説明

冷却孔のパラメータ製作法及び該方法を実施するための穿孔装置並びに前記方法により穿孔された単数又は複数の孔を備えた構成部材

本発明は、構成部材に孔をパラメータ製作するための方法、特にガスタービン又は蒸気タービンのブレードに冷却孔をパラメータ製作するための方法に関する。本発明による方法では、第1の方法ステップ(21)において構成部材の穿孔しようとする箇所の実際の肉厚を測定する。次いで、測定した実際の肉厚の、仮定した理想の肉厚との比較んに基づいて、少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータを算出する(方法ステップ23)。次いで、算出した孔ジオメトリ値のパラメータに基づいて孔を製作する(方法ステップ24)。更に、本発明は特に当該方法を実施するための穿孔装置、並びに当該方法により単数又は複数の孔が設けられた構成部材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1構成部材における孔のパラメータ製作法、特に、ガスタービン又は蒸気タービンの1構成部材、有利にはガスタービン又は蒸気タービンのブレードにおける冷却孔のパラメータ製作法に関する。更に本発明は、特に該方法を実施するための穿孔装置、並びに前記方法により1つ又は複数の孔が設けられた構成部材に関する。
【0002】
従来技術
高い効率と同時に高い固有出力を得るためには、ガスタービンは今日極めて高いタービン入口温度で運転される。しばしば、燃焼器から流出してタービンに流入する高温のフルード流の温度はタービンブレードの許容材料温度を越えている。それにも関わらずガスタービンの確実な長期耐用運転を可能にするためには、タービンブレードと、ブレード脚部及びケーシング壁もまた頻繁に冷却することが必要とされる。この場合、非常に有効な冷却法は、冷却しようとする構成部材の冷却しようとする箇所を冷却フルードフィルムで被覆し、このようにして高温のガスに対してシールドしようとするフィルム冷却である。冷却フルードフィルムを付与するためには、一般に例えば冷却空気等の、先行圧縮段から分岐された冷却フルードが、冷却通路を介して、内部が中空に形成された冷却しようとするブレードの内部に案内され、ここから多数の冷却孔を介してブレードの外面に案内される。前記冷却孔から流出する冷却フルードは、冷却孔から流出する際に、ブレードにわたって流れる高温ガス流によって、当該冷却フルードが冷却フィルムをブレード壁に沿って形成するように変向され且つ広げられる。冷却フィルムは、高温のガスが直接にブレードと接触することを防ぐ。
【0003】
この場合、冷却フルードフィルムの形成には冷却作用の中心的な意味がある。冷却フルードが冷却孔から極端な鋭角で流出すると、冷却フルードはブレード壁に向かって変向される前に、高温ガス流内へ大幅に流入し過ぎてしまう。その結果、冷却孔のすぐ下流で増幅された渦が形成され、これらの渦は、高温ガスをブレード壁に到達させる。冷却効果は特に局所的に低下して、ブレードのいわゆる「ホットスポット」、つまり、ブレードの局所的な材料過熱を生ぜしめる恐れがある。ホットスポットはブレードの損傷又は破壊をも招く恐れがある。但し、ホットスポットは、流出する冷却フルード流が隣接する冷却孔から流出する冷却フルードまでの中間領域も十分に被覆するために十分に広げられない場合も発生する可能性がある。同じことは、1つの冷却孔から極端に少ない冷却フルードが流出する場合にも云える。
【0004】
冷却孔を通る冷却フルードの流れと、引き続いてブレード壁に接触する冷却フルードフィルムを形成することは、冷却孔による流れガイドによって著しく決定される。例えば製作時に発生した材料ばりに基づいて冷却フルードの極端に大きな流れ損失が生じると、冷却孔を極端に少ない冷却フルードが通流する。冷却孔からの流出時に冷却フルードの最適な流出を可能にするためには、冷却孔の流出域がしばしば、非円形の流出横断面を備えたディフューザとして形成されている。但し、例えばディフューザ開口角度又は非円形の拡張部がジオメトリックな規定に対応していない場合は、上で説明した結果を伴った冷却フルードの流出エラーが生じる恐れがある。更に、1枚のブレードの多数の冷却孔を、ブレードを包囲するできるだけ閉じられた冷却フルードフィルムが生じるように、上下で互いに重なり合わせることが必要とされている。
【0005】
例えばガスタービンのタービンブレード又は別の構成部材に冷却孔を設けるためには、従来技術において多様な穿孔方法が公知である。従って、このような孔は、例えば米国特許第4197443号明細書に記載されたような放電加工法によって製作され得る。このような放電加工法は高い製作コストの他に、小さな表面製作誤差が既に個々の孔の著しく異なる開口比を生ぜしめるという欠点を有している。構成部材に冷却孔を製作するための広く流布した別の方法はレーザドリルである。この場合、連続したレーザパルスによって複数の円筒形の孔を製作可能な打撃穿孔とは異なる。他方では、心残し穿孔の場合は精密にフォーカスされたレーザビームが工作物に対して相対運動されて穿孔する。これにより、非円形の横断面を有する孔も製作され得る。
