説明

冷蔵庫扉

【課題】扉の外面を形成する扉面材の形状をシンプルにすることでハンドル取り付けのための絞り成形を容易にし、これにともなうハンドル取り付けのための扉キャップ形状により、ハンドル強度を向上させるとともに、斬新なハンドルデザインを可能とした冷蔵庫扉を提供する。
【解決手段】上下の貯蔵室の前面開口を開閉するように隣接して設けた上扉および下扉と、この上扉と下扉の互いに対向する一側の隅部に設けた上ハンドル部材および下ハンドル部材とからなり、前記上下のハンドル部材は、扉側への固定部間に互いの隣接部からそれぞれ上下に離間する方向に湾曲あるいは突出させた握り部を形成し、これら上下の握り部の内側に形成される空間と前記扉の前面との間に手指が係合する手掛け部を形成したことを特徴とする冷蔵庫扉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫扉に係り、特に、回動式扉に設けたハンドル構成に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の開口部を開閉自在に閉塞する扉、特に、冷蔵庫扉などの比較的重量物である扉における開閉用のハンドルは、充分な強度を要するとともに冷蔵庫表面に設けるものであることから外観デザインを考慮した美麗なものであることが条件となる。
【0003】
特許文献1に示された構成である図8には、ハンドル(57)を扉本体(54)に取り付けるにあたって、当て板などを別途必要とせず、その分部品点数を少なくして、充分な取り付け強度を確保するための構成として、扉本体(54)の前面に温度制御のための操作や運転状態の表示のための操作パネルを収納するとともに扉の下辺を形成するキャップ(59)および扉外板(58)に手掛け用の凹部(58a)を設け、前記キャップ(59)に、ネジ穴を有するボス部(59d)を設け、これらボス部(59d)にネジ止めすることによりハンドル(57)を取り付け固定する構造が示されている。
【特許文献1】特開平11−159945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構成では、キャップ(59)とともにハンドル(57)の取付部を形成する扉外板(58)の凹部(58a)は、薄鋼板製である扉外板(58)を絞り成形により形成する必要があるが、絞りが深いと扉外板(58)の表面に歪みが発生するため、外観上の問題から必要な絞り深さを得ることは困難であった。
【0005】
また、ハンドル(57)は、キャップ(59)の一部に設けたボス部(59d)にネジ止めする構成であることから、必然的に扉本体(54)の下辺に沿って配設された直線状のキャップ(59)に沿わせる形状とならざるを得ず、ハンドルデザインが制約を受けるとともに、大きな剛性が期待できないキャップ(59)形状から、重量物である扉を開閉する際の荷重により部品間の擦れによる軋み音の発生を防ぐことができず、さらに、上記構成上の制約から、新たなデザインを採用する場合にもその取り付け強度に不安を生じる不具合があった。
【0006】
本発明は上記の点を考慮してなされたもので、扉の外面を形成する扉面材の凹陥部形状をシンプルにすることでハンドル取付のための絞り成形を容易にし、これにともなうハンドル取り付けのための扉キャップ形状により、ハンドル強度を向上させるとともに、斬新なハンドルデザインを可能とした冷蔵庫扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による冷蔵庫扉は、上下の貯蔵室の前面開口を開閉するように隣接して設けた上扉および下扉と、この上扉と下扉の互いに対向する一側の隅部に設けた上ハンドル部材および下ハンドル部材とからなり、前記上下のハンドル部材は、扉側への固定部間に互いの隣接部からそれぞれ上下に離間する方向に湾曲あるいは突出させた握り部を形成し、これら上下の握り部の内側に形成される空間と前記扉の前面との間に手指が係合する手掛け部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンドル部を形成するための扉面材の絞り成形を容易にするとともに扉キャップとの係合関係構成を簡素化し、部品数を少なくして組み立て作業を容易にし、且つ、ハンドル強度を確保しつつ斬新な意匠の冷蔵庫扉を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1にその外観図を示す冷蔵庫(1)は、断熱された貯蔵庫内を上部の冷凍室(2)と下方の冷蔵室(3)に区分し、それぞれの室の開口部には一側の上下部に設けたヒンジにより回動式で開閉自在に枢支した冷凍室扉(4)や冷蔵室扉(5)を設けている。
【0010】
各扉(4)(5)には、開閉用のハンドル部材(6)(7)が取り付けられている。これらハンドル部材は基本的に同一の構成であるが、本実施例では、下方の冷蔵室扉(5)におけるハンドル部材(7)の構成について説明する。
【0011】
