説明

冷却システム

【課題】冷却システムにおいて、腐食性物質を除去する腐食性物質分解装置を設置することによって、室内ユニット内の冷却器等の金属部品に腐食防止用の塗装を施すことなく、金属腐食を抑制する。
【解決手段】冷却室21内に、この腐食性物質発生物12等が発生する腐食性物質を含んだ空気を清浄化する腐食性物質分解装置11を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を腐食させる腐食性物質を除去して冷却器の腐食を抑制する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器の腐食を抑制する技術として、熱交換器の表面に電着塗装を施し、腐食性物質が熱交換器における金属表面に触れないようにするというものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−138399号公報(第4−5頁、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された熱交換器の腐食を抑制する技術のように、熱交換器に予め電着塗装を施すものは、熱交換器以外の部位、特に現地配管接続部等には塗装ができず金属腐食が発生するという問題点があり、また、現地の腐食性物質の状況に応じた運転制御ができないという問題点もあった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、冷却システムにおいて、腐食性物質を除去する腐食性物質分解装置を設置することによって、室内ユニット内の冷却器等の金属部品に腐食防止用の塗装を施すことなく、金属腐食を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却システムは、圧縮機、凝縮器、膨張装置及び冷却器を順に冷媒配管によって接続して構成された冷凍サイクルを有する冷却装置と、冷却室内に存在し、金属を腐食させる腐食性物質を除去する腐食性物質分解装置と、前記冷却装置及び前記腐食性物質分解装置を制御する制御装置と、を備え、前記冷却装置は、前記冷却室内に設置され、前記冷却器を内蔵し、前記冷却室内の空気を冷却する室内ユニットを有したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却室内の腐食性物質が除去され、清浄化された空間を形成することができ、室内ユニット内の金属部品、特に、冷却器の金属腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る冷却システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の別形態の構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の別形態の構成図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る冷却システムの全体構成図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る冷却システムの全体構成図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る冷却システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
(冷却システムの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷却システムの全体構成図である。
図1で示されるように、室外ユニット1は、少なくとも、圧縮機2、凝縮器3、室外送風装置4、液溜め装置5及びアキュームレーター6によって構成されている。また、冷凍室又は冷蔵室等の冷却室21内に設置された室内ユニット7は、少なくとも、膨張装置8、冷却器9及び室内送風装置10によって構成されている。これらの装置は、圧縮機2、凝縮器3、液溜め装置5、膨張装置8、冷却器9、アキュームレーター6、そして、再び圧縮機2の順で環状に冷媒配管によって接続されて、冷凍サイクルを構成している。
【0010】
冷却器9は、熱交換器であり、例えば、銅配管等の伝熱管に伝熱面積を増大させる目的のため、アルミ等によって形成されたフィンを密着固定させた構成をしている。
【0011】
また、冷却室21内には、食品等の腐食性物質発生物12が保存のために保管されている。また、冷却室21内には、この腐食性物質発生物12等が発生する腐食性物質を含んだ空気を清浄化する腐食性物質分解装置11が設置されている。さらに、冷却室21内には、室外ユニット1内の圧縮機2及び室外送風装置4の回転数、室内ユニット7内の膨張装置8の開度、室内送風装置10の回転数、及び、後述する腐食性物質分解装置11の分解装置用ファン11iの回転数等を制御するコントローラー16が設置され、例えば、冷却室21内の壁等に内蔵されている。
【0012】
なお、腐食性物質の発生源は、腐食性物質発生物12に限定されるものではなく、例えば、腐食性物質として、槽の中に野菜を入れて洗浄するために次亜塩素酸の水滴又はミストが飛散したもの、又は、硫黄系ガス若しくは有機酸系ガスのような腐食性ガスである場合がある。以下、これらの物質を腐食性物質と総称するものとする。
【0013】
また、コントローラー16は、冷却室21内の壁等に内蔵されるものに限定されるものではなく、例えば、冷却室21外の壁等に設置されたり、あるいは、室外ユニット1又は室内ユニット7内に内蔵されるものとしてもよい。
【0014】
また、図1で示されるように、膨張装置8は、室内ユニット7内に設置されるものとしているが、これに限定されるものではなく、室外ユニット1内に設置されるものとしてもよい。
【0015】
また、冷凍サイクルを形成する室外ユニット1及び室内ユニット7は、本発明の「冷却装置」に相当し、コントローラー16は、本発明の「制御装置」に相当する。
【0016】
(冷凍サイクルの動作)
次に、図1を参照しながら、冷凍サイクルの動作について説明する。
圧縮機2は、吸入したガス冷媒を圧縮し、高温高圧となったガス冷媒を吐出する。この吐出されたガス冷媒は、凝縮器3に流入する。凝縮器3に流入したガス冷媒は、室外送風装置4の回転動作によって外気と熱交換が実施されて凝縮し、凝縮器3から流出する。この流出した冷媒は、液溜め装置5に流入して飽和冷媒として溜められる。そして、この液溜め装置5から流出した冷媒は、冷媒配管を経由して、冷却室21内に入り、室内ユニット7の膨張装置8によって減圧され、気液二相冷媒となる。この気液二相冷媒は、冷却器9に流入し、室内送風装置10の回転動作によって室内空気と熱交換が実施されて蒸発しガス冷媒(一部液冷媒として含む場合もある)となって、冷却器9から流出する。このとき、冷却器9によって冷却された室内空気は、室内ユニット7の吹き出し口(図示せず)から冷却室21内に向けて放出される。そして、冷却器9から流出したガス冷媒は、冷媒配管を経由して、冷却室21外に流出し、室外ユニット1内のアキュームレーター6に流入する。このアキュームレーター6において、ガス冷媒に含有されている液体部分が分離され、ガス冷媒のみがアキュームレーター6から流出し、圧縮機2に吸入される。以後、上記の動作が繰り返される。
