説明

冷却袋、冷却材、身体冷却装着体及びその使用方法

【課題】長時間にわたり冷却性能が変化せず、身体の冷却に使用しても身体に不快感を与えることがなく、より快適に使用することが可能な冷却材、この冷却材に使用する冷却袋、この冷却材を使用した身体を冷却する身体冷却装着体、及びこの身体冷却装着体の使用方法を提供する。
【解決手段】本発明の冷却材1は、ドライアイス2と、ドライアイス2を充填可能で、一の面11は、炭酸ガスが通過可能な多数の小孔13を備え、他の面は、炭酸ガスが通過することができない断熱材12で形成されている冷却袋3と、を含み構成される。この冷却材1を用いて身体を冷却する場合は、冷却材1を保持可能な保持部を有する衣服などの保持部に冷却材1の小孔13を有する面11が身体側となるように装着し、使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を含め被冷却体を冷却するための冷却材、この冷却材に使用する冷却袋、冷却材を用いた身体冷却装着体、及び身体冷却装着体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夏場の屋外作業、あるいは広い工場での現場作業など高温環境下での作業を快適に行うことができるように、身体を冷却する装置、商品が多く開発され、一部の装置などは販売されている。例えば、屋外あるいは広い工場などでの作業は、室内での作業と異なり、エアコンディショナなどで冷却し、作業雰囲気全体の温度を低下させることが容易ではないことから、移動式の冷風発生装置が開発されている。この冷風発生装置は、冷風を発生させるので、この装置の近傍で作業を行う場合は、快適に作業を行うことができるが、風量、冷却能力にも限界があり、この装置から離れた場所では冷却効果はない。
【0003】
作業者が移動する場合であっても作業者の身体を冷却する装置として、身体に装着し身体を冷却する衣服が提案、開発されている。身体に装着し身体を冷却する衣服としては、衣服に空気又は液体を流通させるための流路を設け、この流路に空気又は冷却水を送る衣服が提案されている。この衣服を着用することで身体を冷却することは可能であるが、冷却用の空気又は冷却水を送るためのホースが接続されるので、作業者の行動範囲も制限されてしまう。このほか身体を冷却する衣服としては、冷却材を使用する衣服が多く提案されている。冷却材を使用する衣服は、水又は水に水溶性高分子材を溶解させたゲル状物質を密閉した容器、袋に充填しこれを冷却材とし、この冷却材を、冷凍装置などを利用して冷凍させた後、これを衣服のポケットに入れ、この衣服を着用することで身体を冷却するものである。
【0004】
冷却材を使用する衣服に関しては多くの提案がなされている。例えば、胸部(特に心臓付近や胸の中心部)を冷やし過ぎると気分が悪くなる等の事態が生じるとして、衣服本体のうち着用者の胸に対応する部位以外の部位に冷却材を装着する衣服が提案されている(例えば特許文献1参照)。また冷却材が着用者の身体に直接的に触れると局所的に過冷却が生じるとして、ゲル蓄熱体を保護フィルムで被覆した後、片面に断熱プレート材を配置し、これら全体を袋体で密閉し冷却材を形成し、この冷却材を使用する場合は、断熱プレート材を身体側に向くようにして使用する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。さらに、冷却材を保持するポケット及び衣服をメッシュ状布帛で形成することで、軽量でかつ衣服内を均一に冷却することができるとする(例えば特許文献3参照)。また、冷却材に関し、従来の冷却材は、湿度の高い環境下で使用すると冷却材の周辺に結露が生じ、衣服などを濡らす問題があるとし、ドライシートと吸水性シートとで袋を形成し、この袋の中に冷却材を収納し使用する技術が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−309414号公報
【特許文献2】特開2003−328213号公報
【特許文献3】特開2002−220710号公報
【特許文献4】特開2006−136679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却材、又は冷却材を使用する衣服に関しては、上記特許文献に記載の課題、要求のほか、一般的な要求事項として冷却材が薄く、軽いこと、冷却時間が長いことなどがある。また冷却材を使用する衣服を快適に使用するには、長時間にわたり冷却性能が変化しないことが必要である。冷却材自体の温度のみならず冷却材と身体との間の伝熱状態が時間と共に大きく変化すると、被冷却体である身体の冷却部の温度も大きく変化する。このため身体が過冷却状態となったり、逆に十分な冷却感が得られなくなる。冷却材又は冷却材を使用する衣服の冷却性能を一定に維持するためには、冷却材自体のみならず、冷却材と被冷却体との間の伝熱状態の検討が必要であるが、上記の特許文献を含めこれらに関してはほとんど検討がなされていない。冷却材の冷却性能を長時間にわたり一定に維持することができれば、被冷却体の温度を一定に維持することも可能となり、身体の冷却のみならず他の被冷却体を冷却するのに有用であることは言うに及ばない。
【0006】
