説明

冷却装置付き伝動モジュール

【課題】ナットの長さ及び直径を変更せず、ナットの温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない冷却装置付き伝動モジュールを提供する。
【解決手段】周面に転がり溝21が設けられるねじ軸20と、身部31と、身部を貫通しねじ軸が挿通されている貫通孔33と、貫通孔の壁面に設けられ、転がり溝とから負荷経路を形成する転がり溝331と、身部の外面に設けられる平面311と、平面に設けられ転がり溝と連通する二つの貫通孔312と、を有するナット30と、二つの貫通孔に対応して挿入される脚部41と、二つの脚部を貫通する循環経路42と、を有する循環子40と、負荷経路と循環経路とに複数設けられる転がり子50と、ナットの身部に設けられ、その周面にナットの平面に寄る結合面61を有し、その内部に冷却循環通路62を有し、結合面に規制溝63が設けられ、規制溝は循環子に寄る溝底面631を有する冷却装置60と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動モジュールに関し、特に、冷却装置付き伝動モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な伝動モジュール(ローラーねじ又はボールねじ)は、重負荷の場合に利用され、スラスト負荷の増加に従って、ナットの温度が増加し、ひいては精度が悪くなる。この問題を解決するために、ナットに冷却システムを設けることが一般的である。
【0003】
図1を参照する。図1は特許文献1の図面の一つである。これは、ナットの冷却技術であり、ナット11には、複数の直通穴111と、複数の円弧形溝112と、が設けられ、ナット11の先端及びフランジ端には、シールパッキン113と、エンドカバー114と、が組み付けられ、これにより、冷却循環回路が構成される。
【0004】
この方法によれば、ナット11を冷却できるが、ナット11の端面にエンドカバー114を組付けることが必要であるため、非冷却式のナットに比べてナット11の長さが増加する。このように、この方法を利用するローラーねじ又はボールねじは、ストロークが短縮する。
【0005】
図2を参照する。図2は特許文献2の図面の一つである。これは、ナットの冷却技術であり、ナット12には、冷却液入り穴121と、冷却液排出穴122と、が設けられ、ナット12の外部にスリーブ13が設けられ、これにより、冷却溝14が形成され、そしてOリング15、16により冷却液の漏れ出しを防止する。
【0006】
この方法によれば、ナット12を冷却できるが、ナット12の外部にスリーブ13を設けることが必要であるため、非冷却式のナットに比べてナット12の直径が増加する。このように、この方法を利用するローラーねじ又はボールねじで、この方法を利用しない同じ仕様のローラーねじ又はボールねじを取り替える場合には、ナット台の設計を改修することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特開2002-310258号公報
【特許文献2】米国特許第6817260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、ナットの長さを変更せず、ナットの温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない冷却装置付き伝動モジュールを提供することにある。
【0009】
本発明の次の目的は、ナットの直径を変更せず、ナットの温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない冷却装置付き伝動モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによると、周面に転がり溝が設けられるねじ軸と、身部と、身部を貫通しねじ軸が挿通されている貫通孔と、貫通孔の壁面に設けられ、転がり溝とから負荷経路を形成する転がり溝と、身部の外面に設けられる平面と、平面に設けられ転がり溝と連通する二つの貫通孔と、を有するナットと、二つの貫通孔に対応して挿入される脚部と、二つの脚部を貫通する循環経路と、を有する循環子と、負荷経路と循環経路とに転がり可能に複数設けられる転がり子と、ナットの身部に設けられ、その周面にナットの平面に寄る結合面を有し、その内部に冷却循環通路を有し、結合面に規制溝が設けられ、冷却循環通路のスタート端は冷却液を流入するための通路入り口を有し、冷却循環通路のエンド端は冷却液を流出するための通路出口を有し、規制溝は循環子に寄る溝底面を有する冷却装置と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによると、冷却装置の冷却循環通路は加工で成形されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによると、冷却装置の冷却循環通路は、複数の横方向通路と、各横方向通路を連通する長手方向通路と、を有し、通路出口は一番目の横方向通路に設けられ、通路入り口は最後の横方向通路に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによると、冷却装置の冷却循環通路は一体成形されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによると、冷却装置の冷却循環通路はU字形を呈することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却装置付き伝動モジュールによれば、次のような効果がある。
(1)ナットの長さを変更せず、ナットの温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない。
【0016】
(2)ナットの直径を変更せず、ナットの温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】特許文献1の図面の一つである。
【図2】特許文献2の図面の一つである。
【図3】本発明の一実施例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例の組合済み状態を示す斜視図である。
【図5】図4における5-5線の断面図である。
【図6】本発明の一実施例を示す斜視図であって、冷却装置、冷却循環通路及び規制溝を示す。
【図7】本発明の一実施例を示す斜視図であって、冷却装置の別の実施の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図3乃至図6を参照する。本発明の一実施例の冷却装置付き伝動モジュールは、ねじ軸20と、ナット30と、循環子40と、複数の転がり子50と、冷却装置60と、から構成される。
【0019】
ねじ軸20は、周面に転がり溝21が設けられる。
【0020】
ナット30は、身部31と、ヘッド部32(すなわち、「フランジ」と称されるもの)と、身部31を貫通しねじ軸20が挿通されている貫通孔33と、貫通孔33の壁面に設けられ、転がり溝21とから負荷経路71を形成する転がり溝331と、身部31の外面に設けられる平面311と、平面311に設けられ転がり溝331と連通する二つの貫通孔312と、を有する。
