説明

冷却装置

【課題】本発明の主な目的は、膨張手段から冷媒の熱エネルギを外部に放出させることで冷却能力が向上された冷却装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の、冷却装置40は、冷却装置40は、圧縮機41と、凝縮器42と、蒸発器44と、キャピラリーチューブ43と、送風ファン45とから成る。更に、膨張手段に相当するキャピラリーチューブ43の一部は、送風ファン45の筐体に当接するように配置されている。ここでは、キャピラリーチューブ43の一部分は、送風ファン45の筐体の上面に当接するように、螺旋状またはスパイラル状に配置されている。このようにすることで、キャピラリーチューブ43から送風ファン45の筐体に放熱させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、コンピュータ等の電子機器に用いられる冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型コンピュータに代表される電子機器の高機能化、小型化の進歩が著しい。ノート型コンピュータの高機能化に伴い、CPU(Central Processing Unit)の高速化および多機能化が進み、CPUからの発熱量が増加している。
【0003】
そこで、従来では、CPUの温度上昇を抑制するために、放熱性に優れた放熱フィンをCPUの表面に取り付け、回転する送風ファンにより放熱フィンに空気を吹き付けていた。また、ヒートパイプを用いて熱輸送を行った後に、放熱フィンによる放熱を行っていた。このような対策を行うことにより、例えば消費電力が60W程度のCPUの温度上昇を、70℃程度以下に抑制することができる。
【0004】
しかしながら、最近のCPUの発熱量は例えば100W程度に増大しており、上記した送風ファンやヒートパイプを用いた放熱の方法では、CPUが充分に冷却されない問題が発生した。更には、CPUを充分に冷却できても、CPUを冷却する冷却装置が巨大化してしまう問題もあった。
【0005】
CPUの温度上昇を抑制する他の方法としては、水冷サイクルを用いる方法や、冷凍サイクルを用いる方法もある。これらの方法は、上記した送風ファンを用いた方法よりも、効率的にCPUを冷却することができるので、発熱量が大きいCPUの温度を一定以下にすることができる。下記特許文献1には冷凍サイクルを用いて半導体装置を冷却する技術事項が開示されている。
【特許文献1】特開平2002−198478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した冷却技術では、フロン等の冷媒を、凝縮、膨張、蒸発、圧縮することによりCPU等の発熱体から発生した熱を外部に放出して、発熱体を冷却している。ここで、冷媒を膨張させる機能を有するキャピラリーチューブ等の膨張手段は断熱状態であると理解されていた。即ち、キャピラリーチューブを通過する冷媒と外部との熱エネルギーのやりとりは無いと理解されていた。例えば、財団法人日本冷凍空調学会が発行した『上級テキスト:冷凍空調技術(冷凍編)』の37頁を参照すると、「冷媒の膨張前後では冷媒のエンタルピーは変わりはない」と記載されている。この記載は、膨張の行程に於いては冷媒のエンタルピーが変化しないことを示唆している。しかしながら、冷凍サイクルの冷却能力を少しでも向上させようとするとき、膨張手段を流通する冷媒と外部との熱交換を無視することはできない。
【0007】
更には、温度条件によっては、膨張手段を流通する冷媒が外部から吸熱してしまい、冷凍サイクルの冷却能力が低下してしまう恐れもある。例えば、膨張手段であるキャピラリーチューブの入り口に於ける冷媒の温度が30度であり、キャピラリーチューブの出口に於ける冷媒の温度が10度であり、外部雰囲気(外気)の温度が20度の場合を考える。この場合、キャピラリーチューブに断熱機構を設けなければ、キャピラリーチューブの出口付近に於いて、冷媒の温度が外気よりも低くなり、外気の熱エネルギーが冷媒に吸収される。従って、通常は断熱の条件であると考えられているキャピラリーチューブ内部で冷媒のエンタルピーが上昇し、冷凍サイクルの冷却能力が低下してしまうことが考えられる。
【0008】
