説明

冷熱衝撃試験装置、並びに、冷熱衝撃試験の試験方法

【課題】 冷熱サイクルを1サイクル実施するのに要する時間を最小限に短縮でき、試料の熱容量や試料の数量等の条件によらず安定した条件下で熱衝撃試験を実施可能な冷熱衝撃試験装置、並びに、冷熱衝撃試験の試験方法の提供を目的とする。
【解決手段】 冷熱衝撃試験装置1は、高温試験槽2と低温試験槽3とを有し、両者の間を試料Wを載せたラック4が移動可能な構成とされている。冷熱衝撃試験装置1は、予備試験において環境温度検知センサ9によって検知される試験環境の雰囲気温度が所定の設定温度に到達するまでの時間と、試料W自身の温度が所定の設定温度に到達するまでの時間との差異時間を記憶しておく。冷熱衝撃試験装置1は、本試験において、環境温度検知センサ9の検知温度が所定の設定温度に到達した後、差異時間が経過した時点から所定の晒し時間にわたって試料Wを試験環境下に晒す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱衝撃試験装置、並びに、冷熱衝撃試験の試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品や電子機器の小型化・高機能化によって、その構成は複雑になっている。また、携帯電話や車載機器のように小型化された機器は、様々な環境で使用されるようになっている。機器の使用環境や動作・停止の繰り返しによる温度ストレスは、機器の信頼性に大きな影響を及ぼす可能性がある。そのため、温度ストレスによる影響が懸念される機器類やこれに使用される部品の製造や開発では、温度ストレスに対する信頼性評価試験が実施されることが多い。
【0003】
従来より、温度ストレスに対する信頼性評価方法として、一般的に冷熱衝撃試験が実施されている。冷熱衝撃試験は、例えば、雰囲気温度の異なる複数の試験室を用意し、そのうちの一つの試験室内に収容してその雰囲気温度下に所定の晒し時間だけ試料を晒した後、その試料を別の試験室に移動させ、この試験室の雰囲気温度下に所定の晒し時間にわたって試料を晒す一連の冷熱サイクル動作を繰り返して試料に対し急激な温度変化を与え、試料の耐性を評価する試験である。
【0004】
ここで、従来より一般的に実施されている冷熱衝撃試験では、試料が晒される雰囲気温度を監視し、これに基づいて晒し時間が調整されている。さらに具体的には、従来の熱衝撃試験では、試料を晒す試験環境を切り替えてから雰囲気温度が所定の温度に達した時点から、所定の晒し時間にわたって試料を試験環境下に晒す方法が採用されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−123687号
【特許文献2】特開2002−107280号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術の冷熱衝撃試験では、試料のサイズや試験槽内における試料の設置箇所によっては、試料が晒される試験環境の雰囲気温度が設定温度に達しているにもかかわらず、試料が設定した温度範囲に到達しないことがあった。そのため、従来は、試料のサイズや設置場所等によって冷熱衝撃試験の試験条件がばらつくのを防止すべく、試料が所定の温度に到達するのに要する時間を多く見積もり、その分だけ1サイクルあたりの晒し時間を長めに設定するなどの方策がとられていた。
【0007】
しかし、上記したように1サイクル当たりの晒し時間を長く取ると、試験期間が長期化してしまうという問題があった。一般的に、冷熱衝撃試験は、300〜2000サイクルといったような多数のサイクル数を重ねて実施されることが多いため、1サイクル当たりの晒し時間を少しでも長くすると、試験期間が長期化してしまうという問題があった。
【0008】
また、冷熱衝撃試験を実施する場合、試料の数量や熱容量によって、試料の所定の温度に到達するのに要する時間にばらつきがあるものと想定される。そのため、上記したように1サイクル当たりの晒し時間を長く取るだけでは、試料の熱容量が大きい場合や、試料の数量が多い場合等は、晒し時間を十分長く取らないと設定した時間内に高温または低温設定温度範囲に到達しない可能性があった。また、熱容量が多い試料等について冷熱衝撃試験を実施する場合にあわせて晒し時間を長く取る構成とすると、熱容量が小さい試料を試験に用いる場合や、試験対象の試料の数が少ない場合に、試料が設定温度に達してから晒し時間が完了するまでの時間が、試料の熱容量が大きい場合や試料の数量が多い場合に比べて長くなってしまうという問題があった。すなわち、従来の冷熱衝撃試験では、試験環境の雰囲気温度の設定温度や晒し時間を同一にしても、試料の熱容量や試料の数量等の条件次第で、冷熱衝撃試験の条件が変わってしまうおそれがあった。
【0009】
これらの問題を解決する手法として、試料自身に温度センサを取り付けたり、試料の抵抗値を計測するなどして試料の温度を監視し、この温度に基づいて晒し時間等を制御する方法が考えられる。しかし、冷熱衝撃試験を行う場合は、試料やこれに取り付けた温度センサに対して大きな温度ストレスが加わるため、試料に取り付けた温度センサが外れたり故障してしまう可能性がある。また、冷熱衝撃試験中に、温度ストレスによって試料に亀裂などが発生すると、試料の抵抗値が変化するなどして試料の温度を正確に把握できなくなり、冷熱衝撃試験の試験条件が不安定になってしまう可能性が高い。
【0010】
かかる知見に基づき、本発明は冷熱サイクルを1サイクル実施するのに要する時間を最小限に短縮でき、試料の熱容量や試料の数量等の条件によらず安定した条件下で熱衝撃試験を実施可能な冷熱衝撃試験装置、並びに、冷熱衝撃試験の試験方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、一定の雰囲気温度に調整された試験環境に試料を晒した後、試料が晒される試験環境を他の一定の雰囲気温度に調整された試験環境に切り替える一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施可能な冷熱衝撃試験装置であって、試料が晒されている試験環境の雰囲気温度を検知する環境温度検知手段と、試料遅延時間導出手段とを備え、当該遅延時間導出手段は、試料が晒される試験環境を切り替える際に、試料が収容されている試料収納室内の温度が所定の温度に到達するまでの時間と、試料自体が前記所定の温度に到達するまでの時間との差異時間を演算し、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであり、試料が晒される試験環境の切り替え時に、環境温度検知手段によって検知される雰囲気温度が所定温度となってから前記試験遅延時間以上が経過し、さらに所定の晒し時間が経過した後に試料が晒される試験環境を他の試験環境に切り換えることにより冷熱衝撃試験を実施可能であることを特徴とする冷熱衝撃試験装置である。
【0012】
本発明の冷熱衝撃試験装置では、試験環境の切り替えに伴って試料が所定の温度に到達するまでの速さを差異時間として捉え、試験環境の切り替え時に試料の温度が安定するのに要する時間を試験遅延時間として把握することができる。そのため、本発明の冷熱衝撃試験装置は、従来技術のように試料の晒し時間を必要以上に長時間に設定する必要がなく、冷熱サイクル動作を1サイクル実施するのに要する時間を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の冷熱衝撃試験装置は、差異時間を導出し、試験遅延時間を把握しておくことにより、以後の冷熱サイクルにおいて試料の温度を検知しなくても、試料を所定の晒し時間にわたって所定の雰囲気温度に調整された試験環境下に晒すことができる。そのため、冷熱衝撃試験装置によれば、冷熱衝撃試験の進行に伴って試料等の状態が変わっても、所望の試験環境下に試料を晒すことができ、正確な試験結果を得ることができる。
【0014】
なお、本発明、並びに、以下に記載する各発明において「差異時間に基づいて導出される試験遅延時間」とは、差異時間そのものであってもよく、差異時間に対して他の要素を加味して導出されるものや、差異時間を所定の演算式に当てはめて導出されるものであってもよい。
【0015】
