 冬虫夏草の菌糸体培養液からの有効成分の抽出
サナギタケ菌子体培養液1680mLを熱水抽出後、減圧乾燥し、乾燥粉末31gを得た。この乾燥粉末に50%メタノール水溶液500mLを加え、環流冷却を付け1時間加熱抽出を2回行い、その全ろ液を減圧濃縮しメタノール画分(F2)4.2gの乾燥エキスを得た。
【0070】
その後、実施例1と同様の方法で有効成分を得た。実施例1と同様に冬虫夏草の菌糸体培養液から得られた抽出物にも抗腫瘍作用が認められた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物並びに該抗ガン作用を有する組成物を含有する食品及び薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンは、日本での死亡原因の第1位であり、老化と共に自然に発生してくる病気である。しかし、ガンは食事やライフスタイルを改善することによりある程度予防できる病気でもある。近年、様々な食品の抗ガン作用が研究され、食品中に含まれる抗ガン物質が特定されてきている。しかし、抗ガン物質が含まれている食品を摂取することにより、ガンを予防するには、その食品を大量に摂取する必要があり、現実的ではない。そこで、食品等に配合することができる抗ガン作用を有する化合物が望まれている。
【0003】
抗ガン作用を有する化合物としては、腫瘍細胞の核酸合成を阻害する核酸塩基を修飾したフルオロウラシル等が知られ、さらに、核酸塩基金属塩として、ウラシルの6位にゲルマニウムが結合した核酸塩基金属塩も知られている(特許文献1)。しかしながら、フルオロウラシル等の抗ガン剤は、副作用が強く、又、ゲルマニウムは毒性が強いという問題を有しており、食品等に配合するのは困難である。
【0004】
これに対して、中国古来の漢方薬として用いられてきた冬虫夏草や、ウコン等は、様々な薬理効果があるとともに安全なものであることから、近年注目を浴びている。漢方薬として珍重されてきた冬虫夏草は、コウモリガ科の蛾の幼虫に寄生して成長するバッカクキン科冬虫夏草属(Cordyceps)の菌種の一種であり、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布している。この冬虫夏草は、医薬品、医薬部外品、飲食物としての利用が進んできている。
【0005】
冬虫夏草の薬理効果としては、冬虫夏草を抽出して得られた抽出物が、免疫賦活効果、抗腫瘍性効果、血糖値降下作用、血圧降下作用、アポトーシス誘導機能を有することが従来知られており、当該抽出物を免疫賦活やガンの予防又は治療を目的として医薬品、医薬部外品、飲食物とすることも知られている(特許文献2参照)。しかしながら、冬虫夏草からの抽出物では、有効成分の均一性を確保するのが困難であり、安定的な効果を得られないという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献3では、冬虫夏草から有効成分を単離し、その成分を用いて、エリテマトーデス性腎炎及び/又はIgA腎炎を予防及び/又は治療するための方法が開示されている。しかしながら、冬虫夏草中のコルジセピンが抗ガン作用を有することが開示されているが、冬虫夏草の他の成分を含有する抗ガン作用を有する組成物については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭59−35918号公報
【特許文献2】特開2005−35928号公報
【特許文献3】特許第3823030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであって、冬虫夏草(Cordyceps)及びその菌糸体培養液から抽出される成分を含有する抗ガン作用を有する組成物を日常的に摂取することができる食品に配合することにより、もしくはそれら成分を含有する組成物を薬品に配合することにより、ガンを予防又は改善することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を下記条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物に関する。
カラム:LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製);
移動相:A 1%ギ酸水溶液、B メタノール;
グラジエント:A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配;
流速:1.0〜1.5mL/min
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1で得られた前記画分F2−4を下記条件のHPLCに供して得られた画分のうち、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及び/又はリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bに含まれる成分を含有する請求項1記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
カラム:コスモシール5C18・MS・II 4.6×250mm;
移動相:A 0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、B 30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7
グラジエント:0分 A(100%)/B(0%)→25分 A(0%)/B(100%)→35分まで A(0%)/B(100%)保持
流速:0.8mL/min;
カラム温度:40℃;
検出:UV検出器 波長254nm
【0011】
