説明

冷却装置

【課題】車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する。
【解決手段】冷却装置10は、冷媒を循環させるためのコンプレッサ20と、冷媒を凝縮するための第1コンデンサ40と、第1コンデンサ40の下流側に設けられる第2コンデンサ42と、第2コンデンサ42からの冷媒を用いて車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータ80と、第1コンデンサ40から第2コンデンサ42に向けて流通する冷媒の経路上に設けられ、第1コンデンサ40からの冷媒を用いて電気機器を冷却するための冷却部120とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を駆動源とする車両に搭載された電気機器の冷却装置であって、特に、空調用冷凍サイクルシステムを利用して電気機器を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の1つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。
【0003】
このような車両においては、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータあるいはバッテリ等の電気機器は電力の授受によって発熱するためこれらの電気機器を冷却する必要がある。この場合、エンジンのみを使用する通常の車両のごとく、電気機器とラジエータとの間で冷却水を循環させるという冷却システムを新たに設けることが考えられるが、このような冷却システムを新たに設ける場合には、専用のラジエータを設ける必要があるため、車両搭載性が低くなる場合がある。
【0004】
このような問題に鑑みて、特開2006−290254号公報(特許文献1)は、構成部品の共用化による組み付け性向上、原価低減そして小型化を図ることができるハイブリッド車の冷却システムを開示する。この冷却システムは、ガス冷媒を吸入圧縮可能なコンプレッサと、高圧のガス冷媒を凝縮させるための周囲空気で冷却可能なるメインコンデンサと、低温の液冷媒を蒸発させて被冷媒物を冷却可能なるエバポレータと、減圧手段とを含み、減圧手段とエバポレータとに、モータから吸熱可能なる熱交換器及び第2減圧手段を並列に接続してなることを特徴とする。
【0005】
上述した公報に開示された冷却システムによると、構成部品の共用化による組み付け性が向上することで、製造原価が低減できる。また、小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−290254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された冷却システムのように、2つのエバポレータとモータから吸熱可能なる熱交換器とを並列に接続する場合には、エバポレータおよび熱交換器のそれぞれに冷媒を供給し、かつ、完全気体まで減圧する必要がある。そのため、冷却に用いられるコンプレッサに要求される動力性能が高くなるという問題がある。また、コンプレッサが大型化すれば燃費悪化、更にこのコンプレッサ動力改善のためにコンデンサを大型化すれば搭載性悪化という問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に係る冷却装置は、車両に搭載された電気機器を冷却するための冷却装置である。この冷却装置は、冷媒を循環させるためのコンプレッサと、冷媒を凝縮するための第1コンデンサと、第1コンデンサの下流側に設けられる第2コンデンサと、第2コンデンサからの冷媒を用いて車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータと、第1コンデンサから第2コンデンサに向けて流通する冷媒の経路上に設けられ、第1コンデンサからの冷媒を用いて電気機器を冷却するための冷却部とを含む。
【0010】
好ましくは、冷却装置は、第1コンデンサから冷却部に冷媒を導入するための第1通路と、冷却部から第2コンデンサに冷媒を導入するための第2通路とを含む。第1コンデンサから第2コンデンサに向けて流通する冷媒の経路は、第1通路と冷却部と第2通路とを経由する経路である。
【0011】
さらに好ましくは、第1コンデンサと第2コンデンサとは、一体的に配置される。
さらに好ましくは、第1コンデンサと第2コンデンサとは、分離して配置される。
【0012】
さらに好ましくは、第1コンデンサは、コンプレッサからの冷媒が液化した第1状態および気化した冷媒と液化した冷媒とが混合した第2状態のうちのいずれか一方の状態になるように冷媒を凝縮する。第2コンデンサは、液化した冷媒の温度を低下させる。
【0013】
さらに好ましくは、第1コンデンサは、冷媒の温度が電気機器を冷却するために必要とされる温度以下の状態になるように冷媒を凝縮する。第2コンデンサは、冷却部からの冷媒が液化した第1状態および気化した冷媒と液化した冷媒とが混合した第2状態のうちのいずれか一方の状態になるように冷媒を凝縮する。
【0014】