本発明は上記問題点を鑑みて成され、本発明の主な目的は、膨張手段から冷媒の熱エネルギーを積極的に外部に放出させることで冷却能力が向上された冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷却装置は、冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段により圧縮された前記冷媒から熱を外部に放出して液化させる凝縮手段と、前記凝縮手段により液化された前記冷媒を膨張させる膨張手段と、発熱体から熱を受け入れて前記膨張手段により膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発手段とを具備し、前記膨張手段の全ての領域から前記冷媒に含まれる熱エネルギーを外部に放出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷却装置によれば、キャピラリーチューブから成る膨張手段の全ての領域から、冷媒に含まれる熱エネルギーを外部に放出させている。従って、膨張手段の内部で冷媒のエンタルピーが減少する分、冷却装置の冷却能力を向上させることができる。
【0011】
更に、キャピラリーチューブを電子機器の筐体や送風手段に接触させると、これらの部位を経由して熱拡散によりキャピラリーチューブ内部の冷媒から外部に熱が放出される。従って、冷却装置の冷却能力を更に向上させることができる。更には、この構成により、送風手段により発生する風が無いまたは少ない場合に於いても、キャピラリーチューブから送風手段等を経由して、熱拡散により冷媒に含まれる熱エネルギーを外部に放出させることができる。
【0012】
更にまた、キャピラリーチューブを、送風手段が送風する領域に配置すると、強制対流の作用により、キャピラリーチューブ内部の冷媒から外部に熱が放出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明に係る冷却装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、先ず、冷凍サイクルを用いる本形態の冷却装置の冷却能力を説明する。図1(A)は本形態の冷凍サイクルと一般的な冷凍サイクルとを示すp−h線図であり、図1(B)は一般的なキャピラリーチューブの放熱状態を示す図であり、図1(C)は本形態のキャピラリーチューブの放熱状態を示す図である。
【0015】
図1(A)のグラフを参照して、本形態の冷却装置の冷凍サイクルと、一般的な冷凍サイクルとの違いを説明する。この図に示すグラフは、例えばフロン等の冷媒の状態を示すp−h線図であり、横軸は単位重量当たりの冷媒に含まれる比エンタルピー(熱量)を示し、縦軸は冷媒の圧力を示している。
【0016】
更にこのグラフについて説明すると、一点鎖線で示されるのが飽和液線および飽和蒸気線である。冷媒の状態が飽和液線よりも左側になると冷媒は過冷却液となる。一方、冷媒の状態が飽和蒸気線よりも右側となると、冷媒は加熱蒸気になる。そして、冷媒の状態が飽和液線と飽和蒸気線との間に位置するときは、冷媒は湿り蒸気となる。
【0017】
このグラフでは、一般的な冷凍サイクルと、本形態の冷凍サイクルを実線にて示している。更に、外部雰囲気(例えば35℃)の等温線を太い点線にて示している。
【0018】
冷蔵庫に用いられる一般的な冷凍サイクルでは、冷媒の蒸発、圧縮、凝縮、膨張を繰り返すことで、冷蔵庫の内部の温度を例えば0℃程度に保っている。また、上記したように、キャピラリーチューブや膨張弁等を用いて行う膨張は、一般的には外部との熱の出入りが無い状態で行われると解されていた。また、膨張の行程にて外部との熱交換が行われても、その熱量は微々たるものであるので無視されていた。本形態では、冷却装置の冷却能力を向上させるために、キャピラリーチューブから積極的に放熱を行っている。
【0019】
更に、一般的な冷凍サイクルは、部分的に外部雰囲気の等温線よりも下方に位置している。このことは、冷凍サイクルに於いて、冷媒の温度が一時的に外部雰囲気よりも低くなり、冷媒が外部雰囲気から吸熱して冷却の効率が低下することを意味している。この事項は、図1(B)を参照して下記する。
【0020】
本形態の冷凍サイクルのP−h線図は、図1(A)グラフを参照すると、一般的な冷凍サイクルのP−h線図よりも上方に位置している。即ち、本形態の冷凍サイクルでは、一般的なものよりも冷媒の温度が高い状態で、冷媒の蒸発、圧縮、凝縮、膨張の行程が行われる。詳述すると、本形態の冷凍サイクルでは、蒸発の行程に於ける冷媒の温度(即ち、膨張の行程の最後に於ける冷媒の温度)が、外部雰囲気よりも高い。
【0021】
従って、本形態では、キャピラリーチューブ全体から、冷媒に含まれる熱エネルギーを外部雰囲気に放出することが可能となり、冷却装置の冷却能力を向上させることができる。図1(A)を参照すると、膨張の行程における傾きの分だけ冷却能力が向上されている。ここでは、膨張の行程で減少するエンタルビーをΔhで示している。このΔhは、例えば数ワット程度であるが、冷却装置がノートパソコン等に装備される小型のものであり冷却能力が例えば100ワット程度に小さい場合、冷却能力を数%程度向上させることができる。または、Δhを勘案して同程度の冷却能力が実現された場合は、凝縮を行う凝縮器の能力を低減して小型化することができる。