請求項3に係る発明は、前記画分F2−4が、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含むことからなることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記核酸塩基アルカリ金属塩及び前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の金属塩からなることを特徴とする請求項3記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記核酸塩基誘導体が、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の誘導体からなることを特徴とする請求項3又は4記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、核酸塩基マグネシウム塩であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品に関する。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び2に係る発明によれば、冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出された成分は安全であるので、この成分を含有する組成物は毎日摂取することができ、これにより日常的に腫瘍細胞の増殖を抑制し、ガンを予防又は改善することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2記載の組成物において、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、請求項3記載の組成物において、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の核酸塩基アルカリ金属塩及び核酸塩基アルカリ土類金属塩を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、請求項3又は4記載の組成物において、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の核酸塩基誘導体を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、請求項3乃至5のいずれかに記載の組成物において、核酸塩基マグネシウム塩を含有する抗ガン作用を有する組成物であるため、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品であるので、安全性の高い抗ガン作用を有する組成物を毎日簡便に摂取することができることから、効率良く日常的にガンを予防又は改善することができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品であるので、効率良くガンを予防又は改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】培養サナギタケ菌糸体の各分画部の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【図2】培養サナギタケ菌糸体のメタノール抽出画分のクロマトグラムである。
【図3】図2のクロマトグラムの画分F2−4の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【図4】画分F2−4のHPLCクロマトグラムと標準品のHPLCクロマトグラムを比較した図である。
【図5】図4のピークBの化合物のLC−MS分析結果である。
【図6】図4のピークBの化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図4のピークBの化合物のICP−MS分析結果である。
【図8】図4のピークAの化合物のLC−MS分析結果である。
【図9】図4のピークAの化合物のIR分析結果である。
【図10】図4のピークAの化合物のUV分析結果である。
【図11】図4のピークAの化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図12】図4のピークAの化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図13】図4のピークA及びBの化合物のHL60に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る組成物は、冬虫夏草及びその菌糸体培養液に含まれている抗ガン作用を有する成分を含有する組成物である。以下に、冬虫夏草から抽出された成分を含有する組成物について詳述する。
【0026】
冬虫夏草とは、コウモリガ科の蛾の幼虫に寄生して成長するバッカクキン科冬虫夏草属(Cordyceps)の菌種の一種であり、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布している。これまで、中国古来の漢方薬として、用いられており、非常に高価なものとして珍重されている。
【0027】
冬虫夏草の薬理効果としては、冬虫夏草を抽出して得られた抽出物が、免疫賦活効果、抗腫瘍性効果、血糖値降下作用、血圧降下作用、アポトーシス誘導機能を有することが知られており、当該抽出物は免疫賦活やガンの予防又は治療を目的として用いられている。
【0028】
本発明で用いられる冬虫夏草としては、冬虫夏草乾燥物、冬虫夏草抽出物及び培養サナギダケ菌糸体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で用いられる冬虫夏草の菌糸体培養液としては、サナギタケ菌糸体培養液が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
冬虫夏草及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出する。特に、冬虫夏草の菌糸体培養液を用いる際には熱水抽出を行うのが好ましい。有効成分の抽出には、熱水抽出液のほうを使用する。
【0030】
冬虫夏草及び/又はその菌糸体培養液、又は上記熱水抽出液を抽出する。
抽出溶媒としては、含水アルコールを用いる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールを挙げることができ、メタノールが好適に使用される。
【0031】
抽出操作は、抽出残渣に対して1回又はそれ以上繰り返すことが好ましい。これにより抽出効率を向上させることができるからである。尚、抽出に用いる溶媒は同じ溶媒を用いてもよいし、異なる溶媒を用いてもよい。
【0032】
