説明

冷水循環システム

【課題】冷凍機の運転成績の低下を抑制できる冷水循環システムを提供する。
【解決手段】冷水循環システムは、負荷設備81Aと、冷凍機3と、冷水一次ポンプ1と、動力インバーター51を有し、動力インバーター51の運転周波数に応じた送水量の送り冷水を負荷設備81Aに供給する冷水二次ポンプ5と、運転周波数を制御することにより、冷凍機3から負荷設備81Aへの送り冷水の送水量を調整するポンプ運転制御器131とを備え、ポンプ運転制御器131は、冷凍機3から負荷設備81Aに送水される送り冷水の予め設定された制御目標温度と負荷設備81Aから冷凍機3に戻される戻り冷水の温度を測定して得られた戻り冷水温度とから算出される算出温度差と、負荷設備81Aの定格設計温度差との差の絶対値が減少する方向へ、算出温度差に基づいて運転周波数を制御することにより負荷設備81Aへの送水量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷水循環システムに関する。特に、本発明は、省エネルギー化できる冷水循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷水循環システムとして、送り冷水と戻り冷水とを貯える冷水蓄熱槽と、戻り冷水を冷水蓄熱槽の高温部から冷凍機を介して冷水蓄熱槽の低温部へ送る冷水一次ポンプと、動力インバーターを備え、かつ送り冷水を冷水蓄熱槽の低温部から負荷設備へ送る冷水二次ポンプと、冷水二次ポンプの動作を制御するポンプ運転制御器とを備え、ポンプ運転制御器は、送り冷水の温度と戻り冷水の温度との検出温度差を負荷設備の定格設計温度差に近づけるように、動力インバーターの運転周波数を制御する冷水循環システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷水循環システムは、上記構成を備えることにより、冷水二次ポンプから負荷設備への送水量を最適な量に制御できるので、省エネルギーの観点から極めて優れた効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−155232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の冷水循環システムは、実際の送り冷水の温度が変化すると、これを基に定格設計温度差を加算して算出される戻り冷水の制御目標温度は、理想の値である冷凍機の冷水を取り込む側の定格設計温度(冷水戻り定格温度)から、かけ離れる場合がある。例えば、夏季において冷凍機の冷却塔の能力が不充分な場合などに、実際の送り冷水の温度が目標としている送り冷水の温度よりも、高くなり過ぎる状況が発生し得る。これに定格設計温度差を加えた値を戻り冷水の制御目標温度として制御すると、戻り冷水の温度も理想とする値(定格設計温度)からはかけ離れて高くなってしまう。このため冷凍機への過負荷により、冷凍機本来の能力を発揮して十分に冷却することができずに実際の送り冷水の温度が更に上昇する可能性がある。よって、負荷設備から戻ってくる戻り冷水を十分に安定して冷却するための冷水循環をする制御には改良の余地がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、更なる安定した省エネルギーを図るために、冷凍機が効率の高い冷却運転を続ける信頼性を高めつつ、冷水の循環量を必要最低限にできる冷水循環システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、制御弁により必要水量が連続的に調整される負荷設備と、負荷設備からの戻り冷水を冷却し、負荷設備への送り冷水にする冷凍機と、戻り冷水を冷凍機に供給する冷水一次ポンプと、動力インバーターを有し、動力インバーターの運転周波数に応じた送水量及び送水圧力(以下、ポンプの「送水量」とは「送水量及び送水圧力」を意味する。)の送り冷水を負荷設備に供給する冷水二次ポンプと、運転周波数を制御することにより、冷凍機から負荷設備への送り冷水の送水量を調整するポンプ運転制御器とを備え、ポンプ運転制御器が、冷凍機から負荷設備に送水される送り冷水の予め設定された制御目標温度と負荷設備から冷凍機に戻される戻り冷水の温度を測定して得られた戻り冷水温度とから算出される算出温度差と、負荷設備の定格設計温度差との差の絶対値が減少する方向へ、算出温度差に基づいて運転周波数を制御することにより負荷設備への送水量を調整する冷水循環システムが提供される。
【0008】
また、上記冷水循環システムにおいて、ポンプ運転制御器が、算出温度差と定格設計温度差との差の絶対値が予め設定された許容値を外れた時間が、予め設定した一定の時間を連続して、又は、予め設定した時間内に累積して過ぎた場合に、負荷設備への送り冷水の送水量を調整することもできる。
【0009】
また、上記冷水循環システムにおいて、ポンプ運転制御器が、動力インバーターの運転周波数が、予め設定した最高周波数に到達した場合に冷水二次ポンプの運転台数を増加させ、予め設定した最低周波数に到達した場合に冷水二次ポンプの運転台数を減少させることもできる。
【0010】
また、上記冷水循環システムにおいて、負荷設備の前段に、負荷設備に供給される送り冷水の圧力を変化させる圧力可変部を更に備えることもできる。
【0011】
また、上記冷水循環システムにおいて、圧力可変部が、冷水二次ポンプより小型の加圧ポンプであってもよい。
【0012】
