説明

冷却水路構造

【課題】破損、圧力、捻れ、及び曲げに対する耐久性と共に冷却水の流量を改良した内部冷却式の切削工具を提供する。
【解決手段】ドリル工具の各ウェブに形成された内部冷却水路3は、工具の先端からそれとは反対側のドリルの端部にまで延びると共に、中心点Mを有した仮想上の円Kを囲むよう連続的に延びる断面外形線30を備える。前記断面外形線30は、好ましくは2箇所の最大曲率値を含み、それらのドリルの軸Aまでの距離は、中心点M及びドリルの軸A間の一線に沿う方向で、中心点M及びドリルの軸A間の距離と同等又はそれよりも大きい。冷却水路3とドリルの外周7との間の最小壁厚さ、冷却水路3と加工する面5との間の最小壁厚さ、冷却水路3と加工しない面6との間の最小壁厚さは、所定の下限値と上限値との間の範囲に設定され、内部冷却水路3の形状と共に、冷却水の流れと工具の安定性が最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によれば、回転駆動される切削工具や挿入工具、特にドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水や潤滑剤の供給のため、切削工具は冷却水路を備え、その冷却水路を通過した冷却水がドリルの先端に導かれる。ドリルの先端を冷却したり、潤滑したりすることとは別に、冷却水は、切削片の除去を促進する機能も備えている。切削溝から切削片を除去するため、時には、冷却水を高圧で送り込まなければならない。とりわけ、深い穴をドリル加工する場合、内部冷却水路、即ちドリルは、破損されることなく、相当の圧力に耐え得る必要がある。特に最小潤滑量の一環として、公知になりつつあるプロセスでは、可能な限り最大容量を与えるように冷却水路を設計することが望まれている。更に、ドリル加工された穴をより小さく、より長くすることが要求されている。しかしながら、ドリル工具の直径の縮小や、全長の増加に伴い、ドリルの強度を損なわずに冷却水の流量や液圧を相当量確保できる内部冷却水路の寸法設計は益々困難なものとなる。冷却水路の寸法は、ドリルの戻り量や切削スペースによって制限されてしまう。仮にウェブが余りに薄肉になると、クラックや工具の破損が生じる。複数刃の工具の場合、互いに所定の最小距離をおいて、冷却水路を設けなければならない。さもなければ、ドリルの面形状、即ちドリルの横軸刃、又は先端形状に不具合が生じる。
【0003】
周知のドリルは、通常、円形状の内部冷却水路を備えている。これとは別に、原理上、断面楕円形状の冷却水路と共に焼結ブランクを製造する方法が既に公知で、例えばドイツ特許公開第42 42 336 A1号明細書に記載されている。米国特許第2,422,994号明細書には、円形状とは異なる別の形状を有する冷却水路が記載されている。更に、例えばドイツ特許公開第199 42 966 A1号明細書では、角部が丸みを帯びた二等辺三角形の形状を有する冷却水路が提案されている。
【0004】
これとは別に、ドイツ特許公開3629035 A1号では、角部が丸みを帯びた二等辺三角形状の冷却水路を備える二枚刃の切削ドリルが提案され、それにより、内部冷却水路の位置を中心に近づけることが可能になり、その位置により、ドリルの円錐端において冷却水路から中心への送出が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開第42 42 336 A1号
【特許文献2】米国特許第2,422,994号
【特許文献3】ドイツ特許公開第199 42 966 A1号
【特許文献4】ドイツ特許公開第3629035 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した内容に照らして、本発明の目的は、破損、圧力、捻れ、及び曲げに対する耐久性と共に冷却水の流量について、一般的な内部冷却式の切削工具を改良することである。
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、冷却水路に生じる応力は冷却水路の形状に依存し、従ってその大部分が荷重の方向で最も小さい半径における冷却水路の応力集中に依存する、という認識に基づいている。更に、耐久性に関する限り、例えばドリルやフライス等の切削工具は、そのような応力ピークに直面するおそれがあり、即ち、その硬さに関連して、また最終的には工具にクラックが形成される、又は早期の不具合が発生するかどうかの決定に際し、冷却水路に応力ピークが発生することとは別に、冷却水路と切削スペースとの間の距離、及びそれ故にウェブ上における冷却水路の位置が決定される、ということが見出されていた。
【0008】
FEM(有限要素解析)の数値解析によれば、従来から使用される円形状の冷却水路に生じる応力ピークは低いが、部分的に概ね円形状をなすウェブによれば相対的に小さい断面積を有した冷却水路が生じるようにウェブ内の実在スペースを最適利用できないという結果を示している。その結果として生じる低い流量によって、ドリルの全長及び直径に関する限界値に直面する。
【0009】
他方で、既知である三角形状の場合、ドリルウェブの設計スペースを最大限に利用すべく断面三角形状の冷却水路を採用する試みを通じて、より一層高い流量を実現することができる。そのスペースは円弧形状を有し、一方で、最小壁厚さを維持して流量割合を増大させるが、冷却水路の溝底部で極端な応力ピークを引き起こし、それ故に挿入工具の強度を低下させてしまう。
【0010】
多くの試行や数値解析の結果により、本発明に係る冷却水路の断面形状が得られた。即ち、最小半径は、外形線により囲まれた円の半径の0.35倍〜0.9倍の範囲に設定され、具体的には0.5倍〜0.85倍の範囲に設定され、好ましくは0.6倍〜0.85倍に設定され、特に好ましくは0.7倍〜0.8倍に設定され、例えば0.75倍に設定されている。また、内部冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さ、内部冷却水路と切削面との間の最小壁厚さ、及び内部冷却水路と切削逃げ面との間の最小壁厚さは、上限値と下限値との間に設定されている。下限値は、D≦1mmに対して0.08×D、及びD>1mmに対して0.08mmに設定され、具体的にはD≦2.5mmに対して0.08×D、及びD>2.5mmに対して0.2mmに設定され、好ましくはD≦3.75mmに対して0.08×D、及びD>3.75mmに対して0.3mmに設定され、例えばD≦3mmに対して0.1×D、及びD>3mmに対して0.3mmに設定されている。