【0006】
孔の製作に際して、特に円形の横断面から非円形の横断面への移行領域における孔の損傷を防止するためには、様々な方法が開発された。米国特許第5609779号明細書では、レーザビームが数回のレーザパルス内で開口の中心線からディフューザ縁部に向かって加速されてガイドされる。しかし、この方法によって製作されたディフューザは非常にまちまちである。
【0007】
ヨーロッパ特許第0950463号明細書に記載された非円形の冷却孔の別の製作法では、冷却孔が流れ方向で見て、円形の供給区分と非円形の拡散区分とから構成されている。拡散区分の穿孔に際して供給区分の損傷を防止するためには、各区分のジオメトリックな寸法を規定した後で、まず最初に供給区分の横断面に所定の横断面を有する貫通孔を形成し、次いで拡散区分をビーム穿孔法によって、穿孔ビームが供給区分の範囲内でほぼ同一横断面内に留まるように穿孔する。
【0008】
従来技術から公知の全ての方法において、例えば供給区分のその時々の穿孔深さを規定するためには、設計に基づいて規定された、孔の設けられる箇所の肉厚から出発する。ジオメトリ寸法は、一般に設計に基づいて規定された理想の肉厚に関する絶対寸法又は相対寸法で与えられ且つ穿孔工具を制御するための穿孔制御装置で処理される。但し、当該箇所の実際の肉厚が理想の肉厚と異なっていると、実際の冷却孔のジオメトリも理想の冷却孔のジオメトリと異なっており、その結果、肉厚の偏差が製作誤差以内であっても、既に冷却孔の通流特性を部分的に著しく変化させてしまうことになる。つまり、例えば孔の円形の円筒部分が極端に長くなる恐れがあり、これにより、供給区分の流入域は理想の流入域と比較して変化されるか、又は当該の流入域はむしろ損傷されてしまう。これにより、規定された通流と比較して冷却フルードの通流が変化させられる。反対に、供給区分が極端に短いと、供給区分における冷却フルード流の圧力損失の低下が生ぜしめられ延いては当該冷却孔からの冷却空気の増大された制御不能の流出を生ぜしめる。ディフューザが不完全にしか製作されないと、このことは流出特性に直接に影響を及ぼす。
【0009】
発明の開示
従って本発明の課題は、構成部材に孔を製作するための方法を提供することであり、しかも、この方法によって製作された孔は、実際の肉厚が理想の肉厚と異なっていても、予め規定された理想的な通流特性に対応するようにしたい。当該の方法は、特にガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、有利にはガスタービン又は蒸気タービンのブレードに冷却孔を製作するために適しているのが望ましい。更に、本発明の課題は、前記のような方法を実施するための穿孔装置を提供することである。
【0010】
これらの課題は本発明に基づいて、請求項1記載の構成部材における孔のパラメータ製作法、請求項9記載の穿孔装置、並びに請求項12記載の本発明に基づき製作された構成部材によって解決される。本発明の別の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0011】
構成部材に孔をパラメータ製作するための本発明による方法は以下の方法ステップ、即ち:
a)構成部材の孔の設けられるべき箇所の実際の肉厚の測定;
b)測定した実際の肉厚の、仮定した理想の肉厚との比較に基づく少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータの算出;
c)算出した少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータに基づいた孔の製作
を有している。
【0012】
本発明による方法は特に、ガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、有利にはガスタービン又は蒸気タービンのブレード或いはブレード脚部やケーシングに、冷却孔をパラメータ製作するために適している。
【0013】