さらに好ましくは、第2コンデンサとエバポレータとの間には、冷房が行なわれる場合に霧状の冷媒をエバポレータに供給するための弁が設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、電気機器を冷却するための冷却部を第1コンデンサから第2コンデンサに流通する冷媒の経路上に設けることによって、第1コンデンサから流通する液相の冷媒を用いて電気機器を冷却することができる。そのため、冷却部においてエバポレータと同様に冷媒を完全気体まで減圧する必要がなくなるため、冷却部に供給される冷媒を完全気体まで減圧する場合と比較してコンプレッサの動力性能を高くする必要がなくなる。その結果、コンプレッサを大型化したり電気機器を冷却するための専用のポンプを設けたりすることを回避できる。したがって、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る冷却装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施の形態における第1コンデンサおよび第2コンデンサの内部構造の一例を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る冷却装置の動作を説明するための図である。
【図4】本実施の形態の変形例に係る冷却装置の全体構成を示す図である。
【図5】本実施の形態の変形例における第1のコンデンサおよび第2コンデンサの内部構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0018】
図1に示す、本実施の形態に係る冷却装置10は、回転電機を駆動源とする車両に搭載された電気機器を冷却する。回転電機を駆動源とする車両としては、たとえば、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車両である。
【0019】
本実施の形態において、「電気機器」は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ122と、回転電機であるモータジェネレータ124とを一例として説明する。以下の説明においては、これらの電気機器を単に「電気機器」と記載する場合がある。
【0020】
なお、バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタを用いてもよい。
【0021】
また、冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0022】
本実施の形態に係る冷却装置10は、コンプレッサ20と、第1コンデンサ40と、第2コンデンサ42と、エバポレータ80と、エキスパンションバルブ150と、冷却部120と、ECU(Electronic Control Unit)400とを含む。
【0023】
冷却部120は、第1コンデンサ40から第2コンデンサ42に流通する冷媒の経路上に設けられ、第1コンデンサ40から流通する冷媒を用いて電気機器を冷却する。
【0024】
具体的には、第1コンデンサ40の出口部46には、第1接続通路302の一方端が接続される。第1接続通路302の他方端は、冷却部120に接続される。第1コンデンサ40内の冷媒は、第1接続通路302を経由して冷却部120に流通する。
【0025】
冷却部120には、第2接続通路304の一方端が接続される。第2接続通路304の他方端は、第2コンデンサ42の入口部48に接続される。冷却部120内の冷媒は、第2接続通路304を経由して第2コンデンサ42に流通する。
【0026】
すなわち、第1コンデンサ40から第2コンデンサ42に流通する冷媒の経路は、第1接続通路302と冷却部120と第2接続通路304とを経由する経路である。
【0027】
エバポレータ80とコンプレッサ20とは、第3接続通路306によって接続される。コンプレッサ20と第1コンデンサ40とは、第4接続通路308によって接続される。さらに、第2コンデンサ42とエバポレータ80とは、第5接続通路310によって接続される。
【0028】
コンプレッサ20は、車両に搭載されたモータを動力源として作動し、作動時にエバポレータ80から第3接続通路306を経由して流通する気相冷媒を吸入圧縮して第4接続通路308に吐出する。コンプレッサ20は、ECU400からの制御信号C1に基づいて作動する。なお、コンプレッサ20は、エンジンを動力源とするものであってもよい。
【0029】
エバポレータ80を用いた車両の室内の冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合に行なわれる。あるいは、エバポレータ80を用いた車両の室内の冷房は、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されている場合であって、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。
【0030】
