説明

冷却システム

【課題】クーリングタワーとチラーとを使い分けることにより低コスト化を図る。
【解決手段】搬送手段5により冷却対象物3が送られる搬送域7に冷却水9を掛ける散水手段13と、上流側貯留部15と下流側貯留部17とを有する貯留槽19と、貯留槽19の冷却水9を散水器11に供給する散水用配管21、22と、冷却水9を冷却処理するクーリングタワー23と、これよりも電力消費量が大きいチラー25と、上流側貯留部15の冷却水9をクーリングタワー23へ送って下流側貯留部17に戻す第1循環路31、上流側貯留部15の冷却水9をクーリングタワー23へ送って上流側貯留部15に戻す第2循環路32及び下流側貯留部17の冷却水9をチラー25へ送って下流側貯留部17へ戻す第3循環路33を有する循環設備30を備え、クーリングタワー23のみを使用する第1モードと、クーリングタワー23及びチラー25を共に使用する第2モードとを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲用される酒パックまたは食用されるレトルトパック等の冷却対象物を冷却水により所定温度に冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記酒パック等においては、常温よりも高い温度に加熱殺菌された後、所定温度まで冷却水により冷却される。その冷却水を循環使用する場合の温度調整には、クーリングタワーやチラーなどが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の技術による場合には、チラーで冷却した冷却水で冷却対象物を冷却し、この冷却で温度が高くなった冷却水をクーリングタワーへ送って冷却し、その冷却水をチラーへ戻すように冷却水の給排経路が構成されている。
【0005】
したがって、冷却水は全て電力消費量がクーリングタワーよりも大きいチラーを経由することになり、低コスト化が困難となっていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、クーリングタワーとチラーとを使い分けることにより低コスト化を図ることができる冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却システムは、冷却対象物を冷却水により冷却するための冷却システムであって、上記冷却対象物を搬送する搬送手段と、上記搬送手段により上記冷却対象物が送られる搬送域の全域または少なくとも一部領域に冷却水を掛ける複数の散水器が搬送方向に沿って配設された散水手段と、上記搬送域の下側に設けられ、上記冷却水を受けて貯留するもので、上記搬送方向上流側の貯留部と下流側の貯留部とを有する貯留槽と、上記上流側の貯留部の冷却水を上記散水器における搬送方向上流側のものに供給し、上記下流側の貯留部の冷却水を上記散水器における搬送方向下流側のものに供給する散水用配管と、冷却水を冷却処理するクーリングタワーと、冷却水を冷却処理するものであって、上記クーリングタワーよりも電力消費量が大きいチラーと、上記上流側の貯留部の冷却水を上記クーリングタワーへ送って上記下流側の貯留部へ戻す第1循環路、上記上流側の貯留部の冷却水を上記クーリングタワーへ送って上記上流側の貯留部へ戻す第2循環路、および上記下流側の貯留部の冷却水を上記チラーへ送って上記下流側の貯留部へ戻す第3循環路を有する循環設備と、上記第1循環路を使用すること、または第2循環路および第3循環路を使用することを択一的に切り替えることにより、クーリングタワーを使用しチラーを使用しない第1モードと、クーリングタワーおよびチラーを共に使用する第2モードとの間で冷却態様を切り替える制御手段とを備えたことを特徴とする。本発明による場合には、上流側の貯留部に貯留された冷却水は散水手段における搬送方向上流側の散水器に供給され、搬送域を搬送される冷却対象物に散水される。一方、下流側の貯留部に貯留された冷却水は散水手段における搬送方向下流側の散水器に供給され、搬送域を搬送される冷却対象物に散水される。散水された冷却水は、冷却対象物から熱を奪った後に貯留槽に貯留される。このような冷却システムにおいて、クーリングタワーのみで冷却水の水温を下げることが可能な場合には、第1モードによりクーリングタワーを通る第1循環路を使用し、クーリングタワーのみでは冷却水の水温を下げることが不可能になると、クーリングタワーに加えてチラーを稼働させて冷却水の水温を下げる必要があり、その場合には第2モードによりクーリングタワーを通る第2循環路およびチラーを通る第3循環路を使用するように制御手段により制御される。よって、冷却水を冷却する程度に応じてチラーが不使用になるため、低コスト化を図ることができる。