また、上記冷水循環システムにおいて、複数の負荷設備を更に備え、送り冷水が、複数の負荷設備のそれぞれに複数の送り管を通じて送水され、複数の負荷設備のそれぞれが、複数の戻り管を通じて戻り冷水を冷凍機に向けて送水し、制御目標温度が、複数の送り管の第1の集合部分において予め設定される温度であり、戻り冷水温度が、複数の戻り管の第2の集合部分において計測されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る冷水循環システムによれば、更なる安定した省エネルギーを図るために、冷凍機が効率の高い冷却運転を続ける信頼性を高めつつ、冷水の循環量を必要最低限にできる冷水循環システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る冷水循環システムの構成の概要図である。
【図2】第1の実施の形態に係る冷水循環システムの動作のフローである。
【図3】第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムの構成の概要図である。
【図4】第2の実施の形態に係る冷水循環システムの構成の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
(冷水循環システムの構成の概要)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る冷水循環システムの構成の概要を示す。
【0016】
第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、例えば、所定の負荷設備に、空調用、生産冷却水用の冷熱を連続供給する冷水循環設備を含む冷水循環システムである。負荷設備は、例えば、空調機の除湿コイル若しくは冷却コイル、生産冷却水用熱交換器、ドライコイル等である。
【0017】
第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、制御弁としての制御二方弁16により必要水量が連続的に調整される負荷設備81Aと、負荷設備81Aからの戻り冷水を冷凍機3に供給する冷水一次ポンプ1と、負荷設備81Aからの戻り冷水を冷却し、負荷設備81Aへの送り冷水にする冷凍機3と、動力インバーター51が付設され、動力インバーター51の運転周波数に応じた送水量の送り冷水(すなわち、冷凍機3から送出される送り冷水)を負荷設備81Aに供給する冷水二次ポンプ5と、冷水二次ポンプ5に付設される動力インバーター51の動作を制御することにより冷水二次ポンプ5から負荷設備への送り冷水の送水量を調整するポンプ運転制御器131とを備える。なお、第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、冷水二次ポンプ5を1台以上備えることができる。
【0018】
また、本実施の形態に係る冷水循環システムは、冷凍機3からの冷水が流れる配管と送り冷水を負荷設備81Aに供給する配管とを接続する送りヘッダー6a及び送りヘッダー6bと、負荷設備81Aからの戻り冷水が流れる配管と戻り冷水を冷凍機3に供給する配管とを接続する戻りヘッダー9とを備える。冷凍機3からの冷水が流れる配管が送りヘッダー6bに接続され、送り冷水を負荷設備81Aに供給する配管が送りヘッダー6aに接続される。また、送りヘッダー6bと戻りヘッダー9とは、配管により相互に接続される。そして、動力インバーター51が付設されている冷水二次ポンプ5は、一例として、送りヘッダー6aと送りヘッダー6bとの間に送りヘッダー6aと送りヘッダー6bとを接続するように配置される。
【0019】
また、送りヘッダー6a及び送りヘッダー6bの間には、冷凍機3から負荷設備81Aに送水された送り冷水のうち過剰な水(以下、「過剰水」という)を送りヘッダー6aから送りヘッダー6bに還す還り管7を接続してもよい。ただし、詳細は後述するが、本実施の形態に係る冷水循環システムにおいては負荷設備81Aへの送り冷水の量は動力インバーター51により制御されるので、還り管7を設けなくてもよい。すなわち、還り管7は、既存の冷水循環システムに備え付けられている場合、撤去しなくてもよい。また、既存の冷水循環システムが還り管7を備えていない場合、新たに還り管7を設置しなくてもよい。なお、還り管7は、万一、負荷設備の制御弁としての制御二方弁16が全閉止のときに冷水二次ポンプ5が運転された場合に、送り管内の圧力を開放する圧力開放弁を有することもできる。
【0020】
(冷水一次ポンプ1)
冷水一次ポンプ1は、負荷設備81Aから戻りヘッダー9に戻ってくる戻り冷水を冷凍機3に送る。第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、冷水循環システムが備える冷凍機3の数に応じた台数の冷水一次ポンプ1を備える。なお、第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、冷水一次ポンプ1を1台以上備えることができる。すなわち、本実施の形態に係る冷水循環システムは、複数の冷凍機3を備えることができる。
【0021】
(冷凍機3)
冷凍機3は、冷水一次ポンプ1から供給される負荷設備81Aからの戻り冷水を目的の温度まで冷却する。冷却された冷水(すなわち、送り冷水)は、冷凍機3から送りヘッダー6bを介して冷水二次ポンプ5に供給される。ここで、冷凍機3には、戻り冷水を冷却するクーリングタワー31と、冷凍機3とクーリングタワー31との間で戻り冷水を循環させる冷却水ポンプ32とが補機として付随している。そして、これら補機と冷水一次ポンプ1とは冷凍機3の動作に連動して動作する。以下、冷水一次ポンプ1及び補機、並びにこれらと常時連動して運転する冷凍機3の補助設備が存在する場合、それらの全てを含めて冷凍機3ということがある。
【0022】
(冷水二次ポンプ5)