【0022】
次に、図1(B)を参照して、上述した一般的なキャピラリーチューブ143の放熱に関して再度説明する。冷凍サイクルを具備する冷却装置は、一般的には冷蔵庫や冷凍庫等に用いられるので、冷媒の温度は低く設定されている。例えば、キャピラリーチューブ143に導入される冷媒の温度は、30℃程度であり、キャピラリーチューブ143から導出される冷媒の温度は10℃程度である。キャピラリーチューブ143を通過する冷媒は、圧力が低減され且つ温度が30℃から10℃に低下する。従って、外部雰囲気の温度が例えば20℃であった場合、キャピラリーチューブ143の途中までは冷媒から外部に放熱され、途中からは外気から冷媒に吸熱される。以上のことから、従来の冷却装置では、キャピラリーチューブ143を用いた冷却能力の向上は期待できなかった。または外気の温度が高いと、キャピラリーチューブ143の内部で冷媒が吸熱して冷却装置の冷却能力が低下する恐れがあった。また、仮にキャピラリーチューブ143により放熱が行われて冷却能力が数ワット向上しても、一般的な冷蔵庫の冷却能力は例えば数百ワットであり非常に大きいので、キャピラリーチューブ143の冷凍能力への寄与は小さかった。
【0023】
図1(C)を参照して、本形態では、キャピラリーチューブ43の全ての領域に於いて、内蔵される冷媒の温度が、外部雰囲気の温度(20℃〜40℃)よりも高い。換言すると、キャピラリーチューブ43の全ての領域から、外部雰囲気に熱が放出されている。具体的には、例えば、キャピラリーチューブ43の入り口に導入される冷媒の温度は40℃〜80℃であり、キャピラリーチューブ43の出口から放出される冷媒の温度は20℃〜60℃程度である。
【0024】
本形態の冷却装置は、例えば放っておくと100℃程度以上に高温になるCPU等の半導体素子(発熱体)を冷却するために用いられる。従って、空気の温度を0℃程度に冷やす冷蔵庫等と比較すると、冷却の対象となる物体の温度が100℃以上異なる。このことから、冷媒の温度を高温にすることが容易であり、キャピラリーチューブ43の放熱の効果を大きくすることができる。
【0025】
冷凍サイクルが適用された冷却装置の冷却能力を向上させる最も簡単な方法は、凝縮器のサイズを大きくすることであり、冷蔵庫等ではこの方法により冷却能力が向上されている。本形態の冷却装置は、ノートパソコン等に収納される場合もあるため、凝縮器のサイズを大きくすることは容易ではない。このことから、本形態では、キャピラリーチューブから放熱することにより冷媒のエンタルピーを低減させて、装置全体の大型化を抑制して、冷却装置の冷却能力を向上させている。
【0026】
<第2の実施の形態>
図2から図4を参照して、本実施の形態では、上記した冷却装置が適用される機器の一例であるコンピュータの構成を説明する。本実施形態では、電子機器の一実施例としてノート型コンピュータまたはデスクトップ型コンピュータを主に説明するが、本実施形態の冷却装置は、他の機器にも適用可能であり、例えばPDA(Personal Digital Assistant)等に本実施形態を適用させることも可能である。
【0027】
図2は本形態のデスクトップ型コンピュータ10(以下、コンピュータ10と略す)を示す図である。図2(A)はコンピュータ10を上方から見た斜視図であり、図2(B)はコンピュータ10に内蔵される冷却装置40を示す斜視図である。ここでは、コンピュータ10の筐体部30のみを図示しているが、この他にもコンピュータ10には、ディスプレイ、マウス(ポインティングデバイス)、キーボード等が装備される。
【0028】
図2(A)を参照して、本形態のコンピュータ10の筐体部30には、CPU36等の発熱を伴う機能素子(発熱体)と、このCPU36を冷却する機能を有する冷却装置40等が内蔵されている。
【0029】
具体的には、マザーボード31、CD(Compact Disc)ROMドライブ32、FDD(Floppy[登録商標]Disk Drive)35、冷却装置40、CPU36等が筐体部30に内蔵される。更に、図示していないが、これらの他にもバッテリー、HDD(ハードディスクドライブ)、PCカードリーダ、半導体メモリ、これらを相互に接続するケーブル等が筐体部30に内蔵される。更に、筐体部30に内蔵されるこれらの電子部品は、平面的に異なる位置に配置される。筐体部30に内蔵される電子部品の中でも、特に発熱量が多いのがCPU36であり、このCPU36の放熱を行うために冷却装置40が設けられている。
【0030】
