説明

冷媒回路装置

【課題】ヒートポンプ運転時においても加熱室の加熱能力(冷媒凝縮温度)を確保し、消費電力量の低減化を図ることができる冷媒回路装置を提供すること。
【解決手段】庫内熱交換器24、圧縮機21、庫外熱交換器22を有する主経路20と、圧縮機21で圧縮した冷媒を導入して庫内熱交換器24に供給する高圧冷媒導入経路30と、庫内熱交換器24で凝縮した冷媒を加熱側熱交換器42に供給する放熱経路40と、加熱側熱交換器42からの冷媒を主経路20に戻す戻経路50とを備え、放熱経路40は、庫内熱交換器24から加熱側熱交換器42に至る放熱配管41の途中に配設され、前記放熱経路40を通過する冷媒を断熱膨張させる膨張機構43を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路装置に関し、より詳細には、ヒートポンプ機能を有する冷媒回路を備えた冷媒回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ機能を有する冷媒回路を備えた冷媒回路装置として次のようなものが知られている。すなわち、主経路と、高圧冷媒導入経路と、放熱経路と、戻経路とを有する冷媒回路を備えたものである。
【0003】
主経路は、庫内熱交換器、圧縮機、庫外熱交換器及び膨張機構が冷媒配管で順次接続されて環状に構成されている。庫内熱交換器は、対象となる室の内部に配設されている。圧縮機は、庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態にして吐出するものである。庫外熱交換器は、圧縮機で圧縮した冷媒を導入して凝縮させるものである。膨張機構は、庫外熱交換器で凝縮した冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0004】
このような主経路においては、圧縮機で圧縮された冷媒が庫外熱交換器で凝縮し、凝縮した冷媒が膨張機構で断熱膨張され、庫内熱交換器で蒸発する。この庫内熱交換器で蒸発した冷媒は、圧縮機により吸引されて再び圧縮されて循環することになる。これにより庫内熱交換器が配設された室の内部空気は冷却されることになる。
【0005】
高圧冷媒導入経路は、圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、主経路を構成する庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させるものである。これにより該庫内熱交換器が配設された室の内部空気は加熱されることになる。
【0006】
放熱経路は、庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して、主経路を構成する庫外熱交換器、あるいは他の庫内熱交換器に供給するものである。これにより庫外熱交換器及び他の庫内熱交換器では、通過する冷媒が周囲空気と熱交換を行って蒸発することになる。
【0007】
戻経路は、庫外熱交換器で蒸発した冷媒を導入して、主経路に戻すものである。これにより戻経路を通過した冷媒は、主経路に至り、その後に圧縮機に送出されることになる。
【0008】
このような構成を有する冷媒回路装置においては、該当する室の内部空気の冷却のみを行なう場合(冷却単独運転を行なう場合)には、主経路のみに冷媒を循環させればよい。その一方、一の室の内部空気を冷却して他の室の内部空気を加熱する場合(冷却加熱運転を行なうヒートポンプ運転の場合)には、主経路に圧縮機で圧縮した冷媒の一部を循環し、かつ他の一部の冷媒を高圧冷媒導入経路、放熱経路及び戻経路の順に循環させればよい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−22763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記ヒートポンプ回路構成では、内部空気を加熱する場合(冷却加熱運転を行なうヒートポンプ運転の場合)に、圧縮機で圧縮した冷媒を加熱対象となる室に配設された庫内熱交換器で凝縮させて放熱させた上に、さらに放熱経路を経て庫外熱交換器に戻すために、庫外熱交換器の出口側で大きな過冷却が発生することになり、液冷媒の割合が大きく、庫外熱交換器内に冷媒が過剰に滞留する過凝縮状態となり、冷凍サイクルを循環する冷媒が不足して十分な加熱能力が得られないという課題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、ヒートポンプ運転時において、凝縮温度を上昇させ、冷媒循環量不足に伴う加熱能力の低下を防止するとともに、冷却負荷に対し加熱負荷が大きい場合に行なう加熱単独運転時間を短縮することにより、消費電力量の低減化を図ることができる冷媒回