冷水二次ポンプ5は、冷凍機3から送りヘッダー6bに供給された冷水のうち、負荷設備81Aに対して必要な量の冷水(すなわち、送り冷水)を供給する。ここで、冷水二次ポンプ5には、運転電力の周波数(すなわち、運転周波数)を自動的に変化させることにより冷水二次ポンプ5が送水する水量を調整する動力インバーター51が付設されている。そして、動力インバーター51の周波数は、ポンプ運転制御器131により制御される。すなわち、冷水二次ポンプ5は、ポンプ運転制御器131に制御される動力インバーター51の周波数に応じて、必要な量の送り冷水を送りヘッダー6aを介して負荷設備81Aに供給する。
【0023】
なお、複数の冷水二次ポンプ5はそれぞれ、送り冷水を負荷設備側に送水する送水管をそれぞれ有する。複数の送水管は、送りヘッダー6aに接続され、複数の送水管のそれぞれを流れる送り冷水は、送りヘッダー6aにおいて合流する。そして、送りヘッダー6aは、負荷設備81Aに接続される送り管を有している。送り冷水は、当該送り管を通って負荷設備81Aに供給される。
【0024】
(負荷設備)
負荷設備81Aは、冷却対象物17A(例えば、負荷設備81Aが空調機の場合、室内の空気)を冷却する。負荷設備81Aは、負荷である冷却対象物17Aの温度に応じて自動的に負荷設備81Aに流入する送り冷水の水量を制御する制御弁としての制御二方弁16と、制御二方弁16の開度を制御する制御信号変換器24Aと、冷却対象物17Aの温度を検出する温度検出器23Aとを有する。なお、負荷設備81Aが有する制御弁は、制御三方弁とすることもできる。この制御弁は、少なくとも、負荷設備の上流側又は下流側のいずれか一方に備えられていれば良い。
【0025】
制御信号変換器24Aは、温度検出器23Aが検出した冷却対象物17Aの温度を示す温度信号を取得して、取得した温度信号に基づいて制御二方弁16の開閉を制御する。具体的に制御信号変換器24Aは、冷却対象物17Aの温度が予め設定された温度に近づくように、制御二方弁16の開度を連続的に、すなわち、段階なく調整する。これにより、負荷設備81Aには、送り冷水の必要水量が連続的に供給される。
【0026】
負荷設備81Aに供給された送り冷水は、負荷設備81Aの負荷(すなわち、冷却対象物17A)の冷却に用いられる。負荷設備81Aに供給された送り冷水の温度は、当該負荷の大きさに比例して上昇して戻り冷水となる。戻り冷水は、負荷設備81Aに接続されている戻り管を通って戻りヘッダー9に供給される。戻りヘッダー9から戻り冷水は、冷水一次ポンプ1を介して冷凍機3に供給される。
【0027】
(ポンプ運転制御器131)
ポンプ運転制御器131は、送り冷水の温度と戻り冷水の温度との算出温度差を負荷設備81Aの定格設計温度差に近づけるように、冷水二次ポンプ5の運転台数と動力インバーター51の運転周波数とを制御する。これにより、ポンプ運転制御器131は、冷凍機3から負荷設備81Aへの送り冷水の送水量を制御する。すなわち、ポンプ運転制御器131は、負荷設備81Aの熱交換設計上の最大温度差を確保するように、冷水二次ポンプ5の運転台数と動力インバーター51の運転周波数とを制御して、送り冷水の送水量を制御する。
【0028】
ここで、負荷設備81Aの定格設計温度差とは、負荷設備81Aの設計仕様書に記載された定格能力を発揮する運転を負荷設備81Aがしている場合において、負荷設備81Aが定格能力を発揮する場合における流量の冷水が負荷設備81Aに供給されており、当該冷水が負荷設備81Aに入る時の冷水の温度と、負荷設備81Aにおいて熱交換されて負荷設備81Aから出ていく冷水の温度との温度差である。定格設計温度差は、予め定められた温度差であって、ある1つの冷水循環システムにおいて統一して設定される。また、本実施の形態に係る冷水循環システムおける定格設計温度差は、負荷設備81Aの設計仕様書に基づく温度差(すなわち、負荷設備81Aに入る冷水の温度と、負荷設備81Aにおいて熱交換された後に負荷設備81Aから排出される水の温度との温度差)に一定の修正を加えた値を定格設計温度差として設定することもできる(例えば、当該温度差から0.5℃を差し引いた値を負荷設備81Aにおける定格設計温度差として設定すること等ができる)。
【0029】
なお、第1の実施の形態においてポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の運転周波数を制御して、冷水二次ポンプ5の送水量を制御することを優先する。そして、例えば、負荷設備81Aが要求する送り冷水の送水量を当該運転周波数の制御では制御することができない場合に、ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5の運転台数を制御(すなわち、運転台数の増減を制御)する。
【0030】
ここで、送り冷水の温度は、例えば、送り管又は送りヘッダー6aに設置された送りの温度設定器18において、制御すべき目標の温度(以下、「制御目標温度」ということがある)として設定される。すなわち、本実施の形態において冷凍機3から負荷設備81Aに送水される送り冷水の温度は、予め定められた温度(すなわち、制御目標温度)である。なお、送りの温度設定器18は、送り冷水の温度を計測することもできる。そして、送りの温度設定器18は、計測した温度を示す温度信号を、ポンプ運転制御器131に供給することもできる。また、本実施の形態においては、ポンプ運転制御器131と送りの温度設定器18とは別体であったが、送りの温度設定器18が温度設定部としての機能を有する場合には、送りの温度設定器18をポンプ運転制御器131の一部として、ポンプ運転制御器131と一体的に構成することもできる。例えば、ポンプ運転制御器131は、制御目標温度を設定するダイヤルスイッチ又はディップスイッチ等を有することができる。また、ポンプ運転制御器131内の制御基板(図示しない)が有するROM内に制御目標温度をプログラミングして予め設定する構成にすることもできる。
