説明

冷熱利用のガスタービン装置

【課題】 既設の開放サイクルガスタービン本体に対して簡単な構成を付加するだけで適用でき、ガスタービン装置の出力と効率を向上させることができる冷熱利用のガスタービン装置を提供する。
【解決手段】 大気中の吸気Aを圧縮する吸気圧縮機1、燃焼器3、および大気中に排ガスを放出するタービン2を有するガスタービン本体GTと、液化ガスの気化冷熱により吸気A1を冷却する気化器5と、気化器5で冷却された吸気A1を圧縮して加圧空気A1をガスタービン本体GTに供給する冷空気圧縮機6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口、出口ともに大気に開放された開放サイクルガスタービン装置に関し、詳しくは、液化ガスの冷熱利用を図ることでガスタービンの出力および効率を容易に向上させることができる冷熱利用のガスタービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種開放サイクルガスタービン装置は、気温の上昇により出力、効率が低下するという課題があるため、次に示すように、吸気冷却にLNG(液化天然ガス)の冷熱を利用する吸気冷却方式を採用したものが提案されている。例えば、ガスタービン発電システムにおいて、LNGを用いて空気圧縮機の吸気冷却を行う切替え可能な2つの熱交換器を設置したものがある(例えば特許文献1参照)。このシステムによれば、その一方をLNG冷熱により吸気冷却に使用すると共に、この熱交換器内に吸気中の湿分が氷結付着して吸気冷却性能が低下したとき、他方の熱交換器を吸気の冷却に使用し、前記一方の熱交換器内に氷結付着した湿分を吸気により融解除去できる。
【特許文献1】特開2001―289057号公報
【0003】
また、この種ガスタービン装置には、吸気冷却にLNGの冷熱を利用するもので、気化器でLNGにより第1媒体を冷却し、次いで、吸気冷却器を用いて前記第1媒体で空気を冷却する、いわゆる間接冷却方式を採用したものがある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献2】特開平11−101130号公報
【0004】
また、前記と同様、吸気冷却にLNGの冷熱を利用するもので、LNGで冷却された空気を一旦液化空気タンクに貯蔵し、必要に応じて吸気ラインに液化空気を噴霧するものがある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献3】特開平10−47080号公報
【0005】
また、間接中間冷却器を用いて行う中間冷却にLNGの冷熱を利用したガスタービン装置も知られている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献4】特開平6−88538号公報
【0006】
さらに、前記開放サイクルガスタービン装置以外に、密閉サイクルガスタービン装置において、吸気の冷却にLNGの冷熱を利用するものが知られている(例えば特許文献5参照)。
【特許文献5】特開平2003−56312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献1に係るガスタービン装置によれば、一方の熱交換器内に吸気中の湿分が氷結付着する度に、他方の熱交換器に切替えて吸気冷却を行わなければならず、前記氷結した湿分も吸気により融解除去するようになっているため、複雑な配管構成や切替制御が必要となって、ガスタービン装置の製作コストが高くつき、メンテナンスも面倒なものとなる。また、2つの熱交換器を交互に切替えて使用するので、切替え時のタービン出力の低下、効率の低下は免れない。
【0008】
前記特許文献2に係るガスタービン装置によれば、冷媒と専用の吸気冷却器が必要となって複雑な構成となるのみならず、いわゆる間接冷却方式であるため、LNGの気化冷熱が効率的に用いられない。
【0009】
前記特許文献3に係るガスタービン装置によれば、液化空気の噴霧により吸気は冷却されるものの、前記液化空気は極低温であるため、前記特許文献1と同様、常温仕様となっている通常のガスタービン装置に適用すると、氷結のような様々な支障を来すおそれがある。また、ガスタービン装置以外に液化空気タンクおよびこれの付帯設備が必要となることで、装置製作のコストが高くつく。