図2(B)を参照して、冷却装置40の構成を説明する。冷却装置40は、圧縮機41(圧縮手段)と、凝縮器42(凝縮手段)と、蒸発器44(蒸発手段)と、キャピラリーチューブ43(膨張手段)と、送風ファン45(送風手段)とから成る。また、冷却装置40を構成するこれらの装置は、チューブ状の配管46により相互に連結されている。
【0031】
圧縮機41は、導入されたアンモニア、フロン、2酸化炭素等から成る冷媒を圧縮する機能を有する。圧縮機41としては、ロータリー型(回転型)の圧縮機や、レシプロ型(往復型)の圧縮機が採用される。
【0032】
凝縮器42は、圧縮機41により圧縮された冷媒から熱を外部に放出させて、冷媒を凝縮して液化させる機能を有する。また、凝縮器42は、複数の金属板を互いに平行に配置して形成されている。そして、凝縮器42を構成する金属板は、冷媒が通過する配管46と熱的に結合されている。
【0033】
キャピラリーチューブ43は、冷媒を膨張させる機能を有する。ここでは、キャピラリーチューブ43は、送風ファン45の上方に円形に巻かれて配置されている。キャピラリーチューブ43を、送風ファン45の上方に配置することにより、冷却装置40の平面的な大きさを小さくすることができる。
【0034】
更に、キャピラリーチューブ43は、凝縮器42と熱的に結合された配管46Dと、蒸発器44と接続された配管46Eとの間に設けられている。キャピラリーチューブ43は、配管46E等と同様に、銅等の金属材料から成るチューブ状のものである。更に、キャピラリーチューブ43は、他の配管よりも径が細く形成されることで圧力損失が発生して膨張手段として機能している。例えば、配管46E等の外径は3.2mmであり、キャピラリーチューブ43の外径は1.6mm程度である。また、キャピラリーチューブ43の長さは、例えば30cm〜50cm程度である。
【0035】
蒸発器44は、CPU36等の発熱を伴う電子部品と熱的に結合されている。従って、CPU36から発生した熱を蒸発器44が受け入れることにより、蒸発器44内部に於いて、冷媒は液体の状態から気体の状態に変化する。ここでは、蒸発器44は、CPU36に重畳する位置に配置されている。
【0036】
送風ファン45は、筐体部30の外部から低温(常温)の空気を取り入れ、凝縮器42および圧縮機41にこの低温の空気を吹き付ける機能を有する。凝縮器42および圧縮機41から熱を受け入れることにより高温と成った空気は、筐体部30の側方から外部に放出される。
【0037】
上記のように構成された冷却装置40の動作は次の通りである。CPU36等を冷却するために冷却装置40が稼働すると、先ず、圧縮機41により冷媒が高温・高圧の状態になる。高温・高圧の状態の冷媒は、配管46を介して凝縮器42に送られる。凝縮器42では、送風ファン45から送られる低温の空気の冷却作用により、冷媒は液化される。液状の状態の冷媒は配管46を介してキャピラリーチューブ43に送られる。キャピラリーチューブ43では、冷媒が膨張されて低圧・低温の状態になり、この冷媒は蒸発器44に送られる。蒸発器44では、CPU36から発生する熱が冷媒に受け入れられる。その結果、冷媒は蒸発して気体の状態になり、この気体の状態の冷媒は再び圧縮機41に送られる。
【0038】
以上のように冷却装置40が動作することにより、CPU36が冷却される。本形態では、冷凍システムの冷却装置40を採用することにより、例えば消費電力が60W〜200W程度のCPU36を充分に冷却することができる。
【0039】
以上が冷却装置40を備えるコンピュータ10の概略的構成である。ここでは、冷却装置40により冷却される発熱体としてCPU36が採用されているが、CPU以外の物を発熱体として採用することもできる。例えば、半導体メモリ、抵抗器、液晶ディスプレイを制御するユニット、電源装置、インバーター等を冷却装置40により冷却される発熱体として採用することもできる。
【0040】
本実施の形態では、膨張手段に相当するキャピラリーチューブ43の一部は、送風ファン45の筐体に当接するように配置されている。ここでは、キャピラリーチューブ43の一部分は、送風ファン45の筐体の上面に当接するように、螺旋状またはスパイラル状に配置されている。このようにすることで、キャピラリーチューブ43から送風ファン45の筐体に熱伝導(熱拡散)させることができる。送風ファン45の筐体を構成する材料としては、樹脂材料又は金属材料があり、特に熱伝導性に優れる金属材料(例えばアルミニウム)が採用されると、キャピラリーチューブ43の放熱効果を更に向上させることができる。
【0041】
