説明

冷凍食品及びその製法

【課題】熱調理によっても、味及び食感が損なわれること無く、高級感のある外観品質を保持しうる冷凍食品を提供する。
【解決手段】調理済みの米飯具材11と、上記米飯具材を被覆する可食性のシート材12と、上記可食性のシート材の外方面部に配置され、粘性を有するソース材13と、これら全体を覆った卵焼きで構成するオムライスの冷凍食品10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍食品であって、特に、米飯具材にソース材をかける形態を有し、電子レンジによって加熱調理が可能な冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジで加熱することによって、極めて簡易に調理できる冷凍食品が多種に亘って流通しており、その中には、電子レンジで調理可能なオムライスがある。
一般的に、オムライスは、ケチャップ等で味付けした調理済みの米飯具材を、シート状の卵焼きで包んで調理されており、大人から子供まで幅広い層に広く好まれる料理であるが、米飯具材と卵焼きを、それぞれ別に調理する必要があり、調理の手間がかかるものであった。
【0003】
これに対し、冷凍食品のオムライスは、調理済みの米飯具材を、薄いシート状の卵焼きで包んで調理されているため、調理が非常に容易であるが、従来の冷凍食品オムライスは、調理後に別途ケチャップ若しくはデミグラスソース等のソース材を食前にかける必要があった。
また、卵の外面部に予めソース材を塗布した形態にした場合は、製品袋に製品を入れたまま電子レンジで調理するというため、調理時にソース材が焦げてしまい、オムライスとしての食感に大きく欠けるものであった。
また、ソース材を封入した別袋を付属する場合には、ソース材用の袋を別に製造すると共に、オムライス本体と、ソース材用の袋の両方を、製品袋に封入する必要となり、製造工程が複雑となりると共に、製造コストが高くなるというという不具合を有していた。
【0004】
上記を解決するために、卵焼きと米飯具材との間に、ソース材を予め挟んだ食材構造とすることも考えられるが、上記の構造を採用した場合は、電子レンジで加熱調理した際に、ソース材が米飯具材に全て染み込んでしまい、味、食感が損なわれると共に、卵をくずして食する際に、食品としての外観品質が低下するという不具合があった。
上記不具合は、オムライス以外であっても、米飯具材の上に粘性を有するソース材をかける形態の料理に共通している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、加熱調理によっても、味及び食感が損なわれること無く、食品としての高級感のある外観品質を保持しうる冷凍食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明に係る冷凍食品は、調理済みの米飯具材と、上記米飯具材を被覆するとともに加熱により粘性を保持した状態で溶融する可食性のシート材と、上記可食性のシート材の外方面部に配置され、粘性を有するソース材とからなることを特徴とする。
【0007】
従って、請求項1の発明にあっては、電子レンジによって加熱調理した場合であっても、上記ソース材は、上記可食性シート材によって米飯具材と分離された状態で保持される。
【0008】
また請求項2の発明にあっては、上記可食性シート材は、熱により粘性を保持した状態で溶融することを特徴とする。
従って、上記可食性シート材が粘性を保持した状態のまま溶融するため、上記ソース材は、溶融した上記可食性シート材によって米飯具材と分離された状態で保持される。
【0009】
また、請求項3の発明にあっては、上記ソース材の外方に配置され、上記米飯具材と可食性のシート材及びソース材とを被覆するシート状の卵焼きが配置されているたことを特徴とする。
【0010】
従って、加熱調理後も、卵焼き、ソース材、シート材、及び米飯具材が互いに干渉することなく、夫々独立した状態で保持される。
【0011】
また、請求項4の発明にあっては、上記可食性シート材は、チーズからなることを特徴とする。
従って、加熱によって溶融したチーズによって、ソース材と米飯具材とが分離された状態に保持される。
【0012】
また、請求項5に記載した発明に係る冷凍食品は、上記ソース材はデミグラスソースであることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載した発明に係る冷凍食品は、電子レンジにて加熱調理可能であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載した発明に係る冷凍食品の製造方法は、上方に開口部を有する型容器の内側面部にシート状の卵焼きを配置する第一の工程と、上記卵焼きの反型容器側面部に、ソース材を均一の厚さに塗布して、ソース材を形成する第二の工程と、上記ソース材を可食性シート材で被覆する第三の工程と、上記可食性シートの反ソース材側面部に米飯具材を載置する第四の工程と、上記卵焼きの外縁部を上記型容器の内側に折り返し、上記米飯具材を包み込む第五の工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載した発明に係る冷凍食品の製造方法は、上記ソース材の流動度は、温度摂氏25℃の環境下において、ボストウィック型粘度計による測定で、0cm/30sec〜10cm/30secの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3の発明にあっては、調理済みの米飯具材と、調理済みの米飯具材と、上記米飯具材を被覆する可食性のシート材と、上記可食性のシート材の外方面部に配置され、粘性を有するソース材とからなることから、加熱調理によっても、ソース材が米飯具材に浸透することがない。