【0031】
また、戻り冷水の温度は、例えば、戻りヘッダー9又は戻りヘッダー9の前段に接続されている配管に設置された戻りの温度検出器19において計測される。戻りの温度検出器19は、計測した温度(以下、「戻り冷水温度」ということがある)を示す温度信号をポンプ運転制御器131に供給する。
【0032】
そして、ポンプ運転制御器131は、送りの温度設定器18において設定された制御目標温度と、戻りの温度検出器19から受け取った温度信号が示す戻り冷水温度とから算出される算出温度差(すなわち、制御目標温度と戻り冷水温度との差)と、負荷設備81Aの定格設計温度差との差の絶対値が減少する方向へ、算出温度差に基づいて運転周波数を制御する。すなわち、ポンプ運転制御器131は、送りの温度設定器18において設定された制御目標温度をT1SPとし、戻りの温度検出器19において計測された戻り冷水温度をT2PVとした場合に、ΔT=T2PV−T1SPの値を定格設計温度差に近づけるように、動力インバーター51の運転周波数を制御する。これにより、ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5が負荷設備81Aに供給する送り冷水の送水量を調整する。
【0033】
(動力インバーター51の周波数制御機構)
ポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の運転周波数を制御する周波数制御部を有する。周波数制御部は、予め定められた制御目標温度(T1SP)と計測された戻り冷水温度(T2PV)との算出温度差(ΔT)と、負荷設備81Aの定格設計温度差との差が予め設定した許容値を外れた時間が、予め設定した一定の時間を連続して、又は、予め設定した時間内に累積して過ぎた場合に、動力インバーター51の運転周波数を算出温度差と定格設計温度差との差の絶対値が小さくなる方向へ変化させる。これにより、冷水循環システムは、冷凍機3における熱交換設計上の最適な温度差(すなわち、定格設計温度差)となるように戻り冷水の温度を維持することができ、冷水二次ポンプ5と冷凍機3との全体運転効率を最も良くするように送り冷水の量を制御できる。
【0034】
なお、予め設定する許容値は、例えば、±0.5〜1.0℃程度に設定する。また、本実施の形態において、「予め設定する許容値」、「予め設定する一定の時間」、及び「予め設定する時間内」は、冷水循環システムの運転開始後、冷水循環システムの効率が最適となるように調整することができる。
【0035】
(冷水二次ポンプ5の運転台数制御機構)
ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5の運転台数を増減する運転台数制御部を有する。運転台数制御部は、動力インバーター51の運転周波数が予め設定した最高周波数に到達した時を起点として、当該運転周波数が予め設定した時間、継続した場合に、冷水二次ポンプ5の運転台数を増加させる。また、運転台数制御部は、動力インバーター51の運転周波数が予め設定した最低周波数に到達した時を起点として、当該運転周波数が予め設定した時間、継続した場合に、冷水二次ポンプ5の運転台数を減ずる。これにより、冷水循環システムは、動力インバーター51の運転周波数の調整だけでは困難な範囲まで負荷設備81Aへの送り冷水の送水量を増減できる。そして、冷水循環システムは、動力インバーター51の運転周波数の調整と共に、冷水二次ポンプ5の運転台数を制御することにより、戻り冷水の温度を、冷凍機3が高い運転効率(成績係数)で動作できる温度範囲に維持することができる。
【0036】
ここで、本実施の形態における最高周波数は、本実施の形態に係る冷水循環システムが用いられる地域の商用運転周波数(例えば、50Hz又は60Hz)に設定することが好ましい。また、本実施の形態における最低周波数は、予測される最少冷水量を負荷設備81Aに送ることを目的として、負荷設備81Aを備える冷水循環システムの配管系の形状を考慮した上で、負荷設備において最低限要求される圧力を発生可能な周波数(例えば、25〜35Hz)に設定することが好ましい。なお、最高周波数及び最低周波数はそれぞれ、冷水循環システムの運転が最適になるように適宜調整できる。
【0037】
(冷水循環システムの動作の概要)
第1の実施の形態に係る冷水循環システムの動作の概要を説明する。まず、冷水循環システムが起動されると、ポンプ運転制御器131において予め設定された動力インバーター51の初期運転周波数、冷水二次ポンプ5の初期台数にて冷水循環システムが稼働する。その後、予め設定された送り冷水の温度と実測された戻り冷水の温度との算出温度差の値を、負荷設備81Aの定格設計温度差に近づけるように(すなわち、算出温度差と定格温度差との差の絶対値が減少するように)、算出温度差に基づいて、ポンプ運転制御器131における動力インバーター51の周波数と冷水二次ポンプ5の運転台数に修正が加えられ、冷水循環システムの運転が継続される。
【0038】
そして、冷水循環システムが一定時間、運転した後に、ポンプ運転制御器131は、算出温度差と定格設計温度差とを比較する。そして、ポンプ運転制御器131は、算出温度差と定格設計温度差との差が予め定められた許容値を超えるか否かを判断する。ポンプ運転制御器131は、この許容値を超えた時間が予め定められた時間だけ継続した場合に、現在稼働している動力インバーター51の運転周波数を、算出温度差と定格設計温度差との差の絶対値が小さくなる方向に修正する。これにより、冷水循環システムは、算出温度差を定格設計温度差に近づける動作を継続する。
【0039】
