冷却方法及び冷却装置
【課題】乾燥冷却気体の供給速度を低下させて、被処理物と接触する冷気の温度と湿度とを高く維持し、冷気を一方向に規則的に流すことがなく、バッチ法又は連続法に適用可能な冷却方法及び装置、並びに連続式冷却方法及び装置を提供する。
【解決手段】冷却方法は、被冷却物収容処理室1に冷却室3から冷却気体を供給して被冷却物を冷却し、処理室内部において、冷却室からの冷却気体の供給方向Mに対して偏向する方向Sに攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施する。冷却装置は、処理室1、冷却室3、冷却気体送気手段4、及び攪拌用気流送風攪拌手段68を有する。連続式冷却方法は、冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で攪拌混合を実施する。
【解決手段】冷却方法は、被冷却物収容処理室1に冷却室3から冷却気体を供給して被冷却物を冷却し、処理室内部において、冷却室からの冷却気体の供給方向Mに対して偏向する方向Sに攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施する。冷却装置は、処理室1、冷却室3、冷却気体送気手段4、及び攪拌用気流送風攪拌手段68を有する。連続式冷却方法は、冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で攪拌混合を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却方法及び冷却装置に関する。本発明においては、被処理食品類を装入して冷却処理を実施する処理室内において、冷却気体を攪拌する攪拌冷却方式により、冷却効率を向上させることができる。また、本発明による攪拌冷却は、バッチ法又は連続法に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
食品類を物流システムに適用させたり、低温貯蔵を行うために、食品類を冷却する技術が利用されている。例えば、加熱調理して調製した食品類(例えば、ご飯やパン類)を室温以下に冷却したり、生鮮食料品(例えば、魚介類や食肉)を冷蔵温度帯や冷凍温度帯へ冷却することが行われており、従来から、冷却装置や冷凍装置が多数提案されている(例えば、特許文献1又は2)。このような冷却は、冷却空気を生成する冷却器、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)、及び被処理食品類を装入して配置する処理室を、密閉された断熱筐体内に設けた冷却装置(又は冷凍装置)によって実施されている。こうした冷却装置においては、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)により冷却器から送り出された冷却空気が処理室を経て再び冷却器に戻り、更に送気手段により処理室へ送り出されるという強制循環方式が採用されている。すなわち、ファンにより送り出された乾燥冷却空気は、処理室内の食品類を冷却して昇温するとともに食品類中の水分を強制蒸発させて多湿となる。この昇温した多湿空気を冷却器に還流させると、昇温多湿空気内の水分が冷却コイルの表面に着霜する。こうして水分が除去された冷却空気が、再び処理室内に送り込まれ、強制的に循環されている。
【0003】
また、一般に、食品類が冷凍する過程では、食品類の温度が低下し、次いで、氷結点(食品類中ではじめて氷結晶が生じる温度)に至ると水溶液部分に氷結晶が生じ、最終的には凍結する。多くの生鮮食品の氷結点は−1℃であり、−5℃で氷結率は約80%に達し、硬度が増加して物理的に凍結した状態になる。冷凍食品の場合は、一般に、−18℃以下の凍結状態まで冷却させるが、従来の凍結方法では、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)を速く通過させることによって、微小氷結晶を均質に生成させ、氷結晶が肥大化しないようにすることが重要とされてきた。これは、氷結晶が大きくなると、食品類の組織に障害を与え、品質低下の原因になるからである。こうした急速冷却を実現するため、従来法では、冷却処理の最初の段階から、氷点下に冷却した気体を大量に、しかも高速流として処理室に供給していた。
【0004】
このような従来の冷却法には、種々の欠点が存在した。まず第1に、処理室内に吹き込まれる空気は常に乾燥した冷却空気であり、しかも高速の空気流として移動しながら食品類表面と接触するため、食品類の表面に凍結が生じる前に表面から水分が強制蒸発させられ、冷却中に食品類が乾燥してしまう。また、凍結後も乾燥冷気の気流により氷面から水分が昇華によって取り去られてしまう。すなわち、循環空気流が食品類中の水分を抜き取って、冷却コイルの表面に移動凝固させるメカニズムになっている。こうして凍結温度帯にまで冷却された食品類を解凍すると、冷凍以前の風味が損なわれてしまう。
【0005】
従来法の第2の欠点は、処理室内の食品類を冷却空気流によって冷却するため、冷却空気流が食品類の表面と接触する際に、水分を抜き取りやすいだけでなく、食品類の表面を過度に冷却された状態にし、食品類の中心部との温度差を拡大してしまうことである。表面が過度に冷却されて氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)に到達すると、表面部に微小氷結晶が生成する。しかしながら、中心部の温度は依然として高温状態に維持されているので、中心部と表面との温度差が非常に大きくなり、中心部から表面へ大量の熱が伝導され、微小氷結晶を肥大化させる要因となる。食品類の細胞内で氷結晶の肥大化が起きると、細胞が破裂され、食品類が質的に劣化してしまう。
【0006】
従来法の第3の欠点は、冷却空気流が処理室の内部を一方向に規則的に流れることである。すなわち、被処理食品類を装入して配置する処理室では、被処理食品類(被冷却物)を多数のトレイ上に載せ、多数のトレイは棚段に平行に配置されている。冷気は、それらのトレイ間(すなわち、棚段間)を一方向に上流側から下流側に規則的に流れ、各被処理食品類と接触して冷却した後、天井などに設けたダクトから回収される。しかしながら、一方向の規則的な冷気流がトレイ上の被処理食品類と接触するだけなので、被処理食品類の表面において、例えば、冷気流の上流側の半分の側面と、その反対側(下流側:冷気流の影に相当する側)の半分の側面とでは、冷気流との接触状態が異なり、被処理食品類の表面の層流境膜の厚さに差異が生じる。すなわち、下流側半分の側面の層流境膜は、上流側半分の側面の層流境膜よりも、常に厚くなり、熱交換効率が不均一になるので、全体としての総括伝熱係数も低下する。これを防止する観点からも、従来法では、一般に、冷気流の速度を速くして、層流境膜の厚さを全体的に薄くさせることによって総括伝熱係数の低下を防止している。
【0007】
しかしながら、被処理食品類(被冷却物)において、特に、冷気流の上流側半分の側面が更に高速の冷気流に直接曝されることになるので、食品類表面が急速に冷却された状態になる。このような場合、食品類表面が冷却されても食品類中心部は依然として高温状態にあり、食品類中心部と食品類表面との温度差が次第に拡大してしまう。このような温度差拡大状態で、表面が氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)に到達すると、表面部では微小氷結晶が生成するのに対し、中心部の温度は依然として高温状態に維持されているので、前記と同様の問題が発生する。また、被処理食品類(被冷却物)の表面が高速冷気流と接触すると、表面乾燥が進んでヒビ割れが発生したり、被処理食品類(被冷却物)表面に付着させた添加物(例えば、ゴマ粒)が脱離するなどの欠点もあった。
【0008】
前記の総括伝熱係数を向上させる手段として、過度に冷却された気体を高速で供給する手段とは別に、処理室内の気流を乱流化させる技術も提案されている。例えば、四角形平板状の各棚段の四周辺にそれぞれ側板を立設し、一辺に設ける側板の高さを他の三辺の側板の高さよりも高くし、しかも上部に隣接して設ける棚段の底面とほぼ接触する高さとすることにより、1つの面を密封状に遮断する手法が提案されており、この手法によれば、遮断面とは反対側から導入される冷気流が遮断面にて反射し、この反射流と入射流との衝突によって乱流が発生するとしており、更に冷気導入側にも低い側板が存在するので、カルマン渦的乱流も発生するとされている(特許文献3)。しかしながら、この手法では、反射流と入射流との衝突などによって乱流を発生させることが必要になるので、入射流冷気の気流速度を非常に速くする必要があり、従って、発生するとされている乱流それ自体の流速も当然に速くなる。高速冷気流が被処理食品類の表面と接触することになるので、食品類表面が急速に冷却された状態になり、前記と同様の問題が発生する。更に、入射流冷気の気流速度が非常に速くなるので、大量の冷気が冷却室と処理室とを高速で循環することになることから、大量の乾燥冷気が処理室において被処理食品類と接触して、過度の水分除去が進行する。
【0009】
また、処理室に向かって吹き付けた送風冷気流が処理室の壁面から反射され、その反射流と送風冷気流との衝突によって乱流を発生させ、急速冷凍させる技術も提案されている(特許文献4)。しかしながら、この技術も、反射流と入射流との衝突によって乱流を発生させるため、入射流冷気の気流速度を或る程度まで速く維持する必要があり、乱流それ自体の流速も比較的速くなるので、前記と全く同様の問題がある。
【0010】
一方、連続方式によって熱交換効率を向上させる方法も提案されている。すなわち、ベルトコンベヤなどの移送手段によって被冷却物を冷却処理室へ連続的に次々に装入し、冷却処理室において被冷却物に冷却気体を向流又は平行流で接触させる方法である。また、こうした連続式冷却方法の熱交換効率を更に向上させる方法として、被冷却物と冷却気体との接触時間を長くするために、流路に仕切板(邪魔板)を設ける方法も提案されている(特許文献5)。しかしながら、これらの連続式方法も、比較的に高速の冷気流を被冷却物に衝突させることを基本としており、前記のバッチ式方法の欠点を根本的に解消する手法は提案されていない。
【0011】
【特許文献1】特開昭58−136962号公報
【特許文献2】特開2003−148853号公報
【特許文献3】特開平6−273030号公報
【特許文献4】特開平10−311649号公報
【特許文献5】特公昭52−1497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、処理室に送る乾燥冷却気体の供給量を減少(すなわち、乾燥冷却気体の供給速度を低下)させて、処理室内部において被処理物(被処理食品類)と接触する冷気の温度と湿度とを高く維持することができると共に、冷却気流を一方向にのみ規則的に流すことがなく、バッチ法又は連続法のいずれにも適用可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明により、
被冷却物を収容する処理室に冷却室から冷却気体を供給することによって被冷却物を冷却する冷却方法であって、
前記処理室内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施することを特徴とする、前記冷却方法によって解決することができる。
【0014】
本発明の冷却方法の好ましい態様においては、前記冷却室から供給されて前記処理室内部を流れている冷却気体を攪拌するか、又は前記冷却室から供給された後に前記処理室内部に滞留している冷却気体を攪拌する。
本発明の冷却方法の別の好ましい態様においては、攪拌用気流を複数の方向から連続的又は断続的に送風する。
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、攪拌用気流の送風方向を連続的又は断続的に変化させる。
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、バッチ法で実施する。
【0015】
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、前記冷却室から前記処理室への冷却気体の供給制御を、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施するか、あるいは、前記処理室の気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理室へ案内される処理用冷却気体と、前記処理室を通過せずに前記冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割することによって実施する。
前記態様においては、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理室内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理室内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、
(1)被冷却物を収容することのできる処理室、
(2)気体を冷却することのできる冷却室、
(3)前記冷却室で冷却された気体を前記処理室へ供給することのできる送気手段、及び
(4)前記処理室内に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段
を有することを特徴とする、冷却装置にも関する。
【0017】
本発明の冷却装置の好ましい態様においては、複数の攪拌手段を備える。
本発明の冷却装置の別の好ましい態様においては、攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える。
【0018】
更に、本発明は、
冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で前記被冷却物を徐々に冷却する連続式冷却方法であって、
各処理ゾーン内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することによって、前記処理室内部の気体の攪拌下で冷却を実施することを特徴とする、前記連続式冷却方法にも関する。
【0019】
本発明の連続式冷却方法の好ましい態様においては、各処理ゾーンに供給される冷却気体が、共通又は別異の冷却室において冷却された気体である。
本発明の連続式冷却方法の別の好ましい態様においては、低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに冷却気体の少なくとも一部として供給する。
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、高温帯処理ゾーン、中温帯処理ゾーン、低温帯処理ゾーン、及び超低温帯処理ゾーンを含む。
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、移送手段の表面上に載置された被冷却物に対して上方から冷却気体を供給し、一方又は両方の側方から攪拌用気体を送風する。
【0020】
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、少なくとも1つの処理ゾーンに関し、その処理ゾーンへ供給される冷却気体を、前記処理ゾーンの気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体と、前記処理ゾーンを通過せずに冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割する。
前記態様においては、少なくとも1つの処理ゾーンに関し、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理ゾーン内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理ゾーン内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、
(1)相互に熱的に遮断関係にあり、被冷却物を順々に収容することのできる複数の処理ゾーン、
(2)気体を冷却することのできる1又は複数の冷却室、
(3)1又は複数の冷却室で冷却された気体を前記処理ゾーンへそれぞれ供給することのできる送気手段、
(4)複数の処理ゾーンの少なくとも1つの処理ゾーン内部に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段、
(5)被冷却物を複数の処理ゾーンに順々に移動させることのできる移送手段、及び
(6)複数の処理ゾーンを、少なくともそれぞれの冷却処理中に、相互に熱的に遮断関係にすることのできる遮熱手段
を有することを特徴とする、連続式冷却装置にも関する。
【0022】
本発明の連続式冷却装置の好ましい態様においては、攪拌手段を備える処理ゾーンが複数の攪拌手段を備える。
本発明の連続式冷却装置の別の好ましい態様においては、攪拌手段を備える処理ゾーンが攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える。
【0023】
本明細書において、「冷凍温度帯」とは、被処理物を凍結させる温度領域、すなわち、0℃以下の温度領域を意味する。具体的には、氷結点(食品類中ではじめて氷結晶が生じる温度)以下の凍結状態を含み、当然、−18℃以下の凍結状態も含む。また、「非冷凍温度帯」とは、被処理物を凍結させない温度領域、すなわち、0℃より高い温度領域を意味し、例えば、常温温度帯、及び冷蔵温度帯が含まれる。なお、「冷却」は、一般的に冷やすこと、例えば、被処理物の温度や冷却に用いる気体(冷却気体)の温度を低下させることを広く意味し、「非冷凍温度帯」への「冷却」及び「冷凍温度帯」への「冷却」の両方を含む。更に、「冷凍温度帯」への「冷却」を単に「冷凍」と称することがあり、本明細書の以下の説明においては、簡便化の目的で「非冷凍温度帯への冷却」を、単に「非冷凍冷却」と称することがある。
【0024】
また、本明細書において、「冷気」(又は、冷却気体)とは、冷却室において冷却された気体(特に、空気)を意味し、「暖気」とは、処理室内で昇温された気体(特に、空気)、例えば、本発明による攪拌冷却によって処理室内で昇温された気体を意味する。
更に、本明細書においては、本発明による冷却方法及び冷凍方法、並びに本発明による冷却装置及び冷凍装置を、統括的に、「本発明の冷却システム」と称することがある。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、処理室へ供給する冷却気体の量を減少させ(すなわち、冷却気体の流速を低下させ)、処理室内で被冷却物と接触する冷却気体の温度及び湿度を高い状態に維持して、大量の高速乾燥冷却気体と被処理物との接触を防止することにより、冷却品質を向上することを目的としており、冷却気体の流速低下による総括伝熱係数の低下を回避するために、処理室において攪拌気流(すなわち、乱流)を発生させる。言い換えると、本発明においては、処理室において攪拌気流(すなわち、乱流)を発生させて処理室内の冷却気体の流速を通常の流速に維持することができるので、処理室から供給される冷却気体の量を減少(すなわち、冷却気体の流速を低下)させることが可能になり、処理室内で被冷却物と接触する冷却気体の温度及び湿度を高い状態に維持することができ、その結果、従来技術のように、大量の高速乾燥冷却気体と被処理物とを接触させることを原因とする種々の欠点を防止することができる。
【0026】
具体的に、本発明においては、冷却室から処理室へ冷却気体を供給する送気手段とは別に、例えば、処理室の内部に第2の送気手段(例えば、1又は複数の送気ファン及び/又は吸気ファン)を設け、その第2送気手段によって、処理室内部の冷却気体が攪拌されて循環する。従って、冷却に必要な冷却エネルギーは冷却気体によって冷却室から処理室へ供給され、処理室内の冷気が第2送気手段によって攪拌されるので、被処理食品類の表面に衝突する気流の方向が変化し、被処理食品類表面のそれぞれの地点での層流境膜の厚さが気流の方向変化に伴って経時的に変化することになり、総括伝熱係数が向上する。
【0027】
また、冷却気体の流れが一方向の規則的な場合と比較すると、本発明の攪拌冷却方式では総括伝熱係数が向上するので、被処理食品類表面と接触する冷却気体の流速を低下させても、一方向の規則的な場合の総括伝熱係数と同レベルの総括伝熱係数を維持することが可能になり、その結果、氷結晶生成帯での氷結晶の肥大化を防止したり、表面乾燥によるヒビ割れなどを防止することができる。
【0028】
更に、本発明による攪拌冷却を、後述するように、バイパス循環方式及び/又は置換冷却サイクルと併用することによって、効果的な冷却を実施することができる。更にまた、本発明の攪拌冷却は、バッチ法だけでなく、連続法にも有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に沿って本発明の代表的な態様を説明する。なお、本発明による冷却には、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
最初に、本発明による攪拌冷却の原理を、特にバッチ法に関して説明する。
図1は、本発明の原理を模式的に示す平面図である。図1に示すとおり、本発明装置10は、断熱性ハウジング1A内に、通常の冷却装置と同様に、処理室1、冷却室3、及び送気手段としてのメインファン4を含む。処理室1は、被冷却物の搬入用及び搬出用の開閉自在な開口部(図示せず)から、その室内11に被冷却物を装入して配置することができる。冷却室3は、気体導入部から送り込まれる気体(特に、空気)を冷却して、冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出することができる。メインファン4は、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Mの方向、すなわち処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。なお、図1に示すメインファン4に替えて、吸気ファンを処理室1の下流側に設け、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Mの方向、すなわち処理室1の方向へ供給することもできる。
【0030】
本発明の攪拌冷却においては、図1に示すよう、処理室1の室内に、気流攪拌手段としてのサブファン68を設け、矢印Sの方向へ攪拌用気流を送り出す。攪拌用気体の流れ方向(矢印Sの方向)は、メインファン4から処理室1へ供給される冷却気体(冷気)の流れ方向(矢印Mの方向)に対して偏向しており、例えば、図1に示すように直交方向(偏向角度が90°)である。主送気手段としてのメインファン4の送気角度は変更可能である必要はなく、一般的に一定であるが、気流攪拌手段としてのサブファン68の送気角度は変更可能であることが好ましく、例えば、図1において破線で示すサブファン68’のように、送気角度を変更することができる。更に、サブファン68,68’は、処理室1の室内の気体(特に、空気)を矢印Sの方向へ循環させて攪拌する送気ファンであることができるだけでなく、矢印Sの逆方向へ吸い取って攪拌する吸気ファンであることもできる。あるいは断続的に送気と吸気を変換する送気・吸気ファンであることもできる。
【0031】
図2は、図1の本発明装置10における処理室1の内部のみの状態を模式的に示す斜視図であり、処理室1の内部に挿入した載置台15に取り付けた複数の載置トレイ13上に、複数の被冷却物(特に、被処理食品類)12が載置されている。前記メインファン4により処理室1へ供給される冷却気体(冷気)、及び前記サブファン68により処理室1へ送風される攪拌用気流はいずれも、載置トレイ13の載置表面と平行方向に流れ、しかも、冷却気体と攪拌用気流とは相互に流れ方向が直交するので、処理室1の内部において、冷却気体の流れ方向が変化する。この変化により、一定方向に流れる冷却気体の下流側半分に存在する影が実質的に消失する。
【0032】
本明細書において、前記冷却気体と前記攪拌用気流とが交差する角度を偏向角度と称する。偏向角度は、図3に示すとおり、前記冷却気体の流れ方向を示す直線Mに対して、前記攪拌用気流の流れ方向を示す直線Sが交差する点Pに形成される角度θを意味する。なお、前記冷却気体の流れ方向(直線M)とは、前記処理室内部において前記冷却気体のみを流し、攪拌用気流を流していない場合の前記冷却気体の流れ方向であり、前記処理室内部において前記冷却気体が流れておらず単に滞留している場合は、その滞留前に流れていた前記冷却気体の流れ方向を意味する。また、冷却気体及び攪拌用気流の流れが一方向ではなく、例えば送気用ファンを中心として放射状に拡がり、円錐状の流れを形成する場合は、その円錐形の軸線方向を流れ方向とする。本発明において、偏向角度は、好ましくは10〜170°、より好ましくは45〜135°である。偏向角度が10°未満になると攪拌効率が不充分になり、170°を超えると、冷却気体の流れと攪拌用気流とが正面衝突し、処理室内の気流の排気が円滑に行われなくなる。偏向角度を連続的に又は不連続的に変化させて、前記攪拌用気流を流すこともできる。
【0033】
本発明の攪拌冷却方式では、処理室の両側にサブファンを相互に対向させて配置することができ、更に、処理室の1又は複数の壁面に攪拌用気流供給室を設け、その中にサブファンを配置することもできる。図4は、こうした態様の本発明装置10’の構造を模式的に示す平面図である。すなわち、本発明装置10’は、図1に示す本発明装置10と同様に、断熱性ハウジング1A内に、処理室1、冷却室3、及び主送気手段としてのメインファン4を備え、更に、冷却室3の両側に2つの攪拌用気流供給室6,6Aを含み、それら攪拌用気流供給室6,6A内部にサブファン68,68Aを備えている。
【0034】
