説明

冷温水システム及び冷温水システムのポンプ制御方法

【課題】熱源機の容量制御による能力減少に応じてポンプの消費電力を少なくし、システム全体の効率向上を図る冷温水システムおよび冷温水システムのポンプ制御方法を得る。
【解決手段】冷温熱源機11、21、31は、圧縮機15、25、35を含むヒートポンプ冷凍サイクル14、24、34を有し、水冷媒熱交換器16、26、36は、図示しない熱負荷源の各々を通過する冷温水と冷媒と熱交換することで冷温水を加熱または冷却する。また、制御部13、23、33は、圧縮機15、25、35の周波数の、圧縮機定格周波数に対する周波数比を算出し、算出した周波数比と略同じ比率になるように冷温水ポンプの運転周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出し、算出した運転周波数に基づいて冷温水ポンプ12、22、32を運転するようにインバーター18、28、38を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温水システム及び冷温水システムのポンプ制御方法に関するものである。特にCOPの向上を目的として熱源機圧縮機の容量制御に合わせて冷温水ポンプの容量をインバーター制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルなどの建物において各部屋に熱負荷源として空気調和機が設けられ、これらの空気調和機に冷温熱源機から冷温水が供給される場合が多い。ここで、冷温熱源機とは、ヒートポンプ式冷凍サイクルの熱交換器を用いて冷水または温水を生成するものを言い、冷温水とは冷温熱源機によって生成される冷水または温水を言う。
このような冷温水供給システムにおいて、空調用ファンの風量および循環ポンプの流量をダンパーおよびバルブによって制御する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、熱負荷源のバイパス量を制御するとともに熱源機の台数制御を行うものが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−358399号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】空気調和・衛生工学会議「空気調和・衛生工学便覧」第13版汎用機器・空調機器編第633頁〜634頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示された従来熱源機では、空調用ファンの風量および循環ポンプの流量をダンパーおよびバルブによって制御する方法は消費電力の削減には適さないという問題点があった。
また、上記非特許文献1に示される従来の熱源機では、冷温水ポンプは負荷が小さいときでも冷温水流量(周波数)を一定として運転していた。このため、無駄な消費電力が多くなりシステムの効率が悪いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するために為されたものであり、熱源機の容量制御による能力減少に応じてポンプの消費電力を少なくし、システム全体の効率向上を図る冷温水システムおよび冷温水システムのポンプ制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷温水システムは、複数の熱負荷源と、圧縮機を含むヒートポンプ冷凍サイクルを有し、熱負荷源の各々を通過する冷温水を加熱または冷却する複数の冷温熱源機と、各冷温熱源機に対応して設けられた冷温水ポンプと、各冷温水ポンプに対応して設けられ、この冷温水ポンプを駆動するインバーターと、圧縮機の周波数の、圧縮機定格周波数に対する周波数比を算出し、算出した周波数比と略同じ比率になるように冷温水ポンプの運転周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出し、算出した運転周波数に基づいて冷温水ポンプを運転するようにインバーターを制御する制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷が小さくなると冷温水ポンプの周波数を減少し、流量を少なくするので、ポンプの消費電力が少なくなり、システム全体の効率(成績係数COP)が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における冷温水システムを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における制御部の動作を示すフローチャートである。
【図3】従来における熱源機の冷房能力比とCOPの関係を示す図である。
【図4】本発明における熱源機の冷房能力比とCOPの関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における冷温水システムを示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施の形態2における制御部および総合制御部の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における冷温水システムを示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態1における冷温水システムは、空気調和機などの複数の熱負荷源(図示せず)の各々を通過する冷温水を加熱または冷却する熱源機11、21、31と、各熱源機11、21、31に対応して設けられ、冷温水を循環供給する冷温水ポンプ12、22、32とから構成されている。なお、図1では、3台の構成について説明しているが、これに限る必要はなく、1台でも2台でも4台以上でも適用可能である。