【0008】
この構成の冷却システムにおいて、上記冷却対象物が一定温度に加熱処理されたもので、上記制御手段は、冷却対象物の冷却目標温度と上流側貯留部における冷却水の水温とに基づき、上記第1モードと第2モードの切り替えを制御するようにしてもよい。この構成による場合には、冷却対象物の冷却目標温度が高く上流側の貯留部における冷却水の水温が低いときは、下流側の貯留部の冷却水による冷却能力はそれほど必要ないため、クーリングタワーのみを使用する第1モードを採り、一方、冷却対象物の冷却目標温度が低く上流側の貯留部における冷却水の水温が高いときは、下流側の貯留部の冷却水による冷却能力を必要とするため、クーリングタワーに加えてチラーを使用する第2モードを採ることとなる。なお、各モードを切り替えるときの条件は、具体的な温度状況に応じた経験則により予め求めておく。
【0009】
この構成の冷却システムにおいて、上記第1循環路は上記上流側の貯留部と上記クーリングタワーとに両端が連結された第1往路、上記クーリングタワーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第1復路および上記第1復路に設けられた第1切り替え弁を有し、上記第2循環路は、上記第1往路、上記上流側の貯留部と上記クーリングタワーまたは第1復路の途中とに両端が連結された第2復路、および第2復路に設けられた第2切り替え弁を有し、上記第3循環路は、上記チラーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第3往路、上記チラーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第3復路、第3往路に設けられた第3切り替え弁、および第3復路に設けられた第4切り替え弁を有し、上記第1モードでは、上記第1切り替え弁を開にし、かつ上記第2切り替え弁、上記第3切り替え弁および上記第4切り替え弁を閉にすることで第1循環路が使用され、上記第2モードでは、上記第1切り替え弁を閉にし、かつ上記第2切り替え弁、上記第3切り替え弁および上記第4切り替え弁を開にすることで、第2循環路および第3循環路が使用されるようにすることができる。
【0010】
この構成の冷却システムにおいて、上記クーリングタワーは、上記上流側の貯留部からの冷却水を通す配管と、上記配管に送風するために回転するファンと、上記配管へ冷却水を散水する配管散水器とを備え、配管散水器による散水の有無とファンの回転の有無とを組み合わせて上記配管を送られる冷却水の冷却量を調整するように構成してもよい。この構成による場合には、冷却水の冷却量をより細かく調整することが可能になる。
【0011】
この構成の冷却システムにおいて、上記チラーは、圧縮機、凝縮機、蒸発器、膨張弁、および、冷媒が循環する管路を有するように構成される。
【0012】
この構成の冷却システムにおいて、上記冷却対象物が、上記一定温度に加熱殺菌された酒が容器内に入った酒パックであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による場合には、上流側の貯留部に貯留された冷却水は散水手段における搬送方向上流側の散水器に供給され、搬送域を搬送される冷却対象物に散水される。一方、下流側の貯留部に貯留された冷却水は散水手段における搬送方向下流側の散水器に供給され、搬送域を搬送される冷却対象物に散水される。散水された冷却水は、冷却対象物から熱を奪った後に貯留槽に貯留される。このような冷却システムにおいて、クーリングタワーのみで冷却水の水温を下げることが可能な場合には、第1モードによりクーリングタワーを通る第1循環路を使用し、クーリングタワーのみでは冷却水の水温を下げることが不可能になると、クーリングタワーに加えてチラーを稼働させて冷却水の水温を下げる必要があり、その場合には第2モードによりクーリングタワーを通る第2循環路およびチラーを通る第3循環路を使用するように制御手段により制御される。よって、冷却水を冷却する程度に応じてチラーが不使用になるため、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却システムを示す模式図である。