2つの攪拌用気流供給室6,6Aは、それぞれその室内6,6Aの気体(特に、空気)を、気流攪拌手段としてのサブファン68,68Aにより処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。攪拌用気流供給室6,6Aの室内の気体(特に、空気)は、例えば、前記冷却室3から供給することができ、攪拌用気流によって冷却エネルギーを補充することができる。なお、図4に示すように、場合により、補助ファン69,69Aを設け、冷却室3から攪拌用気流供給室6,6Aへの冷気を一層円滑に供給することもできる。メインファン4から処理室1へ供給される冷却気体(冷気)の流れ方向に対して、サブファン68,68Aにより処理室1へ送風される攪拌用気体の流れ方向は、偏向しており、例えば、図1に示すように直交方向(偏向角度が90°)である。気流攪拌手段としてのサブファン68,68Aの送風角度は変更可能であることが好ましく、例えば、図4において破線で示すサブファン68’,68A’のように、送風角度を変更することができる。
【0035】
図4に示す態様の本発明装置10’においては、対向する2つの攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ攪拌用気流を送風する際に、攪拌用気流が相互に正面から衝突する方向から(すなわち、180°反対方向から)、同時に送風が行われないように制御することが好ましい。例えば、図4に示すように、攪拌用気流供給室6から矢印S1方向へ冷却気体(冷気)の流れ方向に対して直角に送風し、攪拌用気流供給室6Aから矢印S2方向へ冷却気体(冷気)の流れ方向に対して直角に送風する場合は、両者を同時に送風せず、交互に断続的に送風することが好ましい。攪拌用気流供給室6からの送風と攪拌用気流供給室6Aからの送風とを同時に行う場合は、例えば、図4に示すように、攪拌用気流供給室6から矢印S1又は矢印S3の方向へ送風し、攪拌用気流供給室6Aから矢印S4方向へ送風することが好ましい。
【0036】
図4に示す実施態様では、冷却室3の両側に設けた攪拌用気流供給室6,6Aの内部にサブファン68,68Aを備え、この攪拌用気流供給室6,6Aへは冷却室3から冷却気体が供給されるので、主送気手段としてのメインファン4の運転を停止するか、あるいは主送気手段としてのメインファン4それ自体を取り外しても、冷却エネルギーを攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ供給することができる。冷却気体をメインファン4から処理室1の室内に供給する場合は、一般的に処理室1の下流側壁面に排出口が設けられているので、メインファン4からの冷却気体の供給を停止し、冷却室3の両壁面に設けた攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ冷却気体を供給すると、攪拌用気流供給室6,6Aから排出口までの冷却気体の流路が長くなり、冷却気体の滞留時間が長くなるので、冷却エネルギーを有効に活用することができる。
【0037】
本発明の攪拌冷却では、処理室内において攪拌用気流の送風を連続的又は断続的に行うことができる。例えば、冷却気体(冷気)を前記冷却室から前記処理室へ供給し、その供給を停止した後、前記処理室内部において、気流攪拌手段としてのサブファンを作動し、滞留している冷却気体、すなわち、前記処理室内部の冷却気体(冷気)を攪拌させることができる。一方、冷却気体(冷気)が前記冷却室から前記処理室へ送風されている場合には、攪拌用気流を連続的に送風することも、あるいは断続的に送風することもできる。
【0038】
本発明の攪拌冷却においては、前記冷却室から前記処理室へ供給され、前記処理室内部において流れている冷却気体に対して、前記攪拌用気流を偏向方向から送風するか、あるいは、前記冷却室から前記処理室へ供給された後、前記処理室内部において滞留している冷却気体に対して前記攪拌用気流を送風することができる。前記攪拌用気流の流量及び流速は、前記攪拌用気流の送風によって形成される混合流の流速に則して制御することが好ましい。
【0039】
処理室において被処理物を冷却する冷却エネルギーは、冷却室から処理室の内部へ供給される冷却気体から提供されるので、前記攪拌用気流は冷却エネルギーを供給する必要はなく、従って、気流攪拌手段は、処理室内の気体を循環させて攪拌させるだけで充分である。しかしながら、処理室以外から、攪拌用気流の一部又は全部を供給することもでき、その場合は、供給される前記攪拌用気流によって処理室内の冷気が上昇することのないようにするのが重要であり、攪拌用気流を冷却エネルギー供給用としても使用することもできる。すなわち、前記攪拌用気流は、図1に示すように、処理室内の冷気を循環させて使用するか、あるいは、図4に示すように、補助ファン69により前記冷却室3から供給される冷気を使用することができる。
【0040】
本発明による攪拌冷却は、通常の冷却方法、すなわち、冷却室において冷却された気体を、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)によって、被冷却物を収容する処理室へ送風することによって前記被冷却物を冷却する任意の公知方法に適用することができる。なお、送気手段として送気用ファンを用いる場合には、送気用ファンを冷却室と処理室との間に配置し、送気手段として吸気用ファンを用いる場合には、吸気用ファンを処理室と冷却室との間に配置することができる。
【0041】
本発明の攪拌冷却においては、処理室内で発生する攪拌混合流の流速の上限を、被冷却物(被処理食品類)の種類に応じて制御することが好ましい。具体的には、被冷却物(被処理食品類)の種類に応じて、攪拌混合流の流速の上限を、表面温度の変化に応じて変化させることが好ましい。例えば、被冷却物(被処理食品類)の表面温度が5℃〜−5℃の間での冷却を実施する際には、前記冷却室から前記処理室の内部へ供給される冷却気体と、その冷却気体に送風される攪拌用気流とによって前記処理室内部に形成される混合流の流速は、被冷却物の表面に対して、好ましくは3m/s以下、より好ましくは1m/s以下、最も好ましくは0.5m/s以下である。前記混合流の流速が3m/sを超えると、表面乾燥が進んでヒビ割れなどが発生したり、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度と中心温度との温度差が拡大し、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)において微小氷結晶を肥大化させる要因となる。前記混合流の流速の下限は特に限定されないが、冷却処理時間を長期化させないように、前記上限に近づけて処理することが好ましい。
【0042】
本発明の攪拌冷却方法においては、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が5℃〜−5℃の間での冷却を実施する際に、被冷却物の表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差(Ta−Ts)を好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、最も好ましくは10℃以下に維持しながら冷却を実施することができる。例えば、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が約70℃〜約20℃における冷却処理では、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面からの水蒸気の蒸散は少ないが、表面乾燥やヒビ割れが発生しやすいので、前記温度差(Ta−Ts)を拡大させないために、前記冷却室から前記処理室の内部へ供給される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を減少させる。供給量減少に伴う熱交換比率の低下は、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の送風)によって防止することができる。なお、表面乾燥やヒビ割れを防止するために、後述するように、飽和冷却気体を供給することが好ましい。
【0043】
また、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が約20℃〜約−5℃における冷却処理では、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)において微小氷結晶を肥大化させないために、前記温度差(Ta−Ts)を小さい状態に維持することが重要である。本発明の攪拌冷却によれば、攪拌用気流の送風により、処理室内の気体を攪拌することができるので、前記冷却室から前記処理室へ大量の乾燥冷却気体を供給することなく、総括伝熱係数を高く維持することができる。
【0044】
なお、約70℃ないし約80℃より高温下での冷却処理では、前記冷却室から前記処理室の内部へ提供される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を比較的に増やし、更に、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の供給)を併用することによって、熱交換効率を一層向上させることができる。同様に、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理も、前記冷却室から前記処理室の内部へ提供される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を比較的に増やし、更に、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の供給)を併用することによって、熱交換効率を一層向上させることができる。
【0045】
本発明の攪拌冷却方法では、冷却処理を実施する温度領域に応じて、被冷却物の表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差(Ta−Ts)を変化させて冷却処理を有効に実施することができる。例えば、前記温度差(Ta−Ts)に関し、被冷却物表面温度が高温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃より高温での冷却処理)での温度差Th、中温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃以下から約20℃での冷却処理)での温度差Tm、低温領域冷却処理(例えば、約20℃ないし約−5℃ないし約−8℃での冷却処理)での温度差Tn、及び超低温領域冷却処理(例えば、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理)での温度差Tvを種々に制御して冷却処理を実施することができる。一般的には、以下の条件(1):
Th>Tm,Tn,Tv (1)
を満たすように設定する。例えば、以下の条件(2):
Th>Tv>Tn>Tm (2)
を満たすように設定し、冷却工程全体での熱交換効率を高く維持することができる。
【0046】
図5は、前記条件(2)を模式的にグラフ化した説明図である。図5に示すように、被冷却物の表面温度(Ta)を徐々に降下させる際に、処理室の室内温度(Ts)をその被冷却物の表面温度(Ta)に沿って制御することが好ましい。こうした制御を実施する際に、冷却室から処理室へ送る冷却気体の温度は、例えば、図5の線C1に示すように、一定であることができる。この場合、処理室の室内温度(Ts)の制御は、冷却気体の装入量や装入速度と、攪拌用気体の流速などとを制御することによって行うことができる。また、冷却室から処理室へ送る冷却気体の温度は、例えば、図5の線C2に示すように、一定の割合で降下させることも、あるいは図5の線C3に示すように、一定温度の冷却気体と一定割合で降下する冷却気体とを組み合わせて使用することもできる。これらの場合も、処理室の室内温度(Ts)の制御は、冷却気体の装入量や装入速度と、攪拌用気体の流速などとを制御することによって行うことができる。
【0047】
本発明の攪拌冷却では、被冷却物の種類に応じて、高温領域冷却処理での温度差Th、中温領域冷却処理での温度差Tm、低温領域冷却処理での温度差Tn、及び超低温領域冷却処理での温度差Tvをそれぞれ具体的に設定すると共に、図5に示す表面温度曲線Ta及び室内温度曲線Tsを設定して、被処理物を高温から超低温まで効率的に実施することができる。例えば、特定の被冷却物に関してパイロット試験を実施して、前記温度差Th、Tm、Tn、及びTvの具体的数値をそれぞれ決定し、更に表面温度曲線Ta及び室内温度曲線Tsの変化を具体的に設定してプログラム化し、そのプログラムに沿って、冷却室から処理室への冷却気体の供給量や流速と、攪拌用気流の送風量、流速及び又は偏向角度とを制御して自動冷却処理を実施することができる。
【0048】
本発明の攪拌冷却においては、処理室内の温度制御は、基本的に、冷却室から処理室に供給される冷却気体の量の増減によって実施するのが好ましい。すなわち、処理室内で生成した暖気を冷却室内の熱交換器に接触させ、冷却気体の温度を低下させることにより、処理室内の温度制御を行うことを基本とするものではない。これは、冷却気体を熱交換器と接触させると、除湿が起こり、被冷却物に対して悪影響を与えることになるからである。
【0049】
次に、本発明の攪拌冷却を連続法に適用する場合の原理を、図6に沿って説明する。
図6は、本発明の連続式攪拌冷却の原理を模式的に示す側面図である。図6に示すとおり、本発明の連続式装置30は、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81D、冷却室82、送気手段としての送気パイプ83、及び移送手段としてのベルトコンベア84を含み、各処理ゾーンには、それぞれの天井部に冷却気体の噴出口85A,85B,85C,85Dを備え、それぞれの側壁面に気流攪拌手段としてのサブファン86A,86B,86C,86Dを備えている。なお、冷却気体の噴出口やサブファンの設置位置は、冷却気体の攪拌が可能である限り制限されない。また、被冷却物87は、ベルトコンベア84によって矢印Tの方向に、処理ゾーン81A,81B,81C,81Dへ順に移送される。
【0050】
図6には、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dに対して共通の冷却室82を設けた態様を示したが、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dのそれぞれに専用冷却室を設け、それらの専用冷却室で生成した冷却気体を、それぞれの専用送気パイプを介して各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dへ送ることもできる。あるいは、複数の冷却室の合計数を処理ゾーンの合計数よりも少なくし、1つの冷却室で作成された冷却気体を2以上の処理ゾーンに送ることもできる。
【0051】
図6に示す本発明の連続式装置30では、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dの間に間隙遮熱手段88a,88b,88cを備えて、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dを相互に熱的に遮断関係に維持することができる。また、最初の処理ゾーン81Aの入口には入口遮熱手段88Sを備え、最後の処理ゾーン81Dの出口には出口遮熱手段88Eを備えている。各遮熱手段としては、任意の公知手段を用いることができ、例えば、図6に示すように、上部仕切板部と下部エアカーテン部との組合せからなることができる。あるいは、各遮熱手段の全体を上下動可能な仕切板とするか、又はエアカーテンとすることもできる。
【0052】
間隙遮熱手段、入口遮熱手段、及び出口遮熱手段は、被冷却物87がベルトコンベア84によって移動する際に、下部エアカーテン部(あるいは、遮熱手段全体としてのエアカーテン)のエア噴出を停止しても、あるいは停止せずに噴出量を減少させても、又は停止も噴出量減少も行わなくてもよい。各遮熱手段の全体を上下動可能な仕切板とする場合は、被冷却物87がベルトコンベア84によって移動する際に、各仕切板を上方に上昇させ、各仕切板と被冷却物87とが接触しないようにする。このように熱的に遮断された複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dの室内で、それぞれ独立の冷却条件下で、本発明による攪拌冷却を実施することができる。
【0053】
図6に示す連続式装置30を用いて本発明の連続式攪拌冷却を実施する場合には、被冷却物載置ステーション89Sにおいて、矢印Tの方向へ移動しているベルトコンベア84の上に被冷却物87を順々に載置する。ベルトコンベア84は、矢印Tの方向に連続的に移動しているので、被冷却物87は、入口遮熱手段88Sを通過した後、最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入される。最初の処理ゾーン81Aでは、例えば、高温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃より高温での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Aでの冷却条件は、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0054】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Aを通過する間に、高温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88aを通過して第2の処理ゾーン81Bの室内に挿入される。この第2処理ゾーン81Bを通過する間に、例えば、中温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃以下から約20℃での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Bでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0055】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Bを通過する間に、中温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88bを通過して第3の処理ゾーン81Cの室内に挿入される。この第3処理ゾーン81Cを通過する間に、例えば、低温領域冷却処理(例えば、約20℃ないし約−5℃ないし約−8℃での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Cでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0056】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Cを通過する間に、低温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88cを通過して最後の処理ゾーンである第4の処理ゾーン81Dの室内に挿入される。この第4処理ゾーン81Dを通過する間に、例えば、超低温領域冷却処理(例えば、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Dでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0057】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、最後の処理ゾーン(すなわち、第4処理ゾーン81D)を通過する間に、超低温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は出口遮熱手段88Eを通過して、取出ステーション89Eへ移動することができる。
【0058】
図6に示す連続式装置30において、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dで実施する各冷却処理に必要な時間が異なる場合は、ベルトコンベア84の進行方向に沿って、処理ゾーンの長さを変化させることによって、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dでの処理時間の差異を調整することができる。すなわち、長い処理時間が必要な処理ゾーンをベルトコンベア84の進行方向に沿って長くし、処理時間が短い処理ゾーンの長さを短くして調整することができる。
【0059】
図6に示す連続式装置30を用いて、被冷却物87を各処理ゾーン81A,81B,81C,81D内に挿入してから、ベルトコンベア84をそれぞれ停止する態様で連続法を実施することもできる。この態様の操作を簡単に説明すると、被冷却物載置ステーション89Sにおいて、被冷却物87をベルトコンベア84の上に順々に載置する。続いて、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ移動させて、被冷却物87を最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止する。なお、ベルトコンベア84によって被冷却物87を移動させる際には、最初の処理ゾーン81Aの入口に設けた入口遮熱手段88Sの下部エアカーテン部からのエア噴出を停止するかあるいは噴出量低減を行うことができる(以下、遮熱中断操作という)。この遮熱中断操作により、例えば、被処理食品類表面に付着させた添加物(例えば、ゴマ粒)が脱離するのを防止することができる。
【0060】
遮熱中断操作を実施した場合は、被冷却物87が最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入された後に、前記遮熱中断操作を解除して被冷却物載置ステーション89Sと最初の処理ゾーン81Aの室内とを再度熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Aと隣接処理ゾーン81Bとの間に設けた間隙遮熱手段88aにおいても同様の遮熱中断操作とその解除を行い、処理ゾーン81Aと隣接処理ゾーン81Bとを熱的に遮断する。なお、入口遮熱手段88S及び間隙遮熱手段88a全体が上下動可能な仕切板からなる場合は、被冷却物87の移動時に上方へ移動させて被冷却物87と接触しないようする遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84の停止後にそれらを再度降下させて遮熱中断操作を解除し、熱的に遮断する。
【0061】
最初の処理ゾーン81Aでは、例えば、高温領域冷却処理の攪拌冷却を実施し、それが終了した後に、間隙遮熱手段88aの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ移動させることにより、被冷却物87を第2の処理ゾーン81Bの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記遮熱中断操作を解除して、最初の処理ゾーン81Aと第2の処理ゾーン81Bとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Bと隣接処理ゾーン81Cとの間に設けた間隙遮熱手段88bでも前記遮熱中断操作を解除し、処理ゾーン81Bと隣接処理ゾーン81Cも熱的に遮断する。
【0062】
処理ゾーン81Bでの中温領域冷却処理の攪拌冷却が終了した後に、間隙遮熱手段88bでの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、被冷却物87を第3の処理ゾーン81Cの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記間隙遮熱手段88bでの遮熱中断操作を解除し、第2処理ゾーン81Bと第3処理ゾーン81Cとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Cと隣接処理ゾーン81Dとの間に設けた間隙遮熱手段88cでも遮熱中断操作及びその解除を行い、処理ゾーン81Cと隣接処理ゾーン81Dも熱的に遮断する。
【0063】
処理ゾーン81Cでの低温領域冷却処理の攪拌冷却が終了した後に、間隙遮熱手段88cの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、被冷却物87を最後の処理ゾーンである第4処理ゾーン81Dの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記遮熱中断操作を解除し、第3処理ゾーン81Cと第4処理ゾーン81Dとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Dと取出ステーション89Eとの間に設けた出口仕切板88Eでも同様の遮熱中断操作及びその解除を行い、処理ゾーン81Dと取出ステーション89Eも熱的に遮断する。この状態で、第4処理ゾーン81Cでは、例えば、超低温領域冷却処理の攪拌冷却を実施することができる。
【0064】
最後の処理ゾーン(すなわち、第4処理ゾーン81D)での超低温領域冷却処理が終了した後に、出口遮熱手段88Eの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、冷却処理物87Eを取出ステーション89Eへ移動させることができる。
【0065】