本発明の目的は、長時間にわたり冷却性能が変化せず、身体の冷却に使用しても身体に不快感を与えることがなく、より快適に使用することが可能な冷却材、この冷却材に使用する冷却袋、この冷却材を使用した身体を冷却する身体冷却装着体、及びこの身体冷却装着体の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却袋は、ドライアイスを充填可能で、一の面は、炭酸ガスが通過可能な多数の小孔を備え、他の面は、炭酸ガスが通過することができない断熱材で形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の冷却袋は、上記の通り、一の面に炭酸ガスが通過可能な多数の小孔を備えるので冷却袋に冷却媒体としてドライアイスを充填し、冷却袋を密閉した後、小孔を備える面を下着あるいは上着などを介して被冷却面に接触させると、小孔を備える面が冷却面となり、被冷却面を冷却すると同時に被冷却面からの入熱でドライアイスが昇華する。ドライアイスが昇華して発生した低温の炭酸ガスは、冷却面の小孔から被冷却面に向かって放出されるので、冷却面と被冷却面との間の熱伝達率が高く、その結果、被冷却面と冷却面である冷却袋表面との温度差を小さくすることが可能となる。さらに冷却面近傍は、放出された炭酸ガスにより空気中の水蒸気分圧が低下し、冷却袋の他の面は断熱材で形成されているので、湿度の高い環境で使用しても冷却袋表面が結露することがない。よって冷却袋にドライアイスを充填し冷却材として使用すると、長時間にわたり冷却性能が変化せず、衣服等が結露した水で濡れないので身体に不快感を与えることがない。また冷却袋の他の面は、断熱材で形成されているので、外部からの不要な入熱がなく冷却性能を長時間維持することができる。
【0009】
また本発明の冷却袋は、ガスが流通可能な多数の小孔を有する矩形形状の多孔性シートと、断熱性を備え、かつガスが通過することのできない矩形形状の断熱シートと、を含み、該多孔性シートと該断熱シートとを重ね合わせ、3辺の周縁部をシールし、残りの一辺の端部近傍に該多孔性シートと該断熱シートとを容易に着脱することが可能な開口部開閉手段を設け、内部にドライアイスを充填可能としたことを特徴とする。
【0010】
これにより、簡単に冷却袋を製造することが可能となり、この冷却袋にドライアイスを充填して冷却材とし、これを用いて身体を冷却すると、冷却袋の表面が結露しないので長時間にわたり冷却性能が変化せず、また身体に不快感を与えることがない。よってより快適に使用することができる。また、本発明によれば、容易に着脱することが可能な開口部開閉手段を有するので、ドライアイスの充填を簡単に行うことができる。
【0011】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、さらに、内部にドライアイスを充填し使用するとき、該ドライアイスが特定の場所に片寄ることを防止する、前記多孔性シートと前記断熱シートとの一部を中央部で結合させた、ガスが流通可能な結合部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、ドライアイスが特定の場所に片寄ることを防止する多孔性シートと断熱シートとの一部を中央部で結合させた結合部を有するので、冷却袋にドライアイスを充填し、これを冷却材として使用してもドライアイスが特定の場所に片寄らず、被冷却体を幅広く冷却することができる。また、この結合部は、ガスが流通することが可能なので、ドライアイスが昇華し発生した炭酸ガスが、冷却袋の小孔から均等に放出され、長時間にわたり快適に使用することができる。
【0013】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、前記多孔性シートは、さらに断熱性を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、本発明の冷却袋を構成する多孔性シートは、断熱性を備えるので、冷却袋にドライアイスを充填し、これを使用して身体を冷却するとき、より快適に身体を冷却することができる。さらに冷却袋の表面の結露をより確実に防止することができる。
【0015】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、前記多孔性シートは、繊維状シート又は発泡性樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、多孔性シートが繊維状シート又は発泡性樹脂からなるので、簡単にまた安価に冷却袋を製造することができる。
【0017】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、前記多孔性シートは、吸水性繊維からなり又は吸水材を含有し吸水性を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、多孔性シートを吸水性繊維とすることができるので、冷却袋にドライアイスを充填し冷却材としたとき、作業環境中の湿度が非常に高く冷却袋の表面に結露が生じたとしても、結露した水は、直ちに多孔性シートに吸水される。この結果、作業環境中の湿度が非常に高い場所で冷却袋を使用しても、冷却袋の表面は常時乾いており、長時間にわたり冷却性能を維持し快適に使用することができる。これについては、吸水材を含有する多孔性シートとした場合であっても同じである。
【0019】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、さらに前記多孔性シートの外面に、熱伝達率の高い材料又は保冷材を有し、内部にドライアイスを充填し使用するとき、該ドライアイスが昇華し発生する炭酸ガスを該熱伝達率の高い材料又は保冷材の外面に導く孔又は流路を有することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、多孔性シートの外面に、熱伝達率の高い材料又は保冷材を有するので、冷却袋にドライアイスを充填し冷却材とすれば、身体などの被冷却体をより均一に冷却することができる。また、内部にドライアイスを充填し使用するとき、ドライアイスが昇華し発生する炭酸ガスを熱伝達率の高い材料又は保冷材の外面に導く孔又は流路を有するので、熱伝達率の高い材料又は保冷材の表面が結露することはなく、長時間にわたり冷却性能を維持し快適に使用することができる。
【0021】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、さらに少なくとも前記断熱シートの外面にアルミ蒸着シートを有することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、少なくとも断熱シートの外面にアルミ蒸着シートを有するので、赤外線などの熱線を反射し、不要な入熱を防ぐことができる。これより冷却袋にドライアイスを充填し使用しても、長時間にわたり冷却性能を維持することができる。
