説明

冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油

【課題】不飽和フッ化炭化水素冷媒存在下での安定性に優れ、冷媒循環サイクルに使用されるナイロン等のポリアミド樹脂の劣化を抑制することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機用作動流体組成物は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、不飽和フッ化炭化水素冷媒と、を含有することを特徴とする。また、本発明の冷凍機油は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、を含有し、不飽和フッ化炭化水素冷媒と共に用いられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油に関するものであり、詳しくは、不飽和フッ化炭化水素等と冷凍機油とを含有する冷凍機用作動流体組成物、ならびにその冷凍機油に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに替わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒として用いる場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。
【0004】
HFC冷媒のうち、HFC−134a、R407C、R410Aは、カーエアコン用、冷蔵庫用またはルームエアコン用の冷媒として標準的に用いられている。しかし、これらのHFC冷媒は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロであるものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、規制の対象となりつつある。そこで、これらHFCに替わる冷媒の開発が急務となっている。
【0005】
このような背景の下、上記HFCに代わる冷媒として、ODPおよびGWPの双方が非常に小さく、不燃性であり、かつ、冷媒性能の尺度である熱力学的特性が上記HFCとほぼ同等であるフルオロプロペン類の冷媒の使用が提案されている。さらに、フルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒の使用も提案されている(特許文献5を参照)。
【0006】
また、不飽和フッ化炭化水素冷媒あるいは不飽和フッ化炭化水素と飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒と共に使用可能な冷凍機油としては、鉱油、アルキルベンゼン類、ポリアルファオレフィン類、ポリアルキレングリコール類、モノエステル類、ジエステル類、ポリオールエステル類、フタル酸エステル類、アルキルエーテル類、ケトン類、炭酸エステル類、ポリビニルエーテル類などを用いた冷凍機油が提案されている(特許文献5〜7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/094303号パンフレット
【特許文献6】特表2006−512426号公報
【特許文献7】国際公開WO2005/103190号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献5、6、7に記載されているように、不飽和フッ化炭化水素冷媒を用いる冷凍システムにおいては、CFCやHCFCに使用されている鉱油やアルキルベンゼン等の炭化水素類、HFCに使用されているポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテルなどの冷凍機油のいずれも適用可能であると考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、これら従来の冷凍機油を当該システムにそのまま転用しただけでは、各種要求性能を高水準で達成することができないことが判明した。特にポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテルといったエーテル系冷凍機油の場合、不飽和フッ化炭化水素存在下では冷媒や冷凍機油が分解しシステムの不具合を起こすおそれがある。例えばカーエアコン等配管にフレキシブルホースが用いられている冷媒循環サイクルではその内面にナイロン等のポリアミド樹脂が用いられており、不飽和フッ化炭化水素およびポリアルキレングリコールの存在下ではポリアミド樹脂が劣化しやすい傾向にある。
【0009】
なお、冷凍機油の安定性の向上を目的として、エポキシ化合物等の酸捕捉剤を配合する方法が提案されている(特許文献9参照)。しかしながら、本発明者らの検討によれば、酸捕捉剤の配合では不飽和フッ化炭化水素存在下での安定性が不十分であり、特にナイロンの劣化を抑制することは困難であることが判明した。
【0010】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、不飽和フッ化炭化水素冷媒存在下での安定性に優れ、冷媒循環サイクルに使用されるナイロン等のポリアミド樹脂の劣化を抑制することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、不飽和フッ化炭化水素冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、を含有し、不飽和フッ化炭化水素冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油を提供する。
【0013】
本発明の冷凍機用流体作動流体組成物は、不飽和フッ化炭化水素冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、不飽和フッ化炭化水素冷媒の少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)を単独で用いてもよく、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)をさらに含有してもよい。
【0015】
さらに、冷媒(A)と冷媒(B)との混合冷媒において、不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ye)および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)から選ばれる少なくとも1種が好ましく;
炭素数3〜5の炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンおよびノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上の通り、本発明によれば、不飽和フッ化炭化水素冷媒存在下での安定性に優れ、冷媒循環サイクルに使用されるナイロン等のポリアミド樹脂の劣化を抑制することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、不飽和フッ化炭化水素冷媒と、を含有することを特徴とする。また、本実施形態に係る冷凍機油は、エーテル系化合物を含有する基油と、カルボジイミド化合物と、を含有し、不飽和フッ化炭化水素冷媒と共に用いられることを特徴とする。ここで、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物には、本実施形態に係る冷凍機油と、不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有する態様が包含される。
【0019】
本実施形態において、基油を構成するエーテル系化合物としては、分子中にエーテル結合を一個以上有している化合物であれば特に制限されない。具体的には、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテルなどが上げられ、中でもポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルが好適に用いられる。
【0020】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
−〔(OR−OR (1)
[式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す。]
【0021】
上記一般式(1)において、R、Rで表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜6である。アルキル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
【0022】
また、R、Rで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
【0023】
、Rで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、R、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。さらに、gが2以上の場合は、同一分子中の複数のR、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。
【0024】
で表される基が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。
【0025】
上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、R、Rのうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが作動媒体との相溶性の点から好ましい。
【0026】
さらには、熱・化学安定性の点から、RとRとの双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。
【0027】
また、製造容易性およびコストの点から、RまたはRのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。
【0028】
上記一般式(1)中のRは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
【0029】
上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、作動媒体との相溶性および粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
【0030】
また、吸湿性や熱・酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
【0031】
上記一般式(1)中のfは、オキシアルキレン基ORの繰り返し数(重合度)を表し、1〜80の整数である。また、gは1〜8の整数である。例えばRがアルキル基またはアシル基である場合、gは1である。Rが水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
【0032】
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
【0033】
一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は好ましくは500〜3000、さらに好ましくは600〜2000、より好ましくは600〜1500であり、nは当該ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記の条件を満たすような数であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が低すぎる場合には不飽和フッ化炭化水素冷媒共存下での潤滑性が不十分となる。他方、数平均分子量が高すぎる場合には、低温条件下で不飽和フッ化炭化水素冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。また、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールにおいては、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.00〜1.20以下であることが好ましい。Mw/Mnが1.20を越えると、不飽和フッ化炭化水素冷媒と冷凍機油との相溶性が不十分となる傾向にある。
【0034】
上記ポリアルキレングリコールの中でも、下記一般式(2)で表されるポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ならびに下記一般式(3)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(4)で表されるポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(5)で表されるポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(6)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(7)で表されるポリエチレンポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(8)で表されるポリプロピレングリコールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
CHO−(CO)−CH (2)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−CH (3)
(式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−H (4)
(式中、kは6〜80の数を示す。)
CHO−(CO)−H (5)
(式中、lは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−H (6)
(式中、mおよびnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−(CO)−H (7)
(式中、mおよびnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す。)
CHCOO−(CO)−COCH (8)
(式中、lは6〜80の数を表す。)
【0035】
また、本実施形態においては、上記ポリアルキレングリコールとして、一般式(9)で表される構成単位を少なくとも1個有するポリアルキレングリコール誘導体を使用することができる。
【化1】


