説明

冷蔵庫の扉

【課題】冷蔵庫の扉の意匠鋼板の加工による、フィルム剥離低減を図る。
【解決手段】プレス成型した樹脂被覆鋼板及び扉内装材及び樹脂被覆鋼板と扉内装材の空隙部に充填した硬質ウレタンフォームからなり、樹脂被覆鋼板には母材の鋼板5側にポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂3、表面側に透明ポリエステル樹脂6を、接着剤層2を介してラミネートしたフィルムを備え、ポリエステル樹脂のうち、少なくとも表面側のポリエステル樹脂6が1.5kgfの荷重に対し40%以上の伸度を有する2軸延伸のフィルムとして意匠鋼板の加工によるフィルム剥離を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠鋼板を用いた冷蔵庫の扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫の扉は高い意匠性が要求され、それを実現するために鮮映性,加工性に優れた意匠鋼板が用いられてきた。
【0003】
従来、特にポリ塩化ビニルとポリエステル樹脂をラミネートした鋼板は、鮮映性,加工性の面で最も冷蔵庫の扉に適した意匠鋼板であり、数多く用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図3は、特許文献1に記載された従来の冷蔵庫の扉の意匠鋼板を示すものである。図3に示すように透明ポリエステル樹脂1と、接着剤2と、着色ポリ塩化ビニル3と、接着剤4と、鋼板5から構成されている。
【0005】
以上の様に構成された冷蔵庫の意匠鋼板について、以下その動作、作用を説明する。
【0006】
着色ポリ塩化ビニル3層に柄を施し、透明ポリエステル樹脂1は、光沢があり、断面構造に透明ポリエステル樹脂1とポリ塩化ビニル樹脂3を持つ鋼板5は、プレス成形により絞り加工され、所定の形状を持つ冷蔵庫の扉として、深み感のある高い意匠性を有することができる。
【特許文献1】特開平7−68697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では冷蔵庫の扉の母材加工度に対して前記透明ポリエステル樹脂と鋼板側のポリ塩化ビニルまたはポリエステル樹脂の伸びが追従していないことにより、表面側ポリエステル樹脂の負荷応力が高くなり母材が伸びにくいため、前記透明ポリエステル樹脂に剥離が発生するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、冷蔵庫の扉の母材加工度に対して、前記透明ポリエステル樹脂の伸びを追従させ、加工性に優れ、前記透明ポリエステル樹脂が剥離しない樹脂被膜鋼板を用いた冷蔵庫の扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫の扉の意匠鋼板は、プレス成型した樹脂被覆鋼板及び扉内装材及び前記樹脂被覆鋼板と扉内装材の空隙部に充填した硬質ウレタンフォームからなり、前記樹脂被覆鋼板には母材の鋼板側にポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂、表面側にポリエステル樹脂を、接着剤層を介してラミネートしたフィルムを備え、前記ポリエステル樹脂のうち、少なくとも表面側のポリエステル樹脂が1.5kgfの荷重に対し40%以上の伸度を有する2軸延伸のフィルムとして、透明ポリエステル樹脂の製造方法、冷蔵庫の扉の形状を変更することにより、冷蔵庫の扉の母材加工度に対して前記透明ポリエステル樹脂の伸びを追従させることとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷蔵庫の扉の意匠鋼板は、前記透明ポリエステル樹脂の製造方法、冷蔵庫の扉の形状を変更することにより、加工時の応力を緩和し、前記透明ポリエステル樹脂が剥離しない、高加工性、高品質、低コストの冷蔵庫の扉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
請求項1に記載の発明は、プレス成型した樹脂被覆鋼板及び扉内装材及び前記樹脂被覆鋼板と前記扉内装材の空隙部に充填した硬質ウレタンフォームからなり、前記樹脂被覆鋼板には母材の鋼板側にポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂、表面側にポリエステル樹脂を、接着剤層を介してラミネートしたフィルムを備え、前記ポリエステル樹脂のうち、少なくとも表面側のポリエステル樹脂が1.5kgfの荷重に対し40%以上の伸度を有する2軸延伸のフィルムとすることにより、母材鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂に追従し負荷応力が低減し、前記表面側の透明ポリエステル樹脂の剥離をなくすことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、冷蔵庫の扉はプレス成型の加工度を沿面距離と投影距離との比として1.05以上にすることにより、扉形状の凹凸の深さを規定するため加工応力が一定以下となり、前記透明ポリエステル樹脂の剥離をなくすことができる。また、加工度による透明ポリエステル樹脂のロット毎の剥離試験を省略することができ、人件費を削減することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、冷蔵庫の扉は前記母材の鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側の透明ポリエステル樹脂を接着する接着剤層に無機又は金属粉末を50重量%以上含有したことにより、前記透明ポリエステル樹脂の剥離をなくすことができ、且つ金属粉末を50重量%以上含有されているため、より意匠性に優れた深みのある冷蔵庫の扉ができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、冷蔵庫の扉は前記母材の鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側の透明ポリエステル樹脂を接着する前記接着剤層に紫外線吸収剤を添加したことにより、紫外線吸収剤がUV−A波とUV−B波を吸収するため、母材の鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と表面側の透明ポリエステル樹脂の色素退色を減少することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、冷蔵庫の扉は前記母材の鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側の透明ポリエステル樹脂を接着する前記接着剤層の厚みが前記表面側の透明ポリエステル樹脂の厚さと同等以上であることにより、表面側の透明ポリ塩化ビニル樹脂に追従し伸びによる集中応力を分散し、前記透明ポリエステル樹脂の剥離をなくすことができる。また、母材の鋼板側の着色ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と表面側の透明ポリエステル樹脂を接着する接着剤層が厚いため、メタリック塗装などのように金属面の質感をだして意匠性を向上するために添加する無機又は、金属粉末の添加量増加が可能となり、意匠性が向上できる。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の扉の意匠鋼板の要部断面図である。
