説明

冷凍サイクル

【課題】一次側冷凍サイクルの冷媒として炭化水素系冷媒を用いると、炭化水素系冷媒は潤滑油との相互溶解性が高く、圧縮機内の潤滑油には多量の冷媒が溶解して粘度が低下する為に、圧縮機からの油吐出量が増加し、一次側サイクル内の圧力損失が増加したり、熱交換器の伝熱性能が低下したりして、一次側冷凍サイクルのCOPが低下する。
【解決手段】一次側冷凍サイクルAとして冷凍機油が封入された圧縮機1と4方弁2と、そして第一の熱交換器3と絞り装置6と中間熱交換器5が配管結合され、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを少なくとも含有し、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を封入し、二次側サイクルBとして中間熱交換器5と熱交換するように構成されたブライン熱交換器13とブラインポンプ11と室内熱交換器12とが配管結合されたことを特長とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩素原子を含まず、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを冷媒として用いる2次サイクルを有す冷凍サイクルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は特許文献に記載された従来の自動車用冷却サイクル装置を示すものである。図2に示すように、1は圧縮機、3は凝縮器、6は絞り装置である膨張弁、5は蒸発器であり、これらは配管によって順次接続され、冷凍サイクルを構成している。さらにこの冷凍サイクルの冷媒として、可燃性冷媒であるR290やR600aなどの炭化水素系冷媒が用いられ、一次側サイクルを構成している。また、圧縮機1には潤滑油が封入され、この潤滑油は冷媒とともに冷凍サイクルを循環している。
【0003】
さらに、11はブライン循環ポンプ、12は室内熱交換器、13はブライン側熱交換器であり、これらは配管によって順次接続され、二次側サイクルを構成している。この二次側サイクルには、熱搬送体として、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液などのブラインが用いられている。
【0004】
20は、一次側サイクルの蒸発器5と二次側サイクルのブライン熱交換器13を納めた容器であり、この容器20内では一次側サイクルの蒸発器5である冷媒配管と二次側サイクルのブライン熱交換器13であるブライン配管が、接触しながら蛇行して設置されている。また、この容器20には不凍液が満たされている。
【0005】
以上の様にして、二次サイクルを構成し、人が居住する住空間には二次側サイクルを構成するブラインを循環させる。このように可燃性冷媒が人が居住する住空間内に流れないよう構成して、機器の安全性を高めている。即ち、一次側サイクルを屋外などの開放空間に設置することにより、万一可燃性冷媒が一次側サイクルから洩れても、室内で爆発が発生するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−35266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、一次側冷凍サイクルの冷媒として炭化水素系冷媒を用いると、炭化水素系冷媒は潤滑油との相互溶解性が高く、圧縮機内の潤滑油には多量の冷媒が溶解して粘度が低下する為に圧縮機からの油吐出量が増加し、一次側サイクル内の圧力損失が増加したり、熱交換器の伝熱性能が低下したりして、一次側冷凍サイクルのCOPが低下する場合があった。
【0008】
また、可燃性冷媒の使用時の安全性を高める為に、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は早期に洩れ箇所を発見し修理したりする事が要求される。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するもので、一次側冷凍サイクルと二次側熱搬送サイクルを有する機器として二次側熱搬送サイクルを室内側に配置して安全性を向上し、この機器のエネルギー効率を向上し、冷凍サイクルの冷媒と圧縮機の潤滑油の相溶性を改良し、機器のCOPを高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を達成するために、本発明の請求項1に係わる冷凍サイクルは、一次側冷凍サイクルとして冷凍機油が封入された圧縮機と4方弁と、そして第一の熱交換器と絞り装置と一次側中間熱交換器とが配管結合され、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を封入し、二次側サイクルとして前記中間熱交換器と熱交換するように構成されたブライン熱交換器とブラインポンプと室内熱交換器とが配管結合され、ブラインを封入して構成し、二次側サイクルを室内側に配置したことを特長とする。
【0011】
これによって、微燃性を有する炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を封入し、2次構成サイクルを構成する事で、室内側の安全性を高めることができ、また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できる。2次側サイクルは、万一洩れが発生しても居住空間の人体に何ら影響がないブラインにより室内を冷暖房するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次サイクルを有する冷凍サイクルは、微燃性を有す炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を封入し、2次構成サイクルを構成して二次側サイクルを室内側に配置する事で、室内側の安全性を高めることができ、また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できるもので、2次側サイクルはブラインにより室内を冷暖房するもので、冷媒洩れが発生しても居住空間の人体に何ら影響がないものである。