図6に示す連続式装置30によって、ベルトコンベア84を一時的に停止する連続法を実施する態様において、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dで実施する各冷却処理に必要な時間が異なる場合は、ベルトコンベア84の進行方向に沿って、処理ゾーンの長さを変化させることによって、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dでの処理時間の差異を調整することができる。処理ゾーンの長さ調整により、間隙遮熱手段、入口遮熱手段、及び出口遮熱手段の遮熱中断操作を同時に行い、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81D間の移動を同時に行うことができる。なお、図6には、4つ処理ゾーン81A,81B,81C,81Dを備えた連続式装置30を示したが、処理ゾーンの数は2つ以上であれば特に限定されない。
【0066】
本発明の連続式攪拌冷却においては、低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに、冷却気体の少なくとも一部として供給することができる。例えば、図6に示す連続式装置30を用いる場合には、第4処理ゾーン81Dでの超低温領域冷却処理によって発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域の冷却条件においては、依然として充分な冷却エネルギーを有しているので、例えば、第1処理ゾーン81A、第2処理ゾーン81B、及び/又は第3処理ゾーン81Cに冷却気体(あるいは冷却気体の一部)として供給することができる。同様に、第3処理ゾーン81Cで発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域で冷却処理を行う第1処理ゾーン81A及び/又は第2処理ゾーン81Bへ供給することができ、第2処理ゾーン81Bで発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域で冷却処理を行う第1処理ゾーン81Aへ供給することができる。
【0067】
次に、本発明による攪拌冷却において、処理室内への冷却エネルギーの供給量を調整するために併用することのできる「バイパス循環方式」の原理を説明する。図7は、「バイパス循環方式」の原理を模式的に示す説明図である。なお、図7には、「バイパス循環方式」の原理の説明の簡明化のために、本発明の攪拌冷却に用いる気流攪拌手段(例えば、サブファン)を省いている。また、前記「バイパス循環方式」による冷却には、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
【0068】
図7(a)及び図7(b)に示すとおり、バイパス循環方式用装置20は、断熱性ハウジング1A内に、処理室1、風量調節手段2、冷却室3、及び送気手段としてのファン4を含む。処理室1は、被冷却物12の搬入用及び搬出用の開閉自在な開口部(図示せず)から、室内11に被冷却物12を装入して配置することができる。冷却室3は、気体導入部から送り込まれる気体(特に、空気)を冷却して、非冷凍冷却の場合には非冷凍温度帯に冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出し、冷凍の場合には冷凍温度帯に冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出することができる。ファン4は、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Xの方向、すなわち処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。
【0069】
風量調節手段2は、処理室1の冷却気体(冷気)導入部の前方(ファン4側)に配置され、矢印Yの方向、すなわち処理室1の内部へ送る風量と、矢印Zの方向、すなわち処理室1へは送らずに、バイパス循環回路Qを経由させて冷却室3へ戻す風量とを分配する機能を有する。図7(a)及び図7(b)では、矢印X,Y,Zの幅によって、冷却気体(冷気)の分配の態様を模式的に示している。すなわち、図7(a)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入され、残りの小部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られる。一方、図7(b)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られ、残りの小部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入される。
【0070】
処理室1の内部へ送る風量と冷却室3へ戻す風量との分配比率(容量)は、特に限定されず、被処理物12の種類や温度、冷却段階などに応じて適宜調整することができる。具体的には、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)は、0:100〜100:0の間で任意に調整することができる。例えば、10:90〜90:10のように両者の比率に極端な差異を設けるか、あるいは、両者をほぼ均等(40:60〜60:40)に分配することもできる。更には、冷却処理を実施する過程で分配比率を連続的もしくは断続的に変化させることもできる。なお、冷却室3から処理室1の内部へ送る冷却気体の風量は、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施することもできる。
【0071】
バイパス循環方式において、前記冷却室3で冷却された気体(冷気)の内、処理室1の内部へ導入された冷却気体(冷気)は、被冷却物12から熱を奪って昇温して暖気となり、排出通路Rを経て冷却室3へ送られる。前記冷却室3に送られた暖気は、冷却及び加湿された後に、前記冷却室3の気体流出部から送出され、前記ファン4の作用により処理室1の方向へ送られ、再び、風量調節手段2によって、矢印Yの方向(すなわち処理室1の内部)へ送る風量と、矢印Zの方向(すなわち処理室1へは送らずに、バイパス循環回路Qを経由させて冷却室3)へ戻す風量とに分配される。風量調節手段2としては、例えば、ダンパーや開閉式のルーバー等を用いることができる。なお、風量調節手段2の駆動源としては、例えば、電気モーターやシリンダーでよい。
【0072】
一方、風量調節手段2によって処理室1への進入を遮断された冷却気体(冷気)は、前記風量調節手段2及び前記ファン4の作用によって形成されるバイパス循環回路Qを経て、前記冷却室3の気体導入部から前記冷却室3の内部に戻る。なお、バイパス循環回路Qが容易に形成されやすいように、通路形成部材(図示せず)を断熱性ハウジング1A内に設けることもできる。前記冷却室3に戻った冷気は、処理室1から送られる暖気と共に、再び冷却及び加湿された後に、前記冷却室3の気体流出部から送出され、前記ファン4の作用により処理室1の方向へ送られるが、その一部が風量調節手段2によって処理室1への進入を遮断され、再び、前記バイパス循環回路Qを経て前記冷却室3に戻る。こうして、前記冷却室3から排出される冷却気体(冷気)は、その一部分がバイパス循環回路Qに沿って常に複数回に亘って循環されるので、前記冷却室3から排出される冷却気体(冷気)は、全体として温度が充分に降下すると共に、加湿も進行する。なお、加湿の機構は後述する。
【0073】
図8は、本発明による攪拌冷却と、前記バイパス循環方式とを組み合わせた場合の原理を模式的に示す説明図である。
バイパス循環方式の攪拌冷却用装置10Aは、処理室1、風量調節手段2、冷却室3、及び主送気手段としてのメインファン4に加えて、処理室1の壁面に気流攪拌手段としてのサブファン68を備える。バイパス循環方式の攪拌冷却用装置10Aによって冷却処理を実施する場合、図8(a)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入され、残りの小部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られる。一方、図8(b)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られ、残りの小部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入される。いずれの態様においても、処理室1の内部へ導入される冷却気体(冷気)の流量及び流速に応じて、サブファン68から送風する攪拌用気流の流量及び流速を調整し、場合により更に偏向角度を調整し、処理室1の内部の冷却気体(冷気)を攪拌し乱流化することができるので、処理室内部の冷却条件を精密に制御すると共に、処理時間の短縮化を実現することができる。
【0074】
次に、本発明による攪拌冷却において、場合により併用することのできる「置換冷却サイクル」の原理を、図9及び図10に沿って説明する。なお、図9及び図10には、「置換冷却サイクル」の原理の説明の簡明化のために、本発明の攪拌冷却に用いる気流攪拌手段(例えば、サブファン)を省いている。また、この場合の冷却にも、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
【0075】
「置換冷却サイクル」は、図9に示す置換モードと、図10に示す冷却モードとからなるサイクルであり、このサイクルを順次繰り返して実施することによって、被冷却物の温度を段階的に低下させ、最終的な目標温度帯までの冷却を効果的に行うことができる。置換モードは、図9(a)に示すとおり、被冷却物12が内部に配置されている処理室1へ、冷気Cを矢印Aの方向に沿って大量に導入し、処理室1の室内11の暖気Hの全体を冷気Cと置き換える工程である。その結果、図9(b)に示すとおり、暖気Hが矢印Bに示すとおり、処理室1の室内11から排除され、処理室1の室内11の雰囲気は冷気Cによって置換される。この置換モードにおいては、処理室1へ案内される冷却気体(冷気)の量が比較的大量になるように、処理室1の気体導入部14の外側に設けた風量調節手段2を調整する。
【0076】
続いて、図10に示す冷却モードを行う。この冷却モードでは、処理室1の外側に設けた風量調節手段2を調整して、処理室1内への冷気Cの導入を遮断するか、あるいは冷気Cの導入を極めて少量に制限する。更には、前記冷却室3から処理室1に冷却気体を供給する送風手段4(図1などを参照)を制御して前記処理室1へ供給される処理用冷却気体の供給量を調整して、冷却モードにおける冷却を実施することができる。送風手段の制御による場合は、風量調節手段2を全開状態にするか、風量調節手段2を使用しないで実施することができる。こうして冷気Cが充填された状態〔図10(a)〕の処理室1の室内11においては、冷気Cが被冷却物12の熱を吸収して昇温し、暖気Hに変化する〔図10(b)〕。この「置換冷却サイクル」を本発明の攪拌冷却と組合せると、この冷却モードにおいて、処理室1内の冷気を連続的又は断続的に攪拌して、処理室1の内部の冷気Cと被冷却物12との熱交換効率を向上させることができる。
【0077】
本発明による攪拌冷却と前記「バイパス循環方式」とを併用する場合において、前記分配比率(Y:Z)、すなわち、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)は、処理室へ供給すべき冷却エネルギーの観点から調整することができる。また、処理室1の内部へ送る冷却気体の風速は、同時に用いる攪拌用気体との混合流の風速によって制御することができる。例えば、蒸散しやすい揮発性成分を含む食品、例えば、香料成分を含む洋菓子類や、酢成分を含む寿司飯類を処理する場合は、混合流の流速を低下させ、充分な冷却エネルギーが供給されるように、冷却気体の風量と風速を制御する。これらの被冷却物では、単に冷気を吹き付けるだけでも味や風味が失われるからである。
【0078】
前記「バイパス循環方式」において、前記分配比率(Y:Z)、すなわち、処理室1の内部へ送る風量(Y)を比較的多くし、混合流の風速を比較的速くして処理時間を短縮することが可能な被冷却物は、表面からの水蒸気蒸発が起きにくい食品、例えば、油で調理したサツマ揚げなどである。サツマ揚げなどは、調理の際に既に水分がかなり減少しているだけでなく、表面が油で覆われているので、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)を、例えば、60:40%〜100:0%(あるいは、60:40%〜90:10%)として冷却処理を行うことができる。なお、表面からの水蒸気蒸発が起きにくいこのような食品においても、凍結温度付近での処理では、中心部と表面との温度差を拡大させないために、前記「置換冷却サイクル」を併用するのが好ましい。
【0079】
一方、冷却時に水蒸気を蒸発したり、解凍時にドリップを発生する可能性がある被冷却物、例えば、生鮮魚介類を冷却する際には、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)を、例えば、30:70%〜60:40%とすることができる。これらの生鮮魚介類も、凍結温度付近での処理では、中心部と表面との温度差を拡大させないために、前記「置換冷却サイクル」を併用するのが好ましい。
【0080】
本発明による攪拌冷却では、前記「置換冷却サイクル」を前記バイパス循環方式と共に併用することもできるし、前記バイパス循環方式とは別に併用することもできる。
【0081】
本発明の攪拌冷却においては、冷却室3で気体を冷却する際に、気体を熱交換器と接触させることによって冷却するか、あるいは気体を水と直接に接触させることによって冷却することができる。気体の冷却用として熱交換器を用いる場合には、冷却コイル中に冷媒(気液の相変化によって冷却を行う)を循環させるか、又は冷却用液体、例えば、ブライン(例えば、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液)や不凍液(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)を循環させて気体を非冷凍温度帯や冷凍温度帯へ冷却することができる。気体を水と直接に接触させる場合には、例えば、5℃以下の冷水を用いて、気体を非冷凍温度帯へ冷却することができる。
【0082】
最初に、気体を水と直接に接触させることによって冷却する冷却室の態様を説明する。この場合、気体は冷却室において非冷凍温度帯へ冷却されるので、処理室内の被処理物は非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)される。図11は、この態様の冷却室3Aの模式的断面図である。図11に示す非冷凍冷却用の冷却室3Aは、冷却室容器37の内部の上方に送出用ファン31を備え、その送出用ファン31の下方に、上部整流板32A、スプレーノズル33、分散材34、及び下部整流板32Bを順に備えている。この冷却室3Aは、暖気(処理室通過気体)又は冷気(循環気体)の導入部に相当する吸気口35を冷却室容器37の下部に有し、生成した冷却気体の送出部に相当する冷気送出口36を冷却室容器37の頂部に有している。また、冷却室容器37の外側には、冷水を生成する冷水製造器41を備えており、この冷水製造器41によって生成した冷水は、循環ポンプ42により給水管44を経て、冷却室容器37の上部に配置したスプレーノズル33に供給される。
【0083】
前記の冷水製造器41としては、冷凍サイクルの蒸発器(冷却器)を使用することも、あるいは通常のチラーを使うこともできる。冷水の温度は、被冷却物の目標冷却温度によって適宜変更することができ、例えば、水温が+2℃〜+3℃の冷却水を生成することができるものが望ましい。水温が+2℃〜+3℃の冷却水を用いると、冷気を前記のバイパス循環回路で複数回に亘って循環させることにより、+5℃程度の冷気を得ることができる。
【0084】
冷却水が、冷却室容器37の上部に配置されたスプレーノズル33から下方に噴出され、一方、冷却室容器37の下部に設けた吸気口35から導入された気流(例えば、暖気H)が上方に上昇するので、図11に示す非冷凍冷却用の冷却室3Aは、向流型である。なお、非冷凍冷却に用いることのできる冷却室は、気流と冷却水とが同じ方向に平行して流れる並流型であることもでき、あるいは、受取口を冷却室容器の上部に設け、排出口を冷却室容器の下部に設けることもできる。更に、スプレーノズルを冷却室容器の下部や側壁部に配置したり、上部、下部、及び側壁部の複数箇所に配置することもできる。また、気流と冷却水との接触方法も、スプレー型に限定されず、冷却水の流水と気流との接触や、気流を冷却水中にバブリングさせることによって行うこともできる。
【0085】
図11に示す冷却室3Aの吸気口35に到達した暖気(処理室通過気体)及び冷気(循環気体)は、冷却室容器37の頂部に配置された送出用ファン31の吸引力によって、吸気口35から冷却室容器37の内部に進入し、更に下部整流板32Bを経由して上方に向かって流れる。下部整流板32B及び上部整流板32Aは、いずれも、気流の偏流を防止し、気流を整流化することができるものであれば、特に限定されない。整流化された気流は、続いて、分散材34の内部を上方に向かって通過する。一方、分散材34の上方に配置されたスプレーノズル33から噴霧される冷水も分散材34の内部を下方に向かって通過する。分散材34は、前記の両者の通過の際に、例えば、両者の滞留時間を延長させたり、広い接触面積を提供するなどによって両者の接触を促進する構造を有し、水による気流の閉塞を起こさない構造を有している。従って、分散材34を通過する際に、冷却水との接触によって、気体は断熱冷却によって冷却される。こうして冷却された気流は、更に上部整流板32Aを通過する際に整流され、冷却室容器37の頂部に配置された送出用ファン31によって、冷気送出口36から外部へ放出される。
【0086】
一方、前記分散材34を通過した水は、気流との接触によって昇温され、冷却室容器37の底部に設けられた貯水部38に導かれ、水位調整器(例えば、ボールタップ)〔図示せず〕によって制御される循環ポンプ42とドレン46とにより、排水口45から冷水製造器41に循環されるか、あるいは排水槽43に送られる。貯水部38の水位は、オーバーフロー管39によっても調整される。冷水製造器41に循環された水は、冷水製造器41において再び冷却された後、スプレーノズル33に供給される。貯水部38に補給水を供給する必要はないが、循環による水の汚れを防止するために、定期的に給水及び排水を行うことが望ましい。
【0087】
次に、冷却室が、水と直接に接触させることによって気体を冷却することのできる手段(又は領域)と、熱交換器と接触させることによって気体を冷却することのできる手段(又は領域)とを備えている態様(複合型又はハイブリッド型)について説明する。この場合、気体は冷却室において非冷凍温度帯へ冷却されると共に、非冷凍温度帯へも冷却されるので、処理室内の被処理物は、非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)された後、更に冷凍温度帯へ冷却(冷凍)される。図12は、この態様の冷却室3Bの模式的断面図である。図12に示す複合型冷却室3Bは、冷却室容器57の内部の上方に気体吸入用ファン51を備え、その気体吸入用ファン51の下に上部整流板52A、スプレーノズル53、凍結防止ヒーター67a、分散材54、及び下部整流板52Bを順に備えている。この冷却室3Bは、暖気H及び冷気Cの導入部に相当する吸気口55を冷却室容器57の頂部に有し、生成した冷却気体の送出部に相当する冷気送出口56を冷却室容器57の下部に有している。また、前記分散材54の内部には、冷却室容器57の外側に設けた冷凍機71と連絡する冷却コイル72を備えている。なお、冷却コイルを含まない分散材の領域と、冷却コイルとを分割し、主に気体と水とを接触させる領域と、気体と冷却コイルとを接触させる領域とを分けることもできる。
【0088】
前記冷凍機71及び前記冷却コイル72は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成しており、前記冷凍機71は冷凍サイクルの圧縮機(コンプレッサー)に相当し、前記冷却コイル72は冷凍サイクルの蒸発器(エバポレーター)に相当する。また、この冷凍サイクルには、高温用膨張弁73と低温用膨張弁74とを備え、更にそれらを切り換える切換用電磁弁75a,75bを備えている。前記高温用膨張弁73は、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する際に使用し、前記低温用膨張弁74は、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を実施する際に使用する。なお、前記高温用膨張弁73及び前記低温用膨張弁74の設定温度は、各々の気体の露点近辺までとすることが望ましい。露点より低温にすると、冷却コイル72で気体中の水分の凝縮や凝集が起こり、気体を乾燥させるからである。なお、図12では、2つの切換用電磁弁75a,75bを用いる態様を示しているが、1つの切換用電磁弁でそれらを共用することもできる。
【0089】
冷却室容器57の底部には水流出口65が設けられており、冷却室容器57の底部の外側には、その水流出口65に連結して貯水槽58が設けられている。なお、水流出口65と貯水槽58とを連結する管には、凍結防止ヒーター67bを設けることが好ましい。貯水槽58に案内された水は、水位調整器(例えば、ボールタップ)〔図示せず〕によって制御される循環ポンプ62と調整弁66とにより、給水管64を経て、スプレーノズル53に循環供給されるか、あるいは排水槽63に送られる。貯水部58の水位は、オーバーフロー管59によっても調整される。
【0090】
図12に示す冷却室3Bを用いると、1つの装置によって、最初に、比較的に高温の被処理物に対して、水を気体冷却に用いる非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施し、引き続いて、冷媒を気体冷却に用いる冷凍温度帯への冷却(冷凍)を連続的に実施することができる。非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する段階では、吸気口55に送られた暖気H及び冷気Cが、冷却室容器57の頂部に配置された気体吸入用ファン51の吸引力によって、吸気口55から冷却室容器57の内部に装入され、更に上部整流板52Aを経由して下方に向かって進行する。上部整流板52A及び下部整流板52Bは、いずれも、気流の偏流を防止し、気流を整流化することができるものであれば、特に限定されない。整流化された気流は、続いて、分散材54の内部を下方に向かって通過する。一方、分散材54の上方に配置されたスプレーノズル53から噴霧される水も、噴霧の直後に気流と並流型で接触した後、分散材54の内部を下方に向かって通過する。従って、分散材54は、前記の両者の通過の際に、例えば、両者の滞留時間を延長させたり、広い接触面積を提供するなどによって両者の接触を促進する構造を有し、水による気流の閉塞を起こさない構造を有している限り、特に限定されない。なお、この分散材54が内部に水滴ブリッジを形成すると、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を実施する際に、氷結晶ブリッジとなって気流通過を妨害することになるので、分散材54としては、内部に水滴ブリッジを形成しないピッチを有する構造であることが好ましい。同様に、前記上部整流板52A及び前記下部整流板52Bも、内部に水滴ブリッジを形成しないピッチを有する構造であることが好ましい。
【0091】
非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する際には、前記分散材54の内部に配置してある冷却コイル72を、非冷凍冷却用に膨張させた高温冷媒が通過しており、前記分散材54の内部を通過する気体流及び水を、それぞれ、断熱冷却によって冷却することができる。こうして、冷却コイル72によって水と共に冷却された気体流は、更に下部整流板52Bを通過する際に整流され、冷却室容器57の下部に配置された冷気送出口56から放出される。一方、前記分散材54を通過した水は、下部整流板52Bを通過した後、冷却室容器57の底部の水流出口65から、貯水槽58に送られ、前記の通り、スプレーノズル53に循環供給されるか、あるいは排水槽63に送られる。
【0092】
図12に示す複合型冷却室3Bは、前記の通り並流型であるが、向流型とすることもできる。あるいは、受取口を冷却室容器の下部に設け、冷気送出口を冷却室容器の頂部に設けることもできる。更に、スプレーノズルを冷却室容器の下部や側壁部に配置したり、上部、下部、及び側壁部の複数箇所に配置することもできる。また、気流と冷却水との接触方法も、スプレー型に限定されず、冷却水の流水と気流との接触や、気流を冷却水中にバブリングさせることによって行うこともできる。
図12に示す複合型冷却室3Bを用いて、本発明による置換冷却サイクルを繰り返して実施することにより、被冷却物を段階的に常温温度帯又は冷蔵温度帯(特には、冷蔵温度帯)に冷却した後に、同じ複合型冷却室3Bを用いて、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を行うことができる。
【0093】
非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)から冷凍温度帯への冷却(冷凍)に切り換える際には、最初に、スプレーノズル53からの噴霧を停止する。冷却室容器57の内部に残存水が存在する可能性があるときは、気体(特に空気)を強制的に送り込んで、残留水を排除することが好ましい。次に、凍結防止ヒーター67a,67bあるいはその他の箇所に設けた凍結防止ヒーターの電源をオンにし、続いて、切換用電磁弁75a,75bにより、高温用膨張弁73から低温用膨張弁74へ切り換え、前記分散材54の内部に配置してある冷却コイル72に、冷凍用に膨張させた低温冷媒を通過させる。この場合の設定温度として、冷却コイルの温度を、例えば、−30℃〜−40℃とすると、この冷却コイルに接触する暖気(H)及び冷気(C)を、例えば、−25℃〜−35℃の冷却気体(特に空気)にすることができる。
【0094】
