説明

冷却装置を有するSQUID磁気検出装置

【課題】 磁気的に幅が広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物を検査するために好適な小型のSQUIDセンサ部を備えた冷却装置を有するSQUID磁気検出装置を提供する。
【解決手段】 検出対象物中の微小異物を検出する冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、検出対象物中の微小異物を検出するSQUIDセンサ部2と、このSQUIDセンサ部2を冷却するための冷媒を供給する冷媒タンク1とを分離し、前記SQUIDセンサ部2と前記冷媒タンク1とを互いに離隔して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物中の微小異物を検出するSQUID磁気検出装置に係り、特に液体窒素タンクをSQUIDセンサ部から分離した冷却装置を有するSQUID磁気検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒タンクが一体化された冷却装置を有するSQUID磁気検出装置が提案されている(下記特許文献1,2参照)。
図6はかかる従来の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の断面図、図7はその真空断熱容器の外形を示す模式図である。
これらの図において、SQUID磁気検出装置101は、外容器(真空断熱容器)102、内容器103、先端にSQUIDセンサ素子112が取り付けられるサファイア棒104を備えている。外容器102は、本体部105とキャップ部106を有し、キャップ部106の頂部107には透明なサファイアからなる円形の真空窓108が取付けられている。本体部105はその内部を真空引きするため、真空ポンプ(図示なし)に連結される真空経路109を備えている。ここでは、真空窓108が下向きとされるため、外容器102の本体部105は基板110とキャップ部106より背高の脚部111とを備えている。
【0003】
そして、内容器103は外容器102内に収納され、内部に冷媒としての液体窒素が導入される。113,114はそれぞれ冷媒の導入口および排出口であり、導入口113は冷媒供給源(図示なし)に接続されている。
このように構成されたSQUID磁気検出装置の外容器102の寸法は、例えば、図7に示すように、直径・高さともに20〜30cmにも及ぶことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−205401号公報
【特許文献2】特開2000−258520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置は一体的に冷媒タンクを備えているため、SQUID磁気検出装置単位の外形寸法が大きくなってしまう。そのため、SQUID磁気検出装置を狭いスペースに配置することが困難であり、各種の検出対象物中の微小異物を要望に応じて的確に検出することができないといった問題があった。
【0006】
また、昨今では、磁気的に幅が広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物(磁性金属)をSQUID磁気検出装置を用いて検査する需要が増えてきており、複数個のSQUIDセンサ素子(多チャンネルのSQUIDセンサ素子)を配置するSQUID磁気検出装置が求められている。
このような装置では、検出信号を大きくするため、被検査物とセンサの距離を数ミリメートル以下にする必要があり、SQUID顕微鏡タイプと呼ばれる特殊な構造の真空断熱容器が用いられる。
【0007】
従来の顕微鏡タイプの真空断熱容器では、センサの直上あるいは直下に液体窒素のタンクを配置して、サファイア棒などの伝熱棒で間接的に冷却する方法が一般的である。
例えば、検出幅9mmのSQUIDセンサ素子8個(8ch)を1ユニットとした真空断熱容器の場合、約72mm幅のフィルムシートのセンシングが可能となるので、幅が500mmの幅広フィルムシートをセンシングするためには7ユニットの真空断熱容器が必要となる。
【0008】
この場合、各ユニットはそれぞれ液体窒素のタンクおよび真空断熱層を有するので、真空断熱容器ユニット間の距離を離さざるを得ず、検出装置は大型になる。大型になるとSQUID磁気センサに不可欠の磁気遮蔽用の高価な磁気シールドボックスの大きさが大きくなり、装置全体のコストが高くなる。
このように大きな形状の冷媒タンクを有するSQUID磁気検出装置では、複数個のSQUIDセンサ部を狭いスペースに配置することは困難であるといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、磁気的に幅が広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物の検査に好適な小型のSQUIDセンサ部を備えた、冷却装置を有するSQUID磁気検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕検出対象物中の微小異物を検出する冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、検出対象物中の微小異物を検出するSQUIDセンサ部と、このSQUIDセンサ部を冷却するための冷媒を供給する冷媒タンクとを分離し、前記SQUIDセンサ部と前記冷媒タンクとを互いに離隔して配置することを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、金属ブロック内に伝熱ロッドが配置され、前記伝熱ロッドの先端にSQUIDセンサ素子が配置されるSQUIDセンサユニットと、このSQUIDセンサユニットを囲む真空断熱容器に接続される外部パイプと、前記SQUIDセンサユニットを配置した前記SQUIDセンサ部を封止する内部磁気シールドおよび外部磁気シールドと、前記外部パイプに接続されて、前記SQUIDセンサ部とは分離された位置に配置される前記冷媒タンクと、前記外部パイプ内に配置されるとともに、前記冷媒タンクと前記金属ブロックとを接続し、前記金属ブロックを冷却するために前記冷媒タンクから供給される前記冷媒を重力によって搬送する第1のパイプとガス抜きを行う第2のパイプとを具備することを特徴とする。