また、本発明、並びに、以下に記載する各発明において、「差異時間」は、一連の冷熱サイクル動作を1サイクル実施することによって演算されたものであっても、冷熱サイクルを多サイクルにわたって実施した結果を所定の演算式や規則に当てはめて導出されるものであってもよい。さらに具体的には、例えば冷熱サイクルを多サイクルにわたって実施し、各サイクル毎に試料収納室内の温度が所定の温度に到達するまでの時間と、試料自体が前記所定の温度に到達するまでの時間との時間差を導出し、各冷熱サイクルにおける時間差を所定の演算式に代入して差異時間を導出したり、各冷熱サイクルにおける時間差から選択される代表値を差異時間として採用してもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、試料の温度を検知する試料温度検知手段を有し、試料の温度を検知する試料温度検知手段を有し、当該試料温度検知手段によって検知される試料の温度が所定の温度に到達した時点を基準として所定の晒し時間が経過した後に試料が晒される試験環境を他の試験環境に切り換える予備試験を実施可能であり、遅延時間導出手段は、前記予備試験において試験環境の切り替えに伴って環境温度検知手段によって検知される雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要した時間と、試料自体が前記所定の温度に到達するまでに要した時間との差を差異時間として演算すると共に、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷熱衝撃試験装置である。
【0017】
本発明の冷熱衝撃試験装置では、予備試験によって差異時間を演算し、試験遅延時間を正確に導出することができる。そのため、本発明の冷熱衝撃試験装置は、試験中に、例えば試料温度検知手段が試料から外れたり破損するなどの不具合が起きたり、試料が熱衝撃によってひび割れたり、試料の抵抗値が変わる等の変化があっても、所定の雰囲気温度に調整された試験環境下に所定の晒し時間にわたって試料を晒すことができ、正確な試験結果を得ることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、試料温度検知手段が、試料の温度を複数の測定点において測定可能なものであり、差異時間が、試料温度検知手段によって検知される全ての測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて演算されることを特徴とする請求項2に記載の冷熱衝撃試験装置である。
【0019】
かかる構成によれば、試験環境の切り替えに伴って試料が所定の温度に到達するまでの速さが試料の配されている位置等に起因してばらつく場合であっても、試料全体が所定の温度に到達してから所定の晒し時間にわたって試料を試験環境下に晒すことができる。
【0020】
なお、本発明において、「差異時間」は、試料温度検知手段によって検知される全ての測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間そのものであっても、この時間を所定の演算式や規則に当てはめて導出されるものであってもよい。
【0021】
請求項4に記載の発明は、試料温度検知手段が、試料の温度を複数の測定点において測定可能なものであり、差異時間が、試料温度検知手段によって検知される複数の測定点から選ばれる任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて演算されることを特徴とする請求項2に記載の冷熱衝撃試験装置である。
【0022】
かかる構成によれば、試料の配されている位置等の原因により、試験環境を切り替えた際に試料が所定の温度に到達するまでの速さがばらつく場合であっても、このばらつきを考慮し、晒し時間の過不足のない冷熱衝撃試験を実施することができる。
【0023】
なお、本発明において、「差異時間」は、上記した任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間そのものであっても、この時間を所定の演算式や規則に当てはめて導出されるものであってもよい。
【0024】
ここで、上記したように予備試験を実施して差異時間を導出する場合は、差異時間の精度が冷熱衝撃試験の試験精度に大きな影響を与えるものと想定される。
【0025】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項5に記載の発明は、冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する慣らし試験が実施された後に予備試験が実施されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置である。
【0026】
本発明の冷熱衝撃試験装置では、慣らし試験が実施されて試験状態がある程度安定した状態で予備試験が実施されるため、差異時間を的確に設定できる。従って、本発明の冷熱衝撃試験装置によれば、精度の高い冷熱衝撃試験を実施できる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、試料を収納する第1および第2の試料収納室を有し、一定の雰囲気温度となる様に調整された第1の試料収納室内に試料を晒した後、別の一定の雰囲気温度に調整された第2の試料収納室に試料を移動させることにより試料が晒される試験環境を切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置である。
【0028】
本発明の冷熱衝撃試験装置は、第1の試料収納室と第2の試料収納室との間で試料を移動可能な構成とされているため、試料の移動時に上記した試料温度検知手段のような試料の温度検知用の検知手段が試料から外れたり、検知手段等に繋がる配線等が外れるといったような不具合が発生する可能性がある。しかし、上記したように、本発明の冷熱衝撃試験装置は、予め設定された差異時間に基づいて冷熱衝撃試験を実施するものである。そのため、本発明によれば、上記したように試料の移動を伴うような構成であっても、試料が所定の温度に達してから所定の晒し時間にわたって冷熱衝撃試験を実施可能な冷熱衝撃試験装置を提供することができる。
【0029】
また、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置は、試料を収納する試料収納室を有し、当該試料収納室内の雰囲気温度を切り替えることにより、試料が晒される試験環境を切り替え可能であることを特徴とするものであってもよい(請求項7)。
【0030】
請求項8に記載の発明は、一定の雰囲気温度に調整された試験環境に試料を晒した後、試料が晒される試験環境を他の一定の雰囲気温度に調整された試験環境に切り替える一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施する冷熱衝撃試験の試験方法において、試料が晒されている試験環境の切り換え時に当該試験環境の雰囲気温度が所定の温度に到達するまでの時間と試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでの時間との差を差異時間として予め演算し、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであり、冷熱衝撃試験においては試験環境の雰囲気温度が所定温度となってから前記試験遅延時間以上が経過した後に試料が晒される試験環境の温度を切り換えることを特徴とする冷熱衝撃試験の試験方法である。
【0031】
本発明の冷熱衝撃試験の試験方法では、試験環境の切り替えに伴って雰囲気温度が所定の温度に達する時点と、試料が所定の温度に到達する時点との時間的なズレを差異時間として捉えておく構成とされている。そのため、本発明の試験方法によれば、試験環境の雰囲気温度が所定温度となってから差異時間が経過するのを待つことにより、試料が所定の温度に到達した状態とすることができる。従って、本発明の冷熱衝撃試験の実施方法によれば、従来技術のように試料の晒し時間を必要以上に長時間に設定する必要がなく、冷熱衝撃試験の所要時間を最小限に抑制することができる。
【0032】
請求項9に記載の発明は、冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する慣らし試験の後、冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する予備試験を実施し、当該予備試験中に実施される試験環境の切り換え時に当該試験環境の雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要する時間と、試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでに要する時間との差異時間とに基づいて試験遅延時間を導出することを特徴とする請求項8に記載の冷熱衝撃試験の試験方法である。