[式(9)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基または下記一般式(10):
【化2】


(式(10)中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基または炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表し、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基またはアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基を表し、rは0〜20の整数を表し、R11は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す)で表される基を表し、R〜Rの少なくとも1つが一般式(9)で表される基である。]
【0036】
上記一般式(9)中、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基または上記一般式(10)で表される基を表すが、炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状または分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基またはアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等があげられる。これらの1価の炭化水素基の中でも、炭素数6以下の1価の炭化水素基、特に炭素数3以下のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0037】
また、上記一般式(10)において、RおよびRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基または炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表すが、これらの中でも炭素数3以下のアルキル基または炭素数6以下のアルコキシアルキル基が好ましい。
【0038】
上記一般式(10)中、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基またはアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基および総炭素数6以下の置換エチレン基を表す。
【0039】
上記一般式(10)中、R11は炭素数の1〜10の1価の炭化水素基を表すが、当該炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状または分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基またはアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6以下の1価の炭化水素基が好ましく、特に炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0040】
上記一般式(9)中、R〜Rのうち少なくとも1つは上記一般式(10)で表される基である。特に、RまたはRはのいずれか一つが上記一般式(10)で表される基であり、且つRまたはRの残りの一つおよびR、Rがそれぞれ水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0041】
本実施形態において好ましく用いられる、上記一般式(9)で表される構成単位を有するポリアルキレングリコールは、一般式(9)で表される構成単位のみからなる単独重合体;一般式(9)で表され且つ構造の異なる2種以上の構成単位からなる共重合体、ならびに一般式(9)で表される構成単位と他の構成単位(例えば下記一般式(11)で表される構成単位)とからなる共重合体の三種類に大別することができる。上記単独重合体の好適例は、一般式(9)で表される構成単位Aを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。
【化3】


[式(11)中、R12〜R15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
【0042】
一方、共重合体の好適例は、一般式(9)で表される二種類の構成単位A、Bをそれぞれ1〜200個有するか、あるいは一般式(9)で表される構成単位Aを1〜200個と一般式(10)で表される構成単位Cを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。
【0043】
これらの共重合体は、構成単位Aと構成単位B(あるいは構成単位C)との交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合体あるいは構成単位Aの主鎖に構成単位Bがグラフト結合したグラフト共重合体のいずれの重合形式であってもよい。
【0044】
ポリアルキレングリコールの水酸基価は特に限定されないが、100mgKOH/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下、最も好ましくは10mgKOH/g以下であるのが望ましい。
【0045】
本実施形態にかかるポリアルキレングリコールは、従来より公知の方法を用いて合成することができる(「アルキレンオキシド重合体」、柴田満太他、海文堂、平成2年11月20日発行)。例えば、アルコール(ROH;Rは上記一般式(1)中のRと同一の定義内容を表す)に所定のアルキレンオキサイドの1種以上を付加重合させ、さらに末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することによって、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールが得られる。なお、上記の製造工程において異なる2種以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、得られるポリアルキレングリコールはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、より酸化安定性に優れる傾向にあることからブロック共重合体であることが好ましく、より低温流動性に優れる傾向にあることからランダム共重合体であることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態において用いられるポリビニルエーテルとしては、例えば下記一般式(12)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物が挙げられる。
【化4】


[式(12)中、R16〜R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R19は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R20は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、sはその平均値が0〜10の数を表し、R16〜R20は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、また一般式(12)で表される構成単位が複数のR19Oを有するとき、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。]
【0047】
また、上記一般式(12)で表される構成単位と、下記一般式(13)で表される構成単位とを有するブロック共重合体またはランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【化5】