また、上限値は、D≦6mmに対して0.35×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.30mmに設定され、具体的にはD≦6mmに対して0.333×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.40mmに設定され、好ましくはD≦6mmに対して0.316×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.50mmに設定され、特に好ましくはD≦6mmに対して0.3×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.60mmに設定され、例えば0.2×D、或いはD≦4mmに対して0.15×D、及びD>4mmに対して0.6mmに設定される。
【0011】
ウェブの冷却水路の位置や形状を実験的に求めることによって、特に驚くほどの肯定的な結果を得ることができる。
本発明に係る冷却水路を備える工具にあっては、負荷が加えられている状態で、等量又はそれよりも高い流量の三角形状と比較した場合、局所的な応力の負荷が著しく低下するようになる。これに対し、本発明に係る挿入工具の高い機械的強度特性が、破損テストの結果により確かめられた。テストは、一般的に用いられる超硬金属からなる工具を用い、最も小さい曲率半径に対しては、外形線で囲まれた円につきその半径の0.5倍〜0.85倍の範囲をもって実行された。その囲まれた円の直径につきその0.6倍〜0.85倍の範囲、具体的には、0.7倍〜0.8倍の範囲が、特に好適であることが証明された。例えば、基準直径が4mmであり、囲まれた円の半径につきその0.75倍の最小半径を含むドリルでは、冷却水路の断面積を同じにしつつ、冷却水路の切削溝に対向する側で、応力ピークが約35%低減されるという結果が得られた。その結果、その位置での最小壁厚さの値が0.3mmしかなくても、適切なドリルの強度が得られた。他の材料からなる工具では、半径の0.35倍〜0.9倍の範囲が実用的である。仮に、より高い靭性を有し、それ故に高い耐圧縮性を有し、特に耐引張強さを備える素材を用いれば、例えば、囲まれた円の半径の0.35倍にまで下げられた最小曲率半径によって、有利な結果がもたらされる。特に負荷が存在する状態で外部に晒される工具でさえも、そのような外形寸法は実用的なものとなり得る。
【0012】
従来の三角形状の場合と比較したとき、相対的に緩やかな丸みを帯びていることで応力集中が低減することとは別に、冷却水路の外形線の曲がりが最大となる位置がウェブの最も薄肉となる壁の位置から遠ざけられるという点で、付加的な効果が存在している。その結果、壁は相対的に厚くなり、それ故に応力が最大となる位置での破損に対する耐久性が得られる。
【0013】
本発明に係る冷却水路形状を特徴付ける挿入工具において、円形状の冷却水路を備える工具と比較した場合に、冷却水路の断面積にほぼ比例して冷却水の流量が増加する。本発明に係る冷却水路の形状の技術的範囲において、断面積の増加に伴う応力集中の増加は、従来の三角形状の場合と比較して驚くほど小さく抑えられている。このように、本発明に係る冷却水路の形状によれば、冷却水の流量を同じにする円形状の場合に実施され得る断面積は、不十分な壁のスペースによる工具の不具合を引き起こすであろう。
【0014】
試験により、基準直径と適切な壁厚さとの相関関係が示され、その直径が小さな工具の場合の相関関係は、工具の直径の増加に対し比例関係である。参照例が図12〜図14に記載され、そこでは、上述した工具の基準直径を超える各場合において、最小壁厚さの上限値と下限値とがグラフにより示されている。試験によって、冷却水の供給が最大となる場所での強度を適切となものとする壁厚さが、次のように示された。壁厚さは、D≦2.5mmに対して0.08×D、及びD>2.5mmに対して0.2mmに設定され、好ましくはD≦3.75mmに対して0.08×D、及びD>3.75mmに対して0.3mmに設定され、例えばD≦3mmに対して0.1×D、及びD>3mmに対して0.3mmに設定される下限値を超えた値になる。尚、Dは基準直径を指す。従って、例えば4mmの基準直径を有したドリルにつき上述した試験を行えば、その場合の壁厚さは0.3mmになる。
【0015】
ウェブにおける応力分布の観点から見た場合、本発明に係る良好な冷却水路の形状によって、そのような薄肉の壁であっても、工具の強度を高くして、それ故に耐用寿命を長くすることができる。各場合において、前述の1mmの直径に対して0.08mmの最小壁厚さを提供することは正に適切である。
【0016】
他方で、最小壁厚さは、所望の流量によってのみ最高値の少し前で制限されている。本文中において、次に示す値が、そのような冷却水路の形状を実用的にするのに適した最大値である。D≦6mmに対して0.35×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.30mmに設定され、具体的にはD≦6mmに対して0.333×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.40mmに設定され、好ましくはD≦6mmに対して0.316×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.50mmに設定され、特に好ましくはD≦6mmに対して0.3×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.60mmに設定され、例えば0.2×D、又はD≦4mmに対して0.15×D、及びD>4mmに対して0.6mmに設定される。
【0017】
本発明に係る冷却水路の形状は、特に、より小さな工具に適しており、その場合におけるウェブのスペースの利用法であって、強度及び冷却水の流量に関して最適化されている利用法は、特に重要である。これらの所見が前記上限値に反映されており、本発明によれば、最小壁厚さに対して、上限値がより小さい直径の範囲と比較した場合に、所定の基準直径を超えてより顕著に増大する。
【0018】