以下、3台の構成はすべて同じため、説明を簡単にするために、1台についてのみ説明する。熱源機11は、容量制御可能な圧縮機15と、冷温水と冷媒を熱交換することで冷温水を加熱または冷却する熱交換器16とを具備するヒートポンプ冷凍サイクル14と、圧縮機15の周波数を変更可能なインバーター17と、これらを制御する制御部13とを備えている。
また、冷温水ポンプ12は、冷温水ポンプ用インバーター18によって周波数可変に駆動され、図示しない熱負荷源を通過する冷温水を熱源機11に循環供給する。
【0011】
図2は本実施の形態1における制御部の動作を示すフローチャートである。
次に本実施の形態1における制御部の動作について図1および図2を用いて説明する。
例えば熱源機11、21、31内の圧縮機15、25、35を定格圧縮機周波数比100%で運転したときの周波数を100Hzとする。負荷が半分の時、熱源機の能力は半分となり、圧縮機周波数も半分の50Hzで圧縮機15、25、35が運転する。
【0012】
以下、3台の熱源機11、21、31における制御部13、23、33の動作はすべて同じである。従って、1台のみに代表させて動作を説明する。
熱源機11内の制御部13は、まず圧縮機15の周波数を測定する(ステップS201)。ここで、圧縮機15の周波数は、測定して取得することもできるが、設定温度と現在の温度による温度差に基づいて作成する周波数指令を用いてもよい。また周波数の測定は、速度検出器を用いて行っても良いし、インバーター17の出力電流および直流電流を検出器によって検出し、これらの検出器の出力に基づいて圧縮機15の周波数を推定しても良い。次に制御部13は、圧縮機15の定格周波数を100%とした時の定格周波数に対する周波数の比率(以下、周波数比と呼ぶ)を算出する(ステップS202)。ここでは定格周波数比50%となる。
【0013】
次に制御部13は、冷温水ポンプ用インバーター18を制御して冷温水ポンプ12の周波数を変えて運転させる。この時、冷温水ポンプ12を駆動する新たな周波数は、ステップS202で算出した圧縮機15の周波数比と同じ比率を冷温水ポンプ12の定格周波数に乗算して得られた周波数を用いる。
他の2台については、上記と同様であるため、動作説明を省略する。
【0014】
この制御により、周波数比が50%になると冷温水ポンプ12、22、32の定格消費電力を100%とした時の定格消費電力に対する消費電力比は約25%になる。
このように、負荷が小さくなるとこれに合わせて冷温水ポンプ12、22、32の周波数を減少し、流量を少なくする。これにより冷温水ポンプ12、22、32の消費電力が少なくなり、システム全体の効率が向上する。
【0015】
図3に従来の制御を行なった時、熱源機8台の合計圧縮機周波数の定格周波数に対する周波数比とシステムCOP(成績係数)の例を示す。また、図4に本制御を行なった時、熱源機8台の合計圧縮機周波数を100%とした時の定格周波数に対する周波数比とシステムCOP(成績係数)の例を示す。
図3に示す従来例では圧縮機の消費電力を100%とした時の定格圧縮機消費電力に対する圧縮機消費電力比10%の消費電力を冷温水ポンプの消費電力とした場合を示す。この例では、熱負荷が小さくなり周波数比が下がった場合、冷温水ポンプの消費電力は一定のため、COP(成績係数)は最大約3.2にとどまっている。
一方、図4に示す本発明では負荷が小さくなり周波数比が下がった場合、定格の冷温水ポンプ消費電力を100%とした時の冷温水ポンプの消費電力比を本制御によって変化させることにより、COPは4.4となり約38%向上する。
【0016】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2における冷温水システムを示す概略構成図である。同図において、図1と同符号は同一または相当部分を示す。図5において、図1と異なる点は、総合制御部19が追加されていることである。この総合制御部19は制御部13、23、33とローカルバスを介して接続されている。また、図1では、冷温水ポンプ用のインバーター18、28、38はそれぞれ制御部13、23、33に接続されていたが、図5では、冷温水ポンプ用のインバーター18、28、38は制御部13、23、33に接続されておらず、すべてローカルバスを介して総合制御部19に接続されている。
【0017】
また、図6は本実施の形態2における制御部および総合制御部の動作を示すフローチャートである。
次に本実施の形態2における制御部および総合制御部の動作について図5および図6を用いて説明する。なお、本フローチャートでは、制御部13、23、33を総合制御部19と区別するために、熱源機制御部と呼ぶ。
例えば熱源機11、21、31内の圧縮機15、25、35を定格圧縮機周波数比100%で運転したときの周波数を100Hzとする。負荷が半分の時、熱源機の能力は半分となり、圧縮機周波数も半分の50Hzで圧縮機15、25、35が運転する。
【0018】
熱源機制御部13、23、33はステップS201において、図1のステップS201と同様に動作する。即ち、熱源機制御部13は圧縮機15の周波数を測定し、熱源機制御部23は圧縮機25の周波数を測定し、熱源機制御部33は圧縮機35の周波数を測定する。
【0019】