【0010】
前記特許文献4に係るガスタービン装置によれば、間接中間冷却器を設置する場所と吸気の配管スペースを予め考慮しておく必要があり、特に単段遠心圧縮機や軸流圧縮機を利用したガスタービンに追加するのは設計上難しい。
【0011】
さらに、前記特許文献5に係るガスタービン装置によれば、LNGの冷熱を有効に利用しているが、開放サイクルガスタービン装置においては適用できず、有効な方法とはいえない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、既設のガスタービンに対して簡単な構成を付加するだけで適用できて、ガスタービンの出力と効率を向上させることができる冷熱利用のガスタービン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するために、本発明に係る冷熱利用のガスタービン装置は、大気中の空気を圧縮する吸気圧縮機、前記吸気圧縮機からの圧縮空気に燃料を混入して燃焼させる燃焼器、および前記燃焼器からの燃焼ガスにより駆動されて大気中に排ガスを放出するタービンを有し、前記吸気圧縮機が前記タービンにより駆動されるガスタービン本体と、液化ガスの気化冷熱により空気を冷却する気化器と、前記気化器で冷却された空気を圧縮して加圧空気を前記ガスタービン本体に供給する冷空気圧縮機とを備えている。ここで、前記冷空気圧縮機としては、低温仕様に設計されたものであって、気化器で冷却された極低温の冷却空気(例えば−100℃)のような0℃以下の空気を吸入しても十分に機能を発揮できるタイプのものを使用するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、液化ガス(例えばLNG)の気化冷熱を有効利用して冷却された空気を圧縮して、その加圧空気をガスタービン本体に供給しており、冷却された低温の空気の圧縮効率は常温の空気の圧縮効率よりも高いから、その圧縮効率の差に相当する分だけ吸気圧縮機の動力を低減でき、ガスタービン装置の出力と効率を向上させることができる。また、既設のガスタービン装置に対して気化器と冷空気圧縮機とを追加するという簡単な構成であるので、既設のガスタービン装置をそのまま有効利用できて、装置製作のコストを抑えることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記加圧空気が前記吸気圧縮機の中段に供給されている。この構成によれば、前記加圧空気が前記吸気圧縮機の中段に供給されることで、中段以降の吸気の温度が低下するから、それだけ吸気圧縮機の動力が低減される。他方、冷空気圧縮機は低温の空気を圧縮するから、常温の空気を吸気圧縮機によって前記中段の圧力まで圧縮するよりも、動力が少なくて済む。こうして、吸気圧縮機の動力が低減され、ガスタービン装置の出力と効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記加圧空気が吸気圧縮機排出口からタービン内までの間に供給されている。この構成によれば、加圧空気を前記吸気圧縮機の中段に供給する場合と異なり、回転部分を有しない箇所に加圧空気を供給するので、供給のためのノズル構造が簡単になる。
【0017】
また、加圧空気を吸気圧縮機排出口から燃焼器内までの間に供給する場合、前記加圧空気を前記排ガスと熱交換して加熱する再生器を設けることが好ましい。この再生器により加圧空気の温度が上昇するので、燃焼器での燃料の使用量が抑制される。これにより、ガスタービン装置の運転コストが低く抑えられる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記吸気圧縮機に導入される空気を冷却する吸気冷却器を備えている。この構成によれば、吸気圧縮機に導入される空気(吸気)の温度が低下し、圧縮動力が低減されるので、ガスタービン装置の出力と効率が向上する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、前記気化器に導入される空気から湿分を除去するドライヤを備えている。この構成によれば、気化器に導入される空気から湿分が除かれるから、前記気化器でLNGの気化時の気化冷熱により前記空気が極低温に冷却されたときに氷結が発生するのが抑制されるので、冷空気圧縮機で効率よく圧縮できる。