特に、基準直径と共に、冷却水路の断面積が直線的に増加するときの上述した6mmの直径は、例えば深穴ドリルのような各用途の場合、理にかなっている。なぜならば、潤滑剤の要求が、冷却水路の断面積が比例関係に基づいて増加する場合にも満たされるからである。当然のことながら、最小壁厚さに対しより大きな直径となる場合、適切な強度を備える上に優れた冷却水の供給が得られるよう、本発明に基づく下限に近づけることも理にかなっている。
【0019】
本発明に基づく値、最小壁厚さの上限値に関する値は、このような検討材料を反映している。本発明に係る冷却水路の形状は、具体的には0.2×D以下の範囲における最小壁厚さについて実用的である。特にD≦0.4mmに対して0.15×D以下の範囲の最小壁厚さについて、及びD>4mmに対して0.6mmの最小壁厚さについて、驚くほどに良好であることが示された工具の強度を維持した上で、利用可能な設計スペースに関する冷却水路の形状や寸法により、流量を増大させることが、本発明によって実現される。
【0020】
しかしながら、多くの場合、径の異なる工具はブランク、特に同じ径を有した焼結ブランクから製造されることを考慮すべきである。一般的に、焼結ブランクは、予め、内部に冷却水路が形成された円柱状の棒である。換言すれば、例えば、基準直径が4mm、5mm、6mmの工具は、直径が6.2mmのブランクから製造される。4mmの工具と同じ冷却水路を備える6mmの工具の場合、冷却水路と工具の外周との間の最小壁厚さは1mmだけ大きくなる。こうした製造技術の面に基づいて、最小壁厚さの上限値は、D≦6mmに対して0.35×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.30mmに設定され、具体的にはD≦6mmに対して0.333×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.40mmに設定され、好ましくはD≦6mmに対して0.316×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.50mmに設定され、特に好ましくはD≦6mmに対して0.3×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.60mmに設定され、これらは、本発明に係る冷却水路の形状の範囲内である。
【0021】
この点で、冷却水路と、ドリルの外周又は切削面又は切削逃げ面との間の最小壁厚さは、当然のことながら、それぞれ異なるように選択されている。強度の観点から言うと、特に冷却水路と切削面との間の最小距離又は最小壁厚さは明白で、その最小距離は、冷却水路と切削逃げ面との間の最小壁厚さに関して、より大きくすることができる。同様に、冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さについて、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さは、強度に関する更なる要求を考慮するため、より大きな値を与えることができる。他方で、例えば上述した製造面の場合、実際の適用に関連して、異なる直径を有した工具に対して同一径のブランクが用いられ、その場合、冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さは、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さよりも大きくなっている。
【0022】
本発明によれば、総じて、冷却水の流量及び強度が共に従来よりも高くなる回転切削工具について、その1つ又は複数のウェブにおいて利用可能な設計スペースを活用することができる。その冷却水路の形状によれば、最小壁厚さを極力小さく抑えることができ、また、冷却水の流量の増大が図られるにも拘らず、工具の適切な強度を全体的に実現することができる。
【0023】
この構成において、提案された断面形状は、ドリル刃、研磨刃、フライス刃のいずれにも同じように適している。本発明に係る冷却水路の形状は、例えばステップドリルといった段付工具の場合にもまた有効に使用することができる。この場合において、述べられた基準直径は、工具の先端における直径、即ちドリルによる導孔の直径を参考にしている。
【0024】
それ故に、本発明に係る丸みを帯びた形状の冷却水路を備えるドリルは、圧縮力及び捻れ力の両方により荷重を受け易いとき(主に穴開け中)と、横軸方向の荷重及び曲げモーメントの結果生じる荷重(加工されるワークに入り込む際に生じる)を受け易いときとに、長い耐用年数に渡り破損されないで高負荷に耐えることができる。同様に、横軸方向の荷重及び曲げモーメントの結果生じる荷重もまた、フライス盤や対向フライス盤が切断されるのに伴い生じる。他方で、達成される冷却水の流量は、工具の全長に従う圧力損失や流量低下について厳しい要求に直面する。
【0025】
本発明に係る冷却水路の形状の場合、応力集中の低下によって、少なくとも流量が概ね同一となる従来構成の挿入工具と比較したとき、一方で、同じ壁厚さをもって安定性をかなり向上させることができ、他方で、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さを抑えることができる。その結果、冷却水路の断面、及び流量はそれ相応に増大するようになる。
【0026】
大きな半径に起因する影響として、良好な水力半径、即ち冷却水路の大きな断面積は、冷却水路を囲む外側面に対し、結果として圧損の削減と共に冷却水の流量増加に寄与している。従って、パイプ内の摩擦力や圧損により生じる抗力にかなり依存する平均流速は、断面積を同じに保ちつつ流量の増大が図られるように、従来の三角形状の場合に比して大きく設定されている。
【0027】
本発明に係る冷却水路形状は、一方で適切な流量が他方で適切な強度がそれぞれ対立して問題となる工具に特に適しており、このことは、概して径が小さく、及び又は、全長の長い工具の場合に該当する。請求項2の更なる長所によれば、この構成において、基準直径は1mm〜25mmの範囲に設定され、具体的には1mm〜16mmに設定される。しかしながら、本発明に係る冷却水路の形状の長所は、基準直径が1mm〜12mm、具体的には1mm〜6mmである更に小さい工具の場合、特に重要である。
【0028】
しかしながら、直径がより大きい工具の場合ですら、本発明に基づく断面形状は、特にドリル孔から切削片を押し出すのに充分な圧力を提供するため、内部冷却水路内の冷却水が1000バール(10000kpa)にまで圧力が高められたドリルによって深穴を加工する場合、冷却水の供給を最大にするのに実用的である。