上記抽出物を、逆相カラムクロマトグラフィーに供し、粗分画する。カラムはLC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製)を使用し、移動相Aが1%ギ酸水溶液、移動相Bがメタノールで、A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配でグラジエント分離を行う。流速は1.0〜1.5mL/minで行う。
【0033】
上記粗分画により、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)が得られる。この画分F2−4を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、さらに分画する。コスモシール5C18・MS・II(4.6×250mm)カラムを用いて、移動相Aが0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、移動相Bが30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7であり、A(100%)/B(0%)で分離を開始し、25分でA(0%)/B(100%)となるようにグラジエント分離を行い、その後10分間A(0%)/B(100%)の条件を保持する。流速は0.8mL/min、カラム温度は40℃とし、UV254nmで検出を行う。
【0034】
上記分画により、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及びリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bが得られる。
【0035】
後述の実施例で記述するHPLCの分析結果(図4参照)から判別することができる如く、上記画分F2−4は、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含む。
【0036】
本発明に用いられる核酸塩基アルカリ金属塩及び核酸塩基アルカリ土類金属塩は、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の核酸塩基金属塩である。
【0037】
本発明に用いられる核酸塩基誘導体は、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の核酸塩基誘導体である。
【0038】
本発明で使用する核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体は、必ずしも冬虫夏草及びその菌糸体培養液の抽出物から得られるものでなくてもよく、他の植物又は動物からの抽出物であってもよいし、或いは標準品であってもよい。
【0039】
ウラシル金属塩とは、核酸塩基であるウラシルに金属塩が結合したものであり、ウラシル誘導体とは、核酸塩基であるウラシルの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。ウラシルは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0040】
【化1】

【0041】
アデニン金属塩とは、核酸塩基であるアデニンに金属塩が結合したものであり、アデニン誘導体とは、核酸塩基であるアデニンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。アデニンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0042】
【化2】

【0043】
グアニン金属塩とは、核酸塩基であるグアニンに金属塩が結合したものであり、グアニン誘導体とは、核酸塩基であるグアニンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。グアニンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0044】
【化3】

【0045】
シトシン金属塩とは、核酸塩基であるシトシンに金属塩が結合したものであり、シトシン誘導体とは、核酸塩基であるシトシンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。シトシンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0046】
【化4】

【0047】
チミン金属塩とは、核酸塩基であるチミンに金属塩が結合したものであり、チミン誘導体とは、核酸塩基であるチミンの一部が他の原子や官能基によって置換されたものである。チミンは、核酸を形成する塩基の1つであり、以下の構造を有する。
【0048】
【化5】

【0049】
本発明に用いられるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウムが挙げられ、本発明に用いられるアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム及びカルシウムが挙げられる。
【0050】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は安全であるので、直接、食品類に調整することができる。また、本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は、医薬部外組成物、あるいは医薬組成物として、薬品類に調整することができる。さらに、食品類、医薬部外品類、医薬品類の添加剤もしくは、配合剤として使用してもよく、通常用いられる添加剤又は配合剤に混合して用いてもよい。配合比率は食品類、薬品類によって適宜変更することができる。
【0051】
食品類、医薬部外品類、医薬品類に配合する本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分の形態は特に限定されず、上記夫々に配合可能で最適な形態を任意に選択することができ、液状、固形状、粉末状、ペースト状、ゲル状等のいずれの形態でもよい。