【0012】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記冷媒が液体窒素であることを特徴とする。
〔4〕上記〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記金属ブロックが銅ブロックであることを特徴とする。
〔5〕上記〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記伝熱ロッドがサファイア伝熱ロッドであることを特徴とする。
【0013】
〔6〕上記〔1〕又は〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサ部は下向きに配置されることを特徴とする。
〔7〕上記〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサユニットは前記内部磁気シールドおよび前記外部磁気シールドからなる二重磁気シールド内に複数個配置されることを特徴とする。
【0014】
〔8〕上記〔7〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサユニットは前記真空断熱容器内に多チャンネルのSQUIDセンサ素子が配置されてなることを特徴とする。
〔9〕上記〔2〕記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記第2のパイプに、装置外から室温の空気を流して前記金属ブロックの温度を上昇させることで、磁束トラップ抜きを行う機能を持たせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷媒(液体窒素)タンクとSQUIDセンサ部とを分離してそれぞれを離隔して配置することにより、狭いスペースに配置可能なSQUID磁気検出装置とすることができ、磁気的に幅が広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物を的確に検査することができる。
また、高価な磁気シールドの大きさを小さくすることができ、装置全体のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示す冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の概略模式図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本発明の実施例を示す冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の部分断面模式図である。
【図4】図3の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の平面図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す冷却装置を有するSQUIDセンサ部の配置図である。
【図6】従来の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の断面図である。
【図7】図6の外形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置は、検出対象物中の微小異物を検出するSQUIDセンサ部と、このSQUIDセンサ部を冷却するための冷媒を供給する冷媒タンクとを分離し、前記SQUIDセンサ部と前記冷媒タンクとを互いに離隔して配置する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の概略模式図、図2は図1の正面図、図3は本発明の実施例を示す冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の部分断面模式図、図4は図3の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置の平面図である。
【0019】
これらの図において、1はSQUIDセンサ部2から離されて配置される液体窒素タンク、3は8チャンネルのSQUIDセンサユニット、4は銅ブロック、5は銅ブロック4に配置されるサファイヤ伝熱ロッド、6はサファイヤ伝熱ロッド5の先端面に実装されるSQUIDセンサ素子、7は外部磁気シールド、8は内部磁気シールド、9はSQUIDセンサユニット3を囲む真空断熱容器である。また、11は真空断熱容器9に接続される外パイプ、12,13はこの外パイプ11内に配置される2本の内パイプであり、液体窒素搬送用パイプ12は液体窒素タンク1からの液体窒素を重力によって搬送して銅ブロック4を冷却する。もう一方はガス抜き用パイプ13であり、これがないと銅ブロック4の先端部まで液体窒素が搬送されず、銅ブロック4を十分に冷却することができない。さらにこのガス抜き用パイプ13に装置外から室温の空気を流して銅ブロック4の温度を上昇させることで、磁束トラップ抜きを行うという機能を持たせることができる。この時、サファイヤ伝熱ロッド5にヒータを巻き付けて銅ブロック4の温度を上昇させ、磁束トラップ抜きを行うという従来の方法を用いることもできる。
【0020】
なお、上記実施例では、複数のSQUIDセンサユニット3の銅ブロック4に1つの液体窒素タンク1から液体窒素を供給するようにしているが、これに限定されるものではなく、それぞれ単独あるいは数個の銅ブロック4ごとに供給するようにしてもよい。
また、ここでは、8個のSQUIDセンサ素子6からなる8チャンネルのSQUIDセンサユニット3が7個配置される例を示したが、これに限定されるものではない。
【0021】
なお、14はSQUIDセンサユニット3のサファイヤ窓、15は真空ポンプに連結される真空排気口、16はこのSQUID磁気検出装置によって微小異物(磁性金属)を検査する検出対象物としてのフィルムシートを示している。
このように液体窒素タンク1とSQUIDセンサ部2を分離し、それらを離隔して配置することによって、SQUIDセンサ部2を小型化することができる。これにより磁気シールド材を大幅に節約することができ、装置のコストを低減することができるとともに、メンテナンス時の分解作業が簡単になった。また、既存の製造・検査ラインに大幅な改造を加えることなく、金属異物検知装置を設置することができるようになった。
【0022】