図12に示す複合型冷却室3Bにおいては、冷却室容器57に設ける冷却コイル72の内部に、冷媒に代えて、冷却用液体(例えば、ブライン又は不凍液)を循環させることもできる。また、前記貯水槽58の内部に、前記冷凍機71と接続する冷却コイル(図示せず)を設け、貯水槽58に充填されている水の冷却に用いることができる。貯水槽58に設ける冷却コイルにも、冷媒又は冷却用液体を循環させることができる。
【0095】
本発明においては、或る1種類の被冷却物に関して、水との直接接触によって冷却用気体を生成する非冷凍冷却と、冷媒又は冷却用液体を循環させる熱交換器(冷却コイル)との接触によって冷却用気体を生成する冷凍とを連続的に実施することができる。また、このような非冷凍冷却処理と冷凍処理とからなるバッチ工程を次々に連続して行うと、冷凍処理の際に蒸発器に着霜した霜を、次のバッチ工程の非冷凍冷却の際に除霜することができる。
【0096】
例えば、図12に示す複合型冷却室3Bを用いる場合、非冷凍冷却処理(気体冷却に水を使用)の終了後に、引き続いて冷凍処理(気体冷却に冷媒又は冷却用液体を使用)を実施すると、冷却コイル72の表面が着霜する。しかしながら、前記冷凍処理の完了後に、処理室から冷却処理物を取り出し、次のバッチ処理用の被冷却物を処理室に装入し、切換用電磁弁75a,75bによって低温用膨張弁74から高温用膨張弁73に切り換え、非冷凍冷却処理(気体冷却に水を使用)を開始すると、複合型冷却室3Bのスプレーノズル53から冷却水が供給される。この冷却水は、冷却コイル72の表面と接触して流れるので、冷却コイル72の表面の霜を洗い流すことができる。霜に由来する溶融水も、冷却水と一体となって、冷却室容器57の底部の水流出口65を経由して貯水槽58に送られ、冷却水として循環することになるので、除霜処理に起因する排水工程も不要である。
【0097】
ちなみに、通常の冷却法では、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を開始する場合でも、冷却効率(主として、冷却時間)を重視して、ほとんどの場合、冷却コイルの温度を最初からマイナスに設定する。例えば、被冷却物の最終品温を−25℃にする場合には、冷却コイルを−35℃以下の温度にする必要があるので、前記被冷却物の最初の温度が+40℃程度の場合でも、冷却コイルの温度を最初から−35℃以下の温度に設定する。この条件下で冷却を開始すると、被冷却物から発生する水蒸気(湯気)や被冷却物内部からの熱により蒸発する水分は、全て冷却コイルの表面に着霜し、冷却用空気も乾燥する。
これに対して、前記態様においては、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)で冷却用気体の冷却に水を使用するので、着霜が発生しない。また、冷凍温度帯への冷却(冷凍)では着霜が発生するが、次のバッチ処理において除霜されるので、通常の冷却法の欠点が解消される。
【0098】
本発明において、被冷却物を収容する処理室に水蒸気トラップ手段を設けて、高温の被冷却物から放出される水蒸気を捕捉することができる。
図13は、処理室1の室内11の上部(天井部)に水蒸気トラップ手段5を有する態様を示す模式的部分断面図である。水蒸気トラップ手段5は、冷却チューブ21、ドレンパン22、及び排水管23を含む。冷却チューブ21は、その外側表面にフィンを有し、冷気との接触で冷却された状態を維持することのできる材料からなることができる。また、冷却チューブ21は、内部に冷却用液体(水)を循環させることもできる。処理室1の室内11に設けた載置棚13の上に配置された被冷却物(図示せず)が、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯などの場合には、その被冷却物から水蒸気を多量に含む気体が矢印Eの方向に上昇し、処理室1の室内11の上部(天井部)に設けた冷却チューブ21と接触する。この接触によって水蒸気が冷却チューブ21に結露を形成して除去されるので、乾燥した気体が矢印Fの方向で処理室1の室内11に戻る。一方、冷却チューブ21の表面上に形成された結露は、水滴となってドレンパン22に落下し、排水管23を経て処理室1の外部へ除去される。
【0099】
前記冷却チューブ21の内部を循環させる冷却用液体(特に、水)としては、例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において、冷却室内で気体と接触させるための冷却水あるいは気体と接触させた後の水を循環させて併用することができる。
【0100】
なお、前記のような水蒸気トラップ手段を備えていない処理室に、被冷却物として、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯を装入すると、盛んに水蒸気(湯気)を発生して、処理室内の低温部(例えば、特に天井周辺)に結露し、水滴となって被処理物に落下する。このような水滴は、冷却処理後の製品にシミとして残り、商品価値を劣化させる原因にもなる。しかしながら、処理室に前記のような水蒸気トラップ手段を設けることにより、前記のような問題の発生を防止することができる。
【0101】
また、通常の冷却法では、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)においても、前記のとおり、冷却コイルの温度を最初からマイナスに設定し、冷却コイルの内部に冷媒(例えば、フロン代替物)を循環させているため、高温の被冷却物(例えば、焼きたてのパンや炊飯料理直後のご飯)をそのまま処理することができず、例えば、自然放冷によって、被冷却物の温度を40℃〜50℃に降下させてから処理室に装入していた。
【0102】
これに対して、本発明においては、冷気の一部分を処理室に送らずに冷却室に戻すバイパス通路を設けて冷気の一部分を循環させ、冷気を複数回に亘って冷水と接触させることにより、冷気の温度を充分に降下させる方法を利用することができるので、高温被冷却物(例えば、焼きたてのパンや炊飯料理直後のご飯)を非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)する場合に、その非冷凍冷却において、冷気生成用の冷水を用いることができ、高温被冷却物をそのまま処理室に装入して冷却処理を開始することができる。また、高温被冷却物を最終的に冷凍温度帯へ冷却(冷凍)する場合でも、本発明による冷凍処理を行う前に、前記非冷凍冷却処理を実施するので、高温被冷却物をそのまま処理室に装入して冷却処理を開始することができる。
【0103】
本発明では、非冷凍温度帯への冷却及び冷凍温度帯への冷却を、冷却室内で熱交換器との接触によって生成した冷却気体を用いて実施することもできる。この場合、冷却室内の熱交換器には、冷媒又は冷却用液体を通過させることができる。本発明においては、冷却室において冷却された気体(冷気)を風量調節手段によって、処理室へ案内される処理用冷却気体と、冷却室に戻す循環用冷却気体とに分割するので、冷却室に戻る気体は、暖気と冷気との混合気体になる。従って、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯のように、水蒸気を多量に発生する高温食品類を最初から処理室に搬入して処理した場合に、処理室から排出される暖気の温度が極端に高くなっても、冷却室に戻るまでに、循環用冷却気体と接触して混合され、混合気体としての温度は充分に低下させることができる。また、循環用冷却気体の比率を高くすることによって、混合気体の温度を充分に低下させることもできる。従って、この態様においても、冷却室内の熱交換器には、ブラインなどの冷却用液体だけでなく、冷媒を循環させることもできる。
【0104】
また、前記のように、非冷凍温度帯への冷却及び冷凍温度帯への冷却を、冷却室内で熱交換器との接触によって生成した冷却気体を用いて実施する態様においては、図13に示す水蒸気トラップ手段5と同様に、処理室内に蓄熱材を設けて、水蒸気を多量に発生する高温食品類(例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯)を最初から処理室に搬入して処理することができる。この場合、処理室内に設けた蓄熱材を予め室温以下に冷却しておくと、処理室内に搬入された高温食品類から発生する高温気流と接触して温度を低下させることができ、その際に生成される水滴を、図13に示す水蒸気トラップ手段5と同様に集めて、排除することができる。なお、或る被処理物への冷却処理(すなわち、非冷凍温度帯への冷却処理又は冷凍温度帯への冷却処理)が終了した後に、次の被処理物を搬入する場合には、前のバッチ処理によって蓄熱材も冷却されているので、次の被処理物(高温食品類)から発生する高温気流の温度を有効に降下させることができる。
【0105】
本発明のバッチ処理用装置は、被冷却物を収容することのできる処理室、冷却室、送気手段、及び風量調節手段が1つの断熱性ハウジング内に収容された態様であるか、あるいは、処理室と冷却室とが別々の断熱性ハウジング内に収容されており、送気手段及び風量調節手段が、処理室収容断熱性ハウジング又は冷却室収容断熱性ハウジングに収容された態様であることができる。
【0106】
また、本発明のバッチ処理用装置は、断熱性ハウジング内において、隔壁によって仕切られた処理ゾーン、冷却ゾーン、及び通気ゾーンを有する態様であることができる。処理ゾーンは、被処理物を収納する領域であり、被処理物の搬入・搬出用の気密性閉鎖可能な開口部を備え、更に場合により、水蒸気トラップ手段を備えていることができる。また、処理ゾーンと通気ゾーンとの間に設ける隔壁は、冷気を受け入れる気体導入部及び暖気を送出する気体流出部を有しており、処理ゾーンと通気ゾーンとを厳密に気密に隔離する構造を有する必要はない。また、冷却ゾーンと通気ゾーンとの間に設ける隔壁は、暖気及び冷気を受け入れる気体導入部、並びに冷気を送出する気体流出部を有しており、冷却ゾーンと通気ゾーンとを厳密に気密に隔離する構造を有する必要はない。
【0107】
冷却ゾーンは、気体導入部から進入する気体を、水と直接に接触させることによって非冷凍温度帯に冷却された気体とするか、あるいは蒸発器と接触させることによって非冷凍温度帯又は冷凍温度帯へ冷却された気体とすることができる。こうして冷却された冷気は、送気手段によって、通気ゾーン内を処理ゾーンに向かって送風される。
【0108】
通気ゾーン内において、冷却ゾーンから処理ゾーンに向かう気流と、逆に、処理ゾーンから冷却ゾーンに向かう気流とが円滑に流れるように、通気ゾーン内に隔壁を設けることができる。この隔壁も、厳密に気密な構造を有する必要はない。
【0109】
本発明で利用することのできる循環工程により冷気Cが加湿される機構を、図9及び図14に沿って説明する。図14は、縦軸の絶対湿度(水蒸気質量/空気質量)と横軸の温度(℃)との関係を示す模式的グラフである。図14において、曲線Sは飽和湿度曲線であり、直線Aは断熱冷却線である。また、twは湿球温度であり、tdは露点である。
【0110】
まず、図9に示す置換モードにおいて、図9(a)に示すように処理室1に進入する冷気Cが、温度「t1」及び絶対湿度「H1」を有するものとすると、冷気Cの状態は図14の交点aで示される。この冷気Cが、図10に示す冷却モードにおいて、被処理物から熱を吸収して昇温し、温度「t2」の暖気Hとなる場合、絶対湿度は事実上変化しないので、図10(b)に示すように温度「t2」及び絶対湿度「H1」を有する暖気Hが処理室1内に形成され、その状態は、図14の交点bに移動する。
【0111】
続いて、温度「t2」及び絶対湿度「H1」を有する暖気Hは、次の置換モードにおいて図9(b)に示すように冷却室3に移動し、冷却室3にて温度「t3」に冷却される。この冷却の際には、後述するように、冷却室3に加湿の水分供給源が存在するので、断熱冷却線Aに沿って加湿され、絶対湿度「H2」となり、図14の交点cに示すように、温度「t3」及び絶対湿度「H2」を有する状態となる。すなわち、温度が低下(t2−t3)すると共に、湿度が上昇(ΔH=H2−H1)する。
【0112】
前記の加湿の供給源は、気体冷却用に水を用いる非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)においては、冷却室容器37のスプレーノズル33から供給される冷水である。また、冷凍温度帯への冷却(冷凍)においては、冷却室容器57の内壁に残留する氷滴である。なお、冷凍温度帯への冷却(冷凍)においては、気体が保有可能な水分量は非常に少なくなる。例えば、+5℃での保有可能水分量(水/乾燥空気)は、5.38×10−3kg/kgであるのに対し、−17℃では、8.17×10−4kg/kgとなり、−39℃では、8.16×10−5kg/kg(=0.08g/kg)となるので、微小な水分が存在するだけで飽和する。この程度の水分供給源としては、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において噴霧された水滴が冷却室容器57の壁面に凍結して形成された氷滴で充分である。また、凍結防止ヒーターの近辺では、氷滴からの昇華が起きており、この水分も水分供給源となる。
【0113】
図14の交点cに示す状態の冷気Cを、図9(b)に示すように、バイパス循環回路を経由させて再び冷却室3に戻すと、更に、断熱冷却線Aに沿って加湿及び冷却され、温度「tw」及び絶対湿度「H3」の交点dに徐々に近づくことになる。
【0114】
以上のように、本発明で利用することのできる「バイパス循環方式」及び「置換冷却サイクル」においては、処理室内で暖気Hを形成することが、気体(特に空気)の余熱過程(図14の点aから点bへの移動)に相当することになり、この余熱過程の存在が、冷気を加湿する主要な要因となる。
【0115】
一般に、冷却コイルの表面温度が露点より低いと、気体中の水分が冷却コイルの表面に凝集してしまい、気体を飽和させることが困難になる。従って、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を2℃〜3℃とするのが理想的であるが、従来法のように、冷却室に暖気を一度だけ通過させるワンパスでは、冷却効率が悪くなるので、一般に、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を10℃程度にしている。これに対して、本発明で利用することのできる「バイパス循環方式」及び「置換冷却サイクル」においては、処理室での温度上昇幅(予熱温度幅)を2℃〜3℃程度の小さい範囲として、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を小さくし、ワンパスでは充分に加湿することができないとしても、前記のバイパス循環工程によって、加湿を繰り返すことにより、ほぼ飽和した冷気を得ることができる。更に、循環工程にかかる負荷は、せいぜいファンによる撹拌熱程度であり、循環工程には実質的に負荷がかからないので、前記の効果を充分に得ることができる。
【0116】
なお、前記の循環工程において、図14に示す交点aと交点bとの温度差(t2−t1)や、置換冷却サイクルにおける置換モード及び冷却モードの継続時間などは、被冷却物の冷却の進行程度によって適宜調節することが好ましい。例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において、被冷却物を高温温度帯から常温温度帯へ冷却する場合と、被冷却物を常温温度帯から冷蔵温度帯へ冷却する場合とを比較すれば、前者の置換冷却サイクルにおける置換モード及び冷却モードの切り換えを短時間で実施することが好ましい。
【0117】
本発明による冷却の完了、例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)の完了は、被処理物の中心部の温度が、目標冷却温度に到達した時点である。本発明においては、「バイパス循環方式」によって冷気の一部のみが処理室に送られ、更に、「置換冷却サイクル」を併用すると、非送風条件下で冷却を実施するため、被処理物の中心部の温度と表面の温度との温度差が小さい状態で維持される。一方、従来法では、通風状態で冷却するものの、表面のみが過度に冷却されて、中心部との温度差が大きくなるだけである。従って、本発明による冷却は、従来法と比較しても、冷却に要する時間に大差はない。
【0118】
本発明による冷却システムは、任意の被冷却物に適用することができる。冷却処理の対象としては、例えば、各種の食品(例えば、加工食品、又は生鮮食品)、植物(特に、観賞用植物の全体又はその一部分)、飼料、又は人若しくは動物の死体を挙げることができる。
また、本発明による冷却システムは、処理対象物を冷却する際に利用することができるだけでなく、冷却された状態での保存にも利用することができる。この保存には、常温温度帯での保存、冷蔵温度帯での保存、及び冷凍温度帯での保存が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明による冷却システムは、種々の冷却対象物について、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明による攪拌冷却の原理を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の本発明装置における処理室の内部のみの状態を模式的に示す斜視図である。
【図3】冷却気体と攪拌用気流との偏向角度を示す説明図である。
【図4】別の態様の本発明装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図5】表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差の変化を模式的に示すグラフである。
【図6】本発明の連続式攪拌冷却の原理を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明で併用することのある「バイパス循環方式」の原理を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明による攪拌冷却と、前記バイパス循環方式とを組み合わせた場合の原理を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明で併用することのある「置換冷却サイクル」の置換モードの原理を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明で併用することのある「置換冷却サイクル」の冷却モードの原理を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明による攪拌冷却において、非冷凍温度帯への冷却に用いることのできる冷却室の一態様の模式的断面図である。
【図12】本発明による攪拌冷却において、冷凍温度帯への冷却に用いることのできる複合型冷却室の一態様の模式的断面図である。
【図13】処理室室内の上部に水蒸気トラップ手段を有する態様を示す模式的部分断面図である。
【図14】縦軸の絶対湿度(水蒸気質量/空気質量)と横軸の温度(℃)との関係を示す模式的グラフである。
【符号の説明】
【0121】
1・・・処理室;1A・・・断熱性ハウジング;2・・・風量調節手段;
3,3A,3B,82・・・冷却室;4・・・ファン;5・・・水蒸気トラップ手段;
6・・・攪拌用気流供給室;7・・・隔壁;8・・・経路;10・・・本発明装置;
10A・・・バイパス循環方式の本発明装置;
11・・・処理室の室内;12,87・・・被冷却物;
13・・・載置トレイ;14・・・気体導入部;
15・・・載置台;21・・・冷却チューブ;22・・・ドレンパン;
23・・・排水管;30・・・連続式装置;
31・・・送出用ファン;32A,52A・・・上部整流板;
32B,52B・・・下部整流板;
33,53・・・スプレーノズル;34,54・・・分散材;
35,55・・・吸気口;36,56・・・冷気送出口;
37,57・・・冷却室容器;38・・・貯水部;
39,59・・・オーバーフロー管;
41・・・冷水製造器;42,62・・・循環ポンプ;
43,63・・・排水槽;44,64・・・給水管;45・・・排水口;
46・・・調整弁;51・・・気体吸入用ファン;
58・・・貯水槽;65・・・水流出口;66・・・調整弁;
67a,67b・・・凍結防止ヒーター;
68・・・サブファン;69・・・補助ファン;
71・・・冷凍機;72・・・冷却コイル;73・・・高温用膨張弁;
74・・・低温用膨張弁;75a,75b・・・切換用電磁弁;
81A,81B,81C,81D・・・処理ゾーン;
83・・・送気パイプ;84・・・ベルトコンベア;
85A,85B,85C,85D・・・冷却気体噴出口;
86A,86B,86C,86D・・・サブファン;
88a,88b,88c・・・間隙仕切板;
88S・・・入口仕切板;88E・・・出口仕切板;
89S・・・被冷却物載置ステーション;89E・・・取出ステーション。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却方法及び冷却装置に関する。本発明においては、被処理食品類を装入して冷却処理を実施する処理室内において、冷却気体を攪拌する攪拌冷却方式により、冷却効率を向上させることができる。また、本発明による攪拌冷却は、バッチ法又は連続法に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
食品類を物流システムに適用させたり、低温貯蔵を行うために、食品類を冷却する技術が利用されている。例えば、加熱調理して調製した食品類(例えば、ご飯やパン類)を室温以下に冷却したり、生鮮食料品(例えば、魚介類や食肉)を冷蔵温度帯や冷凍温度帯へ冷却することが行われており、従来から、冷却装置や冷凍装置が多数提案されている(例えば、特許文献1又は2)。このような冷却は、冷却空気を生成する冷却器、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)、及び被処理食品類を装入して配置する処理室を、密閉された断熱筐体内に設けた冷却装置(又は冷凍装置)によって実施されている。こうした冷却装置においては、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)により冷却器から送り出された冷却空気が処理室を経て再び冷却器に戻り、更に送気手段により処理室へ送り出されるという強制循環方式が採用されている。すなわち、ファンにより送り出された乾燥冷却空気は、処理室内の食品類を冷却して昇温するとともに食品類中の水分を強制蒸発させて多湿となる。この昇温した多湿空気を冷却器に還流させると、昇温多湿空気内の水分が冷却コイルの表面に着霜する。こうして水分が除去された冷却空気が、再び処理室内に送り込まれ、強制的に循環されている。
【0003】
また、一般に、食品類が冷凍する過程では、食品類の温度が低下し、次いで、氷結点(食品類中ではじめて氷結晶が生じる温度)に至ると水溶液部分に氷結晶が生じ、最終的には凍結する。多くの生鮮食品の氷結点は−1℃であり、−5℃で氷結率は約80%に達し、硬度が増加して物理的に凍結した状態になる。冷凍食品の場合は、一般に、−18℃以下の凍結状態まで冷却させるが、従来の凍結方法では、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)を速く通過させることによって、微小氷結晶を均質に生成させ、氷結晶が肥大化しないようにすることが重要とされてきた。これは、氷結晶が大きくなると、食品類の組織に障害を与え、品質低下の原因になるからである。こうした急速冷却を実現するため、従来法では、冷却処理の最初の段階から、氷点下に冷却した気体を大量に、しかも高速流として処理室に供給していた。
【0004】
このような従来の冷却法には、種々の欠点が存在した。まず第1に、処理室内に吹き込まれる空気は常に乾燥した冷却空気であり、しかも高速の空気流として移動しながら食品類表面と接触するため、食品類の表面に凍結が生じる前に表面から水分が強制蒸発させられ、冷却中に食品類が乾燥してしまう。また、凍結後も乾燥冷気の気流により氷面から水分が昇華によって取り去られてしまう。すなわち、循環空気流が食品類中の水分を抜き取って、冷却コイルの表面に移動凝固させるメカニズムになっている。こうして凍結温度帯にまで冷却された食品類を解凍すると、冷凍以前の風味が損なわれてしまう。
【0005】
従来法の第2の欠点は、処理室内の食品類を冷却空気流によって冷却するため、冷却空気流が食品類の表面と接触する際に、水分を抜き取りやすいだけでなく、食品類の表面を過度に冷却された状態にし、食品類の中心部との温度差を拡大してしまうことである。表面が過度に冷却されて氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)に到達すると、表面部に微小氷結晶が生成する。しかしながら、中心部の温度は依然として高温状態に維持されているので、中心部と表面との温度差が非常に大きくなり、中心部から表面へ大量の熱が伝導され、微小氷結晶を肥大化させる要因となる。食品類の細胞内で氷結晶の肥大化が起きると、細胞が破裂され、食品類が質的に劣化してしまう。
【0006】
従来法の第3の欠点は、冷却空気流が処理室の内部を一方向に規則的に流れることである。すなわち、被処理食品類を装入して配置する処理室では、被処理食品類(被冷却物)を多数のトレイ上に載せ、多数のトレイは棚段に平行に配置されている。冷気は、それらのトレイ間(すなわち、棚段間)を一方向に上流側から下流側に規則的に流れ、各被処理食品類と接触して冷却した後、天井などに設けたダクトから回収される。しかしながら、一方向の規則的な冷気流がトレイ上の被処理食品類と接触するだけなので、被処理食品類の表面において、例えば、冷気流の上流側の半分の側面と、その反対側(下流側:冷気流の影に相当する側)の半分の側面とでは、冷気流との接触状態が異なり、被処理食品類の表面の層流境膜の厚さに差異が生じる。すなわち、下流側半分の側面の層流境膜は、上流側半分の側面の層流境膜よりも、常に厚くなり、熱交換効率が不均一になるので、全体としての総括伝熱係数も低下する。これを防止する観点からも、従来法では、一般に、冷気流の速度を速くして、層流境膜の厚さを全体的に薄くさせることによって総括伝熱係数の低下を防止している。