【0020】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、前記気化器からの気化したガスが前記燃焼器に燃料として供給されている。この構成によれば、LNGのような液化ガスを気化させて吸気冷却用の気化冷熱として利用されるのみならず、燃焼器に供給する燃料(NG)としても有効に活用される。言い換えれば、LNGのような液化ガスを用いることで、燃焼器に供給する燃料(NG)と、吸気冷却用の気化冷熱とが同時に得られ、ガスタービン装置の運転コストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の冷熱利用のガスタービン装置によれば、簡単な構成の付加により、低温の空気を圧縮して低温高圧の空気にして使えるので、ガスタービンの出力および効率の向上を図ることができる。しかも、既設の常温仕様のガスタービンに気化器と冷空気圧縮機を付加するだけであるから、装置設備のコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。このガスタービン装置は発電プラントであり、大気中の空気Aを圧縮する吸気圧縮機1、これに回転軸4を介して連結されたタービン2、および吸気圧縮機1からの圧縮空気CAに燃料Fを混入して燃焼させる燃焼器3を有するガスタービン本体GTを備えている。この発電プラントはさらに、液化ガス(LNG)の気化冷熱により空気A1を冷却する気化器5と、冷却された空気A1を圧縮して加圧空気A1を前記ガスタービン本体GTに供給する冷空気圧縮機6と、排熱回収ボイラ7とを備えている。ガスタービン本体GTは一軸型であり、前記タービン2と吸気圧縮機1は同一回転軸4に連結されている。この回転軸4にはさらに、図示しない減速機を介して、負荷の一例である発電機8が連結されている。したがって、タービン2は吸気圧縮機1と発電機8とを駆動する。なお、ガスタービンGTを二軸型として、第1軸にタービン2と吸気圧縮機1とを連結し、第2軸にタービン2と発電機8とを連結することもできる。前記冷空気圧縮機6は、電動モータのような駆動機9によって駆動されるもので、低温仕様に設計されており、気化器5で冷却された極低温の冷却空気(例えば−100℃)に曝されても十分に機能を発揮できるタイプのものである。
【0023】
前記気化器5には通路10aを介してLNGのような液化ガスが導入され、これが気化されて天然ガスNGとなったのち、一部は通路10bを介して都市ガスとして供給され、他の一部は通路10cを介して前記燃焼器3に燃料Fとして供給される。また、この気化器5には前記空気Aとは別ルートで取り込まれる大気中の空気A1を取り入れて除湿するドライヤ11が接続されており、このドライヤ11で除湿されて乾燥した空気A1が気化器5に導入され、LNGの気化冷熱により冷却されるようになっている。前記ドライヤ11は、例えば多孔質の乾燥材を充填したものであり、この中を前記空気A1が通過することで空気A1中に含まれる湿分が取り除かれる。このように、気化器5に導入する前に、前記空気A1から湿分を取り除いておくことで、気化器5でLNGの気化冷熱により空気A1が極低温に冷却されても氷結するのが抑制されるので、冷空気圧縮機6で効率よく圧縮してガスタービン本体GTに供給することができる。
【0024】
前記気化器5で冷却された空気A1は、通路10dを介して冷空気圧縮機6に供給され、この冷空気圧縮機6で所定圧まで圧縮された加圧空気A1が、通路10eを介して前記ガスタービン本体GTの吸気圧縮機1の中段Mに供給される。これにより、吸気圧縮機1に吸い込まれて圧縮される大気中の空気Aが加圧空気A1によって混気され、中間冷却される。なお、前記加圧空気A1は、タービン2の第1段ノズルまたは第1段タービンロータの冷却空気として供給してもよい。
【0025】