[式(13)中、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R21〜R24は構成単位毎に同一でも異なっていてもよい。]
【0048】
上記一般式(12)中のR16〜R18はそれぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基(好ましくは1〜4の炭化水素基)を表し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。かかる炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、等が挙げられるが、R16〜R18としては水素原子が好ましい。
【0049】
一方、上記一般式(12)中のR19は、炭素数1〜10(好ましくは2〜10)の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表す。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルキル芳香族炭化水素基、等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜4の脂肪族鎖式炭化水素基が特に好ましい。
【0050】
また、炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、メトキシメチルエチレン基、1,1−ビスメトキシメチルエチレン基、1,2−ビスメトキシメチルエチレン基、エトキシメチルエチレン基、(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基、(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基等を好ましく挙げることができる。なお、上記一般式(12)中のsはR19Oの繰り返し数を表し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。同一の構成単位内にR19Oが複数ある場合には、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。
【0051】
さらに、上記一般式(12)におけるR20は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を表すが、かかる炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、等が挙げられる。なお、R16〜R20は構成単位毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
本実施形態にかかるポリビニルエーテルが上記一般式(12)で表される構成単位のみからなる単独重合体である場合、その炭素/酸素原子数比は4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましい。当該原子数比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
【0053】
上記一般式(13)において、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0054】
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(12)中のR20の説明において例示された炭化水素基が挙げられる。
【0055】
なお、R21〜R24は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
【0056】
本実施形態にかかるポリビニルエーテルが一般式(12)で表される構成単位と一般式(13)で表される構成単位とを有するブロック共重合体またはランダム共重合体である場合、その炭素/酸素原子数比は4.2〜7.0の範囲にあることが好ましい。当該原子数比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
【0057】
さらに本実施形態においては、上記一般式(12)で表される構成単位のみからなる単独重合体と、上記一般式(12)で表される構成単位と上記一般式(13)で表される構成単位とからなるブロック共重合体またはランダム共重合体と、の混合物も使用することができる。これらの単独重合体および共重合体は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、および対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。
【0058】
本実施形態に用いられるポリビニルエーテルとしては、その末端構造のうちの一方が、下記一般式(14)または(15)で表されるものであり、且つ他方が下記一般式(16)または(17)で表される構造を有するもの;およびその末端の一方が、上記一般式(14)または(15)で表され、且つ他方が下記一般式(18)で表される構造を有するものが好ましい。
【化6】


[式(14)中、R25〜R27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R28は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R29は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(14)で表される末端構造が複数のR28Oを有するとき、複数のR28Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化7】


[式(15)中、R30〜R33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【化8】


[式(16)中、R34〜R36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R37は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R38は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(16)で表される末端構造が複数のR37Oを有するとき、複数のR37Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化9】


[式(17)中、R39〜R42は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
【化10】


[式(18)中、R43〜R46は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。]
【0059】
このようなポリビニルエーテルの中でも、次に挙げるものが特に好適である。
(i)末端の一方が一般式(14)または(15)で表され、他方が一般式(16)または(17)で表される構造を有しており、一般式(12)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(ii)一般式(12)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(14)で表され、他方が一般式(15)で表される構造を有しており、一般式(12)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(iii)末端の一方が一般式(14)または(15)で表され、他方が一般式(16)で表される構造を有しており、一般式(12)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(iv)一般式(12)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(14)で表され、他方が一般式(17)で表される構造を有しており、一般式(12)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
【0060】
また、本実施形態においては、上記一般式(15)で表される構成単位を有し、その末端の一方が一般式(17)で表され、かつ他方が下記一般式(19)で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【化11】


[式(19)中、R46〜R48は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R49およびR51は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、R50およびR52は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、uおよびvは同一でも異なっていてもよく、それぞれその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(19)で表される末端構造が複数のR49OまたはR51Oを有するとき、複数のR49OまたはR51Oは同一であっても異なっていてもよい。]
【0061】
さらに、本実施形態においては、下記一般式(20)または(21)で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜5,000であって、末端の一方が下記一般式(22)または(23)で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物または共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
【化12】


[式(20)中、R53は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【化13】


[式(21)中、R54は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【化14】


[式(22)中、R55は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R56は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【化15】