【0017】
(腐食性物質による金属腐食について)
冷却室21内においては、食品等の加工及び保管等のために一定の温度及び湿度に維持する必要があり、冷却室21内に室内ユニット7を設置し、前述の冷凍サイクルの動作を実施しているが、この食品等の腐食性物質発生物12等から発生する腐食性物質により金属が腐食する場合がある。ここで、この腐食性物質による金属腐食の概要を説明する。
【0018】
まず、腐食性物質について例示する。例えば、野菜を切断する加工場においては、カット野菜の洗浄のために洗浄剤を使用するが、洗浄効果が高く、飲食における人体への影響が小さい等の理由から洗浄剤としては一般的に次亜塩素酸の水溶液が使用されることが多い。そして、このカット野菜を次亜塩素酸の水溶液で満たした槽で洗浄する工程がよくある。この洗浄工程において、次亜塩素酸の水滴又はミストが飛散して、腐食性物質が形成される。
【0019】
また、前述のように、食品等から直に腐食性物質が発生する場合がある。例えば、卵からは硫黄系ガスが発生し、フライ物からは有機酸系ガスが発生して、これらの腐食性ガスが、冷却室21内の空間に舞い上がる。
【0020】
以上に例示した腐食性物質のうち、次亜塩素酸等の水滴又はミストは、室内ユニット7内の構成部品のうちの金属表面全体に付着して、金属腐食に至る。一方、硫黄系ガス又は有機酸系ガス等の腐食性ガスは、冷却室21内の空間に舞い上がって、室内ユニット7内の冷却器9等の結露部に付着する。この腐食性物質を吸収した結露部は、その後に乾燥することにより冷却器9にはほとんど腐食性物質のみが残り、再度、結露した場合は、新たに腐食性ガスを吸収するという動作を繰り返すことによって、その冷却器9において腐食性物質が濃縮され、その結果として、金属腐食の威力が増し、冷却器9の金属腐食に至る。
【0021】
いずれの金属腐食の場合も、冷却室21内の食品等に対する影響は甚大となる。例えば、前述のように、冷却器9は、銅配管等の伝熱管に伝熱面積を増大させる目的のため、アルミ等で形成されたフィンを密着固定させた構造をしており、0.1mm程度の薄板のフィンは、腐食による構造破壊によって金属粉となり、室内送風装置10によって冷却室21内に吹き出されることになる。冷却室21内は、食品等を加工したり、保管したりしているので、上記のような金属粉の飛散は衛生上大きな問題となる。また、銅配管等の伝熱管の腐食によっては、その伝熱管に穴ができる場合があり、この穴ができることによって、その内部を流れている冷媒が冷却室21内に噴出し、食品衛生上大きな問題となる。
【0022】
(デフロスト動作)
次に、図1で示される冷凍サイクルの冷却器9への霜付による影響について説明する。
室内ユニット7は、冷却室21内の室内空気を吸い込み、その室内空気を冷却器9において冷媒と熱交換することによって冷却し、その冷却された空気を冷却室21内へ吹き出して室内温度を低下させて低温環境を維持している。例えば、室内ユニット7は、室内空気温度が10℃の場合は、それよりも数度低い温度、例えば、8℃の空気を冷却室21内に吹き出している。このとき、室内ユニット7が8℃の空気を吹き出すためには、冷却器9内の冷媒の温度(蒸発温度)がそれよりもさらに低くなくてはならない。蒸発温度は、冷却器9の能力及び室内送風装置10の送風量等によって決定されるが、一般的に、吸い込み空気温度に対して15℃程度低くなる。この場合、例えば、吸込空気温度が10℃の場合は、冷却器9における冷媒の蒸発温度が−5℃となって0℃以下となり、冷却器9表面において結露した水分が、氷結して霜となる。この氷結した霜の分だけ、冷却器9の性能が悪化して蒸発温度は低下し、さらに、霜が成長していくことになる。その結果、冷却器9において過度に霜が発生した状態では、冷却能力が低下したり、あるいは、液バックを発生する要因となるため、ある程度の霜が発生した段階でこの霜を溶かすデフロスト動作が必要になる。
【0023】
このデフロスト動作の方式としては、一般的には以下の3通りがある。
【0024】
(1)オフサイクル方式
圧縮機2を停止することによって、冷媒の流れを止めて、冷却器9における冷却能力をなくすと共に、室内空気を室内送風装置10によって冷却器9へ送り、冷却器9の温度を上昇させて霜を溶かす。
(2)ホットガス方式
圧縮機2の吐出ガス(ホットガス)を冷却器9に流すことによって、冷却器9の温度を上昇させて霜を溶かす。
(3)ヒーター方式
ヒーター(図示せず)を備え、このヒーターに通電することによって冷却器9の温度を上昇させて霜を溶かす。
【0025】
上記の3方式のうち、オフサイクル方式は、圧縮機2の運転を停止させるだけの容易な方式であり、室内温度の熱で霜を溶かすものであり、室内温度が比較的高い場合は有効であるが、室内温度が10℃程度以下では霜が溶け切らない場合があり、あまり有効ではない。また、ホットガス方式は、ホットガスを冷却器9に流した後に、冷媒を蒸発させる装置が必要となり、別途、デフロスト装置を取り付けなければならないため、デフロスト動作の主流となっていない。また、ヒーター方式において、ヒーターは加熱能力が高く、冷却室21内の室内温度に左右されずに、冷却器9に発生した霜を溶かすことができ、また、デフロスト装置等の別装置を設置する必要もないことからデフロスト動作の主流となっている。このヒーター方式のデフロスト動作は、コントローラー16によって制御されるものとすればよい。
【0026】
いずれのデフロスト動作の方式においても、冷却器9の温度を上昇させることによって、冷却器9に発生した霜は水滴となって、冷却器9の下部に設置されたドレンパン(図示せず)に滴下し、その一部は蒸発して冷却室21内に排出される。このとき、前述のように、冷却室21内に腐食性物質が存在している場合、この冷却器9に発生した霜には腐食性物質が含まれており、デフロスト動作によって溶けた霜から発生する蒸気には、腐食性物質が含まれ、冷却室21内に一気に排出されることになる。そして、デフロスト動作終了後は、排出された腐食性物質が冷却室21内に充満することとなり、その腐食性物質を室内ユニット7が再度吸込むことによって、冷却器9又は冷媒配管等の金属部分の腐食を引き起こすことになる。
【0027】
