説明

冷凍生玉ネギを使用したパスタソース及びその製造方法

【課題】パスタへのからみが良く食感がべたべたしないパスタソース及びその製造方法及びこのパスタソースを使用した食品を提供すること。
【解決手段】冷凍した生玉ネギを除く原料100質量部に対し冷凍した生玉ネギを3質量部以上30質量部以下使用することを特徴とするパスタソース及びその製造方法である。また、前記パスタソースを使用したパスタソース付き冷凍パスタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍生玉ネギを使用したパスタソース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
玉ネギを使用したパスタソースを製造する際、生玉ネギを釜で90〜70%まで炒めて使用する方法や、すでに70〜25%まで炒めた玉ネギの冷凍品を炒めることなく使用する方法が行われている。
なお、本発明においてパスタソースとは、パスタにからめて食べるソースをいう。
パスタソースは、パスタと良くからみ、べたべたせず滑らかな食感が求められているが、生玉ネギを炒めて使用する方法では、玉ネギの固形感がしっかりと残ってしまい、茹でたパスタとからめても、うまくソースと一体化せず玉ネギだけがお皿に残ってしまう事がしばしばあった。
また、70〜25%まで炒めた玉ネギの冷凍品を使用する方法では、玉ネギのベタベタとした食感が出てしまい、茹でたパスタと混ぜると、滑らかな食感が得られない事がしばしばあった。
適度な粘度を有しソースが麺にからみやすく、かつ、食感が滑らかで口当たりがよくサラッとした食感を有するパスタソースを調製する方法として、パスタソースに、水溶性セルロースエーテルと、乾燥こんにゃく加工品及び又は澱粉を使用する方法、好ましくは、水溶性セルロースエーテルとして、メチルセルロース、エチルセルロース、及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースから選ばれる1種以上を使用する方法や、更には、当該パスタソースの製造方法として、40〜100℃に加温した水系原料中に水溶性セルロースエーテルを添加し、20℃以下に冷却しながら攪拌溶解した後、乾燥こんにゃく加工品及び又は澱粉を添加し、更に40〜100℃に加熱攪拌して製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−185178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パスタへのからみが良く食感がべたべたしないパスタソース及びその製造方法及びこのパスタソースを使用した食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、玉ネギを使用するパスタソースに生玉ネギや炒めた冷凍玉ネギではなく、冷凍した生玉ネギを使用することによりパスタへのからみが良く、食感がべたべたしないパスタソースを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、冷凍した生玉ネギを除く原料100質量部に対し冷凍した生玉ネギを3質量部以上30質量部以下使用することを特徴とするパスタソース及びその製造方法である。
また、前記パスタソースを使用したパスタソース付き冷凍パスタである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のパスタソースは、ソテー感があり、パスタへのからみが良く、べたべたしない良好な食感である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する冷凍生玉ネギとは、加熱処理をすることなく冷凍した玉ネギをいう。
玉ネギは従来のパスタソースに使用されている品種であれば特に限定なく使用できる。
玉ネギの形状には、特に限定はなく、例えば、ダイス形状(一辺が2mm〜30mm)、スライスやくし切りにしたもの(厚さが1mm〜30mm)、ミンチ状、すりおろしたものなどが使用できる。
冷凍した生玉ネギを使用するパスタソースは、従来の玉ネギを使用したパスタソースであれば特に限定なく、例えば、ナポリタンソース、トマトペーストやピューレ等を主とするトマトソース、牛豚等の挽き肉を炒めてトマトソースと煮込むミートソース、醤油をベースに畜肉エキスなどを混合した和風醤油ソース、食塩をベースに魚介エキスなどを混合した和風塩ソースなどを挙げることができる。
【0008】
本発明において使用する冷凍生玉ネギの使用量は、冷凍した生玉ネギを除く原料100質量部に対し3質量部以上30質量部以下である。
3質量部未満ではパスタソースの食感や粘度に変化がみられず、30質量部を超えるとパスタソースがベタベタした物性になり食感が悪くなり、ソースとパスタがまとまりすぎて一体化し過ぎてしまい、ほぐれず固まり状態になるため好ましくない。
冷凍した生玉ネギを除く原料とは、パスタソースの原料中、冷凍した生玉ネギ以外の原料をいい、例えば、油脂、ベーコンなどの具材、トマトペーストやトマトケチャップ、食塩、砂糖、香辛料や水などである。
【0009】
本発明のパスタソースの製造方法は、従来の生玉ネギを使用したパスタソースの製造方法であれば特に限定なく使用できる。
一例として、以下の方法を挙げることができる。
(1)釜にサラダ油、マーガリンなどの油脂を入れ加熱溶解し、冷凍ニンニクとベーコンを炒める。
(2)これに冷凍生玉ネギを投入して歩留まり80%まで炒める。
(3)トマトペースト、トマトケチャップ及び水を加え、同時に、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、白胡椒、パプリカ色素を加えて混合し加熱する。
(4)90度まで達温させて20分間加熱混合する。
(5)加熱終了後、容器に移し、20度まで冷却する。
前記冷凍生玉ネギに代えて生玉ネギを使用する場合は、冷凍生玉ネギの場合と同様でよい。
前記冷凍生玉ネギに代えて冷凍ソテー50%玉ネギの場合は、上記(2)の炒める工程は取らずトマトペーストと同時に加えればよい。
本発明において、「ソテー50%」とは、炒める前の質量を100質量部として、炒めることにより水分の蒸発などで、質量が50質量部になることを意味する。
同様に「70%まで炒めた」又は「歩留まり70%まで炒めた」とは、炒める前の質量を100質量部として質量が70質量部になるまで炒めることを意味する。
【0010】
本発明のパスタソースは、従来のパスタソースと同様にパスタにあえたり、上掛けしたりして使用することができる。
特に、冷凍パスタ用のパスタソースとして使用することが好ましい。
例えば、茹でたパスタを冷却しこれに、本発明のパスタソースをあえて、さらに本発明のパスタソースを上掛けして、−35℃のフリーザーで凍結し、包装することでパスタソース付きの冷凍パスタを製造することができる。
本発明のパスタソース付きの冷凍パスタの喫食方法は従来の冷凍パスタと同様でよく、例えば、電子レンジを使用して、解凍、加熱して喫食することができる。
他の方法として、包装したパスタソースや、パスタソース付きの冷凍パスタを、蒸気で蒸す方法や茹でる方法、自然解凍した後、フライパンで炒める方法もあるが、電子レンジを使用した方法が一番容易である。
本発明のパスタソース付きの冷凍パスタは電子レンジで解凍、加熱した場合でもベタベタした悪い食感とならず、ソテー感を有し、ソースと茹でたパスタが適度に一体化して、非常に美味である。
なお、ソテー感とは、玉ネギを焼いたり炒めたりすると漂う香ばしい香りや、玉ネギを焼いたり炒めたりすることにより生ずる風味、食感のことをいう。
【実施例】
【0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜5]ナポリタンソース
表1に示す原料を使用して以下の製造工程により冷凍個食調理スパゲッティを得た。
表中、単位は質量部である。
【0012】
【表1】