従来技術から公知の方法とは異なり本発明による方法では、本来の孔製作の前に、構成部材の孔の設けられる箇所の実際の肉厚を測定する。これにより、例えば鋳造過程における材料収縮に基づいて予め正確には規定不能であり且つ設計上予め規定された理想の肉厚から所定の製作誤差範囲内でばらつく実際の肉厚の変動を、測定過程に引き続く孔の製作時に考慮することができる。従って、1つ又は複数の孔ジオメトリ値を、実際のコンディションの考慮下で本来の孔製作前に適合させることができ、その結果、孔は、この孔を通流するフルードに関して予め正確に規定された通流特性及び/又は流出特性を有することになる。実際の肉厚を測定した後で、測定した実際の肉厚を予め規定された理想の肉厚と比較し、この比較結果に基づいて、少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータを算出する。このためには、前記比較結果に基づき予め規定される簡単な関数関係を用いて孔ジオメトリ値を規定することが有利である。この場合、算出した孔ジオメトリ値は、孔のパラメータ製作用のパラメータとして使用され且つこのためには例えば穿孔工具制御装置、例えばレーザ制御装置に予め直接に供給される。
【0014】
有利には、構成部材の実際の肉厚は前記方法ステップaにおいて渦電流測定によって測定する。渦電流による構成部材の肉厚測定は、比較的小さな手間で十分に正確な肉厚結果をもたらす。
【0015】
孔ジオメトリ値のパラメータを算出するためには、方法ステップbにおいて有利にはまず最初に、仮定した理想の肉厚と、測定した実際の肉厚との差の値を算出し、次いで孔ジオメトリ値を少なくとも1つの規定値から出発して前記の差の値を考慮して算出する。例えば、規定値は算出した差の値に比例して変更可能である。十分な高精度を以て予め規定された通流特性を得るためには、大抵の用途に関しては前記のような相関で足りる。同時に、この場合は孔ジオメトリ値のパラメータを算出するための計算手間が極めて小さく保たれる。但し、択一的な計算では、まず最初に実際の肉厚と理想の肉厚とに基づく比率を形成し、次いで単数又は複数の孔ジオメトリ値を、算出した前記比率に比例して変更することもできる。規定値は絶対値であり且つ前記の差の値に直接に関連して変更することができる。しかし択一的に、規定値は肉厚に関連した相対的な値であってもよく、前記の差の値に比例した値だけ変更することができる。後者の場合は、絶対的な肉厚とはさしあたり無関係の処理方式である。これにより、異なる肉厚に関する複数の孔ジオメトリ値を同一の算出アルゴリズムを用いて計算することができる。前記の両方の場合において、孔ジオメトリ値を算出するための計算手間は、有利にはそれぞれ僅かにしかかからない。
【0016】
ガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、例えばガスタービン又は蒸気タービンのブレードに冷却孔を製作しようとする場合、この孔は冷却フルードの流れ方向で見て流入区分と、送り区分と、拡散区分とを有している。この場合、流入区分は冷却フルードリザーバ、或いは構成部材又はブレードの内部に配置された冷却フルード供給部に隣接する領域である。タービンブレードは、例えば大抵は内部を中空に構成されている。従って、流入区分は中空室にすぐ隣接した領域である。流入区分の状態に応じて冷却孔内には冷却フルードの層流又は乱流が形成され、このことは冷却孔を介した処理量に直接に影響を及ぼす。流入区分に続く送り区分は、大抵は円筒形に形成されており且つ流入区分を拡散区分に接続している。送り区分と流入区分とは、しばしば冷却孔の供給区分とも呼ばれる。冷却フルードの流れ方向で見て送り区分に続く拡散区分は、ブレードの外側にまで延在している。拡散区分の横断面は、一般に側方に広がった非円形なので、冷却フルード流は面状に広がる。
【0017】
この場合、有利には孔ジオメトリ値として、規定値として規定された送り区分の長さが孔方向で投影された差の値だけ変更される。投影は、壁の厚さ方向に関する孔の傾斜を考慮する。これにより、実際の肉厚が理想的な肉厚とは異なっている場合でも、特に拡散区分及び有利には流入区分も、製作時に理想的な規定値と比較して圧縮も伸張もされないということが助成される。実際の肉厚の理想的な肉厚との偏差は、送り区分の長さを適合させることにより完全に考慮されている。これにより、冷却孔の通流特性及び流出特性も、極めて良好な精度を以て理想的な規定値に対応する。
【0018】
この場合、補足的に又は択一的に送り区分の横断面直径を、差の値に関連して孔ジオメトリ値として変更することもできる。これにより、実際の特性が規定された特性に合致する精度が上がる。
【0019】
特に有利な構成では、この方法が全自動で実施される。このためには、測定した値も、比較結果の値も、算出した孔の値も、それぞれ有利には全自動式で測定ユニットから演算ユニットへ送られ、この演算ユニットから穿孔工具を制御するための制御ユニットへ送られる。方法の全自動化は、例えばそれぞれブレード表面に相並んで配置された多数の冷却孔を備えたタービンブレードの、時間及びコストに効果的な製作を可能にする。
【0020】
このためには、有利には第1の孔を製作するための方法作業ステップa〜cを終了した後で、構成部材にもう1つの別の孔又は複数の別の孔を製作するための方法が1回又は複数回繰り返される。
【0021】