図2に示すように、第1コンデンサ40と、第2コンデンサ42とは、一体的に配置される。一体的に配置された第1コンデンサ40および第2コンデンサ42は、たとえば、車両に搭載されたエンジン冷却用ラジエータに隣接して設けられ、車両の走行風あるいは冷却ファンによって供給された冷却風と冷媒との間で熱交換を行なう。
【0031】
第1コンデンサ40は、コンプレッサ20において圧縮された冷媒を放熱することによって、コンプレッサ20から流通する冷媒が液化した第1状態および気化した冷媒(飽和蒸気)と液化した冷媒(飽和液)とが混合した第2状態のうちのいずれか一方の状態になるように冷媒を凝縮(液化)する。
【0032】
第1コンデンサ40は、冷媒を流通する複数のチューブ60、および、複数のチューブ60内の冷媒と第1コンデンサ40の周囲の空気との間で熱交換するための複数のフィン62を含む。
【0033】
複数のチューブ60は、コンプレッサ20から冷媒を導入する入口部44と、冷却部120に接続される出口部46との間に並列に配置される。入口部44から導入された冷媒は、複数のチューブ60の各々に分散して流通する。
【0034】
複数のフィン62は、入口部44と、出口部46との間であって、複数のチューブ60の各々の間に隣接して配置される。複数のチューブ60の各々において冷媒はフィン62を経由した第1コンデンサ40の周囲の空気との熱交換によって凝縮される。第1コンデンサ40内で凝縮された後の冷媒は、出口部46から冷却部120に流通する。
【0035】
第1コンデンサ40の仕様(すなわち、チューブ60およびフィン62のサイズあるいは放熱性能)は、少なくとも第1コンデンサ40を通過した後の液相冷媒の温度が電気機器を冷却するために必要とされる温度よりも低下するように定められることが望ましい。電気機器を冷却するために必要とされる温度は、少なくとも電気機器の温度範囲として目標となる温度範囲の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
【0036】
また、第1コンデンサ40の仕様は、好ましくは、出口部46において冷媒が気相冷媒と液相冷媒とが混合した状態あるいは過冷却度の小さい液相冷媒の状態になるように定められることが望ましい。
【0037】
第2コンデンサ42は、冷却部120を経由して流通する冷媒をさらに冷却して冷媒の温度を低下させる(過冷却する)。第2コンデンサ42は、冷媒を流通する複数のチューブ66、および、複数のチューブ66内の冷媒と第2コンデンサ42の周囲の空気との間で熱交換するためのフィン68を含む。
【0038】
複数のチューブ66は、冷却部120から冷媒を導入する入口部48と、エバポレータ80に接続される出口部50との間に並列に配置される。入口部48から導入された冷媒は、複数のチューブ66の各々に分散して流通する。
【0039】
複数のフィン68は、入口部48と、出口部50との間であって、複数のチューブ60の各々の間に隣接して配置される。複数のチューブ66の各々において冷媒はフィン62を経由した第1コンデンサ40の周囲の空気との熱交換によって冷却される。第2コンデンサ42内で冷却された後の冷媒は、出口部50からエバポレータ80に流通する。
【0040】
第2コンデンサ42の仕様(すなわち、チューブ66およびフィン68のサイズあるいは放熱性能)は、少なくとも所定の外気温での環境下で冷却部120を通過するまでの冷媒の放熱量が予め定められた量以上となるように定められることが望ましい。
【0041】
図1に戻って、エキスパンションバルブ150は、第5接続通路310を流通する高温・高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させるための弁である。エキスパンションバルブ150は、エバポレータ80よりも上流の位置に設けられるバルブ本体152と、エバポレータ80よりも下流の位置に設けられる感温部材154とを含む。
【0042】
エキスパンションバルブ150においては、感温部材154における冷媒の温度に応じてバルブ本体152における冷媒の流量が定まる。この冷媒の流量は、霧状に変化した冷媒の全てがエバポレータ80において完全に気化されるように定められる。
【0043】
エキスパンションバルブ150においては、たとえば、容器内部にガスが封入された感温部材154における冷媒の温度に応じたガスの圧力の変化を利用してバルブ本体152の弁体を移動させることによって冷媒の流量が定まる。なお、冷媒の温度と弁体の移動量との関係は容器の大きさあるいはガス量等によって予め調整される。
【0044】
エバポレータ80は、霧状冷媒が気化することによってエバポレータ80に接触するように導入された車両の室内の空気の熱を吸熱する。吸熱によって温度が低下した空気は、車両の室内に再び戻されることによって車両の室内の冷房が行なわれる。
【0045】
エバポレータ80は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒とエバポレータ80の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンとを含む。チューブ内には、霧状の冷媒が流通する。チューブ内の流通する冷媒が蒸発することによって車両の室内の空気の熱をフィンを経由して吸熱する。気化した冷媒は、第3接続通路306を経由してコンプレッサ20に流通する。エバポレータ80の構造については、サイズあるいは形状を以外について基本的には第1コンデンサ40または第2コンデンサ42と同様であるため、その詳細な説明については繰返さない。