[式(23)中、R57は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【0062】
また、水酸基価は特に限定されないが、10mgKOH/g、好ましくは5mgKOH/g、さらに好ましくは3mgKOH/gであるのが望ましい。
【0063】
本実施形態にかかるポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルの100℃における動粘度は4〜50mm/sであることが好ましく、好ましくは5〜40mm/s、より好ましくは6〜30mm/s、さらに好ましくは7〜25mm/s、最も好ましくは8〜20mm/sである。100℃における動粘度が低すぎると冷媒共存下での潤滑性が不十分となり、他方、高すぎると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。また、当該ポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルの40℃における動粘度は、40℃における動粘度が5〜1000mm/sであることが好ましく、10〜500mm/sであることがより好ましい。40℃における動粘度が低すぎると潤滑性や圧縮機の密閉性が低下するという傾向にあり、また、高すぎると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる傾向にある。
【0064】
また、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルの流動点は−10℃以下であることが好ましく、−20〜−50℃であることがより好ましい。流動点が−10℃以上のポリアルキレングリコールを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化しやすくなる傾向にある。
【0065】
また、本実施形態にかかるポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルの製造工程において、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが副反応を起こして分子中にアリル基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリアルキレングリコール分子中に不飽和基が形成されると、ポリアルキレングリコール自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリー詰まりが起こりやすくなる。
【0066】
したがって、本実施形態にかかるポリアルキレングリコールおよびポリビニルエーテルとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
【0067】
なお、本発明にかかる不飽和度、過酸化物価およびカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明にかかる不飽和度とは、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいい;本発明にかかる過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいい;本発明にかかるカルボニル価とは、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。
【0068】
なお、ポリアルキレングリコールの製造時において、不飽和度、過酸化物価およびカルボニル価の低いポリアルキレングリコールを得るためには、プロピレンオキサイドを反応させる際の反応温度を120℃以下(より好ましくは110℃以下)とすることが好ましい。また、製造に際してアルカリ触媒を使用することがあれば、これを除去するために無機系の吸着剤、例えば、活性炭、活性白土、ベントナイト、ドロマイト、アルミノシリケート等を使用すると、不飽和度を減ずることができる。また、当該ポリアルキレングリコールを製造または使用する際に酸素との接触を極力避けたり、酸化防止剤を添加することによっても過酸化物価またはカルボニル価の上昇を防ぐことができる。
【0069】
本実施形態に係る冷凍機用流体組成物においては、基油としてエーテル系化合物のみを単独で用いてもよいが、必要に応じて後述する他の基油や添加剤を添加してもよい。なお、本実施形態に係る冷凍機油中のエーテル系化合物の含有量については、特に制限されないが、冷凍機油全量基準で50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。
【0070】
また、本実施形態に係る冷凍機油において、エーテル系化合物の含有量は特に制限されないが、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、冷凍機油全量基準で、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらにより好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
【0071】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油において、上記のエーテル系化合物を含有する基油には、カルボジイミド化合物が配合され、必要に応じてさらに各種添加剤を配合した形で使用することもできる。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0072】
本実施形態で用いられるカルボジイミド化合物としては、下記一般式(24)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
58−N=C=N−R59 (24)
(式中、R58およびR59は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭化水素基、または窒素原子もしくは酸素原子を含有する炭化水素基を示す。)
【0073】
カルボジイミド化合物の好ましい例として、上記一般式(24)中のR58およびR59が水素原子、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状の脂肪族系炭化水素基、炭素数6〜18の芳香族系もしくは芳香−脂肪族系炭化水素基である化合物が挙げられる。より具体的には、上記一般式(24)中のR58およびR59が水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、3−メチルプロピル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、4−メチルブチル基、1、1−ジメチルプロピル基、2、2−ジメチルプロピル基、1、2−ジメチルプロピル基、2、3−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−エチルプロピル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、2−エチルヘキシル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基等のアルキル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、2−エチルヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トルイル基、イソプロピルフェニル基、ジイソプロピルフェニル基、トリイソプロピルフェニル基、ノニルフェニル基等のアルキル置換フェニル等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基である化合物が挙げられる。
【0074】
不飽和フッ化炭化水素冷媒存在下におけるため安定性向上効果の点から、これらのカルボジイミド化合物が有するR58およびR59のうち、脂肪族系炭化水素基としては炭素原子数3〜6のアルキル基が好ましく、また、芳香族系および芳香−脂肪族系炭化水素基としては炭素原子数6〜15のアリール基およびアルキル置換フェニル等が好ましい。具体的には、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、フェニル基、トルイル基、イソプロピルフェニル基、ジイソプロピルフェニル基、トリイソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0075】
また、本実施形態に用いられるカルボジイミド化合物として、上記一般式(24)中のR58およびR59が下記一般式(25)で示される置換基を有するものを挙げることができる。この場合、R58およびR59は同一でも異なっていてもよい。
【化16】


[式中、R60、R61およびR62はそれぞれ水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基を示す。]
【0076】
上記一般式(25)中、R60、R61およびR62としては水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であれば良く、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基等を挙げることができる。これらのうち、冷媒雰囲気下における安定性向上効果の面から、好ましくはR60、R61およびR62の合計炭素数が12以下となるように選択することが良く、特に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が良い。
【0077】
更に、本実施形態では、分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を2個以上含有するカルボジイミド化合物を用いてもよい。かかる化合物の好ましい例としては、下記一般式(26)で表される化合物が挙げられる。
【化17】


[式中、R63は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、R64は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または上記一般式(25)で表される基を示し、R64が上記一般式(25)で表される基である場合、R60、R61およびR62の炭素数の合計は10以下であり、R65、R66およびR67は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、R65、R66およびR67の炭素数の合計は10以下であり、nは2以上の整数である。]
で示される化合物が挙げられる。
【0078】
なお、R64が上記一般式(25)で表される基である場合、R60、R61およびR62の炭素数の合計が10を超えると、エーテル油ならびに不飽和フッ化炭化水素冷媒に対する溶解性が悪くなる傾向があるため好ましくない。同様に、R65、R66およびR67の炭素数の合計が10を超えると、エーテル油ならびに不飽和フッ化炭化水素冷媒に対する溶解性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
【0079】
60、R61、R62、R65、R66またはR67で示される炭素数1〜10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソデシル基等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系化合物を含有する基油ならびに不飽和フッ化炭化水素冷媒に対する溶解性の観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基が特に好ましい。
【0080】
また、上記一般式(26)中のnは2以上の整数を示す。nが大きくなるにつれてエーテル系化合物を含有する基油および/または不飽和フッ化炭化水素冷媒に対する溶解性が低下する傾向があるため、nは好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜3である。
【0081】
上記一般式(26)で表されるカルボジイミド化合物の中で、エーテル油や不飽和フッ化炭化水素冷媒の共存下で新油(未使用油)あるいは劣化油(既使用油)の安定性、相溶性、酸性物質との反応性および酸性物質との反応生成物の安定性、相溶性の点で総合的に最も好ましいのは、ビス(イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリイソプロピルフェニル)カルボジイミドである。
【0082】
上記カルボジイミド化合物の含有量は任意であるが、冷凍機油全量基準で、0.005〜3質量%の範囲内であればよく、更に好ましくは0.007〜1質量%、最も好ましくは0.01〜0.1質量%である。カルボジイミド化合物の含有量が上記下限値未満であると充分な効果が得られない傾向にある。また、上記上限値を超えても含有量に見合う更なる効果の向上は得られない傾向にあり、逆に潤滑性が不足するなどの不具合を生じるおそれもある。
【0083】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油において、基油は、エーテル系化合物のみからなるものであってもよいが、当該エーテル系化合物以外の基油をさらに含有してもよい。
【0084】
エーテル系化合物以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、ならびにエステル系基油(モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等)、ケトン、シリコーン、ポリシロキサンなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でもポリオールエステルが好ましく用いられる。
【0085】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、アミン系酸化防止剤を含有することが好ましい。アミン系酸化防止剤としては、下記一般式(27)で表されるフェニル−α−ナフチルアミン類、あるいは下記一般式(28)で表されるp,p’−ジアルキル化ジフェニルアミン等が挙げられる。
【化18】