本発明の別の視点では、特に構成部材に孔をパラメータ製作するための、上で説明した本発明による方法を実施するための穿孔装置が供与される。本発明によるこの穿孔装置は、構成部材の肉厚を測定するための測定ユニット、測定した実際の肉厚を仮定した理想の肉厚と比較し且つこの比較に基づいて少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータを算出するための演算ユニット、穿孔ユニットを制御するための制御ユニット及び構成部材に孔を設けるための穿孔ユニットを有している。
【0022】
この穿孔ユニットは、特に有利にはレーザドリルを有している。冷却孔を製作するためには、有利には例えばヨーロッパ特許第0950463号明細書に記載されたビーム穿孔法の内の1つを使用することができる。この場合、ビーム穿孔法としては特にレーザ穿孔法、有利にはパルス式のレーザ穿孔法が適している。つまりこの場合、例えばパルス式のNd:YAGレーザ又はパルス式のCOレーザが使用される。但し本発明の枠内で、例えばウォータージェット等の別の穿孔噴流も使用される。
【0023】
特に穿孔過程を全自動で進行させるためには、穿孔装置は付加的に有利には把持兼位置決めユニットを有しており、これにより、加工しようとする構成部材を把持し且つ有利には全自動で、その都度実施しようとする加工ステップに従って位置決めする。
【0024】
更に別の視点において、本発明はガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、特にブレードを供与する。この場合、当該構成部材は上で説明した方法に従って製作された少なくとも1つの孔、有利には多数の孔を有している。従来技術から公知の構成部材、特に従来技術から公知のタービンブレードとは異なり、各孔の1つ又は複数の値が、その時々の構成部材の正に穿孔される箇所の肉厚に関連して最適化されている。つまり、例えば冷却孔の場合は供給区分の長さがその都度局所的な肉厚に適合され得るので、これにより、孔は製作に起因するジオメトリ変動に基づいた従来慣例のばらつき幅無しで、所望の通流・流出特性を有している。
【0025】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0026】
図面には、本発明を理解するために重要な要素及び構成部材のみが示されている。同一構成部材又は同一作用を有する構成部材には概ね同一符号が付されている。
【0027】
図1には従来技術から公知の孔製作法の概略的なフローチャートが示されている。CADモデル1から出発して、孔の製作に必要とされる孔ジオメトリ値3が穿孔工具、例えばレーザドリル2の制御装置に入力されるか又は読み込まれる。次いで、前記の孔ジオメトリ値に基づいて穿孔工具により孔が構成部材4に製作される。この場合、構成部材の実際の寸法の、CADモデルで規定された理想の寸法との偏差は付加的には考慮されない。このことは、実際に製作された孔のジオメトリ寸法を理想の孔とは異ならせ、これにより、実際に製作された孔の通流特性及び流出特性も、理想の孔とは異なってしまう恐れがある。
【0028】
図2には、壁に設けられた冷却孔11を備えたタービンブレードの壁10の横断面図が示されている。ここに示したタービンブレードは内部が中空に構成されている。タービンブレード内の中空室は冷却フルードリザーバとして利用され、この冷却フルードリザーバは送り導管を介して手前の圧縮機段の内の1つから冷却空気を供給される。タービンブレードの外側に沿って、運転中は燃焼室から来る高温のフルード流(流れ矢印14)が流れる。
【0029】
冷却孔11は、この冷却孔を通流する冷却フルードの流れ方向13で見て、流入区分15、この流入区分15に続く送り区分16及びこの送り区分16に続く拡散区分18に分かれている。流入区分15及び送り区分16は図示のように供給区分17としてまとめられ且つ一定の横断面を有していてもよい。それぞれ孔軸線12に対して垂直方向で見られるべき送り区分16及び流入区分15の横断面は、大抵の用途において図示のように円形である。それというのも、円形の孔横断面は、製作技術的に非円形の孔横断面よりも簡単に製作可能だからである。この実施例でも、送り区分16及び流入区分15の範囲の孔の半径は一定のままである、つまりこの場合、冷却孔11の供給区分17全体が円筒形に形成されている。しかしまた、冷却フルードを隣接するリザーバから冷却孔11に所望のようにガイドするためには、非円形横断面を備えた流入区分15を構成するか、又は流入区分15を拡径するように或いはノズル状に構成することも有利であってよい。拡散区分18は、図2では出口に向かって拡がる非円形横断面を有しており、これにより、運転中既に冷却孔11において、孔を通ってガイドされる冷却フルード噴流の拡がりと減速の両方が得られることになる。その結果、冷却孔から流出する冷却フルード噴流は主流との協働においてより良好にブレード壁に対して曲げられる一方で、拡がりに基づき冷却孔の下流のブレード壁のより広い範囲を被覆する。このことは、全体としてタービンブレードのブレード外面における冷却フィルムの形成を改良し延いては拡散区分無しの場合よりも良好な冷却をもたらす。