【0029】
本発明に係る断面形状は、例えば、一枚刃のドリルに適用することができる。しかし、それは、二枚刃及び複数刃の場合、特に都合の良いものとなる。なぜなら、それらの場合、幅狭なウェブが相互に関連し合って、内部冷却水路の設計スペースが一層制限されてしまうからである。更に、本発明に係る冷却水路形状は、直線状の溝、及びヘリカル状又は螺旋状の工具にも適している。
【0030】
請求項4に係る実施形態の長所において、冷却水路断面の2箇所の最大湾曲ではそれらの動径座標が同じで、冷却水路断面により囲まれた円の動径座標と同じか、又はそれよりも大きく設定されている。請求項5によれば、2箇所の最大湾曲に適用される半径は同じである。請求項6によれば、冷却水路の断面は、ドリルの軸から見て放射状に広がる軸線に対し対称である。これらの改良点は、基本的に対称性を持つウェブの形状を反映し、また、試験により求められた最小壁厚さを維持しつつ、ウェブの冷却水路の断面に対する利用可能な設計スペースを反映している。これとは別に、利用可能な設計スペースを有効利用するため、ウェブの後部に対向する側を拡大するのに先立ち、主刃が始動する側でウェブを径方向に拡大することを条件に、冷却水路の断面形状を非対称とすることも考えられる。冷却水路の主刃に対向する側がより大きな荷重を受ける一方、ウェブの後部に対向する側は荷重をほとんど受けないという事実から、非対称な形状を考慮することもできる。
【0031】
請求項7に係る冷却水路の断面が楕円形状であれば、特に有利であることが示されている。楕円の主軸と副軸との比の値が好ましくは1.18〜1.65の範囲に設定され、特に好ましくは1.25〜1.43の範囲に設定され、例えば1.43に設定される。本発明の文脈中に記載される楕円とは、数学的に厳格な意味の楕円(x/a+y/b=1)に限定されず、製造技術上の楕円、即ち概ね楕円であることも含まれる。
【0032】
直線溝付きのHSSドリルの場合、その内部に楕円形状の大きな冷却水路断面が更に圧延されている。この処理において、ウェブに楕円形状の穴をドリル加工するため、楕円の最小半径と同径のフライス刃が使用される。その場合、最大湾曲における最小径から始められて、その処理は最小湾曲における最大径へと進行する。この処理において、半径は徐々には変化しないが、最大径から最小径へと移行する領域だけで変化するものの、最大湾曲における最小径は0から外れた大きさに従って維持されている。
【0033】
しかしながら、螺旋状の冷却水路を備える工具だけが、例えばタングステンカーバイド系の超硬金属から好んで製造される訳ではない。この構成において、押出プレス成形のため可塑化された素材が、例えばコバルトとパラフィン等の可塑剤というように、超硬合金の粉末に結合剤の添加物を加えたものから一定の作業を通じて製造される。他の焼結素材と同様にセラミックスやサーメットの利用も可能で、その場合、例えば押出プレス成形で硬化される前の生素材がまだ軟らかいうちに冷却水路の断面形状を画定することができる。本文中において、参照例が、ドイツ特許公開第42 42 336 A1号明細書により例えば提供され、それは既に序文にて述べられている。しかし、理論上、螺旋状の工具の場合についても、例えばレーザ焼結プロセスを利用する高速度鋼(HSS)や、それに類似した鋼材からなる工具において、本発明に係る形状をした冷却水路を組み込むことは可能である。
【0034】
以下、押出プレス成形についても更に述べられ、それは、本発明に係る冷却水路を備える螺旋状の工具の製造に適している。
この方法において、最初に、押出成形プレスヘッド内の可塑性材料が基本的に捻れの無いようにノズル口の中へと流入され、その後、排出口を通って押し出されるのに先立ち、ノズル口の中をピンの長手方向の軸線に沿って押圧される。そのピンのうち少なくとも一つは、ノズルのつぼ金に安定な状態で取付けられている。この構成において、ノズル口は円筒状であって、外周が完全な円柱形状のブランクを形成すべく、基本的には滑らかな表面を含むことが望ましい。材料の流れに沿うピンは、ノズルのつぼ金に対し回転不能に取付けられている。この構成において、ピンの螺旋ピッチの結果としてだけでなく、ノズルの回転部位の結果としても、半径方向の一成分がノズルの回転部位によって誘導される。
【0035】
このようにして全体的に螺旋状の流れが得られ、回転速度が同調するのであれば、押出材料が螺旋ピッチを基本的に流れるように、即ちピンの径方向の高所にある粒子がピン形状に対応する流れ方向を有するように、ノズル口内に突出している螺旋状のピンピッチに従って回転部位の上を流れる。その結果として、ピンの位置が固定されかつ回転不能であるにも拘らず、ピンの曲げ変形を阻止することができる。更に、押出材料の柔軟な変形や微細構造の不均一さや材料中の密度分布を防止することができる。なぜなら、流れの径方向の成分は、例えばガイド羽等の捻れ手段や偏向手段により負荷を受けないためである。しかし、ノズルの回転部位の回転運動によって専ら達成される。従って、流れの径方向の動きは、流れの途中にある障害物の一つによる偏向によってではなく、単に押出材料が生来持つ摩擦力のみによって生じ、その摩擦力を通じて、材料がノズル部の回転運動に従うように搬送されるようになる。その結果、このようにして誘導された回転運動は、ノズル壁から広がり、安定した螺旋状の流れが発生するまで、即ち横軸方向の応力に依存し、それ故に押出材料の粘度及び頑強さに依存する関係に縛られるまでの間、ノズルの内部に向かって個々に延びる。
【0036】
その結果、押出材料の微細構造は、捻れ手段により螺旋状の流れが負荷を受けている場合、ノズルからブランクが押し出された後、続いて回転が生じる不安の無いように、密度に関する不均一性や歪みのほとんど無いものである。本発明に係る方法によれば、優れた螺旋の精密さを備えるコンパクトな生材を製造することができる。
【0037】
断面楕円形状の冷却水路の場合、最大湾曲に集中する応力が低いことに起因して、冷却水路は、径方向のより外方に最大湾曲が位置する形状よりも、冷却水路と主刃との間の最小壁厚さをより薄くすることができる。これは、楕円形状の中では、最大湾曲の半径がより小さい半径を有するためである。楕円形状の冷却水路とは異なり、特に製造技術上の観点から見て、有利な更なる形状もまた存在し、その場合、冷却水路の形状は楕円を示さない。