【0023】
また本発明の冷却袋は、前記構成に加え、さらに小孔を有する面の外面に面ファスナのフック面を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、本発明の冷却袋は、さらに小孔を有する面の外面に面ファスナのフック面を有するので、フック面のフックを衣服に直接又は面ファスナのループ面に引っ掛けることで、容易に冷却袋を固定することができる。よって、この冷却袋にドライアイスを充填し冷却材とすれば、身体など任意の場所を簡単に冷却することができる。
【0025】
また本発明は、請求項1から9のいずれか1に記載の冷却袋と、冷却媒体であるドライアイスと、を含むことを特徴とする冷却材である。
【0026】
本発明によれば、本発明の冷却材は、請求項1から9のいずれか1に記載の冷却袋と、冷却媒体であるドライアイスと、を含むので、長時間にわたり冷却性能を維持することが可能であり、これを用いて身体など被冷却体を長時間にわたり快適に冷却させることがでできる。また本発明の冷却材は、冷却媒体にドライアイスを使用するので、従来の冷却材に比較し、単位重量当たりの冷却能力が高く、冷却材をコンパクトにすることができる。
【0027】
また本発明の冷却材は、前記構成に加え、前記ドライアイスは、粉状、粒状、棒状、板状、塊状又はこれら混合物からなることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、本発明の冷却材には、冷却媒体として粉状、粒状、棒状、板状、塊状又はこれら混合物からなるドライアイスを使用することができるので、入手が容易である。また特定の形状のドライアイスに限定されないので、安価に入手することもできる。
【0029】
また本発明は、請求項10又は請求項11の冷却材と、該冷却材を保持可能な保持部を有する身体に装着可能な身体装着体と、を含むことを特徴とする身体冷却装着体である。
【0030】
本発明によれば、本発明の身体冷却装着体は、請求項10又は請求項11の冷却材と、冷却材を保持可能な保持部を有する身体に装着可能な身体装着体と、を含むので、これを用いて、長時間にわたり快適に身体を冷却することができる。
【0031】
また本発明の身体冷却装着体は、前記構成に加え、前記身体装着体は、衣服、ベスト、作業服、防火服、ヘルメット、帽子又は脚、腰、頭などの保冷具であることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、本発明の身体冷却装着体を構成する身体装着体は、衣服、ベスト、作業服、防火服、ヘルメット、帽子又は脚、腰、頭などの保冷具であってもよいので、これを使用して幅広く身体を冷却することができる。
【0033】
また本発明は、請求項10又は請求項11の冷却材の小孔を有する面が身体側となるように前記身体装着体の保持部に前記冷却材を装着し使用することを特徴とする請求項12又は13に記載の身体冷却装着体の使用方法である。
【0034】
本発明によれば、本発明の身体冷却装着体を使用するときは、冷却材の小孔を有する面が身体側となるように身体装着体の保持部に冷却材を装着し使用するので、湿度の高い環境で使用しても冷却袋表面が結露することがなく、長時間にわたり冷却能力が変化しない。また衣服等が結露した水で濡れないので身体に不快感を与えることがない。
【発明の効果】
【0035】
本発明の冷却袋は、ドライアイスを充填可能で、一の面は、炭酸ガスが通過可能な多数の小孔を備え、他の面は、炭酸ガスが通過することができない断熱材で形成されているので、この冷却袋にドライアイスを充填し、冷却材として使用すれば、長時間にわたり冷却性能が変化せず、又この冷却材を身体の冷却に使用しても結露が生じないので身体に不快感を与えることがなく、より快適に使用することができる。さらにこの冷却材を、保持部を有する身体装着体に装着することで、身体を快適に冷却することができる身体冷却装着体とすることが可能となり、この身体冷却装着体を着用することで、身体を快適に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は本発明の第一実施形態としての冷却材1の断面図である。また図2及び図3は、図1中のII部及びIII部の拡大図である。冷却材1は、冷却媒体であるドライアイス2と、ドライアイス2を収納する冷却袋3とを含み構成される。冷却袋3は、矩形形状の同じ大きさの多孔性シート11と無孔性の断熱シート12とを含み構成される。多孔性シート11は、多数の小さい貫通孔13を有する。この多孔性シート11と断熱シート12は、重ね合わせた状態で、3辺の周縁部がシールされ、内部4にドライアイス2を充填可能な袋が形成される。図1では、多孔性シート11の下辺近傍部14と断熱シート12の下辺近傍部15のほか、側辺部が接着され、上辺が開口部となっている。この冷却袋3にドライアイス2を充填し、開口部を閉じれば冷却材1となる。冷却材1の大きさ、形状は特に限定されないけれども、後述のように多孔性シート11の面が冷却面となること、及び使用先を考慮すれば、板状形状が好ましい。
【0037】
3辺のシール方法は、特に限定されないので使用する材料に応じて、適宜選択すればよい。具体的には、接着剤によるシール、熱を加えて多孔性シート11、断熱シート12を融着させる方法、ミシンを用いて多孔性シート11、断熱シート12を縫い付ける方法などが例示される。冷却袋3は、内部4にドライアイス2を充填して使用するためのものであり、後述のように多孔性シート11に設けられた小孔13からドライアイス2が昇華して発生した炭酸ガスを外部に放出する。このことから3辺のシールは、内部に水を貯留する場合と同様に、完全にシールすることが好ましいけれども、液体又はガスの漏洩を全く許容しないものではなく、ドライアイス2を保持可能で、小孔13からの炭酸ガスの放出を阻害しないシール性があればよい。また冷却袋3の3辺のシール部は、強度の点から図1に示すように一定の幅をシールすることが望ましい。
