説明

冷却プレート

【課題】飲料用の冷却プレートの冷却能力を安定させる。
【解決手段】金属製の飲料冷却管を巻回させて形成される冷却コイルを熱伝導性の高い金属材料で鋳込んだ冷却プレートにおいて、冷却コイルが長手方向の上下の辺に飲料冷却管が挿嵌される切欠きが所定間隔で設けられたホルダプレートと、このホルダプレートの切欠きの開放端を塞ぐ固定具とで狭持されており、溶湯による浮力が加えられても冷却コイルは所定位置にて固定されるので、鋳造中に飲料冷却管が溶湯中を移動することがなく、飲料冷却管が均一に配列されたままの状態で金属が周囲を鋳込むので、冷却プレートの冷却能力が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷冷式の飲料供給機の冷却器として使用される飲料用の冷却プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料容器内に貯蔵されたビールや清涼飲料を容器の外部に送出する途中の配管で室温の状態から飲用適温まで瞬間冷却させる飲料供給機の中には、断熱性をもった氷保管庫の中に飲料容器と配管接続された冷却プレートを収納し、氷保管庫を氷で満たし冷却プレート内で飲料との熱交換を行い適温まで冷却する氷冷式の飲料供給機がある。この冷却プレートの構造としては、ステンレス製などの鋼管で形成された飲料供給管を長円形状に巻回した冷却コイルをアルミニウム合金などの熱伝導のよい金属材料で鋳込んだものが知られている。
【0003】
内部が空洞であるパイプを比重の大きい金属の溶湯に浸すと浮力の発生によりパイプが溶湯の中を移動することがある他、溶湯の高熱によりパイプが軟化し変形することがあるため、管状のものを金属で鋳込む場合はケレンといった固定具でパイプを固定する鋳造方法が開示されている。
特許文献1では冷却コイルに扁平な板状の支持部材を挿入し、隣り合う飲料冷却管が支持部材を上下交互に挟み込み、飲料冷却管の弾性を利用して支持部材との摩擦力で冷却コイルを保持する冷却プレートが開示されている。
【特許文献1】特開2000−346515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに特許文献1のような隣り合う飲料冷却管が支持部材を上下交互に挟み込みながら配置する冷却コイルの構造では、飲料冷却管は支持部材との摩擦力のみで保持されているため、隣り合う飲料冷却管どうしの間隔が一定にならない。もしくは隣り合う飲料冷却管が密着し、どこかで接触するようになっており熱交換の上でロスとなっていた。また、支持部材がない底面側の冷却コイルでは溶湯の浮力で本来意図していた位置とずれた状態で鋳造されるおそれがある。また隣り合う飲料冷却管の配置が定まらないと鋳込む金属の流動性に影響が出るおそれもある。このように飲料冷却管のまわりに鋳込まれる金属が一定とならないと飲料の冷却能力が安定しないおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたもので、その目的は金属製の飲料冷却管をらせん状に巻回された冷却コイルを熱伝導性の高い金属により鋳造させてなる冷却プレートにおいて、飲料冷却管の周囲を均一に金属が鋳込まれることにより安定した冷却能力を備えた飲料用の冷却プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決させるため、本発明の冷却プレートは、金属製の飲料冷却管を巻回させて形成される冷却コイルを熱伝導性の高い金属材料で鋳込んだ冷却プレートにおいて、冷却コイルが長手方向の上下の辺に飲料冷却管が挿嵌される切欠きが所定間隔で設けられたホルダプレートと、このホルダプレートの切欠きの開放端を塞ぐ固定具とで狭持されているところに特徴を有する。
【0007】
また、本発明の冷却プレートは、金属製の飲料冷却管を巻回させて形成される冷却コイルを熱伝導性の高い金属材料で鋳込んだ冷却プレートにおいて、冷却コイルが所定間隔で凸部を設けられ上下2つの固定具により、飲料冷却管を隣り合う前記凸部の間に狭持させるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却プレートの鋳造工程において冷却コイルは、U字の切欠きを設けたホルダプレートをコイルの内周面側から挿入し、飲料冷却管をこの切欠きに収納し、上下の固定具で飲料冷却管をU字の切欠き内に狭持するようにしたので、溶湯による浮力が加えられても冷却コイルは所定位置にて固定されるので、鋳造中に飲料冷却管が溶湯中を移動することがなく、飲料冷却管が均一に配列されたままの状態で周囲を鋳込む金属が流れ込むので、冷却プレートの冷却能力が安定する。