【0038】
特に請求項8に係る形状の冷却水路を備える螺旋状の工具の場合、最大湾曲は、技術上の観点から見て、囲まれた円の中心に対してその外側に位置変更されている。この場合、押出プレス法で使用されるピンの製造プロセスを制御することが容易となり、ピンによって内部冷却水路の螺旋が決定される。冷却水路を製造するため押出プレス法で用いられる螺旋ピンは、押出プレスノズルの上流に位置するつぼ金に配置され、そのピンによって、冷却水路が材料中に形成される。楕円形状の螺旋ピンの製造は相対的に困難であるが、最大湾曲が外方に移動された螺旋ピンの製造は、ワイヤの内側にある相対的に大きな外形部分によって比較的簡素化されている。その外形部分は、図面形状に正確に適合させるのに役立つ。
【0039】
この点において、冷却水路が径方向の内側に直線状の縁部を備え、それにより回転中、ワイヤが、図面形状に安全に支持され得るのであれば、特に有利なものとなる。
試行及び数値解析によれば、そのような断面形状の冷却水路により、適切な最小半径及び最小壁厚さが維持されるのであれば、断面楕円形状の冷却水路の場合と同様に、応力集中と冷却水の流量とについて良好な結果が示された。最大湾曲の半径はより小さいことに起因して、楕円形状と比較した場合、最小壁厚さはまた一方で大きくなる。
【0040】
常識の範囲であれば形はどうあれ、いくつかの請求項の特徴を組合わせることができる。
最新式の高性能ドリルのためあらゆる一般的な材料がドリル用材料として用いることができ、例えばHSS高速度鋼、及びあらゆる種類の超硬合金が挙げられる。これとは別に、セラミックス、サーメット、又は他の焼結金属材料もまた、本発明に係る工具を製造するのに適している。
【0041】
更に、本発明に係る工具又はその構成部品は、通常、少なくとも鋭利な刃の部分に被膜を備えている。超硬材料からなる被膜の場合、そのような被膜を薄くすることが好ましく、被膜の厚さは、0.5μm〜3μmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0042】
超硬材料被膜は、例えばダイヤモンドからなり、好ましくは、単結晶ダイヤモンドからなる。しかし、超硬材料は、被膜が適切な薄さとなるよう堆積されることを理由に、窒化チタンや窒化チタンアルミニウムからも製造可能である。他方で、超硬材料被膜は、TiC、Ti(C,N)等のセラミックスであってもよく、具体的にはAl,NbC,HfN,Ti(C,O,N)、TiC/Ti(C,N)TiNからなる多層被膜、多層セラミックス被膜等が挙げられ、とりわけ、TiNやTi(C,N)等の中間層を含むものが挙げられる。
【0043】
更に、又はそれとは別に、軟質材料を用いて、それを少なくとも溝の部分に設けたものであってもよい。そのような軟質材料被膜としてMoSが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の技術的範囲を明確にすべく本発明に係る複数の冷却水路を示した二枚刃ドリルの断面図、
【図2】図1に示す冷却水路の一実施形態を備えるドリル工具の等角図、
【図3】上側ウェブが従来の三角形状の冷却水路を示す一方、下側ウェブが本発明の一実施形態に係る冷却水路を示す二枚刃ドリルの断面図、
【図4】図3に示す冷却水路の実施形態を備えるドリル工具の等角図、
【図5】上側ウェブが従来の三角形状の冷却水路を示す一方、下側ウェブが本発明の更なる実施形態に係る冷却水路を示す二枚刃ドリルの断面図、
【図6】図5に示す冷却水路の実施形態を備えるドリル工具の等角図、
【図7】上側ウェブが従来の三角形状の冷却水路を示す一方、下側ウェブが本発明の更なる実施形態に係る冷却水路を示す二枚刃ドリルの断面図、
【図8】図7に示す冷却水路の実施形態を備えるドリル工具の等角図、
【図9】上側ウェブが従来の三角形状の冷却水路を示す一方、下側ウェブが本発明の更なる実施形態に係る冷却水路を示す二枚刃ドリルの断面図、
【図10】図9に示す冷却水路の実施形態を備えるドリル工具の等角図、
【図11】断面三角形状の冷却水路を一般的な態様で用いた比較可能な工具、
【図12】冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さ(dAUX)、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さ(dSPX)、同様にドリルの基準直径を超える冷却水路と切削逃げ面との間の最小壁厚さ(dSFX)に関し入力される本発明に基づく下限値Wmin,1,Wmin,2,Wmin,3,Wmin,4のグラフである、
【図13】冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さ(dAUX)、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さ(dSPX)、更にはドリルの基準直径を超える冷却水路と切削逃げ面との間の最小壁厚さ(dSFX)に関して入力される本発明に基づく上限値Wmax,1のグラフである、及び、
【図14】冷却水路とドリルの外周との間の最小壁厚さ(dAUX)、冷却水路と切削面との間の最小壁厚さ(dSPX)、更にはドリルの基準直径を超える冷却水路と切削逃げ面との間の最小壁厚さ(dSFX)に関して入力される本発明に基づく上限値Wmax,1,Wmax,2,Wmax,3,Wmax,4,Wmax,5,Wmax,6のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好適な実施形態について図を参照してより詳細に説明する。
先ず、図1を参照すれば、2つのウェブ2と2つの切削溝1とを備える2枚刃のドリルの断面図が示されている。ウェブは、切削する側で切削面5により画定される一方、切削しない側で切削逃げ面6により画定されている。ドリルの外周には部材番号7が付されている。切削面5及び切削逃げ面6は、直径dのドリルの軸部から各ウェブ2の幅をドリルの基準直径Dに至るまで広げている。この構成において、各ウェブ2は、ウェブ中心線Sに対して概ね対称で、図中には、ドリルの軸Aから見て放射状に示されている。下側ウェブ2上を走る対称線S上には、円Kの中心Mが配置され、円Mは、各冷却水路孔3の内側に完全に収まるように配置されている。上側ウェブには、同じく直径2Rの円Kの中心M’’が配置され、円Kは、切削面5から離れてその後部に向かって僅かに位置が移動し、各冷却水路孔3の断面領域の内側に完全に収まるよう配置されている。