ここで、ポンプ運転制御器131は、冷水循環システムの動作の制御を継続する中で、運転中の冷水二次ポンプ5が複数台ある場合は、それらの吐出圧力が略同一になるように動力インバーター51の設定周波数に修正を加えることができる。
【0040】
冷水循環システムの動作の制御により動力インバーター51の運転周波数が最高周波数に到達した場合、ポンプ運転制御器131は、作動する冷水二次ポンプ5の台数を1台加える。また、動力インバーター51の運転周波数が最低周波数に到達した場合、ポンプ運転制御器131は、作動する冷水二次ポンプ5の台数を1台減ずる。なお、ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5の台数が増減された場合に運転中の冷水二次ポンプ5の総吐出圧力の急変を抑制することを目的として、動力インバーター51の運転周波数を調整する。
【0041】
(冷水循環システムの動作の詳細)
以下、第1の実施の形態に係る冷水循環システムの動作を、フローチャートを示してより詳細に説明する。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る冷水循環システムの動作のフローの一例を示す。
【0043】
まず、第1の実施の形態に係る冷水循環システムを起動する。この場合に、冷水循環システムは、予め設定した初期の冷水二次ポンプ5の台数Pを初期設定周波数HzInで運転を開始する(ステップ10。以下、ステップを「S」と表す)。具体的には、ポンプ運転制御器131において予め設定された動力インバーター51の初期周波数HzInにおいて、初期台数Pの冷水二次ポンプ5の運転が開始される。ここで、初期台数Pは、一例として、冷水二次ポンプ5の総台数の80%の台数に設定する。また、初期周波数HzInは、一例として、48.5Hzに設定する。
【0044】
次に、送りの温度設定器18は、設定した送り冷水の温度を示す温度信号をポンプ運転制御器131に供給する。そして、当該温度信号に基づく温度を制御目標温度(T1SP)としてポンプ運転制御器131に設定する(S12)。ここで、送り冷水の制御目標温度(T1SP)は、一例として、7.0℃以上8.0℃以下の範囲の温度で設定される。なお、送り冷水の温度は、必ずしも定格値(すなわち、負荷設備81Aの入り口側の定格温度)であることは要さない。次に、戻りの温度検出器19は、戻り冷水の温度(T2PV)を計測する(S14)。戻りの温度検出器19は、計測した戻り冷水の温度を示す温度信号をポンプ運転制御器131に供給する。
【0045】
続いて、ポンプ運転制御器131は、送り冷水の温度(設定値[制御目標温度]:T1SP)と戻り冷水の温度(実測値:T2PV)とから算出温度差(ΔT=T2PV−T1SP)を算出する。そして、ポンプ運転制御器131は、算出温度差と、負荷設備81A及び負荷設備81Bの定格設計温度差(ΔTS)とを比較する(S16)。ΔTがΔTS以下である時(ΔT≦ΔTS)はS18に進み(Case1)、大きい時(ΔT>ΔTS)はS34に進む(Case2)。ここで定格設計温度差ΔTSは、一例として、5℃以上8℃以下程度の範囲で設定される。
【0046】
[Case1]
まず、Case1について説明する。ポンプ運転制御器131は、ΔTと、ΔTSから下側許容値K1を減じた値とを比較する。そして、ポンプ運転制御器131は、ΔTがΔTSから下側許容値K1を減じた値以下の値(ΔT≦ΔTS−K1)である場合(S18:Y)、ΔT≦ΔTS−K1の関係が継続する時間を計測する(S20)。一方、ΔT>ΔTS−K1)である場合(S18:N)、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する。なお、下側許容値K1は可変であるが、例えば、0.5℃に設定される。
【0047】
そして、ΔT≦ΔTS−K1の関係が継続する時間が予め定められた時間Y1だけ継続した場合(S20:Y)、ポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の現在の運転周波数HzXから予め設定した運転周波数Hz1を減じる(S22)。運転周波数Hz1は、例えば、1.5Hzに設定される。一方、ΔT≦ΔTS−K1の関係が継続する時間が予め定められた時間Y1だけ継続しない場合(S20:N)、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する。ここで、予め定められた時間Y1は、一例として、90秒程度である。
【0048】
次に、ポンプ運転制御器131は、現在の運転周波数HzXと最低周波数Hzminとを比較する(S24)。ここで、最低周波数Hzminは、負荷設備において最低限必要な量の冷水を送ることを目的として、必要と予測される圧力を発生できる周波数に設定され、一例として、30Hzである。また、ポンプ運転制御器131は、冷水循環システムの稼働を継続しつつ、冷水循環システムの省エネルギー性を向上させるために、最低周波数Hzminを自動的に調整することができる。なお、最低周波数Hzminは、手動で設定してもよい。
【0049】
そして、運転周波数HzXが最低周波数Hzmin以上(HzX≧Hzmin)の場合(S24:Y)、効果待ち時間Y3が経過するまでポンプ運転制御器131は待機する(S26:N)。そして、効果待ち時間Y3が経過した後、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する(S26:Y)。効果待ち時間Y3は、例えば、120秒以上180秒以下の範囲で設定される。
【0050】