【0030】
図2に示した壁10は、設計を規定されて流体力学的に最適化されたCADモデルの値に相当する規定厚さ19を有している。この規定厚さ19に基づいて、冷却孔11の寸法は設計段階において、ガスタービンの広範な運転範囲にわたって必要とされる全ての縁部パラメータを考慮して、概ね最適な冷却フルード流が冷却孔を通って形成され且つ冷却孔から冷却フルードが流出する際に最適な冷却フィルムがブレードの外面に形成されるように規定された。但し、タービンブレードの実際の肉厚が例えば製作誤差に基づいて前記の規定された肉厚とは異なっていると、実際に製作される孔のジオメトリも理想の孔とは異なる。つまりこのことは、例えば供給区分16が理想の構成と比べて極端に長く又は極端に短くなってしまうか、或いは拡散区分18が極端に長く又は極端に短く構成されているか、又は変更された拡散開口角度を備えて構成されている恐れがある。このことはあらゆるケースにおいて、より大きな又はより小さな質量流量を伴う、冷却孔を通る冷却フルードの流れ特性を変えるか、又は冷却孔からの流出時に冷却フルード噴流の拡がりを悪化させる。冷却孔の設計は最適な冷却効果に関して設計されたので、冷却孔の実際のジオメトリの理想のジオメトリへの変更は全て、冷却効果の低下を招く。
【0031】
孔の製作に際して、規定された理想の肉厚に対する実際に構成された肉厚の偏差を考慮するために、本発明では、図3に概略的に示したフローチャートが示すように第1の方法ステップ21において、構成部材20の孔の設けられている箇所の実際の肉厚を測定する。この測定値から出発して、引き続く方法ステップ23では測定された実際の肉厚の、仮定の理想の肉厚との比較が行われる。これにより、ここで入力値として規定される理想の構成部材若しくは理想の孔の設計を元にしたCADデータ(符号22参照)が、実際の肉厚に基づいて修正される。この比較結果は、方法ステップ23において少なくとも1つの孔ジオメトリ値を求めるために使用され、次いでこの孔ジオメトリ値は、例えばレーザドリル等の適当なドリルの制御装置に送られる。次いで引き続くステップ24において、孔パラメータとして求められた孔ジオメトリ値に基づいて孔が製作される。
【0032】
図3に示した方法を用いて、1つの構成部材に多数の孔を製作することもでき、この場合、製作しようとする各孔毎に方法ステップ21〜24で処理される。図3には、このように1つの構成部材に多数の孔を製作することが方法ステップ24から方法ステップ21へ戻る線(破線で図示)によって示されている。
【0033】
肉厚の測定21は、本実施例では例えば渦電流測定によって行う。この測定結果は測定を行った後、方法ステップ23を実施するために例えばCPU等の演算ユニットに供給され、これにより、この演算ユニットで孔に関して考慮されるべき少なくとも1つの孔ジオメトリ値が算出される。つまり、ここでは例えば孔ジオメトリ値として、規定値として規定された送り区分の長さを、穿孔方向で投影される差の値だけ変更することができる。このことは、理想の肉厚に対する実際の肉厚の差を補償するために、送り区分を適宜より長く又は短く構成するということを意味している。このためには、孔の傾斜角度を考慮するために、前記の差の値の投影は孔軸線方向で行われる。これにより、実際に製作される拡散区分のジオメトリが規定された理想の拡散ジオメトリに対応し、その結果、運転中、冷却孔を通流する冷却フルードの規定された最適な流れ特性が得られるということが保証されている。
【0034】
実際のジオメトリの理想のジオメトリからの偏差に基づいた送り区分における流れ損失の変化を考慮するためには、送り区分の横断面の直径及び/又は拡散区分の横断面延在部を、1つ又は複数の別の孔ジオメトリ値として前記の差の値に関連して変更することが有利であってもよい。例えば送り区分をより長く構成する場合は当該送り区分の横断面も拡大することができ、これにより、送り区分のより長い長さに基づいて付加的に発生する付加的な流れ損失が補償される。逆に送り区分を短くする場合は、横断面を縮小することが有利であってよい。
【0035】
このためには孔ジオメトリ値が、有利には規定された簡単な相関によって、殊に比例関数に基づいて前記の差の値から求められ且つ穿孔工具の制御装置へ送られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来技術から公知の孔製作法の概略的なフローチャートを示した図である。
【図2a】冷却孔を備えたタービンブレードの壁の横断面図である。