次に、上記構成の動作について説明する。吸気として大気中の空気(吸気)A(例えば温度15℃)が吸気圧縮機1に吸い込まれると、前記空気Aは、混気前の吸気圧縮機1の中段では、圧縮されて若干高温(例えば140℃付近)となっている。一方、前記空気Aとは別ルートで取り入れられる大気中の空気A1(例えば温度15℃)が前記ドライヤ11で除湿されたのち、気化器5でLNGの気化冷熱により冷却されて冷空気A1(例えば温度−100℃)となる。この冷空気A1が冷空気圧縮機6で圧縮されて加圧空気A1(例えば温度−6〜0℃付近)となって前記吸気圧縮機1の中段Mに供給される。これにより、空気Aに対して前記加圧空気A1が混気されることで前記空気Aが中間冷却される。つづいて、前記中間冷却された圧縮空気CA(A+A1)が燃焼器3に導入され、前記気化器5で気化されて燃焼器3に供給される天然ガスNGとともに燃焼される。こうして、燃焼器3で燃焼された高温高圧の燃焼ガスG1は前記タービン2に送られ、ここで膨張することによりタービン2が駆動されて、発電機8による発電が行われる。タービン2から放出される排ガスG2は排熱回収ボイラ7で蒸気生成のために有効利用されたのち、大気に排出される。
【0026】
次に、前記第1実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置において吸気Aの流量に対する加圧空気A1の混気量とプラント発電出力の関係(図2)、および吸気Aの流量に対する加圧空気A1の混気量とプラント発電効率の関係(図3)について行った実験結果につき説明する。いずれの場合においても、1500kw級のガスタービン発電装置への適用例であり、外気温15℃、全負荷で混気量(吸気Aの流量に対する%で表示)を変化させたものである。
【0027】
図2から明らかなように、加圧空気A1の混気量の増加に比例してプラント発電出力が増大している。これは前述のとおり、吸気Aが中間冷却されたこと等による結果であり、混気量が増加するほど吸気圧縮機1の動力が低減され、プラント発電出力が向上することを示している。また、図3では、加圧空気(冷空気)A1の混気量の増加に比例してプラント発電効率が向上している。これも前記プラント発電出力の場合と同様、吸気Aに加圧空気A1が混気され中間冷却されたこと等による結果であり、加圧空気A1の混気量が増加するほど吸気圧縮機1の動力が低減され、プラント発電効率が向上することを示している。これら図2および図3に示す結果から、吸気圧縮機1に吸い込まれる吸気Aに対し、吸気圧縮機1の中段に加圧空気A1を導入して混気することで圧縮にかかる動力が低減され、その結果、ガスタービン発電プラントの出力と効率が向上することが明らかである。
【0028】
以上のように、第1実施形態によるガスタービン装置によれば、燃料として用いるLNGのような液化ガスの気化冷熱を廃棄することなく、0℃以下の冷却にまで有効活用できる。このとき、冷却された低温の空気の圧縮効率は常温の空気の圧縮効率よりも高いから、その圧縮効率の差に相当する分だけ吸気圧縮機の動力を低減でき、ガスタービン装置の出力と効率を向上させることができる。しかも、別に冷媒を用意する必要もないので、ガスタービン装置の運転コストを低く抑えることができる。
【0029】
また、夏場のように外気温(40℃付近)が高い場合であっても、大気中からの吸気Aに加圧空気(冷空気)A1を混気して吸気圧縮機1で圧縮して用いるので、前記加圧空気A1が前記吸気圧縮機1の中段に供給されることで、中段以降の吸気Aの温度が低下するから、それだけ吸気圧縮機1の動力が低減される。他方、冷空気圧縮機6は低温の空気を圧縮するから、常温の空気を吸気圧縮機1によって前記中段の圧力まで圧縮するよりも、動力が少なくて済む。こうして、吸気圧縮機1の動力が低減され、ガスタービン装置の出力と効率を向上させることができる。
【0030】
さらに、LNGの気化冷熱により常圧・極低温とされた空気A1をガスタービン本体GT(この場合、吸気圧縮機1の中段)に供給するに先立って、冷空気圧縮機6で加圧して0℃〜常温の加圧空気A1としているので、この加圧空気A1が吸気冷却用として供給されても、前記ガスタービン本体は0℃以下となることがないので、常温仕様で設計された既設のガスタービン装置に適用できる。また、既設のガスタービン装置に対して気化器5と冷空気圧縮機6とを追加するという簡単な構成であるので、既設のガスタービン装置をそのまま有効利用できて、装置製作のコストを低く抑えることができる。
【0031】