【0013】
また、一次側冷凍サイクルと二次側サイクルを有する機器のエネルギー効率を向上し、一次側冷凍サイクルの冷媒と圧縮機の潤滑油の相溶性を改良し、機器のCOPを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における冷凍サイクル図
【図2】従来の冷凍サイクル図
【発明を実施するための形態】
【0015】
請求項1に記載の冷凍サイクルは、一次側冷凍サイクルとして冷凍機油が封入された圧縮機と4方弁と、そして第一の熱交換器と絞り装置と一次側中間熱交換器とが配管結合され、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を封入し、二次側サイクルとして前記中間熱交換器と熱交換するように構成されたブライン熱交換器とブラインポンプと室内熱交換器とが配管結合され、ブラインを封入して構成し、二次側サイクルを室内側に配置したことを特長とする。
【0016】
これによって、微燃性を有する炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を一次側冷凍サイクルに封入し、2次構成サイクルを構成して二次側サイクルを室内側に配置する事で、安全性を高めることができ、また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減
されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できる。2次側サイクルは、万一洩れが発生しても居住空間の人体に何ら影響がないブラインにより室内を冷暖房するものである。
【0017】
また、一次側冷凍サイクルと二次側サイクルを有する機器のエネルギー効率を向上し、一次側冷凍サイクルの冷媒と圧縮機の潤滑油の相溶性を改良し、機器のCOPを高めることができる。
【0018】
請求項2に記載の冷凍サイクルは、ハイドロフルオロオレフィンはテトラフルオロプロペンを少なくとも含有し、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンを、地球温暖化係数が5以上750以下、望ましくは300以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を一次側冷凍サイクルに封入した二次構成の冷凍サイクルを提供するもので、これによって、微燃性を有する炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを少なくとも含有し、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を封入し、2次構成サイクルを構成する事で、安全性を高めることができ、また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できる。また、温暖化係数を低減する事が可能となり、更に機器のCOPを向上する事ができる。また、請求項1に記載の冷凍サイクルに封入する冷媒の地球温暖化係数が750以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を使用するので、回収されない冷媒が大気に放出されても地球温暖化に対しその影響をできるだけ小さく保つことができる。
【0019】
本発明の請求項3に係わる冷凍サイクルは、冷凍機油はポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコールまたはそのモノエーテルとポリビニルエーテルの共重合体、ポリオールエステル類およびポリカーボネート類の中から選ばれる少なくとも1種の含酸素化合物を主成分とする合成油としたことを特徴とする。これにより、冷凍機油と冷媒とは所定の相溶性を持つことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の冷凍サイクル図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の冷凍サイクルは、一次側冷凍サイクルAに冷凍機油が封入された圧縮機1とアキュームレータ4と4方弁2と、そして第一の熱交換器3と絞り装置6と中間熱交換器5とを配管結合し、二次側サイクルBに、中間熱交換器5と熱交換できるように構成されたブライン熱交換器13とブラインポンプ11と室内熱交換器12とを配管結合したものである。この一次側冷凍サイクルAには、熱搬送体として、微燃性を有する炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを少なくとも含有し、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を封入し、二次側サイクルBには、熱搬送体として、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液などのブラインが封入されている。
【0023】
20は、一次側冷凍サイクルAの中間熱交換器5と二次側サイクルBのブライン熱交換器13とを納めた容器であり、この容器20内では中間熱交換器5の冷媒配管とブライン熱交換器13のブライン配管とが接触しながら蛇行して設置されている。また、この容器20には不凍液が満たされている。
【0024】
以上の構成で動作を説明する。一次側冷凍サイクルAの4方弁2を切り替える事で、中間熱交換器5が蒸発器又は凝縮器に切り替わる。容器20の内部で中間熱交換器5とブライン熱交換器13とで熱伝達されて、ブラインポンプ11によりブラインが室内熱交換器12へ熱とともに搬送されて、二次側サイクルBを室内に配置して、室内を冷房又は暖房するものである。
【0025】
これによって、微燃性を有す炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを少なくとも含有し、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を一次側冷凍サイクルAに封入し、ブラインを二次側サイクルBに封入して2次構成サイクルを構成する事で、室内側の安全性を高めることができる。また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できる。2次側サイクルBはブラインにより室内を冷暖房するもので、冷媒洩れが発生しても居住空間の人体に何ら影響がないものである。