【0017】
図1において、透明ポリエステル樹脂6とポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂3を接着剤2でフィルムを作成し、このフィルムを鋼板5に接着剤4で接着し、構成している。
【0018】
以上のように構成された冷蔵庫の扉の意匠鋼板について以下動作、作用を説明する。
【0019】
意匠鋼板を製造時に、透明ポリエステル樹脂6を2軸延伸状にして被覆したことにより、母材加工度に対してポリエステル樹脂6の伸びが追従して、伸びにより集中応力を分散し、また、プレス成型の加工度・伸延度を沿面距離と投影距離との比として1.05以上と規定することにより、透明ポリエステル樹脂が剥離することもなく、検査工程またはロット毎の品質確認が必要なく工数に伴う人件費が削減可能となり製品も安価に提供できる。
【0020】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の扉の意匠鋼板の要部断面図である。
【0021】
図2において、透明ポリエステル樹脂6とポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂3を接着剤7でフィルムを作成し、このフィルムを鋼板5に接着剤8で接着し、構成している。
【0022】
以上のように構成された冷蔵庫の扉の意匠鋼板について以下動作、作用を説明する。
【0023】
意匠鋼板を製造時に、透明ポリエステル樹脂6を2軸延伸状にし、母材の鋼板側のポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と表面側のポリエステル樹脂を接着する接着剤層に無機又は金属粉末を縦1000mm、横800mmの冷蔵庫の扉に60g含有したことに意匠性に優れた、深みのある冷蔵庫意匠鋼板とすることができる。
【0024】
また、接着剤層に紫外線吸収剤の2−ヒドロキシベンゾフェノンを上記冷蔵庫の扉に10g添加したことにより、UV−A波とUV−B波を吸収するため、透明ポリエステル樹脂6とポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂3の色素退色を減少することができる。
【0025】
また、接着剤層の厚みを20μm以上にすることにより、母材加工度に対してポリエステル樹脂6の伸びが追従して、伸びにより集中応力を分散し剥離を低減することができる。
【0026】
また、意匠性向上のために添加する無機又は、金属粉末の添加量増加が可能となり、100g添加が可能となり、より意匠性の高い冷蔵庫を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明にかかる冷蔵庫の扉は、樹脂被覆鋼板を使用し加工し高意匠性を有する用途に使用するものであり、同様の高意匠性が必要な機器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の扉に使用する意匠鋼板の要部断面図
【図2】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の扉に使用する意匠鋼板の要部断面図
【図3】従来の冷蔵庫の扉に使用する意匠鋼板の要部断面図
【符号の説明】
【0029】
2,4,7,8 接着剤
3 ポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂
5 鋼板
6 透明ポリエステル樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成型した樹脂被覆鋼板及び扉内装材及び前記樹脂被覆鋼板と前記扉内装材の空隙部に充填した硬質ウレタンフォームからなり、前記樹脂被覆鋼板には母材の鋼板側にポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂、表面側にポリエステル樹脂を、接着剤層を介してラミネートしたフィルムを備え、前記ポリエステル樹脂のうち、少なくとも表面側のポリエステル樹脂が1.5kgfの荷重に対し40%以上の伸度を有する2軸延伸のフィルムであることを特徴とする冷蔵庫の扉。
【請求項2】
プレス成型の加工度を沿面距離と投影距離との比として1.05以上にすることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫の扉。
【請求項3】
前記母材の鋼板側のポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側のポリエステル樹脂を接着する接着剤層に無機又は金属粉末を50重量%以上含有したことを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫の扉。
【請求項4】
前記母材の鋼板側のポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側のポリエステル樹脂を接着する前記接着剤層に紫外線吸収剤を添加したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫の扉。
【請求項5】
前記母材の鋼板側のポリ塩化ビニル樹脂又はポリエステル樹脂と前記表面側のポリエステル樹脂を接着する前記接着剤層の厚みが前記表面側のポリエステル樹脂の厚さと同等以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫の扉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−101805(P2008−101805A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283368(P2006−283368)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】