【0013】
[製造工程]
(1)ソースの製造工程
釜にサラダ油、マーガリンを入れ加熱溶解し、冷凍ニンニクとベーコンを炒めた。
さらに、冷凍生玉ネギ(又は生玉ネギ)を投入して歩留まり80%まで炒めた。
これにトマトペーストとケチャップ、水、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、白胡椒、パプリカ色素を加えて混合加熱し90℃まで達温させて20分間加熱混合した。
加熱終了後、容器に移し、20℃まで冷却した。
冷凍ソテー50%玉ネギの場合は、玉ネギを炒めることなくトマトペーストと同時に加えた。
(2)冷凍個食調理スパゲッティの製造工程
歩留まり280%まで茹で上げたパスタを冷却し、前記茹でたパスタ100質量部に対して25質量部の前記パスタソースをあえてこれを容器に250g入れ、さらに30gの前記パスタソースを上掛けして、−35℃のフリーザーで凍結し、ラップをして冷凍個食調理スパゲッティを得た。
【0014】
[評価]
前記冷凍個食調理スパゲッティを電子レンジを使用して、500Wで5分30秒間加熱し、解凍加熱後、全体をよく混合し10名のパネラーにより、以下の評価基準で評価を行った。
食感テスト
5点ベタベタした食感がまったく無い。
4点ベタベタした食感が無い。
3点ベタベタした食感がほとんど無い。
2点ベタベタした食感が有る。
1点ベタベタした食感が非常に有る。
からみテスト
5点ソースと茹でたパスタが非常に一体化して、お皿に玉ネギもソースもほとんど残っていない。
4点ソースと茹でたパスタが一体化して、お皿に玉ネギとソースが少々残っている。
3点ソースと茹でたパスタが少々絡み、お皿に玉ネギとソースが残っている。
2点ソースと茹でたパスタが絡まらず、お皿に玉ネギとソースがかなり残っている。
1点ソースと茹でたパスタが全く絡まらず、お皿に玉ネギとソースが非常に残っている。
なお、玉ネギとソースの残量の目安として2g未満は評価5、2g以上、4g未満は評価4、4g以上6g未満は評価3、6g以上8g未満は評価2、8g以上は評価1とした。
ほぐれテスト
5点ソースと茹でたパスタのほぐれが非常によい
4点ソースと茹でたパスタのほぐれがよい
3点ソースと茹でたパスタがほぐれにくい
2点ソースと茹でたパスタがほぐれない
1点ソースと茹でたパスタが全くほぐれない
ソテー感のテスト
5点ソテー感が非常にある。
4点ソテー感がある。
3点ソテー感が少々ある。
2点ソテー感があまりない。
1点ソテー感が全くない。
結果を表2に示す。
【0015】
【表2】