【0038】
多孔性シート11の上辺近傍部16と断熱シート12の上辺近傍部17は、接着されておらず、上辺部を開閉可能な開口部開閉手段20が設けられている。この開口部開閉手段20は、多孔性シート11の上辺近傍部16に設けられた凸部18と断熱シート12の上辺近傍部17であって、凸部18に対向する位置に設けられた凹部19とからなり、凸部18を凹部19に掛止することで上辺を閉じることができる。この開口部開閉手段20のシール性は、3辺のシールと同様、完全にシールすることが好ましいけれども、液体又はガスの漏洩を全く許容しないものではなく、ドライアイスを保持可能で、小孔13からの炭酸ガスの放出を阻害しないシール性があればよい。このため開口部開閉手段20としては、周知の面ファスナ、ジッパー、チャックなどを使用することができる。なお、第一実施形態に示す冷却袋3では、3辺をシールし、残りの一辺に開口部開閉手段20を設ける例を示したけれど、2辺のみをシールし、残りの2辺に各々開口部開閉手段を設けてもよいことはもちろんである。
【0039】
多孔性シート11は、シート全体にほぼ均一に貫通した小孔13を有する。後述のように、この小孔13は、内部のドライアイス2が外部からの入熱により昇華し、発生する低温の炭酸ガスを放出し、被冷却体を冷却する。このことからこの小孔13は多孔性シート11全体にほぼ均等に存在することが好ましい。小孔13の数及び小孔13の大きさは特に限定されないけれども、口径の小さい小孔13が多数あることが望ましい。ただし、冷却材1の内部4のドライアイス2が昇華し発生する炭酸ガスを速やかに放出しないと、冷却袋3の内部4の圧力が上昇するため、冷却袋3の内部4の圧力が大きく上昇しない程度の小孔13の数、大きさが必要である。
【0040】
多孔性シート11は、上記の通り多数の小孔13を有し、内部に充填されたドライアイス2を保持可能であれば、特定の材料に限定されるものではない。よって、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂シートに小孔13を穿設したものであってもよい。また、繊維状のシート又は不織布を使用すれば小孔13を別途設ける必要がなく容易に準備することができる。さらに発泡性樹脂、例えば発泡ポリエチレン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂などを使用することもできる。このような発泡性樹脂にあって、本来備える空孔が外部まで貫通していない場合は、別途貫通孔を設ける必要があることは当然である。多孔性シー11は、被冷却体と直接的又は他の部材を介して間接的接触し被冷却体を冷却する冷却面となるので、熱の出入りが可能な材料であることが必要である。さらに多孔性シー11は、柔軟性、弾力性を有することが好ましい。多孔性シー11は、冷却性能のみを考慮すれば、熱伝達率が高い方が望ましいが、一方で、この冷却材1を用いて身体を冷却するような場合にあっては、冷却材1の冷却面の温度が極端に低いと、身体が過冷却となる場合もある。このような場合は、多孔性シート11にある程度の断熱性が必要となる。多孔性シート11の断熱性については、冷却材11の使用用途に応じて、適宜決定すればよい。なお多孔性シート11は、必ずしも一種類の材料からなる必要はないので、別途、小孔を有する断熱シートを貼付して断熱性を調整してもよい。
【0041】
断熱シート12は、外部からの入熱を遮断し、この部分からの放熱を防止する。さらにこの断熱シート12は、貫通孔を有さず、この部分から炭酸ガスが放出されないことが必要である。このような機能を備える材料であれば、特定の材料に限定されるものではない。例えば、発泡ポリエチレン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂など周知の発泡性材料を使用することができる。さらに断熱シート12は、柔軟性、弾力性を有することが好ましい。なお、断熱シート12は、必ずしも一種類の材料で形成する必要はないので、断熱材に外部に連通する貫通孔があるような場合は、内部にガスの透過を防止するシートを貼り付けた2層構造、3層構造としてもよい。
【0042】
多孔性シート11の外面21及び断熱シート12の外面22には、アルミ蒸着シート23、24が貼付されている。このアルミ蒸着シート23、24は、外部からの入熱を防止するためのものであって、特に赤外線などの熱線を遮断する。多孔性シート11の外面21に貼付されたアルミ蒸着シート23は、多数の小孔25を有し、多孔性シート11に設けられた小孔13と連通する。これにより冷却袋3内でドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスは、多孔性シート11の小孔13及びアルミ蒸着シート23に設けられた小孔25を介して外部に放出される。一方断熱シート12の外面22に貼付されたアルミ蒸着シート24は、貫通孔を有しない。断熱シート12の側からは、炭酸ガスが放出されないので、アルミ蒸着シート24に貫通孔は必要ない。なお、アルミ蒸着シート23、24に代え、多孔性シート11の外面21及び断熱シート12の外面22にアルミニウムを直接蒸着させてもよい。この際、多孔性シート11の小孔13を閉塞させることなくアルミニウムを蒸着させる必要があることは当然である。
【0043】
この冷却材1を使用して身体を冷却する場合は、この冷却材1を保持可能なポケットなど保持部を備える衣服などに装着し、この衣服を下着あるいは作業服の上から着用し、身体を冷却する。この際、冷却材1の多孔性シート11を有する面が冷却面となるので、この面が身体側となるように装着する。冷却材1を保持可能なポケットなど保持部を備え、着用し身体を冷却する衣服は、身体を冷却する身体装着体の一つであり、このほか身体を冷却する身体装着体としては、この冷却材1を保持可能なポケットなど保持部を備えるベスト、作業服、防火服、ヘルメット、帽子又は脚、腰、頭などの保冷具などが例示される。なお、身体を冷却するに当たり、冷却材1を直接作業服のポケットに入れ使用することも可能である。