【0007】
しかしながら、被処理食品類(被冷却物)において、特に、冷気流の上流側半分の側面が更に高速の冷気流に直接曝されることになるので、食品類表面が急速に冷却された状態になる。このような場合、食品類表面が冷却されても食品類中心部は依然として高温状態にあり、食品類中心部と食品類表面との温度差が次第に拡大してしまう。このような温度差拡大状態で、表面が氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)に到達すると、表面部では微小氷結晶が生成するのに対し、中心部の温度は依然として高温状態に維持されているので、前記と同様の問題が発生する。また、被処理食品類(被冷却物)の表面が高速冷気流と接触すると、表面乾燥が進んでヒビ割れが発生したり、被処理食品類(被冷却物)表面に付着させた添加物(例えば、ゴマ粒)が脱離するなどの欠点もあった。
【0008】
前記の総括伝熱係数を向上させる手段として、過度に冷却された気体を高速で供給する手段とは別に、処理室内の気流を乱流化させる技術も提案されている。例えば、四角形平板状の各棚段の四周辺にそれぞれ側板を立設し、一辺に設ける側板の高さを他の三辺の側板の高さよりも高くし、しかも上部に隣接して設ける棚段の底面とほぼ接触する高さとすることにより、1つの面を密封状に遮断する手法が提案されており、この手法によれば、遮断面とは反対側から導入される冷気流が遮断面にて反射し、この反射流と入射流との衝突によって乱流が発生するとしており、更に冷気導入側にも低い側板が存在するので、カルマン渦的乱流も発生するとされている(特許文献3)。しかしながら、この手法では、反射流と入射流との衝突などによって乱流を発生させることが必要になるので、入射流冷気の気流速度を非常に速くする必要があり、従って、発生するとされている乱流それ自体の流速も当然に速くなる。高速冷気流が被処理食品類の表面と接触することになるので、食品類表面が急速に冷却された状態になり、前記と同様の問題が発生する。更に、入射流冷気の気流速度が非常に速くなるので、大量の冷気が冷却室と処理室とを高速で循環することになることから、大量の乾燥冷気が処理室において被処理食品類と接触して、過度の水分除去が進行する。
【0009】
また、処理室に向かって吹き付けた送風冷気流が処理室の壁面から反射され、その反射流と送風冷気流との衝突によって乱流を発生させ、急速冷凍させる技術も提案されている(特許文献4)。しかしながら、この技術も、反射流と入射流との衝突によって乱流を発生させるため、入射流冷気の気流速度を或る程度まで速く維持する必要があり、乱流それ自体の流速も比較的速くなるので、前記と全く同様の問題がある。
【0010】
一方、連続方式によって熱交換効率を向上させる方法も提案されている。すなわち、ベルトコンベヤなどの移送手段によって被冷却物を冷却処理室へ連続的に次々に装入し、冷却処理室において被冷却物に冷却気体を向流又は平行流で接触させる方法である。また、こうした連続式冷却方法の熱交換効率を更に向上させる方法として、被冷却物と冷却気体との接触時間を長くするために、流路に仕切板(邪魔板)を設ける方法も提案されている(特許文献5)。しかしながら、これらの連続式方法も、比較的に高速の冷気流を被冷却物に衝突させることを基本としており、前記のバッチ式方法の欠点を根本的に解消する手法は提案されていない。
【0011】
【特許文献1】特開昭58−136962号公報
【特許文献2】特開2003−148853号公報
【特許文献3】特開平6−273030号公報
【特許文献4】特開平10−311649号公報
【特許文献5】特公昭52−1497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、処理室に送る乾燥冷却気体の供給量を減少(すなわち、乾燥冷却気体の供給速度を低下)させて、処理室内部において被処理物(被処理食品類)と接触する冷気の温度と湿度とを高く維持することができると共に、冷却気流を一方向にのみ規則的に流すことがなく、バッチ法又は連続法のいずれにも適用可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明により、
被冷却物を収容する処理室に冷却室から冷却気体を供給することによって被冷却物を冷却する冷却方法であって、
前記処理室内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施することを特徴とする、前記冷却方法によって解決することができる。
【0014】
本発明の冷却方法の好ましい態様においては、前記冷却室から供給されて前記処理室内部を流れている冷却気体を攪拌するか、又は前記冷却室から供給された後に前記処理室内部に滞留している冷却気体を攪拌する。
本発明の冷却方法の別の好ましい態様においては、攪拌用気流を複数の方向から連続的又は断続的に送風する。
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、攪拌用気流の送風方向を連続的又は断続的に変化させる。
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、バッチ法で実施する。
【0015】
本発明の冷却方法の更に別の好ましい態様においては、前記冷却室から前記処理室への冷却気体の供給制御を、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施するか、あるいは、前記処理室の気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理室へ案内される処理用冷却気体と、前記処理室を通過せずに前記冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割することによって実施する。
前記態様においては、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理室内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理室内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、
(1)被冷却物を収容することのできる処理室、
(2)気体を冷却することのできる冷却室、
(3)前記冷却室で冷却された気体を前記処理室へ供給することのできる送気手段、及び
(4)前記処理室内に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段
を有することを特徴とする、冷却装置にも関する。
【0017】
本発明の冷却装置の好ましい態様においては、複数の攪拌手段を備える。
本発明の冷却装置の別の好ましい態様においては、攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える。
【0018】
更に、本発明は、
冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で前記被冷却物を徐々に冷却する連続式冷却方法であって、
各処理ゾーン内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することによって、前記処理室内部の気体の攪拌下で冷却を実施することを特徴とする、前記連続式冷却方法にも関する。
【0019】
本発明の連続式冷却方法の好ましい態様においては、各処理ゾーンに供給される冷却気体が、共通又は別異の冷却室において冷却された気体である。
本発明の連続式冷却方法の別の好ましい態様においては、低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに冷却気体の少なくとも一部として供給する。
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、高温帯処理ゾーン、中温帯処理ゾーン、低温帯処理ゾーン、及び超低温帯処理ゾーンを含む。
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、移送手段の表面上に載置された被冷却物に対して上方から冷却気体を供給し、一方又は両方の側方から攪拌用気体を送風する。
【0020】
本発明の連続式冷却方法の更に別の好ましい態様においては、少なくとも1つの処理ゾーンに関し、その処理ゾーンへ供給される冷却気体を、前記処理ゾーンの気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体と、前記処理ゾーンを通過せずに冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割する。
前記態様においては、少なくとも1つの処理ゾーンに関し、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理ゾーン内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理ゾーン内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、
(1)相互に熱的に遮断関係にあり、被冷却物を順々に収容することのできる複数の処理ゾーン、
(2)気体を冷却することのできる1又は複数の冷却室、
(3)1又は複数の冷却室で冷却された気体を前記処理ゾーンへそれぞれ供給することのできる送気手段、
(4)複数の処理ゾーンの少なくとも1つの処理ゾーン内部に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段、
(5)被冷却物を複数の処理ゾーンに順々に移動させることのできる移送手段、及び
(6)複数の処理ゾーンを、少なくともそれぞれの冷却処理中に、相互に熱的に遮断関係にすることのできる遮熱手段
を有することを特徴とする、連続式冷却装置にも関する。
【0022】
本発明の連続式冷却装置の好ましい態様においては、攪拌手段を備える処理ゾーンが複数の攪拌手段を備える。
本発明の連続式冷却装置の別の好ましい態様においては、攪拌手段を備える処理ゾーンが攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える。
【0023】
本明細書において、「冷凍温度帯」とは、被処理物を凍結させる温度領域、すなわち、0℃以下の温度領域を意味する。具体的には、氷結点(食品類中ではじめて氷結晶が生じる温度)以下の凍結状態を含み、当然、−18℃以下の凍結状態も含む。また、「非冷凍温度帯」とは、被処理物を凍結させない温度領域、すなわち、0℃より高い温度領域を意味し、例えば、常温温度帯、及び冷蔵温度帯が含まれる。なお、「冷却」は、一般的に冷やすこと、例えば、被処理物の温度や冷却に用いる気体(冷却気体)の温度を低下させることを広く意味し、「非冷凍温度帯」への「冷却」及び「冷凍温度帯」への「冷却」の両方を含む。更に、「冷凍温度帯」への「冷却」を単に「冷凍」と称することがあり、本明細書の以下の説明においては、簡便化の目的で「非冷凍温度帯への冷却」を、単に「非冷凍冷却」と称することがある。
【0024】
また、本明細書において、「冷気」(又は、冷却気体)とは、冷却室において冷却された気体(特に、空気)を意味し、「暖気」とは、処理室内で昇温された気体(特に、空気)、例えば、本発明による攪拌冷却によって処理室内で昇温された気体を意味する。
更に、本明細書においては、本発明による冷却方法及び冷凍方法、並びに本発明による冷却装置及び冷凍装置を、統括的に、「本発明の冷却システム」と称することがある。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、処理室へ供給する冷却気体の量を減少させ(すなわち、冷却気体の流速を低下させ)、処理室内で被冷却物と接触する冷却気体の温度及び湿度を高い状態に維持して、大量の高速乾燥冷却気体と被処理物との接触を防止することにより、冷却品質を向上することを目的としており、冷却気体の流速低下による総括伝熱係数の低下を回避するために、処理室において攪拌気流(すなわち、乱流)を発生させる。言い換えると、本発明においては、処理室において攪拌気流(すなわち、乱流)を発生させて処理室内の冷却気体の流速を通常の流速に維持することができるので、処理室から供給される冷却気体の量を減少(すなわち、冷却気体の流速を低下)させることが可能になり、処理室内で被冷却物と接触する冷却気体の温度及び湿度を高い状態に維持することができ、その結果、従来技術のように、大量の高速乾燥冷却気体と被処理物とを接触させることを原因とする種々の欠点を防止することができる。
【0026】
具体的に、本発明においては、冷却室から処理室へ冷却気体を供給する送気手段とは別に、例えば、処理室の内部に第2の送気手段(例えば、1又は複数の送気ファン及び/又は吸気ファン)を設け、その第2送気手段によって、処理室内部の冷却気体が攪拌されて循環する。従って、冷却に必要な冷却エネルギーは冷却気体によって冷却室から処理室へ供給され、処理室内の冷気が第2送気手段によって攪拌されるので、被処理食品類の表面に衝突する気流の方向が変化し、被処理食品類表面のそれぞれの地点での層流境膜の厚さが気流の方向変化に伴って経時的に変化することになり、総括伝熱係数が向上する。
【0027】
また、冷却気体の流れが一方向の規則的な場合と比較すると、本発明の攪拌冷却方式では総括伝熱係数が向上するので、被処理食品類表面と接触する冷却気体の流速を低下させても、一方向の規則的な場合の総括伝熱係数と同レベルの総括伝熱係数を維持することが可能になり、その結果、氷結晶生成帯での氷結晶の肥大化を防止したり、表面乾燥によるヒビ割れなどを防止することができる。
【0028】
更に、本発明による攪拌冷却を、後述するように、バイパス循環方式及び/又は置換冷却サイクルと併用することによって、効果的な冷却を実施することができる。更にまた、本発明の攪拌冷却は、バッチ法だけでなく、連続法にも有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に沿って本発明の代表的な態様を説明する。なお、本発明による冷却には、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
最初に、本発明による攪拌冷却の原理を、特にバッチ法に関して説明する。
図1は、本発明の原理を模式的に示す平面図である。図1に示すとおり、本発明装置10は、断熱性ハウジング1A内に、通常の冷却装置と同様に、処理室1、冷却室3、及び送気手段としてのメインファン4を含む。処理室1は、被冷却物の搬入用及び搬出用の開閉自在な開口部(図示せず)から、その室内11に被冷却物を装入して配置することができる。冷却室3は、気体導入部から送り込まれる気体(特に、空気)を冷却して、冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出することができる。メインファン4は、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Mの方向、すなわち処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。なお、図1に示すメインファン4に替えて、吸気ファンを処理室1の下流側に設け、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Mの方向、すなわち処理室1の方向へ供給することもできる。
【0030】
本発明の攪拌冷却においては、図1に示すよう、処理室1の室内に、気流攪拌手段としてのサブファン68を設け、矢印Sの方向へ攪拌用気流を送り出す。攪拌用気体の流れ方向(矢印Sの方向)は、メインファン4から処理室1へ供給される冷却気体(冷気)の流れ方向(矢印Mの方向)に対して偏向しており、例えば、図1に示すように直交方向(偏向角度が90°)である。主送気手段としてのメインファン4の送気角度は変更可能である必要はなく、一般的に一定であるが、気流攪拌手段としてのサブファン68の送気角度は変更可能であることが好ましく、例えば、図1において破線で示すサブファン68’のように、送気角度を変更することができる。更に、サブファン68,68’は、処理室1の室内の気体(特に、空気)を矢印Sの方向へ循環させて攪拌する送気ファンであることができるだけでなく、矢印Sの逆方向へ吸い取って攪拌する吸気ファンであることもできる。あるいは断続的に送気と吸気を変換する送気・吸気ファンであることもできる。
【0031】
図2は、図1の本発明装置10における処理室1の内部のみの状態を模式的に示す斜視図であり、処理室1の内部に挿入した載置台15に取り付けた複数の載置トレイ13上に、複数の被冷却物(特に、被処理食品類)12が載置されている。前記メインファン4により処理室1へ供給される冷却気体(冷気)、及び前記サブファン68により処理室1へ送風される攪拌用気流はいずれも、載置トレイ13の載置表面と平行方向に流れ、しかも、冷却気体と攪拌用気流とは相互に流れ方向が直交するので、処理室1の内部において、冷却気体の流れ方向が変化する。この変化により、一定方向に流れる冷却気体の下流側半分に存在する影が実質的に消失する。
【0032】
本明細書において、前記冷却気体と前記攪拌用気流とが交差する角度を偏向角度と称する。偏向角度は、図3に示すとおり、前記冷却気体の流れ方向を示す直線Mに対して、前記攪拌用気流の流れ方向を示す直線Sが交差する点Pに形成される角度θを意味する。なお、前記冷却気体の流れ方向(直線M)とは、前記処理室内部において前記冷却気体のみを流し、攪拌用気流を流していない場合の前記冷却気体の流れ方向であり、前記処理室内部において前記冷却気体が流れておらず単に滞留している場合は、その滞留前に流れていた前記冷却気体の流れ方向を意味する。また、冷却気体及び攪拌用気流の流れが一方向ではなく、例えば送気用ファンを中心として放射状に拡がり、円錐状の流れを形成する場合は、その円錐形の軸線方向を流れ方向とする。本発明において、偏向角度は、好ましくは10〜170°、より好ましくは45〜135°である。偏向角度が10°未満になると攪拌効率が不充分になり、170°を超えると、冷却気体の流れと攪拌用気流とが正面衝突し、処理室内の気流の排気が円滑に行われなくなる。偏向角度を連続的に又は不連続的に変化させて、前記攪拌用気流を流すこともできる。
【0033】
本発明の攪拌冷却方式では、処理室の両側にサブファンを相互に対向させて配置することができ、更に、処理室の1又は複数の壁面に攪拌用気流供給室を設け、その中にサブファンを配置することもできる。図4は、こうした態様の本発明装置10’の構造を模式的に示す平面図である。すなわち、本発明装置10’は、図1に示す本発明装置10と同様に、断熱性ハウジング1A内に、処理室1、冷却室3、及び主送気手段としてのメインファン4を備え、更に、冷却室3の両側に2つの攪拌用気流供給室6,6Aを含み、それら攪拌用気流供給室6,6A内部にサブファン68,68Aを備えている。
【0034】
2つの攪拌用気流供給室6,6Aは、それぞれその室内6,6Aの気体(特に、空気)を、気流攪拌手段としてのサブファン68,68Aにより処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。攪拌用気流供給室6,6Aの室内の気体(特に、空気)は、例えば、前記冷却室3から供給することができ、攪拌用気流によって冷却エネルギーを補充することができる。なお、図4に示すように、場合により、補助ファン69,69Aを設け、冷却室3から攪拌用気流供給室6,6Aへの冷気を一層円滑に供給することもできる。メインファン4から処理室1へ供給される冷却気体(冷気)の流れ方向に対して、サブファン68,68Aにより処理室1へ送風される攪拌用気体の流れ方向は、偏向しており、例えば、図1に示すように直交方向(偏向角度が90°)である。気流攪拌手段としてのサブファン68,68Aの送風角度は変更可能であることが好ましく、例えば、図4において破線で示すサブファン68’,68A’のように、送風角度を変更することができる。
【0035】
図4に示す態様の本発明装置10’においては、対向する2つの攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ攪拌用気流を送風する際に、攪拌用気流が相互に正面から衝突する方向から(すなわち、180°反対方向から)、同時に送風が行われないように制御することが好ましい。例えば、図4に示すように、攪拌用気流供給室6から矢印S1方向へ冷却気体(冷気)の流れ方向に対して直角に送風し、攪拌用気流供給室6Aから矢印S2方向へ冷却気体(冷気)の流れ方向に対して直角に送風する場合は、両者を同時に送風せず、交互に断続的に送風することが好ましい。攪拌用気流供給室6からの送風と攪拌用気流供給室6Aからの送風とを同時に行う場合は、例えば、図4に示すように、攪拌用気流供給室6から矢印S1又は矢印S3の方向へ送風し、攪拌用気流供給室6Aから矢印S4方向へ送風することが好ましい。
【0036】
図4に示す実施態様では、冷却室3の両側に設けた攪拌用気流供給室6,6Aの内部にサブファン68,68Aを備え、この攪拌用気流供給室6,6Aへは冷却室3から冷却気体が供給されるので、主送気手段としてのメインファン4の運転を停止するか、あるいは主送気手段としてのメインファン4それ自体を取り外しても、冷却エネルギーを攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ供給することができる。冷却気体をメインファン4から処理室1の室内に供給する場合は、一般的に処理室1の下流側壁面に排出口が設けられているので、メインファン4からの冷却気体の供給を停止し、冷却室3の両壁面に設けた攪拌用気流供給室6,6Aから処理室1へ冷却気体を供給すると、攪拌用気流供給室6,6Aから排出口までの冷却気体の流路が長くなり、冷却気体の滞留時間が長くなるので、冷却エネルギーを有効に活用することができる。
【0037】
本発明の攪拌冷却では、処理室内において攪拌用気流の送風を連続的又は断続的に行うことができる。例えば、冷却気体(冷気)を前記冷却室から前記処理室へ供給し、その供給を停止した後、前記処理室内部において、気流攪拌手段としてのサブファンを作動し、滞留している冷却気体、すなわち、前記処理室内部の冷却気体(冷気)を攪拌させることができる。一方、冷却気体(冷気)が前記冷却室から前記処理室へ送風されている場合には、攪拌用気流を連続的に送風することも、あるいは断続的に送風することもできる。
【0038】
本発明の攪拌冷却においては、前記冷却室から前記処理室へ供給され、前記処理室内部において流れている冷却気体に対して、前記攪拌用気流を偏向方向から送風するか、あるいは、前記冷却室から前記処理室へ供給された後、前記処理室内部において滞留している冷却気体に対して前記攪拌用気流を送風することができる。前記攪拌用気流の流量及び流速は、前記攪拌用気流の送風によって形成される混合流の流速に則して制御することが好ましい。
【0039】
処理室において被処理物を冷却する冷却エネルギーは、冷却室から処理室の内部へ供給される冷却気体から提供されるので、前記攪拌用気流は冷却エネルギーを供給する必要はなく、従って、気流攪拌手段は、処理室内の気体を循環させて攪拌させるだけで充分である。しかしながら、処理室以外から、攪拌用気流の一部又は全部を供給することもでき、その場合は、供給される前記攪拌用気流によって処理室内の冷気が上昇することのないようにするのが重要であり、攪拌用気流を冷却エネルギー供給用としても使用することもできる。すなわち、前記攪拌用気流は、図1に示すように、処理室内の冷気を循環させて使用するか、あるいは、図4に示すように、補助ファン69により前記冷却室3から供給される冷気を使用することができる。
【0040】
本発明による攪拌冷却は、通常の冷却方法、すなわち、冷却室において冷却された気体を、送気手段(例えば、送気用ファン又は吸気用ファン)によって、被冷却物を収容する処理室へ送風することによって前記被冷却物を冷却する任意の公知方法に適用することができる。なお、送気手段として送気用ファンを用いる場合には、送気用ファンを冷却室と処理室との間に配置し、送気手段として吸気用ファンを用いる場合には、吸気用ファンを処理室と冷却室との間に配置することができる。
【0041】
本発明の攪拌冷却においては、処理室内で発生する攪拌混合流の流速の上限を、被冷却物(被処理食品類)の種類に応じて制御することが好ましい。具体的には、被冷却物(被処理食品類)の種類に応じて、攪拌混合流の流速の上限を、表面温度の変化に応じて変化させることが好ましい。例えば、被冷却物(被処理食品類)の表面温度が5℃〜−5℃の間での冷却を実施する際には、前記冷却室から前記処理室の内部へ供給される冷却気体と、その冷却気体に送風される攪拌用気流とによって前記処理室内部に形成される混合流の流速は、被冷却物の表面に対して、好ましくは3m/s以下、より好ましくは1m/s以下、最も好ましくは0.5m/s以下である。前記混合流の流速が3m/sを超えると、表面乾燥が進んでヒビ割れなどが発生したり、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度と中心温度との温度差が拡大し、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)において微小氷結晶を肥大化させる要因となる。前記混合流の流速の下限は特に限定されないが、冷却処理時間を長期化させないように、前記上限に近づけて処理することが好ましい。
【0042】