【0033】
かかる構成によれば、差異時間を正確に把握し、試験遅延時間を的確に設定することが可能であり、精度の高い冷熱衝撃試験を実施することができる。
【0034】
また、上記請求項8又は9に記載の冷熱衝撃試験の試験方法は、試料に温度センサーを取付けて試料の温度を検知し、同時に他の温度センサーによって試料が晒されている試験環境の雰囲気温度を検知し、試験環境の切り替え時に雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要する時間と、試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでの時間との差に基づいて差異時間を導出するものであってもよい(請求項10)。
【0035】
かかる構成によれば、差異時間を的確に把握でき、例えば差異時間の導出後に試料に取り付けられた温度センサーが外れるといったような不具合が発生したり、試料が熱衝撃によってひび割れたり、試料の抵抗値が変わる等の変化が起こっても、試料が所定の温度に達した後、所定時間にわたって試料を所定の試験環境下に晒すことができる。従って、本発明の試験方法によれば、所定の試験環境下に安定して試料を晒すことができ、正確な試験結果を得ることができる。
【0036】
請求項11に記載の発明は、試料温度検知手段によって試料の温度を複数の測定点において測定し、当該複数の測定点の全てにおける試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて差異時間を演算することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の冷熱衝撃試験の試験方法である。
【0037】
かかる試験方法によれば、試験環境の切り替えに伴って試料が所定の温度に到達するまでに要する時間が試料の配されている位置等の要因によってばらつく場合であっても、試料全体が所定の温度に到達してから所定の晒し時間にわたって試料を試験環境下に晒すことができる。
【0038】
なお、本発明において、「差異時間」は、試験環境を切り替えてから試料温度検知手段によって検知される全ての測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間を演算したものであっても、この時間をさらに所定の演算式や規則に当てはめて導出されるものであってもよい。
【0039】
請求項12に記載の発明は、試料温度検知手段によって試料の温度を複数の測定点において測定し、当該複数の測定点から選ばれる任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて差異時間を演算することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の冷熱衝撃試験の試験方法である。
【0040】
かかる試験方法によれば、試験環境を切り替えた際に試料が所定の温度に到達するまでの速さがばらつく場合であっても、このばらつきを考慮して冷熱衝撃試験を実施することができる。
【0041】
なお、本発明において、「差異時間」は、上記した任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間を演算して導出したものであっても、この時間をさらに所定の演算式や規則に当てはめて導出されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、冷熱サイクルを1サイクル実施するのに要する時間を最小限に短縮でき、試料の熱容量や試料の数量等の条件によらず安定した条件下で熱衝撃試験を実施可能な冷熱衝撃試験装置、並びに、冷熱衝撃試験の試験方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態である冷熱衝撃試験方法、並びに、冷熱衝撃試験装置について図面を参照ながら説明する。図1において、1は本実施形態の冷熱衝撃試験装置である。冷熱衝撃試験装置1は、図1に示すように高温試験槽2と、低温試験槽3と、両試験槽2,3の間を往復動可能なラック4とを備えている。冷熱衝撃試験装置1は、ラック4を上下動させて試料Wを高温試験槽2あるいは低温試験槽3のいずれか一方に移動させることにより、試料Wが晒される試験環境を切り替えることができる。すなわち、冷熱衝撃試験1は、異なる雰囲気温度に調整された温度環境間において試料Wを移動させる移動手段を備えている。冷熱衝撃試験装置1は、試料Wを高温の試験環境に晒す高温試験と低温の試験環境に晒す低温試験の双方を実施する冷熱サイクルを繰り返すことにより、図3に示すように試料Wの温度を変動させ、試料Wに熱ストレスを与えることができる。
【0044】
高温試験槽2および低温試験槽3は、それぞれ内部の雰囲気温度を所定の温度幅内の任意の温度に独立的に設定することができる構成とされている。高温試験槽2は、内部の雰囲気温度を例えば60℃〜150℃のような高温の温度範囲内で任意の温度に調整することができる。また同様に、低温試験槽3は、内部の雰囲気温度を例えば0℃〜−55℃のような低温の温度範囲内で任意の温度に調整することができる。
【0045】
高温試験槽2および低温試験槽3は、図1に示すように上下方向に積み重ねられたような状態とされている。さらに具体的には、高温試験槽2は、低温試験槽3に対して上方に積み重ねられた構成とされている。高温試験槽2と低温試験槽3との境界部分や、これらの試験槽2,3の外周部分は、断熱性の高い断熱壁5と隔壁6で囲まれている。高温試験槽2と低温試験槽3の境界をなす隔壁6には連通孔7が設けられている。
【0046】
高温試験槽2には、槽内の雰囲気温度を所定の設定温度となるように調整可能なヒータ等の高温側温調手段8が設けられている。また、高温試験槽2には、モータ10によって駆動する送風機11と、送風ダクト12とが設けられている。また同様に、低温試験槽3には、冷却器等によって構成される雰囲気温度調整用の低温側温調手段13と、モータ15によって駆動する送風機16と、送風ダクト17とが設けられている。高温試験槽2および低温試験槽3は、それぞれ各試験槽2,3の背面側に設けられた送風口12a,17aから高温側温調手段8や低温側温調手段13において温度調整された空気を吹き出し、循環させる構成とされている。高温試験槽2および低温試験槽3の内部には、各試験槽2,3内の雰囲気温度を検知可能なように雰囲気温度センサ18,20が設けられている。
【0047】
ラック4は、図示しない昇降機構により、連通孔7を介して高温試験槽2と低温試験槽3との間を上下方向に往復動可能な構成とされている。ラック4は、試料Wの形状や大きさ、伝熱効率等を勘案し、試料Wを載置するための本体部4aをかご状や棚状等の適宜の形状としたり、適宜の大きさとすることができる。ラック4の本体部4aは、高温試験槽2と低温試験槽3とを隔てる隔壁6に設けられた連通孔7を通過可能な大きさとされている。連通孔7のうち、高温試験槽2側の開口部分および低温試験槽3側の開口部分の外周には、断熱パッキン21,22が取り付けられている。
【0048】
本体部4aには、環境温度検知センサ9が取り付けられている。環境温度検知センサ9は、ラック4に載置されている試料Wが晒される試験環境の温度を検知するためのものである。
【0049】
ラック4の本体部4aの天面側および底面側には、遮熱部4b,4cが設けられている。遮熱部4b,4cは、隔壁6とほぼ同一の高さを有し、断熱壁5や隔壁6と同様に断熱特性が優れている。遮熱部4bの上方には、天板部4dが設けられている。また遮熱部4cの下方には底板部4eが設けられている。天板部4dや底板部4eは、それぞれ図1に示すようにそれぞれ本体部4aや遮熱部4b,4cよりも外側に張り出しており、ラック4を昇降させる際に連通孔7を通過できない大きさとされている。そのため、ラック4を天板部4dや底板部4eが、隔壁6に突き当たるまで昇降させることにより、連通孔7を天板部4dや底板部4eによって塞ぎ、高温試験槽2と低温試験槽3とを熱的に遮断することができる。
【0050】