【0044】
さらに、この冷却材1のアルミ蒸着シート23の外面に、面ファスナのフック面を取付ければ、フック面のフックを下着あるいは作業服に直接又は面ファスナのループ面に引っ掛けることで、身体装着体を使用することなく、冷却材1を固定することができる。これにより身体など任意の場所を簡単に冷却することができる。なお、冷却材1の冷却面である小孔13、25を有する面に面ファスナのフック面を取付けるときは、面ファスナ自身に小孔を設けるか、面ファスナのフック面の取付け面積を少なくすることが望ましい。冷却材1の小孔13、25を必要以上に閉塞させてしまうと、冷却面から炭酸ガスを均一に放出することができなくなり、本発明の効果が減少する。
【0045】
次に、上記の構成からなる本発明の冷却材1の特徴を、従来の冷却材と対比しながら説明する。氷、水溶性高分子を含有するゲルなどを冷却媒体とした従来の冷却材を詳細に検討した結果、従来の冷却材が、長時間にわたり冷却性能を一定に保持することができない要因の一つが、冷却材表面が結露することにあることが分かった。以下冷却材を身体の冷却に使用する場合を例に取り説明する。
【0046】
身体にほどよい冷却感を与えるためには、身体から一定の熱量を奪うことが必要である。周知の通り、熱の移動量は、伝熱面積、温度差及び熱伝達率に比例するため、熱伝達率が小さい場合、伝熱面積又は温度差を大きくする必要がある。冷却材を衣服に装着して使用する場合、伝熱面積は冷却材の大きさでほぼ決定されてしまう。冷却材を装着した衣服を下着、又は作業服の上に着用し、身体を冷却する場合の熱伝達の形態は、冷却材が衣服等と接触し、身体から熱を奪う伝導伝熱、衣服等の間に介在する空気を媒体として熱を移動させる対流伝熱、これに放射伝熱が加わった複合的な伝熱形態である。従来の冷却材を用いて身体を冷却する場合、伝導伝熱は、身体と服、服と冷却材との接触を介して行われることから熱移動量は大きいとは言えない。また対流伝熱は、身体と冷却材との間に介在する空気が殆ど移動することがないため自然対流となり伝熱係数は小さい。これらのことから従来の冷却材を用いて身体を冷却する場合、身体から一定の熱量を奪うには、必然的に温度差を大きくする必要がある。
【0047】
温度差を大きくするために冷却材表面の温度を低下させると、冷却材表面に結露が生じる。冷却材表面で結露した水は、冷却材を装着した衣服、下着又は作業服に吸取られる。衣服、下着又は作業服に水分が染込むと、この部分の伝熱係数が上昇し、身体表面と冷却材との間に熱伝達率が大きくなり、身体が過冷却となる。さらに身体に水が付着するので不快感が生じる。これに対して、特開2006−136679号公報に開示されるような吸水性シートを利用し、結露した水を吸取る方法も考えられるが、水を吸水した吸水性シートは、水を吸水していない吸水性シートと熱伝達率が異なる。よって、衣服、下着又は作業服に水分が染込むことを防止することができても、身体表面と冷却材との間の熱伝達率を一定に保持することはできない。
【0048】
さらに冷却材表面で結露が発生すると、冷却材の冷却能力が大幅に低下する。結露は空気中に含まれる水蒸気が冷却凝縮することで起こる現象であり、結露が起こるためには、水蒸気が水となるに必要な凝縮熱を除去する必要がある。冷却材表面に結露が発生する状態では、この凝縮熱は、冷却材が奪っており、冷却材は加熱されている状態にあると言える。水の凝縮熱は、蒸発潜熱を同じであり、約540kcal/kgと非常に大きいため、冷却材を高温多湿の雰囲気下で使用すると、予想以上に早く冷却材の能力が低下することとなる。冷却材を夏場の身体の冷却に使用するような場合は、まさに高温多湿状態にあり、冷却材の能力が大きく低下する。
【0049】
従来の冷却材が、長時間にわたり冷却性能を一定に保持することができない第二の要因は、冷却媒体自身の温度が時間ととも変化する点にある。従来の冷却材の冷却能力は、冷凍された冷却材が0℃の氷となるまでの顕熱、0℃の氷が0℃の水になるために必要な融解熱、及び0℃の水が例えば20℃となるまでの顕熱となる。このように、従来の冷却材は冷却媒体自身の温度が時間とともに大きく変化するため、使用開始直後には大きかった冷却能力も時間経過とともに減少してしまう。
【0050】
以上のことから、冷却性能を長時間にわたり一定に保持するためには、第一に冷却材表面に結露を生じさせないようにすることが必要である。冷却材表面に結露が生じないようにするためには、上記の通り、熱伝達率を大きくし外気と接する冷却材の表面温度と外気との温度を小さくすればよい。また、外気と接する冷却材の表面温度と外気との温度が大きくても、結露が生じない雰囲気を形成すればよい。本発明の冷却材1を身体の冷却に使用する場合は、小孔13、25を有する面を冷却面とする。これにより、冷却面が衣服を介して身体と接触し、身体を冷却する。さらに冷却面を介して得る入熱によりドライスアイス2が昇華し、低温の炭酸ガスが身体に向かって放出される。この炭酸ガスは身体を冷却するとともに、衣服近傍の空気を動かす。この結果、身体表面と冷却材表面との間の熱伝達率が大幅に上昇し、冷却材1の外表面の温度を比較的高くしても、十分な冷却能力が得られる。さらに炭酸ガスを身体側の衣服に送り出すことで、衣服近傍の空気中の水蒸気分圧が低下し露点が低下するため、結露が発生しにくくなる。これにより長時間にわたり、冷却性能を一定に保持することができる。さらに結露が生じないので身体に水が付着することによる不快感がない。また本発明の冷却材1は、冷却面以外の場所は断熱されているので、不要な放熱がなく、さらに長時間にわたり冷却性能を維持することができる。
【0051】