【化19】

【0086】
一般式(27)において、R68は水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を示す。また、一般式(28)において、R69およびR70は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。
【0087】
一般式(27)中のR68が炭素数1〜16のアルキル基である場合、より優れたスラッジ生成抑制効果が得られることから、R68は、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3または4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3または4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレンが挙げられるが、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るためには、プロピレンまたはイソブチレンが好ましい。更に優れたスラッジ生成抑制効果を得るためには、R68は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基またはプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらに好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基またはプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基がより好ましく、分岐ドデシル基が最も好ましい。
【0088】
また、一般式(28)中のR69およびR70は、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るために、それぞれ個別に、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3または4のオレフィン、またはそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。上記炭素数3または4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレン等が挙げられるが、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るためにプロピレンまたはイソブチレンが好ましい。
【0089】
さらに、R69またはR70は、より優れた酸化防止効果を得るために、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、が最も好ましい。
【0090】
一般式(28)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良くまた合成物を用いても良い。合成物は、一般式(27)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンと同様に、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物とジフェニルアミン、あるいは炭素数2〜16のオレフィンまたはこれらのオリゴマーとジフェニルアミンとをフリーデル・クラフツ触媒を用いて反応させることにより、容易に合成することができるが、いずれの合成方法であっても良い。
【0091】
アミン系酸化防止剤の含有量は、冷凍機油全量基準で2質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。含有量が2質量%を超える場合、スラッジ発生の原因となるので好ましくない。一方、アミン系酸化防止剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。アミン系酸化防止剤の含有量が0.001質量%に満たない場合は、酸化防止効果が不足するので好ましくない。
【0092】
カルボジイミド化合物に加え、上記アミン系酸化防止剤を配合することにより、冷凍機油の酸化劣化を防ぐとともに、後述する冷凍サイクル内の各種有機材料への悪影響が抑えられる。特にフレキシブルホース最内層のポリアミド樹脂層の劣化を抑制できる。
【0093】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0094】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0095】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0096】
チオリン酸エステルとしては、トリプチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0097】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1〜24、好ましくは5〜18の1〜3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
【0098】
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖または分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミン、トリテトラコシルアミン、などのアミンが挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0099】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0100】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.001〜5.0質量%であることが好ましく、0.002〜4.0質量%であることがより好ましく、0.005〜3.0質量であることがさらに好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、金属不活性化剤を含有してもよい。金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好適に用いられる。
【0102】
ベンゾトリアゾールは、下記式(29)で表される化合物である。
【化20】

【0103】
ベンゾトリアゾール誘導体としては、例えば、下記一般式(30)で表されるアルキルベンゾトリアゾールや、下記一般式(31)で表される(アルキル)アミノアルキルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【化21】