本発明の攪拌冷却方法においては、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が5℃〜−5℃の間での冷却を実施する際に、被冷却物の表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差(Ta−Ts)を好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、最も好ましくは10℃以下に維持しながら冷却を実施することができる。例えば、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が約70℃〜約20℃における冷却処理では、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面からの水蒸気の蒸散は少ないが、表面乾燥やヒビ割れが発生しやすいので、前記温度差(Ta−Ts)を拡大させないために、前記冷却室から前記処理室の内部へ供給される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を減少させる。供給量減少に伴う熱交換比率の低下は、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の送風)によって防止することができる。なお、表面乾燥やヒビ割れを防止するために、後述するように、飽和冷却気体を供給することが好ましい。
【0043】
また、被処理物(例えば、被処理食品類)の表面温度が約20℃〜約−5℃における冷却処理では、氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)において微小氷結晶を肥大化させないために、前記温度差(Ta−Ts)を小さい状態に維持することが重要である。本発明の攪拌冷却によれば、攪拌用気流の送風により、処理室内の気体を攪拌することができるので、前記冷却室から前記処理室へ大量の乾燥冷却気体を供給することなく、総括伝熱係数を高く維持することができる。
【0044】
なお、約70℃ないし約80℃より高温下での冷却処理では、前記冷却室から前記処理室の内部へ提供される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を比較的に増やし、更に、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の供給)を併用することによって、熱交換効率を一層向上させることができる。同様に、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理も、前記冷却室から前記処理室の内部へ提供される冷却気体の供給量(冷却エネルギーの供給量)を比較的に増やし、更に、本発明による攪拌冷却(すなわち、攪拌用気流の供給)を併用することによって、熱交換効率を一層向上させることができる。
【0045】
本発明の攪拌冷却方法では、冷却処理を実施する温度領域に応じて、被冷却物の表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差(Ta−Ts)を変化させて冷却処理を有効に実施することができる。例えば、前記温度差(Ta−Ts)に関し、被冷却物表面温度が高温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃より高温での冷却処理)での温度差Th、中温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃以下から約20℃での冷却処理)での温度差Tm、低温領域冷却処理(例えば、約20℃ないし約−5℃ないし約−8℃での冷却処理)での温度差Tn、及び超低温領域冷却処理(例えば、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理)での温度差Tvを種々に制御して冷却処理を実施することができる。一般的には、以下の条件(1):
Th>Tm,Tn,Tv (1)
を満たすように設定する。例えば、以下の条件(2):
Th>Tv>Tn>Tm (2)
を満たすように設定し、冷却工程全体での熱交換効率を高く維持することができる。
【0046】
図5は、前記条件(2)を模式的にグラフ化した説明図である。図5に示すように、被冷却物の表面温度(Ta)を徐々に降下させる際に、処理室の室内温度(Ts)をその被冷却物の表面温度(Ta)に沿って制御することが好ましい。こうした制御を実施する際に、冷却室から処理室へ送る冷却気体の温度は、例えば、図5の線C1に示すように、一定であることができる。この場合、処理室の室内温度(Ts)の制御は、冷却気体の装入量や装入速度と、攪拌用気体の流速などとを制御することによって行うことができる。また、冷却室から処理室へ送る冷却気体の温度は、例えば、図5の線C2に示すように、一定の割合で降下させることも、あるいは図5の線C3に示すように、一定温度の冷却気体と一定割合で降下する冷却気体とを組み合わせて使用することもできる。これらの場合も、処理室の室内温度(Ts)の制御は、冷却気体の装入量や装入速度と、攪拌用気体の流速などとを制御することによって行うことができる。
【0047】
本発明の攪拌冷却では、被冷却物の種類に応じて、高温領域冷却処理での温度差Th、中温領域冷却処理での温度差Tm、低温領域冷却処理での温度差Tn、及び超低温領域冷却処理での温度差Tvをそれぞれ具体的に設定すると共に、図5に示す表面温度曲線Ta及び室内温度曲線Tsを設定して、被処理物を高温から超低温まで効率的に実施することができる。例えば、特定の被冷却物に関してパイロット試験を実施して、前記温度差Th、Tm、Tn、及びTvの具体的数値をそれぞれ決定し、更に表面温度曲線Ta及び室内温度曲線Tsの変化を具体的に設定してプログラム化し、そのプログラムに沿って、冷却室から処理室への冷却気体の供給量や流速と、攪拌用気流の送風量、流速及び又は偏向角度とを制御して自動冷却処理を実施することができる。
【0048】
本発明の攪拌冷却においては、処理室内の温度制御は、基本的に、冷却室から処理室に供給される冷却気体の量の増減によって実施するのが好ましい。すなわち、処理室内で生成した暖気を冷却室内の熱交換器に接触させ、冷却気体の温度を低下させることにより、処理室内の温度制御を行うことを基本とするものではない。これは、冷却気体を熱交換器と接触させると、除湿が起こり、被冷却物に対して悪影響を与えることになるからである。
【0049】
次に、本発明の攪拌冷却を連続法に適用する場合の原理を、図6に沿って説明する。
図6は、本発明の連続式攪拌冷却の原理を模式的に示す側面図である。図6に示すとおり、本発明の連続式装置30は、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81D、冷却室82、送気手段としての送気パイプ83、及び移送手段としてのベルトコンベア84を含み、各処理ゾーンには、それぞれの天井部に冷却気体の噴出口85A,85B,85C,85Dを備え、それぞれの側壁面に気流攪拌手段としてのサブファン86A,86B,86C,86Dを備えている。なお、冷却気体の噴出口やサブファンの設置位置は、冷却気体の攪拌が可能である限り制限されない。また、被冷却物87は、ベルトコンベア84によって矢印Tの方向に、処理ゾーン81A,81B,81C,81Dへ順に移送される。
【0050】
図6には、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dに対して共通の冷却室82を設けた態様を示したが、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dのそれぞれに専用冷却室を設け、それらの専用冷却室で生成した冷却気体を、それぞれの専用送気パイプを介して各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dへ送ることもできる。あるいは、複数の冷却室の合計数を処理ゾーンの合計数よりも少なくし、1つの冷却室で作成された冷却気体を2以上の処理ゾーンに送ることもできる。
【0051】
図6に示す本発明の連続式装置30では、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dの間に間隙遮熱手段88a,88b,88cを備えて、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dを相互に熱的に遮断関係に維持することができる。また、最初の処理ゾーン81Aの入口には入口遮熱手段88Sを備え、最後の処理ゾーン81Dの出口には出口遮熱手段88Eを備えている。各遮熱手段としては、任意の公知手段を用いることができ、例えば、図6に示すように、上部仕切板部と下部エアカーテン部との組合せからなることができる。あるいは、各遮熱手段の全体を上下動可能な仕切板とするか、又はエアカーテンとすることもできる。
【0052】
間隙遮熱手段、入口遮熱手段、及び出口遮熱手段は、被冷却物87がベルトコンベア84によって移動する際に、下部エアカーテン部(あるいは、遮熱手段全体としてのエアカーテン)のエア噴出を停止しても、あるいは停止せずに噴出量を減少させても、又は停止も噴出量減少も行わなくてもよい。各遮熱手段の全体を上下動可能な仕切板とする場合は、被冷却物87がベルトコンベア84によって移動する際に、各仕切板を上方に上昇させ、各仕切板と被冷却物87とが接触しないようにする。このように熱的に遮断された複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dの室内で、それぞれ独立の冷却条件下で、本発明による攪拌冷却を実施することができる。
【0053】
図6に示す連続式装置30を用いて本発明の連続式攪拌冷却を実施する場合には、被冷却物載置ステーション89Sにおいて、矢印Tの方向へ移動しているベルトコンベア84の上に被冷却物87を順々に載置する。ベルトコンベア84は、矢印Tの方向に連続的に移動しているので、被冷却物87は、入口遮熱手段88Sを通過した後、最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入される。最初の処理ゾーン81Aでは、例えば、高温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃より高温での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Aでの冷却条件は、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0054】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Aを通過する間に、高温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88aを通過して第2の処理ゾーン81Bの室内に挿入される。この第2処理ゾーン81Bを通過する間に、例えば、中温領域冷却処理(例えば、約50℃ないし約80℃以下から約20℃での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Bでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0055】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Bを通過する間に、中温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88bを通過して第3の処理ゾーン81Cの室内に挿入される。この第3処理ゾーン81Cを通過する間に、例えば、低温領域冷却処理(例えば、約20℃ないし約−5℃ないし約−8℃での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Cでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0056】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、処理ゾーン81Cを通過する間に、低温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は、間隙遮熱手段88cを通過して最後の処理ゾーンである第4の処理ゾーン81Dの室内に挿入される。この第4処理ゾーン81Dを通過する間に、例えば、超低温領域冷却処理(例えば、約−5℃ないし約−8℃より低温での冷却処理)の攪拌冷却を実施することができる。この処理ゾーン81Dでの冷却条件も、例えば、前記図5に示すように制御することができる。
【0057】
被冷却物87が、ベルトコンベア84の上に載置された状態で、最後の処理ゾーン(すなわち、第4処理ゾーン81D)を通過する間に、超低温領域冷却処理が終了し、続いて、被冷却物87は出口遮熱手段88Eを通過して、取出ステーション89Eへ移動することができる。
【0058】
図6に示す連続式装置30において、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dで実施する各冷却処理に必要な時間が異なる場合は、ベルトコンベア84の進行方向に沿って、処理ゾーンの長さを変化させることによって、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dでの処理時間の差異を調整することができる。すなわち、長い処理時間が必要な処理ゾーンをベルトコンベア84の進行方向に沿って長くし、処理時間が短い処理ゾーンの長さを短くして調整することができる。
【0059】
図6に示す連続式装置30を用いて、被冷却物87を各処理ゾーン81A,81B,81C,81D内に挿入してから、ベルトコンベア84をそれぞれ停止する態様で連続法を実施することもできる。この態様の操作を簡単に説明すると、被冷却物載置ステーション89Sにおいて、被冷却物87をベルトコンベア84の上に順々に載置する。続いて、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ移動させて、被冷却物87を最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止する。なお、ベルトコンベア84によって被冷却物87を移動させる際には、最初の処理ゾーン81Aの入口に設けた入口遮熱手段88Sの下部エアカーテン部からのエア噴出を停止するかあるいは噴出量低減を行うことができる(以下、遮熱中断操作という)。この遮熱中断操作により、例えば、被処理食品類表面に付着させた添加物(例えば、ゴマ粒)が脱離するのを防止することができる。
【0060】
遮熱中断操作を実施した場合は、被冷却物87が最初の処理ゾーン81Aの室内に挿入された後に、前記遮熱中断操作を解除して被冷却物載置ステーション89Sと最初の処理ゾーン81Aの室内とを再度熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Aと隣接処理ゾーン81Bとの間に設けた間隙遮熱手段88aにおいても同様の遮熱中断操作とその解除を行い、処理ゾーン81Aと隣接処理ゾーン81Bとを熱的に遮断する。なお、入口遮熱手段88S及び間隙遮熱手段88a全体が上下動可能な仕切板からなる場合は、被冷却物87の移動時に上方へ移動させて被冷却物87と接触しないようする遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84の停止後にそれらを再度降下させて遮熱中断操作を解除し、熱的に遮断する。
【0061】
最初の処理ゾーン81Aでは、例えば、高温領域冷却処理の攪拌冷却を実施し、それが終了した後に、間隙遮熱手段88aの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ移動させることにより、被冷却物87を第2の処理ゾーン81Bの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記遮熱中断操作を解除して、最初の処理ゾーン81Aと第2の処理ゾーン81Bとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Bと隣接処理ゾーン81Cとの間に設けた間隙遮熱手段88bでも前記遮熱中断操作を解除し、処理ゾーン81Bと隣接処理ゾーン81Cも熱的に遮断する。
【0062】
処理ゾーン81Bでの中温領域冷却処理の攪拌冷却が終了した後に、間隙遮熱手段88bでの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、被冷却物87を第3の処理ゾーン81Cの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記間隙遮熱手段88bでの遮熱中断操作を解除し、第2処理ゾーン81Bと第3処理ゾーン81Cとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Cと隣接処理ゾーン81Dとの間に設けた間隙遮熱手段88cでも遮熱中断操作及びその解除を行い、処理ゾーン81Cと隣接処理ゾーン81Dも熱的に遮断する。
【0063】
処理ゾーン81Cでの低温領域冷却処理の攪拌冷却が終了した後に、間隙遮熱手段88cの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、被冷却物87を最後の処理ゾーンである第4処理ゾーン81Dの室内に挿入し、ベルトコンベア84を停止し、前記遮熱中断操作を解除し、第3処理ゾーン81Cと第4処理ゾーン81Dとを熱的に遮断する。なお、処理ゾーン81Dと取出ステーション89Eとの間に設けた出口仕切板88Eでも同様の遮熱中断操作及びその解除を行い、処理ゾーン81Dと取出ステーション89Eも熱的に遮断する。この状態で、第4処理ゾーン81Cでは、例えば、超低温領域冷却処理の攪拌冷却を実施することができる。
【0064】
最後の処理ゾーン(すなわち、第4処理ゾーン81D)での超低温領域冷却処理が終了した後に、出口遮熱手段88Eの遮熱中断操作を行い、ベルトコンベア84を矢印Tの方向へ更に移動させることにより、冷却処理物87Eを取出ステーション89Eへ移動させることができる。
【0065】
図6に示す連続式装置30によって、ベルトコンベア84を一時的に停止する連続法を実施する態様において、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81Dで実施する各冷却処理に必要な時間が異なる場合は、ベルトコンベア84の進行方向に沿って、処理ゾーンの長さを変化させることによって、各処理ゾーン81A,81B,81C,81Dでの処理時間の差異を調整することができる。処理ゾーンの長さ調整により、間隙遮熱手段、入口遮熱手段、及び出口遮熱手段の遮熱中断操作を同時に行い、複数の処理ゾーン81A,81B,81C,81D間の移動を同時に行うことができる。なお、図6には、4つ処理ゾーン81A,81B,81C,81Dを備えた連続式装置30を示したが、処理ゾーンの数は2つ以上であれば特に限定されない。
【0066】
本発明の連続式攪拌冷却においては、低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに、冷却気体の少なくとも一部として供給することができる。例えば、図6に示す連続式装置30を用いる場合には、第4処理ゾーン81Dでの超低温領域冷却処理によって発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域の冷却条件においては、依然として充分な冷却エネルギーを有しているので、例えば、第1処理ゾーン81A、第2処理ゾーン81B、及び/又は第3処理ゾーン81Cに冷却気体(あるいは冷却気体の一部)として供給することができる。同様に、第3処理ゾーン81Cで発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域で冷却処理を行う第1処理ゾーン81A及び/又は第2処理ゾーン81Bへ供給することができ、第2処理ゾーン81Bで発生する排気(暖気)は、それよりも高温側の温度領域で冷却処理を行う第1処理ゾーン81Aへ供給することができる。
【0067】
次に、本発明による攪拌冷却において、処理室内への冷却エネルギーの供給量を調整するために併用することのできる「バイパス循環方式」の原理を説明する。図7は、「バイパス循環方式」の原理を模式的に示す説明図である。なお、図7には、「バイパス循環方式」の原理の説明の簡明化のために、本発明の攪拌冷却に用いる気流攪拌手段(例えば、サブファン)を省いている。また、前記「バイパス循環方式」による冷却には、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
【0068】
図7(a)及び図7(b)に示すとおり、バイパス循環方式用装置20は、断熱性ハウジング1A内に、処理室1、風量調節手段2、冷却室3、及び送気手段としてのファン4を含む。処理室1は、被冷却物12の搬入用及び搬出用の開閉自在な開口部(図示せず)から、室内11に被冷却物12を装入して配置することができる。冷却室3は、気体導入部から送り込まれる気体(特に、空気)を冷却して、非冷凍冷却の場合には非冷凍温度帯に冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出し、冷凍の場合には冷凍温度帯に冷却された気体(冷気)を生成して気体流出部から送出することができる。ファン4は、冷却室3で生成した冷却気体(冷気)を矢印Xの方向、すなわち処理室1の方向へ送り出す送風機能を有する。
【0069】
風量調節手段2は、処理室1の冷却気体(冷気)導入部の前方(ファン4側)に配置され、矢印Yの方向、すなわち処理室1の内部へ送る風量と、矢印Zの方向、すなわち処理室1へは送らずに、バイパス循環回路Qを経由させて冷却室3へ戻す風量とを分配する機能を有する。図7(a)及び図7(b)では、矢印X,Y,Zの幅によって、冷却気体(冷気)の分配の態様を模式的に示している。すなわち、図7(a)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入され、残りの小部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られる。一方、図7(b)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られ、残りの小部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入される。
【0070】
処理室1の内部へ送る風量と冷却室3へ戻す風量との分配比率(容量)は、特に限定されず、被処理物12の種類や温度、冷却段階などに応じて適宜調整することができる。具体的には、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)は、0:100〜100:0の間で任意に調整することができる。例えば、10:90〜90:10のように両者の比率に極端な差異を設けるか、あるいは、両者をほぼ均等(40:60〜60:40)に分配することもできる。更には、冷却処理を実施する過程で分配比率を連続的もしくは断続的に変化させることもできる。なお、冷却室3から処理室1の内部へ送る冷却気体の風量は、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施することもできる。
【0071】
バイパス循環方式において、前記冷却室3で冷却された気体(冷気)の内、処理室1の内部へ導入された冷却気体(冷気)は、被冷却物12から熱を奪って昇温して暖気となり、排出通路Rを経て冷却室3へ送られる。前記冷却室3に送られた暖気は、冷却及び加湿された後に、前記冷却室3の気体流出部から送出され、前記ファン4の作用により処理室1の方向へ送られ、再び、風量調節手段2によって、矢印Yの方向(すなわち処理室1の内部)へ送る風量と、矢印Zの方向(すなわち処理室1へは送らずに、バイパス循環回路Qを経由させて冷却室3)へ戻す風量とに分配される。風量調節手段2としては、例えば、ダンパーや開閉式のルーバー等を用いることができる。なお、風量調節手段2の駆動源としては、例えば、電気モーターやシリンダーでよい。
【0072】
一方、風量調節手段2によって処理室1への進入を遮断された冷却気体(冷気)は、前記風量調節手段2及び前記ファン4の作用によって形成されるバイパス循環回路Qを経て、前記冷却室3の気体導入部から前記冷却室3の内部に戻る。なお、バイパス循環回路Qが容易に形成されやすいように、通路形成部材(図示せず)を断熱性ハウジング1A内に設けることもできる。前記冷却室3に戻った冷気は、処理室1から送られる暖気と共に、再び冷却及び加湿された後に、前記冷却室3の気体流出部から送出され、前記ファン4の作用により処理室1の方向へ送られるが、その一部が風量調節手段2によって処理室1への進入を遮断され、再び、前記バイパス循環回路Qを経て前記冷却室3に戻る。こうして、前記冷却室3から排出される冷却気体(冷気)は、その一部分がバイパス循環回路Qに沿って常に複数回に亘って循環されるので、前記冷却室3から排出される冷却気体(冷気)は、全体として温度が充分に降下すると共に、加湿も進行する。なお、加湿の機構は後述する。
【0073】
図8は、本発明による攪拌冷却と、前記バイパス循環方式とを組み合わせた場合の原理を模式的に示す説明図である。
バイパス循環方式の攪拌冷却用装置10Aは、処理室1、風量調節手段2、冷却室3、及び主送気手段としてのメインファン4に加えて、処理室1の壁面に気流攪拌手段としてのサブファン68を備える。バイパス循環方式の攪拌冷却用装置10Aによって冷却処理を実施する場合、図8(a)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入され、残りの小部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られる。一方、図8(b)に示す態様では、冷却室3の気体流出部から送出される冷却気体(冷気)の全体(矢印X)の内の大部分(矢印Z)がバイパス循環回路Qへ送られ、残りの小部分(矢印Y)が処理室1の内部へ導入される。いずれの態様においても、処理室1の内部へ導入される冷却気体(冷気)の流量及び流速に応じて、サブファン68から送風する攪拌用気流の流量及び流速を調整し、場合により更に偏向角度を調整し、処理室1の内部の冷却気体(冷気)を攪拌し乱流化することができるので、処理室内部の冷却条件を精密に制御すると共に、処理時間の短縮化を実現することができる。