冷熱衝撃試験装置1は、上記した構成に加えて、図2の装置ブロック図に示すように、制御手段30や温度制御手段31、設定手段32、出力手段33を備えている。制御手段30は、図2に示すように、設定手段32によって冷熱衝撃試験の試験条件に関するデータ(試験条件データ)を入力可能であると共に、試験状況や試験結果に関するデータ(試験データ)を出力手段33に出力して表示することが可能な構成とされている。出力手段33には、例えば液晶等を用いた表示装置や、プロッタ、プリンタ等のような出力装置、デジタルデータをフラッシュメモリ等のメモリ類やフレキシブルディスクのような磁気ディスク、MOディスク(Magneto Optical Disk)のような光磁気ディスク、CD−R(Compact Disc-Recordable)のような光ディスクに出力したり書き込むことが可能な機器類を採用できる。
【0051】
制御手段30は、入力部35、制御部36、データ蓄積部37、判定部38、遅延時間導出部39(遅延時間導出手段)、出力部40を備えている。入力部35は、高温試験槽2や低温試験槽3に設置される雰囲気温度センサ18,20の検知温度に関するデータが入力される構成とされている。また、入力部35は、ラック4に載置される試料Wに取り付けた試料温度センサ25a,25b,25cを電気的に接続することにより、試料W自身の検知温度に関するデータを入力可能な構成とされている。
【0052】
データ蓄積部37、判定部38および遅延時間導出部39は、それぞれ制御部36によって制御されている。データ蓄積部37は、入力部35に入力される検知温度に関するデータや、試験条件データ等を記録する部分である。また、判定部38は、入力部35に入力される検知温度に関するデータに基づき、高温試験槽2や低温試験槽3の雰囲気温度が設定温度に到達するまでに要する時間(雰囲気温度到達時間Ta)や、試料Wの温度が所定の設定温度に到達するまでに要する時間(試料温度到達時間Tw)を判定するものである。遅延時間導出部39は、雰囲気温度到達時間Taと試料温度到達時間Twの差異時間Td(Td=Tw−Ta)を演算し、これに基づいて試験遅延時間Dを導出するものである。さらに具体的には、遅延時間導出部39は、差異時間Tdに対して所定の保持時間Lを加えた時間を試験遅延時間Dとして導出する。差異時間Tdおよび試験遅延時間Dのデータは、データ蓄積部37に記憶される。出力部40は、試験条件データ等の試験環境の設定値等のデータを温度制御手段31に向けて出力する。
【0053】
温度制御手段31は、出力部40から送られてきたデータに基づき、高温試験槽2および低温試験槽3に設けられた高温側温調手段8や低温側温調手段13、送風機11,16等の動作を制御する。
【0054】
続いて、本実施形態の冷熱衝撃試験装置1の動作および冷熱衝撃試験の実施方法について説明する。冷熱衝撃試験装置1は、所定時間毎に試料Wが載置されたラック4を上下動させ、試料Wが晒される温度環境を急激に変化させる冷熱サイクルを繰り返し、試料Wに熱ストレスを与える試験装置である。冷熱衝撃試験装置1は、冷熱衝撃試験の実施方法を雰囲気温度制御モードと試料温度制御モードとから任意の試験モードを選択して実施可能な構成とされている。
【0055】
ここで、雰囲気温度制御モードとは、試料Wを載せたラック4を高温試験槽2側あるいは低温試験槽3側のいずれか一方に移動させて試験環境を切り替えた後、試料Wが晒されている雰囲気温度が所定の設定温度に達した時点から所定の試験時間が経過することを条件としてラック4を昇降させて試料Wが晒されている温度環境を切り替える試験モードである。
【0056】
一方、試料温度制御モードは、本実施形態の冷熱衝撃試験装置1に特有の試験モードである。試料温度制御モードでは、試料Wが晒される試験環境の切り替え時に、試料W自身が所定の試験温度に達するまでに要する時間を加味して実施される試験モードである。試料温度制御モードが選択された場合は、予備試験、本試験の2段階によって構成される試験方法(以下、必要応じて2段階試験法と称す)、あるいは、慣らし試験、予備試験、本試験の3段階に分かれる試験方法(以下、必要に応じて3段階試験法と称す)のいずれかを選択して実施することができる。試料温度制御モードで冷熱衝撃試験が実施される場合は、慣らし試験および/又は予備試験を経て試験環境を切り替える時に、試料W自身が所定の試験温度に達するまでに要する時間を割り出し、これに基づいて本試験が実施される。
【0057】
さらに詳細に説明すると、試料温度制御モードが選択され、上記した3段階試験法で試験を行う場合は、冷熱衝撃試験の開始後の初期段階において、所定のサイクル数にわたって冷熱サイクルが繰り返され(慣らし試験)、試験環境が安定した後に予備試験が実施される。予備試験では、試験環境の切り替え後、試験環境温度が所定の試験温度に達した時点から試料W自身が所定の試験温度に達するまでに要する時間(差異時間Td)が演算され、これに基づいて試験遅延時間Dが決定される。予備試験が完了すると本試験が開始される。本試験では、試験遅延時間Dに基づいて試験環境の切り替え後、試料Wが所定の試験温度になるタイミングが判断され、これに基づいて冷熱サイクルが繰り返される。
【0058】
ここで、慣らし試験および予備試験は、試料温度制御モードによる冷熱衝撃試験の初期段階に、差異時間Tdおよび試験遅延時間Dを決定するために実施されるものである。慣らし試験および予備試験では、試料温度センサ25a〜25cによって検知される試料Wの温度のうち、最も遅く所定の試験温度に達した時点から所定の晒し時間にわたって試料Wを試験環境下に晒した後、試験環境を切り替える一連の動作が所定の冷熱サイクル数にわたって繰り返される。
【0059】
慣らし試験は、冷熱衝撃試験の開始から所定のサイクル数にわたって実施される冷熱サイクルである。慣らし試験に要するサイクル数は、試験環境が安定するのに適したサイクル数に設定される。
【0060】
予備試験は、上記した3段階試験法で冷熱衝撃試験を実施する場合には、慣らし試験によって試験環境が安定になった後に実施されるものであり、所定のサイクル数にわたって冷熱サイクルが繰り返される。制御手段30の遅延時間導出部39は、予備試験中に実施される各冷熱サイクル毎に、試験環境を切り替えた後、試験環境温度が所定の試験温度に達した時点から、試料W自身が所定の試験温度に達するまでに要する時間(差異時間Td)を演算し、これに所定の保持時間Lを加算した時間(Td+L)を試験遅延時間Dとして設定する。
【0061】
本試験は、予備試験の後に実施されるものであり、予備試験の結果に基づいて設定された試験遅延時間Dに基づいて冷熱衝撃試験が実施される。すなわち、本試験では、試料温度センサ25a〜25cによって検知される試料Wの温度を監視するのではなく、試験環境が切り替えられた後、雰囲気温度センサ18,20によって検知される試験環境温度が所定の試験温度に達した時点から試験遅延時間Dが経過した時点(試料温度到達時点)で試料Wが所定の試験温度に達したものとみなす。本試験では、試験遅延時間Dが経過した時点から所定の実質晒し時間Tsにわたって試料Wが所定の試験環境温度の雰囲気下に晒される。換言すれば、試料温度制御モードが選択された場合、本試験では、試料Wが晒される試験環境の切り替え時に、実質晒し時間Tsの計時開始のタイミングが、雰囲気温度が所定の設定温度に達した時点から、予備試験の結果に基づいて設定された試験遅延時間Dの分だけ遅延される。
【0062】
続いて、本実施形態の冷熱衝撃試験装置1の動作について、図4〜図7に示すフローチャートに基づいてさらに詳細に説明する。冷熱衝撃試験装置1は、図示しない運転スイッチがオン状態になると、設定手段32を介して試験条件を入力可能な状態になる。ここで、入力可能な試験条件は、高温試験槽2や低温試験槽3において試料Wを晒す際の晒し時間(実質晒し時間Ts)および雰囲気温度(高温槽雰囲気温度He、低温槽雰囲気温度Ce)と、試験サイクル数N等である。ここで、試験サイクル数がNに設定された場合は、試料Wを高温試験槽2と低温試験槽3の双方に晒す一連の試験を1サイクルとする試験サイクルがNサイクル実施される。
【0063】
運転スイッチがオン状態になった後、ステップ1−1において試験条件が設定されると、制御フローがステップ1−2に進み、ステップ1−1において設定された冷熱衝撃試験の試験モードが試料温度制御モードであるか否かを確認する。ここで、試料温度制御モードが選択されている場合は、制御フローがステップ1−3に進み、雰囲気温度制御モードが選択されている場合は、制御フローが後述するステップ1−8に進む。