【図2】図1の冷却システムの動作内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る冷却システムを示す模式図である。
【0017】
この冷却システム1は、冷却対象物3を冷却水により冷却するためのものであって、冷却対象物3を載置した状態で水平な搬送方向Aに搬送する搬送手段としてのベルトコンベア5と、ベルトコンベア5により冷却対象物3が送られる搬送域7の全域に冷却水9を掛ける複数(図示例では8つ)の散水器11が搬送方向Aに沿って所定間隔で配設された散水手段13と、搬送域7の下側に設けられ、冷却水9を受けて貯留するもので、搬送方向A上流側の貯留部15と下流側の貯留部17とを有する貯留槽19と、上流側の貯留部15の冷却水9を搬送方向A上流側の複数(図示例では3つ)の散水器11(11a、11b、11c)に供給する散水用配管21と、上記下流側の貯留部17の冷却水9を搬送方向A下流側の複数(図示例では3つ)の散水器11(11d、11e、11f)に供給する散水用配管22と、冷却水9を冷却処理するクーリングタワー23と、冷却水9を冷却処理するものであって、クーリングタワー23よりも電力消費量が大きいチラー25と、上流側の貯留部15の冷却水9をクーリングタワー23へ送って下流側の貯留部17へ戻す第1循環路31、上流側の貯留部15の冷却水9をクーリングタワー23へ送って上流側の貯留部15へ戻す第2循環路32、および下流側の貯留部17の冷却水9をチラー25へ送って下流側の貯留部17へ戻す第3循環路33を有する循環設備30と、第1循環路31を使用すること、または第2循環路32および第3循環路33を使用することを択一的に切り替え制御等を行う制御手段としての制御装置35とを備える。なお、搬送方向A下流側の2つの散水器11g、11hには、井戸水が冷却水として供給されている。
【0018】
上記冷却対象物3としては、例えばこの例では一定温度(例えば約68℃)で加熱殺菌された酒が容器内に収容された酒パックが該当する。この加熱殺菌された酒パック(冷却対象物)3は図示しない搬入手段によりベルトコンベア5の入口5aに搬入され、出口5bから図示しない搬出手段により搬出される。
【0019】
ベルトコンベア5は、冷却対象物3を搬送方向Aに搬送するとともに、散水器11から散水された冷却水9を下方に落下させる機能を有するベルト、例えば貫通孔が設けられたベルト或いはメッシュ状のベルトなどが用いられる。このベルトコンベア5の入口5aでの冷却対象物3の温度(後述する表1のB)は、例えば約65℃であり、出口5bでの冷却対象物3の冷却目標温度{後述する表1のC(<B)}は、例えば約45℃である。上記約65℃という温度は、冷却対象物3が酒パックの場合であり、冷却対象物3が他のものである場合には、その処理目的などに応じて異なる温度とされることもある。また、上記冷却対象物3の冷却目標温度(C)を約45℃としているのは、冷却対象物3の内容物が長時間高温にさらされることにより劣化するのを防ぐためである。なお、ベルトコンベア5の搬送方向Aは、水平方向に限らず、それに近い角度であってもよい。
【0020】
搬送方向A上流側の貯留部15は、搬送方向A上流側の4つの散水器11a〜11dからの冷却水9を受けて貯留し、下流側の貯留部17は、搬送方向A下流側の4つの散水器11e〜11hからの冷却水9を受けて貯留するようになっている。但し、搬送方向A上流側の4つの散水器11a〜11dのうちの最下流位置にある散水器11dからの冷却水9は下流側の貯留部17に受けられ、搬送方向A下流側の4つの散水器11e〜11hのうちの最上流位置にある散水器11eからの冷却水9は上流側の貯留部15に受けられることもある。
【0021】
上流側の貯留部15に貯留された冷却水9は、上記配管21及びこの配管21に設けたポンプ21aを介して、搬送方向A上流側の3つの散水器11a〜11cに供給される。下流側の貯留部17に貯留された冷却水9は、配管22およびこの配管22に設けたポンプ22aを介して、搬送方向A下流側の3つの散水器11d、11e、11fに供給される。