次にステップS601において、総合制御部19は、それぞれの圧縮機15、25、35の周波数を熱源機制御部13、23、33から取得し、これらの合計周波数を算出する。この例では3台だから、50Hz×3=150Hzとなる。
【0020】
次に総合制御部19は、3台の圧縮機の定格周波数の合計を100%とした時の定格周波数に対する周波数比を算出する(ステップS602)。ここでは定格周波数比50%となる。
なお、この例では3台の圧縮機の定格周波数の合計としたが、接続されている熱源機の数が増えれば、それに応じて合計する台数も増えるのはいうまでもない。
【0021】
次に総合制御部19は冷温水ポンプ12、22、32を冷温水ポンプ用のインバーター18、28、38により周波数を変えて運転させる(ステップS603)。この時、冷温水ポンプ12、22、32を駆動する新たな周波数は、ステップS602で算出した圧縮機の周波数比とほぼ同じ比率を冷温水ポンプ12、22、32の定格周波数に乗算して得られた周波数を用いる。
【0022】
以上の制御により、周波数比が50%になると冷温水ポンプ12、22、32の消費電力比は約25%になる。このように、負荷が小さくなると冷温水ポンプの周波数を減少し、流量を少なくする。これによりポンプの消費電力が少なくなり、システム全体の効率が向上する。
【符号の説明】
【0023】
11 熱源機、12 冷温水ポンプ、13 制御部(熱源機制御部)、14 ヒートポンプ冷凍サイクル、15 圧縮機、16 水冷媒熱交換器、17 圧縮機用インバーター、18 冷温水ポンプ用インバーター、19 総合制御部、21 熱源機、22 冷温水ポンプ、23 制御部(熱源機制御部)、24 ヒートポンプ冷凍サイクル、25 圧縮機、26 水冷媒熱交換器、27 圧縮機用インバーター、28 冷温水ポンプ用インバーター、31 熱源機、32 冷温水ポンプ、33 制御部(熱源機制御部)、34 ヒートポンプ冷凍サイクル、35 圧縮機、36 水冷媒熱交換器、37 圧縮機用インバーター、38 冷温水ポンプ用インバーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱負荷源と、
圧縮機を含むヒートポンプ冷凍サイクルを有し、前記熱負荷源の各々を通過する冷温水を加熱または冷却する複数の冷温熱源機と、
各冷温熱源機に対応して設けられた冷温水ポンプと、
各冷温水ポンプに対応して設けられ、この冷温水ポンプを駆動するインバーターと、
前記圧縮機の周波数の、圧縮機定格周波数に対する周波数比を算出し、算出した周波数比と略同じ比率になるように前記冷温水ポンプの運転周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出し、前記算出した運転周波数に基づいて前記冷温水ポンプを運転するように前記インバーターを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする冷温水システム。
【請求項2】
複数の熱負荷源と、
圧縮機を含むヒートポンプ冷凍サイクルを有し、前記熱負荷源の各々を通過する冷温水を加熱または冷却する複数の冷温熱源機と、
各冷温熱源機に対応して設けられた冷温水ポンプと、
各冷温水ポンプに対応して設けられ、この冷温水ポンプを駆動するインバーターと、
前記冷温熱源機の各々に対応して設けられ、この冷温熱源機の圧縮機の周波数の、圧縮機定格周波数に対する周波数比を算出する制御部と、
各制御部が個別に算出した各熱源機の圧縮機の周波数の合計を算出し、算出した周波数の合計の、圧縮機定格周波数の合計に対する周波数比を算出し、算出した周波数比と略同じ比率になるように前記冷温水ポンプの運転周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出し、前記算出した運転周波数に基づいて前記冷温水ポンプを運転するように前記インバーターを制御する総合制御部と、を備えたことを特徴とする冷温水システム。
【請求項3】
制御部が冷温水熱源機の圧縮機の周波数の、定格周波数に対する周波数比を算出する第1のステップと、
前記制御部が、前記第1のステップで算出した圧縮機の周波数比と略同じ比率になるように冷温水ポンプの運転周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出する第2のステップと、
前記制御部が、前記第2のステップで算出した冷温水ポンプの運転周波数に基づいて前記冷温水ポンプを駆動するように冷温水ポンプ用のインバーターを制御する第3のステップと、を備えたことを特徴とする冷温水システムのポンプ制御方法。
【請求項4】
総合制御部が複数の熱源機の制御部からそれぞれの圧縮機の周波数を取得する第1のステップと、
前記総合制御部が前記冷温水熱源機の圧縮機の周波数の合計を算出する第2のステップと、
前記総合制御部が算出した前記圧縮機の周波数の合計を定格周波数の合計に対する周波数比を算出する第3のステップと、
前記総合制御部が、前記第3のステップで算出した圧縮機の周波数比と略同じ比率になるように各熱源機に対応する冷温水ポンプの周波数をこの冷温水ポンプの定格周波数から算出する第4のステップと、
前記総合制御部が、前記第4のステップで算出した冷温水ポンプの運転周波数に基づいて前記冷温水ポンプを駆動するように冷温水ポンプ用のインバーターを制御する第5のステップと、を備えたことを特徴とする冷温水システムのポンプ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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