一方、運転周波数HzXが最低周波数Hzmin未満(HzX<Hzmin)の場合(S24:N)、ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5の運転台数を1台減らす(S28)。更に、ポンプ運転制御器131は、稼働中の冷水二次ポンプ5の送水圧力を揃え、かつ、現在稼働中の冷水二次ポンプ5の送水圧力が、運転台数を減じる前における送水圧力に等しい送水圧力となるように、複数の動力インバーター51の現在の運転周波数HzXを、予め設定された運転周波数Hz3(例えば、最高周波数に近い周波数であって、一例として、48.5Hz)に調整する(S30)。なお、複数の冷水二次ポンプ5の特性がそれぞれ異なる場合、ポンプ運転制御器131は、各冷水二次ポンプ5をそれぞれ一意に識別する二次ポンプ識別子に対応付けて運転周波数Hz3をデータとして記憶しており、斯かるデータに基づいて運転周波数Hz3を調整する。
【0051】
次に、ポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の運転周波数Hz3に設定した後に、冷水循環システムの稼働を安定させることを目的として、予め定められた効果待ち時間Y5が経過するまで待機する(S32:N)。効果待ち時間Y5が経過した後、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する(S32:Y)。ここで、効果待ち時間Y5は、一例として、120秒以上180秒以下程度の範囲内で設定される。例えば、効果待ち時間Y5は、120秒に設定される。
【0052】
[Case2]
次に、Case2について説明する。ポンプ運転制御器131は、ΔTと、ΔTSに上側許容値K2を加えた値とを比較する。そして、ポンプ運転制御器131は、ΔTがΔTSに上側許容値K2を加えた値以上の値(ΔT≧ΔTS+K2)である場合(S34:Y)、ΔT≧ΔTS+K2の関係が継続する時間を計測する(S36)。一方、ΔT<ΔTS+K2である場合(S34:N)、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する。ここで、上側許容値K2は、例えば、0.3℃である。
【0053】
そして、ΔT≧ΔTS+K2の関係が継続する時間が予め定められた時間Y2だけ継続した場合(S36:Y)、ポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の現在の運転周波数HzXに予め設定した運転周波数Hz2を加える(S38)。運転周波数Hz2は、例えば、1.5Hzに設定される。一方、ΔT≧ΔTS+K2の関係が継続する時間が予め定められた時間Y2だけ継続しない場合(S36:N)、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する。ここで、予め定められた時間Y2は、一例として、90秒程度である。
【0054】
次に、ポンプ運転制御器131は、現在の運転周波数HzXと予め設定された最高周波数Hzmaxとを比較する(S40)。ここで、予め設定された最高周波数Hzminは、一例として、冷水循環システムが設置されている地域の商用周波数である(つまり、50Hz又は60Hzである)。そして、運転周波数HzXが最高周波数Hzmax以下(HzX≦Hzmax)の場合(S40:Y)、効果待ち時間Y4が経過するまでポンプ運転制御器131は待機する(S42:N)。そして、効果待ち時間Y4が経過した後、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の実測の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する(S42:Y)。効果待ち時間Y4は、例えば、120秒以上180秒以下の範囲で設定される。
【0055】
一方、運転周波数HzXが最高周波数Hzmaxを超える(HzX>Hzmax)場合(S40:N)、ポンプ運転制御器131は、冷水二次ポンプ5の運転台数を1台増加させる(S44)。更に、ポンプ運転制御器131は、稼働中の冷水二次ポンプ5の送水圧力を揃え、かつ、現在稼働中の冷水二次ポンプ5の送水圧力が、運転台数を増加させる前における送水圧力に等しい送水圧力となるように、複数の動力インバーター51の現在の運転周波数HzXを、予め設定された運転周波数Hz4(例えば、30Hz)に調整する(S46)。なお、複数の冷水二次ポンプ5の特性がそれぞれ異なる場合、ポンプ運転制御器131は、二次ポンプ識別子に対応付けて運転周波数Hz4をデータとして記憶しており、斯かるデータに基づいて運転周波数Hz4を調整する。
【0056】
次に、ポンプ運転制御器131は、動力インバーター51の運転周波数Hz4に設定した後に、冷水循環システムの稼働を安定させることを目的として、予め定められた効果待ち時間Y5が経過するまで待機する(S32:N)。効果待ち時間Y5が経過した後、ポンプ運転制御器131は、戻り冷水の温度(T2PV)を示す温度信号を引き続き取得する(S32:Y)。
【0057】
以上の各ステップにより、送りの温度設定器18が設定した制御目標温度T1SPと戻りの温度検出器19が実測した温度T2PVとの算出温度差ΔT(=T2PV−T1SP)を、負荷設備81A、負荷設備81Bの定格設計温度差ΔTSに近づけるような制御が、ポンプ運転制御器131による動力インバーター51の運転周波数と冷水二次ポンプ5の運転台数の制御によって実施され、冷水循環システムの運転が継続される。
【0058】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、送り冷水の温度を予め設定すると共に、算出温度差と定格設計温度差との差の絶対値を減少させる方向に送り冷水の水量を制御するので、冷水二次ポンプ5による送水量を過剰又は不足にならない最適な量に制御できる。これにより、冷水循環システム全体の運転動力(消費エネルギー)を削減でき、エネルギー効率を向上させることができる。