【0052】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の食品類としては、本発明の組成物の効果を損なうものでなければよく、例えば、錠菓、飴、トローチ、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、ようかん、パン、クッキー、ビスケット、スナック、クラッカー、アルコール飲料、コーヒー飲料、ジュース、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料等が挙げられ、これらの飲食品類に本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を適量含有させて提供することができる。本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の上記食品類は、常法により製造することができる。
【0053】
上記した食品類は、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、DL−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルアラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等、本発明の組成物の効果を損なうものでない通常の食品原料として使用されている添加剤を適宜配合して常法により製造することができる。
【0054】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分は、有効成分量として、10mg〜500mg/日、より好ましくは100mg〜300mg/日で摂取されるのが好ましい。ラット亜急性毒性については、培養サナギタケ抽出乾燥エキス1000mg/kg投与において、特記すべき事項は観察されなかった。
【0055】
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を医薬組成物とし、その医薬組成物を配合する医薬品としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、エキス剤等の経口医薬品、軟膏、眼軟膏、ローション、クリーム、貼付剤、坐剤、点眼薬、点鼻薬、注射剤等の非経口医薬品が挙げられ、これらの医薬品類に本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分を適量含有させて提供することができる。
本発明の冬虫夏草及びその菌糸体培養液から抽出される成分配合の上記医薬品類は、常法により製造することができる。
【0056】
上記した医薬品類には、各種添加剤を適宜配合することができる。
使用する添加剤は、本発明の組成物の効果を損なうものでなければ通常用いられているものを使用することができ、その例としてはデンプン、乳糖、白糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、又はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体、各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等の油性担体等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0058】
実施例1 冬虫夏草からの有効成分の抽出
培養サナギタケ菌糸体の乾燥分画部(112.0g)を酢酸エチル、メタノール、及び水で抽出し、酢酸エチル可溶部(F1)0.63g、メタノール可溶部(F2)13.0g、及び水可溶部(F3)61.8gの画分を得た。ヒト由来白血病細胞(HL60)、ヒト由来胃ガン細胞(MKN45)、ラット由来腫瘍細胞(C6)、及びマウス由来骨肉腫細胞(LM8)を使用して夫々の画分の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。
【0059】
抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法にて測定した。HL60細胞、MKN45細胞、C6細胞及びLM8細胞の各種細胞を2×104個/mLに調整した細胞浮遊液を96ウェルプレートに播種し、最終濃度が200μg/mLになるように被検液を添加した。その後、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。
図1は、培養サナギタケ菌糸体の各分画部の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。図1のグラフからも明らかなように、メタノール画分(F2)が、腫瘍細胞の種類に関係なく極めて強い抗腫瘍作用を示すことが見出された。
【0060】
図2は、メタノール画分(F2)を逆相カラムクロマトグラフィーにて分画したクロマトグラムを示している。分離は、LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製)カラムを使用し、移動相Aが1%ギ酸水溶液、移動相Bがメタノールで、A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配でグラジエント分離を行った。流速は1.0〜1.5mL/min、カラム温度は室温で行った。
【0061】
次いで、MKN45細胞を用いて、上記工程で得られた図2に示すF2−1〜F2−6夫々の画分の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法により測定し、各画分から得られた試料の最終濃度を5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL及び400μg/mLとなるように被検液を調整し、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。
【0062】
図3はF2−4の画分の抗腫瘍作用を示したグラフである(F2−1〜F2−3、F2−5及びF2−6は、図示せず)。画分F2−4に含まれる物質にMKN45細胞に対して顕著な抗腫瘍作用が認められた。
【0063】
この画分F2−4を、HPLCを用いてさらに分画した。このHPLC分画は、コスモシール5C18・MS・II(4.6×250mm)カラムを用いて、移動相Aが0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、移動相Bが30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7であり、A(100%)/B(0%)で分離を開始し、25分でA(0%)/B(100%)となるようにグラジエント分離を行い、その後10分間A(0%)/B(100%)の条件を保持した。流速は0.8mL/min、カラム温度は40℃とし、UV254nmで検出を行った。