【0009】
また本発明によれば、冷却プレートの鋳造工程おいて飲料冷却コイルは所定間隔で設けられた凸部と凸部の間の位置に狭持されるので、溶湯による浮力が加えられても飲料冷却コイルは所定位置にて固定されるので、鋳造中に飲料冷却管が溶湯中を移動することがなく、飲料冷却コイルが均一に配列されたままの状態で周囲を鋳込む金属が流れ込むので冷却能力が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の冷却プレートの使用状態を示す図である。ここでは飲料として生ビールを注出する場合を説明する。飲料容器であるビール樽10は硬質の樹脂製のビールホース11により冷却プレート50の設けられた飲料入口51に接続される。ビール樽10と接続された炭酸ガスボンベ(図示せず)からの圧力を利用し、ビールはビールホース11から冷却プレート50内に導入される。冷却プレート50は断熱性を高めた氷保管庫20の庫内の底部に備えられる。冷却プレート50は底部に脚部が設けられ、脚部は前面側と背面側で高さが異なり、冷却プレートの上面が背面から前面にかけて下方へ傾斜するようになっている。氷保管庫20の庫内には飲料の冷却に充分な量の氷21が蓄えられ、冷却プレートの上面は常に氷21と接触し熱交換が行われるようになっている。冷却プレートの上面は背面から前面にかけて傾斜しているので、氷21から溶け出した水は上面に留まることなく氷保管庫20の庫内底部に導かれる。
【0011】
図2及び図3において、冷却プレート50の内部はステンレス製の飲料冷却管52を長円形上にしたものを複数周まとめた冷却コイル53がアルミニウム合金で鋳込まれている。冷却コイル53はその終端の飲料冷却管52をそれぞれ冷却プレート50の上面に突出させて、冷却プレート50の前方である傾斜下方側に飲料入口51、背面側の傾斜上方側に飲料出口54が設けられる。
【0012】
こうして飲料入口52から冷却プレート50に導かれたビールは冷却プレート50内をアイスビン20に蓄えた氷21と冷却プレート50のアルミニウム合金、飲料冷却管52のステンレス鋼を介して熱交換を行いながら周回し、飲料出口54より導出される。飲料出口54より導出されたビールは飲用適温(例えば4℃±4)に冷却され、ビールホース12を通じてテーブルなどに固定されたドラフト30に導かれ、ビールコック40より注出される。
【0013】
図4及至図9に冷却コイル組み立て品55を説明する。図4は冷却コイル組み立て品55の斜視図であり、冷却コイル53は冷却プレート50の長手方向にのびる長円形状をらせんにしたもので、長円の直線部分の左右終端にそれぞれコイル固定具左70、コイル固定具右80が設けられる。
【0014】
図5及び図6はコイル固定具左70を示した図で、コイル固定具70はホルダ固定板上70A、ホルダ固定板下70B、ホルダプレート70Cの3つの板金部品から構成され、ホルダプレート70Cには一定間隔で上下にU字の切欠き71が設けられている。隣り合うU字の切欠き71の間隔はおよそ飲料冷却管52の外径の1.4倍となっている。ホルダプレート70Cはコイル内側に挿入され、飲料冷却管の直線部分にほぼ直行するよう配置をとり、U字の切欠き71に飲料冷却管に収容する。次にコイルの外側からホルダ固定板上70Aとホルダ固定板下70Bとでコイルを挟み込むようにしてホルダプレート70Cを固定する。固定方法はそれぞれの板に設けた締結用穴の位置を合わせ、リベット72で固定するものである。
【0015】
図7及び図8はコイル固定具右80を示した図で、上記のコイル固定具左70と同様に冷却コイル53に装着されるものである。ホルダ固定板下80Bとホルダプレート80Cはそれぞれコイル固定具70のホルダ固定板下70Bとホルダプレート70Cと同形状で、共通の部品を使用している。
【0016】