【化22】

【0104】
一般式(30)中、R71は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を示し、aは1〜3、好ましくは1または2を示す。R71としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。一般式(30)で表されるアルキルベンゾトリアゾールとしては、特に酸化防止性に優れるという点から、R71がメチル基またはエチル基であり、aが1または2である化合物が好ましく、例えば、メチルベンゾトリアゾール(トリルトリアゾール)、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾールまたはこれらの混合物等が挙げられる。
【0105】
一般式(31)中、R72は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を示し、R73はメチレン基またはエチレン基を示し、R74およびR75は同一または異なる基であって、水素原子または炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基を示し、bは0〜3、好ましくは0または1を示す。
【0106】
72としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R74およびR75としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。R74およびR75は同一でも異なっていてもよい。
【0107】
一般式(31)で表される(アルキル)アミノベンゾトリアゾールとしては、特に酸化防止性に優れるという点から、R72がメチル基、bが0または1、R73がメチレン基またはエチレン基、R74およびR75が炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基であるジアルキルアミノアルキルベンゾトリアゾールやジアルキルアミノアルキルトリルトリアゾールまたはこれらの混合物等が好ましく用いられる。
【0108】
これらのジアルキルアミノアルキルベンゾトリアゾールとしては、例えば、ジメチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジエチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジプロピルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジブチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジペンチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジヘキシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジヘプチルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾール、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−メチルベンゾトリアゾール、ジノニルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジデシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジウンデシルアミノメチルベンゾトリアゾール、ジドデシルアミノメチルベンゾトリアゾール;ジメチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジエチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジプロピルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジブチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジペンチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジヘキシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジヘプチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジオクチルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジノニルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジデシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジウンデシルアミノエチルベンゾトリアゾール、ジドデシルアミノエチルベンゾトリアゾール;ジメチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジエチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジプロピルアミノメチルトリルトリアゾール、ジブチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジペンチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジヘキシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジヘプチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジオクチルアミノメチルトリルトリアゾール、ジノニルアミノメチルトリルトリアゾール、ジデシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジウンデシルアミノメチルトリルトリアゾール、ジドデシルアミノメチルトリルトリアゾール;ジメチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジエチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジプロピルアミノエチルトリルトリアゾール、ジブチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジペンチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジヘキシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジヘプチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジオクチルアミノエチルトリルトリアゾール、ジノニルアミノエチルトリルトリアゾール、ジデシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジウンデシルアミノエチルトリルトリアゾール、ジドデシルアミノエチルトリルトリアゾール;またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0109】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油が金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は特に制限されないが、通常、冷凍機油全量基準で0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましい。金属不活性化剤の含有量が0.001質量%未満の場合、その添加効果が十分でないおそれがあり、一方、1.0質量%を超える場合は、含有量に見合うだけの添加効果が得られず経済的に不利であるので好ましくない。
【0110】
また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリールオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0111】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0112】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0113】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0114】
アリールオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0115】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0116】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペ−ト、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0117】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0118】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0119】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物である。
【0120】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛、本願以外のリン化合物などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0122】
本実施形態に係る冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm/s、より好ましくは4〜500mm/s、最も好ましくは5〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは2〜50mm/sとすることができる。
【0123】
また、本実施形態に係る冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、最も好ましくは200質量ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0124】
また、本実施形態に係る冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、および冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0125】
また、本実施形態に係る冷凍機油の灰分は特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0126】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有するものであり、また、本実施形態に係る冷凍機油は不飽和フッ化炭化水素冷媒と共に用いられるものである。
【0127】