【0046】
冷却部120は、インバータ122と、モータジェネレータ124と、冷却通路126とを含む。冷却通路126の両端は、第1接続通路302の他方端と第2接続通路304一方端とにそれぞれ接続される。
【0047】
冷却部120は、インバータ122およびモータジェネレータ124と冷媒との間で熱交換が可能なように設けられる。本実施の形態においては、冷却部120は、たとえば、電気機器の筐体に冷媒が接触するように形成された冷却通路126によって電気機器と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するとして説明するが、冷却部120は、電気機器とヒートパイプ等の熱伝達手段を経由して熱交換器とが接続されている場合に熱交換器と冷媒とが接触可能に設けられる構造を有していてもよい。
【0048】
本実施の形態において、冷却部120は、インバータ122を冷却した後にモータジェネレータ124を冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよいし、あるいは、モータジェネレータ124を冷却した後にモータジェネレータ124を冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよいし、あるいは、インバータ122とモータジェネレータ124とを並行して冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよい。好ましくは、冷却部120は、冷却の対象となる電気機器のうちの目標となる温度範囲の上限値が低い方の電気機器を冷却した後に目標となる温度範囲の上限値が高い方の電気機器を冷却するように設けられることが望ましい。
【0049】
冷却通路126は、インバータ122およびモータジェネレータ124のそれぞれの筐体と隣接する部分を有する。当該部分において冷却通路126を流通する冷媒とインバータ122およびモータジェネレータ124との間で熱交換が可能となる。
【0050】
ECU400は、冷房が行なわれる場合にコンプレッサ20を作動させるために制御信号C1を生成してコンプレッサ20に送信する。
【0051】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る冷却装置10の動作について説明する。たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合あるいは自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されている場合であって、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に冷房が行なわれる。このとき、ECU400は、コンプレッサ20が作動するように制御信号C1を送信する。コンプレッサ20はECU400からの制御信号C1に基づいて作動する。
【0052】
コンプレッサ20の作動によってコンプレッサ20から吐出された冷媒は第4接続通路308を経由して第1コンデンサ40に導入される。第1コンデンサ40に導入された冷媒は、複数のチューブ60の各々に分散して流通する際にフィン62を経由して外気と熱交換することによって凝縮されて冷媒の一部または全部が液化する。なお、第1コンデンサ40内の冷媒が凝縮された冷媒の一部または全部が液化した状態である場合、冷媒の温度は一定の温度が維持される。第1コンデンサ40において凝縮された冷媒は、第1接続通路302を経由して冷却部120に供給される。
【0053】
冷却部120に供給された冷媒はインバータ122およびモータジェネレータ124とを冷却した後に第2接続通路304を経由して第2コンデンサ42に流通する。第2コンデンサ42に導入された冷媒のうちの液化している冷媒においては、複数のチューブ66の各々に分散して流通する際にフィン68を経由して外気と熱交換することによって温度が低下させられる。すなわち、冷媒が飽和液である場合よりも過冷却度が大きい状態となる。
【0054】
第2コンデンサ42において冷却された冷媒は、第5接続通路310を経由してエキスパンションバルブ150に流通する。エキスパンションバルブ150によって液相の冷媒は、霧状冷媒に変化させられてエバポレータ80に供給される。エバポレータ80において霧状冷媒は、蒸発によって車両の室内の空気の熱を吸熱する。蒸発によって気化された気相の冷媒が第3接続通路306を流通してコンプレッサ20に流通する。コンプレッサ20において圧縮された気相の冷媒は、第1コンデンサ40に流通して、第1コンデンサ40において放熱されることによって再び凝縮される。このようにして冷媒は、コンプレッサ20から、第1コンデンサ40、冷却部120、第2コンデンサ42、エバポレータ80の順序で流通していき、その後コンプレッサ20に循環する。