【図2b】図2aに示した冷却孔の平面図である。
【図3】本発明による孔、特に冷却孔のパラメータ製作法の概略的なフローチャートを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材に孔をパラメータ製作するための方法、特にガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、殊にガスタービン又は蒸気タービンのブレード(10)に冷却孔(11)をパラメータ製作するための方法において、該方法に以下の方法ステップ(21,23,24)、即ち:
a)構成部材の穿孔しようとする箇所の実際の肉厚の測定;
b)測定した実際の肉厚の、仮定の理想の肉厚との比較に基づく少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータの算出;
c)算出した少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータに基づいた孔の製作
を含めることを特徴とする、冷却孔のパラメータ製作法。
【請求項2】
構成部材の実際の肉厚を、前記方法ステップaにおいて渦電流測定により測定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法ステップbにおいて孔ジオメトリ値のパラメータを求めるために、まず仮定した理想の肉厚と、測定した実際の肉厚との差の値を求め、次いでこの差の値を考慮して、孔ジオメトリ値のパラメータを少なくとも1つの規定値から出発して算出する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記規定値が絶対値であり且つ当該規定値を前記の差の値に関連して変更する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記規定値が肉厚に関連した相対値であり且つ当該規定値を前記の差の値に比例した値だけ変更する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
孔が、ガスタービン又は蒸気タービンの構成部材、特にガスタービン又は蒸気タービンのブレードの冷却孔であり、該冷却孔に流れ方向で見て流入区分、送り区分及び拡散区分を設け、孔ジオメトリ値として、規定値として規定した送り区分の長さを孔方向で投影された差の値だけ変更し且つ/又は送り区分の横断面直径を前記の差の値に関連して変更する、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
全自動で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
最初の孔を製作するための方法作業ステップa〜cを終了した後で、構成部材にもう1つの別の孔又は複数の別の孔を製作するために当該方法を繰り返す、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
特に請求項1から8までのいずれか1項記載の、構成部材に孔をパラメータ製作するための方法を実施するための穿孔装置であって、構成部材の実際の肉厚を測定するための測定ユニット、測定した実際の肉厚の、仮定した理想の肉厚との比較を実施し且つ該比較に基づいて少なくとも1つの孔ジオメトリ値のパラメータを算出するための演算ユニット、穿孔ユニットを制御するための制御ユニット及び構成部材に穿孔するための穿孔ユニットを有していることを特徴とする、構成部材に孔をパラメータ製作するための方法を実施するための穿孔装置。
【請求項10】
穿孔ユニットがレーザドリルを有している、請求項9記載の穿孔装置。
【請求項11】
加工しようとする構成部材を把持し且つ有利には全自動で、その都度実施しようとする加工ステップに従って位置決めするために、穿孔装置が付加的に把持兼位置決めユニットを有している、請求項9又は10記載の穿孔装置。
【請求項12】
少なくとも1つの孔、有利には多数の孔が設けられており、当該の孔が請求項1から8までのいずれか1項記載の方法に従って製作されていることを特徴とする、構成部材、特にガスタービン又は蒸気タービンのブレード。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501351(P2007−501351A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522350(P2006−522350)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051648
【国際公開番号】WO2005/014224
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】