【0022】
クーリングタワー23は、上流側の貯留部15からの冷却水9を通す配管23aと、配管23aにその外方から送風するために回転するファン23bと、配管23aへ冷却水24を散水する配管散水器23cとを備え、配管散水器23cによる散水の有無とファン23bの回転の有無とを組み合わせて配管23aを送られる冷却水9の冷却量を調整する構成となっている。配管散水器23cによる散水の有無とファン23bの回転の有無とは、制御装置35により制御されるようになっている。配管散水器23cによる散水の有無は、実質的にはタワー底部に溜まった水を吸い上げる散水ポンプ23dのオンオフにより行われる。
【0023】
チラー25は、図示を省略するが、圧縮機、凝縮機、蒸発器、膨張弁、および、冷媒(例えばフロン代替品など)が循環する管路を有するものであり、クーリングタワー23による冷却能力が不足する場合に用いられる。チラー25の冷却能力は、クーリングタワー23の最大の冷却能力(ファン23bが回転しかつ配管散水器23cが散水するときの冷却能力)よりも大であっても小であってもよく、例えばクーリングタワー23の冷却能力が最大で400kWのときに、冷却能力が425kW、355kW、300kW、236kW、180kW、150kW、118kW、90kW、60kW、30kW、20kW、10kW、5kW、または1kWなどのチラーを用いることができる。ここで、チラー25を用いる理由は、以下の通りである。つまり、クーリングタワー23は、大気温度や湿度に影響を受け易く、また大気温度を大きく下回るような温度への冷却が困難であるが、チラー25は電力で冷却水を冷却する方式であるので、クーリングタワー23では冷却が困難な大気温度を大きく下回るような温度以下にまで冷却が可能なためである。
【0024】
上記第1循環路31は、上流側の貯留部15とクーリングタワー23の配管23aの一端とに両端が連結された第1往路31aと、配管23aの他端と下流側の貯留部17とに両端が連結された第1復路31bと、第1復路31bに設けられた第1切り替え弁32dとを有する。上記第2循環路32は、第1往路31aを共用し、第1復路31bの途中であって第1切り替え弁32dよりも上流側の位置と上流側の貯留部15とに両端が連結された第2復路32b、及び第2復路32bに設けられた第2切り替え弁32cを有する。また、この第2循環路32は、第1循環路31の第1復路31bの一部を共用する。上記第3循環路33は、下流側の貯留部17とチラー25とに両端が共に連結された第3往路33aおよび第3復路33b、第3往路33aに設けられた第3切り替え弁33c、並びに第3復路33bに設けられた第4切り替え弁33dを有する。なお、第2復路32bは、上流側の貯留部15と配管23aとに両端を接続してもよい。
【0025】
上記第1切り替え弁32dを開にし、第2切り替え弁32c、上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dをそれぞれ閉にすることで、第1循環路31が使用される。逆に、第1切り替え弁32dを閉にし、第2切り替え弁32c、上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dをそれぞれ開にすることで、第1循環路31に代えて、第2循環路32および第3循環路33の両方が使用される。
【0026】
上記第1往路31aにはポンプ31cが設けられ、そのポンプ31cにより上流側の貯留部15の冷却水9がクーリングタワー23の配管23aへ供給される。配管23aに供給された冷却水9は、第1切り替え弁32dが開、第2切り替え弁32cが閉のとき、第1復路31bを介して下流側の貯留部17に戻され、一方第1切り替え弁32dが閉、第2切り替え弁32cが開のとき、第1復路31b及び第2復路32bを介して上流側の貯留部15に戻される。また、第3往路33aにはポンプ32eが設けられ、そのポンプ32eにより下流側の貯留部17の冷却水9がチラー25へ供給される。
【0027】