以上のように、洗浄工程等において飛散した腐食性物質である次亜塩素酸等の水滴又はミスト、食品等の腐食性物質発生物12から発生した腐食性物質である硫黄系ガス又は有機酸系ガス等、さらには、上記のデフロスト動作により冷却器9に発生した霜が溶けて蒸発することによって室内ユニット7から排出された腐食性物質は、室内ユニット7内の冷却器9又は冷媒配管等の金属部分の腐食を防止するために、適切に除去又は分解させる必要がある。本実施の形態に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11は、これらの腐食性物質を除去又は分解し、冷却室21内の室内空気を浄化するものである。
【0028】
(腐食性物質分解装置11の構成及び動作)
以下、この腐食性物質分解装置11の構成及び動作について、腐食性物質の種類ごとに対応したものを図2〜図4を参照しながら説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の構成図である。
図2で示される腐食性物質分解装置11は、腐食性物質としての次亜塩素酸等の水滴又はミスト(以下、「腐食性ミスト」という)のうち腐食性成分を除去するものである。この腐食性物質分解装置11は、少なくとも、吸水性フィルター11a、水供給部11b、貯水部11c、循環機構11d、給水管11e、排水管11f、高圧電極11g、高圧電源11h及び分解装置用ファン11iによって構成されている。
【0030】
吸水性フィルター11aは、板形状をしたガス透過性のフィルターであり、その上側面部から水供給部11bによって水が供給されることによって、水が貯留された状態とし、後述するように、プラスに荷電された腐食性ミストを、吸水性フィルター11aの平面部に吸引して吸着させるものである。
なお、図2で示されるように、吸水性フィルター11aは、直方体形状、かつ、板形状で構成されているが、これに限定されるものではなく、板形状であり、貯水部11cに設置可能であり、かつ、水供給部11bによって上部から水が供給可能なように形成されているものとすればよい。
【0031】
水供給部11bは、循環機構11dによるポンプ作用によって水が送り込まれ、前述のように吸水性フィルター11aにその上側面部から水を供給するものである。
【0032】
貯水部11cは、吸水性フィルター11aの下部に設置された箱形状のものであり、吸水性フィルター11a内部を流れ落ちた水を受けて、貯水するものである。
【0033】
循環機構11dは、ポンプ等であり、貯水部11cに貯められた水を水供給部11bまで水配管を介して汲み上げるものである。以上のように、循環機構11d、水供給部11b、吸水性フィルター11a、貯水部11c、そして、循環機構11dの順で水が循環する水循環経路が形成される。
【0034】
給水管11eは、貯水部11c、循環機構11d及び水供給部11bの順で接続する水配管のいずれかの部位に接続された配管であり、この水配管に水を供給するものである。また、この給水管11eによって、常時、水配管に水を供給させる必要はなく、この給水管11eに開閉弁等を設けることによって、所定時間ごとに間欠的に給水するものとすればよい。
【0035】
排水管11fは、貯水部11cに接続された配管であり、貯水部11c内に貯められた水と導通しており、この貯められた水を外部に排出するものである。また、この排水管11fによって、常時、貯水部11cに貯められた水を排出させる必要はなく、この排水管11fに開閉弁等を設けることによって、所定時間ごとに間欠的に排水するものとすればよい。
【0036】
高圧電極11gは、吸水性フィルター11aにおける腐食性ミストが吸引される平面と対向配置されたガス透過性の電極であり、電気的に接続された高圧電源11hによって所定電圧以上の電圧が印加される。この高圧電極11gへの電圧印加動作及び電圧レベルの調整は、コントローラー16によって制御される。
なお、高圧電極11gは、ガス透過性のものであるとしたが、必ずしもその必要はなく、ガス透過性のものではなくともよい。この場合、後述する分解装置用ファン11iによって吸引される腐食性ミストは、吸水性フィルター11aと高圧電極11gとの隙間から進入し、吸水性フィルター11aの平面から吸着されることになる。
【0037】
分解装置用ファン11iは、その回転駆動によって、冷却室21内に存在する腐食性ミストを吸水性フィルター11aの高圧電極11gと対向した平面へ向けて吸引させるものである。
【0038】
なお、高圧電極11gは、本発明の「電極」に相当する。
【0039】
次に、以上のように構成された腐食性物質分解装置11によって、腐食性ミストのうちの腐食性成分を除去する動作について説明する。
【0040】
前述したように、吸水性フィルター11a、水供給部11b、貯水部11c及び循環機構11dによって形成された水循環経路において、循環機構11dのポンプ作用によって水が循環し、吸水性フィルター11a内部には水が貯留された状態となっている。
【0041】
また、この吸水性フィルター11aは、電気的に接地されており、高圧電極11gに電気的に接続された高圧電源11hは、高圧電極11gに電圧を印加し、高圧電極11gと吸水性フィルター11aとの間に電位差を発生させる。このとき、この高圧電極11gに所定電圧以上の電圧が印加されると、高圧電極11gと吸水性フィルター11aとの間でコロナ放電が発生する。
【0042】
このコロナ放電は、高圧電極11gから吸水性フィルター11aへ向かって電荷が放出されるものであり、腐食性ミストが、分解装置用ファン11iの回転駆動によって、周囲の空気と共に高圧電極11gと吸水性フィルター11aとの間に吸引されると、高圧電極11gから放出された電荷によってプラスに荷電される。このプラスに荷電された腐食性ミストは、高圧電極11gと吸水性フィルター11aとの間に発生しているクーロン力によって吸水性フィルター11aの平面側に吸引され、吸水性フィルター11aに吸着される。この腐食性ミストは、水への溶解度が高く、吸水性フィルター11aに貯留している水に溶解し、腐食性ミストのうち腐食性成分が溶解除去される。このように、腐食性ミストのうち腐食性成分が、吸水性フィルター11aによって溶解除去されることによって、腐食性ミストが吸着した吸水性フィルター11aの平面と反対側の背面から清浄な空気である清浄ガスが冷却室21内へ向けて放出される。そして、吸水性フィルター11a内に貯留された水に溶け込んだ腐食性成分は、水供給部11bから供給される水によって貯水部11cに流し込まれるので、吸水性フィルター11aが再生される。
【0043】
また、腐食性成分を含んだ水は、吸水性フィルター11aから貯水部11cに貯まり込むことになるが、排水管11fを介して外部に排水され、その代わりに、給水管11eを介して水循環経路に新しい水が供給される。この場合、前述したように、給水管11eを介した新しい水の供給動作、及び、貯水部11cに貯められた水の排水管11fを介した排水動作は、常時、実施される必要はなく、所定時間ごとに間欠的に実施されるものとすればよい。