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る冷媒回路装置は、対象室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入して凝縮させる庫外熱交換器とを冷媒配管で順次接続して構成した主経路と、自身に設けられた導入電磁弁が開成することにより前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより、該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させて該室の内部雰囲気を加熱させる高圧冷媒導入経路と、前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して加熱側熱交換器に供給する放熱経路と、前記加熱側熱交換器を通過した冷媒を導入し、前記主経路の庫内熱交換器の上流側に戻す戻経路と、前記主経路における庫内熱交換器の上流側にそれぞれ設けられ、前記庫外熱交換器及び前記加熱側熱交換器のいずれかを通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを備えた冷媒回路装置において、
前記放熱経路は、前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に至る放熱配管の途中に配設され、前記放熱配管を通過する冷媒を断熱膨張させる膨張機構を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る冷媒回路装置は、前記冷媒回路において、バイパス電磁弁が開成して前記加熱側熱交換器で放熱した冷媒をバイパス配管を通して、前記圧縮機に低圧冷媒として供給するバイパス経路を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷媒回路装置によれば、ヒートポンプ運転の際にも庫内熱交換器で凝縮した冷媒を庫内熱交換器から加熱側熱交換器に至る放熱配管の途中に配した膨張機構により断熱膨張させるため、庫内熱交換器で凝縮した液状態の冷媒は気液二相状態となり、加熱側熱交換器内の凝縮温度を上昇させることが可能となり、冷媒循環量の不足を防止できる。また加熱対象となる室のヒートポンプ運転時の加熱能力を向上できるため、冷却負荷に対し加熱負荷が大きい場合に行なう加熱単独運転時間が短縮し、消費電力量を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である冷媒回路装置が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、商品収容庫の断面側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。
【図4】図4は、図3に示した冷媒回路装置においてCCC運転をする場合の冷媒の流れを示す概念図である。
【図5】図5は、図3に示した冷媒回路装置においてHCC運転をする場合の冷媒の流れを示す概念図である。
【図6】図6は、図3に示した冷媒回路装置において加熱単独運転をする場合の冷媒の流れを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る冷媒回路装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1である冷媒回路装置が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0018】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0019】
図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示すものであり、右側の商品収容庫3の断面側面図である。尚、ここでは左側の商品収容庫3(以下、適宜左庫3cとも称する)の内部構造について示すが、中央の商品収容庫3(以下、適宜中庫3bとも称する)及び右側の商品収容庫3(以下、適宜右庫3aとも称する)の内部構造も左庫3cと略同じような構成であり、右庫3a、中庫3bは冷却専用庫、左庫3cを冷却/加熱兼用庫としている。尚、本明細書における右側とは、自動販売機を正面から見た場合の右方を示し、左側とは、自動販売機を正面から見た場合の左方を示す。
【0020】
かかる図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0021】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0022】