具体的には、送風ファン45は常に外気を取り入れるので、送風ファン45の筐体は外気の温度(例えば30℃程度)と略同一である。一方、キャピラリーチューブ43の内部を流通する冷媒の温度は、例えば90℃〜50℃程度であり、外気の温度よりも高い。即ち、送風ファン45の筐体の温度は、キャピラリーチューブ43よりも低い。従って、送風ファン45の筐体にキャピラリーチューブ43を接触させることにより、キャピラリーチューブ43から送風ファン45に熱が伝導して、キャピラリーチューブ43の放熱効果を向上させることができる。
【0042】
図では、送風ファン45の筐体上面の中央部付近に、パソコンの内部の空気を取り入れるための開口部が設けられている。従って、送風ファン45の筐体上面の中央部付近には、キャピラリーチューブ43を当接させることは得策ではない。ここでは、送風ファン45の筐体上面の周辺部に、キャピラリーチューブ43をスパイラル状に配置することで、送風ファン45とキャピラリーチューブ43とが接触する面積を増大させている。
【0043】
更に本形態に於いては、キャピラリーチューブ43の一部分を筐体部30の内壁に当接させても良い。筐体部30の外側は外気に接しているので、その内側は外気の温度と略同一であり温度が低い。更に、筐体部30は、アルミニウム等の熱伝導に優れる金属から成る。従って、キャピラリーチューブ43を筐体部30の内壁に当接させることで、キャピラリーチューブ43の内部を流通する冷媒に含まれる熱エネルギーが、筐体部30に伝導して、冷媒が冷却される。
【0044】
更には、キャピラリーチューブ43を送風ファン45と筐体部30の両方に当接させると、キャピラリーチューブ43内部の冷媒が冷却される効果を更に大きくすることができる。
【0045】
図3を参照して、次に、強制対流によりキャピラリーチューブ43から積極的に放熱させる他の構造を説明する。図3(A)はコンピュータ10の斜視図であり、図3(B)は冷却装置40が設けられた部分を拡大した斜視図である。ここでは、キャピラリーチューブ43の少なくとも一部を、送風ファン45が送風する領域に配置している。このことにより、強制対流の作用によりキャピラリーチューブ43の放熱の効果を更に大きくすることができる。
【0046】
送風ファン45は、コンピュータ10の筐体部30の外部(ここでは筐体部30の底面)から外気を取り込み、放熱体である凝縮器42および圧縮機41に風を吹き付ける機能を有する。ここでは、凝縮器42に吹き付けられて高温となった空気は、排気口38から外部に放出される。更に、圧縮機41に吹き付けられた空気は、排気口37から外部に放出される。
【0047】
キャピラリーチューブ43の一部は、送風ファン45と圧縮機41との間に延在している。更に、キャピラリーチューブ43は、送風ファン45の近傍にてコイル状(スパイラル形状)に巻かれて配置されている。従って、送風ファン45により送風されるキャピラリーチューブ43を長くすることができる。
【0048】
本形態では、圧縮機41は送風ファン45から離間して配置されている。その理由は、圧縮機41と送風ファン45とを接近して配置すると、送風ファン45の風の出口が圧縮機41により遮られて、圧縮機41が充分に冷却されないからである。ここでは、圧縮機41と送風ファン45との間にキャピラリーチューブ43を配置した。従って、圧縮機41と送風ファン45との間の開き領域を、キャピラリーチューブ43を冷却する為の領域として用いることができる。このことが、冷却装置40全体の小型化に寄与する。
【0049】
キャピラリーチューブ43が巻かれて配置される領域は、上記以外の場所でも良い。例えば、圧縮機41と排気口37との間にキャピラリーチューブ43を配置することもできる。更には、凝縮器42と送風ファン45との間、または、凝縮器42と排気口38との間にキャピラリーチューブ43を配置することもできる。
【0050】
ここで、図2に示したキャピラリーチューブ43の構造と、図3に示したキャピラリーチューブ43の構造とを組み合わせても良い。即ち、キャピラリーチューブ43の一部分を送風ファン45または筐体部30に当接させると共に、キャピラリーチューブ43の一部分を送風ファン45が送風する部分に配置させる。このことにより、キャピラリーチューブ43内部の冷媒を冷却する機能を更に向上させて、冷却装置40の冷却能力を更に向上させることができる。
【0051】
図4を参照して、次に、上記構成がノート型のコンピュータ10に適用された場合を説明する。図4(A)は、ノート型のコンピュータ10を示す斜視図であり、図4(B)はノート型のコンピュータ10を下方から見た状態を示す斜視図である。
【0052】
図4(A)を参照して、ノート型のコンピュータ10は、CPU36等の発熱を伴う素子が内蔵される筐体部30と、筐体部30と回転自在に接続される表示部20とから成る。
【0053】