また、冷却性能を長時間にわたり一定に保持するためには、冷却材自身の温度が一定であることも必要である。本発明の冷却材1は、ドライアイス2を使用するので、冷却媒体の温度が一定である。ドライアイス2は周知の通り、大気圧の条件では、昇華し固体の状態から直接気体となる。固体のドライアイス2とドライアイス2が昇華して発生する炭酸ガスの温度は同一であり、発生した炭酸ガスは、冷却袋3の中に長時間留まることなく、小孔13、25から外部に放出されるので、冷却媒体の温度が一定となり、長時間使用しても同じ冷却能力を発揮する。
【0052】
さらにドライアイスの昇華熱は、約150kcal/kgであり、氷の融解熱の80kcal/kgと比較して約2倍である。氷の全冷却能力である氷の顕熱、氷の融解熱及び水の顕熱を合計しても、ドライアイスの昇華熱、炭酸ガスの顕熱の約半分である。よって同じ冷却能力を得るために必要な冷却材の重量は、従来の冷却材の半分でよく、冷却材を軽くすることができる。さらに本発明の冷却材1は、ドライアイスを昇華させ低温の炭酸ガスとして放出するので、時間とともに冷却材1の重量が軽くなり、快適に使用することができる。
【0053】
上記の通り、本発明の冷却材1の特徴は、冷却面を被冷却体に間接的にあるいは直接的に接触させ冷却させるとともに、被冷却体からの入熱で冷却媒体であるドライアイス2を昇華させ、発生した低温の炭酸ガスを被冷却体に向かって放出し、被冷却体を冷却する点にある。この冷却材1の機能を発揮させるポイントは冷却袋3にあり、冷却袋3に要求される必要最小限の構成要件は、次ぎの通りである。(1)ドライアイス2を充填でき、内部4をほぼ密閉することができること。(2)ドライアイス2が昇華し発生した低温の炭酸ガスを放出することが可能なこと。(3)低温の炭酸ガスを放出する部分は熱の出入りが可能であること。(4)低温の炭酸ガスを放出する部分以外は、放熱を防止すべく断熱性を有すること。よって、第一実施形態に示した冷却袋3のうち、開口部開閉手段20、アルミ蒸着シート23、24は、冷却材1の機能を高めるあるいは使い勝手をよくするための付加的機能を与えるものと言える。
【0054】
図4は本発明の第二実施形態としての冷却材30の断面図である。図1から図3に示す冷却材1と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第一実施形態の冷却材1では、冷却袋3を構成する多孔性シート11と断熱シート12との厚さがほぼ同じであったが、第二実施形態に示す冷却材30では、冷却袋33を構成する断熱シート32の厚さが、多孔性シート31に比較し厚くなっている。第一実施形態の冷却材1の説明でも記したように、本発明の冷却材では、多孔性シート31を有する面、つまり冷却面を除き、他の場所からは外部の入熱が可能な限り小さい方が好ましい。よって、第二実施形態では、断熱シート32の厚さをより厚くている。
【0055】
さらに第二実施形態の多孔性シート31は、吸水性樹脂を含有する点に特徴がある。本発明の冷却材は、冷却面から低温の炭酸ガスを放出することで、被冷却体を冷却するとともに、被冷却体と冷却材との間の伝熱性能を高め、さらに炭酸ガスを被冷却体に向かって放出することで冷却材表面の結露を防止し、もって長時間にわたり冷却性能を一定に保持する点に特徴がある。また身体へ不快感を与えないことも特徴の一つである。第一実施形態に示す冷却材1でこれを実現することができるけれども、非常に高温多湿の環境下で冷却材を使用すれば、冷却材の冷却面に結露を生じるおそれがある。これを防止すべく、第二実施形態に示す冷却材30では、多孔性シート31に吸水性樹脂を含有させる。これよりより確実に冷却材表面の結露を防止することができる。ここで使用可能な吸水性樹脂は、特定の種類のものに限定されるものでなく、紙おむつなどに使用される吸水性樹脂などを使することができる。また吸水性繊維で多孔性シート31を形成してもよい。
【0056】
また第二実施形態の冷却材30は、第一実施形態に示す冷却材1と比較し、ドライアイス2の形状が異なる。第一実施形態に示すドライアイス2が粒状であったのに対し、ここで示すドライアイス2(2a、2b、2c、2d)は、4つの塊状のドライアイスである。このようにドライアイス2の形状は特定の形状のものに限定されることなく、粉状、粒状、棒状、板状、塊状又はこれら混合物を使用することができる。種々の形態のドライアイス2を使用することができることから、入手が容易となり、また安価に入手することもできる。
【0057】
図5は本発明の第三実施形態としての冷却材40の断面図である。また図6は図5中のVI部の拡大図、図7は図5中のVII部の拡大図である。図1から図4に示す第一実施形態及び第二実施形態の冷却材1、30と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第三実施形態に示す冷却材40は、第一実施形態の冷却材1、第二実施形態に示す冷却材30と異なり、多孔質シート11の外面21にアルミ蒸着シート23に代え、銅製の網45が取り付けられている。この網45は、熱伝達性のよい材料を冷却面に置くことで、身体などの被冷却体をより均一に冷却することを目的に取り付けるものである。さらに熱容量が大きければ、冷却面をより均一とすることができるので、金属製の熱伝達率の高い材料であることが好ましい。よって銅以外にアルミニウムなどの素材が適している。
【0058】
この銅製の網45は、多数の小孔46を有するので、内側の多孔質シート11の小孔13を閉塞することがない。よって、ドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスの放出を阻害しない。この銅製の網45の小孔46の大きさ、数は特に限定されず、多孔性シート11の小孔13と連通し、ドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスを抵抗なく外部に放出することができればよい。よって、銅製の網45が形成する小孔46の位置と多孔性シート11の小孔13の位置が異なり、一部の多孔性シート11の小孔13が塞がっても、全体的にほぼ均一に抵抗なく炭酸ガスを外部の放出可能な孔が形成されていればよい。銅製の網45は、熱伝達率及び温度の均一性の点からは銅板とすることも可能であるが、本発明の冷却材は、ドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスを被冷却体に向けて放出する点に特徴があるので、銅板を使用する場合は、取付け方法に工夫が必要である。