第1切り替え弁32dおよび上記第2切り替え弁32cの開閉、および上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dの開閉は、制御装置35により制御される。具体的には、クーリングタワー23を使用しチラー25を使用しない第1モードのとき、第1切り替え弁32dを開に、上記第2切り替え弁32c、上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dをそれぞれ閉にすることで第1循環路31を使用し、一方、クーリングタワー23およびチラー25を共に使用する第2モードのとき、第1切り替え弁32dを閉に、上記第2切り替え弁32c、上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dをそれぞれ開にすることで、第2循環路32および第3循環路33の両方を使用するように制御される。このとき、図1において、第1モードでの冷却水の流れる方向を実線の矢符で示し、一方の第2モードでの冷却水の流れる方向を破線の矢符で示す。なお、第1モードのときはチラー25を非稼働とし、第2モードのときはチラー25を稼働させる。また、第1モードのときに、下流側の貯留部17に貯留された冷却水9は、両貯留部15、17を区切る堰16をオーバーフローすることにより上流側の貯留部15へ供給される。
【0028】
制御装置35は、第1切り替え弁32dおよび上記第2切り替え弁32cの開閉、上記第3切り替え弁33cおよび上記第4切り替え弁33dの開閉、およびポンプ23d、21a、22a、31c、32eのオンオフを制御する。また、制御装置35は、ポンプ23d、21a、22a、31c、32eがオンのときの流量制御や、クーリングタワー23およびチラー25のオンオフ制御を行う。なお、上記ポンプ23d、21a、22a、31c、32eおよびチラー25は、それぞれインバータ制御が可能なものを用いていて、電力使用量を調整できるようになっている。
【0029】
この制御装置35には、表1に示すように、殺菌等を行った冷却対象物3の処理温度(B)と、冷却対象物3の冷却目標温度(C)と、上流側の貯留部15における冷却水9の水温(D)とに基づき、第1モードと第2モードとの冷却態様の切り替えを制御するためのテーブルが設けられていて、入力部(キーボード)から処理温度(B)と冷却目標温度(C)が入力され、第1往路31aに設けられた温度計31dで計測された水温(D)が入力されると、これら入力データおよびテーブルに基づいて第1モードまたは第2モードを択一的に選択する。また、第3往路33aに設けられた温度計32fで計測された水温(E)も制御装置35に入力され、制御装置35は第2モードでチラー25を稼働させるとき、水温(E)の高低に応じてチラー25の冷却能力を可変する制御を行い、水温(E)を所定範囲内になるように調整する。
【0030】
【表1】

【0031】
この表1において、冷却対象物3の処理温度(B)としては、例えば65℃が設定されており、冷却目標温度(C)としては45℃以下が設定されている。水温(D)に対しては、各処理温度(B)毎に35℃以上と、35℃よりも低い温度とに2分されていて、選択するモードとしては、水温(D)が35℃よりも低い温度のときに第1モードを選択し、水温(D)が35℃以上のときに第2モードを選択することが設定されている。また、上述したように第2モードのとき、入力した水温(E)の高低に応じてチラー25の冷却能力を可変する制御を実行するように設定されている。なお、表1中の機器消費電力は、冷却能力が最大400kWのクーリングタワー23と冷却能力が118kWのチラー25を用いる場合の値である。
【0032】
次に、このように構成された冷却システム1の動作内容につき、図2に示すフローチャートに基づき説明する。ここでは、入力部(キーボード)から入力された処理温度(B)が65℃で、冷却目標温度(C)が45℃以下のときを前提に説明する。なお、冷却目標温度(C)については、入力部での入力により設定されるようになっている。
【0033】
まず、運転スイッチをオンにする(ステップS1)。これに伴って制御装置35が作動を開始し、制御装置35からの指令により、ポンプ21a、22a、31cおよび32eが作動待機状態になるとともに、第1切り替え弁32d、第2切り替え弁32c、第3切り替え弁33cおよび第4切り替え弁33dが作動待機状態になる。
【0034】
続いて、制御装置35は、ポンプ31cおよびポンプ32eを共にオンし、かつ、第1切り替え弁32d、第2切り替え弁32c、第3切り替え弁33cおよび第4切り替え弁33dを全て閉にする(S2)。