表示部20は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを具備する。
【0054】
表示部20と筐体部30との平面的な大きさは略同一であり、表示部20と筐体部30とを折りたたむと、全体として一つの筐体となる。筐体部30と表示部20とが折りたたまれた状態のコンピュータ10の平面的な大きさは、例えばA4サイズ(210mm×290mm)または、B5サイズ(182mm×257mm)となる。また、ここでは図示しないが、筐体部30の上面には、キーボードやパッド等のポインティングデバイスが配置されている。
【0055】
図4(B)を参照して、送風ファン45は、筐体部30の底面に設けた吸気口39から、外部の低温の空気を筐体部30の内部に取り入れる。更に、キャピラリーチューブ43、凝縮器42および圧縮機41を冷却することにより高温となった空気は、筐体部30の側方に設けた排気口37、38から外部に放出される。吸気口39、排気口37、38では、スリット状に多数個の孔が、筐体部30に設けられている。
【0056】
排気口38を筐体部30の後部に設けることにより、凝縮器42やキャピラリーチューブ43の熱を受け入れて加熱された高温の空気がコンピュータ10の後方に排気される。従って、コンピュータ10の前方に位置している使用者に向かって、加熱された空気が排出されないので、使用者が火傷等の怪我を被ることを防止することができる。また、凝縮器42の熱を受け入れて高温になった空気は、筐体部30の右側側方または左側側方から外部に放出されても良い。
【0057】
更に、排気口37を筐体部30の左側に設けることにより、圧縮機41を冷却して高温になった空気は、コンピュータ10の左側方から外部に放出される。通常の使用者は、右手にてマウス等のポインティングデバイスを操作する。従って、排気口37から排出される高温の空気は、マウスを使用する使用者の手に触れないので、使用者が火傷することを防止することができる。また、排気口37は、筐体部30の右側に設けても良い。
【0058】
<第3の実施の形態>
図5を参照して、コンピュータ10の動作を、CPU36の冷却作用を中心に説明する。ここでは、CPU36の温度情報を基に、マイコン59が圧縮機41および送風ファン45の回転を制御している。このことにより、CPU36の温度が低温の場合と高温の場合於いて、送風ファン45および圧縮機41の回転数を異ならせている。
【0059】
具体的には、上述したように、CPU36等の発熱を伴う機能素子から発生した熱は、冷却装置40の蒸発器44を介して冷媒に受け入れられる。そして、冷却装置40の内部では、蒸発器44、圧縮機41、凝縮器42およびキャピラリーチューブ43の間で、冷媒が膨張・圧縮を繰り返しながら循環している。更に、本実施形態では、キャピラリーチューブ43の内部を冷媒が流通する際にも、冷媒に含まれる熱エネルギーを外部に放出している。また、送風ファン45が凝縮器42およびキャピラリーチューブ43に空気を吹き付けることにより、冷媒の熱を外部に熱を放出している。更にまた、圧縮機41に内蔵されたモータは、インバータ61により制御されている。
【0060】
上述した本形態の構成により、CPU36の温度を一定以下(例えば70℃以下)にすることができる。しかしながら、CPU36の発熱量は一定ではない。即ち、CPU36が活発に動作すると発熱量が大きくなり、CPU36が活発に動作しないときは発熱量は小さくなる。このことから、圧縮機41が備えるモータおよび送風ファン45の回転速度が遅いと、一時的にCPU36の発熱量が大きくなったときに、冷却装置40の冷却能力が不十分になり、CPU36の温度が上昇してしまう恐れがある。また、この現象を防止するために、圧縮機41が備えるモータおよび送風ファン45の回転速度を常に速くすると、CPU36の温度上昇は抑制できるが、冷却装置40が消費してしまう電力が大きくなってしまう恐れがある。
【0061】
そこで本形態では、CPU36の温度に応じて圧縮機41が備えるモータおよび送風ファン45の回転速度を制御している。即ち、CPU36の温度が高くなるに従い、これらの回転速度を速くしている。このようにすることで、CPU36の温度を例えば、50℃〜70℃の間にすることができる。その詳細は以下の通りである。
【0062】
CPU36の温度は、CPU36自身に内蔵されたセンサ部(監視手段)により監視され、CPU36の温度を示す温度情報は、マイコン59(制御手段)に送られる。マイコン59は、インバータ61および送風ファン45の回転数を制御している。
【0063】
例えば、上述したようにCPU36の温度を50℃〜70℃の間にしたい場合は以下のように、インバータ61および送風ファン45の回転数を、マイコン59により制御している。