従って、味及び食感が失われること無く、食品としての高級感のある外観品質を保持しうる冷凍食品を提供することができる。
特に請求項2の発明にあっては、上記可食性シート材は、熱により粘性を保持した状態で溶融することから、ソース材とシート材とが一体となり、より食感が向上する。
更に、請求項3の発明にあっては、従来の米飯具材と卵焼きのみからなるオムライスと比較して、食品としての贅沢感、高級感の高いオムライスを提供することができる。
【0017】
また、請求項4の発明にあっては、上記可食性シートがチーズであることから、請求項1及び請求項2の効果に加え、チーズの風味により、より味が向上すると共に、チーズの白色系の色彩により、スプーンで切断した場合の断面の色彩のコントラストがより美しく、高級感が増大する。
また、請求項5の発明にあっては、上記ソース材がデミグラスソースであることから、請求項1から請求項3の効果に加え、より濃厚な味わいとなる。
【0018】
また、請求項6の発明にあっては、電子レンジにて加熱調理可能な冷凍食品であることから、より簡易に且つ迅速に調理が可能である。
【0019】
また、請求項7及び請求項8の発明にあっては、上方に開口部を有する型容器の内側面部にシート状の卵焼きを配置する第一の工程と、上記卵焼きの反型容器側面部に、ソース材を均一の厚さに塗布して、ソース材を形成する第二の工程と、上記ソース材を可食性シート材で被覆する第三の工程と、上記可食性シートの反ソース材側面部に米飯具材を載置する第四の工程と、上記卵焼きの外縁部を上記型容器の内側に折り返し、上記米飯具材を包み込む第五の工程とを備えることから、外側から卵焼き、ソース材、可食性シートの層及び米飯具材が夫々分離した状態で順番に配置された冷凍食品を容易に製造することができる。
特に請求項8の発明にあっては、上記ソース材の流動度は、温度摂氏25℃の環境下において、ボストウィック型粘度計による測定で、0cm/30sec〜10cm/30secの範囲であることから、塗布したソース材が動き難く、ソース材がより均一な厚さで保持される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態におけるオムライスの内部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるオムライスの製造過程を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施するための形態について添付図面を用いて、冷凍食品がオムライスである場合を例として説明する。
図1に示すように、本実施例に係るオムライス10は上記米飯具材11を被覆するとともに加熱により粘性を保持した状態で溶融するチーズ12と、上記チーズ12の外方面部に配置され、粘性を有するデミグラスソース13の層と、上記デミグラスソース13の層の外方に配置され、上記デミグラスソース13の層、チーズ12及び米飯具材11とを外方から被覆するシート状の卵焼き14を備えた構成を有している。
【実施例1】
【0022】
本実施例の構成について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に係るオムライス10の断面図を示している。
本実施例に係るオムライス10は全体略楕円形状に形成され、図1に示すように、全体がシート状の卵焼き14で被覆されている。
上記卵焼き14の内側には、所定の厚さのデミグラスソース13からなる層が形成されており、更に上記デミグラスソース13と米飯具材11との間には、熱によって粘性を保持して溶融するチーズ12が配設されている。
チーズ12の種類は特に限定はされないが、熱を加えることによって容易に溶融できる種類を選択する。
また、米飯具材の味付け、具材については特に限定されない。
【0023】
また、本実施例に係るオムライス10は、冷凍食品であり、ポリエチレン、ポリプロピレン等で形成された袋体(図1には図示せず)に封入された状態で販売されている。
【0024】
本実施例に係るオムライス10を調理する場合は、上記袋体の一部を破って加熱中の上記を逃がすための空気穴を形成した上で、電子レンジにて加熱する。
【0025】
図1に示すように電子レンジでの加熱によって、上記チーズ12が次第に溶融するが、溶解状態であっても完全な液状とはならないため、チーズ12が米飯具材浸透することは無くデミグラスソース13と米飯具材11との間に留まり、加熱された上記デミグラスソース13と米飯具材11を分離する壁の役目を果たし、上記デミグラスソース13が米飯具材11内に浸透することを防止する。
【0026】
従って、食する際にスプーン等で、上記オムライス10を切断すると、切断面は卵焼き14、デミグラスソース13、チーズ12、米飯具材11が互いに干渉することなく、美しい層をなし、非常に外観品質がよく、また高級感を感じることができる。
また、食する際に初めてデミグラスソース13、チーズ12及び米飯具材11が混じり合うことから、食感、味わいとも非常に優れている。
【0027】
本実施例に係るオムライス10の製造方法について、図面を用いて説明する。
図2は、本実施例に係るオムライス10の各製造過程における断面図を示している。