図5は本発明の他の実施例を示す冷却装置を有するSQUIDセンサ部の配置図であり、図5(a)は冷却装置を有するSQUIDセンサ部の平面図、図5(b)は図5(a)の側面図である。
この実施例では、幅の広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物(磁性金属)を検査するのに好適な8チャンネルのSQUIDセンサユニットを10個配置したSQUIDセンサ部の例を示している。この図において、21はSQUIDセンサ部、22は8チャンネルのSQUIDセンサユニット、23は外部磁気シールド、24は内部磁気シールド、25は真空断熱容器、27は銅ブロック、28はサファイヤ伝熱ロッド、29はSQUIDセンサ素子、30はSQUIDセンサユニット22のサファイヤ窓である。ここでは、例えばSQUIDセンサ部21の幅D1 を725mm、奥行きD2 を200mmとなし、検出対象物を搬送するコンベア幅W1 を600mmとすることができる。
【0023】
なお、上記した実施例には示していないが、以下のような変形例を挙げることができる。
(1)上記実施例では、冷媒の一例として液体窒素を示したが、冷媒としてヘリウムを用いてもよい。
(2)上記実施例では、銅ブロックのみを示したが、その他の金属ブロックであってもよい。
【0024】
(3)上記実施例では、サファイア伝熱ロッドのみを示したが、その他の伝熱ロッドであってもよい。
(4)SQUIDセンサ部を下向きに配置することにより、冷媒を冷媒タンクから重力によって搬送し、金属ブロックを良好に冷却することができるが、SQUIDセンサ部を上向きに配置することを除外するものではない。
【0025】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置は、磁気的に幅が広い電極材やフィルムシートなどに混入された微小異物(磁性金属)を検査するために好適なSQUID磁気検出装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 液体窒素タンク
2,21 SQUIDセンサ部
3,22 SQUIDセンサユニット
4,27 銅ブロック
5,28 サファイヤ伝熱ロッド
6,29 SQUIDセンサ素子
7,23 外部磁気シールド
8,24 内部磁気シールド
9,25 真空断熱容器
11 外パイプ
12 液体窒素搬送用パイプ
13 ガス抜き用パイプ
14,30 サファイヤ窓
15 真空排気口
16 フィルムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物中の微小異物を検出する冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、
検出対象物中の微小異物を検出するSQUIDセンサ部と、該SQUIDセンサ部を冷却するための冷媒を供給する冷媒タンクとを分離し、前記SQUIDセンサ部と前記冷媒タンクとを互いに離隔して配置することを特徴とするSQUID磁気検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、
(a)金属ブロック内に伝熱ロッドが配置され、前記伝熱ロッドの先端にSQUIDセンサ素子が配置されるSQUIDセンサユニットと、
(b)該SQUIDセンサユニットを囲む真空断熱容器に接続される外部パイプと、
(c)前記SQUIDセンサユニットを配置した前記SQUIDセンサ部を封止する内部磁気シールドおよび外部磁気シールドと、
(d)前記外部パイプに接続されて、前記SQUIDセンサ部とは分離された位置に配置される前記冷媒タンクと、
(e)前記外部パイプ内に配置されるとともに、前記冷媒タンクと前記金属ブロックとを接続し、前記金属ブロックを冷却するために前記冷媒タンクから供給される前記冷媒を重力によって搬送する第1のパイプとガス抜きを行う第2のパイプとを具備することを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記冷媒が液体窒素であることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項4】
請求項2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記金属ブロックが銅ブロックであることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項5】
請求項2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記伝熱ロッドがサファイア伝熱ロッドであることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサ部は下向きに配置されることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項7】
請求項2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサユニットは前記内部磁気シールドおよび前記外部磁気シールドからなる二重磁気シールド内に複数個配置されることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記SQUIDセンサユニットは前記真空断熱容器内に多チャンネルのSQUIDセンサ素子が配置されてなることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。
【請求項9】
請求項2記載の冷却装置を有するSQUID磁気検出装置において、前記第2のパイプに、装置外から室温の空気を流して前記金属ブロックの温度を上昇させることで、磁束トラップ抜きを行う機能を持たせることを特徴とする冷却装置を有するSQUID磁気検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−58945(P2011−58945A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208556(P2009−208556)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(598159997)アドバンスフードテック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】