【0021】
循環子40は、二つの貫通孔312に対応して挿入される脚部41と、二つの脚部41を貫通する循環経路42と、を有する。
【0022】
転がり子50は、負荷経路71と循環経路42とに転がり可能に複数設けられる。
【0023】
冷却装置60は、ブロック状を呈し、螺子72によりナット30の身部31の平面311に締結される。もちろん、冷却装置60は、ピン又は係りリングなどによりナット30の平面311に設けることができ、係合方式によりナット30の平面311に設けることもできる。冷却装置60は、ナット30の平面311に寄る結合面61と、冷却循環通路62と、結合面61に設けられる規制溝63と、を有する。規制溝63は循環子40に寄る溝底面631を有する。
【0024】
冷却装置60の冷却循環通路62は、加工で成形され、複数の横方向通路621と、各横方向通路621を連通する長手方向通路622と、冷却機(図示せず)と接続する、通路出口623と、通路入り口624と、を有する。通路入り口624は冷却液を流入するためのものである。通路出口623は冷却液を流出するためのものである。加工された長手方向通路622(すなわち、冷却装置60の端面にある貫通孔)は、漏れ止め子72(例えば銅製プラグなど)によりシールされる。これにより、液密の冷却通路が構成される。もちろん、本発明の冷却通路の漏れ止め方法は、これに限定されなく、粘着などの方法を採用してもよい。
【0025】
特に、通路出口623は、一番目の横方向通路621に設けられ、冷却装置60の外面に設けられる。通路入り口624は、最後の横方向通路621に設けられ、冷却装置60の外面に設けられる。
【0026】
図7を参照する。冷却装置80の冷却循環通路81は、一体成形され(例えばロストワックスにより)、U字形を呈し、通路出口811と、通路入り口812と、を有する。
【0027】
伝動モジュールが運転しているときには、ナット30の平面311と接触する冷却装置60により、ナット30の熱が取られてナット30の温度を降下できる。このように、伝動モジュールの運転の精度を保持でき、そしてナット30の長さを変更せず、ナット30の温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない。
【0028】
特に、冷却装置60の通路出口623と通路入り口624とが冷却機に接続されているため、冷却機からの冷却液は、通路入り口624を経由して冷却循環通路62に流入して、ナット30から冷却装置60に熱伝導される熱を吸収して、通路出口623を経由して冷却機に戻る。このように、ナット30を間接に冷却でき、伝動モジュールの運転の精度が保持できる。
【0029】
本実施例では、冷却装置60は、伝動モジュールの循環子40を固定するための固定ブロックであるため、ナット30の直径を変更せず、ナット30の温度を降下でき、ナット台の設計を改修することも必要ない。
【0030】
また、冷却装置60は、更に、循環子40を固定するための規制溝63を有し、規制溝63は循環子40に寄る溝底面631を有するため、冷却装置60はナット30と循環子40との温度を同時に降下できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、伝動モジュールに適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
11:ナット
12:ナット
13:スリーブ
14:冷却溝
15,16:Oリング
20:ねじ軸
21:転がり溝
30:ナット
31:身部
32:ヘッド部
33:穿孔
40:循環子
41:脚部
42:循環経路
50:転がり子
60:冷却装置
61:結合面
62:冷却循環通路
63:規制溝
71:負荷経路
72:螺子
73:漏れ止め子
80:冷却装置
81:冷却循環通路
111:直通穴
112:円弧形溝
113:シールパッキン
114:エンドカバー
121:冷却液入り穴
122:冷却液排出穴
311:平面
312:貫通孔
331:転がり溝
621:横方向通路
622:長手方向通路
623:通路出口
624:通路入り口
631:溝底面
811:通路出口
812:通路入り口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に転がり溝(21)が設けられるねじ軸(20)と、
身部(31)と、前記身部(31)を貫通し前記ねじ軸(20)が挿通されている貫通孔(33)と、前記貫通孔(33)の壁面に設けられ、前記転がり溝(21)とから負荷経路(71)を形成する転がり溝(331)と、前記身部(31)の外面に設けられる平面(311)と、前記平面(311)に設けられ前記転がり溝(331)と連通する二つの貫通孔(312)と、を有するナット(30)と、
前記二つの貫通孔(312)に対応して挿入される脚部(41)と、前記二つの脚部(41)を貫通する循環経路(42)と、を有する循環子(40)と、
前記負荷経路(71)と前記循環経路(42)とに転がり可能に複数設けられる転がり子(50)と、
前記ナット(30)の前記身部(31)に設けられ、その周面に前記ナット(30)の前記平面(311)に寄る結合面(61)を有し、その内部に冷却循環通路(62)を有し、前記結合面(61)に規制溝(63)が設けられ、前記冷却循環通路(62)のスタート端は冷却液を流入するための通路入り口(624)を有し、前記冷却循環通路(62)のエンド端は冷却液を流出するための通路出口(623)を有し、前記規制溝(63)は前記循環子(40)に寄る溝底面(631)を有する冷却装置(60)と、
を含むことを特徴とする冷却装置付き伝動モジュール。
【請求項2】
前記冷却装置(60)の前記冷却循環通路(62)は加工で成形されたことを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置付き伝動モジュール。
【請求項3】
前記冷却装置(60)の前記冷却循環通路(62)は、複数の横方向通路(621)と、前記各横方向通路(621)を連通する長手方向通路(622)と、を有し、前記通路出口(623)は一番目の前記横方向通路(621)に設けられ、前記通路入り口(624)は最後の前記横方向通路(621)に設けられることを特徴とする、請求項2に記載の冷却装置付き伝動モジュール。
【請求項4】
前記冷却装置(80)の冷却循環通路(81)は一体成形されたことを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置付き伝動モジュール。
【請求項5】
前記冷却装置(80)の前記冷却循環通路(81)はU字形を呈することを特徴とする、請求項4に記載の冷却装置付き伝動モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72475(P2013−72475A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211105(P2011−211105)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(506096844)上銀科技股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】