【0059】
より詳細に、第1の実施の形態に係る冷水循環システムは、冷水循環システムの運転中に常時変化しつづけている負荷設備が要する冷熱量に対応して、予め設定された送り冷水の温度と実測された戻り冷水の温度との算出温度差を負荷設備の定格設計温度差に近づけつつ送水量を可変にする制御をするので、負荷設備が設計通りの熱交換部分の温度差で充分に機能を発揮することができると共に、過剰でも過少でもない、適切な流量の送り冷水を負荷設備に供給できる。これにより、送り圧力を一定にする方式(すなわち、水量が過剰の傾向)に比べ、冷水循環システムの動力を大幅に削減できると共に、戻り冷水の温度を冷凍機の定格の吸込み温度に近づけることができる。この結果、冷凍機の成績係数を向上させることができる。更に、本実施の形態に係る冷水循環システムによれば、負荷設備の負荷が変化した場合であっても、送り冷水の温度を予め設定したので、戻り冷水の温度が高くなりすぎたり低くなりすぎたりすることを抑制でき(すなわち、戻り冷水の温度は定格値であり、かつ、最適値にすることができ)、冷凍機の運転成績の低下を抑制できる。したがって、本実施の形態に係る冷水循環システムによれば、冷水二次ポンプ5の動力を削減できると共に冷凍機の動力も削減できるので、省エネルギー効果を大きくできる。
【0060】
また、本実施の形態に係る冷水循環システムは、負荷設備が要する冷水の過不足が僅かの時に直ちに動作を開始せずに、一定時間にわたり限界量を超えた時にのみ冷水二次ポンプ5の運転周波数と運転台数とを変化させるので、緩やかに、かつ確実に、適切な二次冷水ポンプ5の運転周波数と運転台数とを決定できる。これにより、熟練した調整員の判断規準に近い方法で冷水循環システムを制御でき、自動的な施設の運転管理ができる。
【0061】
(第1の実施の形態の変形例)
図3は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムの構成の概要を示す。
【0062】
第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムは、第1の実施の形態に係る冷水循環システムとは、負荷設備の数が異なる点を除き、第1の実施の形態に係る冷水循環システムと同様の構成を備える。よって、相違点を除き、詳細な説明は省略する。
【0063】
第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムは、複数の負荷設備(例えば、負荷設備81A及び負荷設備81B)を備える。そして、負荷設備81A及び負荷設備81Bからの戻り冷水はそれぞれ、負荷設備81Aに接続されている戻り管と負荷設備81Bに接続されている戻り管とを通じて第2の集合部分としての戻りヘッダー9に供給される。負荷設備81A及び負荷設備81Bからの戻り冷水は戻りヘッダー9において合流する。そして、戻りヘッダー9に供給された戻り冷水は、冷水一次ポンプ1を介して冷凍機3に供給される。
【0064】
また、冷凍機3からの冷水は送りヘッダー6bに供給される。冷水二次ポンプ5は、冷凍機3から送りヘッダー6bに供給された冷水のうち、負荷設備81A及び負荷設備81Bに対して必要な量の送り冷水を供給する。送り冷水は、第1の集合部分としての送りヘッダー6aに接続されている複数の送り管を通って複数の負荷設備のそれぞれに供給される。なお、負荷設備81Aと負荷設備81Bとはそれぞれ略同様の構成を有する。
【0065】
(第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムの動作の概要)
冷水循環システムが起動された時の冷水循環システムの動作は第1の実施の形態に係る冷水循環システムと同一である。ただし、予め設定された送り冷水の温度と実測された戻り冷水の温度との算出温度差の値を、負荷設備81A及び負荷設備81Bの定格設計温度差に近づけるように、算出温度差に基づいて、ポンプ運転制御器131における動力インバーター51の周波数と冷水二次ポンプ5の運転台数に修正が加えられ、冷水循環システムの運転が継続される。
【0066】
そして、冷水循環システムが一定時間、運転した後に、ポンプ運転制御器131は、算出温度差と定格設計温度差とを比較し、算出温度差と定格設計温度差との差が予め定められた許容値を超えるか否かを判断する。ポンプ運転制御器131は、この許容値を超えた時間が予め定められた時間だけ継続した場合に、現在稼働している動力インバーター51の運転周波数を、算出温度差と定格設計温度差との差の絶対値が小さくなる方向に修正する。これにより、冷水循環システムは、算出温度差を定格設計温度差に近づける動作を継続する。
【0067】
そして、冷水循環システムの動作の制御により動力インバーター51の運転周波数が最高周波数に到達した場合、ポンプ運転制御器131は、作動する冷水二次ポンプ5の台数を1台加える。また、動力インバーター51の運転周波数が最低周波数に到達した場合、ポンプ運転制御器131は、作動する冷水二次ポンプ5の台数を1台減ずる。
【0068】
また、冷水循環システムの動作を制御する中で、例えば、負荷設備81Aが負荷設備81Bより高い圧力を要求することが予め分かっている場合には、負荷設備81Aが有する温度検出器23A及び制御信号変換器24Aからポンプ運転制御器131へ、温度の異常を示す警報信号を予め供給する仕組みを設けることができる。この場合、ポンプ運転制御器131は、当該警報信号に基づいて、当該警報信号が消えるまで冷水二次ポンプ5から負荷設備81Aへ供給する送り冷水の量を増やす制御を実施する。
【0069】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る冷水循環システムの構成の概要を示す。