図3は、図1及び図2に示した自動販売機に適用された冷媒回路装置を概念的に示す概念図である。ここで例示する冷媒回路装置は、主経路20、高圧冷媒導入経路30、放熱経路40及び戻経路50からなる冷媒回路10を備えて構成してある。冷媒回路10は、内部に冷媒(例えばR134a)が封入されている。
【0023】
主経路20は、圧縮機21、庫外熱交換器22及び庫内熱交換器24を冷媒配管25にて順次接続して構成してある。
【0024】
圧縮機21は、図2にも示すように機械室9に配設してある。機械室9は、本体キャビネット1の内部であって商品収容庫3と区画され、かつ商品収容庫3の下方側の室である。この圧縮機21は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。
【0025】
庫外熱交換器22は、図2にも示すように圧縮機21と同様に機械室9に配設してある。この庫外熱交換器22は、圧縮機21で圧縮された冷媒が通過する場合には、該冷媒を凝縮させるものである。
【0026】
この庫外熱交換器22と圧縮機21とを接続する冷媒配管25には、三方弁261が設けてある。かかる三方弁261については後述する。
【0027】
庫内熱交換器24は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、各商品収容庫3の内部低域であって、背面ダクトD(図2参照)の前面側に配設してある。これら庫内熱交換器24と庫外熱交換器22とを接続する冷媒配管25は、その途中の第1分岐点P1で3つに分岐して、右庫3aに配設された庫内熱交換器24(以下、右庫内熱交換器24aとも称する)の入口側に、中庫3bに配設された庫内熱交換器24(以下、中庫内熱交換器24bとも称する)の入口側に、左庫3cの内部に配設された庫内熱交換器24(以下、左庫内熱交換器24cとも称する)の入口側にそれぞれ接続してある。
【0028】
また、この冷媒配管25においては、第1分岐点P1から右庫内熱交換器24a、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cのそれぞれに至る途中に入口側低圧電磁弁262a,262b,262c及び膨張機構231,232,233が設けてある。入口側低圧電磁弁262a,262b,262cは、開閉可能な弁体であり、コントローラから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0029】
膨張機構231,232,233は、例えばキャピラリーチューブや電子膨張弁等により構成してあり、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0030】
逆止弁28は、庫外熱交換器22の出口部と第1分岐点P1の入口部との間に接続され、冷却運転時に冷媒が庫外熱交換器22へ逆流することを阻止するためのものである。
【0031】
逆止弁29は、加熱側熱交換器42の出口部と第1分岐点P1の入口部との間に接続され、冷却加熱運転時に冷媒が加熱側熱交換器42へ逆流することを阻止するためのものである。
【0032】
上記庫内熱交換器24の出口側に接続された冷媒配管25は、途中の第一合流点P2で合流し、アキュムレータ27を介して圧縮機21に接続している。ここでアキュムレータ27は、通過する冷媒が気液二相状態である場合に、液相冷媒を貯留して気相冷媒を通過させる気液分離手段である。尚、左庫内熱交換器24cの出口側から第1合流点P2に至る冷媒配管25の途中には出口側低圧電磁弁263が配設してある。かかる出口側低圧電磁弁263は、開閉可能な弁体であり、コントローラから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0033】
高圧冷媒導入経路30は、三方弁261に連結され、その途中で分岐して、左庫内熱交換器24cの入口側の冷媒配管25に合流する高圧冷媒導入配管31により構成された経路である。この高圧冷媒導入経路30は、圧縮機21で圧縮された冷媒(高圧冷媒)を導入する経路である。
【0034】
上記高圧媒導入配管31においては、分岐箇所の下流側に高圧導入電磁弁264が設けてある。高圧導入電磁弁264は、開閉可能な弁体であり、コントローラから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0035】
ここで三方弁261は、圧縮機21で圧縮した冷媒を庫外熱交換器22へ送出する第1送出状態と、圧縮機21で圧縮した冷媒を高圧冷媒導入経路30へ送出する第2送出状態との間で択一的に切り換え可能な切換電磁弁である。かかる三方弁261の切換動作は、コントローラから与えられる指令に応じて行なわれる。
【0036】
左庫内熱交換器24cは、高圧冷媒導入経路30を通じて圧縮機21で圧縮された冷媒が供給された場合には、通過する冷媒を凝縮させて対象となる商品収容庫3(左庫3c)の内部空気を加熱するものである。