【0046】
上記プロセスにおいて、各冷却水路を囲む幾つかの冷却水路の外形線30,31,32が、本発明の種々の実施形態に基づいて互いに比較されている。下側ウェブには、冷却水路3の楕円形状の外形線30が実線で示され、また冷却水路3の更なる外形線31が点線で示されている。上側ウェブには、冷却水路3の外形線32が点線で示されている。
【0047】
この態様において、冷却水路の外形線30,31は、対称線に対して対称な形状を有しているが、冷却水路の外形線32は、切削しない側でのみ、円Kを接線方向に囲むことで画定される外形線から逸脱している。最大湾曲には、半径R,R,R’’がそれぞれ付され、外形線30,31は、同じように曲げられた2つの最大湾曲をそれぞれ有しているが、外形線32は、半径R’’の最大湾曲を1つだけ有している。
【0048】
図は、本発明に基づく冷却水路の断面形状を使用することで、直径がdのドリルの軸に対する距離を同じに維持しながら、円の直径が2Rの冷却水路孔が有する冷却水路の領域、即ち、冷却水路について、切削面又は切削逃げ面に対向する領域での流量がかなり増加されることを示している。
【0049】
この構成において、流路面積の増加率は、順守すべき最小壁厚さによって制限され、ここでは、明瞭さのために最小壁厚さdSPE,dSPA,dSPA’’だけを図示している。冷却水路の各外形線30,31,32においては、冷却水路3及び切削面5間におけるドリルの耐破損性を提供することがとりわけ重要である。
【0050】
続いて、最小壁厚さは、ドリルが実現すべき最低限の強度によって規定されるだけで、それ故に、各冷却水路の各外形線30,31,32の最大湾曲における半径R,R,R’’によっても規定される。このことは、楕円形状の冷却水路の外形線30は、最大湾曲を外方に移動させることで、外形線31,32(最小壁厚さがdSpA)よりも小さい最小壁厚さdSPEを使用できる点で、反映されている。
【0051】
この構成において、冷却水路の外形線30,31は、基本的に冷却水路3及び切削逃げ面6間の最小壁厚さ(図示せず)に対応して、冷却水路3及び切削面5間の最小壁厚さdSPE,dSPAを維持している。これとは対照的に、例えば、外形線32は、切削面5に対向する側で、切削面5から見て外方に向く側よりも大きな最小壁厚さdSPA’’を有している。一方で、囲まれた円の中心Mは、切削する側から離れて配置され、また他方で、冷却水路の外形線32は、切削逃げ面6に対向する側にのみ最大湾曲(半径R’’)を有している。冷却水路の外形線32の構成は、本発明の文脈中において、冷却水路の断面では、最大湾曲が切削面に対向する側に位置する場合にも可能である、ということを更に示している。
【0052】
図2は、断面楕円形状の外形線30を有した螺旋状のドリル工具の等角図を示している。2つのウェブ2において、それらは、螺旋状の切削溝1により互いに分離され、その工具は主刃4を備えている。切削溝1及びウェブ2は、螺旋角度30°をもって螺旋状にドリルシャフト9にまで延びている。尚、ドリルシャフト9は完全な柱状に形成され、ドリルシャフト9によって、ドリル工具が、キャリアやチャックに挟持される。冷却水路3は、工具の全長に渡りその内部を貫くように延びると共に、切削溝1やウェブ2等と同じく螺旋角度をもって捻られている。
【0053】
特に多大な負荷を受ける場合、固体硬質材料からなるドリル工具が用いられ、その材料は、優れた耐圧縮性、耐変形性、及び耐摩耗性を与える。そのような高機能工具はまた、例えば硬質材料の機械加工、乾式機械加工、最低量の注油での高速切削加工HSCの際に受けるかなりの高負荷にも耐え得る。更に、最低量の潤滑性能と、かなり向上した切削性能との対象は相互に排他的ではないが、その代わりに同時に実行することができる。最低量の注油での使用のため開発されたドリル工具は、従来の冷却水潤滑のための工具と比較した場合、例えば供給量をかなり増大させて作動する。このプロセスにおいて、冷却水の流量は、明らかに重要な役割を果たしている。
【0054】
近時、所謂、高性能切削プロセス(HPC)において、必要なプロセスパラメータを全て考慮しつつ、製造コストの更なる低減に対する試みが継続して行われている。工具の場合において、製造コストはさておき、とりわけ、基本的な作業時間と耐用年数とは決定的に重要であり、これらは、工作機械/高性能スピンドルの中でも順次、達成可能な送り速度に決定的に依存し、またそれ故に達成可能な回転速度に依存している。
【0055】
本文中で、送り速度は、回転速度だけでなく、切削屑除去処理での詰まりを阻止することの必要性によっても制限されている。この点において、図2に示す螺旋状工具は、本文中図4,6,8,10に参照例として示された直線溝を備える工具と比較した場合に決定的に有利である。螺旋形状によれば、切削屑及び潤滑剤の混在物を除去することを一層確実なものにする。図2に示す工具では、冷却水の大部分が切削溝1内へと直接送り込まれる。これは、冷却水の大部分が切削溝に直接に流入されるように、冷却水路3の出口表面が、所謂4つの表面研磨パターンにより区分された自由表面13の各部に渡って延びていることによる。切削屑を除去できる流れに対する更なる改良のため、螺旋状の切削溝がドリルの先端からシャフトに向かって拡大するよう形成することもできる。芯出しの正確さに関する限り、螺旋状の工具は、そうした工具がドリル穴の中でドリルの外表面全体により支持されるという理由からも有利である。この効果に対し、図2に示す工具は、主刃のコーナー部から始まる支持ランド11を備えている。
【0056】
他方で、工具における応力は、支持される程度を超えて上昇してはならず、さもなければ、工具の破壊や摩耗等が生じるおそれがある。これは、冷却水路の形状が、ドリルの有用性に関し明確な基準となることを示している。
【0057】
最終的には、本発明に係る冷却水路の形状は様々な試みに変更される。このプロセスにおいて、基準直径が同じであり、かつ冷却水路を除く形状が同じある工具は、多く場合、圧力や捻れが含まれる負荷を受け易く、溝底部、即ち冷却水路の断面形状における最大湾曲にて応力ピークが生じることは明白であった。
【0058】
例えば、基準直径Dが4mmであって、ウェブが直線状に広がるように設けられ、かつ直線溝を備える6つの二枚刃ドリルは、ウェブ幅と溝幅との比が1:1である場合、860Nの圧力と0.8Nmの捻れモーメントとを受けていた。これらのドリルが、図1、及び図3〜図11に示されている。