【0064】
ステップ1−2において、冷熱衝撃試験の試験モードとして試料温度制御モードが選択された場合は、試験環境の切り替え時に試料W自身の温度が所定の試験温度(以下、必要に応じて高温試料晒し温度Hw、低温試料晒し温度Cwと称す)に達するのに要するタイムラグに相当する差異時間Tdを加味すべく、差異時間Tdを導出し、試験遅延時間Dを設定する必要がある。そのため、試料温度制御モードが選択された場合は、制御フローがステップ1−3に移行し、高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cw、高温到達温度幅Wh、低温到達温度幅Wc、保持時間Lの一部又は全部を設定手段32を介して設定可能な状態になる。
【0065】
ここで、高温到達温度幅Whや低温到達温度幅Wcは、冷熱衝撃試験において許容される試料Wの温度のズレ幅である。すなわち、制御手段30は、環境温度検知センサ9によって検知される試験環境の雰囲気温度が、高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに対して高温到達温度幅Whや低温到達温度幅Wcの範囲内にある場合に、試験環境の雰囲気温度が高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに達したものとみなす。高温到達温度幅Whや低温到達温度幅Wcは、操作者によって任意に設定される値であっても、予め設定された既定値であっても良い。
【0066】
また、保持時間Lは、試料W自身の温度が高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに対して高温到達温度幅Wh、低温到達温度幅Wcの範囲内に到達してから、当該温度幅Wh,Wc内で安定化させるための時間である。保持時間Lは、操作者によって任意に設定される値であっても、予め設定された既定値であっても良い。
【0067】
ステップ1−3において高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cw等が設定されると、制御フローがステップ1−4に移行し、慣らし試験が実施される。慣らし試験は、上記したように試料温度制御モードによる冷熱衝撃試験が開始されてから所定のサイクル数n1にわたって実施されるものである。慣らし試験では、試験環境が切り替えられた後、試料Wに取り付けられた試料温度センサ25a〜25cによって検知される試料Wの温度のうち最も遅く所定の試験温度に達した時点から所定の実質晒し時間Tsにわたって試料Wが試験環境下に晒され、その後試験環境を切り替える動作が所定のサイクル数n1にわたって繰り返される。
【0068】
ステップ1−4において慣らし試験が完了すると、高温試験槽2や低温試験槽3内の雰囲気温度等の試験条件が安定した状態になり、試験環境の切り替え時に高温試験槽2や低温試験槽3内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heや低温槽雰囲気温度Ceになってから試料W自身の温度が高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに達するまでに要する時間も安定するものと想定される。そこで、制御手段30は、ステップ1−4において慣らし運転が完了した時点で制御フローをステップ1−5に進めて予備試験を実施し、差異時間Tdを導出し、試験遅延時間Dを決定する。
【0069】
さらに具体的に説明すると、制御フローがステップ1−5に移行すると、図5に示すサブルーチンに従って予備試験が実施される。すなわち、予備試験が開始されると、制御フローがステップ2−1に移行し、予め雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heに調整された高温試験槽2側に試料Wを載置したラック4が移動し、試験環境が高温側に切り替えられる。この際、雰囲気温度センサ18の検知信号に基づき、ラック4の移動に伴う高温試験槽2内の雰囲気温度の変動が検知される。制御手段30は、ステップ2−2において高温試験槽2内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heに到達したことを確認すると、図8(a)に示すようにラック4の移動に伴って試験環境が切り替えられた時点(環境切替時点P1)から、高温試験槽2内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heに到達した時点(雰囲気温度到達時点P2)までの期間を雰囲気温度到達時間Taとして把握する。
【0070】
その後、制御手段30は、ステップ2−3において試料Wに取り付けられた3つの試料温度センサ25a〜25cの検知温度を個別に監視し、試料Wの温度が高温試料晒し温度Hwに到達するのを待つ。制御手段30は、3つの試料温度センサ25a〜25cうち、検知温度が最も遅く高温試料晒し温度Hwに到達した時点、すなわち全ての試料温度センサ25a〜25cの検知温度が高温試料晒し温度Hwに到達した時点を試料温度到達時点P3として認定する。そして、制御手段30は、上記した雰囲気温度到達時点P2から試料温度到達時点P3に到達するまでに要した期間を高温側差異時間Thdとして導出する。
【0071】
制御手段30は、ステップ2−3において試料温度センサ25a〜25cの検知温度が高温試料晒し温度Hwに到達したことを確認すると、ステップ2−4において保持時間Lが経過するのを待ち、試料Wの温度がさらに安定するのを待つ。その後、制御手段30は、ステップ2−5において実質晒し時間Tsだけ高温試験槽2の温度環境下に試料Wを晒す。
【0072】
制御フローがステップ2−5に移行してから実質晒し時間Tsだけ経過するとステップ2−6において、ラック4が低温試験槽3側に降下し、冷熱衝撃試験の試験環境が低温側に切り替えられる。その後、ステップ2−7以降において、上記したステップ2−2〜ステップ2−5に示す制御と同様の制御が低温試験槽3側で実施され、上記した高温試験槽2側において実施されたのと同様にして、環境温度到達時間および試料温度調整時間が確認される。
【0073】
すなわち、ステップ2−6において試験環境を切り替えるべくラック4が降下すると、一時的に高温試験槽2と低温試験槽3とが連通した状態になる。また、ラック4が降下すると、直前まで高温の雰囲気下に晒されていた試料Wが低温試験槽3内に入ってくる。そのため、ステップ2−6において試験環境が切り替えられると低温試験槽3内の雰囲気温度が不安定になる。そこで、制御手段30は、ステップ2−7において、低温試験槽3内の雰囲気温度が所定の低温槽雰囲気温度Ceになるのを待つ。
【0074】
ステップ2−7において低温試験槽3の雰囲気温度が低温槽雰囲気温度Ceになると、図8(b)に示すように、制御手段30は、ステップ2−6において試験環境の切り替えが実施された時点(環境切替時点P4)から低温試験槽3内の雰囲気温度が低温槽雰囲気温度Ceに到達した時点(雰囲気温度到達時点P5)までの期間を環境温度到達時間Tbとしてデータ蓄積部37に記憶する。その後、制御手段30は、ステップ2−8において、雰囲気温度到達時点P2から3つの試料温度センサ25a〜25cの全てが低温試料晒し温度Cwに到達した時点(試料温度到達時点P6)までに要した時間を低温側差異時間Tcdとして導出する。
【0075】
制御手段30は、ステップ2−9において保持時間Lが経過するのを待ち、試料Wの温度がさらに安定するのを待つ。その後、制御手段30は、ステップ2−10において実質晒し時間Tsだけ低温試験槽3の温度環境下に試料Wを晒す。
【0076】
ステップ2−10において実質晒し時間Tsが経過すると、制御手段30は、ステップ2−11において上記したステップ2−1〜ステップ2−10に至る一連の冷熱サイクルが予備試験の開始後、通算してn2サイクル(nは自然数)だけ実施されたか否かを確認する。ここで、冷熱サイクルのサイクル数がn2回に達していない場合、制御手段30は、制御フローをステップ2−1に戻し、一連の冷熱サイクルを繰り返す。一方、ステップ2−11において冷熱サイクルのサイクル数がn2回に達している場合、制御手段30は、n2回にわたる冷熱サイクルにおいて導出された各高温側差異時間Thd、並びに、各低温側差異時間Tcdのうち最も大きい高温側差異時間Thdおよび低温側差異時間Tcdに相当する時間に保持時間Lを加えた時間(Thd+L,Tcd+L)を、以後の冷熱サイクルにおいて使用する試験遅延時間D(以下、必要に応じて高温側試験遅延時間Dh、低温側試験遅延時間Dcと称す)として記憶する。これにより、図5に示す一連の予備試験が完了し、制御フローが図4のステップ1−6に戻される。