図4は本発明の第2実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。この実施形態では、第1冷空気圧縮機6の下流側に、第2冷空気圧縮機6Aを配置し、この第2冷空気圧縮機6Aと燃焼器3との間に、加圧空気A1をタービン2からの排ガスG2と熱交換して加熱する再生器12を設け、再生器12を出た加圧空気A1を燃焼器3内に供給している。気化器5で冷却され、第1冷空気圧縮機6で圧縮された加圧空気A1は、第2冷空気圧縮機6Aでさらに圧縮されて圧力および温度が高くなる。この第2冷空気圧縮機6Aで圧縮された加圧空気A1は通路10eを介して再生器12に導入される。この再生器12にはタービン2からの排ガスG2が通路10fを介して導入されており、ここで、前記加圧空気A1と排ガスG2との間で熱交換が行われる結果、燃焼器3に供給される加圧空気A1の温度は、吸気圧縮機1の出口での圧縮空気CAの温度またはそれ以上にまで高くなる。これにより、燃焼器3での燃料Fの使用量を少なくすることができる。また、第1実施形態では、軸流型の吸気圧縮機1を用いた場合、回転する羽根と羽根との間が狭くて、外部からの空気を入れて混ぜる孔を設けるスペースが制約されることがあるが、この第2実施形態では、回転部分を有しない広いスペースに空気を供給できるので、供給のためのノズル構造が簡略化される。
【0032】
なお、前記再生器12は必ずしも設けなくてもよい。また、加圧空気A1は吸気圧縮機1の出口、または吸気圧縮機1とタービン2の間の空気通路に導入してもよく、あるいは、前述のとおり、タービン2のノズルまたはタービンロータの冷却空気として供給してもよい。要するに、加圧空気A1は吸気圧縮機1の出口からタービン2内までの間の任意の箇所に供給することができる。
【0033】
次に、図4の第2実施形態に係るガスタービン装置による吸気および冷空気の状態変化を具体的な数値を挙げて説明する。下記に示す数値の単位は、P(圧力)がKPa、T(温度)が℃、G(流量)がkg/sであり、外気温は15℃である。吸気A( 101.3P、15T、25.6G)は吸気圧縮機1に吸入されて圧縮され(圧縮比16)、燃焼空気として燃焼器3に送られる。一方、ドライヤで除湿され乾燥した空気A1( 103.8P、15T、2.22G)は、燃料であるLNGを気化器5で気化させる際に発生する気化冷熱によって冷却され、冷空気A1(101.3P、-100T、2.22G)となる。この冷空気A1は2段の冷空気圧縮機6,6Aで圧縮されて加圧空気A1(1727P、 152T、2.22G)となる。この加圧空気A1は再生器12に送られて熱交換により加熱されて高温の加圧空気A1(1724P、403T、2.22G)となり、前記燃焼器3に供給される。この高温の加圧空気A1は前記吸気Aに近い圧力、温度であるので、前記燃焼器3に供給する燃料ガスNG(燃料F)は増加せず、燃費効率がよい。なお、冷空気圧縮機6,6Aの動力595kwを差し引いた後のプラント発電出力は7199kw、プラント発電効率は31.2 LHV%となる。
【0034】
図5は本発明の第3実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。この実施形態では、前記第2実施形態において、大気中の空気Aを吸気圧縮機1に導入する前に冷却する吸気冷却器15を追加している。前記吸気冷却器15は、例えば間接熱交換型の吸気冷却器であり、この場合、吸気を冷却するための冷媒は、排熱回収ボイラ7から得た蒸気を熱源として駆動する吸収冷凍機(図示省略)から供給される。吸気冷却器15で空気中に含まれる湿分をドレンとして除去し、0℃付近まで冷却された乾燥冷空気Aが吸気圧縮機1に供給される。この吸気冷却器15による冷却では、吸気Aが0℃以下に冷却されることがないので、これが吸気圧縮機1に吸い込まれても常温仕様のガスタービン本体GTの運転になんらの支障もなく、圧縮にかかる動力を低減できてガスタービン本体GTの出力と効率の改善を図ることができる。この吸気冷却器15として、例えばLNGからの気化冷熱を利用する冷却器を用いることもできる。
【0035】
また、前記第2実施形態と同様、燃焼器3には、気化器5で冷却され、冷空気圧縮機6,6Aで圧縮され、再生器12で加熱された加圧空気A1が導入されるので、燃焼器3での燃料ガスNG(燃料F)の使用量を少なくすることができる。
【0036】