【0059】
円形状の冷却水路を備えるドリルが図1に示されている(どの場所であっても、冷却水路の外形線は半径Rの囲まれた円と一致している)。図3〜図10は、本発明に係る冷却水路を備える4つのドリルを拡大して示している。冷却水路の外形線30E(図3,図4)、30I(図5,図6)、30II(図7,8)、及び30III(図9、図10)は、それぞれ半径Rの円を接線方向で包囲している。同一の特徴が、図1と同じ関連した特徴を備えて示されている。
【0060】
図4、図6、図8、及び図10は、本発明の一実施形態に係るドリルの等角図をそれぞれ示している。この構成において、ドリルは、直線状の切削溝1、及び主刃4の側面上と主刃4から見て外方に向く側面上とに各ランド11,12が設けられたウェブ2を備えている。冷却水路3は、ドリルの内部を貫通して、ドリルの先端8から、ドリルシャフト9においてドリルの反対側の端部にまで延びている。この構成において、ドリルの自由表面(番号付さず)に冷却水路3の出口が設けられ、その自由表面は、横軸刃を短くする先端形状10により後方に向かって区画されている。図3、図5、図7、及び図9は、図4、図6、図8、及び図10に示されるドリルの断面形状を示している。比較のため、下側ウェブに示された本発明に係る冷却水路の形状は、各上側ウェブに示された従来の三角形状の冷却水路に比較されている。
【0061】
図11は、半径Rの一致した円において、従来の三角形状の冷却水路を備えるドリルの等角図を示している。図2、図4、図6、図8の断面図の各々において、このように設計された冷却水路の形状が、本発明に係る冷却水路の形状に比較されている。
【0062】
符号dAUX、dSPX、及びdSFXは、冷却水路3及び切削面5間の最小壁厚さ、冷却水路3及び切削逃げ面6間の最小壁厚さ、冷却水路3及び外周面7間の最小壁厚さをそれぞれ示し、R1X,R2Xは、冷却水路の外形線における最も小さい径と最も大きい径とをそれぞれ示している。ここでXは、E,T,I,II,IIIを代表している。三角形状の冷却水路の各値として、符号DAUX、DSPX、及びDSFXが付されている。
【0063】
次に示す値が、冷却水路の形状のために使用されていた。
図1は、R=0.4を有した円形状の冷却水路、
図2及び図3は、主軸2a=0.55mm、副軸2b=0.4mmを有した楕円形状の冷却水路の外形線30E、
図4及び図5は、最も小さい径R1I=0.3mm、R2I=0.6mmを有した概ね楕円形状の冷却水路の外形線30I、
図6及び図7は、最も小さい径R1II=0.3mm、最も大きい径R2II=0.5mmを有した概ね楕円形状の冷却水路び外形線30II、
図8及び図9は、最も小さい径R1III=0.2mm、最も大きい径R2III=0.5mmを有した概ね楕円形状の冷却水路の外形線30III、及び、
図2、図4、図6、図8と共に、図10は、最も小さい径R1T=0.1mm、最も大きい径R2T=0.4mmを有した三角形状の冷却水路を示している。
【0064】
この構成において、円形状の冷却水路の断面積は、他の冷却水路の断面積よりも明らかに小さいが、残りの冷却水路の断面積はほぼ同じである。
円形状 0.50mm
外形線30E: 0.69mm
外形線30I: 0.63mm
外形線30II: 0.67mm
外形線30III:0.66mm
三角形状: 0.65mm
切削面5に対向する側(主刃から0.25×Dの間隔をおいた位置)の最大湾曲についてその最大応力ピークに関する評価の際、本発明に係る実施形態の具体的な長所が明らかになってきた。本発明に係る冷却水路の形状では、三角形状の場合とほぼ同じ又はそれ以上の断面積であると同時に、かなり低い値の応力を有し、一方で、円形状の場合と比較した場合、応力ピークが直線状に増加するのに伴って、面積当たり強い増加が生じることになる。
【0065】
円形状 700N/mm
外形線30E: 980N/mm
外形線30I: 1034N/mm
外形線30II: 1031N/mm
外形線30III:1133N/mm
三角形状: 1520N/mm
図は、一切れのケーキのような形をした空きスペースの最適利用を通じて、また大きな断面積を有している三角形状の冷却水路を通じて、円形状の冷却水路の場合と同等の最小壁厚さを実現することができる、ということを示している。しかしながら、この構成において、かなり大きな応力ピークの値(1520N/mm)が発生し、そのため、破損のおそれが明らかに高くなり、及び又は、工具の耐用寿命は比例関係を超えて短くなってしまう。
【0066】
冷却水路の応力ピークに関する限り、溝底部における冷却水路の応力ピークは、三角形状の場合に比して約20%〜30%低減される。形状が三角形に近づけば近づくほど、応力ピークの増大は一層顕著なものとなる。しかしながら、この増加は、直線的ではなく、指数関数的であり、そのため、形状30IIIでさえも、まだ良好な値を得ることはできる。しかしながら、30E,30I,及び30IIの形状では、概ね一致した大きさの断面積で、ほとんど同じ値の応力ピークが得られた。
【0067】
この構成において、全ての冷却水路の形状では、切削溝と切削逃げ面との間が、工具の基準直径につきその8%〜11%の範囲に保たれていた。8%×Dのとき、図1に示す外形線32の場合、冷却水路及び切削逃げ面間の壁厚さは特に薄くなっていた。これと比較して、図3に示される工具の下側ウェブにあっては、極僅かに大きい工具の外形線が点線で示されている。点線で示された工具は、実線で示された工具の場合と同一のブランクから製造される。その結果、冷却水路3の形状、位置、及び大きさはそれぞれ同じとなる。しかしながら、極僅かに大きい工具は、冷却水路3及び外周7’間の最小壁厚さdAUE’を有し、その最小壁厚さdAUE’は、最小壁厚さdAUEよりも20%大きくなっている。
【0068】
本発明に基づく効果は、より小さい基準直径Dの場合でも明白であった。従って、基準直径D=1.2mmで、更にその寸法が上述したD=4mmのドリルと形状的に類似したものでは、荷重試験の影響が受け易くなった。試験中、捻りモーメント0.026Nm、及び圧縮力52Nをドリルに適用した。そのドリルは、次に示すような冷却水路の形状を有していた。
【0069】
円形状の冷却水路はR=0.12mm、及び面積0.045mmであり、
楕円形状の冷却水路はa=0.085,b=0.065,面積0.065mmであり、