【0037】
放熱経路40には、本発明の実施の形態である膨張機構43が配設してある。膨張機構43は、キャピラリーチューブと電子膨張弁により構成してあり、放熱配管41を通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるとともに、電磁弁の開度を調整し冷媒流量を制御する開閉手段を有している。そして放熱経路40は、左庫内熱交換器24cの出口側に接続された冷媒配管25の途中で分岐され、本発明により追加装備された膨張機構43を介して第2分岐点P3で合流し、庫外熱交換器22に隣接する態様で配設された加熱側熱交換器42の入口側に接続された放熱配管41により構成された経路である。この放熱経路40は、左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒を加熱側熱交換器42に供給するためのものである。
【0038】
加熱側熱交換器42は、自身を通過する冷媒と周囲空気との間で熱交換させて、該冷媒を放熱させるものである。すなわち、放熱経路40は、左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒を膨張機構43に導入した上で、加熱側熱交換器42に送出するものである。
【0039】
戻経路50は、加熱側熱交換器42の出口側に接続され、かつ主経路20を構成する冷媒配管25、すなわち庫外熱交換器22と第1分岐点P1との間の冷媒配管25の第2分岐点P3に接続する戻配管51により構成されたものである。この戻経路50は、加熱側熱交換器42で放熱した冷媒を導入し、主経路20の庫内熱交換器24の上流側に戻すためのものである。
【0040】
以上のような構成を有する冷媒回路10においては、上記構成のほか、バイパス経路60を備え、バイパス経路60には、バイパス配管61、バイパス電磁弁265が設けてある。
【0041】
バイパス経路60は、加熱側熱交換器42の下流側に配設された第2分岐点P3から分岐し、バイパス配管61と、バイパス電磁弁265で構成されている。
【0042】
バイパス電磁弁265は、開閉可能な弁体であり、コントローラから開指令が与えられた場合には開成して冷媒の通過を許容する一方、閉指令が与えられた場合には閉成して冷媒の通過を規制するものである。
【0043】
以上のような構成を有する冷媒回路装置は、次のようにして商品収容庫3に収容された商品を冷却、あるいは加熱する。
【0044】
まず、CCC運転(すべての商品収容庫3の内部空気を冷却する運転)を行なう場合について説明する。この場合、コントローラは、三方弁261を第一送出状態にさせ、高圧導入電磁弁264、膨張機構43、バイパス電磁弁265に閉指令を与え、入口側低圧電磁弁262a、262b、262c及び出口側低圧電磁弁263に対して開指令を与える。これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、図4に示すように循環する。
【0045】
すなわち、圧縮機21で圧縮された冷媒は、第一送出状態にある三方弁261を経由して庫外熱交換器22に至る。庫外熱交換器22に至った冷媒は、該庫外熱交換器22を通過中に、周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。庫外熱交換器22で凝縮した冷媒は、第1分岐点P1で3つに分岐した後、膨張機構231,232,233でそれぞれ断熱膨張し、右庫内熱交換器24a、中庫内熱交換器24b及び左庫内熱交換器24cに至り、各庫内熱交換器24で蒸発して商品収容庫3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファン(F1:図2参照)の駆動により内部を循環し、これにより各商品収容庫3に収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。各庫内熱交換器24で蒸発した冷媒は、第1合流点P2で合流した後、圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0046】
次に、HCC運転(左庫3cの内部空気を加熱し、かつ右庫3a及び中庫3bの内部空気を冷却するヒートポンプ運転)を行なう場合について説明する。この場合、コントローラは、三方弁261を第2送出状態にさせ、バイパス電磁弁265、入口側低圧電磁弁262c及び出口側低圧電磁弁263に対して閉指令を与え、入口側低圧電磁弁262a,262b、高圧導入電磁弁264、膨張機構43に対して開指令を与える。これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、図5に示すように循環する。
【0047】