【0044】
以上の動作によって、冷却室21内に存在する腐食性ミストの腐食性成分が除去される。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の別形態の構成図である。
図3で示される腐食性物質分解装置11は、腐食性ガスとしての有機酸系ガス等を除去するものである。この腐食性物質分解装置11は、少なくとも、高圧電極11g、高圧電源11h、分解装置用ファン11i及び導電性触媒担持吸着剤11jによって構成されている。
【0046】
導電性触媒担持吸着剤11jは、板形状をしたガス透過性の吸着剤であり、腐食性ガスを吸着するものであり、例えば、セラミック等のハニカム構造にゼオライトのような細孔をもつ触媒を担持したものである。
なお、図3で示されるように、導電性触媒担持吸着剤11jは、直方体形状、かつ、板形状で構成されているが、これに限定されるものではなく、ガス透過性を損なわない程度の板形状となっていればよい。
【0047】
高圧電極11gは、導電性触媒担持吸着剤11jにおける腐食性ガスが吸着される平面と対向配置されたガス透過性の電極であり、電気的に接続された高圧電源11hによって電圧が印加される。この高圧電極11gへの電圧印加動作及び電圧レベルの調整は、コントローラー16によって制御される。
なお、高圧電極11gは、ガス透過性のものであるとしたが、必ずしもその必要はなく、ガス透過性のものではなくともよい。この場合、後述する分解装置用ファン11iによって吸引される腐食性ガスは、導電性触媒担持吸着剤11jと高圧電極11gとの隙間から進入し、導電性触媒担持吸着剤11jの平面から吸着されることになる。
【0048】
分解装置用ファン11iは、その回転駆動によって、冷却室21内に存在する腐食性ガスを導電性触媒担持吸着剤11jの高圧電極11gと対向した平面へ向けて吸引させるものである。
【0049】
次に、以上のように構成された腐食性物質分解装置11によって、腐食性ガスを除去する動作について説明する。
【0050】
冷却室21内に存在する腐食性ガスは、分解装置用ファン11iの回転駆動によって、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面の微細孔に侵入して吸着される。導電性触媒担持吸着剤11jは、電気的に接地されており、高圧電極11gに電気的に接続された高圧電源11hは、高圧電極11gに電圧を印加し、高圧電極11gと導電性触媒担持吸着剤11jとの間に電位差を発生させる。この電位差によって、高圧電極11gと導電性触媒担持吸着剤11jとの間の空間に存在する酸素からプラズマが生成される。
【0051】
このプラズマが生成されると、そのプラズマのうちのラジカル及び高速電子が、導電性触媒担持吸着剤11jに担持された触媒を介して、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着剤界面に存在する吸着された腐食性物質と反応して、この吸着された腐食性物質は酸化分解される。腐食性物質は、このように酸化分解されると、腐食性を失った物質となり、分解装置用ファン11iの回転駆動によって、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面と反対側の背面から清浄ガスとして冷却室21内へ向けて放出される。このように、吸着された腐食性物質は、酸化分解された清浄ガスとして放出されるので、導電性触媒担持吸着剤11jは再生される。
【0052】
以上の動作によって、冷却室21内に存在する腐食性ガスが除去される。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態1に係る冷却システムにおける腐食性物質分解装置11の別形態の構成図である。
図4で示される腐食性物質分解装置11は、腐食性ガスとしての硫黄系ガス等を除去するものである。この腐食性物質分解装置11は、少なくとも、水供給部11b、貯水部11c、循環機構11d、給水管11e、排水管11f、高圧電極11g、高圧電源11h、分解装置用ファン11i及び導電性触媒担持吸着剤11jによって構成されている。
【0054】
導電性触媒担持吸着剤11jは、板形状をしたガス透過性の吸着剤であり、腐食性ガスを吸着するものであり、例えば、セラミック等のハニカム構造にゼオライトのような細孔をもつ触媒を担持したものである。
なお、図4で示されるように、導電性触媒担持吸着剤11jは、直方体形状、かつ、板形状で構成されているが、これに限定されるものではなく、ガス透過性を損なわない程度の板形状となっていればよい。
【0055】
水供給部11bは、循環機構11dによるポンプ作用によって水が送り込まれ、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面に向かって水を供給するものである。
【0056】
貯水部11cは、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面の反対側の背面と対向して、すなわち、導電性触媒担持吸着剤11jの下部に設置された箱形状のものであり、導電性触媒担持吸着剤11j内部を流れ落ちた水を受けて、貯水するものである。
【0057】
循環機構11dは、ポンプ等であり、貯水部11cに貯められた水を水供給部11bまで水配管を介して汲み上げるものである。以上のように、循環機構11d、水供給部11b、導電性触媒担持吸着剤11j、貯水部11c、そして、循環機構11dの順で水が循環する水循環経路が形成される。
【0058】
給水管11eは、貯水部11c、循環機構11d及び水供給部11bの順で接続する水配管のいずれかの部位に接続された配管であり、この水配管に水を供給するものである。また、この給水管11eによって、常時、水配管に水を供給させる必要はなく、この給水管11eに開閉弁等を設けることによって、所定時間ごとに間欠的に給水するものとすればよい。
【0059】
排水管11fは、貯水部11cに接続された配管であり、貯水部11c内に貯められた水と導通しており、この貯められた水を外部に排出するものである。また、この排水管11fによって、常時、貯水部11cに貯められた水を排出させる必要はなく、この排水管11fに開閉弁等を設けることによって、所定時間ごとに間欠的に排水するものとすればよい。
【0060】
高圧電極11gは、導電性触媒担持吸着剤11jにおける腐食性ガスが吸着される平面と対向して、すなわち、導電性触媒担持吸着剤11jの上部に設置されたガス透過性の電極であり、電気的に接続された高圧電源11hによって電圧が印加される。