【0026】
また、機器のエネルギー効率を向上し、一次側冷凍サイクルAの冷媒と圧縮機1の潤滑油の相溶性を改良し、機器のCOPを高めることができる。
【0027】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の冷凍サイクルは、実施の形態1のシステム構成に、ハイドロフルオロオレフィンはテトラフルオロプロペンを少なくとも含有し、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンを地球温暖化係数(GWP)が5以上750以下、望ましくは300以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を封入した二次構成の冷凍サイクルを提供するもので、これによって、微燃性を有す炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンを少なくとも含有し、燃焼性のない2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を一次側冷凍サイクルに封入し、2次構成サイクルを構成する。この冷凍サイクルに封入されるハイドロフルオロオレフィンは、具体的には2成分混合の場合にはジフルオロメタンの場合はGWP300以下で44wt%、ペンタフルオロエタンの場合はGWP750以下で21.3wt%、GWP300以下で8.4wt%と混合することになる。GWPが750でR410Aを使用する時のGWP比は36%となり、GWPが300でR410Aを使用する時のGWP比は14%となる。これによって回収されない冷媒が大気に放出されても地球温暖化に対しその影響をできるだけ小さく保ち、且つ冷凍サイクルのCOPをR410Aを使用する時と同等に維持する事ができる。即ち前記比率で混合された混合冷媒は、非共沸混合冷媒にも関わらず温度差を小さくでき擬似共沸混合冷媒に挙動が近づくため、冷却サイクル装置の冷却性能や冷却性能係数(COP)を改善することができる。
【0028】
これによって、安全性を高めることができ、また、装置からの冷媒洩れを抑制したり、万一冷媒漏れが生じた場合は、早期に洩れ箇所を発見して修理したりする事の緊急性が低減されることとなり、機器の構成を簡単にしてコストを低減できる。また、温暖化係数を低減する事が可能となり、更に機器のCOPを向上する事ができる。
【0029】
なお、実施の形態1のシステム構成の圧縮機1に封入される冷凍機油は、基油としてポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコールまたはそのモノエーテルとポリビニルエーテルの共重合体、ポリオールエステル類およびポリカーボネート類の中から選ばれる少なくとも1種の含酸素化合物を主成分として、それらに極圧剤、油性剤、酸化防止剤、酸捕捉剤および泡消剤などの各種の添加剤を必要に応じて選択して加えた、以上の冷媒と必要程度の相溶性を持つ油が望ましい。また、家庭用の空調機など小型の冷却サイクル装置では冷媒の配管内流速が速ければ、アルキルベンゼン類やαオレフィン類など以上の冷媒と相溶性がない油でも使用することがで
きるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかる冷凍サイクル、空気調和機、カーエアコンの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 圧縮機
2 4方弁
3 第一の熱交換器
4 アキュ−ムレータ
5 中間熱交換器
6 絞り装置
11 ブラインポンプ
12 室内熱交換器
13 ブライン熱交換器
A 一次側冷凍サイクル
B 二次側サイクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側冷凍サイクルとして冷凍機油が封入された圧縮機と4方弁と第一の熱交換器と絞り装置と中間熱交換器が配管結合され、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンと、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンとを混合した冷媒を封入し、二次側サイクルとして前記中間熱交換器と熱交換するように構成されたブライン熱交換器とブラインポンプと室内熱交換器とが配管結合され、ブラインを封入して構成し、二次側サイクルを室内側に配置したことを特長とする冷凍サイクル。
【請求項2】
ハイドロフルオロオレフィンはテトラフルオロプロペンを少なくとも含有し、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンを、地球温暖化係数が5以上750以下、望ましくは300以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を一次側冷凍サイクルに封入した請求項1に記載の冷凍サイクル。
【請求項3】
冷凍機油はポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコールまたはそのモノエーテルとポリビニルエーテルの共重合体、ポリオールエステル類およびポリカーボネート類の中から選ばれる少なくとも1種の含酸素化合物を主成分とする合成油とした請求項1又は2に記載の冷凍サイクル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−261679(P2010−261679A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114310(P2009−114310)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】