【0064】
CPU36の温度が55℃(第1温度)未満の時は、マイコン59の指示に基づいてインバータ61および送風ファン45の回転数は一定に保たれる。この時の回転数は、例えば、送風ファン45および圧縮機41から発生する動作音が、静音の範囲で動作できる回転数である。
【0065】
CPU36の温度が55℃〜65℃の時は、CPU36の温度上昇に比例して、インバータ61および送風ファン45の回転数を増加させる。このことにより、55℃〜65℃の間に於いて、CPU36の温度変化に応じて、冷却装置40の冷却能力が調節される。従って、上記したように、CPU36の温度を、50℃〜70℃に制御することができる。
【0066】
CPU36の温度が65℃(第2温度)以上の時は、インバータ61および送風ファン45の回転数は一定に保たれる。即ち、圧縮機41および送風ファン45が備えるモータを、最大回転速度にて回転させる。このことにより、CPU36の温度上昇を抑制できる。
【0067】
以上がCPU36を冷却するコンピュータ10の動作の説明である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係る冷却装置を用いた冷凍サイクルを示すグラフであり、(B)は一般的なキャピラリーチューブの放熱の状態を示す図であり、(C)は本発明に於けるキャピラリーチューブの放熱の状態を示す図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態に係るコンピュータを示す斜視図であり、(B)はこのコンピュータに内蔵される冷却装置を示す斜視図である。
【図3】(A)は本発明の実施の形態に係るコンピュータを示す斜視図であり、(B)はこのコンピュータに内蔵される冷却装置を示す斜視図である。
【図4】(A)は本発明の実施の形態に係るコンピュータを示す斜視図であり、(B)はこのコンピュータを別の角度から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る冷却装置の電気的構成を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10 コンピュータ
20 表示部
30 筐体部
31 マザーボード
32 CDROMドライブ
35 FDD
36 CPU
37 排気口
38 排気口
39 吸気口
40 冷却装置
41 圧縮機
42 凝縮器
43 キャピラリーチューブ
44 蒸発器
45 送風ファン
46、46D、46E 配管
59 マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段により圧縮された前記冷媒から熱を外部に放出して液化させる凝縮手段と、前記凝縮手段により液化された前記冷媒を膨張させる膨張手段と、発熱体から熱を受け入れて前記膨張手段により膨張された前記冷媒を蒸発させる蒸発手段とを具備し、
前記膨張手段の全ての領域から前記冷媒に含まれる熱エネルギーを外部に放出させることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記膨張手段は、キャピラリーチューブであることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記膨張手段から前記蒸発手段に導入される前記冷媒の温度は、前記膨張手段を取り巻く外部雰囲気よりも高いことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項4】
前記膨張手段の全ての区間に内蔵される前記冷媒の温度は、前記膨張手段を取り巻く外部雰囲気よりも高いことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項5】
前記膨張手段を送風手段または電子機器の筐体に接触させて、熱拡散により前記膨張手段から外部に熱エネルギーを放出させることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項6】
前記膨張手段の少なくとも一部を、送風手段により発生する風が通過する領域に配置して、強制対流により前記膨張手段から外部に熱エネルギーを放出させることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項7】
前記送風手段は、前記凝縮手段または/および前記圧縮手段に対して送風することを特徴とする請求項6記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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