なお、高圧電極11gは、ガス透過性のものであるとしたが、必ずしもその必要はなく、ガス透過性のものではなくともよい。この場合、後述する分解装置用ファン11iによって吸引される腐食性ガスは、導電性触媒担持吸着剤11jと高圧電極11gとの隙間から進入し、導電性触媒担持吸着剤11jの平面から吸着されることになる。
【0061】
分解装置用ファン11iは、その回転駆動によって、冷却室21内に存在する腐食性ガスを導電性触媒担持吸着剤11jの高圧電極11gと対向した平面へ向けて吸引させるものである。
【0062】
次に、以上のように構成された腐食性物質分解装置11によって、腐食性ガスを除去する動作について説明する。
【0063】
冷却室21内に存在する腐食性ガスは、分解装置用ファン11iの回転駆動によって、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面の微細孔に侵入して吸着される。導電性触媒担持吸着剤11jは、電気的に接地されており、高圧電極11gに電気的に接続された高圧電源11hは、高圧電極11gに電圧を印加し、高圧電極11gと導電性触媒担持吸着剤11jとの間に電位差を発生させる。この電位差によって、高圧電極11gと導電性触媒担持吸着剤11jとの間の空間に存在する酸素からプラズマが生成される。
【0064】
このプラズマが生成されると、そのプラズマのうちのラジカル及び高速電子が、導電性触媒担持吸着剤11jに担持された触媒を介して、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着剤界面に存在する吸着された腐食性物質と反応して、この吸着された腐食性物質は酸化分解される。腐食性物質は、このように酸化分解されると、腐食性を失った物質となり、分解装置用ファン11iの回転駆動によって、導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面と反対側の背面から清浄ガスとして冷却室21内へ向けて放出される。
【0065】
また、導電性触媒担持吸着剤11jに吸着された腐食性物質のうち、プラズマによって酸化分解除去されなかったものは、水供給部11bによって導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面に向けて供給される水に溶解し、この腐食性物質が溶解した水は、導電性触媒担持吸着剤11jの下部の貯水部11cに流れ落ちて貯水される。このように、プラズマによって酸化分解除去されなかった腐食性物質は、水供給部11bにより導電性触媒担持吸着剤11jの吸着側平面に向けて供給される水によって溶解除去されると共に、導電性触媒担持吸着剤11jが再生される。
【0066】
また、貯水部11cに貯まった腐食性物質を含んだ水は、排水管11fを介して外部に排水され、その代わりに、給水管11eを介して水循環経路に新しい水が供給される。この場合、前述したように、給水管11eを介した新しい水の供給動作、及び、貯水部11cに貯められた水の排水管11fを介した排水動作は、常時、実施される必要はなく、所定時間ごとに間欠的に実施されるものとすればよい。
【0067】
以上の動作によって、冷却室21内に存在する腐食性ガスが除去される。
【0068】
(冷却システムの動作)
次に、図1を参照しながら、本実施の形態に係る冷却システムの動作を説明すると共に、その冷却システムにおける腐食性物質分解装置11による腐食性物質の除去動作について説明する。
【0069】
図1で示されるように、冷却室21内には、食品等である腐食性物質発生物12から有機酸系ガスの腐食性ガスが発生し、そして、この腐食性ガスを吸い込んだ室内ユニット7内の冷却器9に発生した腐食性物質を含む霜が、前述のデフロスト動作によって溶けて蒸発し、室内ユニット7から腐食性物質が排出されているものとする。このとき、冷却室21内には、冷却システムの腐食性物質分解装置11として、図3で示されるものが設置されているものとする。
【0070】
上記のような腐食性物質は、腐食性物質分解装置11内の分解装置用ファン11iの回転駆動によって、腐食性物質分解装置11内に吸い込まれて、腐食性が除去された清浄ガスとなって腐食性物質分解装置11の外部に放出される。また、コントローラー16は、冷却システム全体の動作を把握しており、冷却器9に対するデフロスト動作の制御も実施する。このとき、例えば、コントローラー16は、デフロスト動作の実施中は、室内ユニット7から多量の腐食性物質が排出されるので、腐食性物質分解装置11における高圧電極11gへの印加電圧レベルを上げたり、あるいは、分解装置用ファン11iの送風量を増加させて腐食性物質の除去能力を上げること(以下、「強レベル運転」という)によって、室内ユニット7から排出された腐食性物質を一気に除去することができる。また、コントローラー16は、デフロスト動作を実施しない期間は、腐食性物質分解装置11における高圧電極11gへの印加電圧レベルを下げたり、あるいは、分解装置用ファン11iの送風量を減少させ腐食性物質の除去能力を下げること(以下、「弱レベル運転」という)によって、省エネ運転を実施することができる。
【0071】
なお、デフロスト動作の実施直後の所定時間中は、霜の融解による蒸気の発生が少ないので、コントローラー16は、弱レベル運転を実施するものとしてもよい。これによっても、省エネ運転に寄与することができる。
【0072】
(実施の形態1の効果)
以上の構成の冷却システムによって、冷却室21内の腐食性物質が除去され、清浄化された空間を形成することができ、室内ユニット7内の金属部品、特に、冷却器9の金属腐食を抑制することができる。
【0073】
また、室内ユニット7内の金属部品の金属腐食を抑制することによって、金属粉の発生を抑制でき、金属粉の飛散による冷却室21内に保管された食品等への影響を抑制できる。
【0074】
また、室内ユニット7内の冷却器9の金属腐食を抑制することによって、その伝熱管の腐食による穴の発生を防ぐことができ、腐食による穴から冷媒が噴出することによる食品等への影響を抑制することができ、食品衛生を維持することができる。
【0075】
また、冷却システムが室内ユニット7の冷却器9に対するデフロスト動作を実施している場合、強レベル運転を実施することによって、腐食性物質を一気に除去することができるので、室内ユニット7内の金属部品の腐食をさらに抑制することができる。
【0076】
さらに、冷却システムがデフロスト動作を実施しない期間は、弱レベル運転を実施することによって、省エネ運転を実施することができる。
【0077】