【0070】
第2の実施の形態に係る冷水循環システムは、第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムとは、負荷設備の前段に加圧ポンプを更に備える点を除き、第1の実施の形態の変形例に係る冷水循環システムと同様の構成を備える。よって、相違点を除き、詳細な説明は省略する。
【0071】
第2の実施の形態に係る冷水循環システムは、複数の負荷設備(すなわち、負荷設備81A及び負荷設備81B)のうち、冷水二次ポンプ5から送水される送り冷水の圧力が負荷設備の入口側(つまり、負荷設備に向けて供給される送り冷水が流入する制御二方弁16の手前側)において最も低下する負荷設備の前段に、圧力可変部としての加圧ポンプ40を備える。加圧ポンプ40は、負荷設備に供給される送り冷水の圧力を変化させる。具体的に、加圧ポンプ40は、負荷設備に供給される送り冷水の圧力が、負荷設備が要求する圧力まで加圧する。また、加圧ポンプ40は、冷水二次ポンプ5よりも小型のポンプを用いることができる。
【0072】
なお、送り冷水の圧力が負荷設備の入口において最も低下する負荷設備とは、例えば、冷水循環システムが備える複数の負荷設備のうち、冷水二次ポンプ5から最も離れた位置に設置される負荷設備、又は、冷水二次ポンプ5が設置される位置を基準として、当該位置からの標高が最も高いところに設置される、あるいは冷水二次ポンプ5により送られた冷水がその負荷設備に到達するまでの配管のうちに圧力損失が大きな部分を有する負荷設備等である。
【0073】
なお、負荷設備の入り口側の配管に、圧力可変部としてのバルブを設けることもできる。このバルブを調整することにより、負荷設備に供給される送り冷水の圧力を増加又は減少させることができる。このバルブにより、冷水循環システム全体の水圧のバランスを調整することができ、負荷設備それぞれに対して送り冷水を適切に分配できる。
【0074】
第2の実施の形態に係る冷水循環システムは、負荷設備の前段に加圧ポンプ40を設置することができるので、冷水二次ポンプ5から離れた位置等に設置された負荷設備であっても、当該負荷設備に要求される圧力の送り送水を当該負荷設備に適切に供給することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0076】
1 冷水一次ポンプ
3 冷凍機
5 冷水二次ポンプ
6a、6b 送りヘッダー
7 還り管
8 負荷設備
9 戻りヘッダー
11 流量計
16 制御二方弁
17A、17B 冷却対象物
18 送りの温度設定器
19 戻りの温度検出器
24A、24B 制御信号変換器
31 クーリングタワー
32 冷却水ポンプ
40 加圧ポンプ
51 動力インバーター
81A、81B 負荷設備
131 ポンプ運転制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御弁により必要水量が連続的に調整される負荷設備と、
前記負荷設備からの戻り冷水を冷却し、前記負荷設備への送り冷水にする冷凍機と、
前記戻り冷水を前記冷凍機に供給する冷水一次ポンプと、
動力インバーターを有し、前記動力インバーターの運転周波数に応じた送水量及び送水圧力の前記送り冷水を前記負荷設備に供給する冷水二次ポンプと、
前記運転周波数を制御することにより、前記冷凍機から前記負荷設備への前記送り冷水の前記送水量を調整するポンプ運転制御器と
を備え、
前記ポンプ運転制御器が、前記冷凍機から前記負荷設備に送水される前記送り冷水の予め設定された制御目標温度と前記負荷設備から前記冷凍機に戻される前記戻り冷水の温度を測定して得られた戻り冷水温度とから算出される算出温度差と、前記負荷設備の定格設計温度差との差の絶対値が減少する方向へ、前記算出温度差に基づいて前記運転周波数を制御することにより前記負荷設備への前記送水量を調整する冷水循環システム。
【請求項2】
前記ポンプ運転制御器が、前記算出温度差と前記定格設計温度差との差の絶対値が予め設定された許容値を外れた時間が、予め設定した一定の時間を連続して、又は、予め設定した時間内に累積して過ぎた場合に、前記負荷設備への前記送り冷水の前記送水量を調整する請求項1に記載の冷水循環システム。
【請求項3】
前記ポンプ運転制御器が、前記動力インバーターの運転周波数が、予め設定した最高周波数に到達した場合に前記冷水二次ポンプの運転台数を増加させ、予め設定した最低周波数に到達した場合に前記冷水二次ポンプの運転台数を減少させる請求項2に記載の冷水循環システム。
【請求項4】
前記負荷設備の前段に、前記負荷設備に供給される前記送り冷水の圧力を変化させる圧力可変部を更に備える請求項3に記載の冷水循環システム。
【請求項5】
前記圧力可変部が、前記冷水二次ポンプより小型の加圧ポンプである請求項4に記載の冷水循環システム。
【請求項6】
複数の前記負荷設備を更に備え、
前記送り冷水が、複数の前記負荷設備のそれぞれに複数の送り管を通じて送水され、
複数の前記負荷設備のそれぞれが、複数の戻り管を通じて前記戻り冷水を前記冷凍機に向けて送水し、
前記制御目標温度が、前記複数の送り管の第1の集合部分において予め設定される温度であり、
前記戻り冷水温度が、前記複数の戻り管の第2の集合部分において計測される請求項2〜5のいずれか1項に記載の冷水循環システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−179755(P2011−179755A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44378(P2010−44378)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】