【0077】
ステップ1−6において、制御手段30は、図6に示す制御フローに則り、ステップ1−1おいて設定された試験サイクル数Nから、予め慣らし試験および予備試験で実施された冷熱サイクルのサイクル数n1,n2の分だけ減じた(N−n1−n2)サイクル分だけ本試験を繰り返す。
【0078】
さらに具体的に説明すると、制御フローがステップ1−6に移行すると、図6に示すサブルーチンのステップ3−1に移行する。ステップ3−1に移行すると、制御手段30は、ラック4を上昇させ、試料Wを高温試験槽2内に収容する。その後、高温試験槽2内の雰囲気温度が所定の高温側雰囲気温度Heになるように高温側温調手段8や送風機11の動作が制御される。
【0079】
その後、ステップ3−2において高温試験槽2内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heになると、制御フローがステップ3−3に進み、図5に示す予備試験においてデータ蓄積部37に記憶された高温側差異時間Thdに保持時間Lを加えた高温側試験遅延時間Dhだけ経過するのを待つ。
【0080】
ステップ3−3において高温側試験遅延時間Dhが経過すると、試料Wの温度は確実に高温試料晒し温度Hwになっているものと想定される。そのため、制御手段30は、ステップ3−4において保持時間Lが経過した時点から実質晒し時間Tsに相当する期間にわたって高温試験槽2内の高温雰囲気下に試料Wを晒し続ける。
【0081】
制御手段30は、ステップ3−4において実質晒し時間Tsが経過したことを確認すると、制御フローをステップ3−5に進め、試験環境を低温試験槽3側の試験環境に切り替える。すなわち、制御フローがステップ3−5に移行すると、制御手段30は、ラック4を低温試験槽3側に降下させる。ラック4が完全に低温試験槽2側に移行すると、制御手段30は、ステップ3−6〜ステップ3−8において、上記したステップ3−2〜ステップ3−4において実施したのと同様にして、試料Wを低温雰囲気下に晒す。
【0082】
さらに具体的には、ステップ3−5において試験環境の切り替えが完了すると、制御手段30は、その時点から低温試験槽3内の雰囲気温度が低温槽雰囲気温度Ceに到達するのを待つ(ステップ3−6)。その後、制御手段30は、ステップ3−7において低温槽雰囲気温度Ceに到達した時点から、先に実施された予備試験の結果に基づいて決定された低温側試験遅延時間Dc、すなわち低温側差異時間Tcdと保持時間Lの和に相当する時間が経過するのを待つ。これにより、高温試験槽2側から低温試験槽3に移動してきた試料Wが確実に低温試料晒し温度Cwになっているものと想定される。そのため、制御手段30は、低温側試験遅延時間Dcが経過した時点で制御フローをステップ3−8に進め、実質晒し時間Tsに相当する期間にわたって低温試験槽2内の高温雰囲気下に試料Wを晒し続ける。
【0083】
上記したようにして図6のステップ3−1〜ステップ3−8に至る一連の制御フローが完了すると、1サイクル分の冷熱サイクルが終了する。ステップ3−8において実質晒し時間Tsが経過したことが確認されると、制御手段30は、図4に示す制御フローのステップ1−7に制御フローを戻す。制御手段30は、ステップ1−7において、図4に示すサブルーチンによる冷熱サイクルが通算して(N−n1−n2)サイクル(N,n1,n2はそれぞれ自然数)だけ実施されたか否かを確認する。ここで、冷熱サイクルが実施されたサイクル数が(N−n1−n2)に満たない場合は、制御フローがステップ1−6に戻され、図6に示すサブルーチンに則った一連の冷熱サイクルが継続される。一方、ステップ1−7においてサイクル数が(N−n1−n2)に達している場合は、慣らし試験および予備試験時に実施された冷熱サイクルのサイクル数n1,n2と合算して、サイクル数N分の冷熱サイクルが繰り返されたことになる。そのため、制御手段30は、一連の制御フローによる冷熱衝撃試験を完了する。
【0084】
一方、図4に示す制御フローにおいて、冷熱衝撃試験の実施方法として雰囲気温度制御モードが選択されている場合、すなわちステップ1−8に移行した場合は、制御フローが図7に示すサブルーチンのステップ4−1に移行する。そして、ステップ4−1においてラック4が高温試験槽2側に移動し、試料Wの試験環境が高温側に切り替えられる。その後、高温試験槽2内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heとなるように高温側温調手段8や送風機11の動作が制御される。
【0085】
その後、ステップ4−2において高温試験槽2内の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heになったことが確認されると、この時点から実質晒し時間Tsが経過するまで試料Wが高温雰囲気下に晒される。
【0086】
ステップ4−3において実質晒し時間Tsが経過すると、制御手段30は、ステップ4−4においてラック4を下方の低温試験槽3に移動させ、試験環境を低温側に切り替える。その後、低温側温調手段13や送風機16が作動することによって低温試験槽3内の雰囲気温度が低温槽雰囲気温度Ceになったことが確認されると、この時点から実質晒し時間Tsにわたって試料Wが低温雰囲気下に晒される。ステップ4−6において実質晒し時間Tsが経過すると、1サイクル分の冷熱サイクルが終了し、制御フローがステップ1−9に戻される。
【0087】
制御フローがステップ1−9に戻ると、図7に示す冷熱サイクルが通算でNサイクル分実施されているか否かが確認される。ここで、冷熱サイクルがNサイクルに達していない場合は、制御フローがステップ1−8に戻され、冷熱サイクルが継続される。一方、ステップ1−9で冷熱サイクルのサイクル数がNサイクルに達している場合は、一連の制御フローが完了する。
【0088】
上記したように、冷熱衝撃試験装置1では、予備試験において試験環境の切り替えに伴って雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heや低温槽雰囲気温度Ceに到達してから試料Wが高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに到達するまでに要する時間を高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdとして記憶しておき、これらに基づいて本試験時に試料Wが高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに到達する時間を予測することができる。そのため、冷熱衝撃試験装置1では、試料Wの温度変化に要する時間を加味して試料Wの晒し時間を長く取る必要がなく、冷熱衝撃試験に要する時間を最小限に短縮することができる。
【0089】
また、冷熱衝撃試験装置1は、予備試験によって導出された高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdに基づいて試料Wが高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに到達する時点を予測し、この時点から所定の保持時間Lが経過するのを待って実質晒し時間Tsにわたって試料Wを所定の試験環境下に晒す構成とされている。そのため、冷熱衝撃試験装置1は、本試験中に試料温度センサ25a〜25cが試料Wから外れたり破損するなどの不具合が起きたり、試料Wが熱衝撃によってひび割れたり、試料Wの抵抗値が変わる等の変化があっても、所定の試験環境下に実質晒し時間Tsにわたって試料Wを晒すことができる。従って、上記した冷熱衝撃試験装置1や冷熱衝撃試験方法によれば、正確な試験結果を得ることができる。
【0090】