次に、図4の第2実施形態および図5の第3実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置について、気温とプラント発電出力の関係(図6)と、気温とプラント発電効率の関係(図7)について行った実験結果を説明する。いずれの場合においても、6500kw級のガスタービン発電装置への適用例であり、燃焼器3への混気量は、上述のとおり2.22G(8t/H)である。第2実施形態については、図6のように、気温が高くなるのにつれてプラント発電出力が低下し、図7のように、プラント発電出力も低下している。しかしながら、ガスタービン本体GTへの混気を行わない従来のガスタービン装置(従来例)と比べると、出力および効率共に改善されていることがわかる。第3実施形態については、図6のように、気温が高くなってもプラント発電出力は高い水準を維持し、図7のように、プラント発電効率も高い水準を維持している。これら図6および図7では、従来例と比べると、出力および効率共に大幅に改善されていることはもとより、第2実施形態の場合と比べても改善幅が大きいことがわかる。
【0037】
なお、気化器5で気化された天然ガスNGはガスタービン本体GTの燃料Fとして用いなくてもよく、その場合、燃焼器3には他の気体燃料または液体燃料が供給される。また、液化ガスとして、LNG以外に、LPG、液体窒素等を用いることもできる。さらに、本発明は発電プラント以外に、送風システムのような他のガスタービン装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。
【図2】第1実施形態に係るガスタービン装置での混気量とプラント発電出力の関係を示す特性図である。
【図3】第1実施形態に係るガスタービン装置での混気量とプラント発電効率の関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る冷熱利用のガスタービン装置の系統図である。
【図6】気温とプラント発電出力の関係を示す特性図である。
【図7】気温とプラント発電効率の関係を示す特性図である
【符号の説明】
【0039】
1 吸気圧縮機
2 タービン
3 燃焼器
5 気化器
6 第1冷空気圧縮機
6A 第2冷空気圧縮機
11 ドライヤ
12 再生器
A 吸気
A1 加圧空気
G1 燃焼ガス
G2 排ガス
GT ガスタービン本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の空気を圧縮する吸気圧縮機、前記吸気圧縮機からの圧縮空気に燃料を混入して燃焼させる燃焼器、および前記燃焼器からの燃焼ガスにより駆動されて大気中に排ガスを放出するタービンを有し、前記吸気圧縮機が前記タービンにより駆動されるガスタービン本体と、
液化ガスの気化冷熱により空気を冷却する気化器と、
前記気化器で冷却された空気を圧縮して加圧空気を前記ガスタービン本体に供給する冷空気圧縮機とを備えたガスタービン装置。
【請求項2】
請求項1において、前記加圧空気が前記吸気圧縮機の中段に供給されているガスタービン装置。
【請求項3】
請求項1において、前記加圧空気が前記吸気圧縮機排出口からタービン内までの間に供給されているガスタービン装置。
【請求項4】
請求項3において、さらに、前記加圧空気を前記排ガスと熱交換して加熱する再生器を備えたガスタービン装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、さらに、前記吸気圧縮機に導入される空気を冷却する吸気冷却器を備えたガスタービン装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、さらに、前記気化器に導入される空気から湿分を除去するドライヤを備えているガスタービン装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記気化器からの気化したガスが前記燃焼器に燃料として供給されているガスタービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−46161(P2006−46161A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227732(P2004−227732)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)