図9は冷却プレートを長手方向からみた断面図である。飲料冷却管52は左右上下に対し規則正しく配置のまま狭持された状態で鋳造されるので、飲料冷却管52同士が接触するなどして溶湯の流動を阻害することがなく、また冷却管の周りも均一に金属が鋳込まれるので、個体間で冷却能力のばらつきがなくなり安定する。
<第2の実施例>
【0017】
次に図10に示す第2実施形態の説明をする。この第2実施形態の冷却プレート50のコイル固定具左90は、コイル固定板上90Aとコイル固定板下90Bの2つの板金部品から構成される。両固定板は対向する面に向かってプレス加工などにより凸部91が設けられ、凸部91は飲料冷却管52とほぼ直行する方向に一定間隔で配置される。隣り合う凸部91の間隔はおよそ飲料冷却管52の外径の1.4倍となっている。飲料冷却管52はコイル固定具左90により各凸部91の間の位置に収容されるよう配置のまま狭持された状態で鋳造されるので、飲料冷却管52どうしが接触するなどして溶湯の流動を阻害することがなく、また冷却管の周りも均一に金属が鋳込まれるので、個体間で冷却能力のばらつきがなくなり安定する。
<その他の実施例>
【0018】
(1)第1の実施例及び第2の実施例においてU字の切欠き及び凸部を飲料冷却管とほぼ直行する方向に一定間隔で設けたが、鋳込む金属の流動性を考慮した変則ピッチ、湯口の位置との距離等を考慮した変則ピッチとしたものでも良い。
(2)第1の実施例においてホルダプレートの切欠きをU字としたが矩形その他の切欠きで、飲料冷却管を収容する切欠きであってよい。
(3)第2の実施例においてプレス等で半抜き加工した凸部の代わりに切り起しを固定板に設けたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の冷却プレートの使用状態を示す図
【図2】本発明の冷却プレートの斜視図
【図3】図2における冷却プレートに鋳込まれた冷却コイルを示す透視図
【図4】本発明の冷却コイル組み立て品の斜視図
【図5】本発明の第1実施例によるコイル固定具左の分解斜視図
【図6】本発明の第1実施例によるコイル固定具左の斜視図
【図7】本発明の第1実施例によるコイル固定具右の分解斜視図
【図8】本発明の第1実施例によるコイル固定具右の斜視図
【図9】本発明による冷却プレートの長手方向から見た断面図
【図10】本発明の第2実施例による冷却コイル固定具左の分解斜視図
【符号の説明】
【0020】
10…ビール樽 11、12…ビールホース 20…氷保管庫 21…氷 30…ドラフト 40…ビールコック 50…冷却プレート 51…飲料入口 52…飲料冷却管 53…冷却コイル 54…飲料出口 70…コイル固定具左 70A…固定具上 70B…固定具下 70C…ホルダプレート 71…切欠き 72…リベット 80…コイル固定具右 80A…固定具上 80B…固定具下 80C…ホルダプレート 81…切欠き 82…リベット 90…コイル固定具左 90A…固定具上 90B…固定具下 91…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷冷式の飲料供給機の冷却器として使用される金属製の飲料供給管を巻回させて形成される冷却コイルを熱伝導性の高い金属材料で鋳込んだ冷却プレートにおいて、前記冷却コイルが長手方向の上下の辺に前記飲料冷却管が挿嵌される切欠きが所定間隔で設けられたホルダプレートと、該ホルダプレートの切欠きの開放端を塞ぐ固定具とで狭持されていることを特徴とする飲料用の冷却プレート。
【請求項2】
氷冷式の飲料供給機の冷却器として使用される金属製の飲料供給管を巻回させて形成される冷却コイルを熱伝導性の高い金属材料で鋳込んだ冷却プレートにおいて、前記冷却コイルが所定間隔で凸部を設けられ上下2つの固定具により、前記飲料冷却管を隣り合う前記凸部の間に狭持させるようにしたことを特徴とする飲料用の冷却プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−127593(P2010−127593A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306162(P2008−306162)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】