【0035】
次に、制御装置35は、処理温度(B)が65℃で、冷却目標温度(C)が45℃以下のときにおいて、水温(D)が第1温度D1、例えば35℃よりも低い温度か否かを判定する(S3)。
【0036】
この判定において、水温(D)が第1温度D1(35℃)よりも低い温度である場合には、S4に進み、制御装置35は、第1切り替え弁32dを開とし、第2切り替え弁32c、第3切り替え弁33cおよび第4切り替え弁33dを共に閉のままにする。続いて、制御装置35は、チラー25を非稼働とし、クーリングタワー23を稼働させ、第1モードを実行させる(S5)。つまり、第1循環路31を使用し、第1循環路31を流れる冷却水9をクーリングタワー23で冷却する。
【0037】
次に、運転スイッチがオフか否かを判定し(S6)、運転スイッチがオフになるまで、以上の処理を繰り返す。一方、上記S3において、水温(D)が第1温度D1(35℃)以上となっているときは、S7に進み、第1切り替え弁32dを開から閉とし、第2切り替え弁32c、第3切り替え弁33cおよび第4切り替え弁33dを共に閉から開にする。続いて、クーリングタワー23を稼働させるとともにチラー25を稼働させる(S8)。つまり、第2循環路32を使用し、第2循環路32を流れる冷却水9をクーリングタワー23で冷却するとともに、第3循環路33を使用し、第3循環路33を流れる冷却水9をチラー25で冷却する。このチラー25で冷却しているとき、温度計32fからの水温(E)に応じてチラー25の冷却能力を可変する制御が実行される。
【0038】
しかる後、S6において、運転スイッチがオフになった場合には、制御装置35は、クーリングタワー23およびチラー25を非稼働にし、ポンプ31cおよびポンプ32eを共にオフし、かつ、第1切り替え弁32d、第2切り替え弁32c、第3切り替え弁33cおよび第4切り替え弁33dを全て閉にし(S9)、以上の冷却処理を終了する。
【0039】
したがって、本実施形態における冷却システム1による場合には、冷却水9の水温が低く、クーリングタワー23のみで冷却水9の水温を下げることが可能な場合には、第1モードにより共にクーリングタワー23を通る第1循環路31を使用し、これに対し、クーリングタワー23のみでは冷却水9の水温を下げることが不可能になると、クーリングタワー23に加えてチラー25を稼働させる第2モードによりクーリングタワー23を通る第2循環路32、およびチラー25を通る第3循環路33を使用する。よって、冷却水9を冷却する程度に応じてチラー25が不使用になるため、低コスト化を図ることが可能になる。例えば、水温(D)が第1温度D1(35℃)以上、つまりチラー25を使用する第2モードのときに機器消費電力が47.1kWとなるのに対し、水温(D)が第1温度D1より低い、つまりチラー25を使用しない第1モードのときに機器消費電力が半分以下の20.6kWにすることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、下流側の貯留部17に貯留された冷却水が上流側の貯留部15にオーバーフローするようにしているが、下流側の貯留部17に貯留された冷却水の温度が上流側の貯留部15に貯留された冷却水の温度よりも低いので、冷却対象物3の冷却に関して支障がない。
【0041】
【表2】

【0042】
表2は、本発明の他の実施形態を実行するテーブルの内容を示す表である。
【0043】
この表2においては、第1モードを選択しているときにおいて、水温(D)が第2温度D2(<D1)、例えば31℃よりも低く、第3温度D3(<D2)、例えば30℃よりも高い温度のときに、稼働しているクーリングタワー23におけるファン23bを停止させ、第1モードを選択しているときにおいて、水温(D)が第3温度D3(30℃)以下のときには、クーリングタワー23における散水ポンプ23dを停止させ、また第1モードを選択しているときにおいて、水温(D)が第3温度D3よりも低い温度のときに、ポンプ21a、22aを比例制御するように設定している。このこと以外の内容は、表1と同じ設定としている。なお、上記比例制御とは、散水用配管21を送られる冷却水9と散水用配管22を送られる冷却水9との比率を一定としてポンプ21a、22aにおける冷却水9の送り量を増減させる制御を言う。この比例制御は、表2の例では、水温(D)が第3温度D3(30℃)よりも低く、第4温度D4(<D3)、例えば27℃よりも高いときに行っている。例えば、水温(D)が第3温度D3(30℃)のときのポンプ21a、22aの出力周波数を60Hzとし、水温(D)が第4温度D4(27℃)のときのポンプ21a、22aの出力周波数を35Hzとした場合において、60Hz〜35Hzの範囲でポンプ21a、22aの出力周波数を水温(D)と比例させている。