すなわち、圧縮機21で圧縮された冷媒は、第2送出状態にある三方弁261を経由して高圧冷媒導入配管31を通過して左庫内熱交換器24cに至る。左庫内熱交換器24cに至った冷媒は、該左庫内熱交換器24cを通過中に、左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファン(F1:図2参照)の駆動により、左庫3cの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0048】
左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒は、放熱経路40を構成する放熱配管41に配設された後述するように作用する膨張機構43を通過して加熱側熱交換器42に至り、該加熱側熱交換器42で周囲空気に放熱する。加熱側熱交換器42で放熱した冷媒は、戻配管51を通過して主経路20に流入し、開成する入口側低圧電磁弁262a,262bを通過する。入口側低圧電磁弁262a,262bを通過した冷媒は、膨張機構231,232でそれぞれ断熱膨張して右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bに至り、これら右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bでそれぞれ蒸発して各商品収容庫3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファン(F1:図2参照)の駆動により各商品収容庫3の内部を循環し、これにより各商品収容庫3(右庫3a及び中庫3b)に収容された商品は冷却される。右庫内熱交換器24a及び中庫内熱交換器24bで蒸発した冷媒は、圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0049】
ここで、本発明の実施の形態である冷媒回路装置を構成する冷媒回路10の放熱経路40には、膨張機構43が配設してあるため、左庫内熱交換器24cで凝縮した高圧の液相冷媒は、膨張機構43で減圧され、中間圧の気液二相冷媒として加熱側熱交換器42に供給される。これにより加熱側熱交換器42内の液溜まりを抑制することができるため、加熱側熱交換器42内に冷媒が溜まることによる冷媒循環量不足が低減され、ヒートポンプ運転による加熱能力を向上させることができる。
【0050】
また冷却室(右庫3a、中庫3b)の商品が所望の設定温度に達して冷却運転(右庫3a、中庫3bの内部空気を冷却する運転)を停止し、かつ加熱室の商品を所望の設定温度まで加熱する加熱単独運転(左庫3cのみの内部空気を加熱する運転)について説明する。この場合、コントローラは、三方弁261を第2送出状態にさせ、出口側低圧電磁弁263の他、入口側低圧電磁弁262a、262b、262cの全てに対して閉指令を与え、高圧導入電磁弁264、バイパス電磁弁265に対して開指令を与える。これにより圧縮機21で圧縮された冷媒は、図6に示すように循環する。
【0051】
すなわち、圧縮機21で圧縮された冷媒は、第2送出状態にある三方弁261を経由して高圧冷媒導入配管31を通過して左庫内熱交換器24cに至る。左庫内熱交換器24cに至った冷媒は、該左庫内熱交換器24cを通過中に、左庫3cの内部空気と熱交換し、該内部空気に放熱して凝縮する。これにより左庫3cの内部空気を加熱する。加熱された内部空気は、庫内送風ファン(F1:図2参照)の駆動により、左庫3cの内部を循環し、これにより左庫3cに収容された商品は、循環する内部空気に加熱される。
【0052】
左庫内熱交換器24cで凝縮した冷媒は、放熱経路40を構成する放熱配管41を通過して加熱側熱交換器42に至り、該加熱側熱交換器42で放熱する。加熱側熱交換器42で放熱した冷媒は、戻配管51を通過して第2分岐点P3より、バイパス経路60を構成するバイパス配管61を経由して、圧縮機21に吸引される。ここで放熱配管41を通過して加熱側熱交換器42に至るまでに、膨張機構43を経由するため、冷媒は気液二相の低圧冷媒状態となっており、圧縮機入口に設けたアキュムレータ27において気液分離されて低圧気相冷媒が圧縮機21に吸引され、圧縮機21に圧縮されて上述した循環を繰り返す。
【0053】