【0064】
図4は、画分F2−4のHPLCを用いて分離したクロマトグラム(下図)と標準品のHPLCを用いて分離したクロマトグラム(上図)を比較した図である。標準品としては、市販のアデニン、グアニン、シトシン、チアミン、及びウラシル(和光純薬株式会社製)を用いた。その結果、図4に示すピークA(リテンションタイム4.6min)を有する抽出画分A、及びピークB(リテンションタイム5.2min)を有する抽出画分Bを得た。画分F2−4のピークAはアデニン及び/又はグアニンと、画分F2−4のピークBがウラシルと同じリテンションタイムを有している。従って、抽出画分Aはアデニン及び/又はグアニンの骨格構造を有し、抽出画分Bはウラシルの骨格構造を有していると考えられる。
【0065】
図5は、画分F2−4の抽出画分Bの化合物のLC−MS分析結果である。図5中の(I)及び(II)のチャートは、化合物のイオン化(ESIイオン化法)の強度の違いによるものである。(I)は、ソフトイオン化の条件で行い、(II)は電子を分子に衝突させる強い条件でイオン化を行った。(I)の条件の弱いイオン化の場合は、137の質量を示すピークが認められ、(II)の強いイオン化の場合は、112の質量を示すピークが認められた。(II)のイオン化で検出された化合物の質量が、ウラシルと同じ質量である112であること、及び図4のHPLC分析結果もウラシルと同じリテンションタイムであることからすると、抽出画分Bの化合物は、ウラシルの骨格構造を有することが推定された。これを決定するために、抽出画分Bの化合物の1H−NMRスペクトルを行った。1H−NMRの条件は、5.4ppm(1H)、7.3ppm(1H)、10.9ppm(2H)で行った。
図6は、画分F2−4の抽出画分Bの化合物の1H−NMRスペクトルである。図6に示されるように、抽出画分Bの化合物の骨格構造がウラシルであることが明らかとなった。
(I)のイオン化では、抽出画分Bの質量が137となっているが、これは、ウラシルにアルカリ土類金属であるマグネシウム(24)と、水素が付いた形態で検出されたためと考えられ、(II)の強い条件でイオン化を行うことにより、マグネシウムが外れ、ウラシルのみの質量が得られたと考えられる。
【0066】
図7は、画分F2−4の抽出画分BのICP−MS分析結果を示している。抽出画分Bのサンプルを1%硝酸に溶解し、全体量を3mlとして、ICP−MS(島津ICPM8500)で分析した。図7に示されるようにNa、K、Mg等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属が多く検出された。従って、これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、抽出画分Bの化合物の骨格構造であるウラシルと結合していると考えられ、質量分析では、そのイオン化により、ウラシルとの結合が外れてウラシルのみの質量或いは比較的結合の強いウラシルマグネシウム金属塩としての質量が検出されたことを示唆するものである。
【0067】
図8〜12は、それぞれ抽出画分Aの化合物のLC−MS(ESIイオン化法)、IR及びUV分析結果並びに1H−NMR及び13C−NMRスペクトルである。図11及び図12に示されるように、抽出画分Aの化合物の1H−NMR及び13C−NMRのシグナルはアデニン及びグアニンと一致しなかった。LC−MS(ESIイオン化法)分析により、135の質量を示すピークが認められた。IR(KBr法)分析により抽出画分Aの化合物は、3600cm−1〜3100cm−1から水素結合−OH又は−NH、1500cm−1〜1700cm−1からC=O、又はC=C、C=Nという構造を有することが示唆された。UV分析より抽出画分Aの化合物は、λ(H2O)max 260nmから環状ジエン化合物であることが示唆された。1H−NMR(d2 H2O)スペクトルより抽出画分Aの化合物は、3.6ppmから(3H)メトキシ、5.1ppmから(5H)二重結合のプロトン、8.7ppmから(2H)ヘテロ二重結合のプロトンを有することが示唆された。13C−NMRスペクトルより抽出画分Aの化合物は、49.7ppmからO又はNに結合したカーボン、171.5ppmからカルボニル炭素を有することが示唆された。以上を総合的に判断すると、抽出画分Aの化合物は、複素環式化合物等の核酸塩基誘導体と示唆される。
【0068】
図13は、画分F2−4の抽出画分A及びBの化合物のHL60に対する抗腫瘍作用を示すグラフである。画分F2−4から分離した抽出画分A及び抽出画分Bの化合物に対して、HL60細胞を用いて抽出画分A及び抽出画分Bの試料の腫瘍細胞に対する抗腫瘍作用を検討した。抗腫瘍作用試験は、トリパンブルー染色法により測定し、最終濃度を5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、及び200μg/mLとなるように被検液を調整し、3日間インキュベーション後、生細胞及び死細胞を顕微鏡下で算定した。抽出画分A及び抽出画分Bの化合物いずれにも抗腫瘍作用が認められた。
【0069】
実施例2 冬虫夏草の菌糸体培養液からの有効成分の抽出
サナギタケ菌子体培養液1680mLを熱水抽出後、減圧乾燥し、乾燥粉末31gを得た。この乾燥粉末に50%メタノール水溶液500mLを加え、環流冷却を付け1時間加熱抽出を2回行い、その全ろ液を減圧濃縮しメタノール画分(F2)4.2gの乾燥エキスを得た。
【0070】
その後、実施例1と同様の方法で有効成分を得た。実施例1と同様に冬虫夏草の菌糸体培養液から得られた抽出物にも抗腫瘍作用が認められた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を下記条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物。
カラム:LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製);
移動相:A 1%ギ酸水溶液、B メタノール;
グラジエント:A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配;