【0059】
銅製の網45に代え、銅板を使用する場合は、多孔性シート11の外面21と銅板の内面を完全に接着させることなく、多孔性シート11の外面21と銅板の内面との間に炭酸ガスが流通可能な流路を設け、さらにこの流路及び銅板の周囲を覆うように、多孔性シート11にカバーを設ける。このカバー内部に多孔性シート11の外面21と銅板の内面との間に設けられた流路と接続する流路を設けることで、ドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスを銅板の外面(被冷却体側)に導くことができる。これにより、銅板の全面を炭酸ガスで覆うことが可能となり、銅製の網45と同じ効果を得ることができる。
【0060】
また第三実施形態に示す冷却材40は、冷却袋41の断熱シート部の構成が異なる。ここでは、断熱シートに貫通孔48を有する断熱シート42を使用した例を示す。第一実施形態及び第二実施形態に示したように、断熱シート42の部分からは、ドライアイス2が昇華し発生した炭酸ガスを放出させてはいけないので、断熱シート42の内面43にガスが透過することができないシート44が取り付けられている。ガスが透過することができないシート44は、特定の材料に限定されないので、例えばポリエチレン製シートなど合成樹脂製のシートを使用することができる。
【0061】
第三実施形態に示す冷却材40では、多孔質シート11の外面21に銅製の網45が取り付けられている例を示したけれども、銅製の網45に代え、内部に水又は水に水溶性高分子材を溶解させたゲル状物質を有する保冷材を取り付けてもよい。保冷材は熱容量が大きいので、冷却材1表面温度をより均一にすることが可能であるとともに、冷却材1表面の温度調整がより簡単なる。このような冷却材を使用すれば、身体などの被冷却体をより均一に冷却することが可能となるとともに、冷却材を快適に使用することができる。ここで使用可能な保冷材は、熱容量が大きいものであれば特に種類は問わないけれども、保冷材には炭酸ガスが通過できるような貫通孔、流路を設けるか、上記銅板の場合のように、炭酸ガスを保冷材の外面に導く取り付け方法とする必要がある。
【0062】
図8は、本発明の第四実施形態としての冷却袋50の外観図である。図1から図7に示す第一から第三実施形態の冷却材1、30、40と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。冷却袋50の基本的な構成は第一実施形態に示す冷却材1の冷却袋3と同じであるが、冷却袋の中央部に上下のシート、つまり上部のアルミ蒸着シート23及び多孔性シート11と下部の断熱シート12及びアルミ蒸着シート24とを部分的に結合する結合部51、52を有する点に特徴がある。この結合部51、52は、長手方向に直交するように、上下に2箇所設けられている。またこの結合部51、52は、冷却袋50の側辺55から側辺56まで一杯に設けられてはいないので、ドライアイス2を底部まで充填することができる。またこの結合部51、52は、冷却袋50の側辺55から側辺56まで一杯に設けられてはいないので、ドライアイス2が昇華して発生した炭酸ガスは、冷却袋50全体に行きわたる。この結合部51、52の結合方法は、特に限定されるものではなく、接着剤、熱による融着、糸で縫いつけてもよい。
【0063】
本発明の冷却材1、30、40は、身体装着体のポケットなどに装着され、これを着用して身体を冷却する例に見られるように、冷却材1、30、40は立てた状態で使用される場合が多い。このような場合、ドライアイス2自身の重さで、ドライアイス2が底部に偏りがちとなるが、本実施形態に示す冷却袋50を使用すれば、ドライアイス2の偏りを簡単に防止することができる。このような冷却袋50の結合部は、第一実施形態から第三実施形態に示す冷却材1、30、40の冷却袋3、33、41に適用可能なことは言うまでもない。
【0064】
図9は、本発明の第五実施形態としての冷却袋60の外観図である。図1から図8示す
第一から第三実施形態の冷却材1、30、40及び第四実施形態の冷却袋50と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。冷却袋60の基本的な構成は第一実施形態に示す冷却材1の冷却袋3と同じであり、基本的な機能は第四実施形態に示す冷却袋50と同じである。この冷却袋60は、上部のアルミ蒸着シート23及び多孔性シート11と下部の断熱シート12及びアルミ蒸着シート24とを部分的に結合する結合部61、62を十字形状とし、上下に2箇所、開口部開閉手段であるジッパー20、63を設けた点に特徴がある。結合部61、62を十字形状としたことで、4つの室65(65a、65b、65c、65d)を設けることができ、ドライアイス2の偏りをより確実に防止することができる。また上下に2箇所にジッパー20、63を設けることでドライアイス2の充填が簡単となる。なお、結合部61は、第四実施形態とは異なり、冷却袋60の側辺67から側辺68まで一杯に設けられているけれども、断続的に結合されているのでドライアイス2が昇華して発生した炭酸ガスは、冷却袋60全体に行きわたることができる。
【0065】
上記の通り第一実施形態から第五実施形態に示す冷却袋3、33、41、50、60の形態は、通常よく使用される袋と同じ形態を有する。本発明に使用可能な袋の形態は、このような形態に限定されるものではないので、一面が開口した襠付きの袋であってもよい。また形状も矩形形状に限定されるものではない。さら本実施形態に示す冷却袋と同じ機能を有するものであれば、袋ではなく容器であってもよい。