【0044】
この表2に基づいて、クーリングタワー23を制御することにより、ファン23bの停止やポンプ21a、22aの比例制御および散水ポンプ23dの停止が行われるため、更に低コスト化を図ることができる。例えば、ファン23bの停止により機器消費電力を、非停止の20.6kWに比べて15.1kWと約27%低減でき、更に散水ポンプ23dの停止により機器消費電力を、非停止の15.1kWに比べて12.9kWと約15%低減でき、更にポンプ21a、22aの比例制御により機器消費電力を低減化できる。
【0045】
なお、表2において、ファン23bの停止と散水ポンプ23dの停止とを分ける温度条件は、別の温度に設定してもよい。また、散水ポンプ23dの停止とポンプ21a、22aの比例制御とを分ける温度条件は、別の温度にしてもよい。更に、表1および表2において、処理温度(B)の温度は65℃に設定する必要はなく、使用条件に応じて別の温度値に設定してもよく、また冷却目標温度(C)についても、45℃以下に代えて他の温度値に設定してもよく、更に水温(D)に対する第1〜第4温度(D1〜D4)も、他の温度値に設定してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態においては明言していないが、ベルトコンベア5の入口5aから出口5bまでの範囲を散水手段13により散水するように構成しているが、本発明はこれに限らない。例えば、ベルトコンベア5の入口5a側に別のベルトコンベアを設けた構成、これに加えてまたはこれとは別に、ベルトコンベア5の出口5b側に別のベルトコンベアを設けた構成としてもよい。
【0047】
更に、上述した実施形態では、1つのクーリングタワー23と1つのチラー25で、1つのベルトコンベア5を送られる冷却対象物を冷却する構成としているが、本発明はこれに限らず、1つのクーリングタワー23と1つのチラー25で、2つ以上のベルトコンベア5でそれぞれ送られる冷却対象物を冷却する構成に対しても適用可能である。但し、この場合には、クーリングタワー23とチラー25の冷却能力の選定が要求される。
【0048】
更に、上述した実施形態では、冷却目標温度(C)については入力部での入力により設定されるようになっているが、本発明はこれに代えて、ベルトコンベア5の出口5bに、例えば非接触式温度計を設けておき、この温度計で測定した実測値を用いて制御装置35によりフィードバック制御を行う構成としてもよい。
【0049】
更にまた、上述した実施形態では、ベルトコンベア5の長さおよびその輸送速度、散水手段13による散水量などについて明言していないが、これらは冷却対象物の冷却に影響を与えるものであり、所定の冷却目標温度が得られるように適宜選定される。
【0050】
更にまた、上述した実施形態においては冷却対象物として酒パックを例に挙げているが、本発明はこれに限らず、食用されるレトルトパックや飲用物が入ったペットボトルなどの冷却にも同様に適用される。
【符号の説明】
【0051】
A 搬送方向
1 冷却システム
3 冷却対象物
5 ベルトコンベア(搬送手段)
7 搬送域
9 冷却水
11 散水器
13 散水手段
15 上流側の貯留部
17 下流側の貯留部
19 貯留槽
21、22 散水用配管
23 クーリングタワー
23b ファン
23d 散水ポンプ
25 チラー
30 循環設備
31 第1循環路
31a 第1往路
31b 第1復路
32 第2循環路
32b 第2復路
32d 第1切り替え弁
32c 第2切り替え弁
33 第3循環路
33a 第3往路
33b 第3復路
33c 第3切り替え弁
33d 第4切り替え弁
35 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象物を冷却水により冷却するための冷却システムであって、