なお、図1で示されるように、冷却室21内には、腐食性ガスである有機酸系ガスを発生する食品である腐食性物質発生物12が保管されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、冷却室21内に、腐食性ガスである硫黄系ガスを発生する腐食性物質発生物12が保管されている場合、又は、カット野菜等の洗浄工程を実施する機械が設置され、腐食性ミストである次亜塩素酸等の水滴又はミストが発生する環境にある場合でもよいのは言うまでもない。このとき、冷却室21内で、硫黄系ガス等が発生する場合においては、図4で示される腐食性物質分解装置11が設置されるものとすればよく、そして、次亜塩素酸等の水滴又はミストが発生する場合においては、図2で示される腐食性物質分解装置11が設置されるものとすればよい。
【0078】
また、図1においては、腐食性物質分解装置11の設置場所については特に限定していないが、腐食性物質が多量に発生することが既知である場合は、その発生源の近傍(図1においては、例えば、腐食性物質発生物12の近傍、又は、室内ユニット7の近傍)に腐食性物質分解装置11を設置することによって、腐食性物質の除去による効果が大きくなる。
【0079】
さらに、図1においては、腐食性物質分解装置11として1台設置するものとしているが、これに限定されるものではなく、冷却室21内に複数の腐食性物質分解装置11を設置するものとしてもよい。例えば、冷却室21内で複数種類の腐食性物質が発生する場合は、図2〜図4で示される腐食性物質分解装置11のようにそれぞれの腐食性物質に対応した腐食性物質分解装置11をそれぞれ設置することによって、腐食性物質の除去による効果が大きくなる。
【0080】
実施の形態2.
本実施の形態に係る冷却システムについて、実施の形態1に係る冷却システムの構成及び動作と相違する点を中心に説明する。
【0081】
(冷却システムの全体構成)
図5は、本発明の実施の形態2に係る冷却システムの全体構成図である。
図5で示される本実施の形態に係る冷却システムにおいては、室内ユニット7の吸い込み口(図示せず)近傍に、腐食性物質検出装置13が設置されている。この腐食性物質検出装置13は、例えば、硫黄系ガス又は有機酸系ガス等の腐食性ガスの濃度(ppm)を測定するものとすればよい。また、腐食性物質検出装置13は、コントローラー16に接続されており、検出した腐食性物質の濃度情報をコントローラー16に送信する。その他の構成は、図1で示される実施の形態1に係る冷却システムと同様である。
【0082】
(冷却システムの動作)
次に、図5を参照しながら、本実施の形態に係る冷却システムの動作について説明する。
【0083】
冷却室21内に設置されている室内ユニット7内の冷却器9等の金属部品の金属腐食の発生及び進行具合は、冷却室21内の腐食性ガスの濃度、及び、腐食性ガスの暴露時間の影響を受ける。本実施の形態に係る冷却システムにおけるコントローラー16は、予め、腐食性ガスの濃度、及び、腐食性ガスの暴露時間に対するそれぞれの閾値を設定しておく。そして、コントローラー16は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度、若しくは、暴露時間が閾値を超えた場合のみ、又は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度、及び、暴露時間の双方がそれぞれの閾値を超えた場合にのみ、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施し、それ以外の場合は、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施しないものとする。また、上記の暴露時間について、コントローラー16によるその測定開始タイミングは、例えば、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度が所定値を超えた時点から測定開始するものとすればよい。この場合、測定時間をリセットするタイミングは、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度が所定値以下になった場合にリセットするものとすればよい。
【0084】
なお、上記の閾値について、腐食性ガスの濃度及び暴露時間それぞれに対するものを設定したが、これに限定されるものではなく、腐食性ガスの濃度及び暴露時間の双方に基づいて算出される指標値についての閾値が設定されるものとしてもよい。
【0085】
(実施の形態2の効果)
以上の構成及び動作のように、金属腐食にほとんど影響がない腐食性ガスの濃度又は暴露時間においては、腐食性物質分解装置11による除去動作を実施させないことによって、省エネ運転が可能となり、冷却システムの高効率な運転が可能となる。
【0086】
なお、上記で説明した冷却システムにおいて、コントローラー16は、腐食性ガスの濃度及び暴露時間に基づいて、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施するか否かを決定するものとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、コントローラー16は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度、若しくは、暴露時間が閾値を超えた場合、又は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度、及び、暴露時間の双方がそれぞれの閾値を超えた場合、腐食性物質分解装置11における分解装置用ファン11iの送風量を増加させ、それ以外の場合は、分解装置用ファン11iの送風量を減少させる制御を実施するものとしてもよい。
【0087】
また、上記で説明した冷却システムにおいて、コントローラー16は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度、及び、暴露時間に基づいて、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を制御するものとしているが、これに限定されるものではない。すなわち、コントローラー16は、腐食性物質検出装置13によって検出された腐食性ガスの濃度のみに基づいて、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を制御するものとしてもよい。
【0088】
また、上記の腐食性物質検出装置13は、硫黄系ガス又は有機酸系ガス等の腐食性ガスの濃度(ppm)を測定するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、次亜塩素酸等の水滴又はミストによる金属腐食が懸念される冷却室21においては、その飛散粒子数等を測定して、コントローラー16は、その測定結果に基づいて、腐食性物質分解装置11の除去動作を制御するものとしてよい。
【0089】
実施の形態3.