【0066】
本発明の冷却材1、30、40は、従来からあるドライアイスを使用した保冷材と一見類似するけれども、構成、その機能及び作用、効果は全く異なる。従来のドライアイスを使用した保冷材において、ドライアイスを、孔を有する袋に充填したものが見られる。この保冷材の袋は、ドライアイスの取り扱いを容易とするためのものであり、さらに袋に設けられた孔は、袋が破損しないようにドライアイスが昇華し発生する炭酸ガスを排出するためのものである。このためこの袋の孔は、袋の特定の面ではなく、袋全体に設けられている。このように従来のドライアイスを使用した保冷材は、ドライアイスが昇華し発生する炭酸ガスを積極的、意図的に冷却に使用するものではないため、本発明のように特定の面以外の面を断熱材で形成することもない。これらからも分かるように本発明のドライアイスを使用した冷却材1、30、40は、全く新規な冷却材と言える。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一実施形態としての冷却材1の断面図である。
【図2】図1中のII部の拡大図である。
【図3】図1中のIII部の拡大図である。
【図4】本発明の第二実施形態としての冷却材30の断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態としての冷却材40の断面図である。
【図6】図5中のVI部の拡大図である。
【図7】図5中のVII部の拡大図である。
【図8】本発明の第四実施形態としての冷却袋50の外観図である。
【図9】本発明の第五実施形態としての冷却袋60の外観図である。
【符号の説明】
【0068】
1 冷却材
2 ドライアイス
3 冷却袋
4 袋内部
11 多孔性シート
12 断熱シート
13 小孔
16 多孔性シート上辺近傍
17 断熱シート上辺近傍
20 開口部開閉手段
21 多孔性シートの外面
22 断熱シートの外面
23 アルミ蒸着シート
24 アルミ蒸着シート
30 冷却材
31 多孔性シート
32 断熱シート
33 冷却袋
40 冷却材
41 冷却袋
42 断熱シート
45 銅製網
50 冷却袋
51 結合部
52 結合部
60 冷却袋
61 結合部
62 結合部
63 開口部開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスを充填可能で、一の面は、炭酸ガスが通過可能な多数の小孔を備え、他の面は、炭酸ガスが通過することができない断熱材で形成されていることを特徴とする冷却袋。
【請求項2】
ガスが流通可能な多数の小孔を有する矩形形状の多孔性シートと、
断熱性を備え、かつガスが通過することのできない矩形形状の断熱シートと、を含み、
該多孔性シートと該断熱シートとを重ね合わせ、3辺の周縁部をシールし、残りの一辺の端部近傍に該多孔性シートと該断熱シートとを容易に着脱することが可能な開口部開閉手段を設け、内部にドライアイスを充填可能としたことを特徴とする冷却袋。
【請求項3】
さらに、内部にドライアイスを充填し使用するとき、該ドライアイスが特定の場所に片寄ることを防止する、前記多孔性シートと前記断熱シートとの一部を中央部で結合させた、ガスが流通可能な結合部を有することを特徴とする請求項2に記載の冷却袋。
【請求項4】
前記多孔性シートは、さらに断熱性を備えることを特徴とする請求項2又3に記載の冷却袋。
【請求項5】
前記多孔性シートは、繊維状シート又は発泡性樹脂からなることを特徴とする請求項2から4のいずれか1に記載の冷却袋。
【請求項6】
前記多孔性シートは、吸水性繊維からなり又は吸水材を含有し吸水性を有することを特徴とする請求項2から5のいずれか1に記載の冷却袋。
【請求項7】
さらに前記多孔性シートの外面に、熱伝達率の高い材料又は保冷材を有し、内部にドライアイスを充填し使用するとき、該ドライアイスが昇華し発生する炭酸ガスを該熱伝達率の高い材料又は保冷材の外面に導く孔又は流路を有することを特徴とする請求項2から6のいずれか1に記載の冷却袋。
【請求項8】
さらに少なくとも前記断熱シートの外面にアルミ蒸着シートを有することを特徴とする請求項2から7のいずれか1に記載の冷却袋。
【請求項9】
さらに小孔を有する面の外面に面ファスナのフック面を有することを特徴とする請求項2から8のいずれか1に記載の冷却袋。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1に記載の冷却袋と、
冷却媒体であるドライアイスと、
を含むことを特徴とする冷却材。
【請求項11】
前記ドライアイスは、粉状、粒状、棒状、板状、塊状又はこれら混合物からなることを特徴とする請求項10に記載の冷却材。
【請求項12】
請求項10又は請求項11の冷却材と、
該冷却材を保持可能な保持部を有する身体に装着可能な身体装着体と、
を含むことを特徴とする身体冷却装着体。
【請求項13】
前記身体装着体は、衣服、ベスト、作業服、防火服、ヘルメット、帽子又は脚、腰、頭などの保冷具であることを特徴とする請求項12に記載の身体冷却装着体。
【請求項14】
請求項10又は請求項11の冷却材の小孔を有する面が身体側となるように前記身体装着体の保持部に前記冷却材を装着し使用することを特徴とする請求項12又は13に記載の身体冷却装着体の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−23274(P2008−23274A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202630(P2006−202630)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(501286510)株式会社メンテック (8)
【Fターム(参考)】