上記冷却対象物を搬送する搬送手段と、
上記搬送手段により上記冷却対象物が送られる搬送域の全域または少なくとも一部領域に冷却水を掛ける複数の散水器が搬送方向に沿って配設された散水手段と、
上記搬送域の下側に設けられ、上記冷却水を受けて貯留するもので、上記搬送方向上流側の貯留部と下流側の貯留部とを有する貯留槽と、
上記上流側の貯留部の冷却水を上記散水器における搬送方向上流側のものに供給し、上記下流側の貯留部の冷却水を上記散水器における搬送方向下流側のものに供給する散水用配管と、
冷却水を冷却処理するクーリングタワーと、
冷却水を冷却処理するものであって、上記クーリングタワーよりも電力消費量が大きいチラーと、
上記上流側の貯留部の冷却水を上記クーリングタワーへ送って上記下流側の貯留部へ戻す第1循環路、上記上流側の貯留部の冷却水を上記クーリングタワーへ送って上記上流側の貯留部へ戻す第2循環路、および上記下流側の貯留部の冷却水を上記チラーへ送って上記下流側の貯留部へ戻す第3循環路を有する循環設備と、
上記第1循環路を使用すること、または第2循環路および第3循環路を使用することを択一的に切り替えることにより、クーリングタワーを使用しチラーを使用しない第1モードと、クーリングタワーおよびチラーを共に使用する第2モードとの間で冷却態様を切り替える制御手段とを備えたことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
上記冷却対象物が一定温度に加熱処理されたもので、上記制御手段は、冷却対象物の冷却目標温度と上流側の貯留部における冷却水の水温とに基づき、上記第1モードと第2モードの切り替えを制御することを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却システムにおいて、
上記第1循環路は上記上流側の貯留部と上記クーリングタワーとに両端が連結された第1往路、上記クーリングタワーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第1復路および上記第1復路に設けられた第1切り替え弁を有し、上記第2循環路は、上記第1往路、上記上流側の貯留部と上記クーリングタワーまたは第1復路の途中とに両端が連結された第2復路、および第2復路に設けられた第2切り替え弁を有し、上記第3循環路は、上記チラーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第3往路、上記チラーと上記下流側の貯留部とに両端が連結された第3復路、第3往路に設けられた第3切り替え弁、および第3復路に設けられた第4切り替え弁を有し、
上記第1モードでは、上記第1切り替え弁を開にし、かつ上記第2切り替え弁、上記第3切り替え弁および上記第4切り替え弁を閉にすることで第1循環路が使用され、上記第2モードでは、上記第1切り替え弁を閉にし、かつ上記第2切り替え弁、上記第3切り替え弁および上記第4切り替え弁を開にすることで、第2循環路および第3循環路が使用されることを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の冷却システムにおいて、
上記クーリングタワーは、上記上流側の貯留部からの冷却水を通す配管と、上記配管に送風するために回転するファンと、上記配管へ冷却水を散水する配管散水器とを備え、配管散水器による散水の有無とファンの回転の有無とを組み合わせて上記配管を送られる冷却水の冷却量を調整することを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の冷却システムにおいて、
上記チラーは、圧縮機、凝縮機、蒸発器、膨張弁、および、冷媒が循環する管路を有することを特徴とする冷却システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の冷却システムにおいて、
上記冷却対象物が、上記一定温度に加熱殺菌された酒が容器内に入った酒パックであることを特徴とする冷却システム。

【図1】
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【図2】
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