【0055】
図3に第2コンデンサ42の内部を流通する冷媒の温度の変化の一例を示す。図3において縦軸は冷媒温度を示す。横軸は、第2コンデンサ42の入口部48から出口部50までの流通距離を示す。
【0056】
冷却部120を経由して第2コンデンサ42の入口部48に流通した冷媒の温度がたとえば60℃であって、外気温が30℃である場合を想定する。
【0057】
図3の実線に示すように、第2コンデンサ42の入口部48に流通した冷媒の温度は、複数のチューブ66から複数のフィン68を経由した放熱によって出口部50に近づくにしたがって低下していき、出口部50において、外気温と同じ30℃まで低下する。
【0058】
一方、仮に第1コンデンサ40を流通した冷媒が冷却部120を経由せずに第2コンデンサ42に流通するとした場合においては、冷却部120において電気機器から吸熱しないため、60℃よりも低い温度(たとえば、50℃)の冷媒が第2コンデンサ42に流通することとなる。
【0059】
図3の破線に示すように、第2コンデンサ42の入口部48に流通した冷媒の温度は、複数のチューブ66から複数のフィン68を経由した放熱によって出口部50に近づくにしたがって低下していき、出口部50の手前で、外気温と同じ30℃まで低下する。
【0060】
第2コンデンサ42における放熱量は、冷媒の温度と外気温との差に係数を乗算することによって算出できる。すなわち、冷却部120を経由した場合の第2コンデンサ42の放熱量は、冷却部120を経由しない場合の放熱量よりも図3の斜線に示す領域に対応する量だけ大きくなる。
【0061】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却装置によると、電気機器を冷却するための冷却部を第1コンデンサ40から第2コンデンサ42に流通する冷媒の経路上に設けることによって、第1コンデンサ40から流通する冷媒を用いて電気機器を冷却することができる。そのため、冷却部120においてエバポレータ80と同様に冷媒を完全気体まで減圧する必要がなくなるため、冷却部に供給される冷媒を完全気体まで減圧する場合と比較してコンプレッサの動力性能を高くする必要がなくなる。その結果、コンプレッサを大型化したり電気機器を冷却するための専用のポンプを設けたりすることを回避できる。したがって、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することができる。
【0062】
また、第1コンデンサ40における冷媒は、飽和液の状態と飽和蒸気の状態とが混合した状態である。このときの冷媒の温度は一定の温度が維持されるため、外気温との差も一定の状態が維持される。その結果、第1コンデンサ40においては、一定の放熱量を維持できる。
【0063】
これに対して、第2コンデンサ42における冷媒は、過冷却によって冷媒の温度が下がる。このとき、冷媒の温度と外気温との差が縮小するため、第2コンデンサ42の放熱量は、冷媒の温度が一定の温度で維持される場合と比較して低下する。
【0064】
そのため、冷却部120を経由して冷媒の温度を増加させることによって、第2コンデンサ42における放熱量を冷却部を経由しない場合よりも増加させることができる。すなわち、冷却部120から受けた熱を第2コンデンサ42を大型化させることなく放熱することができる。
【0065】
本実施の形態において冷却装置10を用いた冷却の対象となる車両に搭載された「電気機器」として、インバータ122とモータジェネレータ124とを一例として説明したが、「電気機器」は、特にこれらに限定されるものではなく、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であればよい。たとえば、「電気機器」は、インバータと、モータジェネレータ124と、蓄電装置であるバッテリと、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータと、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータとのうちの少なくともいずれか一つであってもよい。
【0066】
本実施の形態において、第1コンデンサ40と、第2コンデンサ42とは、2つのコンデンサが一体的に配置されるとして説明したが、特に一体的に配置されることに限定されるものではない。たとえば、図4に示すように、第1コンデンサ40と、第2コンデンサ42とは、分離して配置されるようにしてもよい。
【0067】
本実施の形態においては、冷房が行なわれる場合に冷却部120によって電気機器が冷却される場合を一例として説明したが、たとえば、電気機器の温度あるいは冷却部120を流通する冷媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合にECU400はコンプレッサ20を作動させるようにしてもよい。
【0068】