本実施の形態に係る冷却システムについて、実施の形態1に係る冷却システムの構成及び動作と相違する点を中心に説明する。
【0090】
(冷却システムの全体構成)
図6は、本発明の実施の形態3に係る冷却システムの全体構成図である。
図6で示される本実施の形態に係る冷却システムにおいては、室内ユニット7の吸い込み口(図示せず)近傍に、温湿度検出装置14が設置されている。この温湿度検出装置14は、室内ユニット7への吸い込み空気の温度及び湿度を検出する。また、温湿度検出装置14は、コントローラー16に接続されており、検出した吸い込み空気の温度情報及び湿度情報をコントローラー16に送信する。その他の構成は、図1で示される実施の形態1に係る冷却システムと同様である。
【0091】
(冷却システムの動作)
次に、図6を参照しながら、本実施の形態に係る冷却システムの動作について説明する。
【0092】
実施の形態1において説明したように、冷却室21内に腐食性ガスが発生している場合、室内ユニット7内の金属部品における結露部(特に、冷却器9)において結露がなければ、腐食性ガスを吸収した結露が濃縮されて金属腐食が発生するまでには至らない。そこで、本実施の形態に係る冷却システムにおいては、コントローラー16によって室内ユニット7内の冷却器9において結露していることが検出された場合にのみ、金属腐食の可能性があると判断するものである。
【0093】
コントローラー16は、温湿度検出装置14によって検出された室内ユニット7への吸い込み空気の温度及び湿度、並びに、冷却器9の冷却能力に基づいて算出した演算値を、所定の閾値と比較することによって、冷却器9において結露が発生しているか否かを判定する。そして、コントローラー16は、冷却器9において結露が発生していると判定した場合、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施し、結露が発生していないと判定した場合、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施しないものとする。
【0094】
(実施の形態3の効果)
以上の構成及び動作のように、冷却器9において結露が発生していない場合においては、金属腐食にほとんど影響がないものと判定し、腐食性物質分解装置11による除去動作を実施させないことによって、省エネ運転が可能となり、冷却システムの高効率な運転が可能となる。
【0095】
なお、上記で説明した冷却システムにおいて、コントローラー16は、冷却器9の結露状態に基づいて、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施するか否かを決定するものとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、コントローラー16は、冷却器9において結露が発生していると判定した場合、腐食性物質分解装置11における分解装置用ファン11iの送風量を増加させ、結露が発生していないと判定した場合、分解装置用ファン11iの送風量を減少させる制御を実施するものとしてもよい。
【0096】
また、本実施の形態の冷却システムは、前述の実施の形態2に係る冷却システムに係る腐食性物質検出装置13を備え、実施の形態2に係る冷却システムの動作を組み合わせて適用するものとしてもよい。
【0097】
実施の形態4.
本実施の形態に係る冷却システムについて、実施の形態1に係る冷却システムの構成及び動作と相違する点を中心に説明する。
【0098】
図7は、本発明の実施の形態4に係る冷却システムの全体構成図である。
図7で示される本実施の形態に係る冷却システムにおいては、室内ユニット7の吹き出し口(図示せず)近傍に、湿度検出装置15が設置されている。この湿度検出装置15は、室内ユニット7の吹き出し空気の湿度を検出する。また、湿度検出装置15は、コントローラー16に接続されており、検出した吹き出し空気の湿度情報をコントローラー16に送信する。その他の構成は、図1で示される実施の形態1に係る冷却システムと同様である。
【0099】
(冷却システムの動作)
次に、図7を参照しながら、本実施の形態に係る冷却システムの動作について説明する。
【0100】
実施の形態1において説明したように、冷却室21内に腐食性ガスが発生している場合、室内ユニット7内の金属部品における結露部(特に、冷却器9)において結露がなければ、腐食性ガスを吸収した結露が濃縮されて金属腐食が発生するまでには至らない。また、冷却器9において結露が発生する場合、冷却器9の表面においては露点まで空気が冷却されていると考えられ、湿度検出装置15によって検出された湿度は、理論上100%となる。しかし、実際は、冷却器9での冷却能力のアンバランスにより結露状態でも、湿度検出装置15による検出湿度は100%未満である場合がある。そこで、コントローラー16が、冷却器9において結露が発生しているか否かを判定する場合、湿度検出装置15によって検出された湿度が、例えば、95%以上の場合、冷却器9において結露が発生していると判定すればよい。
【0101】
コントローラー16は、湿度検出装置15によって検出された室内ユニット7の吹き出し空気の湿度が、所定の閾値(例えば、95%)以上の場合、冷却器9において結露が発生していると判定し、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施する。一方、湿度検出装置15によって検出された室内ユニット7の吹き出し空気の湿度が、所定の閾値未満である場合、冷却器9において結露が発生していないと判定し、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施しないものとする。
【0102】
(実施の形態4の効果)
以上の構成及び動作のように、冷却器9において結露が発生していない場合においては、金属腐食にほとんど影響がないものと判定し、腐食性物質分解装置11による除去動作を実施させないことによって、省エネ運転が可能となり、冷却システムの高効率な運転が可能となる。
【0103】
なお、上記で説明した冷却システムにおいて、コントローラー16は、冷却器9の結露状態に基づいて、腐食性物質分解装置11による腐食性ガスの除去動作を実施するか否かを決定するものとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、コントローラー16は、冷却器9において結露が発生していると判定した場合、腐食性物質分解装置11における分解装置用ファン11iの送風量を増加させ、結露が発生していないと判定した場合、分解装置用ファン11iの送風量を減少させる制御を実施するものとしてもよい。
【0104】