上記したように、冷熱衝撃試験装置1では、3つの試料温度センサ25a〜25cによって試料Wの温度を測定可能に構成されている。そして上記した冷熱衝撃試験装置1は、試験環境の切り替え時点から試料温度センサ25a〜25cによって検知される全ての検知温度が高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに到達するまでの時間と、試験環境の切り替え時点から環境温度検知センサ9によって検知される試験環境の雰囲気温度が高温槽雰囲気温度Heや低温槽雰囲気温度Ceに到達するまでの時間との差に基づいて高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdを導出する構成とされている。そのため、上記した構成によれば、試料Wの配されている位置や試料Wの熱容量、大きさ等に起因して試験環境を切り替えてから試料Wが所定の温度に到達するまでの速さがばらつく場合であっても、試料W全体が所定の高温試料晒し温度Hwや低温試料晒し温度Cwに到達してから所定の実質晒し時間Tsにわたって試料Wを試験環境下に晒すことができる。
【0091】
上記したように、本実施形態の冷熱衝撃試験装置1では、試料温度制御モードが選択された場合に、冷熱衝撃試験の開始直後(1サイクル目)からn1サイクル目まで慣らし試験を実施して高温試験槽2や低温試験槽3の雰囲気温度等の試験条件が安定するのを待ち、その後に予備試験を実施する3段階試験法と、慣らし試験を省略する2段階試験法のいずれかを選択して実施可能な構成とされている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、3段階試験法および2段階試験法のうち、いずれか一方の試験法のみを実施可能なものであってもよい。
【0092】
上記実施形態の冷熱衝撃試験装置1は、試料温度制御モードにおける試験方法を3段階試験法および2段階試験法から選択して実施可能なものであるが、試験方法の選択は、冷熱衝撃試験装置1の操作者が任意に選択することによって実施されても、制御手段30等において適宜選択するものであってもよい。さらに具体的には、例えば、制御手段30が試料温度制御モードが選択され、冷熱衝撃試験が開始された後、所定のサイクル数にわたって試料Wや高温試験槽2や低温試験槽3の雰囲気温度等の試験条件を監視し、試験条件が試験開始直後から安定している場合は2段階試験法を選択し、試験条件が不安定な場合は3段階試験法を選択する構成としてもよい。
【0093】
上記実施形態では、予備試験において冷熱サイクル毎に導出される各高温側差異時間Thdや各低温側差異時間Tcdのうち、最も大きい高温側差異時間Thdおよび低温側差異時間Tcdに相当する時間を試験環境の切り替え時に試料Wの温度を安定化するのに要する時間として把握するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば各高温側差異時間Thdや各低温側差異時間Tcdを平均したり、所定の演算式に代入して得られる値を試料Wの温度を安定化するのに要する時間として把握する構成としてもよい。また、各高温側差異時間Thdや各低温側差異時間Tcdを所定の規則に当てはめることにより、試料Wの温度を安定化するのに要する時間として把握する構成としてもよい。さらに具体的には、例えば各高温側差異時間Thdや各低温側差異時間Tcdのうち最も長いものを選択したり、これらの差異時間Thd,Tcdの中央値を選択し、これを試料Wの温度が安定化するのに要する時間として把握する構成としてもよい。
【0094】
上記実施形態の冷熱衝撃試験装置1は、高温試験槽2と低温試験槽3とを有し、これらの間をラック4を移動させることにより、試料Wが晒される試験環境を切り替えるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば図9に示す冷熱衝撃試験装置50のように、試料Wを収容する試験槽51と、高温側温調手段8を備えた加熱部52と、低温側温調手段13を備えた冷却部53とを設け、試験槽51と加熱部52あるいは冷却部53との間に設けられたダンパ55,56のいずれかを開くことにより試験槽51内の温度を調整可能な構成としたものであってもよい。かかる構成とした場合についても、上記した冷熱衝撃試験装置1と同様の冷熱衝撃試験を実施することが可能である。
【0095】
上記した冷熱衝撃試験装置1では、試料温度制御モードにより冷熱衝撃試験が実施される度に予備試験を実施して高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdを導出し、高温側試験遅延時間Dhや低温側試験遅延時間Dcを設定するものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば種類や熱容量、大きさ等が同一の試料Wについて冷熱衝撃試験を実施する場合は、高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdは、殆ど変化しない可能性がある。そこで、かかる知見に基づき、先の試験において実施された予備試験において導出された高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdを別の試験の際に流用する構成としてもよい。すなわち、冷熱衝撃試験装置1は、先の冷熱衝撃試験において導出された高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdに関するデータをデータ蓄積部37に必要に応じて呼び出せる状態で記憶しておいたり、設定手段32によって操作者が任意に設定可能な構成としておき、データ蓄積部37から呼び出されたり、設定手段32を介して設定された高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdに基づいて高温側試験遅延時間Dhや低温側試験遅延時間Dcを設定し、試料温度制御モードによる冷熱衝撃試験を実施可能な構成としてもよい。
【0096】
上記実施形態の冷熱衝撃試験装置1,50は、一般的に、暖気が上昇しやすい傾向にあることを考慮し、高温試験槽2や加熱部52を低温試験槽3や冷却部53よりも上方に配置する構成としている。そのため、上記した冷熱衝撃試験装置1,50は、試験環境の切り替え時等に高温試験槽2や加熱部52内に存在する空気と、低温試験槽3や冷却部53に存在する空気との混合が起こりにくい。従って、上記した構成によれば、試験環境の切り替え時に各試験槽2,3,51の雰囲気温度をスムーズに安定させることが可能である。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、高温試験槽2や加熱部52と低温試験槽3や冷却部53との上下関係が入れ替わったものや、これらがほぼ同一平面上に並んだ構成であってもよい。
【0097】
上記実施形態では、試験環境の切り替えから雰囲気温度到達時間Ta,Tbが経過し、高温側差異時間Thdあるいは低温側差異時間Tcdが経過した時点で試料Wが所定の温度に達したと想定されるが、高温側試験遅延時間Dhや低温側試験遅延時間Dcを高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdよりも保持時間Lだけ長く設定し、試料Wの温度が安定するのを待ってから所定の実質晒し時間Tsにわたって試料Wを試験環境下に晒す構成とした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、保持時間Lを設けず、高温側差異時間Thdあるいは低温側差異時間Tcdが経過した時点から実質晒し時間Tsにわたって試料Wを試験環境下に晒す構成としてもよい。すなわち、冷熱衝撃試験装置1,50は、高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdをそのまま高温側試験遅延時間Dhや低温側試験遅延時間Dcとする構成であってもよい。また、高温側試験遅延時間Dhや低温側試験遅延時間Dcは、単に高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdに保持時間Lを足すだけでなく、高温側差異時間Thdや低温側差異時間Tcdを所定の演算式に代入して得られる時間に設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態である冷熱衝撃試験装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2】図1に示す冷熱衝撃試験装置の装置構成を示すブロック図である。