本実施の形態において、第1コンデンサ40および第2コンデンサ42は、それぞれ複数のチューブが並列に配置される構造を有するとして説明したが、このような構造に特に限定されるものではない。たとえば、図5に示すように、第1コンデンサ40は、入口部44から出口部46まで1本のチューブ70によって冷媒が流通する一続きの経路が形成される構造を有していてもよい。また、第2コンデンサは、入口部48から出口部50まで1本のチューブ72によって冷媒が流通する一続きの経路が形成される構造を有するようにしてもよい。
【0069】
さらに、第1コンデンサ40の仕様は、コンプレッサ20から流通する気化した冷媒を第1コンデンサ40内で完全に液化できるように定められるようにしてもよい。
【0070】
さらに、本実施の形態において、第1コンデンサ40は、コンプレッサ20から流通する気化した冷媒を第1コンデンサ40内において液化した状態あるいは気化した冷媒と液化した冷媒とが混合した状態になるように凝縮した後に、第2コンデンサ42において液化した冷媒を過冷却するとしてして説明したが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、第1コンデンサ40は、冷媒の温度が電気機器を冷却するために必要とされる温度以下の状態になるように冷媒を凝縮し、第2コンデンサ42は、冷却部120からの冷媒が液化した状態または気化した冷媒と液化した冷媒とが混合した状態になるように冷媒を凝縮するようにしてもよい。
【0071】
さらに、エキスパンションバルブ150は、冷媒の温度を検出するセンサと、電磁弁とを含むようにしてもよい。この場合、ECU400は、センサによって検出される冷媒の温度に応じて電磁弁における冷媒の流量を調整するようにすればよい。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10 冷却装置、20 コンプレッサ、40,42 コンデンサ、44,48 入口部、46,50 出口部、60,66,70,72 チューブ、62,68 フィン、80 エバポレータ、120 冷却部、122 インバータ、124 モータジェネレータ、126 冷却通路、150 エキスパンションバルブ、152 バルブ本体、154 感温部材、302,304,306,308,310 接続通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電気機器を冷却するための冷却装置であって、
冷媒を循環させるためのコンプレッサと、
前記冷媒を凝縮するための第1コンデンサと、
前記第1コンデンサの下流側に設けられる第2コンデンサと、
前記第2コンデンサからの前記冷媒を用いて前記車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータと、
前記第1コンデンサから前記第2コンデンサに向けて流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記第1コンデンサからの前記冷媒を用いて前記電気機器を冷却するための冷却部とを含む、冷却装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、
前記第1コンデンサから前記冷却部に前記冷媒を導入するための第1通路と、
前記冷却部から前記第2コンデンサに前記冷媒を導入するための第2通路とを含み、
前記第1コンデンサから前記第2コンデンサに向けて流通する前記冷媒の経路は、前記第1通路と前記冷却部と前記第2通路とを経由する経路である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとは、一体的に配置される、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとは、分離して配置される、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1コンデンサは、前記コンプレッサからの前記冷媒が液化した第1状態および気化した前記冷媒と液化した前記冷媒とが混合した第2状態のうちのいずれか一方の状態になるように前記冷媒を凝縮し、
前記第2コンデンサは、液化した前記冷媒の温度を低下させる、請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第1コンデンサは、前記冷媒の温度が前記電気機器を冷却するために必要とされる温度以下の状態になるように前記冷媒を凝縮し、
前記第2コンデンサは、前記冷却部からの前記冷媒が液化した第1状態および気化した前記冷媒と液化した前記冷媒とが混合した第2状態のうちのいずれか一方の状態になるように前記冷媒を凝縮する、請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記第2コンデンサと前記エバポレータとの間には、前記冷房が行なわれる場合に霧状の前記冷媒を前記エバポレータに供給するための弁が設けられる、請求項1〜6のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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