【0074】
次に、本発明による攪拌冷却において、場合により併用することのできる「置換冷却サイクル」の原理を、図9及び図10に沿って説明する。なお、図9及び図10には、「置換冷却サイクル」の原理の説明の簡明化のために、本発明の攪拌冷却に用いる気流攪拌手段(例えば、サブファン)を省いている。また、この場合の冷却にも、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)が含まれる。
【0075】
「置換冷却サイクル」は、図9に示す置換モードと、図10に示す冷却モードとからなるサイクルであり、このサイクルを順次繰り返して実施することによって、被冷却物の温度を段階的に低下させ、最終的な目標温度帯までの冷却を効果的に行うことができる。置換モードは、図9(a)に示すとおり、被冷却物12が内部に配置されている処理室1へ、冷気Cを矢印Aの方向に沿って大量に導入し、処理室1の室内11の暖気Hの全体を冷気Cと置き換える工程である。その結果、図9(b)に示すとおり、暖気Hが矢印Bに示すとおり、処理室1の室内11から排除され、処理室1の室内11の雰囲気は冷気Cによって置換される。この置換モードにおいては、処理室1へ案内される冷却気体(冷気)の量が比較的大量になるように、処理室1の気体導入部14の外側に設けた風量調節手段2を調整する。
【0076】
続いて、図10に示す冷却モードを行う。この冷却モードでは、処理室1の外側に設けた風量調節手段2を調整して、処理室1内への冷気Cの導入を遮断するか、あるいは冷気Cの導入を極めて少量に制限する。更には、前記冷却室3から処理室1に冷却気体を供給する送風手段4(図1などを参照)を制御して前記処理室1へ供給される処理用冷却気体の供給量を調整して、冷却モードにおける冷却を実施することができる。送風手段の制御による場合は、風量調節手段2を全開状態にするか、風量調節手段2を使用しないで実施することができる。こうして冷気Cが充填された状態〔図10(a)〕の処理室1の室内11においては、冷気Cが被冷却物12の熱を吸収して昇温し、暖気Hに変化する〔図10(b)〕。この「置換冷却サイクル」を本発明の攪拌冷却と組合せると、この冷却モードにおいて、処理室1内の冷気を連続的又は断続的に攪拌して、処理室1の内部の冷気Cと被冷却物12との熱交換効率を向上させることができる。
【0077】
本発明による攪拌冷却と前記「バイパス循環方式」とを併用する場合において、前記分配比率(Y:Z)、すなわち、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)は、処理室へ供給すべき冷却エネルギーの観点から調整することができる。また、処理室1の内部へ送る冷却気体の風速は、同時に用いる攪拌用気体との混合流の風速によって制御することができる。例えば、蒸散しやすい揮発性成分を含む食品、例えば、香料成分を含む洋菓子類や、酢成分を含む寿司飯類を処理する場合は、混合流の流速を低下させ、充分な冷却エネルギーが供給されるように、冷却気体の風量と風速を制御する。これらの被冷却物では、単に冷気を吹き付けるだけでも味や風味が失われるからである。
【0078】
前記「バイパス循環方式」において、前記分配比率(Y:Z)、すなわち、処理室1の内部へ送る風量(Y)を比較的多くし、混合流の風速を比較的速くして処理時間を短縮することが可能な被冷却物は、表面からの水蒸気蒸発が起きにくい食品、例えば、油で調理したサツマ揚げなどである。サツマ揚げなどは、調理の際に既に水分がかなり減少しているだけでなく、表面が油で覆われているので、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)を、例えば、60:40%〜100:0%(あるいは、60:40%〜90:10%)として冷却処理を行うことができる。なお、表面からの水蒸気蒸発が起きにくいこのような食品においても、凍結温度付近での処理では、中心部と表面との温度差を拡大させないために、前記「置換冷却サイクル」を併用するのが好ましい。
【0079】
一方、冷却時に水蒸気を蒸発したり、解凍時にドリップを発生する可能性がある被冷却物、例えば、生鮮魚介類を冷却する際には、処理室1の内部へ送る風量(Y)と冷却室3へ戻す風量(Z)との分配比率(Y:Z)を、例えば、30:70%〜60:40%とすることができる。これらの生鮮魚介類も、凍結温度付近での処理では、中心部と表面との温度差を拡大させないために、前記「置換冷却サイクル」を併用するのが好ましい。
【0080】
本発明による攪拌冷却では、前記「置換冷却サイクル」を前記バイパス循環方式と共に併用することもできるし、前記バイパス循環方式とは別に併用することもできる。
【0081】
本発明の攪拌冷却においては、冷却室3で気体を冷却する際に、気体を熱交換器と接触させることによって冷却するか、あるいは気体を水と直接に接触させることによって冷却することができる。気体の冷却用として熱交換器を用いる場合には、冷却コイル中に冷媒(気液の相変化によって冷却を行う)を循環させるか、又は冷却用液体、例えば、ブライン(例えば、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液)や不凍液(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)を循環させて気体を非冷凍温度帯や冷凍温度帯へ冷却することができる。気体を水と直接に接触させる場合には、例えば、5℃以下の冷水を用いて、気体を非冷凍温度帯へ冷却することができる。
【0082】
最初に、気体を水と直接に接触させることによって冷却する冷却室の態様を説明する。この場合、気体は冷却室において非冷凍温度帯へ冷却されるので、処理室内の被処理物は非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)される。図11は、この態様の冷却室3Aの模式的断面図である。図11に示す非冷凍冷却用の冷却室3Aは、冷却室容器37の内部の上方に送出用ファン31を備え、その送出用ファン31の下方に、上部整流板32A、スプレーノズル33、分散材34、及び下部整流板32Bを順に備えている。この冷却室3Aは、暖気(処理室通過気体)又は冷気(循環気体)の導入部に相当する吸気口35を冷却室容器37の下部に有し、生成した冷却気体の送出部に相当する冷気送出口36を冷却室容器37の頂部に有している。また、冷却室容器37の外側には、冷水を生成する冷水製造器41を備えており、この冷水製造器41によって生成した冷水は、循環ポンプ42により給水管44を経て、冷却室容器37の上部に配置したスプレーノズル33に供給される。
【0083】
前記の冷水製造器41としては、冷凍サイクルの蒸発器(冷却器)を使用することも、あるいは通常のチラーを使うこともできる。冷水の温度は、被冷却物の目標冷却温度によって適宜変更することができ、例えば、水温が+2℃〜+3℃の冷却水を生成することができるものが望ましい。水温が+2℃〜+3℃の冷却水を用いると、冷気を前記のバイパス循環回路で複数回に亘って循環させることにより、+5℃程度の冷気を得ることができる。
【0084】
冷却水が、冷却室容器37の上部に配置されたスプレーノズル33から下方に噴出され、一方、冷却室容器37の下部に設けた吸気口35から導入された気流(例えば、暖気H)が上方に上昇するので、図11に示す非冷凍冷却用の冷却室3Aは、向流型である。なお、非冷凍冷却に用いることのできる冷却室は、気流と冷却水とが同じ方向に平行して流れる並流型であることもでき、あるいは、受取口を冷却室容器の上部に設け、排出口を冷却室容器の下部に設けることもできる。更に、スプレーノズルを冷却室容器の下部や側壁部に配置したり、上部、下部、及び側壁部の複数箇所に配置することもできる。また、気流と冷却水との接触方法も、スプレー型に限定されず、冷却水の流水と気流との接触や、気流を冷却水中にバブリングさせることによって行うこともできる。
【0085】
図11に示す冷却室3Aの吸気口35に到達した暖気(処理室通過気体)及び冷気(循環気体)は、冷却室容器37の頂部に配置された送出用ファン31の吸引力によって、吸気口35から冷却室容器37の内部に進入し、更に下部整流板32Bを経由して上方に向かって流れる。下部整流板32B及び上部整流板32Aは、いずれも、気流の偏流を防止し、気流を整流化することができるものであれば、特に限定されない。整流化された気流は、続いて、分散材34の内部を上方に向かって通過する。一方、分散材34の上方に配置されたスプレーノズル33から噴霧される冷水も分散材34の内部を下方に向かって通過する。分散材34は、前記の両者の通過の際に、例えば、両者の滞留時間を延長させたり、広い接触面積を提供するなどによって両者の接触を促進する構造を有し、水による気流の閉塞を起こさない構造を有している。従って、分散材34を通過する際に、冷却水との接触によって、気体は断熱冷却によって冷却される。こうして冷却された気流は、更に上部整流板32Aを通過する際に整流され、冷却室容器37の頂部に配置された送出用ファン31によって、冷気送出口36から外部へ放出される。
【0086】
一方、前記分散材34を通過した水は、気流との接触によって昇温され、冷却室容器37の底部に設けられた貯水部38に導かれ、水位調整器(例えば、ボールタップ)〔図示せず〕によって制御される循環ポンプ42とドレン46とにより、排水口45から冷水製造器41に循環されるか、あるいは排水槽43に送られる。貯水部38の水位は、オーバーフロー管39によっても調整される。冷水製造器41に循環された水は、冷水製造器41において再び冷却された後、スプレーノズル33に供給される。貯水部38に補給水を供給する必要はないが、循環による水の汚れを防止するために、定期的に給水及び排水を行うことが望ましい。
【0087】
次に、冷却室が、水と直接に接触させることによって気体を冷却することのできる手段(又は領域)と、熱交換器と接触させることによって気体を冷却することのできる手段(又は領域)とを備えている態様(複合型又はハイブリッド型)について説明する。この場合、気体は冷却室において非冷凍温度帯へ冷却されると共に、非冷凍温度帯へも冷却されるので、処理室内の被処理物は、非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)された後、更に冷凍温度帯へ冷却(冷凍)される。図12は、この態様の冷却室3Bの模式的断面図である。図12に示す複合型冷却室3Bは、冷却室容器57の内部の上方に気体吸入用ファン51を備え、その気体吸入用ファン51の下に上部整流板52A、スプレーノズル53、凍結防止ヒーター67a、分散材54、及び下部整流板52Bを順に備えている。この冷却室3Bは、暖気H及び冷気Cの導入部に相当する吸気口55を冷却室容器57の頂部に有し、生成した冷却気体の送出部に相当する冷気送出口56を冷却室容器57の下部に有している。また、前記分散材54の内部には、冷却室容器57の外側に設けた冷凍機71と連絡する冷却コイル72を備えている。なお、冷却コイルを含まない分散材の領域と、冷却コイルとを分割し、主に気体と水とを接触させる領域と、気体と冷却コイルとを接触させる領域とを分けることもできる。
【0088】
前記冷凍機71及び前記冷却コイル72は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成しており、前記冷凍機71は冷凍サイクルの圧縮機(コンプレッサー)に相当し、前記冷却コイル72は冷凍サイクルの蒸発器(エバポレーター)に相当する。また、この冷凍サイクルには、高温用膨張弁73と低温用膨張弁74とを備え、更にそれらを切り換える切換用電磁弁75a,75bを備えている。前記高温用膨張弁73は、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する際に使用し、前記低温用膨張弁74は、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を実施する際に使用する。なお、前記高温用膨張弁73及び前記低温用膨張弁74の設定温度は、各々の気体の露点近辺までとすることが望ましい。露点より低温にすると、冷却コイル72で気体中の水分の凝縮や凝集が起こり、気体を乾燥させるからである。なお、図12では、2つの切換用電磁弁75a,75bを用いる態様を示しているが、1つの切換用電磁弁でそれらを共用することもできる。
【0089】
冷却室容器57の底部には水流出口65が設けられており、冷却室容器57の底部の外側には、その水流出口65に連結して貯水槽58が設けられている。なお、水流出口65と貯水槽58とを連結する管には、凍結防止ヒーター67bを設けることが好ましい。貯水槽58に案内された水は、水位調整器(例えば、ボールタップ)〔図示せず〕によって制御される循環ポンプ62と調整弁66とにより、給水管64を経て、スプレーノズル53に循環供給されるか、あるいは排水槽63に送られる。貯水部58の水位は、オーバーフロー管59によっても調整される。
【0090】
図12に示す冷却室3Bを用いると、1つの装置によって、最初に、比較的に高温の被処理物に対して、水を気体冷却に用いる非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施し、引き続いて、冷媒を気体冷却に用いる冷凍温度帯への冷却(冷凍)を連続的に実施することができる。非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する段階では、吸気口55に送られた暖気H及び冷気Cが、冷却室容器57の頂部に配置された気体吸入用ファン51の吸引力によって、吸気口55から冷却室容器57の内部に装入され、更に上部整流板52Aを経由して下方に向かって進行する。上部整流板52A及び下部整流板52Bは、いずれも、気流の偏流を防止し、気流を整流化することができるものであれば、特に限定されない。整流化された気流は、続いて、分散材54の内部を下方に向かって通過する。一方、分散材54の上方に配置されたスプレーノズル53から噴霧される水も、噴霧の直後に気流と並流型で接触した後、分散材54の内部を下方に向かって通過する。従って、分散材54は、前記の両者の通過の際に、例えば、両者の滞留時間を延長させたり、広い接触面積を提供するなどによって両者の接触を促進する構造を有し、水による気流の閉塞を起こさない構造を有している限り、特に限定されない。なお、この分散材54が内部に水滴ブリッジを形成すると、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を実施する際に、氷結晶ブリッジとなって気流通過を妨害することになるので、分散材54としては、内部に水滴ブリッジを形成しないピッチを有する構造であることが好ましい。同様に、前記上部整流板52A及び前記下部整流板52Bも、内部に水滴ブリッジを形成しないピッチを有する構造であることが好ましい。
【0091】
非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を実施する際には、前記分散材54の内部に配置してある冷却コイル72を、非冷凍冷却用に膨張させた高温冷媒が通過しており、前記分散材54の内部を通過する気体流及び水を、それぞれ、断熱冷却によって冷却することができる。こうして、冷却コイル72によって水と共に冷却された気体流は、更に下部整流板52Bを通過する際に整流され、冷却室容器57の下部に配置された冷気送出口56から放出される。一方、前記分散材54を通過した水は、下部整流板52Bを通過した後、冷却室容器57の底部の水流出口65から、貯水槽58に送られ、前記の通り、スプレーノズル53に循環供給されるか、あるいは排水槽63に送られる。
【0092】
図12に示す複合型冷却室3Bは、前記の通り並流型であるが、向流型とすることもできる。あるいは、受取口を冷却室容器の下部に設け、冷気送出口を冷却室容器の頂部に設けることもできる。更に、スプレーノズルを冷却室容器の下部や側壁部に配置したり、上部、下部、及び側壁部の複数箇所に配置することもできる。また、気流と冷却水との接触方法も、スプレー型に限定されず、冷却水の流水と気流との接触や、気流を冷却水中にバブリングさせることによって行うこともできる。
図12に示す複合型冷却室3Bを用いて、本発明による置換冷却サイクルを繰り返して実施することにより、被冷却物を段階的に常温温度帯又は冷蔵温度帯(特には、冷蔵温度帯)に冷却した後に、同じ複合型冷却室3Bを用いて、冷凍温度帯への冷却(冷凍)を行うことができる。
【0093】
非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)から冷凍温度帯への冷却(冷凍)に切り換える際には、最初に、スプレーノズル53からの噴霧を停止する。冷却室容器57の内部に残存水が存在する可能性があるときは、気体(特に空気)を強制的に送り込んで、残留水を排除することが好ましい。次に、凍結防止ヒーター67a,67bあるいはその他の箇所に設けた凍結防止ヒーターの電源をオンにし、続いて、切換用電磁弁75a,75bにより、高温用膨張弁73から低温用膨張弁74へ切り換え、前記分散材54の内部に配置してある冷却コイル72に、冷凍用に膨張させた低温冷媒を通過させる。この場合の設定温度として、冷却コイルの温度を、例えば、−30℃〜−40℃とすると、この冷却コイルに接触する暖気(H)及び冷気(C)を、例えば、−25℃〜−35℃の冷却気体(特に空気)にすることができる。
【0094】
図12に示す複合型冷却室3Bにおいては、冷却室容器57に設ける冷却コイル72の内部に、冷媒に代えて、冷却用液体(例えば、ブライン又は不凍液)を循環させることもできる。また、前記貯水槽58の内部に、前記冷凍機71と接続する冷却コイル(図示せず)を設け、貯水槽58に充填されている水の冷却に用いることができる。貯水槽58に設ける冷却コイルにも、冷媒又は冷却用液体を循環させることができる。
【0095】
本発明においては、或る1種類の被冷却物に関して、水との直接接触によって冷却用気体を生成する非冷凍冷却と、冷媒又は冷却用液体を循環させる熱交換器(冷却コイル)との接触によって冷却用気体を生成する冷凍とを連続的に実施することができる。また、このような非冷凍冷却処理と冷凍処理とからなるバッチ工程を次々に連続して行うと、冷凍処理の際に蒸発器に着霜した霜を、次のバッチ工程の非冷凍冷却の際に除霜することができる。
【0096】
例えば、図12に示す複合型冷却室3Bを用いる場合、非冷凍冷却処理(気体冷却に水を使用)の終了後に、引き続いて冷凍処理(気体冷却に冷媒又は冷却用液体を使用)を実施すると、冷却コイル72の表面が着霜する。しかしながら、前記冷凍処理の完了後に、処理室から冷却処理物を取り出し、次のバッチ処理用の被冷却物を処理室に装入し、切換用電磁弁75a,75bによって低温用膨張弁74から高温用膨張弁73に切り換え、非冷凍冷却処理(気体冷却に水を使用)を開始すると、複合型冷却室3Bのスプレーノズル53から冷却水が供給される。この冷却水は、冷却コイル72の表面と接触して流れるので、冷却コイル72の表面の霜を洗い流すことができる。霜に由来する溶融水も、冷却水と一体となって、冷却室容器57の底部の水流出口65を経由して貯水槽58に送られ、冷却水として循環することになるので、除霜処理に起因する排水工程も不要である。
【0097】
ちなみに、通常の冷却法では、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)を開始する場合でも、冷却効率(主として、冷却時間)を重視して、ほとんどの場合、冷却コイルの温度を最初からマイナスに設定する。例えば、被冷却物の最終品温を−25℃にする場合には、冷却コイルを−35℃以下の温度にする必要があるので、前記被冷却物の最初の温度が+40℃程度の場合でも、冷却コイルの温度を最初から−35℃以下の温度に設定する。この条件下で冷却を開始すると、被冷却物から発生する水蒸気(湯気)や被冷却物内部からの熱により蒸発する水分は、全て冷却コイルの表面に着霜し、冷却用空気も乾燥する。
これに対して、前記態様においては、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)で冷却用気体の冷却に水を使用するので、着霜が発生しない。また、冷凍温度帯への冷却(冷凍)では着霜が発生するが、次のバッチ処理において除霜されるので、通常の冷却法の欠点が解消される。
【0098】
本発明において、被冷却物を収容する処理室に水蒸気トラップ手段を設けて、高温の被冷却物から放出される水蒸気を捕捉することができる。
図13は、処理室1の室内11の上部(天井部)に水蒸気トラップ手段5を有する態様を示す模式的部分断面図である。水蒸気トラップ手段5は、冷却チューブ21、ドレンパン22、及び排水管23を含む。冷却チューブ21は、その外側表面にフィンを有し、冷気との接触で冷却された状態を維持することのできる材料からなることができる。また、冷却チューブ21は、内部に冷却用液体(水)を循環させることもできる。処理室1の室内11に設けた載置棚13の上に配置された被冷却物(図示せず)が、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯などの場合には、その被冷却物から水蒸気を多量に含む気体が矢印Eの方向に上昇し、処理室1の室内11の上部(天井部)に設けた冷却チューブ21と接触する。この接触によって水蒸気が冷却チューブ21に結露を形成して除去されるので、乾燥した気体が矢印Fの方向で処理室1の室内11に戻る。一方、冷却チューブ21の表面上に形成された結露は、水滴となってドレンパン22に落下し、排水管23を経て処理室1の外部へ除去される。
【0099】
前記冷却チューブ21の内部を循環させる冷却用液体(特に、水)としては、例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において、冷却室内で気体と接触させるための冷却水あるいは気体と接触させた後の水を循環させて併用することができる。
【0100】
なお、前記のような水蒸気トラップ手段を備えていない処理室に、被冷却物として、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯を装入すると、盛んに水蒸気(湯気)を発生して、処理室内の低温部(例えば、特に天井周辺)に結露し、水滴となって被処理物に落下する。このような水滴は、冷却処理後の製品にシミとして残り、商品価値を劣化させる原因にもなる。しかしながら、処理室に前記のような水蒸気トラップ手段を設けることにより、前記のような問題の発生を防止することができる。
【0101】
また、通常の冷却法では、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)においても、前記のとおり、冷却コイルの温度を最初からマイナスに設定し、冷却コイルの内部に冷媒(例えば、フロン代替物)を循環させているため、高温の被冷却物(例えば、焼きたてのパンや炊飯料理直後のご飯)をそのまま処理することができず、例えば、自然放冷によって、被冷却物の温度を40℃〜50℃に降下させてから処理室に装入していた。
【0102】
これに対して、本発明においては、冷気の一部分を処理室に送らずに冷却室に戻すバイパス通路を設けて冷気の一部分を循環させ、冷気を複数回に亘って冷水と接触させることにより、冷気の温度を充分に降下させる方法を利用することができるので、高温被冷却物(例えば、焼きたてのパンや炊飯料理直後のご飯)を非冷凍温度帯へ冷却(非冷凍冷却)する場合に、その非冷凍冷却において、冷気生成用の冷水を用いることができ、高温被冷却物をそのまま処理室に装入して冷却処理を開始することができる。また、高温被冷却物を最終的に冷凍温度帯へ冷却(冷凍)する場合でも、本発明による冷凍処理を行う前に、前記非冷凍冷却処理を実施するので、高温被冷却物をそのまま処理室に装入して冷却処理を開始することができる。
【0103】
本発明では、非冷凍温度帯への冷却及び冷凍温度帯への冷却を、冷却室内で熱交換器との接触によって生成した冷却気体を用いて実施することもできる。この場合、冷却室内の熱交換器には、冷媒又は冷却用液体を通過させることができる。本発明においては、冷却室において冷却された気体(冷気)を風量調節手段によって、処理室へ案内される処理用冷却気体と、冷却室に戻す循環用冷却気体とに分割するので、冷却室に戻る気体は、暖気と冷気との混合気体になる。従って、例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯のように、水蒸気を多量に発生する高温食品類を最初から処理室に搬入して処理した場合に、処理室から排出される暖気の温度が極端に高くなっても、冷却室に戻るまでに、循環用冷却気体と接触して混合され、混合気体としての温度は充分に低下させることができる。また、循環用冷却気体の比率を高くすることによって、混合気体の温度を充分に低下させることもできる。従って、この態様においても、冷却室内の熱交換器には、ブラインなどの冷却用液体だけでなく、冷媒を循環させることもできる。
【0104】
また、前記のように、非冷凍温度帯への冷却及び冷凍温度帯への冷却を、冷却室内で熱交換器との接触によって生成した冷却気体を用いて実施する態様においては、図13に示す水蒸気トラップ手段5と同様に、処理室内に蓄熱材を設けて、水蒸気を多量に発生する高温食品類(例えば、焼きたてのパンや炊飯直後のご飯)を最初から処理室に搬入して処理することができる。この場合、処理室内に設けた蓄熱材を予め室温以下に冷却しておくと、処理室内に搬入された高温食品類から発生する高温気流と接触して温度を低下させることができ、その際に生成される水滴を、図13に示す水蒸気トラップ手段5と同様に集めて、排除することができる。なお、或る被処理物への冷却処理(すなわち、非冷凍温度帯への冷却処理又は冷凍温度帯への冷却処理)が終了した後に、次の被処理物を搬入する場合には、前のバッチ処理によって蓄熱材も冷却されているので、次の被処理物(高温食品類)から発生する高温気流の温度を有効に降下させることができる。