不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、1,1,2−トリフルオロエテン、1,1,2−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、cisおよびtrans−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、ZおよびE−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリフルオロ−1−ブテン、1,2,3−トリフルオロ−1−ブテン、1,2,4−トリフルオロ−1−ブテン、1,3,3−トリフルオロ−1−ブテン、1,3,4−トリフルオロ−1−ブテン、1,4,4−トリフルオロ−1−ブテン、2,3,3−トリフルオロ−1−ブテン、2,3,4−トリフルオロ−1−ブテン、2,4,4−トリフルオロ−1−ブテン、3,3,4−トリフルオロ−1−ブテン、3,4,4−トリフルオロ−1−ブテン、4,4,4−トリフルオロ−1−ブテン、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,2−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,3−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,4−トリフルオロ−2−ブテン、1,2,3−トリフルオロ−2−ブテン、1,2,4−トリフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,2,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,3,3−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,3,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−ブテン、1,2,3,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,2,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,3,3,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,4,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、2,3,3,4−テトラフルオロ−1−ブテン、2,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、2,4,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、3,4,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,1,2−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,1,4−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,2,4−テトラフルオロ−2−ブテン、1,2,3,4−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,3,3,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,2,3,3,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,2,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,2,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、2,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、2,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,1,2,3−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,1,4,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,2,4,4−ペンタフルオロ−2−ブテン等、フッ素数が3〜5の不飽和フッ化炭化水素が好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234zeおよびHFO−1234yfから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0128】
また、本実施形態において使用される冷媒は、不飽和フッ化炭化水素冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、HFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニアおよび炭化水素等の自然系冷媒が挙げられる。
【0129】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0130】
また、HFC冷媒のうち、飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましく、冷媒物性の観点から、さらにHFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−152a、またはHFC−32とHFC−134aの混合物であることが好ましい。
【0131】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0132】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0133】
本実施形態において使用される冷媒が混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、不飽和フッ化炭化水素冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(A)」という。)と、飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種(以下、「冷媒(B)」という。)とを含有することが好ましい。
【0134】
また、本実施形態において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は共沸混合物であることが好ましいが、冷媒として必要な物性を有していれば特に共沸混合物である必要はなく、両者の混合比は1:99〜99:1が好ましく、5:95〜95:5がより好ましい。
【0135】
さらに、本実施形態において使用される冷媒が冷媒(A)と冷媒(B)とを含有する混合冷媒である場合、当該混合冷媒は、不飽和フッ化炭化水素冷媒または飽和ハイドロフルオロカーボン以外のHFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、炭素数3〜5の炭化水素以外の炭化水素あるいはアンモニア等の自然系冷媒を更に含有してもよい。
【0136】
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、上述したような不飽和フッ化炭化水素冷媒あるいは混合冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、ならびに本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0137】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【0138】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、前述の通り様々な不飽和フッ化炭化水素冷媒用冷凍機に好適に用いることが可能であるが、その冷凍機が備える冷媒循環サイクルの代表的な構成としては、圧縮機、凝縮器、膨張機構および蒸発器を持つものが挙げられ、必要に応じて乾燥器およびフレキシブルホース等を具備するものが例示される。
【0139】
圧縮機としては外部に原動機を有する開放型圧縮機、および内部にモーターを内蔵する密閉型圧縮機のどちらも用いることができる。
【0140】
開放型圧縮機としては、ピストン・クランク式、ピストン・斜板式等の往復動式、回転ピストン式、ロータリーベーン式、スクロール式、スクリュー式等の回転式などが挙げられる。外部原動機としてはエンジン、モーターなどが挙げられるが、特にカーエアコンの場合は外部原動機として走行用エンジンを使用するのが一般的である。
【0141】
密閉型圧縮機としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。
【0142】
モーター部の電機絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移点50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド群から選ばれる少なくとも一種の絶縁フィルム、あるいはガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆した複合フィルムが、引っ張り強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、好ましく用いられる。また、モーター部に使用されるマグネットワイヤとしては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層を上層に複合被覆したエナメル被覆を有するものが好ましく用いられる。複合被覆したエナメル線としては、ポリエステルイミドを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/EI)、ポリエステルを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/PE)等が挙げられる。
【0143】
乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.3オングストローム以下、25℃の炭酸ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼオライトが好ましく用いられる。具体的には例えば、ユニオン昭和(株)製の商品名XH−9,XH−10,XH−11,XH−600等が挙げられる。
【0144】
フレキシブルホースは、カーエアコンに通常用いられるものであり、一般的に振動吸収性能に優れているゴムホースが用いられており、このゴムホースの構造としては、冷媒の漏洩を防止する為に、最内層にガスバリア性に優れ、かつ耐インパルス性能など振動耐久性にも優れるポリアミド樹脂層を配し、その上に内管ゴム層を設け、その上にPET等の有機繊維よりなる補強糸層を設け、更にその上に耐候性を有する外被ゴム層を配した構造が用いられている。
【0145】
また、ポリアミド樹脂に柔軟性付与剤としてポリオレフィン系エラストマーを配合したポリアミド樹脂組成物を用いて、最内層のガスバリア層を構成し、耐冷媒透過性と柔軟性を付与する場合もある。
【0146】
ポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とし、これらの構成成分の具体例を挙げるとε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、ビス−p−アミノシクロヘキシルプロパン、イソホロンジアミンなどのジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ゼバシン酸、ドデカン2酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸がある。
【0147】
これらの構成成分は単独あるいは2種以上の混合物の形で重合に供され、得られるポリアミド樹脂はホモポリマー、コポリマーのいずれであっても良い。
【0148】
ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(ナイロン66/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン6/66)が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0149】
ポリアミド樹脂の重合度については特に制限はなく、1重量%濃度の硫酸溶液の25℃における相対粘度(以下、単に「相対粘度」と称す場合がある。)が1.5〜5.0の範囲内にあるものを任意に用いることができる。また、ポリアミド樹脂は、その末端基がモノカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸化合物あるいはモノアミン化合物および/またはジアミン化合物の1種以上を任意の段階でポリアミドに添加することにより末端基濃度が調節されていてもよい。