この冷蔵室扉(5)は、その上部の分解斜視図である図2に示すように、扉の外表面を形成する塗装された薄鋼板からなり、両側縁を冷蔵室(5)側へ断面コ字状に折曲して側壁面を形成した扉面材(8)と、この扉面材(8)の上方に形成される開口を閉塞するABS樹脂などの合成樹脂材で射出成形された扉キャップ(9)と、同様に前記扉面材(8)の下方部を形成するように設けられた扉キャップ下(10)と、前記扉面材(8)と上下の扉キャップ(9)(10)との庫内側の周縁に枠状に設けた扉サッシ(11)とを結合して形成されている。
【0012】
前記各部材で形成される空間には、ポリウレタンフォームなどの発泡断熱材(12)の原液を注入して現場発泡方式により発泡し固化させることで、各部品を発泡断熱材(12)の接着効果によって一体化しており、図3に示すように、断熱扉体として充分な強度を有する扉本体(13)を構成している。
【0013】
なお、発泡断熱材(12)の充填後の製品組み立て時、前記扉サッシ(11)の庫内側には、貯蔵品の収納ポケットを設けた扉内板、および前記扉(5)と冷蔵室(3)の開口との間を密封するシールガスケットを設けることで冷蔵室扉(5)としての組み立てを完了する。
【0014】
しかして、前記扉本体(13)にハンドル部材(7)を取り付けた冷蔵室扉(5)としての組み立て状態を示す図4におけるx−x線に沿う横断面図である図5、および同y−y線の縦断面図である図6に示すように、扉面材(8)の上端に配設される扉キャップ(9)は、扉面材(8)と同幅にして冷蔵庫扉(5)の上縁部を形成し、その前部の下面に設けた係合部(9a)に扉面材(8)の上端縁を係合し、庫内側の周縁に設けた係合片(9b)を扉サッシ(11)と係合させている。
【0015】
前記扉面材(8)の反枢支側における幅方向の上部には、絞り成形により断熱材(12)側へ所定の段差で凹む手掛け用の凹陥部(8a)を形成する。この凹陥部(8a)は、前記図2に示すように、扉面材(8)の上端部における一側の前面部と折曲された側面部を含み、隅部を形成する上辺と側辺との2辺に亙って端縁まで至るように凹陥させているため、従来のように、扉外板(58)の前面の平面部に対して少なくとも3辺を絞って凹陥させるものに比し、プレスによる絞り成形が格段に容易となり、成形時の応力によって意匠面である扉面材(8)の表面が歪むことなく所定の深さ絞りをおこなうことができる。
【0016】
前記扉キャップ(9)は、扉面材(8)の絞り成形を施した上縁部にその全幅に亙って係合するとともに、形成された凹陥部(8a)の上縁部から側部に沿って切欠き状態にある扉面材(8)の端縁部(8b)に係合するよう前記係合部(9a)を形成しており、その反枢支側における扉面材(8)の外周縁に対応する隅部を縦方向の所定範囲に亙り延設させてコア部(9c)とし、後述するハンドル部材(7)を固定するために、その前面の上下2箇所にネジ固定用のボスA(9d)を突出形成するともに、このボスA(9d)から所定長枢支側に離間した箇所にも同様のボスB(9e)を形成している。
【0017】
(7)は、樹脂成型品からなるハンドル部材であり、前記扉面材(8)と扉キャップ(9)と扉サッシ(11)とからなる組立品に対し、図7に示すように、正面からみてほぼU字状をなす外形の中央部を握り部(7a)として、前記扉面材(8)の凹陥部(8a)を跨ぐようにその外面に配置し、握り部(7a)の一方を、扉キャップ(9)の反枢支側の前記コア部(9c)を主固定部として、その前面のボスA(9d)と側面のネジ止め部(9f)との2面の所定範囲に亙る外面形状に沿わせて係合させ、その外表面からそれぞれネジ(14)(14)で固着し、他方は凹陥部(8a)の枢支側に形成したボスB(9e)に固定している。
【0018】
なお、前記コア部(9c)の側面のネジ止め部(9f)は、当初は扉面材(8)と扉キャップ(9)との結合用として固着し、発泡断熱材(12)の充填による扉本体(13)形成後は、一端ネジ(14)を取り外しておき、ハンドル部材(7)の取り付け時に再びネジ止めすることで、ハンドル部材(9)を扉本体(13)に強固に固着するものである。
【0019】
上記による固定の結果、ハンドル部材(7)は、扉面材(8)と扉キャップ(9)との2部品の組み合わせ体からなるシンプルな構成と、組み立てばらつきの少ない状態で、発泡断熱材(12)の接着力によって剛性を持って一体化された扉キャップ(9)に強固に取り付けることができ、扉キャップ(9)のコア部(9c)と枢支側のボスB(9e)との間に形成されたハンドル部材(7)の握り部(7a)は、前記扉面材(8)の凹陥部(8a)との間に手指が通る手掛け部(15)が形成されることによって開閉扉の際にはハンドル部材(7)をしっかり握ることができるので信頼感とともに使い勝手を向上することができる。
【0020】
このハンドル部材(7)の外表面には、化粧板(16)を一部ネジ止め、および係止爪による嵌合で緊密に固着して配設している。そして、化粧板(16)により、前記コア部(9c)のネジ固定用のボスA(9d)、同B(9e)およびコア部側面のネジ止め部(9f)を含めてそのネジ固定部の外表面を覆うとともに、前記一部ネジ止め部分の外面はカバー体で覆うことにより、外表面にネジが露出することなく外観意匠を向上させることができる。
【0021】