【0016】
実施例1乃至実施例3が良好な結果となった。
比較例1は、ほぐれテストの評価は高いものの、食感テスト、からみテスト及びソテー感のテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例2は、ソテー感のテストやからみテストの評価はやや高いものの、ほぐれテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例3は、ほぐれテストやソテー感のテストの評価はやや高いものの、食感テストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例4及び5は、ほぐれテストの評価が高いものの、からみテストやソテー感のテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
【0017】
[実施例4〜6、比較例6〜10]ミートソース
表3に示す原料を使用して以下の製造工程により冷凍個食料理スパゲッティを得た。
表中、単位は質量部である。
【0018】
【表3】

【0019】
[製造工程]
(1)ソースの製造工程
釜にサラダ油をいれ、冷凍ニンニクを炒めた。
さらに、冷凍ニンジンダイスと冷凍生玉ネギ(又は生玉ネギ)を投入して歩留まり80%まで炒めた。
これに赤ワインを混合した牛豚合い挽き肉を投入して歩留まり80%まで炒めた。
トマトペーストとトマトピューレ、デミグラスソース、水、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、黒胡椒を加えて混合加熱し90℃まで達温させて30分間加熱混合した。
加熱終了後、容器に移し、20℃まで冷却した。
冷凍ソテー50%玉ネギの場合は、玉ネギを炒めることなくトマトペーストと同時に加えた。
(2)冷凍個食調理スパゲッティの製造工程
歩留まり280%まで茹で上げたパスタを冷却し、これを容器に180g入れ、さらに100gの前記パスタソースを上掛けして、−35℃のフリーザーで凍結し、ラップをして冷凍個食調理スパゲッティを得た。
【0020】
[評価]
前記冷凍個食調理スパゲッティを電子レンジを使用して、500Wで5分30秒間加熱し、加熱後、全体をよく混合し10名のパネラーにより、実施例1と同様の評価基準で評価を行った。
結果を表4に示す。
【0021】
【表4】

【0022】
実施例4乃至実施例6が良好な結果となった。
比較例6は、ほぐれテストの評価は高いものの、からみテストやソテー感のテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例7は、ソテー感のテストやからみテストの評価はやや高いものの、ほぐれテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例8は、ほぐれテストやソテー感のテストの評価はやや高いものの、食感テストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。
比較例9及び10は、ほぐれテストの評価が高いものの、からみテストやソテー感のテストの評価が低いことから、全体評価において良好とはいえなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍した生玉ネギを除く原料100質量部に対し冷凍した生玉ネギを3質量部以上30質量部以下使用することを特徴とするパスタソース。
【請求項2】
冷凍した生玉ネギを除く原料100質量部に対し冷凍した生玉ネギを3質量部以上30質量部使用することを特徴とするパスタソースの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のパスタソースを使用したパスタソース付き冷凍パスタ。


【公開番号】特開2011−155850(P2011−155850A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17618(P2010−17618)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】