【0150】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・ブテン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、変性エチレン・ブテン共重合体、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、変性EEA、変性EPR、変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、アイオノマー、α−オレフィン共重合体、変性IR(イソプレンゴム)、変性SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、ハロゲン化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸変性体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびその酸変性物、およびそれらを主成分とする混合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0151】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に、無水マレイン酸などの酸無水物、グリシジルメタクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル、エポキシおよびその変性体などで変性したものが、ポリアミド樹脂をベースポリマーとする微細なアロイ構造を得ることができ、好ましい。
【0152】
ポリアミド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマー含有量は、少な過ぎるとポリオレフィン系エラストマーを配合したことによる柔軟性、耐久性の改善効果を十分に得ることができず、多過ぎるとガスバリア性が低下するため、ポリアミド樹脂組成物中の含有率で10〜45重量%、特に20〜40重量%であることが好ましい。ポリアミド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマーの含有量が多過ぎると、後述の海島構造において海相と島相とが逆転し、ガスバリア性が著しく低下する。
【0153】
なお、ポリオレフィン系エラストマーとして酸変性エラストマー等の変性エラストマーを用いた場合、混練り(分散)時に少ない比エネルギーおよび高い混練り技術を必要としないという効果が得られるが、その配合量が多いと樹脂のゲル化を引き起こし、押出し時、肌荒れ等の外観不良(フィッシュアイ)を引き起こすため、ポリオレフィン系エラストマーとして変性エラストマーを用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中の変性エラストマーの含有量は20重量%以下、例えば5〜20重量%とすることが好ましい。特に、ポリアミド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマーのうちの40〜100重量%を酸変性エラストマーとしたものが好ましい。
【0154】
ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂とポリオレフィン系エラストマーとを相溶状態、即ち、良好な分散状態とするために、エラストマーの少なくとも一部が無水マレイン酸等により変性されていることが好ましく、良好な分散形態を得るために用いるエラストマーの全体の平均の酸価(酸変性率)は0.8mg−CHONa/g以上であることが好ましい。
【0155】
エラストマーの酸価は高いほど、分散形態は良好となるが、酸価の増大に伴って得られるポリアミド樹脂組成物の粘度が増大し、成形加工性が損なわれる。このため、この酸価の増大による粘度増加を低減するために、エラストマーの酸価は、良好な分散状態が得られる範囲において低い方が好ましく、用いるエラストマーの全体での平均酸価は7.5mg−CHONa/g以下であることが好ましい。
【0156】
また、同じ平均酸価であっても、用いるエラストマー中に含まれる変性エラストマーの酸価が高い場合、このような変性エラストマーを未変性エラストマーと混合することにより、平均酸価を下げても、押し出し時に局部的な過反応によると思われるゲル状の異物が発生してしまう。従って、用いる変性エラストマーの酸価は、15.0mg−CHONa/g以下であることが好ましい。
【0157】
このようにポリアミド樹脂にポリオレフィン系エラストマーを配合したポリアミド樹脂組成物を用いることにより、柔軟性、耐久性は改善されるものの、ガスバリア性の低下は避けられない。しかしながら、ポリアミド樹脂とエラストマーとの微細なアロイ構造をとることにより、特に、ポリアミド樹脂の海相内にエラストマーの島相が分散すると共に、このエラストマーの島相内にポリアミド樹脂が散点状に分散した構造であることにより、エラストマーを配合したことによるガスバリア性の低下を抑制することができ、好ましい。
【0158】
特に、ポリアミド樹脂(海相を構成するポリアミド樹脂とエラストマーの島相内に散点状に存在するポリアミド樹脂相との合計)に対するエラストマーの島相内に散点状に存在するポリアミド樹脂相の割合(以下、その割合を「散点状分散率」と称す。)が5〜40重量%程度であることが好ましい。この割合が5重量%未満では、エラストマーの島相内にポリアミド樹脂相を散点状に存在させることによる効果を十分に得ることができず、逆に40重量%を超えると、海相としてのポリアミド樹脂相が少なくなり過ぎてガスバリア性が低下するおそれがある。
【0159】
また、エラストマーの島相の大きさおよびこのエラストマー島相内のポリアミド樹脂相の大きさは、エラストマー島相の大きさがほぼ0.1〜3.0μm、ポリアミド樹脂相の大きさが0.5〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0160】
ポリアミド樹脂組成物は、樹脂成分としてポリアミド樹脂以外の樹脂成分を含んでいても良いが、その場合において、冷媒輸送用ホース中の全ポリマー成分のうちの70重量%以上がポリアミド樹脂であることが、ガスバリア性の確保のために好ましい。この場合の他の樹脂成分としては、エチレン・ビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0161】
また、ポリアミド樹脂組成物には、他の添加剤、すなわち滑剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、結晶核剤、充填剤、補強材、耐熱剤、耐光剤なども添加することができる。
【0162】
内層ゴム層および外被ゴム層を構成するゴムとしては、一般にブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(C1−IIR)、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、イソブチレン−ブロモパラメチルスチレン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、水素添加NBR、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム(AEM)、これらのゴムの2種以上のブレンド物、或いは、これらのゴムを主成分とするポリマーとのブレンド物、好ましくはブチル系ゴム、EPDM系ゴムが用いられる。これらのゴムには、通常用いられる充填剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合処方を適用できる。
【0163】
なお、内層ゴム層のゴム種と外被ゴム層のゴム種は同種のものであっても、異種のものであっても良い。
【0164】
補強糸層は、補強糸をスパイラル状に巻き付けたものであり、補強糸の材料についても、通常用いられるものであれば特に制限はない。一般的には、ポリエステル、全芳香族ポリエステル、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレートおよびこれらの混撚り糸が用いられる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0166】
[実施例1〜32および比較例1〜6]
実施例1〜32および比較例1〜6においては、それぞれ以下に示す基油1〜3および添加剤A1〜D3を表1〜5に示す組成比となるように配合して試料油を調製した。得られた各試料油の性状を表1〜5に示す。
【0167】
(基油)
基油1:ポリプロピレングリコールジメチルエーテル(40℃における動粘度:45mm/s、100℃における動粘度:10mm/s、数平均分子量:1200)
基油2:ポリエチレンプロピレングリコールモノメチルエーテル(40℃における動粘度:104mm/s、100℃における動粘度:20mm/s、数平均分子量:1800、全てのオキシアルキレン基に占めるオキシエチレン基の割合:40モル%)
基油3:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=7/1(モル比)、数平均分子量:860、炭素/酸素モル比:4.25)
【0168】
(添加剤)
添加剤A1:ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド
添加剤A2:ビス(ジブチルフェニル)カルボジイミド
添加剤A3:ジイソプロピルカルボジイミド
添加剤B1:トリクレジルホスフェート
添加剤B2:トリフェニルホスフォロチオネート
添加剤B3:ジヘキシルアシッドホスフェートのモノドデシルアミン塩
添加剤C1:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
添加剤C2:ジオクチルジフェニルアミン
添加剤C3:ジノニルジフェニルアミン
添加剤C4:オクチルフェニル−α−ナフチルアミン
添加剤D1:p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル
添加剤D2:グリシジル−2、2’−ジメチルオクタノエート
添加剤D3:1,2−エポキシオクタデカン
【0169】
次に、実施例1〜32および比較例1〜6の冷凍機油について、以下に示す試験を行った。
【0170】
(ナイロン適合性試験)
200mlのオートクレーブに、水分含有量を2000ppmに調整した試料油70g、HFO−1234yf冷媒30g、Al、CuおよびFeの各触媒、ならびに市販のナイロン6フィルム(JISK6251 3号ダンベル)5枚を入れ、150℃で168時間加熱し、試験終了後の試料油の酸価を測定した。また、ナイロン6フィルム5枚の全てについて引張強度・伸びを測定し、下記式で定義される伸び変化率(%)を算出した。得られた結果を表1〜5に示す。
(伸び変化率[%])=[(試験後のナイロンフィルムの伸び)/(未試験のナイロンフィルムの伸び)−1]×100
【0171】
【表1】

【0172】
【表2】

【0173】
【表3】

【0174】
【表4】

【0175】
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル系化合物を含有する基油と、
カルボジイミド化合物と、
不飽和フッ化炭化水素冷媒と、
を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
【請求項2】
前記不飽和フッ化炭化水素冷媒として、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項3】
飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドおよび3フッ化ヨウ化メタン冷媒から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項4】
前記不飽和フッ化炭化水素冷媒が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,2,3,3−テトラフルオロプロペンおよび3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種であり、前記飽和ハイドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンから選ばれる少なくとも1種であり、前記炭素数3〜5の炭化水素が、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンおよびノルマルペンタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項5】
エーテル系化合物を含有する基油と、
カルボジイミド化合物と、
を含有し、不飽和フッ化炭化水素冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油。

【公開番号】特開2012−131994(P2012−131994A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262374(P2011−262374)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】