前記冷蔵室(3)の上方の冷凍室(2)は、室内を冷凍温度に冷却して収納品を冷凍保存するための貯蔵室であり、特に詳細には説明しないが、図1に示すように、この冷凍室(2)の前面開口部にも前記冷蔵室(3)の場合と同様に、ハンドル部材(6)、扉面材(8′)、扉キャップ(9′)および扉サッシ(11′)からなる各部材を結合し組み立てた冷凍室扉(4)が回動自在に取り付けられている。
【0022】
前記冷蔵室扉(5)の構成に比して冷凍室扉(4)は、そのハンドル部材(6)の位置および取り付け構成が、冷蔵室扉(5)の場合と上下対称に配置されており、扉面材(8′)の絞り成形した凹陥部(8a′)は、反枢支側における幅方向の下部に設けられており、扉面材(8′)の一側下端の前面と側面の2辺に亙る端縁に向かって凹陥するように形成されている。
【0023】
そして、ハンドル部材(6)は、冷蔵室側のハンドル部材(7)とは上下対称のほぼ逆U字状をなしており、前記冷蔵室(3)側への取り付けと同様に、扉キャップ(9′)のコア部(9c′)前面のボスAと側面のネジ固定部との2面の固定部、およびボスBにネジで固定され、その外表面を化粧板(16′)で覆っている。
【0024】
上記により組み立てられた冷凍室扉(4)と冷蔵室扉(5)は、上下のハンドル部材(6)(7)が対称形状であることから、双方の扉(4)(5)を閉扉した状態では、下方のハンドルの握り部(7a)のU字形状の内方と上方のハンドルの握り部(7a′)の逆U字形状の内方とが合体してひとつの円を形成し、冷蔵庫表面デザインとして斬新な図形模様を形成することができるものである。
【0025】
なお、上記実施例においては、上方のハンドル部材(6)の握り部(7a′)を逆U字形状とし、下方をU字形状として上下合体させることでひとつの円形を形成させたもので説明したが、円形に限らず、楕円形や舟形にしたり、上方をU字形状、下方を逆U字形状として上下に組み合わせたり、前記U字形状をV字形状にして上下に組み合わせることで4角形や3角形などを形成することができるものであり、要は上下の図形を組み合わせることで単一の印象となる図形模様を形成すればよいものである。
【0026】
また、以上の説明においては、冷蔵庫構成として、冷凍室(2)を上部に、冷蔵室(3)を下部に配置した構成について説明したが、これに限るものでもなく、冷凍室を下方に配置したボトムフリーザタイプに適用してもよく、さらに、他の貯蔵室との組み合わせや、左右方向に配設した貯蔵室における左右のハンドルの隣接関係での組み合わせで図形模様を形成するようにしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1実施形態を示す冷蔵庫の外観正面図である。
【図2】図1における冷蔵室扉の本体上部の分解斜視図である。
【図3】図2による扉本体の組み立て状態を示す斜視図である。
【図4】図3の扉本体にハンドル部材を取り付けた冷蔵室扉を示す斜視図である。
【図5】図4のx−x線に沿う横断面図である。
【図6】図4のy−y線に沿う縦断面図である。
【図7】図2の扉本体にハンドル部材を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図8】従来の冷蔵庫扉のハンドル部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 冷蔵庫本体
4 冷凍室扉
5 冷蔵室扉
6、7 ハンドル部材
7a 握り部
8、8′ 扉面材
8a、8a′ 凹陥部
8b 端縁部
9、9′ 扉キャップ
9a 係止溝
9c、9c′ コア部
9d ボスA
9e ボスB
9f ネジ止め部
11 扉サッシ
12 発泡断熱材
13 扉本体
14 ネジ
15 手掛け部
16 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の貯蔵室の前面開口を開閉するように隣接して設けた上扉および下扉と、この上扉と下扉の互いに対向する一側の隅部に設けた上ハンドル部材および下ハンドル部材とからなり、前記上下のハンドル部材は、扉側への固定部間に互いの隣接部からそれぞれ上下に離間する方向に湾曲あるいは突出させた握り部を形成し、これら上下の握り部の内側に形成される空間と前記扉の前面との間に手指が係合する手掛け部を形成したことを特徴とする冷蔵庫扉。
【請求項2】
上扉と下扉に設けた上ハンドル部材および下ハンドル部材における上下の握り部の内側に形成される空間が円形を形成していることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫扉。
【請求項3】
上扉と下扉に設けた上ハンドル部材および下ハンドル部材における上下の握り部の内側に形成されるそれぞれの空間が上下対称であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184917(P2012−184917A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106164(P2012−106164)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2007−105657(P2007−105657)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】