【0105】
本発明のバッチ処理用装置は、被冷却物を収容することのできる処理室、冷却室、送気手段、及び風量調節手段が1つの断熱性ハウジング内に収容された態様であるか、あるいは、処理室と冷却室とが別々の断熱性ハウジング内に収容されており、送気手段及び風量調節手段が、処理室収容断熱性ハウジング又は冷却室収容断熱性ハウジングに収容された態様であることができる。
【0106】
また、本発明のバッチ処理用装置は、断熱性ハウジング内において、隔壁によって仕切られた処理ゾーン、冷却ゾーン、及び通気ゾーンを有する態様であることができる。処理ゾーンは、被処理物を収納する領域であり、被処理物の搬入・搬出用の気密性閉鎖可能な開口部を備え、更に場合により、水蒸気トラップ手段を備えていることができる。また、処理ゾーンと通気ゾーンとの間に設ける隔壁は、冷気を受け入れる気体導入部及び暖気を送出する気体流出部を有しており、処理ゾーンと通気ゾーンとを厳密に気密に隔離する構造を有する必要はない。また、冷却ゾーンと通気ゾーンとの間に設ける隔壁は、暖気及び冷気を受け入れる気体導入部、並びに冷気を送出する気体流出部を有しており、冷却ゾーンと通気ゾーンとを厳密に気密に隔離する構造を有する必要はない。
【0107】
冷却ゾーンは、気体導入部から進入する気体を、水と直接に接触させることによって非冷凍温度帯に冷却された気体とするか、あるいは蒸発器と接触させることによって非冷凍温度帯又は冷凍温度帯へ冷却された気体とすることができる。こうして冷却された冷気は、送気手段によって、通気ゾーン内を処理ゾーンに向かって送風される。
【0108】
通気ゾーン内において、冷却ゾーンから処理ゾーンに向かう気流と、逆に、処理ゾーンから冷却ゾーンに向かう気流とが円滑に流れるように、通気ゾーン内に隔壁を設けることができる。この隔壁も、厳密に気密な構造を有する必要はない。
【0109】
本発明で利用することのできる循環工程により冷気Cが加湿される機構を、図9及び図14に沿って説明する。図14は、縦軸の絶対湿度(水蒸気質量/空気質量)と横軸の温度(℃)との関係を示す模式的グラフである。図14において、曲線Sは飽和湿度曲線であり、直線Aは断熱冷却線である。また、twは湿球温度であり、tdは露点である。
【0110】
まず、図9に示す置換モードにおいて、図9(a)に示すように処理室1に進入する冷気Cが、温度「t1」及び絶対湿度「H1」を有するものとすると、冷気Cの状態は図14の交点aで示される。この冷気Cが、図10に示す冷却モードにおいて、被処理物から熱を吸収して昇温し、温度「t2」の暖気Hとなる場合、絶対湿度は事実上変化しないので、図10(b)に示すように温度「t2」及び絶対湿度「H1」を有する暖気Hが処理室1内に形成され、その状態は、図14の交点bに移動する。
【0111】
続いて、温度「t2」及び絶対湿度「H1」を有する暖気Hは、次の置換モードにおいて図9(b)に示すように冷却室3に移動し、冷却室3にて温度「t3」に冷却される。この冷却の際には、後述するように、冷却室3に加湿の水分供給源が存在するので、断熱冷却線Aに沿って加湿され、絶対湿度「H2」となり、図14の交点cに示すように、温度「t3」及び絶対湿度「H2」を有する状態となる。すなわち、温度が低下(t2−t3)すると共に、湿度が上昇(ΔH=H2−H1)する。
【0112】
前記の加湿の供給源は、気体冷却用に水を用いる非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)においては、冷却室容器37のスプレーノズル33から供給される冷水である。また、冷凍温度帯への冷却(冷凍)においては、冷却室容器57の内壁に残留する氷滴である。なお、冷凍温度帯への冷却(冷凍)においては、気体が保有可能な水分量は非常に少なくなる。例えば、+5℃での保有可能水分量(水/乾燥空気)は、5.38×10−3kg/kgであるのに対し、−17℃では、8.17×10−4kg/kgとなり、−39℃では、8.16×10−5kg/kg(=0.08g/kg)となるので、微小な水分が存在するだけで飽和する。この程度の水分供給源としては、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において噴霧された水滴が冷却室容器57の壁面に凍結して形成された氷滴で充分である。また、凍結防止ヒーターの近辺では、氷滴からの昇華が起きており、この水分も水分供給源となる。
【0113】
図14の交点cに示す状態の冷気Cを、図9(b)に示すように、バイパス循環回路を経由させて再び冷却室3に戻すと、更に、断熱冷却線Aに沿って加湿及び冷却され、温度「tw」及び絶対湿度「H3」の交点dに徐々に近づくことになる。
【0114】
以上のように、本発明で利用することのできる「バイパス循環方式」及び「置換冷却サイクル」においては、処理室内で暖気Hを形成することが、気体(特に空気)の余熱過程(図14の点aから点bへの移動)に相当することになり、この余熱過程の存在が、冷気を加湿する主要な要因となる。
【0115】
一般に、冷却コイルの表面温度が露点より低いと、気体中の水分が冷却コイルの表面に凝集してしまい、気体を飽和させることが困難になる。従って、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を2℃〜3℃とするのが理想的であるが、従来法のように、冷却室に暖気を一度だけ通過させるワンパスでは、冷却効率が悪くなるので、一般に、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を10℃程度にしている。これに対して、本発明で利用することのできる「バイパス循環方式」及び「置換冷却サイクル」においては、処理室での温度上昇幅(予熱温度幅)を2℃〜3℃程度の小さい範囲として、気体温度と冷却コイルの表面温度との温度差を小さくし、ワンパスでは充分に加湿することができないとしても、前記のバイパス循環工程によって、加湿を繰り返すことにより、ほぼ飽和した冷気を得ることができる。更に、循環工程にかかる負荷は、せいぜいファンによる撹拌熱程度であり、循環工程には実質的に負荷がかからないので、前記の効果を充分に得ることができる。
【0116】
なお、前記の循環工程において、図14に示す交点aと交点bとの温度差(t2−t1)や、置換冷却サイクルにおける置換モード及び冷却モードの継続時間などは、被冷却物の冷却の進行程度によって適宜調節することが好ましい。例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)において、被冷却物を高温温度帯から常温温度帯へ冷却する場合と、被冷却物を常温温度帯から冷蔵温度帯へ冷却する場合とを比較すれば、前者の置換冷却サイクルにおける置換モード及び冷却モードの切り換えを短時間で実施することが好ましい。
【0117】
本発明による冷却の完了、例えば、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)の完了は、被処理物の中心部の温度が、目標冷却温度に到達した時点である。本発明においては、「バイパス循環方式」によって冷気の一部のみが処理室に送られ、更に、「置換冷却サイクル」を併用すると、非送風条件下で冷却を実施するため、被処理物の中心部の温度と表面の温度との温度差が小さい状態で維持される。一方、従来法では、通風状態で冷却するものの、表面のみが過度に冷却されて、中心部との温度差が大きくなるだけである。従って、本発明による冷却は、従来法と比較しても、冷却に要する時間に大差はない。
【0118】
本発明による冷却システムは、任意の被冷却物に適用することができる。冷却処理の対象としては、例えば、各種の食品(例えば、加工食品、又は生鮮食品)、植物(特に、観賞用植物の全体又はその一部分)、飼料、又は人若しくは動物の死体を挙げることができる。
また、本発明による冷却システムは、処理対象物を冷却する際に利用することができるだけでなく、冷却された状態での保存にも利用することができる。この保存には、常温温度帯での保存、冷蔵温度帯での保存、及び冷凍温度帯での保存が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明による冷却システムは、種々の冷却対象物について、非冷凍温度帯への冷却(非冷凍冷却)及び冷凍温度帯への冷却(冷凍)に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明による攪拌冷却の原理を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の本発明装置における処理室の内部のみの状態を模式的に示す斜視図である。
【図3】冷却気体と攪拌用気流との偏向角度を示す説明図である。
【図4】別の態様の本発明装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図5】表面温度(Ta)と処理室の室内温度(Ts)との温度差の変化を模式的に示すグラフである。
【図6】本発明の連続式攪拌冷却の原理を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明で併用することのある「バイパス循環方式」の原理を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明による攪拌冷却と、前記バイパス循環方式とを組み合わせた場合の原理を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明で併用することのある「置換冷却サイクル」の置換モードの原理を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明で併用することのある「置換冷却サイクル」の冷却モードの原理を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明による攪拌冷却において、非冷凍温度帯への冷却に用いることのできる冷却室の一態様の模式的断面図である。
【図12】本発明による攪拌冷却において、冷凍温度帯への冷却に用いることのできる複合型冷却室の一態様の模式的断面図である。
【図13】処理室室内の上部に水蒸気トラップ手段を有する態様を示す模式的部分断面図である。
【図14】縦軸の絶対湿度(水蒸気質量/空気質量)と横軸の温度(℃)との関係を示す模式的グラフである。
【符号の説明】
【0121】
1・・・処理室;1A・・・断熱性ハウジング;2・・・風量調節手段;
3,3A,3B,82・・・冷却室;4・・・ファン;5・・・水蒸気トラップ手段;
6・・・攪拌用気流供給室;7・・・隔壁;8・・・経路;10・・・本発明装置;
10A・・・バイパス循環方式の本発明装置;
11・・・処理室の室内;12,87・・・被冷却物;
13・・・載置トレイ;14・・・気体導入部;
15・・・載置台;21・・・冷却チューブ;22・・・ドレンパン;
23・・・排水管;30・・・連続式装置;
31・・・送出用ファン;32A,52A・・・上部整流板;
32B,52B・・・下部整流板;
33,53・・・スプレーノズル;34,54・・・分散材;
35,55・・・吸気口;36,56・・・冷気送出口;
37,57・・・冷却室容器;38・・・貯水部;
39,59・・・オーバーフロー管;
41・・・冷水製造器;42,62・・・循環ポンプ;
43,63・・・排水槽;44,64・・・給水管;45・・・排水口;
46・・・調整弁;51・・・気体吸入用ファン;
58・・・貯水槽;65・・・水流出口;66・・・調整弁;
67a,67b・・・凍結防止ヒーター;
68・・・サブファン;69・・・補助ファン;
71・・・冷凍機;72・・・冷却コイル;73・・・高温用膨張弁;
74・・・低温用膨張弁;75a,75b・・・切換用電磁弁;
81A,81B,81C,81D・・・処理ゾーン;
83・・・送気パイプ;84・・・ベルトコンベア;
85A,85B,85C,85D・・・冷却気体噴出口;
86A,86B,86C,86D・・・サブファン;
88a,88b,88c・・・間隙仕切板;
88S・・・入口仕切板;88E・・・出口仕切板;
89S・・・被冷却物載置ステーション;89E・・・取出ステーション。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理室に冷却室から冷却気体を供給することによって被冷却物を冷却する冷却方法であって、
前記処理室内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施することを特徴とする、前記冷却方法。
【請求項2】
前記冷却室から供給されて前記処理室内部を流れている冷却気体を攪拌するか、又は前記冷却室から供給された後に前記処理室内部に滞留している冷却気体を攪拌する、請求項1に記載の冷却方法。
【請求項3】
攪拌用気流を複数の方向から連続的又は断続的に送風する、請求項1又は2に記載の冷却方法。
【請求項4】
攪拌用気流の送風方向を連続的又は断続的に変化させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項5】
バッチ法で実施する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却室から前記処理室への冷却気体の供給制御を、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施するか、あるいは、前記処理室の気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理室へ案内される処理用冷却気体と、前記処理室を通過せずに前記冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割することによって実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項7】
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理室内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理室内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施する、請求項6に記載の冷却方法。
【請求項8】
(1)被冷却物を収容することのできる処理室、
(2)気体を冷却することのできる冷却室、
(3)前記冷却室で冷却された気体を前記処理室へ供給することのできる送気手段、及び
(4)前記処理室内に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段
を有することを特徴とする、冷却装置。
【請求項9】
複数の攪拌手段を備える、請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える、請求項8又は9に記載の冷却装置。
【請求項11】
冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で前記被冷却物を徐々に冷却する連続式冷却方法であって、
各処理ゾーン内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することによって、前記処理室内部の気体の攪拌下で冷却を実施することを特徴とする、前記連続式冷却方法。
【請求項12】
各処理ゾーンに供給される冷却気体が、共通又は別異の冷却室において冷却された気体である、請求項11に記載の連続式冷却方法。
【請求項13】
低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに冷却気体の少なくとも一部として供給する、請求項11又は12に記載の連続式冷却方法。
【請求項14】
高温帯処理ゾーン、中温帯処理ゾーン、低温帯処理ゾーン、及び超低温帯処理ゾーンを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項15】
移送手段の表面上に載置された被冷却物に対して上方から冷却気体を供給し、一方又は両方の側方から攪拌用気体を送風する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項16】
少なくとも1つの処理ゾーンに関し、その処理ゾーンへ供給される冷却気体を、前記処理ゾーンの気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体と、前記処理ゾーンを通過せずに冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項17】
少なくとも1つの処理ゾーンに関し、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理ゾーン内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理ゾーン内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施する、請求項16に記載の連続式冷却方法。
【請求項18】
(1)相互に熱的に遮断関係にあり、被冷却物を順々に収容することのできる複数の処理ゾーン、
(2)気体を冷却することのできる1又は複数の冷却室、
(3)1又は複数の冷却室で冷却された気体を前記処理ゾーンへそれぞれ供給することのできる送気手段、
(4)複数の処理ゾーンの少なくとも1つの処理ゾーン内部に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段、
(5)被冷却物を複数の処理ゾーンに順々に移動させることのできる移送手段、及び
(6)複数の処理ゾーンを、少なくともそれぞれの冷却処理中に、相互に熱的に遮断関係にすることのできる遮熱手段
を有することを特徴とする、連続式冷却装置。
【請求項19】
攪拌手段を備える処理ゾーンが複数の攪拌手段を備える、請求項18に記載の連続式冷却装置。
【請求項20】
攪拌手段を備える処理ゾーンが攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える、請求項18又は19に記載の連続式冷却装置。
【請求項1】
被冷却物を収容する処理室に冷却室から冷却気体を供給することによって被冷却物を冷却する冷却方法であって、
前記処理室内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を流すことによって発生する攪拌気流の下で冷却を実施することを特徴とする、前記冷却方法。
【請求項2】
前記冷却室から供給されて前記処理室内部を流れている冷却気体を攪拌するか、又は前記冷却室から供給された後に前記処理室内部に滞留している冷却気体を攪拌する、請求項1に記載の冷却方法。
【請求項3】
攪拌用気流を複数の方向から連続的又は断続的に送風する、請求項1又は2に記載の冷却方法。
【請求項4】
攪拌用気流の送風方向を連続的又は断続的に変化させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項5】
バッチ法で実施する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却室から前記処理室への冷却気体の供給制御を、冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して実施するか、あるいは、前記処理室の気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理室へ案内される処理用冷却気体と、前記処理室を通過せずに前記冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割することによって実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項7】
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理室内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理室内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施する、請求項6に記載の冷却方法。
【請求項8】
(1)被冷却物を収容することのできる処理室、
(2)気体を冷却することのできる冷却室、
(3)前記冷却室で冷却された気体を前記処理室へ供給することのできる送気手段、及び
(4)前記処理室内に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段
を有することを特徴とする、冷却装置。
【請求項9】
複数の攪拌手段を備える、請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える、請求項8又は9に記載の冷却装置。
【請求項11】
冷却気体がそれぞれ独立に供給されると共に相互に熱的に遮断関係にある複数の処理ゾーンに、被冷却物を移送手段によって順々に移動させ、各処理ゾーンにおいて異なる冷却条件下で前記被冷却物を徐々に冷却する連続式冷却方法であって、
各処理ゾーン内部において、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することによって、前記処理室内部の気体の攪拌下で冷却を実施することを特徴とする、前記連続式冷却方法。
【請求項12】
各処理ゾーンに供給される冷却気体が、共通又は別異の冷却室において冷却された気体である、請求項11に記載の連続式冷却方法。
【請求項13】
低温側冷却条件の処理ゾーンの排気の少なくとも一部を、高温側冷却条件の処理ゾーンに冷却気体の少なくとも一部として供給する、請求項11又は12に記載の連続式冷却方法。
【請求項14】
高温帯処理ゾーン、中温帯処理ゾーン、低温帯処理ゾーン、及び超低温帯処理ゾーンを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項15】
移送手段の表面上に載置された被冷却物に対して上方から冷却気体を供給し、一方又は両方の側方から攪拌用気体を送風する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項16】
少なくとも1つの処理ゾーンに関し、その処理ゾーンへ供給される冷却気体を、前記処理ゾーンの気体導入部の前に設けた風量調節手段によって、前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体と、前記処理ゾーンを通過せずに冷却室に戻るバイパス通路へ案内される循環用冷却気体とに分割する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の連続式冷却方法。
【請求項17】
少なくとも1つの処理ゾーンに関し、
(1)冷却室から処理室に冷却気体を供給する送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を増加させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理ゾーンへ案内される処理用冷却気体の量を増加させることにより、前記処理ゾーン内の雰囲気を処理用冷却気体に置換させる置換モードと、
(2)前記送風手段を制御して前記処理室へ供給される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させるか、あるいは前記風量調節手段によって前記処理室へ案内される処理用冷却気体の量を減少させるか若しくは処理用冷却気体の供給を停止させて前記処理ゾーン内部における処理用冷却気体を非送風条件にし、前記処理用冷却気体の温度が所定温度に上昇するか、もしくは非送風条件下で所定時間が経過するかのいずれか一方の条件を満足するまで、非送風条件下で被冷却物を冷却する冷却モードと
からなる置換冷却サイクルを繰り返して実施する、請求項16に記載の連続式冷却方法。
【請求項18】
(1)相互に熱的に遮断関係にあり、被冷却物を順々に収容することのできる複数の処理ゾーン、
(2)気体を冷却することのできる1又は複数の冷却室、
(3)1又は複数の冷却室で冷却された気体を前記処理ゾーンへそれぞれ供給することのできる送気手段、
(4)複数の処理ゾーンの少なくとも1つの処理ゾーン内部に設けられ、前記冷却室からの冷却気体の供給方向に対して偏向する方向に攪拌用気流を送風することのできる攪拌手段、
(5)被冷却物を複数の処理ゾーンに順々に移動させることのできる移送手段、及び
(6)複数の処理ゾーンを、少なくともそれぞれの冷却処理中に、相互に熱的に遮断関係にすることのできる遮熱手段
を有することを特徴とする、連続式冷却装置。
【請求項19】
攪拌手段を備える処理ゾーンが複数の攪拌手段を備える、請求項18に記載の連続式冷却装置。
【請求項20】
攪拌手段を備える処理ゾーンが攪拌用気流の送風方向を変化させることのできる攪拌手段を備える、請求項18又は19に記載の連続式冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−19851(P2009−19851A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184733(P2007−184733)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(592193409)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(592193409)
【Fターム(参考)】
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