【図3】冷熱衝撃試験を実施する場合における試料の温度変化を概念的に示すグラフである。
【図4】図1に示す冷熱衝撃試験装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す制御フローのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図4に示す制御フローの別のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図4に示す制御フローのさらに別のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】(a),(b)は、それぞれ試験環境が高温側および低温側に切り替えられた時の試験環境の雰囲気温度および試料温度センサによって検知される検知温度の推移を概念的に示すグラフである。
【図9】本発明の別の実施形態である冷熱衝撃試験装置の構成を概念的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 冷熱衝撃試験装置
2 高温試験槽
3 低温試験槽
4 ラック
8 高温側温調手段
9 環境温度検知センサ
13 低温側温調手段
25a〜25c 試料温度センサ
30 制御手段
50 冷熱衝撃試験装置
51 試験槽
52 加熱部
53 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の雰囲気温度に調整された試験環境に試料を晒した後、試料が晒される試験環境を他の一定の雰囲気温度に調整された試験環境に切り替える一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施可能な冷熱衝撃試験装置であって、
試料が晒されている試験環境の雰囲気温度を検知する環境温度検知手段と、試料遅延時間導出手段とを備え、
当該遅延時間導出手段は、試料が晒される試験環境を切り替える際に、試料が収容されている試料収納室内の温度が所定の温度に到達するまでの時間と、試料自体が前記所定の温度に到達するまでの時間との差異時間を演算し、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであり、
試料が晒される試験環境の切り替え時に、環境温度検知手段によって検知される雰囲気温度が所定温度となってから前記試験遅延時間以上が経過し、さらに所定の晒し時間が経過した後に試料が晒される試験環境を他の試験環境に切り換えることにより冷熱衝撃試験を実施可能であることを特徴とする冷熱衝撃試験装置。
【請求項2】
試料の温度を検知する試料温度検知手段を有し、
当該試料温度検知手段によって検知される試料の温度が所定の温度に到達した時点を基準として所定の晒し時間が経過した後に試料が晒される試験環境を他の試験環境に切り換える予備試験を実施可能であり、
遅延時間導出手段は、前記予備試験において試験環境の切り替えに伴って環境温度検知手段によって検知される雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要した時間と、試料自体が前記所定の温度に到達するまでに要した時間との差を差異時間として演算すると共に、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項3】
試料温度検知手段は、試料の温度を複数の測定点において測定可能なものであり、
差異時間は、試料温度検知手段によって検知される全ての測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて演算されることを特徴とする請求項2に記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項4】
試料温度検知手段は、試料の温度を複数の測定点において測定可能なものであり、
差異時間は、試料温度検知手段によって検知される複数の測定点から選ばれる任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて演算されることを特徴とする請求項2に記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項5】
冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する慣らし試験が実施された後に予備試験が実施されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項6】
試料を収納する第1および第2の試料収納室を有し、一定の雰囲気温度となる様に調整された第1の試料収納室内に試料を晒した後、別の一定の雰囲気温度に調整された第2の試料収納室に試料を移動させることにより試料が晒される試験環境を切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項7】
試料を収納する試料収納室を有し、当該試料収納室内の雰囲気温度を切り替えることにより、試料が晒される試験環境を切り替え可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷熱衝撃試験装置。
【請求項8】
一定の雰囲気温度に調整された試験環境に試料を晒した後、試料が晒される試験環境を他の一定の雰囲気温度に調整された試験環境に切り替える一連の冷熱サイクル動作を繰り返し実施する冷熱衝撃試験の試験方法において、
試料が晒されている試験環境の切り換え時に当該試験環境の雰囲気温度が所定の温度に到達するまでの時間と試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでの時間との差を差異時間として予め演算し、当該差異時間に基づいて試験遅延時間を導出するものであり、
冷熱衝撃試験においては試験環境の雰囲気温度が所定温度となってから前記試験遅延時間以上が経過した後に試料が晒される試験環境の温度を切り換えることを特徴とする冷熱衝撃試験の試験方法。
【請求項9】
冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する慣らし試験の後、冷熱サイクル動作を所定のサイクル数にわたって実施する予備試験を実施し、当該予備試験中に実施される試験環境の切り換え時に当該試験環境の雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要する時間と、試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでに要する時間との差異時間とに基づいて試験遅延時間を導出することを特徴とする請求項8に記載の冷熱衝撃試験の試験方法。
【請求項10】
差異時間は、試料に温度センサーを取付けて試料の温度を検知し、同時に他の温度センサーによって試料が晒されている試験環境の雰囲気温度を検知し、試験環境の切り替え時に雰囲気温度が所定の温度に到達するまでに要する時間と、試料自体が前記又は他の所定の温度に到達するまでの時間との差に基づいて導出されることを特徴とする請求項8又は9に記載の冷熱衝撃試験の試験方法。
【請求項11】
試料温度検知手段によって試料の温度を複数の測定点において測定し、当該複数の測定点の全てにおける試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて差異時間を演算することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の冷熱衝撃試験の試験方法。
【請求項12】
試料温度検知手段によって試料の温度を複数の測定点において測定し、当該複数の測定点から選ばれる任意の測定点における試料の温度が所定の温度に到達するまでの時間に基づいて差異時間を演算することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の冷熱衝撃試験の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−329701(P2006−329701A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150856(P2005−150856)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】