流速:1.0〜1.5mL/min
【請求項2】
請求項1で得られた前記画分F2−4を下記条件のHPLCに供して得られた画分のうち、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及び/又はリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bに含まれる成分を含有する請求項1記載の抗ガン作用を有する組成物。
カラム:コスモシール5C18・MS・II 4.6×250mm;
移動相:A 0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、B 30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7
グラジエント:0分 A(100%)/B(0%)→25分 A(0%)/B(100%)→35分まで A(0%)/B(100%)保持;
流速:0.8mL/min;
カラム温度:40℃;
検出:UV検出器 波長254nm
【請求項3】
前記画分F2−4が、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含むことからなることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項4】
前記核酸塩基アルカリ金属塩及び前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の金属塩からなることを特徴とする請求項3記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項5】
前記核酸塩基誘導体が、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の誘導体からなることを特徴とする請求項3又は4記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項6】
前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、核酸塩基マグネシウム塩であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品。
【請求項1】
冬虫夏草(Cordyceps)及び/又はその菌糸体培養液を必要に応じ熱水抽出し、次いで前記冬虫夏草及び/又は前記その菌糸体培養液、又はそれらの熱水抽出液を含水アルコール抽出し、次いでこの含水アルコール抽出液を下記条件の逆相カラムクロマトグラフィーに供して粗分画し得られる画分のうち、リテンションタイム4.4〜5.5分の画分(画分F2−4)に含まれる成分を含有する抗ガン作用を有する組成物。
カラム:LC−SORB SP−B−ODS 200g充填,内径40mm(ケムコ社製);
移動相:A 1%ギ酸水溶液、B メタノール;
グラジエント:A(100%)/B(0%)からA(70%)/B(30%)の直線勾配;
流速:1.0〜1.5mL/min
【請求項2】
請求項1で得られた前記画分F2−4を下記条件のHPLCに供して得られた画分のうち、リテンションタイム4.4〜4.9分の抽出画分A及び/又はリテンションタイム5.0〜5.5分の抽出画分Bに含まれる成分を含有する請求項1記載の抗ガン作用を有する組成物。
カラム:コスモシール5C18・MS・II 4.6×250mm;
移動相:A 0.02M KH2PO4(リン酸でpH3に調整)、B 30%メタノール:KH2PO4(リン酸でpH3に調整)=3:7
グラジエント:0分 A(100%)/B(0%)→25分 A(0%)/B(100%)→35分まで A(0%)/B(100%)保持;
流速:0.8mL/min;
カラム温度:40℃;
検出:UV検出器 波長254nm
【請求項3】
前記画分F2−4が、核酸塩基アルカリ金属塩、核酸塩基アルカリ土類金属塩及び核酸塩基誘導体のうち少なくとも一つを含むことからなることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項4】
前記核酸塩基アルカリ金属塩及び前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、ウラシル金属塩、アデニン金属塩、グアニン金属塩、シトシン金属塩及びチミン金属塩からなる群から選択される1以上の金属塩からなることを特徴とする請求項3記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項5】
前記核酸塩基誘導体が、ウラシル誘導体、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体及びチミン誘導体からなる群から選択される1以上の誘導体からなることを特徴とする請求項3又は4記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項6】
前記核酸塩基アルカリ土類金属塩が、核酸塩基マグネシウム塩であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする食品。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の抗ガン作用を有する組成物を含有することを特徴とする薬品。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【公開番号】特開2012−162479(P2012−162479A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23136(P2011−23136)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(505432636)日本タブレット株式会社 (8)
【出願人】(591130537)株式会社両双 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(505432636)日本タブレット株式会社 (8)
【出願人】(591130537)株式会社両双 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]