また、本実施の形態の冷却システムは、前述の実施の形態2に係る冷却システムに係る腐食性物質検出装置13、若しくは、実施の形態3に係る温湿度検出装置14、又はこれら双方を備えるものとし、実施の形態2に係る冷却システムの動作、若しくは、実施の形態3に係る冷却システムの動作、又はこれら双方の動作を組み合わせて適用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 室外ユニット、2 圧縮機、3 凝縮器、4 室外送風装置、5 液溜め装置、6 アキュームレーター、7 室内ユニット、8 膨張装置、9 冷却器、10 室内送風装置、11 腐食性物質分解装置、11a 吸水性フィルター、11b 水供給部、11c 貯水部、11d 循環機構、11e 給水管、11f 排水管、11g 高圧電極、11h 高圧電源、11i 分解装置用ファン、11j 導電性触媒担持吸着剤、12 腐食性物質発生物、13 腐食性物質検出装置、14 温湿度検出装置、15 湿度検出装置、16 コントローラー、21 冷却室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張装置及び冷却器を順に冷媒配管によって接続して構成された冷凍サイクルを有する冷却装置と、
冷却室内に存在し、所定の金属を腐食させる腐食性物質を除去する腐食性物質分解装置と、
前記冷却装置及び前記腐食性物質分解装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記冷却装置は、前記冷却室内に設置され、前記冷却器を内蔵し、前記冷却室内の空気を冷却する室内ユニットを有した
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記冷却器に発生した霜を融解させるためのデフロスト動作の実施中に、前記腐食性物質分解装置に対して、前記腐食性物質の除去能力を上げる強レベル運転を実施させ、
前記デフロスト動作を実施しない場合は、前記腐食性物質分解装置に対して、前記腐食性物質の除去能力を下げる弱レベル運転を実施させる
ことを特徴とする請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記室内ユニット内部において、前記冷却器の近傍に設置され、前記冷却器を加熱するヒーターを備え、
前記制御装置は、前記デフロスト動作を実施する場合、前記ヒーターに前記冷却器を加熱させる
ことを特徴とする請求項2記載の冷却システム。
【請求項4】
前記室内ユニットの吸い込み口から吸い込まれる空気に含まれる前記腐食性物質の量を検出する腐食性物質検出装置を備え、
前記制御装置は、前記腐食性物質検出装置によって検出された前記腐食性物質の量に基づいて、前記腐食性物質分解装置による前記腐食性物質の除去動作を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記腐食性物質検出装置によって検出された前記腐食性物質の量、及び、前記腐食性物質の前記冷却室内における暴露時間に基づいて、前記腐食性物質分解装置による前記腐食性物質の除去動作を制御する
ことを特徴とする請求項4記載の冷却システム。
【請求項6】
前記室内ユニットの吸い込み口から吸い込まれる空気の温度及び湿度を検出する温湿度検出装置を備え、
前記制御装置は、前記温湿度検出装置によって検出された温度及び湿度、並びに、前記冷却器の冷却能力に基づいて、前記冷却器に結露が発生しているか否かを判定し、該判定結果に基づいて、前記腐食性物質分解装置による気体状態の前記腐食性物質である腐食性ガスの除去動作を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記室内ユニットの吹き出し口から吹き出される空気の湿度を検出する湿度検出装置を備え、
前記制御装置は、前記湿度検出装置によって検出された湿度に基づいて、前記冷却器に結露が発生しているか否かを判定し、該判定結果に基づいて、前記腐食性物質分解装置による気体状態の前記腐食性物質である腐食性ガスの除去動作を制御する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記腐食性物質分解装置は、前記腐食性物質を含んだ水滴又はミストである腐食性ミストを吸着する吸水性フィルターと、該吸水性フィルターの上部からその内部に水を供給する水供給部と、前記吸水性フィルターの吸着面に対向配置された電極と、前記吸着面に前記冷却室内の空気を送り込む分解装置用ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記電極に電圧を印加して、前記電極と、接地された前記吸水性フィルターとの間に電位差を発生させることによって、前記電極と前記吸水性フィルターとの間に存在する前記腐食性ミストを帯電させて前記吸着面側に吸引させ、前記吸水性フィルターに吸着させ、
前記吸水性フィルターは、吸着した前記腐食性物質が前記水供給部から供給される水により前記吸水性フィルター外に排出されることによって、再生する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記腐食性物質分解装置は、前記腐食性ガスを吸着する導電性触媒担持吸着剤と、該導電性触媒担持吸着剤の吸着面に対向配置された電極と、前記吸着面に前記冷却室内の空気を送り込む分解装置用ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記電極に電圧を印加して、前記電極と、接地された前記導電性触媒担持吸着剤との間に電位差を発生させることによって、前記導電性触媒担持吸着剤に吸着された前記腐食性物質を酸化分解させ、
前記導電性触媒担持吸着剤は、吸着した前記腐食性物質が酸化分解されることによって、再生する
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記腐食性物質分解装置は、前記腐食性ガスを吸着する導電性触媒担持吸着剤と、該導電性触媒担持吸着剤の吸着面に対向配置された電極と、前記吸着面に前記冷却室内の空気を送り込む分解装置用ファンと、前記導電性触媒担持吸着剤に水を供給する水供給部と、を備え、
前記制御装置は、前記電極に電圧を印加して、前記電極と、接地された前記導電性触媒担持吸着剤との間に電位差を発生させることによって、前記導電性触媒担持吸着剤に吸着された前記腐食性物質を酸化分解し、
前記導電性触媒担持吸着剤は、吸着した前記腐食性物質のうち酸化分解されなかったものを、前記水供給部から供給される水により前記導電性触媒担持吸着剤外に排出されることによって、再生する
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記腐食性物質分解装置は、前記腐食性物質の発生源近傍に設置された
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の冷却システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−122633(P2012−122633A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271798(P2010−271798)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】