三角形状の冷却水路は、R=0.04mm、R=0.16mm、面積0.07mmである。
【0070】
この場合も、最大湾曲における最大応力は、主刃よりも0.25×Dだけ後方の位置で測定され、その測定値は1480N/mmであり、円形状の場合の測定値660N/mmよりもかなり大きな値となった。一方で、楕円形状の冷却水路を備えるドリルの場合、広い断面における引張力ピークの大きさは950N/mmに相当するものであった。
【0071】
図12は、直径Dの各値に対する最小壁厚さの下限値Wminについて本発明に基づく値を示している。本発明に係る工具の最小壁厚さdAUX,dSPX,dSFXは、グラフWmin,1の直上又は左側、具体的にはグラフWmin,2の左側、好ましくはグラフWmin,3の左側、例えば、Wmin,4の左側に示されている。
【0072】
図13は、基準直径Dと共に、最小壁厚さdAUX,dSPX,dSFXについての上限値Wmax,1の勾配を示している。図14では、この勾配が、より好ましいとされる上限値Wmax,2、Wmax,3、Wmax,4、Wmax,5、Wmax,6に比較されている。
【0073】
当然のことながら、示された実施形態からの逸脱は、基礎となる本発明の技術的思想から離れない程度に可能である。
特に冷却水路の形状は、冷却水路の切削面に対向する側の最大湾曲の半径が、切削逃げ面に対向する側のそれよりも大きくなる場合についても考えられる。
【0074】
更に、本発明は、所望の先端形状及び溝とウェブとの比の値を備えてさえいれば、螺旋状工具であろうと、直線溝付き工具であろうと、一枚刃であろうと、複数刃であろうと限定されるものではない。そうした場合の工具では、刃が、工具の先端部に直接的に位置している。また、本発明は、切削板や変更可能な刃にネジ締結、又は溶接された工具に使用でき、また同様に、シャフトに溶接されたドリル先端部、また切削部位となる工具にも使用できる。
【0075】
本発明は、一般的な切削工具を通じて記載されている。深穴をドリル加工することは適用の専門分野を意味する、といった点は強調すべきである。本発明に係る冷却水路の形状は、相対的に基準直径の小さい場合、即ち、工具が切削部位の全長に対する基準直径の比が極端に小さい深穴ドリルの場合ですら、とりわけ有利なものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される切削工具であって、
基準ドリル直径(D)を有し、少なくとも一つの螺旋状の切削溝(1)と、工具の先端(8)からその軸(9)にまで延びる少なくとも一つのウェブ(2)とを備え、
前記ウェブ(2)は、主刃(4)と、内部冷却水路(3)とを備え、
前記内部冷却水路(3)は、前記工具の先端(8)からそれとは反端側の前記ドリルの端部にまで延びると共に、中心を有した仮想上の円を接線方向に囲む連続した非対称な断面外形線からなり、
前記内部冷却水路(3)の断面外形線は、前記ドリルの軸(A)からの距離を、前記中心と前記ドリルの軸との間の一線に沿う方向で、前記中心と前記ドリルの軸との間の距離と同等又はそれよりも大きくした少なくとも一つの最大湾曲を含む切削工具において、
最小壁厚さ(dAUX,dSPX,dSFX)は、前記冷却水路(3)と前記ドリルの外周(7,7’)との間の最小壁厚さ、前記冷却水路(3)と切削面(5)との間の最小壁厚さ、前記冷却水路(3)と切削逃げ面(6)との間の最小壁厚さであり、それらは、下限値と上限値との間の範囲内に設定され、
前記下限値は、D≦1mmに対して0.08×D、及びD>1mmに対して0.08mmに設定され、
前記上限値は、D≦6mmに対して0.35×D、及びD>6mmに対して0.4×D−0.30mmに設定され、
前記内部冷却水路(3)の断面外形線について最も小さい湾曲における半径は、その外形線により囲まれた円の半径の0.35倍〜0.9倍の範囲に設定されることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の切削工具において、
基準直径(D)は、1mm〜25mmの範囲に設定されることを特徴とする切削工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切削工具において、
二枚刃、又は複数刃の工具として具体化されていることを特徴とする切削工具。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の切削工具において、
前記内部冷却水路(3)の断面外形線は最大湾曲を含み、その最大湾曲について、前記ドリルの軸からの距離は、前記ドリルの軸及び中心間の線に沿う方向で、前記中心からの距離よりも大きく設定されていることを特徴とする切削工具。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の切削工具において、
前記内部冷却水路(3)の断面外形線において、前記切削面(5)に対向する側、及び又は、前記切削逃げ面(6)に対向する側には、前記最大湾曲よりも半径方向の内側に直線部が設けられていることを特徴とする切削工具。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の切削工具において、
前記直線部は、前記切削面(5)又は前記切削逃げ面(6)に対し平行な向きに延びることを特徴とする切削工具。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の切削工具において、
切削部分の全長に対する基準直径(D)の比が1:5〜1:200の範囲に設定された深穴ドリルの形状であることを特徴とする切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−121173(P2011−121173A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23007(P2011−23007)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2004−561065(P2004−561065)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(505226585)ギューリング,イェルク (18)
【氏名又は名称原語表記】GUEHRING,Joerg
【Fターム(参考)】