以上説明したように本実施の形態である冷媒回路装置によれば、圧縮機で圧縮した冷媒を庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより、該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させて該室の内部雰囲気を加熱させる高圧冷媒導入経路と、前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して加熱側熱交換器に供給する放熱経路の間に、庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に至る放熱配管の途中に配設され、前記放熱配管を通過する冷媒を断熱膨張させる膨張機構を設けることにより、庫内熱交換器で凝縮した高圧の液相冷媒を中間圧の気液二相冷媒の状態にして加熱側熱交換器に供給することができる。これにより加熱側熱交換器の液溜まりを抑制することができるため、加熱側熱交換器内に冷媒が溜まることによる冷媒循環量不足が低減され、ヒートポンプ運転による加熱能力を向上させることができる。また、ヒートポンプ運転から加熱単独運転に切り換わる際に、加熱対象となる商品庫は十分な加熱能力で保温維持されているため、加熱単独運転の時間を短縮することができ、消費電力の低減化を図ることができる。
【0054】
更に、ヒートポンプ運転時に膨張機構を介することで液溜まりを解消できるため、ヒートポンプ運転に必要な冷媒量を最小限に抑えることができる。そのためヒートポンプ運転に対して、必要とする冷媒量が少なくてすむCCC運転(すべての商品収容庫3の内部空気を冷却する運転)においても冷媒量過剰による液溜まりの抑制につながり、新たに液溜め用の配管を設ける必要も無くなるためコストダウンを図ることができる。
【0055】
なお上述した実施の形態においては、温度センサによる制御について特に言及していないが、本発明においては、左庫3cの庫内熱交換器24cに温度センサを設け、冷媒温度を所望の温度(例えば65℃)となるように、膨張機構43の開度を調整することで、最適な冷媒流量を確保してさらに加熱能力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係る冷媒回路装置は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売する自動販売機に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・本体キャビネット、3・・・商品収容庫、4・・・外扉、10・・・冷媒回路、20・・・主経路、21・・・圧縮機、22・・・庫外熱交換器、231、232、233・・・膨張機構、24・・・庫内熱交換器、24a・・・右庫内熱交換器、24b・・・中庫内熱交換器、24c・・・左庫内熱交換器、25・・・冷媒配管、27・・・アキュムレータ、261・・・三方弁、262a、262b、262c・・・入口側低圧電磁弁、263・・・出口側低圧電磁弁、30・・・高圧冷媒導入経路、31・・・高圧冷媒導入配管、264・・・高圧導入電磁弁、40・・・放熱経路、41・・・放熱配管、42・・・加熱側熱交換器、43・・・膨張機構、50・・・戻経路、51・・・戻配管、60・・・バイパス経路、61・・・バイパス配管、265・・・バイパス電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象室の内部に配設された庫内熱交換器と、前記庫内熱交換器を通過した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入して凝縮させる庫外熱交換器とを冷媒配管で順次接続して構成した主経路と、
自身に設けられた導入電磁弁が開成することにより前記圧縮機で圧縮した冷媒を導入し、前記庫内熱交換器のうち加熱対象となる室に配設されたものに供給することにより該庫内熱交換器で冷媒を凝縮させて該室の内部雰囲気を加熱させる高圧冷媒導入経路と、
前記庫内熱交換器で凝縮した冷媒を導入して加熱側熱交換器に供給する放熱経路と、
前記加熱側熱交換器を通過した冷媒を導入し、前記主経路の庫内熱交換器の上流側に戻す戻経路と、
前記主経路における庫内熱交換器の上流側にそれぞれ設けられ、前記庫外熱交換器及び前記加熱側熱交換器のいずれかを通過した冷媒を断熱膨張させる膨張機構と、
を備えた冷媒回路装置において、
前記放熱経路は、前記庫内熱交換器から前記加熱側熱交換器に至る放熱配管の途中に配設され、前記放熱配管を通過する冷媒を断熱膨張させる膨張機構を備えたことを特徴とする冷媒回路装置。
【請求項2】
前記冷媒回路において、バイパス電磁弁が開成して前記加熱側熱交換器で放熱した冷媒をバイパス配管を通して、前記圧縮機に低圧冷媒として供給するバイパス経路を有したことを特徴とする請求項1に記載の冷媒回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241972(P2012−241972A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111966(P2011−111966)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】