図2に示すように、本実施例にかかるオムライス10は、上方に開口部を有し、船型に形成された型容器20の内側面部21に、シート状に焼き上げた卵焼き14を内側面部21に沿って配置する(第一の工程30)。
なお、上記工程30における卵焼き14の配置方法は、卵焼き14は別途シート状に焼き上げたものを直接上記型容器20の内側面部に配置する方法、もしくは上記型容器20を所定温度に熱しておいて、液状の卵を上記容器内で直接熱凝固させる方法のいずれであっても良い。
【0028】
次に、上記卵焼き14の反型容器側面部22に、デミグラスソース13を均一の厚さに塗布して層を形成する(第二の工程31)。
この際、デミグラスソース13は冷却し、温度摂氏25℃の環境下において、ボストウィック型粘度計による測定で、流動度1.0cm/30sec〜4.5cm/30secの範囲となるように保持しておく。
【0029】
次に、上記デミグラスソース13の層をシート状のチーズ12で被覆し(第三の工程32)、上記チーズ12の反デミグラスソース側面部23に米飯具材11を載置する(第第四の工程33)。
さらに、上記卵焼き14の外縁部を上記型容器の内側に折り返し、上記米飯具材を包み込む(第五の工程34)。
上記工程に従うことによって、本実施例にかかるオムライス10を容易に製造することができる。
【0030】
なお、ソース材としては、本実施例に示したデミグラスソースの他、ケチャップ、ハヤシソース、とんかつソース等、同様の形態を有するソースであれば自由に選択することができる。
また、シート材についても、チーズのほか、のり、寒天シート、オブラート等を適宜選択することができる。
【0031】
なお、第五の工程について省略し、完成品を米飯具材にチーズ、デミグラスソースの上に、卵焼きを被せた形態としても良い。
また、本実施例においては、オムライスを例として説明したが、米飯具材の上に、粘性のある別具材をのせた形態の食品、たとえば中華丼、カレーライス等にも応用することができる。
また、本実施例においては、ボストウィック型粘度計による測定によるデミグラスソースの粘度は、温度摂氏25℃の環境下において、流動度1.0cm/30sec〜4.5cm/30secの範囲を理想値としているが、流動度0cm/30sec〜10cm/30secの範囲であれば、本実施例と同様の作用および効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は冷凍食品であって、特に、米飯具材にソース材をかける形態を有し、電子レンジによって加熱調理が可能な冷凍食品に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 オムライス
11 米飯具材
12 チーズ
13 デミグラスソース
14 卵焼き
20 型容器
21 型容器の内側面部
22 卵焼きの反型容器側面部
23 チーズの反デミグラスソース側面部
30 第一の工程
31 第二の工程
32 第三の工程
33 第四の工程
34 第五の工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済みの米飯具材と、
上記米飯具材を被覆する可食性のシート材と、
上記可食性のシート材の外方面部に配置され、粘性を有するソース材とからなることを特徴とする冷凍食品。
【請求項2】
上記可食性シート材は、熱により粘性を保持した状態で溶融することを特徴とする請求項1記載の冷凍食品。
【請求項3】
上記ソース材とシート材及び米飯具材とを外方から被覆するシート状の卵焼きを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍食品。
【請求項4】
上記可食性シート材は、チーズからなることを特徴とする請求項1から請求項3いずれか1項記載の冷凍食品
【請求項5】
上記ソース材は、デミグラスソースから形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4いずれか1項に記載の冷凍食品。
【請求項6】
上記冷凍食品は、電子レンジにて加熱調理可能であることを特徴とする請求項1から請求項5いずれか1項に記載の冷凍食品。
【請求項7】
上方に開口部を有する型容器の内側面部にシート状の卵焼きを配置する第一の工程と、
上記卵焼きの反型容器側面部に、ソース材を均一の厚さに塗布して、ソース材を形成する第二の工程と、
上記ソース材を可食性シート材で被覆する第三の工程と、
上記可食性シートの反ソース材側面部に米飯具材を載置する第四の工程と、
上記卵焼きの外縁部を上記型容器の内側に折り返し、上記米飯具材を包み込む第五の工程とを備えることを特徴とする請求項2〜請求項6に記載の冷凍食品の製造方法。
【請求項8】
上記ソース材の流動度は、温度摂氏25℃の環境下において、ボストウィック型粘度計による測定で、0cm/30sec〜10cm/30secの範囲であることを特徴とする請求項6記載の冷凍食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167109(P2011−167109A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32746(P2010−32746)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(507047975)ハインツ日本株式会社 (2)
【出願人】(592035327)西川食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】